JP2014227525A - 微細セルロース繊維複合体の製造方法 - Google Patents

微細セルロース繊維複合体の製造方法 Download PDF

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隆行 嶋岡
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豪 盤指
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Yasutomo Noishiki
泰友 野一色
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Abstract

【課題】機械的物性に優れた繊維強化材を得るのに適した微細セルロース繊維複合体を容易に製造できる微細セルロース繊維複合体の製造方法を提供する。【解決手段】本発明の微細セルロース繊維複合体の製造方法は、平均繊維幅が2〜1000nmの微細セルロース繊維を含む分散液と、樹脂エマルションとを混合して混合液を調製する混合工程と、前記混合液に凝固剤を添加して樹脂エマルションに含まれる樹脂を凝固させてゲル状物を得る凝固工程とを有し、前記凝固工程では、凝固剤の添加開始から、樹脂の凝固によってゲル状物が得られるまでの間、混合液を実質的な静置状態に保つ。【選択図】なし

Description

本発明は、微細セルロース繊維複合体の製造方法に関する。
樹脂中に繊維を分散させた繊維強化材は機械的物性(引張破断強度、引張弾性率や硬度等)に優れることから、幅広い分野で使用されている。
ところで、径が太い繊維は樹脂中に分散しやすいが、耐疲労性などの物性が低下し、一方、径が細いと、耐疲労性は向上するものの、繊維同士が絡まって樹脂への分散性が低下する傾向にある。そこで、断面が海島構造を持つ混合糸繊維を樹脂に分散させて、混合時のせん断力によってフィブリル化させることによって樹脂との接触面積を増やし、分散性と耐疲労性を両立させることが提案されている(特許文献1)。しかし、この繊維は、太さや長さが不均一で、直径が0.7〜1μm程度であるため、樹脂との接触面積が充分大きいとはいえず、機械的物性の向上効果は不充分であった。
繊維強化材の製造方法として、樹脂と繊維を含む繊維複合体を加硫(架橋)して繊維強化材を得る方法、繊維複合体に樹脂を追加配合し、混練して繊維強化材を得る方法が知られている。
特許文献2には、繊維複合体を製造する方法として、樹脂ラテックスと微細セルロース繊維分散液とを、ホモジナイザーを用いて混合した後、凝固し、脱水、乾燥して、微細セルロース繊維と樹脂を含む微細セルロース繊維複合体を製造する方法が開示されている。
しかし、特許文献2に記載の方法で得た微細セルロース繊維複合体を用いて得た繊維強化材は、機械的物性が不充分であった。
特開平10−7811号公報 特開2012−25949号公報
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、機械的物性に優れた繊維強化材を得るのに適した微細セルロース繊維複合体を容易に製造できる微細セルロース繊維複合体の製造方法を提供することを目的とする。
樹脂に繊維を分散させる場合、繊維の分散性が高くなると、機械的物性が良くなることが知られている。従来、樹脂ラテックスと微細セルロース繊維分散液との混合液に凝固剤を添加して微細セルロース繊維複合体を得る際には、攪拌する方が微細セルロース繊維の分散性を向上させる点で好ましいと思われていた。ところが、本発明者らは、予想外にも、攪拌しながら凝固剤を添加すると、微細セルロース繊維同士が凝集しやすくなることを見出した。その知見に基づき、さらに検討を重ねて、以下の微細セルロース繊維複合体の製造方法を発明した。
本発明は、以下の態様を含む。
[1]平均繊維幅が2〜1000nmの微細セルロース繊維を含む分散液と、樹脂エマルションとを混合して混合液を調製する混合工程と、前記混合液に凝固剤を添加して樹脂エマルションに含まれる樹脂を凝固させてゲル状物を得る凝固工程とを有し、前記凝固工程では、凝固剤の添加開始から、樹脂の凝固によってゲル状物が得られるまでの間、混合液を実質的な静置状態に保つ、微細セルロース繊維複合体の製造方法。
[2]前記凝固工程の後に、ゲル状物を脱水する脱水工程を有する、[1]に記載の微細セルロース繊維複合体の製造方法。
[3]前記脱水工程の後に、脱水したゲル状物を乾燥する乾燥工程を有する、[2]に記載の微細セルロース繊維複合体の製造方法。
本発明の微細セルロース繊維複合体の製造方法は、機械的物性に優れた繊維強化材を得るのに適した微細セルロース繊維複合体を容易に製造できる。
「微細セルロース繊維複合体」
本発明の微細セルロース繊維複合体は、微細セルロース繊維と樹脂とを含有し、樹脂中に微細セルロース繊維が分散しているものである。
微細セルロース繊維複合体における微細セルロース繊維の含有量は、樹脂を100質量部とした際の、0.1〜100質量部であることが好ましく、1〜70質量部であることがより好ましく、5〜50質量部であることがさらに好ましい。微細セルロース繊維の含有量が前記下限値以上であれば、微細セルロース繊維が充分に含まれるため、微細セルロース繊維複合体より得た繊維強化材の機械的物性をより向上させることができる。しかし、微細セルロース繊維の含有量が前記上限値を超えると、微細セルロース繊維複合体中に微細セルロース繊維の凝集物を形成して、かえって微細セルロース繊維複合体より得た繊維強化材の機械的物性を低下させることがある。
<微細セルロース繊維>
微細セルロース繊維は、通常製紙用途で用いるパルプ繊維よりもはるかに細く且つ短いI型結晶構造のセルロース繊維あるいは棒状粒子である。
微細セルロース繊維がI型結晶構造を有していることは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて、2θ=14〜17°付近と2θ=22〜23°付近の2箇所の位置に典型的なピークを有することで同定することができる。
微細セルロース繊維の、X線回折法によって求められる結晶化度は、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは70%以上である。結晶化度が前記下限値以上であれば、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求めることができる(Segalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
(繊維幅)
微細セルロース繊維は、電子顕微鏡で観察して求めた平均繊維幅が2〜1000nmのセルロースである。微細セルロース繊維の平均繊維幅は2〜100nmが好ましく、2〜50nmがより好ましく、2〜30nmがさらに好ましく、2〜15nmが特に好ましい。微細セルロース繊維の平均繊維幅が前記上限値を超えると、微細セルロース繊維としての特性(高強度や高剛性、高寸法安定性、樹脂と複合化した際の高分散性、透明性)を得ることが困難になる。微細セルロース繊維の平均繊維幅が前記下限値未満であると、セルロース分子として分散媒に溶解してしまうため、微細セルロース繊維としての特性(高強度や高剛性、高寸法安定性)を得ることが困難になる。
微細セルロース繊維の電子顕微鏡観察による平均繊維幅の測定は以下のようにして行う。微細セルロース繊維含有スラリーを調製し、該スラリーを親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストして透過型電子顕微鏡(TEM)観察用試料とする。幅広の繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面の操作型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍、20000倍、50000倍あるいは100000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線Xと垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記のような電子顕微鏡観察画像に対して、直線Xに交錯する繊維、直線Yに交錯する繊維の各々について少なくとも20本(すなわち、合計が少なくとも40本)の幅(繊維の短径)を読み取る。こうして上記のような電子顕微鏡画像を少なくとも3組以上観察し、少なくとも40本×3組(すなわち、少なくとも120本)の繊維幅を読み取る。このように読み取った繊維幅を平均して平均繊維幅を求める。この平均繊維幅は数平均繊維幅と等しい。
微細セルロース繊維の最大繊維幅は50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。微細セルロース繊維の最大繊維幅が前記上限値以下であれば、樹脂と混ぜ合わせて得た微細セルロース繊維複合体の強度が高くなる。
(繊維長)
微細セルロース繊維の平均繊維長は、0.1〜5.0μmが好ましい。平均繊維長が前記下限値以上であれば、微細セルロース繊維を樹脂に配合した際の強度向上効果が充分に得られる。平均繊維長が前記上限値以下であれば、微細セルロース繊維を樹脂に配合した際の混合性がより良好となる。繊維長は、前記平均繊維幅を測定する際に使用した電子顕微鏡観察画像を解析することにより求めることができる。すなわち、上記のような電子顕微鏡観察画像に対して、直線Xに交錯する繊維、直線Yに交錯する繊維の各々について少なくとも20本(すなわち、合計が少なくとも40本)の繊維長を読み取る。こうして上記のような電子顕微鏡画像を少なくとも3組以上観察し、少なくとも40本×3組(すなわち、少なくとも120本)の繊維長を読み取る。このように読み取った繊維長を平均して平均繊維長を求める。
微細セルロース繊維を、透明基板等の強度が求められる用途に適用する場合には、繊維長は長め(具体的には500nm〜4μm)であることが好ましく、樹脂に配合する場合には、繊維長は短め(具体的には200nm〜2μm)であることが好ましい。
(アニオン基、カチオン基)
微細セルロース繊維は、アニオン基を有して表面電荷が負となっていてもよいし、カチオン基を有して表面電荷が正となっていてもよい。
微細セルロース繊維がアニオン基またはカチオン基を有する場合、その含有量は、0.1〜2.0mmol/gであることが好ましく、0.1〜1.5mmol/gであることがより好ましく、0.2〜1.2mmol/gであることがさらに好ましい。アニオン基またはカチオン基の含有量が前記範囲であれば、微細セルロース繊維の水和性が高くなり過ぎず、スラリー化した際の粘度が低くなる。アニオン基またはカチオン基の含有量が前記上限値を超えると、水和性が高くなりすぎて微細セルロース繊維が溶解するおそれがある。
なお、セルロースは、カルボキシ基を導入する処理を施さなくても、少量(具体的には0.1mmol/g未満)のカルボキシ基を有している。
前記アニオン基としては、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。
アニオン基の含有量は、米国TAPPIの「Test Method T237 cm−08(2008):Carboxyl Content of pulp」の方法を用いて求める。アニオン基の含有量をより広範囲まで測定可能にするために、前記試験方法に用いる試験液のうち、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)/塩化ナトリウム(NaCl)=0.84g/5.85gを蒸留水で1000mlに溶解希釈した試験液について、前記試験液の濃度が実質的に4倍となるように、水酸化ナトリウム1.60gに変更した以外は、TAPPI T237 cm−08(2008)に準じる。また、アニオン基を導入した場合には、アニオン基導入前後のセルロース繊維における測定値の差を実質的なアニオン基含有量とする。なお、測定試料とする絶乾セルロース繊維は、加熱乾燥の際の加熱によって起こる可能性があるセルロースの変質を避けるため、凍結乾燥により得たものを使用する。
当該アニオン基含有量測定方法は、1価のアニオン基(カルボキシ基)についての測定方法であることから、定量対象のアニオン基が多価の場合には、前記1価のアニオン基含有量として得られた値を、酸価数で除した数値をアニオン基含有量とする。
前記カチオン基とは、その基内にアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウムなどのオニウムを有する基であって、通常は、分子量が1000以下の基である。具体的には一級アンモニウム、二級アンモニウム、三級アンモニウム、四級アンモニウムなどのアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、これらアンモニウム、ホスホニウムまたはスルホニウムを有する基が挙げられる。
(微細セルロース繊維を含む分散液の製造方法)
微細セルロース繊維を含む分散液(以下、「微細セルロース繊維分散液」という。)は、セルロースを含む繊維原料を分散媒中で微細化することによって得られる。
[セルロース繊維原料]
微細セルロース繊維の原料となる、セルロースを含む繊維原料としては、製紙用パルプ、コットンリンターやコットンリントなどの綿系パルプ、麻、麦わら、バガスなどの非木材系パルプ、ホヤや海草などから単離されるセルロースなどが挙げられる。これらの中でも、入手のしやすさという点で、製紙用パルプが好ましい。製紙用パルプとしては、広葉樹クラフトパルプ(晒クラフトパルプ(LBKP)、未晒クラフトパルプ(LUKP)、酸素漂白クラフトパルプ(LOKP)など)、針葉樹クラフトパルプ(晒クラフトパルプ(NBKP)、未晒クラフトパルプ(NUKP)、酸素漂白クラフトパルプ(NOKP)など)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ、楮、三椏、麻、ケナフ等を原料とする非木材パルプ、古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。これらの中でも、より入手しやすいことから、クラフトパルプ、脱墨パルプ、サルファイトパルプが好ましい。
セルロース繊維原料は1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
[化学処理工程]
上記のセルロースを含む繊維原料は、そのままで微細セルロース繊維の原料として用いてもよいが、微細化工程で微細化が促進されることから、極性基及び嵩高基の少なくとも一方からなる置換基を0.1〜2.0mmol/g含有させる化学処理を施すことが好ましい。
極性基としては、アニオン基(具体的には、カルボキシ基、リン酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、フェノール基、硝酸エステル基)、カチオン基が挙げられ、カルボキシ基、リン酸基、カチオン基が好ましい。
嵩高基としては、アルキル基、ベンジル基(ベンゼン環)及びベンゼン誘導体含有基、アシル基、シリル基、トリチル基、トシル基があげられる。
カルボキシ基をセルロース繊維原料に導入する方法としては、酸化剤を使用して、セルロースの水酸基の一部をカルボキシ基に酸化する方法が挙げられる。
酸化剤としては、オゾン、二酸化塩素、過酸化水素、過酢酸、過硫酸、過マンガン酸、塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸またはこれらの塩等の水溶液、六価クロム酸硫酸混液、ジョーンズ試薬(無水クロム酸の硫酸酸性溶液)、クロロクロム酸ピリジリニウム(PCC試薬)などのクロム酸酸化試薬、Swern酸化などに使われる活性化ジメチルスルホキシド試薬、また触媒的な酸化が生じるテトラプロピルアンモニウムテルルテナート(TPAP)や、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)などのN−オキシル化合物等が挙げられる。これらのうち、セルロース繊維にカルボキシ基を導入する効率が高いため、オゾン、TEMPO、過酸化水素、二酸化塩素が好ましく、オゾン、TEMPOがより好ましい。
オゾンによる処理では、セルロースの一部の水酸基がカルボニル基やカルボキシ基に換わる。これにより、セルロース繊維間の結合力が弱まり、解繊性が向上する。
オゾンは、空気、酸素ガス、酸素添加空気等の酸素含有気体を、公知のオゾン発生装置に供給することにより発生させることができる。
オゾンによる処理は、オゾンが存在する閉じた空間または雰囲気中にセルロース繊維原料を曝すことで行われる。オゾンが含まれる気体中のオゾン濃度は、250g/m以上であると、爆発するおそれがあるため、250g/m未満である必要がある。しかし、濃度が低いと、オゾン使用量が増えるため、オゾン濃度は50〜215g/mであることが好ましい。オゾン濃度が前記下限値以上であれば、オゾンの取り扱いが容易であり、しかも微細化工程での微細セルロース繊維の収率の向上効果がより高くなる。
セルロース繊維原料に対するオゾン添加量は特に制約されるものではないが、セルロース繊維原料の固形分100質量部に対して5〜30質量部であることが好ましい。オゾン添加量が前記下限値以上であれば、微細化工程での微細セルロース繊維の収率向上効果がより高くなる。しかし、前記上限値を超えると、オゾン処理前後の歩留まりの低下、脱水性の悪化を引き起こす。また、微細化工程では微細セルロース繊維の収率向上効果が頭打ちとなる。
オゾン処理温度としては特に制約されるものではなく、0〜50℃の範囲で適宜調整される。また、オゾン処理時間についても特に制約されるものではなく、1〜360分間の範囲で適宜調整される。
なお、セルロース繊維原料にオゾン処理を施した後、追酸化処理を施してもよい。追酸化処理に用いる酸化剤としては、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物の他、酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸などが挙げられる。
また、オゾン処理の後には、処理されたセルロース繊維原料に対して、アルカリ溶液で処理するアルカリ処理を施すことが好ましい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液中に、オゾン処理したセルロース繊維原料を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。
無機アルカリ化合物としては、アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩またはアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属のリン酸塩またはアルカリ土類金属のリン酸塩が挙げられる。
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化カルシウムが挙げられる。
アルカリ金属の炭酸塩としては炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが挙げられる。アルカリ土類金属の炭酸塩としては、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
アルカリ金属のリン酸塩としては、リン酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属のリン酸塩としては、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウムなどが挙げられる。
有機アルカリ化合物としては、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族アンモニウム、芳香族アンモニウム、複素環式化合物およびその水酸化物、炭酸塩、リン酸塩等が挙げられる。例えば、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、シクロヘキシルアミン、アニリン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム等が挙げられる。
上記アルカリ化合物は1種単独でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
アルカリ溶液における溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよいが、極性溶媒(水、アルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒がより好ましい。また、アルカリ溶液のうちでは、汎用性が高いことから、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液が特に好ましい。
オゾン処理したセルロース繊維原料を浸漬させたアルカリ溶液の25℃におけるpHは9以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、11〜14であることがさらに好ましい。アルカリ溶液のpHが前記下限値以上であれば、微細セルロース繊維の収率がより高くなる。しかし、pHが14を超えると、アルカリ溶液の取り扱い性が低下するだけでなく、微細セルロース繊維の溶解が起こる。
TEMPOによる処理では、セルロース繊維原料に対し、TEMPOおよびハロゲン化アルカリの存在下で酸化剤を反応させて、セルロースの水酸基の一部をカルボキシ基に換える。これにより、セルロース繊維間の結合力が弱まり、解繊性が向上する。
TEMPOとともに酸化触媒として使用するハロゲン化アルカリは特に制約されるものではなく、ヨウ化アルカリ、臭化アルカリ、塩化アルカリ、フッ化アルカリ等を適宜選択して使用することができる。
酸化剤についても特に制約されるものではなく、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム、亜臭素酸ナトリウム等を適宜選択して使用することができる。
TEMPOおよびハロゲン化アルカリの使用量は特に制約されるものではないが、各々、セルロース繊維原料の固形分100質量部に対して0.1〜15質量部であることが好ましい。TEMPOおよびハロゲン化アルカリの添加量が各々前記下限値以上であれば、微細化工程での微細セルロース繊維の収率向上効果がより高くなる。しかし、前記上限値を超えると、微細化工程での微細セルロース繊維の収率向上効果が頭打ちとなるおそれがある。
酸化剤の使用量についても特に制約されるものではないが、セルロース繊維原料の固形分100質量部に対して、1〜80質量部が好ましい。
セルロース繊維原料を含む分散液をTEMPOにより処理する際の分散液のpHは、使用する酸化剤の種類に応じて適宜調整する。セルロース繊維原料分散液のpH調整は、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基性物質、あるいは酢酸、シュウ酸等の酸性物質を適宜添加することで行う。
セルロース繊維原料をTEMPOにより処理する際の処理温度は、20〜100℃の範囲であることが好ましく、また処理時間は、0.5〜4時間であることが好ましい。
また、カルボキシ基をセルロース繊維原料に導入する方法としては、分子内に2以上のカルボキシ基を有するカルボン酸系化合物を用いる方法も好ましい。
カルボン酸系化合物による処理では、セルロース分子が有するヒドロキシ基と、カルボン酸系化合物とが脱水反応して、極性基(−COO)を形成する。これにより、セルロース繊維間の結合力が弱まり、解繊性が向上する。
セルロース繊維原料をカルボン酸系化合物により処理する具体的方法としては、セルロース繊維原料にガス化したカルボン酸系化合物を混合する方法、セルロース繊維原料の分散液にカルボン酸系化合物を添加する方法等が挙げられる。これらのうち、工程が簡便で且つカルボキシ基導入の効率が高くなることから、セルロース繊維原料にガス化したカルボン酸系化合物を混合する方法が好ましい。カルボン酸系化合物をガス化する方法としては、カルボン酸系化合物を加熱する方法が挙げられる。
本処理において使用するカルボン酸系化合物は、2つのカルボキシ基を有する化合物、2つのカルボキシ基を有する化合物の酸無水物、およびそれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。2つのカルボキシ基を有する化合物の中では、2つのカルボキシ基を有する化合物(ジカルボン酸化合物)が好ましい。
2つのカルボキシ基を有する化合物としては、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、2−メチルプロパン二酸、2−メチルブタン二酸、2−メチルペンタン二酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2−ブテン二酸(マレイン酸、フマル酸)、2−ペンテン二酸、2,4−ヘキサジエン二酸、2−メチル−2−ブテン二酸、2−メチル−2ペンテン二酸、2−メチリデンブタン二酸(イタコン酸)、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸(フタル酸)、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸(イソフタル酸)、ベンゼン−1,4−ジカルボン酸(テレフタル酸)、エタン二酸(シュウ酸)等のジカルボン酸化合物が挙げられる。
2つのカルボキシ基を有する化合物の酸無水物としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸、無水ピロメリット酸、無水1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸化合物や複数のカルボキシ基を含む化合物の酸無水物が挙げられる。
2つのカルボキシ基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。
これらのうち、工業的に適用しやすく、また、ガス化しやすいことから、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸が好ましい。
セルロース繊維原料に対するカルボン酸系化合物の質量割合は、セルロース繊維原料の固形分100質量部に対して、カルボン酸系化合物が0.1〜500質量部であることが好ましく、10〜200質量部であることがより好ましい。カルボン酸系化合物の割合が前記下限値以上であれば、微細セルロース繊維の収率をより向上させることができる。しかし、前記上限値を超えても、収率向上の効果は頭打ちとなり、無駄にカルボン酸系化合物を使用するだけである。
処理温度は、セルロースの熱分解温度の点から、250℃以下であることが好ましい。さらに、処理の際に水が含まれている場合には、80〜200℃にすることが好ましく、100〜170℃にすることがより好ましい。
本処理においては、必要に応じて触媒を用いることもできる。触媒としてはピリジンやトリエチルアミン、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム等の塩基性触媒や、酢酸、硫酸、過塩素酸等の酸性触媒を用いることが好ましい。
カルボン酸系化合物による処理の後には、オゾンによる処理と同様に、処理したセルロース繊維原料に、アルカリ溶液で処理するアルカリ処理を施すことが好ましい。
セルロース繊維原料にリン酸基を導入する方法としては、乾燥した、あるいは湿潤状態のセルロース繊維原料にリン酸またはリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合する方法、セルロース繊維原料の分散液にリン酸またはリン酸誘導体の水溶液を添加する方法等が挙げられる。これら方法においては、通常、リン酸またはリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合または添加した後に、脱水処理、加熱処理等を行う。
ここで用いられるリン酸またはリン酸誘導体としては、リン原子を含有するオキソ酸、ポリオキソ酸或いはそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
具体的には、リン酸;リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウムなどのリン酸のナトリウム塩;ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどのポリリン酸のナトリウム塩;リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウムなどのリン酸のカリウム塩;ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウムなどのポリリン酸のカリウム塩;リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウムなどのリン酸のアンモニウム塩;ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウムなどのポリリン酸のアンモニウム塩が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記のうちでも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムが好ましい。
セルロース繊維原料に対するリン酸またはリン酸誘導体の質量割合は、セルロース繊維原料の固形分100質量部に対してリン酸またはリン酸誘導体が、リン元素量として0.2〜500質量部であることが好ましく、1〜400質量部であることがより好ましく、2〜200質量部であることがさらに好ましい。リン酸またはリン酸誘導体の割合が前記下限値以上であれば、微細セルロース繊維の収率をより向上させることができる。しかし、前記上限値を超えても、収率向上の効果は頭打ちとなり、無駄にリン酸またはリン酸誘導体を使用するだけである。
加熱処理温度は、セルロースの熱分解温度の点から、250℃以下であることが好ましい。また、セルロースの加水分解を抑える観点から、加熱処理温度は100〜170℃であることが好ましい。さらに、加熱処理の際にリン酸またはリン酸誘導体を添加した系に水が含まれている間の加熱については、好ましくは130℃以下、より好ましくは110℃以下で加熱して充分に水分を除去乾燥するとよい。その後は、100〜170℃で加熱処理することが好ましい。また、水分を除く際には減圧乾燥機を用いてもよい。
リン酸またはリン酸誘導体による処理の後には、オゾンによる処理と同様に、処理したセルロース繊維原料に、アルカリ処理を施してもよい。
上記の処理によって、セルロースはリン酸由来の基(−PO 2−、−PO)を有するようになる。セルロースは2種以上のリン酸由来の基を有してもよい。例えば、セルロースが、水素イオンの数が異なる2種のリン酸由来を有してもよい。
セルロース繊維原料にカチオン基を導入する方法としては、四級アンモニウム基及びセルロースの水酸基と反応する基を有するカチオン化剤を用いる方法が適用される。
カチオン化剤を、触媒である水酸化アルカリ金属(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)の存在下で反応させることで、セルロースはカチオン化し、カチオン同士の電気的な反発が強まる。これにより、セルロース繊維間の結合力が弱まり、解繊性が向上する。
カチオン化剤の具体例としては、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドなどのグリシジルトリアルキルアンモニウムハライド或いはそのハロヒドリン型の化合物が挙げられる。
カチオン化剤の使用量は特に制限されないが、セルロース繊維原料の固形分100質量部に対して10〜1000質量部であることが好ましい。カチオン化剤の使用量が前記下限値以上であれば、微細化工程での微細セルロース繊維の収率向上効果がより高くなる。しかし、前記上限値を超えると、微細化工程での微細セルロース繊維の収率向上効果が頭打ちとなることがある。
カチオン化剤処理における処理温度は、30〜90℃の範囲であることが好ましく、また処理時間は、1〜3時間であることが好ましい。
[酵素処理工程]
セルロース繊維原料は、必ずしも上記の極性基または嵩高基を有する必要はない。上記の極性基または嵩高基を有さない場合には、上記化学処理の代わりに、所謂セルラーゼと総称される酵素によってセルロース繊維原料を処理することが好ましい。セルラーゼは、セロビオヒドロラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性、ベータグルコシダーゼ活性を有する酵素である。
酵素処理で使用する酵素は、上記の活性を有する酵素を適宜の量で混合して使用してもよいし、市販のセルラーゼ製剤を用いてもよい。
市販のセルラーゼ製剤としては、トリコデルマ(Trichoderma)属、アクレモニウム属(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ファネロケエテ(Phanerochaete)属、トラメテス属(Trametes)、フーミコラ(Humicola)属、バチルス(Bacillus)属などに由来するセルラーゼ製剤が挙げられる。
このようなセルラーゼ製剤の市販品としては、全て商品名で、例えば、セルロイシンT2(エイチピィアイ社製)、メイセラーゼ(明治製菓社製)、ノボザイム188(ノボザイム社製)、マルティフェクトCX10L(ジェネンコア社製)等が挙げられる。
なお、市販されているセルラーゼ製剤には、上記した各種のセルラーゼ活性を有すると同時に、ヘミセルラーゼ活性も有しているものが多い。
酵素処理では、酵素として、セルラーゼ以外に、ヘミセルラーゼ系酵素を単独に使用してもよいし、セルラーゼとヘミセルラーゼ系酵素とを混合使用してもよい。ヘミセルラーゼ系酵素の中でも、キシランを分解する酵素であるキシラナーゼ(xylanase)、マンナンを分解する酵素であるマンナーゼ(mannase)、アラバンを分解する酵素であるアラバナーゼ(arabanase)を使用することが好ましい。また、ペクチンを分解する酵素であるペクチナーゼもヘミセルラーゼ系酵素として使用することができる。
酵素処理の際の分散液のpHは、使用する酵素の活性が高くなる範囲に保つことが好ましい。例えば、トリコデルマ起源の市販の酵素の場合、pHは4〜8の間が好ましい。
また、酵素処理の際の分散液の温度は、使用する酵素の活性が高くなる範囲に保つことが好ましい。例えば、トリコデルマ起源の市販の酵素の場合、温度は40℃〜60℃が好ましい。温度が前記下限値未満では酵素活性が低下して処理時間が長くなり、前記上限値を超えると酵素が失活するおそれがある。酵素処理の処理時間は10分〜24時間の範囲が好ましい。酵素処理の処理時間が10分未満では酵素処理の効果が発現しにくい。24時間を超えると酵素によりセルロース繊維の分解が進みすぎて、得られる微細セルロース繊維の平均繊維長が短くなりすぎるおそれがある。
なお、所定時間以上に酵素が活性なままで残留していると前記のようにセルロースの分解が進み過ぎるため、所定の酵素処理が終了した際には、酵素反応の停止処理を施すことが好ましい。酵素反応の停止処理としては、酵素処理を施した分散液を水洗し、酵素を除去する方法、酵素処理を施した分散液に水酸化ナトリウムをpHが12程度になるように添加して酵素を失活させる方法、酵素処理を施した分散液の温度を温度90℃まで上昇させて酵素を失活させる方法が挙げられる。
[微細化工程]
微細化工程は、セルロース繊維原料分散液を、平均繊維幅が2〜1000nmの微細セルロース繊維が得られるように微細化処理して、微細セルロース繊維分散液を得る工程である。
微細化工程では、通常、微細化処理装置を用いる。微細化処理装置としては、高速回転解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーターなど、湿式粉砕する装置等を適宜使用することができる。これらは単独で用いてもよいし、同一の装置を複数台使用してもよいし、異なる種類の装置を組み合わせてもよい。異なる種類の装置を組み合わせる場合、リファイナー、高圧ホモジナイザー、高速回転解繊機のいずれか2つを組み合わせることが好ましい。
微細化処理に供給するセルロース繊維原料分散液のセルロース繊維濃度は0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。セルロース繊維原料分散液のセルロース繊維濃度が前記下限値以上であれば、微細化処理の効率が向上し、前記上限値以下であれば、微細化処理装置内での閉塞を防止できる。
希釈するための分散媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合物が挙げられるが、水が好ましい。
[精製工程]
微細化工程後には、精製工程を施してもよい。
精製工程は、微細セルロース繊維分散液を、微細セルロース繊維の平均繊維幅が2〜100nmになるように精製する工程である。精製工程によって微細セルロース繊維分散液を精製すれば、大きな繊維径を有する繊維が除去されて、微細セルロース繊維の外観をより良好できると共に物性をより向上させることができる。強度が重視されるような用途に微細セルロース繊維を使用する場合には、精製工程によって大きな繊維からなる破壊核が少なくなるため、強度のばらつきや低下を防ぐことができる。
精製工程においては、平均繊維幅2〜1000nmの微細セルロース繊維のうちの大きな繊維を除去して、平均繊維幅を2〜100nmにする精製装置を用いる。
精製装置としては、例えば、比重差を利用したデカンタや遠心分離機、クリーナー、形状の違いを利用したスクリーンやフィルター、浮選分離するフローテーターや加圧浮上装置などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、種類の異なる複数を組み合わせてもよい。
<樹脂>
本発明の微細セルロース繊維複合体に含まれる樹脂は、ゴム又はプラスチックである。
ゴムとしては、天然ゴム、ブタジエン重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン−メチルメタクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体等が挙げられる。
プラスチックとしては、熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチックのいずれであってもよい。
熱可塑性プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド等が挙げられる。
熱硬化性プラスチックとしては、ポリウレタン、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、珪素樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。
微細セルロース繊維複合体に含有させる樹脂は、1種であってもよいし、2種類以上であってもよい。
「微細セルロース繊維複合体の製造方法」
本発明の微細セルロース繊維複合体の製造方法は、混合工程と凝固工程とを必須の工程として有し、脱水工程及び乾燥工程を任意の工程として有してもよい。
(混合工程)
混合工程は、微細セルロース繊維分散液と樹脂エマルションとを混合して混合液を調製する工程である。
樹脂エマルションは、分散媒中に樹脂が乳化状態で分散する液状物である。
樹脂エマルションにおける樹脂固形分の濃度は特に限定されないが、生産性が高くなることから、樹脂エマルション全量に対して、0.1質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。一方、樹脂エマルション中における樹脂固形分の濃度は、微細セルロース繊維の分散性がより向上することから、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
樹脂エマルションにおける分散媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合物が挙げられるが、水が好ましい。
樹脂エマルションに混合する微細セルロース繊維分散液においては、微細セルロース繊維濃度が0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。微細セルロース繊維分散液の微細セルロース繊維濃度が前記下限値以上であれば、生産性が高くなり、前記上限値以下であれば、微細セルロース繊維の分散性がより向上する。
混合工程における微細セルロース繊維分散液と樹脂エマルションとの混合割合は特に限定されない。微細セルロース繊維分散液の割合が小さい程、微細セルロース繊維の分散性が高くなる半面、機械的物性の向上効果は得られにくくなる。このようなことから、微細セルロース繊維濃度が混合液全量に対して0.01質量%以上になる割合が好ましく、0.2質量%以上になる割合がより好ましい。一方、微細セルロース繊維分散液と樹脂エマルションとの混合割合は、微細セルロース繊維濃度が混合液全量に対して20質量%以下になる割合が好ましく、5質量%以下になる割合がより好ましい。また、前記範囲にすれば、得られる混合液の粘度及び粘度が好適になり、液安定性が高くなって、取り扱い性が良くなる。
混合液中における樹脂固形分の濃度は特に限定されないが、凝固及び脱水の効率が向上することから、混合液全量に対して、2質量%以上が好ましく、2.5質量%以上がより好ましく、混合液の粘度及び液安定性が好適になって取り扱い性が向上することから、95質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
混合液中における分散媒の含有割合は特に限定されないが、混合液の粘度及び液安定性が好適になって取り扱い性が向上することから、混合液全量に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、凝固及び脱水の効率が向上することから、97.5質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。
混合液中における樹脂固形分と分散媒との質量比率は特に限定されないが、樹脂100質量部に対して、分散媒量が5〜2000質量部であることが好ましく、25〜1000質量部であることがより好ましい。分散媒量が前記下限値以上であれば、混合液の粘度や液安定性が好適になって取り扱い性が向上し、前記上限値以下であれば、凝固及び脱水の効率が向上する。
混合液中における微細セルロース繊維と樹脂固形分との質量比率は特に限定されないが、微細セルロース繊維および樹脂の合計を100質量部とした際に、微細セルロース繊維量が2.5質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。一方、微細セルロース繊維量は、97.5質量部以下が好ましく、97質量部以下がより好ましく、95質量部以下がさらに好ましい。微細セルロース繊維量が前記下限値以上かつ前記上限値以下であれば、微細セルロース繊維複合体より得た繊維強化材の機械的物性がより高くなる。
混合工程において、微細セルロース繊維分散液と樹脂エマルションとを混合する方法としては特に限定はなく、例えば、プロペラ式攪拌装置、ホモジナイザー、ロータリー攪拌装置、電磁攪拌装置等を用いた攪拌混合、手動での攪拌混合、あるいは攪拌せずに自然拡散による混合のいずれであってもよい。
ただし、微細セルロース繊維分散液と樹脂エマルションとの混合性を高めて微細セルロース繊維の分散性がより向上する点では、攪拌混合することが好ましい。
(凝固工程)
凝固工程は、前記混合液に凝固剤を添加して樹脂エマルションに含まれる樹脂を凝固させてゲル状物を得る工程である。この凝固工程では、凝固剤の添加開始から、樹脂の凝固によってゲル状物が得られるまでの間、混合液を実質的な静置状態に保つ。ここで、「ゲル状物」とは、反応容器を傾けても流動をしない、あるいは、所定の形状を保ち得る状態のものである。
本発明において、「実質的な静置状態」とは、全く攪拌していない状態又は弱く攪拌している状態のことである。ここで、「攪拌」とは、攪拌翼を備える攪拌装置を用いた攪拌のことである。「全く攪拌していない状態」とは、攪拌装置の攪拌翼を回転させていない状態であり、「弱く攪拌している状態」とは、攪拌装置を用いて攪拌しているが、攪拌翼先端周速度が0.1m/s以下の状態のことである。攪拌翼先端周速度Vは、V[m/s]=π×攪拌翼直径[m]×回転数[min−1]÷60の式で求められる。
静置状態においては、同じ状態を継続していなくてもよい。すなわち、全く攪拌していない状態と、弱く攪拌している状態とを組み合わせても構わない。また、本願発明の効果を損なわない範囲で、ゲル状物を破断するせん断力を付与可能な程度に攪拌翼を一時的に回転しても差し支えない。
微細セルロース繊維の分散性をより高くするためには、混合液を全く攪拌しないことが好ましい。
なお、凝固工程では、混合液を静置状態にしているが、凝固剤が混合液中を拡散する拡散速度が凝固の速度よりも速いため、混合液の全体を均一に凝固させることができる。
また、凝固によって得られたゲル状物は混練しても構わず、微細セルロース繊維の分散性は維持されるか、混練によって分散性はより高くなる。
凝固剤を添加している際に混合液を静置状態にせず、攪拌翼先端周速度0.1m/s超で攪拌すると、得られる微細セルロース繊維複合体における微細セルロース繊維の分散性が低下する。そのため、微細セルロース繊維複合体より得た繊維強化材の機械的物性が低下することがある。
混合工程の際に攪拌混合した場合には、攪拌を停止させてからしばらく放置し、混合液が静置状態になった後に、凝固剤を添加することが好ましい。
凝固剤としては、酸、塩、高分子凝集剤、メタノールなどを使用できる。これらは1種単独でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
酸としては、有機酸および無機酸のいずれも用いることができる。有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸などが挙げられる。無機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、炭酸などが挙げられる。これらの酸は1種のみ使用してもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
塩としては、硝酸、硫酸、炭酸、リン酸、塩酸、およびギ酸それぞれの酸の、カルシウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。これらの酸は1種のみ使用してもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
酸及び塩の少なくとも一方を凝固剤として用いる場合、その添加量(水を含まない無水物での量)は、樹脂100質量部に対し0.01〜50質量部であることが好ましく、0.1〜40質量部であることがより好ましい。凝固剤の添加量が前記下限値以上であれば、充分に樹脂を凝固させることができる。しかし、前記上限値を超えて凝固剤を添加すると、微細セルロース繊維複合体に不純物として残りやすくなる。
高分子凝集剤としてはアニオン型、カチオン型、ノニオン型高分子凝集剤のいずれも使用できるが、カチオン型の高分子凝集剤が好ましい。カチオン性高分子の例としては、ポリアミドポリアミン系樹脂、ポリアミドポリ尿素系樹脂、ポリアミン系樹脂等が挙げられる。これらのカチオン性樹脂は1種のみ使用してもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
ポリアミドポリアミン系樹脂の具体例としては、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂、ポリアミドポリアミン−グリオキザール樹脂、ポリアミドポリアミン−ホルムアルデヒド樹脂等がある。
ポリアミドポリ尿素系樹脂の具体例としては、ポリアミドポリ尿素−エピクロルヒドリン樹脂、ポリアミドポリ尿素−グリオキザール樹脂、ポリアミドポリ尿素−ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
ポリアミン系樹脂の具体例としては、ポリアルキレンポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂、ポリアルキレンポリアミン−エピクロルヒドリン−ジアルキル硫酸樹脂、アルキレンジアミン−アルキレンジハライド樹脂、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
カチオン性高分子を凝集剤として添加する場合、カチオン性高分子の添加量(固形分量)は、樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。カチオン性高分子の添加量が前記下限値以上であれば、樹脂を充分に凝固させることができる。
一方、カチオン性高分子の添加量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。カチオン性高分子の添加量が前記上限値以下であれば、微細セルロース複合体中のカチオン性高分子の割合を抑制できるため、微細セルロース繊維複合体の耐水性低下を防止できる。
(脱水工程)
脱水工程は、前記ゲル状物を脱水する工程である。
脱水としては、ろ過、遠心分離が挙げられるが、簡便である点では、ろ過が好ましい。ろ過の場合、自然ろ過であってもよいし、吸引ろ過であってもよい。自然ろ過の場合は、ろ過装置を簡便にでき、吸引ろ過の場合は、脱水速度を速くできる。ろ材としては、例えば、一般の抄紙に使用するワイヤーが挙げられる。例えば、ステンレス、ブロンズなどの金属からなるワイヤーや、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデンなどのプラスチックからなるワイヤーが好ましい。また、セルロースアセテート基材などのメンブレンフィルターやろ紙などの紙製のろ材を用いることもできる。ろ材の目開きは、ろ過速度と歩留りを考慮すると、0.2〜200μmであることが好ましい。
(乾燥工程)
乾燥工程は、脱水したゲル状物を乾燥する工程である。
乾燥方法としては、加熱乾燥、真空乾燥、自然乾燥、凍結乾燥などが挙げられる。生産性の点からは、加熱乾燥、真空乾燥が好ましい。
(作用効果)
上記製造方法では、凝固工程において、実質的な静置状態に保ちながら混合液に凝固剤を添加しており、微細セルロース繊維同士が接触しにくく、微細セルロース繊維同士の凝集を抑制できる。そのため、微細セルロース繊維が凝集せずに分散した状態を維持したまま樹脂を凝固させることができ、樹脂中に微細セルロース繊維が均一に分散したゲル状物を容易に得ることができる。そのゲル状物より、樹脂中に微細セルロース繊維が均一に分散した微細セルロース繊維複合体を得ることができる。また、ゲル状物を微細セルロース繊維複合体として使用してもよい。
したがって、微細セルロース繊維複合体自体の機械的物性が優れるため、該微細セルロース繊維複合体より繊維強化材を得た場合には、繊維強化材の機械的物性に優れる。
また、混合物の凝固により得たゲル状物を脱水、乾燥する場合には、混合液を加熱することのみによって水分を除去しない。したがって、微細セルロース繊維複合体を高い生産性で且つエネルギーコストを抑えて製造できる。
上記の微細セルロース繊維複合体は、繊維強化材を得るのに適したものであり、繊維強化材製造用のマスターバッチとして好適に使用することができる。また、微細セルロース繊維複合体自体も機械的物性に優れており、そのまま成形用材料等に使用することもできる。
「繊維強化材」
繊維強化材は、上記微細セルロース繊維複合体から得たものであり、樹脂中に微細セルロース繊維が分散しているものである。
繊維強化材は、例えば、上記微細セルロース繊維複合体に各種添加剤を配合し、混練することにより得ることができる。また、上記微細セルロース繊維複合体に樹脂をさらに配合し、混練することにより得ることもできる。
添加剤としては、シリカ粒子やカーボンブラック、繊維などの、無機、有機のフィラー、シランカップリング剤、加硫剤、ステアリン酸、オイル、硬化レジン、ワックス、老化防止剤などが挙げられる。
また、混練の前に加硫剤を添加して、加硫した繊維強化材を得てもよい。
加硫剤としては、有機過酸化物または硫黄系加硫剤を使用することができる。有機過酸化物としては通常使用される各種のものが使用可能であるが、中でも、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン及びジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼンが好ましい。また、硫黄系加硫剤としては、例えば、硫黄、モルホリンジスルフィドなどを使用することができ、中でも硫黄が好ましい。これらの加硫剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
加硫剤の添加量としては、樹脂100質量部に対して、硫黄の場合、通常7.0質量部以下、好ましくは6.0質量部以下である。また、通常1.0質量部以上、好ましくは3.0質量部以上、より好ましくは4.0質量部以上である。
加硫する場合には、加硫剤と共に加硫促進剤、加硫促進助剤を添加してもよい。
加硫温度は、60℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。なお、微細セルロース繊維の分解を抑制する点から、加硫温度は250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。
加硫時間は、生産性などの点から、5分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、15分以上がさらに好ましい。一方、加硫時間は180分以下が好ましい。
加硫は複数回にわたって、温度・時間を変更して実施してもよい。
繊維強化材は、通常、成形されて成形品にされる。成形品の製造方法は、繊維強化材を得た後に、成形する方法でもよいし、繊維強化材を得るのと同時に成形する方法でもよい。成形方法としては、押出成形、プレス成形、射出成形等、各種成形方法を適用することができる。
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
<微細セルロース繊維分散液の調製>
(製造例1)
セルロースを含む繊維原料として、カルボキシ基含有量0.06mmol/g、パルプ濃度30質量%(水分70質量%)、絶乾質量換算で20gの広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)を用意した。
上記LBKPを容器内に収容し、その容器にオゾン濃度200g/mのオゾン・酸素混合気体を5L導入し、25℃で2分間振とうした。このときのオゾン添加率はパルプ乾燥質量に対して5質量%であった。6時間静置した後、容器内のオゾンおよび空気を除去してオゾン酸化処理を終了した。
処理終了後、イオン交換水で懸濁洗浄し、洗浄水のpHが6以上になるまで洗浄を繰り返した。その後、ろ紙を用いて減圧ろ過し、セルロース繊維濃度20質量%の酸化処理パルプを得た。
上記酸化処理パルプ(絶乾質量換算で20g)にイオン交換水を添加して、セルロース繊維濃度2質量%のスラリーを調製した。そのスラリーに水酸化ナトリウムを、水酸化ナトリウム濃度が0.3質量%になるよう添加し、5分間攪拌した後、室温で30分静置した。次いで、イオン交換水で懸濁洗浄し、洗浄水のpHが8以下になるまで洗浄を繰り返して、アルカリ処理パルプを含むスラリーを得た。
次いで、イオン交換水を加えて、セルロース繊維濃度0.5質量%のセルロース繊維分散液を調製した。該セルロース繊維分散液を解繊処理装置(エムテクニック社製、クレアミックス−2.2S)を用いて、21500回転/分の条件で30分間解繊処理した。その後、遠心分離機(コクサン社製「H−200NR」)を用い、約12000Gで10分間処理し、これにより分離した上澄み液を、微細セルロース繊維分散液として回収した。
得られた微細セルロース繊維分散液を透過型電子顕微鏡にて観察し、平均繊維幅を測定したところ、4nmであった。
<微細セルロース繊維複合体の製造>
(実施例1)
天然ゴムラテックス(固形分濃度:20質量%)100部に対してIKAホモジナイザーを用いて11000rpmで攪拌しながら、製造例1で得た微細セルロース繊維分散液(0.2質量%)5質量部を添加し、さらに10分間攪拌して混合液を得た。攪拌を停止して混合液を静置状態にした後、静置状態を保ったまま、1分かけてゆっくりとギ酸水溶液(ギ酸濃度:5質量%)を30部添加した。2時間静置した後、ゲル状物が得られたことを確認し、そのゲル状物を回収した。そして、そのゲル状物を、孔径0.45μmのセルロースアセテートメンブレンフィルター(アドバンテック社製「メンブレンフィルター」)を用いて、アスピレーターで吸引圧力が0.08MPa以上になるように濾過瓶を吸引して、ろ過して水分を除去し、さらに真空乾燥機を用いて110℃、3時間乾燥して、微細セルロース繊維複合体1を得た。
(比較例1)
実施例1において、攪拌機(新東科学社製、スリーワンモーター、攪拌翼直径:0.05m)を用いて100rpm(攪拌翼先端周速度0.26m/s)の条件で、混合液を攪拌しながらギ酸水溶液を添加してゲル状物を得た以外は実施例1と同様にして微細セルロース繊維複合体2を得た。
(比較例2)
実施例1において、ギ酸を添加して凝固させる工程、ゲル状物をろ過する工程を行わず、混合液を、真空乾燥機を用いて110℃、3時間乾燥させた以外は実施例1と同様にして微細セルロース繊維複合体3を得た。
(比較例3)
実施例1において、製造例1で得た微細セルロース繊維分散液を添加しない以外は実施例1と同様にして固形ゴム4を得た。
(比較例4)
比較例1において、製造例1で得た微細セルロース繊維分散液を添加しない以外は比較例1と同様にして固形ゴム5を得た。
各実施例及び各比較例における樹脂エマルションの固形分と微細セルロース繊維分散液の微細セルロース繊維量との比率、凝固条件については表1にも示す。
Figure 2014227525
<評価>
実施例1及び比較例1,2の微細セルロース繊維複合体は、以下のように評価した。
各例の微細セルロース複合体に下記のように添加剤を添加し、加硫して、加硫ゴム組成物からなる繊維強化材を作製し、その繊維強化材の機械的物性を測定した。
具体的には、各実施例の微細セルロース繊維複合体105質量部(ゴム成分:100質量部、微細セルロース繊維1:5質量部)に対し、亜鉛華(1号亜鉛華、浅岡窯業原料社製)3質量部、ステアリン酸(和光純薬工業社製)3質量部を配合した。次いで、これらを、140℃で3分間混練装置(ラボプラストミルμ、東洋精機社製)を用いて混練した。得られた混練物に、加硫促進剤(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、和光純薬工業社製)1質量部、硫黄(5質量%油処理粉末硫黄、鶴見化学工業社製)2質量部を添加し、80℃で3分間、上記と同じ混練装置を用いて混練することにより、ゴム組成物を得た。次いで、このゴム組成物を150℃で30分間加圧プレスして加硫して、厚さ1mmの繊維強化材を得た。
得られた繊維強化材から所定のダンベル形状の試験片を作製し、その試験片を用い、JIS K6251に準じた引張試験によって破断強度及びM300(伸びが300%のときの引張弾性率)を測定した。測定結果を表2に示す。
なお、表2における破断強度及びM300の数値は、比較例4の値を100とした相対的な指数である。指数が大きいほど、機械的物性に優れる。
比較例3,4の固形ゴムは、以下のように評価した。
すなわち、微細セルロース繊維複合体105質量部を固形ゴム100質量部に変更した以外は上記微細セルロース繊維複合体の評価と同様にして繊維強化材を得た。そして、上記微細セルロース繊維複合体の評価と同様に、繊維強化材の機械的物性を測定した。測定結果を表2に示す。
Figure 2014227525
実施例1の微細セルロース繊維複合材から得た繊維強化材は、弾性率及び破壊強度が高かった。これに対し、比較例1の微細セルロース繊維複合体から得た繊維強化材は、機械的物性が不充分であった。実施例1及び比較例1より、樹脂エマルションと微細セルロース繊維分散液を含む混合液を凝固する際に静置状態にして得た微細セルロース繊維複合体は、機械的物性に優れた繊維強化材を得るのに適していることが分かる。
比較例2の微細セルロース繊維複合体から得た繊維強化材は、機械的物性は優れるものの、微細セルロース繊維複合体の生産性が低かった。
比較例3,4の固形ゴムは微細セルロース繊維を含まないため、該固形ゴムから得た繊維強化材は、機械的物性は不充分であった。

Claims (3)

  1. 平均繊維幅が2〜1000nmの微細セルロース繊維を含む分散液と、樹脂エマルションとを混合して混合液を調製する混合工程と、
    前記混合液に凝固剤を添加して樹脂エマルションに含まれる樹脂を凝固させてゲル状物を得る凝固工程とを有し、
    前記凝固工程では、凝固剤の添加開始から、樹脂の凝固によってゲル状物が得られるまでの間、混合液を実質的な静置状態に保つ、微細セルロース繊維複合体の製造方法。
  2. 前記凝固工程の後に、ゲル状物を脱水する脱水工程を有する、請求項1に記載の微細セルロース繊維複合体の製造方法。
  3. 前記脱水工程の後に、脱水したゲル状物を乾燥する乾燥工程を有する、請求項2に記載の微細セルロース繊維複合体の製造方法。
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