JP5884722B2 - 微細セルロース繊維分散液の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、微細セルロース繊維分散液の製造方法に関する。詳しくは、カーボンブラックの存在下にてセルロース繊維の解繊を行う、微細セルロース繊維分散液の製造方法に関する。
本発明はまた、この微細セルロース繊維分散液の製造方法より得られる微細セルロース繊維分散液と、この微細セルロース繊維分散液を用いて製造される微細セルロース繊維含有ゴム組成物、及び該微細セルロース繊維含有ゴム組成物を加硫して得られる微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物に関する。
ゴムに対し、繊維や無機化合物などの補強剤を配合して得られるゴム組成物、ひいてはこれを用いたゴム製品の物性を改良する技術については、これまでに種々提案がなされてきているが、いずれも十分なものではなかった。
例えば、ゴムの高強度化や、ロスの低減を図るために、ゴム成分中に繊維やカーボンブラックなどの無機化合物等の補強剤を配合することは有効な技術であるが、これらの補強剤の配合で、その配合効果を十分に得るためには、これらの補強剤をゴム成分中に均一に分散させることが必要である。しかし、ゴムと繊維と無機化合物を複合させる際には、混合工程やゴムの混練工程において繊維同士が凝集してしまいやすく、無機化合物も均一に分散させることは困難である。
そのため、これらの諸問題を解決して、ゴム組成物の補強性をより一層向上させるための技術の確立が求められている。
特許文献1には、微細繊維状のセルロース繊維などのフィブリル化された繊維の水分散液に、平均粒径2〜200nmの無機充填剤であるナノフィラーを、繊維重量の0.1〜0.5倍の量にて混合し、乾燥させて、フィブリル化繊維とナノフィラーとの複合体を得るゴム用補強剤の製造方法が開示されている。
しかしながら、予め微細化されたセルロース繊維の水分散液に無機充填剤のナノフィラーを混合して得られる微細セルロース繊維/ナノフィラー含有水分散液を用いたものでは、やはり繊維の凝集や無機充填剤の分散不良の問題があり、ゴムの補強剤として破断強度や破断伸度等の面で十分な補強効果は得られない。
特開2011−102451号公報
本発明は、微細セルロース繊維とカーボンブラックとゴム成分とを含有する微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物において、高い破断強度及び高い破断伸度を有する微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物を実現し得る微細セルロース繊維分散液を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、セルロース繊維とカーボンブラックとを含有する分散液中でセルロース繊維の解繊処理を施すことにより、高い破断強度及び高い破断伸度を有する微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物を実現し得る微細セルロース繊維分散液を製造することができることが分かり、本発明に到達した。
即ち、本発明は、微細セルロース繊維とカーボンブラックとを含有する微細セルロース繊維分散液の製造方法であって、セルロース繊維とカーボンブラックとを含有する原料分散液中で、高速回転ホモジナイザーにより、周速15m/s以上で、セルロース繊維を解繊する工程を有することを特徴とする、微細セルロース繊維分散液の製造方法、該製造方法より製造されたゴム成分を含有する該微細セルロース繊維分散液から分散媒を除去する、微細セルロース繊維含有組成物の製造方法、該製造方法により製造された微細セルロース繊維含有組成物を加硫する、微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物の製造方法、に存する。
本発明によれば、高い破断強度及び高い破断伸度を有する微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物を提供することができる。
以下に本発明の微細セルロース繊維分散液及びその製造方法、微細セルロース繊維含有ゴム組成物、並びに微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物について詳述する。
[I.微細セルロース繊維分散液の製造方法]
本発明の微細セルロース繊維分散液の製造方法は、微細セルロース繊維とカーボンブラックとを含有する微細セルロース繊維分散液の製造方法であって、セルロース繊維とカーボンブラックとを含有する原料分散液中でセルロース繊維を解繊する解繊工程を有することを特徴とする。
本発明では、このように、カーボンブラックの存在下にカーボンブラックと共に、セルロース繊維に対して解繊処理を施すことにより、セルロース繊維が微細化されると共に、カーボンブラック粒子も更に細かく分散され、細かく分散されたカーボンブラックと微細セルロース繊維との各々が凝集したり偏在したりすることなく、分散液中で均一に分散した微細セルロース繊維分散液を得ることができ、この微細セルロース繊維分散液を用いて、破断強度及び破断伸度が著しく改善された微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物を得ることができる。
まず、本発明において使用される材料(セルロース繊維、カーボンブラック、ゴム成分など)について詳述する。
<セルロース繊維>
本発明で使用されるセルロース繊維は、微細セルロース繊維の原料となる材料であり、セルロースを含有する物質(セルロース含有物)またはセルロース含有物の精製等を経たもの(セルロース繊維原料)であればその種類は特に限定はされない。セルロース繊維として、セルロースを使用してもよいし、不純物を一部含むセルロースを使用してもよい。なかでも、本発明で使用されるセルロース繊維は、セルロース含有物から精製を経て不純物を除去されたものであることが好ましい。
(セルロース含有物)
セルロース含有物としては、例えば、針葉樹や広葉樹等の木質、コットンリンターやコットンリント等のコットン、さとうきびや砂糖大根等の絞りかす、亜麻、ラミー、ジュート、ケナフ等の靭皮繊維、サイザル、パイナップル等の葉脈繊維、アバカ、バナナ等の葉柄繊維、ココナツヤシ等の果実繊維、竹等の茎幹繊維などの植物由来原料、バクテリアが産生するバクテリアセルロース、バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢等の天然セルロースが挙げられる。これらの天然セルロースは、結晶性が高いので低線膨張率、高弾性率になり好ましい。特に、植物由来原料から得られるセルロース繊維が好ましい。木質を本発明のセルロース繊維として使用する場合は、木材チップや木粉などの状態に切断ないし破砕して用いることが好ましい。この場合、セルロース含有物の切断ないし破砕は、精製処理前、処理の途中、精製処理後のいずれのタイミングで行ってもかまわない。
(精製方法)
本発明においては、必要に応じて上記のセルロース含有物に精製処理を施して(精製工程)、セルロース含有物中のセルロース以外の物質、例えば、リグニンやヘミセルロース、樹脂(ヤニ)などを除去して用いる。
セルロース含有物の精製方法は特に制限されないが、例えば、脱脂処理、脱リグニン処理、脱ヘミセルロース処理などが挙げられる。一例としては、セルロース含有物をベンゼン−エタノールで脱脂処理した後、ワイズ法で脱リグニン処理を行い、アルカリで脱ヘミセルロース処理を行う方法が挙げられる。
また、脱リグニン処理としては、上記ワイズ法の他に、過酢酸を用いる方法(pa法)、過酢酸過硫酸混合物を用いる方法(pxa法)なども利用される。
また、必要に応じて、塩素、オゾン、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、二酸化塩素などで漂白処理を行ってもよい。
また、精製方法としては、一般的な化学パルプの製造方法、例えば、クラフトパルプ、サリファイドパルプ、アルカリパルプ、硝酸パルプの製造方法も挙げられる。また、セルロース含有物を蒸解釜で加熱処理して脱リグニン等の処理を行い、更に漂白処理等を行う方法も挙げられる。
精製処理には、分散媒として一般的に水が用いられるが、酸または塩基、その他の処理剤の水溶液であってもよく、この場合には、最終的に水で洗浄処理してもよい。
セルロース含有物の精製処理には、通常、酸または塩基、その他の処理剤を用いるが、その種類は特に限定されない。処理剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、硫化ナトリウム、硫化マグネシウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酢酸、シュウ酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、二酸化塩素、塩素、過塩素酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、過酸化水素、オゾン、ハイドロサルファイト、アントラキノン、ジヒドロジヒドロキシアントラセン、テトラヒドロアントラキノン、アントラヒドロキノン、また、エタノール、メタノール、2−プロパノールなどのアルコール類及びアセトンなどの水溶性有機溶媒などが挙げられる。これらの処理剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、2種以上の処理剤を用いて、2以上の精製処理を行うこともでき、その場合、異なる処理剤を用いた精製処理間で、水で洗浄処理することが好ましい。
精製処理時の温度、圧力は特に制限はなく、温度は0℃以上100℃以下の範囲で選択されることが好ましく、1気圧を超える加圧下での処理の場合、温度は100℃以上200℃以下とすることが好ましい。
セルロース含有物を精製して得られたセルロース繊維は、通常、含水状態(水分散液)として得られる。セルロース含有物を精製して得られたセルロース繊維を以下セルロース繊維原料ということがある。
セルロース繊維原料としては、広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ、広葉樹漂白クラフトパルプ、針葉樹漂白クラフトパルプ、リンターパルプなどを用いてもよい。
(繊維径)
本発明に用いられるセルロース繊維は、上記セルロース含有物を精製処理や、切断、破砕等を行うことにより、下記範囲の大きさとして用いることが好ましい。例えば、セルロース含有物のチップ等の数cm大のものを使用する場合、リファイナーやビーター等の離解機で機械的処理を行い、数mm程度にすることが好ましい。前述の如く、セルロース含有物の切断ないし破砕は、セルロース含有物の精製などの処理を行う場合、その処理前、処理中、処理後のいずれの時期に行ってもよい。例えば、精製処理前であれば衝撃式粉砕機や剪断式粉砕機などを用い、また精製処理中、処理後であればリファイナーなどを用いて行うことができる。
本発明において、解繊処理が施されるセルロース繊維(通常、セルロース繊維原料)の繊維径は特に制限されるものではなく、後述する解繊処理時の解繊効率、及び取扱い性の点から、数平均繊維径としては1μm〜1000μmであることが好ましく、5μm〜500μmであることがより好ましい。通常、一般的な精製を経たセルロース繊維原料の平均繊維径は数百μm程度、好ましくは50〜500μm程度である。
なお、数平均繊維径の測定方法は特に限定されず、例えば、走査型電子顕微鏡(以下SEM)や透過型電子顕微鏡(以下TEM)等で観察して、写真の対角線に線を引き、その近傍にある繊維をランダムに12点抽出し、最も太い繊維と最も細い繊維を除去した10点の測定値を平均して求めることができる。
(酸化処理)
酸化処理等を行うことにより、セルロース繊維を構成するセルロースに対し、カルボキシ基を導入してもよい。
酸化処理の具体的な方法として特に制限はないが、酸化性を有するガス(以下「酸化性ガス」という)にセルロース繊維原料を接触させる方法や、酸化性化学種を含む溶液にセルロース繊維原料を懸濁または浸漬させる方法等が挙げられる。
酸化性ガスとしては、特に限定されるものではないが、オゾン、塩素ガス、フッ素ガス、二酸化塩素、亜酸化窒素等が挙げられ、これらの2種以上を含むものであってもよい。特にオゾンは、空気、酸素ガス、酸素添加空気等の酸素含有気体をオゾン発生装置に供給することで適時、使用場所で必要量を発生させることができ、また、オゾン発生装置は市販されており、簡便に利用できるので好ましい。
オゾンを酸化性ガスとして用いる場合、オゾンの添加量は、セルロース繊維原料の乾燥質量に対して0.1〜1000重量%であることが好ましく、1〜100重量%がより好ましく、5〜50重量%であることがさらに好ましい。
酸化性化学種としては、一般にアルコールをアルデヒドまたはカルボン酸に酸化することができる試薬を用いることができ、特に限定されるものではないが、六価クロム酸硫酸混液、ジョーンズ試薬(無水クロム酸の硫酸酸性溶液)、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC試薬)などのクロム酸酸化試薬、スワーン(Swern)酸化などに使われる活性化ジメチルスルホキシド試薬、また、触媒的な酸化が生じるテトラプロピルアンモニウムペルルテナード(TPAP)や、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)などのN−オキシル化合物(特開2008−1728号公報)などが挙げられる。特に、TEMPOによるセルロース繊維の酸化は水分散液中で温和な条件で進行することが知られており好ましい。
上記の酸化処理の後に、さらに酸化処理の工程を追加してもよい。酸化処理の追加によって、セルロース繊維中のホルミル基をカルボキシ基まで酸化することで、より解繊性が向上するのでより好ましい。
追酸化処理に用いられる化学種としては、特に限定されるものではないが、亜塩素酸ナトリウムなどの亜塩素酸塩が挙げられる。具体的には、亜塩素酸ナトリウムの0.1〜5重量%水溶液を塩酸、酢酸などの酸を加えてpHを4〜5に調製した溶液に、上記酸化処理後のセルロース繊維原料を懸濁させ、一定時間、例えば1〜100時間保持することにより追酸化処理を行うことができる。この追酸化処理時の温度は、通常0℃〜100℃、好ましくは20℃〜80℃である。
追酸化処理後のセルロース繊維原料は、水で十分に懸濁洗浄することが好ましい。セルロース繊維原料が強酸性、または強塩基性の状態で保管すると、セルロースの結晶性が低下してしまう可能性があるため、洗浄する際には、洗浄した水のpHが4〜9の範囲になるまで洗浄を繰り返すことが好ましい。
この酸化処理により、通常、セルロース繊維のセルロースにカルボキシ基が導入される。導入後のカルボキシ基量は、セルロース繊維の重量に対して通常0.1〜5mmol/gであり、0.2〜2mmol/gが好ましい。
酸化処理の程度を表すカルボキシ基の導入量が少な過ぎると酸化処理による解繊効率の向上効果を十分に得ることができない。ただし、カルボキシ基の導入量が多過ぎると所望のセルロースナノファイバーを得られなくなるおそれがある。
なお、セルロース繊維の重量に対するカルボキシ基の量(mmol/g)は、例えば、米国TAPPIの「Test Method T237 cm-08(2008):Carboxyl Content of pulp」の方法に従って定量することができる。この時、測定試料とする絶乾セルロース繊維は、加熱乾燥で起こりうる加熱によるセルロースの変質を避けるため、凍結乾燥により得たものを使用する。なお、セルロース繊維中のカルボキシ基量は、後述の化学修飾処理を行うと化学修飾基がセルロースに付加した分、質量が増加するため、乾燥セルロース1g当たりの数値は変わる。従って、本発明に係るセルロース繊維に更に化学修飾処理を行う場合、セルロース繊維のカルボキシ基量は、化学修飾基による置換を行った後の値として求める必要がある。
通常、上記の酸化処理後のセルロース繊維は、水洗やろ過などにより精製処理が施される。
(修飾処理)
本発明に係るセルロース繊維は、セルロース中の水酸基を他の基で修飾(置換)する修飾処理が施されたものであってもよい。このようなものとしては、具体的には、化学修飾によって誘導化されたもの(化学修飾セルロース繊維)が挙げられ、例えば、セルロース中の水酸基が化学修飾剤と反応して修飾された(置換された)ものである。尚、本発明における化学修飾とは、化学反応により、セルロース中の水酸基が他の基に誘導または置換されることをいう。
化学修飾は、本発明の微細セルロース繊維分散液を得るまでのどの工程において行ってもよいが、化学修飾剤の効率的な反応の観点で、精製処理後のセルロース(セルロース繊維原料)に対して化学修飾処理を施すことが好ましい。
化学修飾によってセルロースの水酸基に導入する置換基(水酸基中の水素原子と置換して導入される基)は特に制限されず、用いるゴム成分との親和性を考慮して、ゴム成分の骨格に近い構造の基等を選択すればよい。例えば、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基、チエタン基等が挙げられる。これらの中では特にアセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の炭素数2〜12のアシル基が好ましい。
(酵素処理)
本発明で用いるセルロース繊維は、酵素処理が施されたものであってもよい。
酵素処理は、セルロースのβ−1,4−グルコシド結合を加水分解によって開裂し、解重合を引き起こすセルラーゼ系酵素を用いて行われ、酵素処理によりセルロース繊維原料を解繊して繊維径、繊維長を小さくすることができる。
酵素処理は、通常、セルロース繊維原料の水分散液に対してセルラーゼ系酵素を添加することにより行われる。
セルラーゼを産生する微生物としては、好気性細菌、嫌気性細菌、動物や昆虫の消化器官に存在するルーメン細菌、放線菌、酵母、糸状菌(子嚢菌や担子菌など)などが挙げられ、それぞれ多様なセルラーゼを産生する。
セルラーゼ系酵素としては、トリコデルマ(Trichoderma、糸状菌)属、アクレモニウム(Acremonium、糸状菌)属、アスペルギルス(Aspergillus、糸状菌)属、ファネロケエテ(Phanerochaete、担子菌)属、トラメテス(Trametes、担子菌)属、フーミコラ(Humicola、糸状菌)属、バチルス(Bacillus、細菌)属、スエヒロタケ(Schizophyllum、担子菌)属、ストレプトミセス(Streptomyces、細菌)属、シュードモナス(Pseudomonas、細菌)属などが産生するセルラーゼ系酵素が挙げられる。このようなセルラーゼ系酵素は試薬や市販品として購入可能である。例えば、セルロイシンT2(エイチピィアイ社製)、メイセラーゼ(明治製菓社製)、ノボザイム188(ノボザイム社製)、マルティフェクトCX10L(ジェネンコア社製)、セルラーゼ系酵素GC220(ジェネンコア社製)等が挙げられる。これらのセルラーゼ系酵素の中でも糸状菌セルラーゼ系酵素が好ましく、糸状菌セルラーゼ系酵素の中でもトリコデルマ菌(Trichoderma reesei、あるいはHyporea jerorina、糸状菌の一種である子嚢菌)が産生するセルラーゼ系酵素はセルラーゼ系酵素の種類が豊富で、産生性も高いため特に好ましい。
ヘミセルラーゼ系酵素とは、ヘミセルロースを加水分解する酵素である。ヘミセルラーゼ系酵素の中でもキシランを分解する酵素であるキシラナーゼ(xylanase)、マンナンを分解する酵素であるマンナーゼ(mannase)、アラバンを分解する酵素であるアラバナーゼ(arabanase)が挙げられる。また、ペクチンを分解する酵素であるペクチナーゼもヘミセルラーゼ系酵素として使用することができる。ヘミセルラーゼ系酵素を産生する微生物はセルラーゼ系酵素も産生する場合が多い。
ヘミセルロースは植物細胞壁のセルロースミクロフィブリル間にあるペクチン類を除いた多糖類である。ヘミセルロースは多種多様で植物の種類や細胞壁の壁層間でも異なる。木材においては針葉樹の2次壁ではグルコマンナンが主成分であり、広葉樹の2次壁では4−O−メチルグルクロノキシランが主成分である。そのため、針葉樹から微細繊維状セルロースを得るためにはマンナーゼを使用する方が好ましく、広葉樹の場合はキシラナーゼを使用する方が好ましい。
セルラーゼ系酵素のセルロース繊維原料に対する添加量は0.1〜3重量%が好ましく、0.3〜2.5重量%がより好ましい。セルラーゼ系酵素の添加量が0.1重量%未満であると酵素による解繊効率が低下するおそれがあり、3重量%を超えて添加するとセルロースが糖化されて、微細セルロース繊維の収率が低下するおそれがある。
セルラーゼ系酵素処理時のセルロース繊維原料の水分散液のpHは弱酸性領域であるpH3.0〜6.9が好ましいが、セルラーゼ系酵素の種類により適宜最適なpH領域を選択してもよい。
また、ヘミセルラーゼ系酵素による処理を行う際のセルロース繊維原料の水分散液のpHは弱アルカリ性領域であるpH7.1〜10.0が好ましいが、ヘミセルラーゼ系酵素の種類により適宜最適なpH領域を選択してもよい。
酵素処理時のセルロース繊維原料の水分散液の温度は30〜70℃が好ましく、35〜65℃がさらに好ましく、40〜60℃が特に好ましい。温度が30℃未満であると酵素活性が低下して処理時間が長くなるので好ましくない。温度が70℃を超えると酵素が失活するので好ましくない。処理時間は酵素の種類や温度、pHで調整するが、30分〜24時間が好ましい。処理時間が30分未満であると酵素処理の効果がほとんど発現しないおそれがある。24時間を超えると酵素によりセルロース繊維の分解が進みすぎて、得られる微細セルロース繊維の数平均繊維長が短くなりすぎるおそれがある。
なお、酵素が活性なままで残留しているとセルロース繊維の分解が進み過ぎるので、所定時間、酵素で反応させた後のセルロース繊維原料の水分散液に20重量%程度の水酸化ナトリウム水溶液を分散液のpHが12程度になるように添加して酵素を失活させるか、あるいはセルロース繊維原料の水分散液の温度を90℃まで上昇させて、失活させる方法が通常とられる。水酸化ナトリウム水溶液を加える方が簡便ではあるが、その後の洗浄処理において脱水性が悪化するおそれがあるので、その対処が必要になる。水洗は、セルロース繊維の2〜4重量倍量の水で行なえばよく、これにより酵素はほとんど残留しなくなる。
<カーボンブラック>
カーボンブラックとしては特に制限はなく、従来ゴムの補強用充填剤として使用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えば、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが用いられ、特に耐摩耗性に優れるHAF、ISAF、SAFが好ましい。
カーボンブラックは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<分散媒(溶媒)>
本発明において、カーボンブラックの存在下にセルロース繊維の解繊を行う原料分散液に用いる溶媒(分散媒)としては、カーボンブラック及びセルロース繊維の分散性に優れたものであればよく特に限定されないが、例えば、水、アルコール系溶媒などのプロトン性極性溶媒、ケトン系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、アミド系溶媒、芳香族系炭化水素、非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。好ましくは、水、アミド系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒である。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明で使用される溶媒は、後の工程で溶媒を除去する工程があることから沸点が高すぎないことが好ましい。溶媒の沸点は300℃以下が好ましく、200℃以下が好ましく、180℃以下が更に好ましい。また、取扱い性などの点から、70℃以上が好ましい。
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。
ケトン系溶媒(ケトン基を有する液体を指す)としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソプロピルケトン、ジ−tert−ブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキシルメチルケトン、アセトフェノン、アセチルアセトン、ジオキサン等が挙げられる。この中でも、好ましくは、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノンであり、より好ましくは、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノンである。
グリコールエーテル系溶媒の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
芳香族系炭化水素の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
非プロトン性極性溶剤としては、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
<微細セルロース繊維分散液の製造手順>
本発明の製造方法においては、必要に応じて酵素処理等を施したセルロース繊維とカーボンブラックとを含有する原料分散液中で、セルロース繊維の解繊処理を行って、微細セルロース繊維を得る。
(原料分散液の製造方法)
原料分散液の製造方法は特に限定されず、使用される各成分を混合することにより調製することができる。通常は、上記セルロース繊維を分散した分散液(セルロース繊維分散液)とカーボンブラックとを混合することにより調製することができる。
セルロース繊維を分散させる分散媒としては、通常水が用いられるが、有機溶媒(分散媒)を利用してもよい。有機溶媒を利用する場合、セルロース繊維の水分散液として得られるセルロース繊維原料を用いる場合には、あらかじめ水分散液中の水を有機溶媒に置換してもよい(溶媒置換工程)。
溶媒を置換する方法は特に限定されないが、セルロース繊維を含有する水分散液から濾過などにより水を除去し、ここに解繊時使用する有機溶媒を添加し、攪拌混合し、再度濾過により有機溶媒を除去する方法が挙げられる。有機溶媒の添加と濾過を繰り返すことで、分散液中の媒体を水から有機溶媒に置換することができる。
なお、使用する有機溶媒が非水溶性の場合、水溶性の有機溶媒に一度置換した後、非水溶性の有機溶媒に置換してもよい。
セルロース繊維分散液と、カーボンブラックの混合に際しては、セルロース繊維分散液にカーボンブラックを直接加えて混合してもよいし、カーボンブラックを溶媒(分散媒)に分散させた液を調製後、該液を加えて混合してもよい。該液に対し、セルロース繊維分散液を加えて混合してもよく、混合順序はいずれでも構わない。
尚、カーボンブラックを分散させる溶媒は、上記溶媒置換工程で使用した溶媒と同じであってもよいし、また相溶するものであれば異なっていてもよい。
原料分散液中におけるセルロース繊維の含有量は特に限定されないが、得られる微細セルロース繊維分散液の粘度や液安定性が好適なものになるといった取扱い性の点から、原料分散液全量に対して、0.01重量%以上が好ましく、0.05重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上が特に好ましく、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、15重量%以下が特に好ましい。
原料分散液中におけるカーボンブラックの含有量は特に限定されないが、得られる微細セルロース繊維分散液の粘度や液安定性が好適なものになるといった取扱い性の点において、また、微細セルロース繊維とカーボンブラックとを併用することによるゴム成分に対する補強効果の面から、原料分散液中において、カーボンブラック100重量部に対し、セルロース繊維の含有量が好ましくは1重量部以上、より好ましくは2重量部以上、特に好ましくは5重量部以上で、好ましくは50重量部以下、より好ましくは40重量部以下、特に好ましくは30重量部以下となるような量であることが好ましい。
原料分散液中における分散媒の含有量は特に限定されないが、得られる微細セルロース繊維分散液の粘度や液安定性が好適なものになるといった取扱い性の点から、原料分散液全量に対して、1重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましく、3重量%以上が特に好ましく、99.9重量%以下が好ましく、98重量%以下がより好ましく、95重量%以下が特に好ましい。
(解繊方法)
本発明では、上記のように調製した原料分散液中で、セルロース繊維を解繊する。本発明において、解繊とは、繊維を解すことであり、通常は繊維をより小さなサイズにすることができるものである。
解繊工程(解繊処理)の具体的な方法は特に制限されないが、例えば、直径1mm程度のセラミック製ビーズをセルロース繊維濃度0.01〜30重量%、例えば、0.5重量%程度の原料分散液に入れ、ペイントシェーカーやビーズミル等を用いて振動を与え、セルロース繊維を解繊する方法などが挙げられる。
また、ブレンダータイプの分散機や高速回転するスリットの間に、このような原料分散液を通して剪断力を働かせて解繊する方法(高速回転ホモジナイザー)や、高圧から急に減圧することによって、セルロース繊維間に剪断力を発生させて解繊する方法(高圧ホモジナイザー法)、マスコマイザーXのような対向衝突型の分散機(増幸産業)等を用いる方法などが挙げられる。つまり、ビーズミルによる解繊処理、噴出による解繊(微細化)処理、回転式解繊方法による解繊処理、または超音波処理による解繊処理などが挙げられる。
特に、高速回転ホモジナイザー及び高圧ホモジナイザーによる処理は、解繊の効率がより向上する。
これらの処理で解繊する場合は、原料分散液中の固形分濃度(セルロース繊維とカーボンブラックとの総量)は特に制限されないが、2.5重量%以上が好ましく、3重量%以上がより好ましく、99重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましい。この解繊工程に供する原料分散液中の固形分濃度が低過ぎると処理するセルロース量に対して液量が多くなり過ぎ効率が悪くなり、固形分濃度が高過ぎると流動性が悪くなる。
高速回転ホモジナイザーの場合、周速が速い方が、剪断が掛かり、解繊効率が高くなる。周速としては15m/s以上、好ましくは30m/s以上であり、100m/s以下、好ましくは50m/s以下である。なお、周速と回転数には以下の関係が成り立つ。
周速(m/sec)=2×回転羽の半径(m)×π×回転数(rpm)/60
よって、半径15mmの回転羽を用いる場合であれば、回転数としては、例えば、10000rpm以上程度が好ましく、20000rpm以上程度が特に好ましい。なお、回転数の上限は特に制限されないが、装置の性能上の観点から、30000rpm以下程度が好ましい。回転数が5000rpm以下ではセルロース繊維の解繊が不十分になる。
処理時間は、1分以上が好ましく、5分以上がより好ましく、10分以上が特に好ましい。なお、処理時間は生産性の点から、6時間以下が好ましい。剪断により発熱が生じる場合は、液温が50℃を越えない程度に冷却することが好ましい。
また、原料分散液に均一に剪断がかかるように、攪拌または循環することが好ましい。
高圧ホモジナイザーを用いる場合、原料分散液を増圧機で好ましくは30MPa以上、より好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは150MPa以上、特に好ましくは220MPa以上に加圧し、細孔直径50μm以上のノズルから噴出させ、圧力差が好ましくは30MPa以上、より好ましくは80MPa以上、さらに好ましくは90MPa以上となるように減圧する。この圧力差で生じるへき開現象により、セルロース繊維を解繊する。
ここで、高圧条件の圧力が低い場合や、高圧から減圧条件への圧力差が小さい場合には、解繊効率が下がり、所望の繊維径とするための繰り返し噴出回数が多く必要となるため好ましくない。
噴出時の高圧条件が高いほど、圧力差により大きなへき開現象でより一層の微細化を図ることができるが、装置仕様の上限として、通常245MPa以下である。
同様に、高圧条件から減圧下への圧力差も大きいことが好ましいが、一般的には、増圧機による加圧条件から大気圧下に噴出することで、圧力差の上限は通常245MPa以下である。
また、原料分散液を噴出させる細孔の細孔直径が大き過ぎる場合にも、十分な解繊効果が得られず、この場合には、噴出処理を繰り返し行っても、所望の繊維径のセルロース繊維が得られないおそれもある。原料分散液を噴出させる細孔の直径は小さければ容易に高圧状態を作り出せるが、過度に小さいと噴出効率が悪くなる。この細孔直径は、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、150μm以上がさらに好ましく、800μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、350μm以下がさらに好ましい。
原料分散液の噴出は、必要に応じて複数回繰り返すことにより、微細化度を上げて所望の繊維径のセルロース繊維を得ることができる。この繰り返し回数(パス数)は、通常1回以上、好ましくは3回以上で、通常20回以下、好ましくは15回以下である。パス数が多い程、微細化の程度を上げることができるが、過度にパス数が多いとコスト高となるため好ましくない。
噴出時の温度(分散液温度)には特に制限はないが、通常5℃以上100℃以下である。温度が高すぎると装置、具体的には送液ポンプや高圧シール部等の劣化を早める恐れがあるため好ましくない。
なお、噴出ノズルは1本でも2本でもよく、噴出させた原料分散液を噴出先に設けた壁やボール、リングにぶつけてもよい。更にノズルが2本の場合には、噴出先で原料分散液同士を衝突させてもよい。
高圧ホモジナイザーの具体的な装置は特に制限されないが、例えば、ガウリン社製や、スギノマシン社製の「スターバーストシステム」を用いることができる。
なお、このような高圧ホモジナイザーによる処理のみでも、本発明の微細セルロース繊維分散液を得ることは可能であるが、十分な微細化度とするための繰り返し回数が多く処理効率が悪い場合には、1〜5回程度の高圧ホモジナイザー処理後に以下の超音波処理を行って微細化することが好ましい。
超音波処理を行う場合、超音波処理を施す、解繊処理後の原料分散液(以後、適宜、超音波処理用原料分散液と称する)中のセルロース濃度は、液全量に対して、0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましい。超音波を照射する超音波処理用原料分散液中のセルロース濃度が低過ぎると非効率であり、高過ぎると粘度が高くなり解繊処理が不均一になる。
本発明では、セルロース繊維のみを含むセルロース繊維分散液ではなく、セルロース繊維とカーボンブラックとを含有する原料分散液に対して解繊処理を施すことにより、セルロース繊維を解繊すると共に、カーボンブラック粒子も細かく分散され、微細セルロース繊維と微細カーボンブラック粒子が均一に分散された微細セルロース繊維分散液を得ることができる。
[II.微細セルロース繊維分散液]
上記解繊工程を経て得られた微細セルロース繊維分散液中には、微細セルロース繊維とカーボンブラックが均一に分散しており、微細セルロース繊維やカーボンブラックの凝集や沈降が抑制され、優れた液安定性を有する。
また、以下詳述する微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物中においては、微細セルロース繊維及びカーボンブラックが加硫ゴム成分中に均一に分散し、高弾性率、低発熱性を示す。
微細セルロース繊維分散液中における微細セルロース繊維の含有量は使用される出発原料であるセルロース繊維量によって適宜調製されるが、分散液の安定性の点から、分散液全量に対して、0.01重量%以上が好ましく、0.05重量%以上がより好ましく、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、15重量%以下がさらに好ましい。
なお、微細セルロース繊維分散液中の分散媒、カーボンブラックの含有量は、上述した原料分散液の各成分の含有量と同じであり、好適な範囲も同じである。
微細セルロース繊維分散液中のセルロース繊維及びカーボンブラック量が少ないと補強効果が充分でなく、逆に多いとゴムの加工性が低下する場合がある。
<セルロースI型結晶>
上記解繊工程によって得られる微細セルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有することが好ましい。セルロースI型結晶は、他の結晶構造より結晶弾性率が高いため、高弾性率、高強度、低線膨張係数であり好ましい。
微細セルロース繊維がI型結晶構造であることは、その広角X線回折像測定により得られる回折プロファイルにおいて、2θ=14〜17°付近と2θ=22〜23°付近の二つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
<微細セルロース繊維の数平均繊維径>
上記方法によって得られた微細セルロース繊維分散液中の微細セルロース繊維の数平均繊維径は、分散液中の分散媒を乾燥除去した後、SEMやTEM等で観察することにより計測して求めることができる。
本発明により得られる解繊された微細セルロース繊維の数平均繊維径は、得られる微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物がより優れた低線膨張性を示す点より、400nm以下が好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。尚、この数平均繊維径の下限は通常4nm以上である。
微細セルロース繊維の平均繊維径が上記下限未満の場合は、セルロースのI型結晶が壊れており、繊維自体の強度や弾性率が低下するため、補強効果が得られ難い。また、上記上限を超える場合はゴムとの接触面積が小さくなるため、補強効果が小さくなる。
なお、上記数平均繊維径は、SEMやTEM等で観察して、写真の対角線に線を引き、その近傍にある繊維をランダムに12点抽出し、最も太い繊維と最も細い繊維を除去した10点を測定して、平均した値である。
<ゴム成分>
本発明の微細セルロース繊維分散液は、さらにゴム成分を含むものであってもよく、微細セルロース繊維分散液がゴム成分を含むことにより、この微細セルロース繊維分散液から分散媒(溶媒)を除去して本発明の微細セルロース繊維含有組成物とすることができ、これを加硫して本発明の微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物を得ることができる。
ゴム成分は天然ゴムと合成ゴムに大別できるが、これらのいずれか一方を単独で用いても、天然ゴムと合成ゴムを混合して用いてもよい。合成ゴムとしては公知のものから目的に応じて選択されるが、ジエン系ゴムが好ましく、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、及びブチルゴム(IIR)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本発明の微細セルロース繊維分散液がゴム成分を含有する場合、微細セルロース繊維分散液中におけるゴム成分の含有量は特に限定されないが、微細セルロース繊維分散液の粘度や液安定性などの取扱い性の点から、微細セルロース繊維分散液全量に対して、2重量%以上が好ましく、2.5重量%以上がより好ましく、95重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましい。
また、本発明の微細セルロース繊維分散液がゴム成分を含有する場合、微細セルロース繊維分散液中においてゴム成分と分散媒との重量比は特に限定さないが、微細セルロース繊維分散液の粘度や液安定性などの取扱い性の点から、分散媒の含有量は、ゴム成分100重量部に対して、5〜2000重量部が好ましく、25〜1000重量部がより好ましい。
また、本発明の微細セルロース繊維分散液がゴム成分を含有する場合、微細セルロース繊維分散液中においてセルロース繊維とゴム成分との重量比は特に限定さないが、得られる微細セルロース繊維分散液の粘度や液安定性などの取扱い性の点から、セルロース繊維の含有量は、セルロース繊維及びゴム成分の合計100重量部に対して、2.5重量部以上が好ましく、3重量部以上がより好ましく、5重量部以上がさらに好ましく、97.5重量部以下が好ましく、97重量部以下がより好ましく、95重量部以下がさらに好ましい。
また、本発明の微細セルロース繊維分散液がゴム成分を含有する場合、微細セルロース繊維分散液中においてカーボンブラックとゴム成分との重量比は特に限定さないが、得られる微細セルロース繊維分散液の粘度や液安定性などの取扱い性の点から、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100重量部に対して、1重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましく、30重量部以上がさらに好ましく、90重量部以下が好ましく、70重量部以下がより好ましく、60重量部以下がさらに好ましい。
また、本発明の微細セルロース繊維分散液がゴム成分を含有する場合、得られる微細セルロース繊維分散液の粘度や液安定性などの取扱い性の点から、微細セルロース繊維分散液中の全固形分の含有量は、微細セルロース繊維分散液全量に対して、0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、90重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましい。従って、微細セルロース繊維分散液中の分散媒の含有量は微細セルロース繊維分散液全量に対して、10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、99.9重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。
ゴム成分を含有する本発明の微細セルロース繊維分散液は、セルロース繊維とカーボンブラックとゴム成分とを含有する原料分散液中でセルロース繊維を解繊することにより製造されたものであってもよく、セルロース繊維とカーボンブラックとを含有する原料分散液中で分散液を解繊することにより製造された微細セルロース繊維分散液に対して、更にゴム成分を混合することにより製造されたものであってもよい。
セルロース繊維とカーボンブラックとゴム成分とを含有する原料分散液中におけるセルロース繊維の解繊は、前述のセルロース繊維とカーボンブラックとを含有する原料分散液中でセルロース繊維を解繊する方法と同様にして行うことができる。セルロース繊維とカーボンブラックとを含有する原料分散液中でセルロース繊維を解繊して得られた微細セルロース繊維分散液に更にゴム成分を混合する場合、微細セルロース繊維分散液にゴム成分を直接加えて混合してもよいし、ゴム成分を溶媒に溶解または分散させた液を調製後、該液を加えて混合してもよい。該液に対し、微細セルロース繊維分散液を加えて混合してもよく、混合順序はいずれでも構わない。また、ゴム成分として、ラテックスのようなエマルジョンを用いてもよい。
尚、ゴム成分を溶解または分散させる溶媒としては、前述の原料分散液に用いる分散媒(溶媒)として例示したものを用いることができ、微細セルロース繊維分散液中の溶媒と同じであってもよいし、また相溶するものであれば異なっていてもよい。
また、本発明の微細セルロース繊維分散液は、必要に応じて更に、後述の本発明の微細セルロース繊維含有組成物が含有していてもよいその他の配合剤として例示した添加剤を含有していてもよい。
[III.微細セルロース繊維含有組成物]
本発明の微細セルロース繊維含有組成物は、上述のゴム成分を含有する本発明の微細セルロース繊維分散液から分散媒(溶媒)を除去して得られるものである。
即ち、本発明の微細セルロース繊維分散液を以下に詳述する加硫反応に供して本発明の微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物とする場合は、通常、加熱処理、減圧処理等を行うことにより、ゴム成分を含有する該微細セルロース繊維分散液を乾燥、固化などさせ、分散液中の溶媒(分散媒)を除去して微細セルロース繊維含有ゴム組成物とする。溶媒(分散媒)はその後の工程にあわせ、適当な量を除去すればよい。加熱処理の場合、加熱温度は、溶媒(分散媒)が水である場合には、通常100℃程度であり、分散液に含まれる溶媒(分散媒)の種類により適宜変化させることができる。
<その他の添加剤>
本発明の微細セルロース繊維分散液またはこの微細セルロース繊維分散液から溶媒(分散媒)を除去して得られる本発明の微細セルロース繊維含有ゴム組成物には、必要に応じて微細セルロース繊維、カーボンブラック、ゴム成分の他に、従来ゴム工業で使用される他の配合剤を添加してもよい。本発明の微細セルロース繊維分散液またはこの微細セルロース繊維分散液から溶媒(分散媒)を除去して得られる微細セルロース繊維含有ゴム組成物に添加し得るその他の添加剤としては、例えば、カーボンブラック以外の他の補強剤としてシリカ粒子や、繊維などの、無機、有機のフィラー、シランカップリング剤、以下に説明する加硫剤、ステアリン酸、アミン類、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどの加硫促進剤や加硫促進助剤、オイル、硬化レジン、ワックス、老化防止剤などが挙げられる。これらの添加剤は、通常は、解繊処理後の微細セルロース繊維分散液またはこの微細セルロース繊維分散液から溶媒(分散媒)を除去して得られる微細セルロース繊維含有ゴム組成物に添加するが、あらかじめ原料分散液中に添加しておいてもよい。
<加硫剤>
加硫剤としては、有機過酸化物または硫黄系加硫剤を使用することが可能である。有機過酸化物としては従来ゴム工業で使用される各種のものが使用可能であるが、中でも、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン及びジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼンが好ましい。また、硫黄系加硫剤としては、例えば硫黄、モルホリンジスルフィドなどを使用することができ、中でも硫黄が好ましい。これらの加硫剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の微細セルロース繊維分散液中またはこの微細セルロース繊維分散液から溶媒(分散媒)を除去して得られる微細セルロース繊維含有ゴム組成物中の加硫剤の配合量としては、ゴム成分100重量部に対して硫黄の場合、7.0重量部以下、好ましくは6.0重量部以下である。また、通常0.5重量部以上、好ましくは1.0重量部以上、より好ましくは3.0重量部以上、中でも4.0重量部以上である。
[IV.微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物]
本発明の微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物は、本発明の微細セルロース繊維分散液の製造方法を経て得られる、ゴム成分を含有する本発明の微細セルロース繊維分散液から、溶媒(分散媒)を除去して本発明の微細セルロース繊維含有ゴム組成物を製造した後、この微細セルロース繊維含有ゴム組成物を加硫して製造される。具体的には、ゴム成分を含む本発明の微細セルロース繊維分散液から溶媒(分散媒)を除去して得られる微細セルロース繊維含有ゴム組成物を加硫反応させ、微細セルロース繊維とカーボンブラックと加硫ゴム成分とを含有する本発明の微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物を得る。なお、本発明の微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物の製造方法は、必要に応じて、該加硫工程の前に、微細セルロース繊維含有ゴム組成物に、更にゴム成分を添加混合する追添加工程を備えていてもよい。この場合、ゴム成分の追添加は、前述の微細セルロース繊維分散液へのゴム成分の添加、混合と同様にして行うことができる。
<加硫工程>
加硫工程では、上記の微細セルロース繊維含有ゴム組成物を用いて、微細セルロース繊維とカーボンブラックと加硫ゴム成分とを含有する微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物を得る。すなわち、微細セルロース繊維含有ゴム組成物を加硫反応させることにより(加硫工程)、微細セルロース繊維とカーボンブラックと加硫ゴム成分とを含有する微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物を得ることができる。通常の場合、本発明の微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物は、本発明の微細セルロース繊維分散液から、必要に応じて溶媒を除去して微細セルロース繊維含有ゴム組成物とし、更に前述の各種配合剤を、ゴム用混練機等の公知の方法を用いて混合した後、成形し、公知の方法で加硫反応させることにより得られる。
加硫工程に先立つ成形には、各種の方法が可能であり、例えば、微細セルロース繊維分散液を、基板上へ塗布して塗膜状としてもよく、型内に流し込んでもよく、或いは押し出し加工してもよい。この際、必要に応じて、乾燥処理を施して、溶媒を除去してもよい。
例えば、微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物としてのタイヤを例にとると、タイヤは、ゴム成分を含有する本発明の微細セルロース繊維分散液を用いて、従来公知の方法で製造される。すなわち、ゴム成分中に分散した微細セルロース繊維及びカーボンブラックから水分やその他の溶媒を除去し、微細セルロース繊維含有ゴム組成物とし、必要に応じて添加剤を加え、混練りして、未加硫状態でタイヤの所望の適用部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤの他の部材とともにタイヤ成形機上にて通常の方法により成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本発明の微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物を用いたタイヤを得ることができる。かかるタイヤは、転がり抵抗が小さく、良好な操縦安定性と耐久性を有する。
加硫工程の条件は特に限定されず、ゴム成分を加硫ゴムとできる温度以上であればよい。なかでも、有機溶媒を揮発させて除去できる点から、加熱温度は、60℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。なお、微細セルロース繊維の分解を抑制する点から、加熱温度は250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。加熱時間は、生産性などの点から、5分以上、好ましくは10分以上、更に好ましくは15分以上で、180分以下が好ましい。加熱処理は複数回にわたって、温度・加熱時間を変更して実施してもよい。
<微細セルロース繊維の数平均繊維径>
上記の方法によって得られた本発明の微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物中の微細セルロース繊維の数平均繊維径は、微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物を必要に応じて切り出し、SEMやTEM等で観察することにより計測して求めることができる。
本発明の微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物中の微細セルロース繊維の数平均繊維径は、得られる加硫ゴム組成物がより優れた低線膨張性を示す点より、400nm以下が好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。尚、この数平均繊維径の下限は通常4nm以上である。
微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物中の微細セルロース繊維の平均繊維径が上記下限未満の場合は、セルロースのI型結晶構造が維持できず、繊維自体の強度や弾性率が低下し、補強効果が得られ難い。また、上記上限を超える場合はゴムとの接触面積が小さくなるため、補強効果が小さくなる。
なお、上記微細セルロース繊維の数平均繊維径は、SEMやTEM等で観察して、写真の対角線に線を引き、その近傍にある繊維をランダムに12点抽出し、最も太い繊維と最も細い繊維を除去した10点を測定して、平均した値である。
<微細セルロース繊維及びカーボンブラックの含有量>
微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物中における微細セルロース繊維の含有量は目的に応じて適宜調整されるが、補強の点から、微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物全量に対して、0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましい。微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物中の微細セルロース繊維量が少ないと補強効果が充分でなく、逆に多いとゴムの加工性が低下する場合がある。
また、微細セルロース繊維とカーボンブラックとを併用することによるゴム成分に対する補強効果の面から、微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物中におけるカーボンブラックと微細セルロース繊維の含有量は、カーボンブラック100重量部に対し、セルロース繊維の含有量が好ましくは1重量部以上、より好ましくは5重量部以上、特に好ましくは10重量部以上で、好ましくは50重量部以下、より好ましくは30重量部以下、特に好ましくは20重量部以下となるような量であることが好ましい。
なお、微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物中に含まれる微細セルロース繊維とゴム成分との重量比は、ゴム成分の追添工程がない場合は、上記原料分散液及び微細セルロース繊維分散液におけるセルロース繊維とゴム成分との重量比と同じである。ゴム成分の追添工程がある場合は、微細セルロース繊維分散液におけるセルロース繊維と、これらの分散液中のゴム成分及び追添加されたゴム成分との合計の重量比となるが、その重量比は、前述の如く、微細セルロース繊維とゴム成分との合計を100重量部とした場合、微細セルロース繊維の含有量が2.5重量部以上、特に3重量部以上、とりわけ5重量部以上で、97.5重量部以下、特に97重量部以下、とりわけ95重量部となる量であることが好ましい。
また、微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物中に含まれるカーボンブラックとゴム成分との重量比は、ゴム成分100重量部に対してカーボンブラックが1重量部以上、特に10重量部以上、とりわけ30量部以上で、90重量部以下、特に70重量部以下、とりわけ60重量部以下であることが高い破断強度および高い破断伸度等の高いゴム物性を持つ加硫ゴム組成物が得られる点で好ましい。
<微細セルロース繊維とカーボンブラックの分散状態>
このようにして得られる本発明の微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物は、数平均繊維径が4〜400nm、好ましくは4〜100nm、更に好ましくは4〜50nmの微細セルロース繊維が凝集塊を作ることなく加硫ゴム成分中に均一に分散しており、また、カーボンブラックも、細かい微細粒子として均一に分散しており、微細セルロース繊維による補強効果によって、高い弾性率が達成されると同時に、セルロース繊維の繊維径が細いためにゴム本来の伸びが阻害されないことから、高い破断伸度が達成されると考えられる。また、カーボンブラックによる補強効果で高い破断伸度を得ることができる。即ち、補強ゴムとして、耐久性及び剛性に優れた特性を示し、タイヤ等のゴム製品に好適に用いることができる。
なお、本発明の微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物における、微細セルロース繊維及びカーボンブラックの分散状態は、SEM等により断面構造を観察することにより確認することができる。
<弾性率>
本発明の微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物の好ましいものは、弾性率が15MPa以上、中でも4MPa以上、10GPa以下である。
なお、弾性率は、微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物より1mm厚のゴムスラブシートを作製し、7×25×2mmの測定用試験片を切り出し、SII社製DMS6100等の粘弾性装置を用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件下で、E*(複素弾性率)を測定することにより求めることができる。
<破断伸度・破断強度>
本発明の微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物の好ましいものは、破断伸度が200%以上、中でも400%以上、10000%以下、好ましくは2000%以下である。
また、本発明の微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物の好ましいものは、破断強度が15MPa以上、中でも20MPa以上、40MPa以下、好ましくは35MPa以下である。
なお、破断伸度及び破断強度は、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に従い、測定することができる。
<用途>
本発明の微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物は、高い破断強度及び破断伸度を有し、乗用車用、トラック用、バス用、重車両用などの空気入りタイヤなどのタイヤ、その他、ゴムクローラ、コンベアベルト等、各種のゴム製品に適用することができる。
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[製造例1:セルロース繊維1(酵素処理セルロース繊維)の調製]
セルロース繊維原料として針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP、王子製紙社製ベイマツ品)を用い、ナイアガラビーター(容量23リットル、東西精器社製)で200分間叩解し、パルプ分散液(パルプ濃度2重量%、叩解後の加重平均繊維長:1.61mm)を得た。
該パルプ分散液を脱水して濃度3重量%にし、0.1重量%硫酸でpH6に調整し、50℃になるまで水浴で温めた後、酵素GC220(Genencor社製)をパルプ(固形分換算)に対して1重量%添加し、50℃で1時間撹拌しながら反応させた。その後、95℃以上で20分間加熱して、酵素を失活させて酵素処理セルロース繊維分散液を得た。
[実施例1]
<微細セルロース繊維分散液の製造>
カーボンブラック(三菱化学社製「ダイアブラックG」)の固形分量12.8gと、製造例1で得られた酵素処理セルロース繊維の分散液を、セルロース繊維の固形分量が1.6gとなるような量で用い、セルロース繊維分散液にカーボンブラックを添加して回転式高速ホモジナイザー(エム・テクニック社製クレアミックス0.8S)にて20000rpmで60分間処理し、セルロース繊維の解繊を行なうことにより、ナノ繊維化されたカーボンブラック含有微細セルロース繊維分散液(スラリー1)を得た。このスラリー1のカーボンブラックの固形分濃度は4重量%であり、酵素処理セルロース繊維の固形分濃度は0.5重量%であった。
次に、天然ゴムラテックス(固形分濃度61重量%)の固形分量として100重量部に対し、スラリー1をセルロースの固形分量として5重量部となるように加え、次いで、ホモジナイザーを用いて混合し、ゴム−カーボンブラック含有微細セルロース繊維混合液(カーボンブラック含有ゴムラテックス分散液)を得た。得られたカーボンブラック含有ゴムラテックス分散液中のナノ繊維化された微細セルロース繊維の分散性を目視で評価した結果、分散性は良好であった。
<微細セルロース繊維含有組成物及び微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物の製造>
次に、得られたカーボンブラック含有ゴムラテックス分散液をバットに入れ、110℃のオーブン中にて乾燥固化し、スラリー1配合のゴム組成物(微細セルロース繊維含有組成物)を得た。
得られたゴム組成物(以下、ゴム組成物1という)は、天然ゴム成分100重量部に対して、ナノ繊維化された微細セルロース繊維を5重量部含む。またカーボンブラックは天然ゴム成分100部に対して、40重量部含まれる。これにさらに、天然ゴム成分100重量部に対する割合で亜鉛華(1号亜鉛華、浅岡窯業原料社製)3重量部、加硫促進剤(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、和光純薬工業社製)1重量部、硫黄(5%油処理粉末硫黄、鶴見化学工業社製)2重量部、ステアリン酸(和光純薬工業社製)3重量部を配合し、混練を行った。
詳細には、ゴム組成物1に対し、加硫促進剤と硫黄を除く成分を添加し、140℃で3分間混練装置(ラボプラストミルμ、東洋精機社製)を用いて混練し、さらに加硫促進剤と硫黄を添加し、80℃で3分間混練した。
これを160℃で10分間加圧プレス加硫し、厚さ1mmの加硫ゴム組成物1(微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物)を得た。
[比較例1]
製造例1で得られた酵素処理セルロース繊維1の固形分量1.6gを使って、回転式高速ホモジナイザー(エムテック社製クレアミックス0.8S)にて20000rpmで60分間処理し、セルロース繊維の解繊を行ない、ナノ繊維化された微細セルロース繊維のスラリー2を得た。このときの酵素処理セルロース繊維の固形分濃度は0.5重量%であった。
次に、天然ゴムラテックス(固形分濃度61重量%)の固形分量として100重量部に対し、スラリー2をセルロースの固形分量として5重量部となるように加え、次いで、ホモジナイザーを用いて混合し、ゴム含有セルロース繊維混合液(ゴムラテックス分散液1)を得た。得られたゴムラテックス分散液1中のナノ繊維化された微細セルロース繊維の分散性を目視で評価した結果、分散性は良好であった。
次に、得られたゴムラテックス分散液1をバットに入れ、110℃のオーブン中にて乾燥固化し、スラリー2配合のゴム組成物を得た。
得られたゴム組成物(以下、ゴム組成物2という)は、天然ゴム100重量部に対して、ナノ繊維化された微細セルロース繊維を5重量部含む。これにさらに、天然ゴム成分100重量部に対して、カーボンブラック(三菱化学社製「ダイアブラックG」)40重量部、亜鉛華(1号亜鉛華、浅岡窯業原料社製)3重量部、加硫促進剤(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、和光純薬工業社製)1重量部、硫黄(5%油処理粉末硫黄、鶴見化学工業社製)2重量部、ステアリン酸(和光純薬工業社製)3重量部を配合し、混練を行った。
詳細には、ゴム組成物2に対し、加硫促進剤と硫黄を除く成分を添加し、140℃で3分間混練装置(ラボプラストミルμ、東洋精機社製)を用いて混練し、さらに加硫促進剤と硫黄を添加し、80℃で3分間混練した。
これを160℃で10分間加圧プレス加硫し、厚さ1mmの加硫ゴム組成物2を得た。
[比較例2]
天然ゴムラテックス(固形分濃度61重量%)の固形分量として100重量部をバットに入れ、110℃のオーブン中にて乾燥固化した。
これは、天然ゴム成分100重量部のみを含む。これにさらに、天然ゴム成分100重量部に対して、カーボンブラック(三菱化学社製「ダイアブラックG」)40重量部、亜鉛華(1号亜鉛華、浅岡窯業原料社製)3重量部、加硫促進剤(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、和光純薬工業社製)1重量部、硫黄(5%油処理粉末硫黄、鶴見化学工業社製)2重量部、ステアリン酸(和光純薬工業社製)3重量部を配合し、混練を行った。
詳細には、天然ゴムに対し、加硫促進剤と硫黄を除く成分を添加し、140℃で3分間混練装置(ラボプラストミルμ、東洋精機社製)を用いて混練し、さらに加硫促進剤と硫黄を添加し、80℃で3分間混練した。
これを160℃で10分間加圧プレス加硫し、厚さ1mmの加硫ゴム組成物3を得た。
[評価試験]
実施例1及び比較例1,2で得られた加硫ゴム組成物1、加硫ゴム組成物2、加硫ゴム組成物3を、所定のダンベル形状の試験片にし、破断強度と破断伸度を評価し、結果を表1に示した。
破断強度及び破断伸度は、JIS K6251に準じた引張試験により、加硫ゴム組成物の破断強度及び破断伸度を測定し、比較例2の値を100とした指数で表示した。
指数が大きいほど補強性に優れることを示す。
Figure 0005884722
表1より、本発明の製造方法より得られた実施例1の加硫ゴム組成物1は、微細セルロース繊維を用いず、混練時にカーボンブラックを添加した比較例2と比べて、高い破断強度、破断伸度を示した。また、微細化されたセルロース繊維とゴムラテックスを混合・乾燥固化した後に、混練時にカーボンブラックを添加した比較例1の加硫ゴム組成物2と比べ、破断強度は同等で、高い破断伸度を示し、補強性に優れていることが分かった。
これは、セルロース繊維とカーボンブラックを同時に解繊処理することで、セルロース繊維が微細化されると同時にカーボンブラック粒子も細かく分散され、細かく分散されたカーボンブラック粒子が微細セルロース繊維と均一に混合されたためと考えられる。
本発明によれば、補強性が向上した微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物を製造することができるので、各種タイヤのゴム部材やホース、ベルト、防振シートなどに好適に使用できる。

Claims (6)

  1. 微細セルロース繊維とカーボンブラックとを含有する微細セルロース繊維分散液の製造方法であって、セルロース繊維とカーボンブラックとを含有する原料分散液中で、高速回転ホモジナイザーにより、周速15m/s以上で、セルロース繊維を解繊する工程を有することを特徴とする、微細セルロース繊維分散液の製造方法。
  2. 前記原料分散液中のセルロース繊維の濃度が、0.01〜30重量%である、請求項1に記載の微細セルロース繊維分散液の製造方法。
  3. 前記原料分散液が、カーボンブラック100重量部に対し、セルロース繊維を1〜50重量部含有する、請求項1または2に記載の微細セルロース繊維分散液の製造方法。
  4. セルロース繊維とカーボンブラックとゴム成分とを含有する原料分散液中で前記セルロース繊維の解繊を行うか、セルロース繊維とカーボンブラックとを含有する原料分散液中でセルロース繊維を解繊することにより製造された微細セルロース繊維分散液に対して、更にゴム成分を混合することにより、ゴム成分を含有する微細セルロース繊維分散液を製造する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の微細セルロース繊維分散液の製造方法
  5. 請求項に記載の微細セルロース繊維分散液の製造方法によりゴム成分を含有する微細セルロース繊維分散液を製造した後、該微細セルロース繊維分散液から分散媒を除去する、微細セルロース繊維含有組成物の製造方法
  6. 請求項に記載の微細セルロース繊維含有組成物の製造方法で微細セルロース繊維含有組成物を製造した後、該微細セルロース繊維含有組成物を加硫する、微細セルロース繊維含有加硫ゴム組成物の製造方法
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