JP6020334B2 - ゴム改質材、ゴムラテックス分散液及びゴム組成物 - Google Patents
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Description
本発明はまた、このゴム改質材を含むゴム改質材分散液、ゴムラテックス分散液、ゴム組成物及び加硫ゴム組成物に関する。
本発明はまた、高い弾性率、高い破壊強度を有し、低発熱性のゴム組成物及び加硫ゴム組成物を得ることができるゴム改質材を提供することを課題とする。
本発明のゴム改質材は、セルロース繊維からなるゴム改質材であって、該セルロース繊維の数平均繊維径が5〜35nmであることを特徴とする。
本発明のゴム改質材として用いるセルロース繊維は数平均繊維径が35nm以下であることを特徴とする。該セルロース繊維の数平均繊維径は好ましくは30nm以下、より好ましくは25nm以下、さらに好ましくは20nm以下、さらに好ましくは17nm以下、特に好ましくは15nm以下、最も好ましくは10nm以下である。また、該セルロース繊維の数平均繊維径は、5nm以上であり、6nm以上がより好ましく、7nm以上が特に好ましい。この範囲のセルロース繊維を使用することにより、本発明のゴム改質材を含むゴム組成物及び加硫ゴム組成物が高い弾性率、高い破壊強度、低いtanδをバランスよく発現することができる。
本発明において、セルロース繊維原料とは、下記に示すようなセルロース含有物から一般的な精製工程を経て不純物を除去したものである。
セルロース含有物としては、例えば、針葉樹や広葉樹等の木質(木粉等)、コットンリンターやコットンリント等のコットン、さとうきびや砂糖大根等の絞りかす、亜麻、ラミー、ジュート、ケナフ等の靭皮繊維、サイザル、パイナップル等の葉脈繊維、アバカ、バナナ等の葉柄繊維、ココナツヤシ等の果実繊維、竹等の茎幹繊維などの植物由来原料、バクテリアが産生するバクテリアセルロース、バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢等の天然セルロースが挙げられる。これらの天然セルロースは、結晶性が高いので低線膨張率、高弾性率になり好ましい。特に、植物由来原料から得られるセルロース繊維が好ましい。
さらには針葉樹や広葉樹等の木質も微細な繊維径のものが得られ、かつ地球上で最大量の生物資源であり、年間約700億トン以上ともいわれる量が生産されている持続型資源であることから、地球温暖化に影響する二酸化炭素削減への寄与も大きく、経済的な点から優位である。
セルロース繊維原料は上記セルロース含有物を通常の方法で精製して得られる。
例えば、ベンゼン−エタノールや炭酸ナトリウム水溶液で脱脂した後、亜塩素酸塩で脱リグニン処理を行い(ワイズ法)、アルカリで脱ヘミセルロース処理をすることにより得られる。また、ワイズ法の他に、過酢酸を用いる方法(pa法)、過酢酸過硫酸混合物を用いる方法(pxa法)なども精製方法として利用される。また、適宜、更に漂白処理等を行うものである。
すなわち、セルロース繊維原料としては、広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ、広葉樹漂白クラフトパルプ、針葉樹漂白クラフトパルプ、リンターパルプなどのパルプを用いてもよい。
本発明に係る数平均繊維径が5〜35nmの微細セルロース繊維は、上記セルロース繊維原料をそのまま解繊しても得られるが、解繊により数平均繊維径が5〜35nmの微細セルロース繊維を効率よく得るために前処理を行ってもよい。
前処理としては、セルロースの酸化処理、酵素処理などが挙げられる。
酸化処理を行うことにより、セルロース繊維を構成するセルロースに対し、カルボキシ基を導入することができる。
酸化処理の具体的な方法として特に制限はないが、酸化性を有するガス(以下「酸化性ガス」という)にセルロース繊維原料を接触させる方法や、酸化性化学種を含む溶液にセルロース繊維原料を懸濁または浸漬させる方法等が挙げられる。
オゾンを酸化性ガスとして用いる場合、オゾンの添加量は、セルロース繊維原料の乾燥質量に対して0.1〜1000重量%であることが好ましく、1〜100重量%がより好ましく、5〜50重量%であることがさらに好ましい。
追酸化処理に用いられる化学種としては、特に限定されるものではないが、亜塩素酸ナトリウムなどの亜塩素酸塩が挙げられる。具体的には、亜塩素酸ナトリウムの0.1〜5重量%水溶液を塩酸、酢酸などの酸を加えてpHを4〜5に調製した溶液に、上記酸化処理後のセルロース繊維原料を懸濁させ、一定時間、例えば1〜100時間保持することにより追酸化処理を行うことができる。この追酸化処理時の温度は、通常0℃〜100℃、好ましくは20℃〜80℃である。
本発明で用いるセルロース繊維は、酵素処理が施されたものであってもよい。
酵素処理は、セルロースのβ−1,4−グルコシド結合を加水分解によって開裂し、解重合を引き起こすセルラーゼ系酵素を用いて行われ、酵素処理によりセルロース繊維原料を解繊して繊維径、繊維長を小さくすることができる。
酵素処理は、通常、セルロース繊維原料の水分散液に対してセルラーゼ系酵素を添加することにより行われる。
本発明のゴム改質材に用いられるセルロース繊維は、セルロース繊維を構成するセルロースの水酸基の一部が他の基で置換された、変性セルロース繊維を含んでいてもよい。セルロース繊維の少なくとも一部が変性セルロース繊維であってもよいし、全部が変性セルロース繊維であってもよい。本発明のゴム改質材が変性セルロース繊維を含むことで、後工程におけるゴムとの複合化の際、ゴムとの親和性が上がり好ましい。
この他の基の導入はセルロース繊維原料に対して行ってもよいし、解繊処理後のセルロース繊維に対して行ってもよい。
イソシアネート基として具体的には、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等が挙げられる。
アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等が挙げられる。
以下に、本発明で用いる変性セルロース繊維として好適な、セルロース繊維を構成するセルロースの水酸基の一部がリン酸由来の基で置換され、リン酸由来の基が導入されたセルロース繊維(以下「リン酸セルロース繊維」と称す場合がある。)について説明する。
これら方法において、リン酸またはリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合または添加した後に、通常は脱水、加熱等を行う。
例えば、リン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムの2種類を混合してpH5〜7に調整したリン酸化試薬水溶液を調製し、このリン酸化試薬水溶液を湿潤状態のセルロース繊維原料に浸漬または混合後、130℃以下(特に好ましくは110℃以下)の温度で加温してセルロース繊維原料の水分を充分に除去し、さらに130〜170℃にて加熱する方法などが挙げられる。
次に、本発明で用いる変性セルロース繊維として好適な、セルロース繊維を構成するセルロースの水酸基の一部がカルボン酸由来の基で置換され、カルボン酸由来の基が導入されたセルロース繊維(以下「カルボン酸セルロース繊維」と称す場合がある。)について説明する。
これらのうち、工業的に適用しやすく、また、ガス化しやすいことから、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸が好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。即ち、カルボン酸セルロース繊維には2種以上のカルボン酸由来の基が導入されていてもよい。
変性セルロース繊維は、リン酸由来の基、カルボン酸由来の基等の他の基が、セルロース繊維に対して通常0.1〜2.0mmol/g導入されていることが好ましい。
変性セルロース繊維が、リン酸由来の基、カルボン酸由来の基等の他の基の2種以上を有する場合、これらの合計で、セルロース繊維に対し、通常0.1〜2.0mmol/g導入されていることが好ましい。
カルボン酸由来の基の導入量の算出方法については、TAPPI T237 cm−08(2008) を用いて算出した。具体的には、酸性基(ここではカルボキシ基)の導入数をより広範囲まで算出可能にするために、前記試験方法に用いる試験液のうち、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)/塩化ナトリウム(NaCl)=0.84g/5.85gを蒸留水で1000mlに溶解希釈した試験液について、前記試験液の濃度が実質的に4倍となるように、炭酸水素ナトリウム/塩化ナトリウム=3.36g/23.40gに変更し、さらに置換基導入前後のセルロース繊維における算出値の差を実質的な置換基導入量とした以外は、TAPPI T237 cm−08(2008) に準じて算出する。
リン酸由来の基のセルロースへの導入量については、TAPPI T237 cm−08(2008) を用いて算出した。具体的には、セルロースに導入されたリン酸由来の酸性基の導入量をより広範囲まで算出可能にするために、前記試験方法に用いる試験液のうち、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)/塩化ナトリウム(NaCl)=0.84g/5.85gを蒸留水で1000mlに溶解希釈した試験液を、水酸化ナトリウム1.60gを蒸留水で1000mlに溶解希釈した試験液に変更し、さらに置換基導入前後のセルロース繊維における算出値の差を実質的な置換基導入量(1価の酸性基)として、TAPPI T237 cm−08(2008) に準じて算出した。さらに多価の酸性基であるリン酸由来の基の導入量を算出するため、前記得られた置換基導入量を、リン酸由来の基の酸価数で除した数値を、リン酸由来の基の導入量とした。
前述のセルロース繊維原料を、解繊処理することにより、数平均繊維径が5〜35nmの微細セルロース繊維からなるゴム改質材を得ることができる。
本発明のゴム改質材は、通常、セルロース繊維の分散液(ゴム改質材分散液)として提供される。本発明のゴム改質材分散液は、セルロース繊維以外に分散媒を含み、該セルロース繊維と分散媒からなるものであってもよいし、その他、本発明の効果を損なわない範囲で添加剤等が含まれていてもよい。
なお、ゴム改質材分散液の分散媒として使用される溶媒は、後の工程で溶媒を除去する工程があることから沸点が高すぎないことが好ましい。溶媒の沸点は300℃以下が好ましく、200℃以下が好ましく、180℃以下が更に好ましい。また、取扱い性などの点から、70℃以上が好ましい。
本発明のゴムラテックス分散液は、本発明のゴム改質材とゴムラテックスとを含有するものであるが、本発明のゴムラテックス分散液の調製に際しては、前述のセルロース繊維原料をそのままゴムラテックスと混合させて、この混合液の中で解繊処理を行ってもよい。この場合、セルロース繊維原料が、ゴムラテックス中に分散された状態のものとなり、これをさらに解繊処理することで、高い分散性を有する、本発明のゴム改質材を含有する本発明のゴムラテックス分散液を得ることができる。
この場合の解繊処理について、以下に説明する。
なお、使用する有機溶媒が非水溶性の場合、水溶性の有機溶媒に一度置換した後、非水溶性の有機溶媒に置換してもよい。
また、セルロース繊維とゴムラテックスとを含有する本発明のゴムラテックス分散液を用いて得られる加硫工程後の加硫ゴム組成物中においては、セルロース繊維が加硫ゴム成分中に均一に分散し、高弾性率、低損失正接を示す。
本発明のゴム組成物は、本発明のゴム改質材とゴム成分とを含有することを特徴とする。通常、本発明のゴム組成物は、本発明のゴムラテックス分散液を用いて製造される。
本発明のゴム組成物は、本発明のゴムラテックス分散液を、例えば、基板上へ塗布して塗膜状としたり、型内に流し込んだり、或いは押し出し加工をして、必要に応じて、乾燥処理を施して、溶媒を除去して得られるものである。例えば、本発明のゴムラテックス分散液を用いて、ゴムラテックス中に分散したセルロース繊維から水分を除去し、必要な配合剤を加えてゴム組成物とし、混練りして、未加硫状態で所望の適用部材の形状に合わせて押し出し加工し、成形機上にて通常の方法により成形することにより、ゴム組成物を形成する。このゴム組成物を加硫機中で加熱加圧することにより、加硫ゴム組成物を得ることができる。かかる加硫ゴム組成物は、良好な耐久性を有する。
なお、本発明のゴム組成物の製造方法は、必要に応じて、以下詳述の複合化工程の前にゴム成分を添加する添加工程を備えていてもよい。
複合化工程では、ゴム組成物を加硫反応させることにより(加硫工程)、セルロース繊維と加硫ゴム成分とを含有する加硫ゴム組成物を得る。
本発明の加硫ゴム組成物は、本発明のゴムラテックス分散液から、必要に応じて溶媒を除去し、更にゴム成分と前述の各種配合剤を、ゴム用混練機等、公知の方法を用いて混合した後、成形して、公知の方法で加硫反応させることにより得られる。
加熱処理は複数回にわたって、温度・加熱時間を変更して実施してもよい。
本発明のゴム組成物または加硫ゴム組成物におけるセルロース繊維の含有量は目的に応じて適宜調整されるが、補強効果の点から、ゴム組成物または加硫ゴム組成物全量に対して、0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がさらに好ましく、次いで、30重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、5重量%以下の順でより好ましい。
本発明のゴム組成物または加硫ゴム組成物におけるゴム成分(固形分)の含有量は目的に応じて適宜調整されるが、補強効果の点から、ゴム組成物または加硫ゴム組成物全量に対して、10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上が好ましく、99重量%以下がより好ましく、95重量%以下がさらに好ましい。
本発明のゴム組成物または加硫ゴム組成物中に含まれるセルロース繊維とゴム成分との重量比は、本発明のゴムラテックス分散液におけるセルロース繊維とゴム成分との重量比と同じである。
セルロース繊維はゴム成分(固形分)100重量部に対して、通常1重量部以上、好ましくは3重量部以上、更に好ましくは5重量部以上、通常100重量部以下、好ましくは70重量部以下、更に好ましくは50重量部以下である。ゴム組成物または加硫ゴム組成物中のセルロース繊維量が少ないと補強効果が充分でなく、逆に多いとゴムの加工性が低下する。
また、本発明のゴム組成物または加硫ゴム組成物には、セルロース繊維、ゴム成分の他に、上述した従来ゴム工業で使用される他の配合剤を添加してもよい。
本発明のゴム組成物または加硫ゴム組成物は、セルロース繊維が凝集塊を作ることなくゴム成分または加硫ゴム成分中に安定に分散しており、セルロース繊維による補強効果によって、高い弾性率が達成されると同時に、繊維径が細いためにゴム本来の伸びが阻害されないことから、高い破断伸びおよび発熱性の低さが達成されると考えられる。
なお、本発明のゴム組成物または加硫ゴム組成物における、セルロース繊維の分散状態は、SEM等により断面構造を観察することにより確認することができる。
手法:原子間力顕微鏡法(タッピングモード)
探針:未修飾のSi製カンチレバー(NCH)
環境:室温・大気中(湿度50%程度)
装置:ブルカー社製DigitalInstrument NanoscopeIII
データサンプリング数:512×512ポイント
AFM像の種別:高さ像,位相像(繊維一つひとつを認識するため)
画像解析法:AFM観察像から繊維をトレースして、繊維を1本ずつ抽出し、
繊維1本の高さの最高値を繊維の太さとして計測した。
この計測値を平均して数平均繊維径とした。
リン酸二水素ナトリウム二水和物6.75g、リン酸水素二ナトリウム4.83gを19.62gの水に溶解させ、リン酸化試薬水溶液を得た。このリン酸化試薬水溶液のpHは25℃で6.0であった。
セルロース繊維原料として、針葉樹晒クラフトパルプ(王子製紙社製、水分50%、JIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700ml)を濃度4重量%になるように水を加えて、ダブルディスクリファイナーで変則CSF(平織り80メッシュ、パルプ採取量を0.3gとした以外はJIS P8121に準ずる)が250ml、平均繊維長が0.68mmになるまで叩解してパルプスラリーを得た。得られたパルプスラリーを0.3重量%に希釈した後、抄紙法により含水率90%のパルプシート(絶乾質量として3g、厚み200μm)を得た。このパルプシートを前記リン酸化試薬水溶液31.2g(乾燥パルプ100重量部に対してするリン元素量として80.2重量部)に浸漬させた後、105℃の送風乾燥機(ヤマト化学社製、DKM400)にて1時間乾燥処理し、さらに150℃の送風乾燥機(DKM400、前出)で1時間加熱処理して、セルロースにリン酸基を導入したパルプシートを得た。
尚、リン酸基の導入量は、0.59mmol/gであった(セルロース繊維1)。
セルロース繊維原料として、広葉樹クラフトパルプ(LBKP、王子製紙社製)を105℃で3時間乾燥させて水分3重量%以下の乾燥パルプを得た。次いで、乾燥パルプ100重量部に対して無水マレイン酸50重量部をオートクレーブに充填し、内温120〜135℃で2時間処理した。
次いで、無水マレイン酸で処理されたパルプを0.08Nの水酸化ナトリウム水溶液に添加し、スラリーのpHを12〜13として、パルプをアルカリ処理した。その後、pHが8以下になるまで、アルカリ処理後のパルプを水で洗浄および濾過脱水を繰り返して、最終的にマレイン酸セルロースを得た。
尚、マレイン酸基の導入量は、0.25mmol/gであった(セルロース繊維2)。
セルロース繊維原料として、広葉樹クラフトパルプ(LBKP、王子製紙社製)を105℃で3時間乾燥させて水分3重量%以下の乾燥パルプを得た。次いで、得られた乾燥パルプ4gと無水コハク酸4g(乾燥パルプ100重量部に対して100重量部)とをオートクレーブに充填し、150℃で2時間処理した。
次いで、無水コハク酸で処理されたパルプを500mlの水で洗浄および濾過脱水を3回繰り返した後、イオン交換水を添加して490mlのスラリーを調製した。
次いで、スラリーを攪拌しながら、4Nの水酸化ナトリウム水溶液10mlを少しずつ添加し、スラリーのpHを12〜13として、パルプをアルカリ処理した。その後、pHが8以下になるまで、アルカリ処理後のパルプを水で洗浄および濾過脱水を繰り返して、最終的にコハク酸セルロースを得た。
尚、コハク酸基の導入量は、0.32mmol/gであった(セルロース繊維3)。
セルロース繊維原料として針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP、王子製紙社製ベイマツ品)を用い、ナイアガラビーター(容量23リットル、東西精器社製)で200分間叩解し、パルプ分散液(パルプ濃度2重量%、叩解後の加重平均繊維長:1.61mm)を得た。
該パルプ分散液を脱水してパルプ濃度3重量%にし、0.1重量%硫酸でpH6に調整し、50℃になるまで水浴で温めた後、酵素(セルラーゼ、GC220、ジェネンコア社製)をパルプ(固形分換算)に対して1重量%添加し、50℃で2時間撹拌しながら反応させた。その後、95℃以上で20分間加熱して、酵素を失活させて酵素処理されたセルロース繊維を得た(セルロース繊維4)。
セルロース繊維原料として広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP、王子製紙社製ベイマツ品)を固形分濃度が4.5重量%となるように水で希釈したものを6L調製し、回転式高速ホモジナイザー(エム・テクニック社製クレアミックス2.2S)で3時間連続処理し、その後、0.1重量%硫酸でpH6に調整し、50℃になるまで水浴で温めた後、酵素(セルラーゼ、GC220、ジェネンコア社製)をパルプ(固形分換算)に対して1重量%添加し、50℃で1時間撹拌しながら反応させた。その後、95℃以上で20分間加熱して、酵素を失活させて酵素処理されたセルロース繊維を得た。
これをパルプ乾燥重量として20g及び空気2Lを加えた後、オゾン濃度200g/m3のオゾン/酸素混合気体を15L加え、25℃で2分間振とう、及び6時間静置を順次行った後、容器内のオゾン及び空気を除去してオゾン処理(酸化処理)を行った。この操作を2回行い、イオン交換水で十分に洗浄/脱水してオゾン処理したセルロース繊維を得た。
このオゾン処理後のセルロース繊維(固形分濃度20重量%)に対して、塩酸により水溶液pHを4〜5に調整した0.2重量%濃度の亜塩素酸ナトリウム水溶液を200g(セルロース繊維の乾燥重量に対して、亜塩素酸ナトリウムとして3重量%相当)添加して、撹拌した後、室温で48時間静置した。これをイオン交換水で懸濁洗浄を繰り返し行うことにより、カルボキシ基が導入されたセルロース繊維を得た。このセルロース繊維のカルボキシ基量は0.41mmol/gであった(セルロース繊維5)。
製造例1で得られたセルロース繊維1を固形分濃度が0.5重量%となるように水で希釈し、回転式高速ホモジナイザー(エム・テクニック社製クレアミックス0.8S)にて20000rpmで60分処理し、セルロース繊維の解繊処理を行いナノ繊維化されたセルロース繊維1(ゴム改質材1)のスラリーを得た。ナノ繊維化されたセルロース繊維1の繊維径を測定したところ、数平均繊維径は5.4nmであった。
詳細には、ゴム組成物1に対し、加硫促進剤と硫黄を除く成分を添加し、140℃で3分間混練装置(ラボプラストミルμ、東洋精機社製)を用い混練することによりゴム組成物2を得た。このゴム組成物2に加硫促進剤と硫黄を添加し、80℃で3分間混練することによりゴム組成物3を得た。このゴム組成物3を160℃で10分間加圧プレス加硫し、厚さ1mmのゴム組成物4(加硫ゴム組成物)を得た。
得られた加硫ゴム組成物を所定のダンベル形状の試験片にし、破断強度、M300、tanδを評価した。
破断強度およびM300は、JIS K6251に準じた引っ張り試験により、加硫ゴム組成物の破断強度および300%伸長時の引張り応力を測定し、天然ゴムのみの比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど補強性に優れることを示す。
tanδは、JIS K6394に準じて、温度70℃、周波数10Hz、静歪み10%、動歪み2%の条件で損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が小さいほどtanδが小さく、発熱しにくいこと、即ち低発熱性に優れる(エネルギーロスが小さい)ことを示す。
この加硫ゴム組成物の破壊強度は179、M300は404、tanδは235であった。
製造例3で得られたセルロース繊維3を固形分濃度が0.6重量%となるように水で希釈し、回転式高速ホモジナイザー(エム・テクニック社製クレアミックス0.8S)にて20000rpmで60分処理し、セルロース繊維の解繊処理を行った。次に、遠心分離機にて12000Gで10分間遠心分離して上澄み液を採取し、0.5重量%のナノ繊維化されたセルロース繊維3のスラリー(ゴム改質材2)を得た。ナノ繊維化されたセルロース繊維3の繊維径を測定したところ、数平均繊維径は5.5nmであった。
ゴム改質材として、このゴム改質材2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ゴムラテックス分散液、ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得た。ゴムラテックス分散液及び加硫ゴム組成物中のゴム改質材2の分散性を、目視で評価した結果、いずれも分散性は良好であった。
また、実施例1と同様に加硫ゴム組成物の破断強度、M300、tanδを評価したところ、この加硫ゴム組成物の破壊強度は148、M300は304、tanδは257であった。
セルロース繊維3の代りに、セルロース繊維として、広葉樹クラフトパルプ(LBKP、王子製紙社製)を用いた以外は、実施例2と同様にして、ゴム改質材3を得た。ナノ繊維化されたセルロース繊維の繊維径を測定したところ、数平均繊維径は16nmであった。
ゴム改質材として、このゴム改質材3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ゴムラテックス分散液、ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得た。ゴムラテックス分散液及び加硫ゴム組成物中のゴム改質材3の分散性を、目視で評価した結果、いずれも分散性は良好であった。
また、実施例1と同様に加硫ゴム組成物の破断強度、M300、tanδを評価したところ、この加硫ゴム組成物の破壊強度は210、M300は348、tanδは170であった。
製造例4で得られたセルロース繊維4を固形分濃度が4.8重量%となるように水で希釈したものを6L調製し、回転式高速ホモジナイザー(エム・テクニック社製クレアミックス2.2S)にて20000rpmで3時間連続処理し、さらに、固形分濃度0.9重量%となるように水で希釈したもの6Lを9時間連続処理し、セルロース繊維の解繊処理を行った。次に、遠心分離機にて12000Gで10分間遠心分離して上澄み液を回収し、ナノ繊維化されたセルロース繊維4のスラリー(ゴム改質材4)を得た。ナノ繊維化されたセルロース繊維4の繊維径を測定したところ、数平均繊維径は7.9nmであった。
ゴム改質材として、このゴム改質材4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ゴムラテックス分散液、ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得た。ゴムラテックス分散液及び加硫ゴム組成物中のゴム改質材4の分散性を、目視で評価した結果、いずれも分散性は良好であった。
また、実施例1と同様に加硫ゴム組成物の破断強度、M300、tanδを評価したところ、この加硫ゴム組成物の破壊強度は252、M300は338、tanδは146であった。
製造例4で得られたセルロース繊維4を固形分濃度が3重量%となるように水で希釈したものを4L調製し、ホモディスパー(プライミクス社製)を用いて4時間処理し、続いて、回転式高速ホモジナイザー(エム・テクニック社製クレアミックス2.2S)にて20000rpmで5時間連続処理し、セルロース繊維の解繊処理を行った。さらに、固形分濃度0.5重量%に希釈したものを12000Gで連続遠心分離して上澄み液を回収し、ナノ繊維化されたセルロース繊維4のスラリー(ゴム改質材5)を得た。ナノ繊維化されたセルロース繊維4の繊維径を測定したところ、数平均繊維径は18nmであった。
ゴム改質材として、このゴム改質材5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ゴムラテックス分散液、ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得た。ゴムラテックス分散液及び加硫ゴム組成物中のゴム改質材5の分散性を、目視で評価した結果、いずれも分散性は良好であった。
また、実施例1と同様に加硫ゴム組成物の破断強度、M300、tanδを評価したところ、この加硫ゴム組成物の破壊強度は219、M300は269、tanδは142であった。
セルロース繊維3の代りに、セルロース繊維5を用いた以外は、実施例2と同様にして、ゴム改質材6を得た。ナノ繊維化されたセルロース繊維の繊維径を測定したところ、数平均繊維径は、7.1nmであった。
ゴム改質材として、このゴム改質材6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ゴムラテックス分散液、ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得た。ゴムラテックス分散液及び加硫ゴム組成物中のゴム改質材6の分散性を、目視で評価した結果、いずれも分散性は良好であった。
また、実施例1と同様に加硫ゴム組成物の破断強度、M300、tanδを評価したところ、この加硫ゴム組成物の破壊強度は250、M300は304、tanδは132であった。
セルロース繊維を用いなかった以外は、実施例1と同様の方法で、加硫ゴム組成物を得、同様に破断強度、M300、tanδを測定し、破断強度、M300、tanδの測定値をそれぞれ100とした。
製造例2で得られたセルロース繊維2を用いた以外は、実施例2と同様にして、ゴム改質材7を得た。ナノ繊維化されたセルロース繊維2の繊維径を測定したところ、数平均繊維径は4.2nmであった。
ゴム改質材としてこのゴム改質材7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ゴムラテックス分散液、ゴム組成物および加硫ゴム組成物を得た。
実施例1と同様に加硫ゴム組成物の破断強度、M300、tanδを評価したところ、この加硫ゴム組成物の破壊強度は185、M300は260、tanδは239であった。
また、本発明のゴム改質材1〜6を用いた実施例1〜6の加硫ゴム組成物と、比較例2の加硫ゴム組成物を比べると、セルロース繊維の繊維径を5nm〜35nmにすることで、高い弾性率、高い破壊強度、低いtanδをバランスよく発現できることが分かる。
Claims (5)
- セルロース繊維からなるゴム改質材であって、
該セルロース繊維の少なくとも一部として、セルロース繊維を構成するセルロースの水酸基の一部が他の基で置換された変性セルロース繊維を含み、
数平均繊維径が5〜35nmであることを特徴とする、ゴム改質材。 - 請求項1に記載のゴム改質材及び分散媒を含有することを特徴とする、ゴム改質材分散液。
- 請求項1に記載のゴム改質材とゴムラテックスを含有することを特徴とする、ゴムラテックス分散液。
- 請求項1に記載のゴム改質材とゴム成分とを含有することを特徴とする、ゴム組成物。
- 請求項4に記載のゴム組成物を加硫して製造される、加硫ゴム組成物。
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