JP2014074164A - ゴム改質材、ゴムラテックス分散液、及びゴム組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セルロース繊維からなるゴム改質材であって、該セルロース繊維が、1g当たりの表面積が50m2以上の変性セルロース繊維であるゴム改質材、該ゴム改質材を含有するゴム改質材分散液、該ゴム改質材とゴムラテックスとを含有するゴムラテックス分散液、該ゴム改質材とゴムとを含有するゴム組成物、及び該ゴムラテックス分散液を用いて製造されたゴム組成物。本発明のゴム改質材によれば、高い弾性率、高い破壊強度、低発熱性のゴム組成物を得ることができる。
【選択図】なし
Description
本発明はまた、このゴム改質材を含むゴム改質材分散液、ゴムラテックス分散液、及びゴム組成物に関する。
本発明はまた、高い弾性率、高い破壊強度を有し、低発熱性のゴム組成物を得ることができるゴム改質材を提供することを課題とする。
本発明のゴム改質材は、セルロース繊維からなるゴム改質材であって、該セルロース繊維が、1g当たりの表面積が50m2以上の変性セルロース繊維であることを特徴とする。
本発明のゴム改質材として用いるセルロース繊維は、1g当たりの表面積が50m2以上の変性セルロース繊維であることを特徴とする。
本発明で用いる変性セルロース繊維の表面積を上記の範囲に調整する方法としては特に制限はなく、いずれの方法で表面積を調整してもよい。例えば、後述するセルロース繊維原料に対して解繊処理を行って表面積を調整してもよいし、該セルロース繊維原料をゴムラテックス中に分散させた状態で解繊処理を行って表面積を調整してもよい。また、セルロース繊維の表面を酸やアルカリで処理して非晶部分を除去するようなエッチング方法を用いて、表面積を調整してもよい。
本発明で用いる変性セルロース繊維の数平均繊維径は好ましくは50nm以下、より好ましくは35nm以下、さらに好ましくは20nm以下、特に好ましくは10nm以下である。また、該変性セルロース繊維の数平均繊維径は、小さい程好ましいが、高い補強効果を発現するためには、セルロースの結晶性を維持することが重要であり、2nm以上が好ましく、実質的にはセルロース結晶単位の繊維径である4nm以上であることがより好ましい。変性セルロース繊維の平均繊維径が上記の下限値未満の場合は、セルロースのI型結晶構造が維持できず、繊維自体の強度や弾性率が低下し、補強効果が得られ難い。また、変性セルロース繊維の平均繊維径が上記上限値を超える場合はゴムとの接触面積が小さくなるため、補強効果が小さくなる。
本発明で用いる変性セルロース繊維の数平均繊維長は、好ましくは100nm以上、より好ましくは200nm以上、更に好ましくは300nm以上であり、また、好ましくは10,000nm以下、より好ましくは5,000nm以下、更に好ましくは2,000nm以下である。
変性セルロース繊維の数平均繊維長が長過ぎると繊維自身が絡まりあい、ゴム中での分散性が低下する、短過ぎると補強効果が低下する恐れがある。
本発明で用いるセルロース繊維は、変性セルロース繊維であることを特徴とする。変性セルロース繊維とは、セルロースの有する水酸基やヒドロキシメチル基などの基が、他の基に置き換わっているもの(置換されているもの)をいう。変性セルロースを用いることにより、ゴムとの親和性が向上するなどの効果を得ることができる。
該イソシアネート基として具体的には、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等が挙げられる。
該アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等が挙げられる。
該脂環式化合物由来の基として具体的には、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基、チエタン基等が挙げられる。
該リン酸由来の基として具体的には、リン酸基、亜リン酸基、ホスホン酸基、ポリリン酸基、及びポリホスホン酸基等が挙げられる。
該カルボン酸由来の基としては、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸、ピロメリット酸、1,2−シクロヘキサンカルボン酸等のジカルボン酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸、無水ピロメリット酸、無水1,2−シクロヘキサンカルボン酸、酸無水物のイミド化物、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等を反応させてなる基が挙げられる。
本発明で用いる特定の表面積を有する変性セルロース繊維の製造方法には特に制限はなく、以下のセルロース繊維原料を用いてセルロース繊維を製造するに際し、任意の過程で表面積の調整と前述の他の基の導入を行って製造することができる。
本発明において、セルロース繊維原料としては、下記に示すようなセルロース含有物から一般的な精製工程を経て不純物を除去したものが挙げられる。
セルロース含有物としては、例えば、針葉樹や広葉樹等の木質(木粉等)、コットンリンターやコットンリント等のコットン、さとうきびや砂糖大根等の絞りかす、亜麻、ラミー、ジュート、ケナフ等の靭皮繊維、サイザル、パイナップル等の葉脈繊維、アバカ、バナナ等の葉柄繊維、ココナツヤシ等の果実繊維、竹等の茎幹繊維などの植物由来原料、バクテリアが産生するバクテリアセルロース、バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢等の天然セルロースが挙げられる。これらの天然セルロースは、結晶性が高いので低線膨張率、高弾性率になり好ましい。特に、植物由来原料から得られるセルロース繊維が好ましい。針葉樹や広葉樹等の木質は微細な繊維が得られ、かつ地球上で最大量の生物資源であり、年間約700億トン以上ともいわれる量が生産されている持続型資源であることから、地球温暖化に影響する二酸化炭素削減への寄与も大きく、経済的な点から優位である。
その他、セルロース繊維原料としては、広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ、広葉樹漂白クラフトパルプ、針葉樹漂白クラフトパルプ、リンターパルプなどのパルプを用いてもよい。
セルロース繊維原料のセルロース成分は結晶性のα−セルロース成分と非結晶性のヘミセルロース成分に分類できる。結晶性のα−セルロース含有率が多い方が、ゴム組成物とした際に低線膨張係数、高弾性率、高強度の効果が得られやすいため好ましい。セルロース繊維原料のα−セルロース含有率は好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは75重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
セルロース繊維原料の繊維径は特に制限されるものではないが、通常、数平均繊維径としては1μmから1mmである。一般的な精製を経たものは50μm程度である。
変性セルロース繊維を製造するには、例えば、セルロースに対し、化学的または物理的処理により、セルロースの水酸基に他の基を導入する方法が挙げられる。この他の基の導入はセルロース繊維原料に対して行ってもよいし、解繊処理後のセルロース繊維に対して行ってもよい。
酸化剤溶液における溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよいが、極性溶媒(水、アルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒がより好ましい。
本発明に係るセルロース繊維は、前記セルロース繊維原料をそのまま解繊しても得られるが、解繊により微細なセルロース繊維を効率よく得るために前処理を行ってもよい。
前処理としては、セルロースの酸化処理、酵素処理などが挙げられる。
前述のセルロース繊維原料に、細かく繊維を裂く解繊処理を施すことにより、新たな表面を作り出し、表面積を増大させて、1g当たりの表面積が50m2以上の変性セルロース繊維である本発明のゴム改質材を得ることができる。
セルロース繊維にカルボキシ基やアミノ基などの電荷を有する官能基がある場合は、同一電荷による反発力により、より少ないエネルギーでセルロース繊維を解繊して、表面積を増大させることができるので好ましく利用することができる。
本発明のゴム改質材分散液は、本発明のゴム改質材が分散媒中に分散したものである。
なお、この分散液中には、各種添加剤が含まれていてもよい。
本発明のゴムラテックス分散液は、本発明のゴム改質材とゴムラテックスとを含有するものである。
この場合の解繊処理について、以下に説明する。
なお、使用する有機溶媒が非水溶性の場合、水溶性の有機溶媒に一度置換した後、非水溶性の有機溶媒に置換してもよい。
また、変性セルロース繊維とゴムラテックスとを含有する本発明のゴムラテックス分散液を用いて得られる加硫工程後の複合体中においては、変性セルロース繊維が加硫ゴム成分中に均一に分散し、高弾性率、低損失正接を示す。
本発明のゴム組成物は、本発明のゴム改質材とゴムとを含有することを特徴とする。または、本発明のゴム組成物は、本発明のゴムラテックス分散液を用いて製造される。本発明のゴム組成物は加硫前のものであっても加硫後のものであってもよい。
なお、本発明のゴム組成物の製造方法は、必要に応じて、以下詳述の複合化工程の前にゴム成分を添加する添加工程を備えていてもよい。
複合化工程では、ゴムラテックス分散液を加硫反応させることにより(加硫工程)、変性セルロース繊維と加硫ゴム成分とを含有するゴム組成物を得る。
本発明のゴム組成物は、本発明のゴムラテックス分散液から、必要に応じて溶媒を除去し、更にゴム成分と前述の各種配合剤を、ゴム用混練機等、公知の方法を用いて混合した後、成形して、公知の方法で加硫反応させることにより得られる。
加熱処理は複数回にわたって、温度・加熱時間を変更して実施してもよい。
本発明のゴム組成物における変性セルロース繊維の含有量は目的に応じて適宜調整されるが、補強効果の点から、ゴム組成物全量に対して、0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましい。
本発明のゴム組成物中に含まれる変性セルロース繊維とゴム成分との重量比は、本発明のゴムラテックス分散液における変性セルロース繊維とゴム成分との重量比と同じである。
変性セルロース繊維はゴム成分100重量部に対して、通常0.5重量部以上、好ましくは1重量部以上、より好ましくは3重量部以上、更に好ましくは5重量部以上、通常100重量部以下、好ましくは70重量部以下、更に好ましくは50重量部以下である。ゴム組成物中の変性セルロース繊維量が少ないと補強効果が充分でなく、逆に多いとゴムの加工性が低下する。
本発明のゴム組成物は、変性セルロース繊維が凝集塊を作ることなくゴム成分中に安定に分散しており、変性セルロース繊維による補強効果によって、高い弾性率が達成されると同時に、ゴム本来の伸びが阻害されないことから、高い破断伸び及び発熱性の低さが達成されると考えられる。
なお、本発明のゴム組成物における、変性セルロース繊維の分散状態は、SEM等により断面構造を観察することにより確認することができる。
数平均繊維径及び数平均繊維長は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて以下のようにして測定した。
手法:原子間力顕微鏡法(タッピングモード)
探針:未修飾のSi製カンチレバー(NCH)
環境:室温・大気中(湿度50%程度)
装置:ブルカー社製DigitalInstrument NanoscopeIII
データサンプリング数:512×512ポイント
AFM像の種別:高さ像,位相像(繊維を1本ずつ認識するため)
画像解析法:AFM観察像から繊維をトレースして、繊維を1本ずつ抽出し、
繊維1本の高さの最高値を繊維の太さとして計測した。
この計測値を平均して数平均繊維径とした。
また、数平均繊維長については観察画像から測長した。
容器にセルロース繊維原料として広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP、王子製紙社製:水分30%、フリーネス600mLcsf)をパルプ乾燥重量として20g及び空気2Lを加えた後、オゾン濃度200g/m3のオゾン/酸素混合気体を15L加え、25℃で2分間振とう、及び6時間静置を順次行った後、容器内のオゾン及び空気を除去してオゾン処理を行った。この操作を2回行い、イオン交換水で十分に洗浄/脱水してオゾン処理したセルロース繊維を得た。
得られたオゾン処理後のセルロース繊維(固形分濃度20重量%)に対して、塩酸により水溶液pHを4〜5に調整した0.2重量%濃度の亜塩素酸ナトリウム水溶液を200g(セルロース繊維の乾燥重量に対して、亜塩素酸ナトリウムとして3重量%相当)添加して、70℃で3時間処理してカルボキシ基を導入したセルロース繊維原料を得た。得られた繊維のカルボキシ基量は0.438mmol/gであった(セルロース繊維1)。
カルボキシ基量は、米国TAPPIの「Test Method T237 cm−08(2008):Carboxyl Content of pulp」の方法に従って定量した。この時、測定試料とする絶乾セルロース繊維は、加熱乾燥で起こりうる加熱によるセルロースの変質を避けるため、凍結乾燥により得たものを使用した。
製造例1で得られたセルロース繊維1を固形分濃度が0.6重量%となるように水で希釈し、回転式高速ホモジナイザー(エム・テクニック社製クレアミックス0.8S)にて20000rpmで60分処理し、セルロース繊維の解繊を行った。次に、遠心分離機にて12000Gで10分間遠心分離して上澄み液を採取し、0.5質量%のセルロース繊維1(ゴム改質材1)の分散液を得た。解繊によりナノ繊維化されたセルロース繊維1の数平均繊維径は8nm、数平均繊維長は360nmで、1g当たりの比表面積は333m2であった。
詳細には、ゴム組成物1に対し、加硫促進剤と硫黄を除く成分を添加し、140℃で3分間混練装置(ラボプラストミルμ、東洋精機社製)を用い混練することによりゴム組成物2を得た。このゴム組成物2に加硫促進剤と硫黄を添加し、80℃で3分間混練することによりゴム組成物3を得た。このゴム組成物3を160℃で10分間加圧プレス加硫し、厚さ1mmのゴム組成物4(加硫ゴム組成物)を得た。
破断強度及びM300は、JIS K6251に準じた引っ張り試験により、各加硫ゴム組成物の破断強度及び300%伸長時の引張り応力を測定し、天然ゴムのみの比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど補強性に優れることを示す。
この加硫ゴム組成物の破壊強度は171、M300は292であった。
セルロース繊維(ゴム改質材)を用いなかった以外は、実施例1と同様の方法で、加硫ゴム組成物を得、同様に破断強度、M300を測定し、破断強度、M300の測定値をそれぞれ100とした。
この結果は、本発明のゴム改質材のセルロース繊維が非常に広大な表面積を持つと共に変性されているため、ゴムとの相互作用が強大になることによるものと考えられる。
Claims (6)
- セルロース繊維からなるゴム改質材であって、
該セルロース繊維は、1g当たりの表面積が50m2以上の変性セルロース繊維であることを特徴とする、ゴム改質材。 - 該セルロース繊維の数平均繊維径が50nm以下である、請求項1に記載のゴム改質材。
- 請求項1または2に記載のゴム改質材を含む、ゴム改質材分散液。
- 請求項1または2に記載のゴム改質材とゴムラテックスとを含有する、ゴムラテックス分散液。
- 請求項1または2に記載のゴム改質材とゴムとを含有することを特徴とする、ゴム組成物。
- 請求項4に記載のゴムラテックス分散液を用いて製造された、ゴム組成物。
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