JP2019143813A - 歯付ベルト - Google Patents

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正吾 小林
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鉄平 中山
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大樹 土屋
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Shigeki Okuno
茂樹 奥野
博之 橘
Hiroyuki Tachibana
博之 橘
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Abstract

【課題】歯付ベルトの耐久性を高める。【解決手段】歯付ベルトBは、基部11aと複数の歯部11bとを有するゴム組成物で形成された歯付ベルト本体10を備える。基部11aを形成するゴム組成物、及び、歯部11bを形成するゴム組成物のうち少なくとも1つは、繊維径の分布範囲が83〜390nmを含むセルロース系微細繊維を含有する。【選択図】図1

Description

本開示は歯付ベルトに関する。
いわゆるセルロースナノファイバを含有するゴム組成物を伝動ベルトに適用することは公知である。
例えば、特許文献1には、平均繊維径が0.1〜200nmのカルボキシ基を有するセルロース系微細繊維を疎水変性処理したものを配合したゴム組成物を伝動ベルトに適用することが開示されている。
特許文献2には、セルロースナノファイバを配合したゴム組成物を平ベルトの内側表面ゴム層に適用することが開示されている。
特開2014−125607号公報 特開2015−31315号公報
本開示の課題は、歯付ベルトの耐久性を高めることである。
本開示の歯付ベルトは、平帯状の基部と前記基部の一方側の面にベルト長さ方向に間隔をおいて一体に設けられた複数の歯部とを有するゴム組成物で形成された歯付ベルト本体を備えた歯付ベルトであって、前記基部を形成するゴム組成物、及び、前記歯部を形成するゴム組成物のうち少なくとも1つは、繊維径の分布範囲が83〜390nmを含む。
本開示の歯付ベルトによれば、基部を形成するゴム組成物、歯部を形成するゴム組成物、及び接着層のうち少なくとも1つが、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維を含有することにより、高い耐久性を得ることができる。
図1は、実施形態1に係る例示的な歯付ベルトを模式的に示す斜視図である。 図2は、実施形態1に係る歯付ベルトの製造に用いるベルト成形型の部分的な断面図である。 図3は、実施形態1に係る歯付ベルトの製造方法の第1の説明図である。 図4は、実施形態1に係る歯付ベルトの製造方法の第2の説明図である。 図5は、実施形態1に係る歯付ベルトの製造方法の第3の説明図である。 図6は、実施形態2に係る歯付ベルトの製造方法の第1の説明図である。 図7は、実施形態2に係る歯付ベルトの製造方法の第2の説明図である。 図8は、実施形態2に係る歯付ベルトの製造方法の第3の説明図である。 図9は、実施形態4における歯部側補強布と歯付ベルト本体との界面構造を示す断面図である。 図10は、実施形態5における歯部側補強布と歯付ベルト本体との界面構造を示す断面図である。 図11は、歯付ベルトの耐歯欠け性及び耐摩耗性を評価するためのベルト走行試験機におけるプーリレイアウトを示す図である。
以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
[実施形態1]
(歯付ベルトB)
図1は、実施形態1に係る歯付ベルトBを示す。
実施形態1に係る歯付ベルトBは、ゴム組成物で形成されたエンドレスの歯付ベルト本体10を備えている。歯付ベルト本体10は、平帯状の基部11aと、その一方側、つまり、内周側の面にベルト長さ方向に間隔をおいて一定ピッチで一体に設けられた複数の歯部11bとを有する。歯付ベルト本体10には、その歯部側表面を被覆するように歯部側補強布12が貼設されている。また、歯付ベルト本体10における基部11aの内周側には、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように心線13が埋設されている。実施形態1に係る歯付ベルトBは、例えば、工作機械等におけるベルト伝動装置、特に、稼動時間が年間3〜120時間程度の工作機械におけるベルト伝動装置の動力伝達部材として好適に用いられる。実施形態1に係る歯付ベルトBは、例えば、ベルト長さが500〜3000mm、ベルト幅が10〜200mm、及びベルト厚さが3〜20mmである。また、歯部11bは、例えば、幅0.63〜16.46mm、高さ0.37〜9.6mm、及びピッチ1.0〜31.75mmである。
歯付ベルト本体10の歯部11bは、側面視形状が台形である台形歯であってもよく、また、半円形である丸歯であってもよく、更には、その他の形状であってもよい。歯部11bは、ベルト幅方向に延びるように形成されていても、また、ベルト幅方向に対して傾斜する方向に延びるように形成されたハス歯であっても、どちらでもよい。
歯付ベルト本体10は、ゴム成分に、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維に加えて各種のゴム配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されて架橋剤により架橋したゴム組成物で形成されている。このように歯付ベルト本体10を形成するゴム組成物が、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維を含有することにより、歯付ベルトBの耐久性を向上させることができる。ここで、本願における「微細繊維」とは、繊維径が1.0μm以下の繊維を意味する。
歯付ベルト本体10を形成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)、不飽和カルボン酸金属塩で強化された水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)、エチレン・プロピレンコポリマー(EPR)、エチレン・プロピレン・ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン・オクテンコポリマー、エチレン・ブテンコポリマーなどのエチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロプレンゴム(CR)、及びクロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)等が挙げられる。歯付ベルト本体10を形成するゴム組成物のゴム成分は、これらのうちの1種又は2種以上のブレンドゴムであることが好ましい。
不飽和カルボン酸金属塩で強化されたH−NBRでは、不飽和カルボン酸としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられ、また、金属としては、例えば、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等が挙げられる。
セルロース系微細繊維は、植物繊維を細かくほぐすことで得られる植物細胞壁の骨格成分で構成されたセルロース微細繊維を由来とする繊維材料である。セルロース系微細繊維の原料植物としては、例えば、木、竹、稲(稲わら)、じゃがいも、サトウキビ(バガス)、水草、海藻等が挙げられる。これらのうち木が好ましい。
セルロース系微細繊維は、セルロース微細繊維自体であっても、また、疎水化処理された疎水化セルロース微細繊維であっても、どちらでもよい。また、セルロース系微細繊維として、セルロース微細繊維自体と疎水化セルロース微細繊維とを併用してもよい。分散性の観点からは、セルロース系微細繊維は、疎水化セルロース微細繊維を含むことが好ましい。疎水化セルロース微細繊維としては、セルロースの水酸基の一部又は全部が疎水性基に置換されたセルロース微細繊維、及び表面処理剤によって疎水化表面処理されたセルロース微細繊維が挙げられる。
セルロースの水酸基の一部又は全部が疎水性基に置換されたセルロース微細繊維を得るための疎水化としては、例えば、エステル化(アシル化)(アルキルエステル化、複合エステル化、β−ケトエステル化など)、アルキル化、トシル化、エポキシ化、アリール化等が挙げられる。これらのうちエステル化が好ましい。具体的には、エステル化された疎水化セルロース微細繊維は、セルロースの水酸基の一部又は全部が、酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸、若しくは、そのハロゲン化物(特に塩化物)によりアシル化されたセルロース微細繊維である。表面処理剤によって疎水化表面処理されたセルロース微細繊維を得るための表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤等が挙げられる。
セルロース系微細繊維は、歯付ベルトBの耐久性を向上させる観点から、繊維径の分布が広いことが好ましく、繊維径の分布範囲は50〜500nmを含む。その繊維径の分布の下限は、その観点から、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下である。上限は、同じ観点から、好ましくは700nm以上、より好ましくは1μm以上である。セルロース系微細繊維の繊維径の分布範囲は、20nm〜700nmを含むことが好ましく、10nm〜1μmを含むことがより好ましい。
歯付ベルト本体10を形成するゴム組成物に含有されるセルロース系微細繊維の平均繊維径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上であり、また、好ましくは700nm以下、より好ましくは100nm以下である。
セルロース系微細繊維の繊維径の分布は、歯付ベルト本体10を形成するゴム組成物の試料を凍結粉砕した後、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると共に、50本のセルロース系微細繊維を任意に選択して繊維径を測定し、その測定結果に基づいて求められる。また、セルロース系微細繊維の平均繊維径は、その任意に選択した50本のセルロース系微細繊維の繊維径の数平均として求められる。
セルロース系微細繊維は、機械的解繊手段によって製造された高アスペクト比のものであっても、また、化学的解繊手段によって製造された針状結晶のものであっても、どちらでもよい。これらのうち、機械的解繊手段によって製造されたものが好ましい。また、セルロース系微細繊維として、機械的解繊手段によって製造されたものと化学的解繊手段によって製造されたものとを併用してもよい。機械的解繊手段に用いる解繊装置としては、例えば、二軸混練機などの混練機、高圧ホモジナイザー、グラインダー、ビーズミル等が挙げられる。化学的解繊手段に用いる処理としては、例えば、酸加水分解処理等が挙げられる。
歯付ベルト本体10を形成するゴム組成物におけるセルロース系微細繊維の含有量は、歯付ベルトBの耐久性を向上させる観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
ゴム配合剤としては、補強材、加工助剤、加硫促進助剤、可塑剤、共架橋剤、架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤等が挙げられる。
補強材としては、カーボンブラックでは、例えば、チャネルブラック;SAF、ISAF、N−339、HAF、N−351、MAF、FEF、SRF、GPF、ECF、N−234などのファーネスブラック;FT、MTなどのサーマルブラック;アセチレンブラック等が挙げられる。補強材としてはシリカも挙げられる。補強材は、これらのうち1種又は2種以上であることが好ましい。補強材の含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば20〜60質量部である。
加工助剤としては、例えば、ステアリン酸、ポリエチレンワックス、脂肪酸の金属塩等が挙げられる。加工助剤は、これらのうち1種又は2種以上であることが好ましい。加工助剤の含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば0.5〜2質量部である。
加硫促進助剤としては、例えば、酸化亜鉛(亜鉛華)や酸化マグネシウムなどの金属酸化物、金属炭酸塩、脂肪酸及びその誘導体等が挙げられる。加硫促進助剤は、これらのうち1種又は2種以上であることが好ましい。加硫促進助剤の含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば3〜7質量部である。
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)などのジアルキルフタレート、ジオクチルアジペート(DOA)などのジアルキルアジペート、ジオクチルセバケート(DOS)などのジアルキルセバケート等が挙げられる。可塑剤は、これらのうち1種又は2種以上であることが好ましい。可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば0.1〜40質量部である。
共架橋剤としては、例えば、液状NBRなどの液状ゴム等が挙げられる。共架橋剤は、1種又は2種以上であることが好ましい。共架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば3〜7質量部である。
架橋剤としては、硫黄及び有機過酸化物が挙げられる。架橋剤として、硫黄が配合されていてもよく、また、有機過酸化物が配合されていてもよく、更には、それらの両方が併用されていてもよい。架橋剤の配合量は、硫黄の場合、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば1〜5質量部であり、有機過酸化物の場合、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば1〜5質量部である。
加硫促進剤としては、例えば、チウラム系(例えばTETD、TT、TRAなど)、チアゾール系(例えばMBT、MBTSなど)、スルフェンアミド系(例えばCZなど)、ジチオカルバミン酸塩系(例えばBZ−Pなど)のもの等が挙げられる。加硫促進剤は、これらのうち1種又は2種以上であることが好ましい。加硫促進剤の含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば2〜5質量部である。
老化防止剤としては、例えば、アミン−ケトン系老化防止剤、ジアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤等が挙げられる。老化防止剤は、これらのうち1種又は2種以上であることが好ましい。老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば0.1〜5質量部である。
なお、歯付ベルト本体10を形成するゴム組成物には、繊維径が10μm以上の短繊維が含まれていてもよい。
歯部側補強布12は、例えば、綿、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等の糸で形成された織布、編物、不織布等の布材で構成されている。歯部側補強布12は伸性を有することが好ましい。歯部側補強布12の厚さは例えば0.3〜2.0mmである。歯部側補強布12には、歯付ベルト本体10との接着のための接着処理が施されている。
心線13は、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等で形成された撚り糸で構成されている。心線13の直径は例えば0.5〜2.5mmであり、断面における相互に隣接する心線中心間の寸法は例えば0.05〜0.20mmである。心線13には、歯付ベルト本体10に対する接着性を付与するための接着処理が施されている。
以上の構成の実施形態1に係る歯付ベルトBによれば、基部11a及び歯部11bを含む歯付ベルト本体10を形成するゴム組成物が、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維を含有することにより、その優れた補強効果が得られ、特に歯部11bの欠けが抑止され、また、優れた耐油性を得ることもでき、その結果、高い耐久性を得ることができる。
(歯付ベルトBの製造方法)
実施形態1に係る歯付ベルトBの製造方法について、図2〜5に基づいて説明する。
図2は、実施形態1に係る歯付ベルトBの製造に用いるベルト成形型20を示す。
このベルト成形型20は、円筒状であって、その外周面に、軸方向に延びる歯部形成溝21が周方向に間隔をおいて一定ピッチで形成されている。
実施形態1に係る歯付ベルトの製造方法は、材料準備工程、成形工程、架橋工程、及び仕上げ工程を有する。
<材料準備工程>
―基部及び歯部用の未架橋ゴムシート11’―
まず、素練りしているゴム成分にセルロース系微細繊維を投入して混練することにより分散させる。
ここで、ゴム成分へのセルロース系微細繊維の分散方法としては、例えば、セルロース系微細繊維を水に分散させた分散体(ゲル)を、オープンロールで素練りしているゴム成分に投入し、それらを混練しながら水分を気化させる方法、セルロース系微細繊維を水に分散させた分散体(ゲル)とゴムラテックスとを混合して水分を気化させて得られたセルロース系微細繊維/ゴムのマスターバッチを、素練りしているゴム成分に投入する方法、セルロース系微細繊維を溶剤に分散させた分散液とゴム成分を溶剤に溶解させた溶液とを混合して溶剤を気化させて得られたセルロース系微細繊維/ゴムのマスターバッチを、素練りしているゴム成分に投入する方法、セルロース系微細繊維を水に分散させた分散体(ゲル)を凍結乾燥させて粉砕したものを、素練りしているゴム成分に投入する方法、疎水化したセルロース系微細繊維を素練りしているゴム成分に投入する方法等が挙げられる。
次いで、ゴム成分とセルロース系微細繊維とを混練しながら、各種のゴム配合剤を投入して混練を継続する。
そして、得られた未架橋ゴム組成物をカレンダー成形等によってシート状に成形して基部及び歯部用の未架橋ゴムシート11’を作製する。
―歯部側補強布12’―
歯部側補強布12’に対して接着処理を施す。具体的には、歯部側補強布12’に、RFL水溶液に浸漬して加熱するRFL接着処理を施す。また、必要に応じて、RFL接着処理前に下地接着処理液に浸漬して加熱する下地接着処理を施す。また、必要に応じて、RFL接着処理後にゴム糊に浸漬して乾燥させるソーキングゴム糊接着処理、及び/又は、歯付ベルト本体10側となる面にゴム糊をコーティングして乾燥させるコーティングゴム糊接着処理を施す。
次いで、接着処理を施した歯部側補強布12’の両端を接合して筒状に形成する。
−心線13’−
心線13’に対して接着処理を施す。具体的には、心線13’に、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液(以下「RFL水溶液」という。)に浸漬して加熱するRFL接着処理を施す。また、必要に応じて、RFL接着処理前に下地接着処理液に浸漬して加熱する下地接着処理、及び/又は、RFL接着処理後にゴム糊に浸漬して乾燥させるゴム糊接着処理を施す。
<成形工程>
図3に示すように、ベルト成形型20の外周に筒状の歯部側補強布12’を被せ、その上から心線13’を螺旋状に巻き付け、更にその上から未架橋ゴムシート11’を巻き付ける。このとき、ベルト成形型20上には積層成形体B’が形成される。なお、未架橋ゴムシート11’は、列理方向がベルト長さ方向に対応するように使用しても、また、列理方向がベルト幅方向に対応するように使用しても、どちらでもよい。
<架橋工程>
図4に示すように、積層成形体B’の外周に離型紙22を巻き付けた後、その上からゴムスリーブ23を被せ、それを加硫缶内に配置して密閉すると共に、加硫缶内に高温及び高圧の蒸気を充填して所定の成型時間だけ保持する。このとき、積層成形体B’における未架橋ゴムシートが歯部側補強布12’を押圧しながら流動してベルト成形型20の歯部形成溝21に流入し、また、その架橋が進行し、且つそれと歯部側補強布12’及び心線13’とが複合一体化し、最終的に、図5に示すように、円筒状のベルトスラブSが成型される。なお、ベルトスラブSの成型温度は例えば100〜180℃、成型圧力は例えば0.5〜2.0MPa、及び成型時間は例えば10〜60分である。
<仕上げ工程>
加硫缶の内部を減圧して密閉を解き、ベルト成形型20とゴムスリーブ23との間に成型されたベルトスラブSを取り出して脱型し、その背面側を研磨して厚さ調整を行った後、所定幅に輪切りすることにより歯付ベルトBが製造される。
[実施形態2]
(歯付ベルトB)
実施形態2に係る歯付ベルトBは、外観構成が実施形態1と同一であるので、以下では図1に基づいて説明する。
実施形態2に係る歯付ベルトBでは、歯付ベルト本体10における基部11aを形成するゴム組成物は、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維を含有している。一方、歯部11bを形成するゴム組成物は、かかるセルロース系微細繊維を含有していない。なお、歯部11bを形成するゴム組成物は、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含まないセルロース系微細繊維を含有していてもよい。
その他の構成は実施形態1と同一である。
以上の構成の実施形態2に係る歯付ベルトBによれば、基部11aを形成するゴム組成物が、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維を含有することにより、その優れた補強効果が得られ、また、優れた耐油性を得ることもでき、その結果、高い耐久性を得ることができる。
(歯付ベルトBの製造方法)
実施形態2に係る歯付ベルトBの製造方法では、材料準備工程において、実施形態1と同様、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維を含有する基部用の未架橋ゴムシート11a’を作製する。また、ゴム成分に各種のゴム配合剤を配合し、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練して得られた繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維を含有しない未架橋ゴム組成物を、ベルト成形型20の歯部形成溝21の形状に形成した歯部用の未架橋ゴム11b’を作製する。
そして、成形工程において、図6に示すように、ベルト成形型20の外周に筒状の歯部側補強布12’を被せると共に歯部形成溝21に沿わせた後、図7に示すように、各歯部形成溝21に歯部用の未架橋ゴム11b’を嵌め入れ、図8に示すように、その上から心線13’を螺旋状に巻き付け、更にその上から基部用の未架橋ゴムシート11a’を巻き付けことにより積層成形体B’を形成する。架橋工程では、積層成形体B’における歯部用の未架橋ゴム11b’及び基部用の未架橋ゴムシート11a’の架橋が進行し、且つそれと歯部側補強布12’及び心線13’とが複合一体化し、最終的に、実施形態1における図5に示すのと同様の円筒状のベルトスラブSが成型される。
その他の方法は実施形態1と同一である。
[実施形態3]
(歯付ベルトB)
実施形態3に係る歯付ベルトBは、外観構成が実施形態1と同一であるので、以下では図1に基づいて説明する。
実施形態3に係る歯付ベルトBでは、歯付ベルト本体10における歯部11bを形成するゴム組成物は、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維を含有している。一方、基部11aを形成するゴム組成物は、かかるセルロース系微細繊維を含有していない。なお、基部11aを形成するゴム組成物は、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含まないセルロース系微細繊維を含有していてもよい。
その他の構成は実施形態1と同一である。
以上の構成の実施形態3に係る歯付ベルトBによれば、歯部11bを形成するゴム組成物が、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維を含有することにより、その優れた補強効果が得られ、特に歯部11bの欠けが抑止され、また、優れた耐油性を得ることもでき、その結果、高い耐久性を得ることができる。
(歯付ベルトBの製造方法)
実施形態3に係る歯付ベルトBの製造方法では、材料準備工程において、実施形態1と同様、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維を含有する歯部用の未架橋ゴム組成物を混練し、それをベルト成形型20の歯部形成溝21の形状に形成した歯部用の未架橋ゴム11b’を作製する。また、ゴム成分に各種のゴム配合剤を配合し、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練して得られたかかるセルロース系微細繊維を含有しない未架橋ゴム組成物をカレンダー成形等によってシート状に成形して基部用の未架橋ゴムシート11a’を作製する。
そして、成形工程において、実施形態2における図6に示すのと同様に、ベルト成形型20の外周に筒状の歯部側補強布12’を被せると共に歯部形成溝21に沿わせた後、図7に示すのと同様に、各歯部形成溝21に歯部用の未架橋ゴム11b’を嵌め入れ、図8に示すのと同様に、その上から心線13’を螺旋状に巻き付け、更にその上から基部用の未架橋ゴムシート11a’を巻き付けことにより積層成形体B’を形成する。架橋工程では、積層成形体B’における歯部用の未架橋ゴム11b’及び基部用の未架橋ゴムシート11a’の架橋が進行し、且つそれと歯部側補強布12’及び心線13’とが複合一体化し、最終的に、実施形態1における図5に示すのと同様の円筒状のベルトスラブSが成型される。
その他の方法は実施形態1と同一である。
[実施形態4]
(歯付ベルトB)
実施形態4に係る歯付ベルトBは、外観構成が実施形態1と同一であるので、以下では図1に基づいて説明する。
実施形態4に係る歯付ベルトBでは、歯部側補強布12に、RFL水溶液に浸漬して加熱するRFL接着処理が施されている。これにより、歯部側補強布12は、図9に示すように、RFL接着処理により形成されたRFL接着層14を介して歯付ベルト本体10に接着されている。なお、RFL接着処理の前には、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂(ブロックイソシアネート)等の下地接着処理剤をトルエン等の溶剤に溶解させた溶液、或いは、水に分散させた分散液からなる下地接着処理液に浸漬して加熱する下地接着処理が施され、RFL接着層14の下に下地接着層が設けられていることが好ましい。また、RFL接着処理の後に、ゴム糊に浸漬して乾燥させるソーキングゴム糊接着処理、及び歯付ベルト本体10側となる面にゴム糊をコーティングして乾燥させるコーティングゴム糊接着処理のうち1種又は2種のゴム糊接着処理が施され、RFL接着層14の上にゴム糊接着層が設けられていてもよい。
RFL接着層14は、RFL水溶液に含まれる固形分により形成されており、レゾルシン・ホルマリン樹脂(RF樹脂)とゴムラテックス由来のゴム成分とを含む。また、RFL接着層14は、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維を含有する。RFL接着層14に含まれるセルロース系微細繊維は、実施形態1における歯付ベルト本体10に含まれるのと同一の構成である。このようにRFL接着層14が、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維を含有することにより、歯部側補強布12の歯付ベルト本体10への高い接着力を得ることができる。
RFL接着層14では、セルロース系微細繊維は特定の方向に配向しておらず、無配向である。
RFL接着層14におけるセルロース系微細繊維の含有量は、歯部側補強布12の歯付ベルト本体10への高い接着性を得る観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上であり、また、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
RFL接着層14におけるゴム成分100質量部に対するセルロース系微細繊維の含有量は、歯部側補強布12の歯付ベルト本体10への高い接着性を得る観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
なお、RFL接着層14には、繊維径が10μm以上の短繊維が含まれていないことが好ましいが、歯部側補強布12の歯付ベルト本体10への接着性を阻害しない範囲でかかる短繊維が含まれていてもよい。
なお、歯付ベルト本体10の基部11aを形成するゴム組成物には、実施形態1及び2と同様にセルロース系微細繊維を含んでいても、また、セルロース系微細繊維を含んでいなくても、どちらでもよい。歯付ベルト本体10の歯部11bを形成するゴム組成物には、実施形態1及び3と同様にセルロース系微細繊維を含んでいても、また、セルロース系微細繊維を含んでいなくても、どちらでもよい。
その他の構成は実施形態1と同一である。
以上の構成の実施形態4に係る歯付ベルトBによれば、歯部側補強布12と歯付ベルト本体10との間に設けられたRFL接着層14が、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維を含有していることにより、歯部側補強布12の歯付ベルト本体10への高い接着力を得ることができることから、その優れた補強効果が得られ、特に歯部11bの欠けが抑止され、その結果、高い耐久性を得ることができる。
(歯付ベルトBの製造方法)
実施形態4に係る歯付ベルトBの製造方法では、材料準備工程において、歯部側補強布12’の作製の際に、歯部側補強布12’に対して接着処理を施す。具体的には、歯部側補強布12’に対して、RFL水溶液に浸漬して加熱するRFL接着処理を施す。また、RFL接着処理前に下地接着処理液に浸漬して加熱する下地接着処理を施すことが好ましい。なお、RFL接着処理後に、ゴム糊に浸漬して乾燥させるソーキングゴム糊接着処理、及び歯付ベルト本体10側となる面にゴム糊をコーティングして乾燥させるコーティングゴム糊接着処理のうち1種又は2種のゴム糊接着処理を施してもよい。
《下地接着処理》
下地接着処理液は、例えば、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂(ブロックイソシアネート)等の下地接着処理剤をトルエン等の溶剤に溶解させた溶液、或いは、水に分散させた分散液である。下地接着処理液の液温は例えば20〜30℃である。下地接着処理液の固形分濃度は、好ましくは20質量%以下である。
下地接着処理液への浸漬時間は例えば1〜3秒である。下地接着処理液への浸漬後の加熱温度(炉温度)は例えば200〜250℃である。加熱時間(炉内滞在時間)は例えば1〜3分である。下地接着処理の回数は、1回のみであっても、また、2回以上であっても、どちらでもよい。歯部側補強布12’には下地接着処理剤が付着するが、その付着量(目付量)は、歯部側補強布12’を形成する繊維材料の質量を基準として例えば0.5〜8質量%である。
《RFL接着処理》
RFL水溶液は、レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物にゴムラテックスと共にセルロース系微細繊維を水に分散させた分散体(ゲル)を混合した水溶液である。RFL水溶液の液温は例えば20〜30℃である。
レゾルシン(R)とホルマリン(F)とのモル比は例えばR/F=1/1〜1/2である。ゴムラテックスとしては、例えば、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス(Vp・St・SBR)、クロロプレンゴムラテックス(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックス(CSM)等が挙げられる。レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物(RF)とゴムラテックス(L)の固形分質量比は例えばRF/L=1/5〜1/20である。
RFL水溶液の固形分濃度は、好ましくは6.0質量%以上、より好ましくは9.0質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
RFL水溶液への浸漬時間は例えば1〜3秒である。RFL水溶液への浸漬後の加熱温度(炉温度)は例えば100〜180である。加熱時間(炉内滞在時間)は例えば1〜5分である。RFL接着処理の回数は、1回のみであっても、また、2回以上であっても、どちらでもよい。歯部側補強布12’にはRFL接着層14が付着するが、その付着量(目付量)は、歯部側補強布12’を形成する繊維材料の質量を基準として例えば2〜5質量%である。
その他の方法は実施形態1と同一である。
[実施形態5]
実施形態5に係る歯付ベルトBは、外観構成が実施形態1と同一であるので、以下では図1に基づいて説明する。
実施形態5に係る歯付ベルトBでは、歯部側補強布12に、RFL水溶液に浸漬して加熱するRFL接着処理、並びにゴム糊に浸漬して乾燥させるソーキングゴム糊接着処理、及び歯付ベルト本体10側となる面にゴム糊をコーティングして乾燥させるコーティングゴム糊接着処理のうち1種又は2種のゴム糊接着処理が施されている。これにより、歯部側補強布12は、図10に示すように、RFL接着処理により形成されたRFL接着層14及びゴム糊接着処理により形成されたゴム糊接着層15を介して歯付ベルト本体10に接着されている。なお、RFL接着処理の前には、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂(ブロックイソシアネート)等の下地接着処理剤をトルエン等の溶剤に溶解させた溶液、或いは、水に分散させた分散液からなる下地接着処理液に浸漬して加熱する下地接着処理が施され、RFL接着層14の下に下地接着層が設けられていることが好ましい。
RFL接着層14は、実施形態1と同様に繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維を含有していても、また、かかるセルロース系微細繊維を含有していなくても、どちらでもよい。
ゴム糊接着層15は、ゴム糊に含まれる固形分のゴム組成物により形成されており、そして、ゴム糊接着層15を形成するゴム組成物は、ゴム成分に、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維に加えて各種のゴム配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されて架橋剤により架橋したものである。このようにゴム糊接着層15が、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維を含有していることにより、歯部側補強布12の歯付ベルト本体10への高い接着力を得ることができる。
ゴム糊接着層15を形成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)、不飽和カルボン酸金属塩で強化された水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)、エチレン・プロピレンコポリマー(EPR)、エチレン・プロピレン・ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン・オクテンコポリマー、エチレン・ブテンコポリマーなどのエチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロプレンゴム(CR)、及びクロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)等が挙げられる。歯付ベルト本体10を形成するゴム組成物のゴム成分は、これらのうちの1種又は2種以上のブレンドゴムであることが好ましい。ゴム糊接着層15を形成するゴム組成物のゴム成分は、歯付ベルト本体10を形成するゴム組成物のゴム成分と同一であっても、また、異なっていても、どちらでもよい。
ゴム糊接着層15を形成するゴム組成物に含まれるセルロース系微細繊維は、実施形態1における歯付ベルト本体10に含まれるのと同一の構成である。ゴム糊接着層15では、セルロース系微細繊維は特定の方向に配向しておらず、無配向である。
ゴム糊接着層15におけるセルロース系微細繊維の含有量は、歯部側補強布12の歯付ベルト本体10への高い接着性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
ゴム配合剤としては、補強材、摩擦係数低減材、架橋剤、老化防止剤等が挙げられる。
補強材としては、カーボンブラックでは、例えば、チャネルブラック;SAF、ISAF、N−339、HAF、N−351、MAF、FEF、SRF、GPF、ECF、N−234などのファーネスブラック;FT、MTなどのサーマルブラック;アセチレンブラック等が挙げられる。補強材としてはシリカも挙げられる。補強材は、これらのうち1種又は2種以上であることが好ましい。補強材の含有量は、歯付ベルト本体10を形成するゴム組成物における補強材の含有量よりも少ないことが好ましく、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば10〜30質量部である。
摩擦係数低減材としては、例えば、超高分子量ポリエチレン樹脂粉、フッ素樹脂粉、モリブデン等が挙げられる。摩擦係数低減材は、これらのうち1種又は2種以上であることが好ましい。摩擦係数低減材の含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば5〜15質量部である。
架橋剤としては、硫黄及び有機過酸化物が挙げられる。架橋剤として、硫黄が配合されていてもよく、また、有機過酸化物が配合されていてもよく、更には、それらの両方が併用されていてもよい。架橋剤の配合量は、硫黄の場合、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば0.3〜5質量部であり、有機過酸化物の場合、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば0.3〜5質量部である。
加硫促進剤としては、例えば、チウラム系(例えばTETD、TT、TRAなど)、チアゾール系(例えばMBT、MBTSなど)、スルフェンアミド系(例えばCZなど)、ジチオカルバミン酸塩系(例えばBZ−Pなど)のもの等が挙げられる。加硫促進剤は、これらのうち1種又は2種以上であることが好ましい。加硫促進剤の含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば1〜3質量部である。
老化防止剤としては、例えば、アミン−ケトン系老化防止剤、ジアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤等が挙げられる。老化防止剤は、これらのうち1種又は2種以上であることが好ましい。老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば1〜3質量部である。
なお、ゴム糊接着層15を形成するゴム組成物には、繊維径が10μm以上の短繊維が含まれていないことが好ましいが、歯部側補強布12の歯付ベルト本体10への接着性を阻害しない範囲でかかる短繊維が含まれていてもよい。
なお、歯付ベルト本体10の基部11aを形成するゴム組成物には、実施形態1及び2と同様にセルロース系微細繊維を含んでいても、また、セルロース系微細繊維を含んでいなくても、どちらでもよい。歯付ベルト本体10の歯部11bを形成するゴム組成物には、実施形態1及び3と同様にセルロース系微細繊維を含んでいても、また、セルロース系微細繊維を含んでいなくても、どちらでもよい。
以上の構成の実施形態5に係る歯付ベルトBによれば、歯部側補強布12と歯付ベルト本体10との間に設けられたゴム糊接着層15が、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維を含有していることにより、歯部側補強布12の歯付ベルト本体10への高い接着力を得ることができることから、その優れた補強効果が得られ、特に歯部11bの欠けが抑止され、また、優れた耐油性を得ることもできる。更に、ゴム糊接着層15が、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維を含有していることにより、歯部側表面の高い耐摩耗性を得ることができる。その結果、高い耐久性を得ることができる。
(歯付ベルトBの製造方法)
実施形態5に係る歯付ベルトBの製造方法では、材料準備工程において、歯部側補強布12’の作製の際に、歯部側補強布12’に対して接着処理を施す。具体的には、歯部側補強布12’に対して、RFL水溶液に浸漬して加熱するRFL接着処理に加えて、ゴム糊に浸漬して乾燥させるソーキングゴム糊接着処理、及び歯付ベルト本体10側となる面にゴム糊をコーティングして乾燥させるコーティングゴム糊接着処理のうち1種又は2種のゴム糊接着処理を施す。なお、RFL接着処理前に下地接着処理液に浸漬して加熱する下地接着処理を施すことが好ましい。
下地接着処理は、実施形態4と同一である。
《RFL接着処理》
RFL水溶液は、レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物にゴムラテックスを混合した水溶液である。なお、RFL接着層14にセルロース系微細繊維を含める場合には、実施形態4と同様、RFL水溶液にセルロース系微細繊維を水に分散させた分散体(ゲル)を含めればよい。RFL水溶液の液温は例えば20〜30℃である。RFL水溶液の固形分濃度は、好ましくは30質量%以下である。
レゾルシン(R)とホルマリン(F)とのモル比は例えばR/F=1/1〜1/2である。ゴムラテックスとしては、例えば、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス(Vp・St・SBR)、クロロプレンゴムラテックス(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックス(CSM)等が挙げられる。レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物(RF)とゴムラテックス(L)の固形分質量比は例えばRF/L=1/5〜1/20である。
RFL水溶液への浸漬時間は例えば1〜3秒である。RFL水溶液への浸漬後の加熱温度(炉温度)は例えば100〜180℃である。加熱時間(炉内滞在時間)は例えば1〜5分である。RFL接着処理の回数は、1回のみであっても、また、2回以上であっても、どちらでもよい。歯部側補強布12’にはRFL接着層14が付着するが、その付着量(目付量)は、歯部側補強布12’を形成する繊維材料の質量を基準として例えば2〜5質量%である。
《ゴム糊接着処理》
ゴム糊は、ゴム糊接着層15を形成するセルロース系微細繊維を含有するゴム組成物の架橋前の未架橋ゴム組成物をトルエン等の溶剤に溶解させた溶液である。ゴム糊の作製は以下のようにして行う。
まず、素練りしているゴム成分にセルロース系微細繊維を投入して混練することにより分散させる。
ここで、ゴム成分へのセルロース系微細繊維の分散方法としては、例えば、セルロース系微細繊維を水に分散させた分散体(ゲル)を、オープンロールで素練りしているゴム成分に投入し、それらを混練しながら水分を気化させる方法、セルロース系微細繊維を水に分散させた分散体(ゲル)とゴムラテックスとを混合して水分を気化させて得られたセルロース系微細繊維/ゴムのマスターバッチを、素練りしているゴム成分に投入する方法、疎水化したセルロース系微細繊維を溶剤に分散させた分散体とゴム成分を溶剤に溶解させた溶液を混合して溶剤を気化させて得られたセルロース系微細繊維/ゴムのマスターバッチを、素練りしているゴム成分に投入する方法、セルロース系微細繊維を水に分散させた分散体(ゲル)を凍結乾燥させて粉砕したものを、素練りしているゴム成分に投入する方法、疎水化したセルロース系微細繊維を素練りしているゴム成分に投入する方法等が挙げられる。
次いで、ゴム成分とセルロース系微細繊維とを混練しながら、各種のゴム配合剤を投入して混練を継続することにより未架橋ゴム組成物を作製する。
そして、その未架橋ゴム組成物を溶剤に投入し、均一な溶液となるまで攪拌することによりゴム糊を作製する。ゴム糊の液温は例えば20〜30℃である。
ゴム糊の固形分濃度は、ソーキングゴム糊接着処理用では、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。コーティングゴム糊接着処理用では、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
ソーキングゴム糊接着処理の場合、ゴム糊への浸漬時間は例えば1〜3秒である。ゴム糊への浸漬後の乾燥温度(炉温度)は例えば50〜100℃である。乾燥時間(炉内滞在時間)は例えば1〜3分である。ソーキングゴム糊接着処理の回数は、1回のみであっても、また、2回以上であっても、どちらでもよい。歯部側補強布12’にはゴム糊接着層15が付着するが、その付着量(目付量)は、歯部側補強布12’を形成する繊維材料の質量を基準として例えば2〜5質量%である。
コーティングゴム糊接着処理の場合、コーティング後の乾燥温度(炉温度)は例えば50〜100℃である。乾燥時間(炉内滞在時間)は例えば1〜3分である。コーティングゴム糊接着処理の回数は、1回のみであっても、また、2回以上であっても、どちらでもよい。歯部側補強布12’にはゴム糊接着層15が付着するが、その付着量(目付量)は、歯部側補強布12’を形成する繊維材料の質量を基準として例えば2〜5質量%である。
その他の方法は実施形態1と同一である。
(未架橋ゴム組成物)
以下の歯付ベルト本体形成用の未架橋ゴム組成物のゴム1〜7及び歯部側補強布のゴム糊接着層用の未架橋ゴム組成物のゴム8〜14を作製した。各配合については、表1及び2にも示す。
<ゴム1>
まず、トルエンに粉末セルロース(日本製紙社製 商品名:KCフロック W−GK)を分散させた分散液を調製し、高圧ホモジナイザーを用い、その分散液同士を衝突させて粉末セルロースをセルロース微細繊維に解繊して、トルエンにセルロース微細繊維が分散した分散液を得た。従って、セルロース微細繊維は、機械的解繊手段によって製造され、また、疎水化処理されていないものである。
次いで、そのトルエンにセルロース微細繊維が分散した分散体と、トルエンにH−NBR(日本ゼオン社製 商品名:Zetpol 2020)を溶解させると共に可塑剤(DIC社製 商品名:W−260)を添加した溶液とを混合し、トルエン及び可塑剤を気化させてセルロース微細繊維/H−NBRのマスターバッチを作製した。なお、マスターバッチにおける各成分の含有量は、セルロース系微細繊維が25質量%、可塑剤が25質量%、及びH−NBRが50質量%であった。
続いて、H−NBRを素練りすると共に、そこにマスターバッチを投入して混練した。H−NBR及びマスターバッチの混合質量比を98:4とし、トータルのH−NBRを100質量部としたときのセルロース微細繊維の含有量が1質量部となるようにした。
そして、H−NBR、セルロース微細繊維、及び可塑剤を混練すると共に、そこに、H−NBR100質量部に対し、補強材のFEFカーボンブラック(東海カーボン社製 商品名:シーストSO)を40質量部、加工助剤のステアリン酸(日油社製 商品名:ステアリン酸つばき)を1質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛(堺化学工業社製 商品名:酸化亜鉛2種)を5質量部、可塑剤を24質量部、共架橋剤の液状NBR(日本ゼオン社製、商品名:Nipol 1312)を5質量部、架橋剤の硫黄(日本乾溜工業社製 商品名:オイルサルファー)を0.5質量部、チウラム系加硫促進剤(大内新興化学社製、商品名:ノクセラーTET−G)を2質量部、及びアミン−ケトン系老化防止剤(大内新興株式会社製、商品名:ノクラック224)を2質量部それぞれ投入して混練を継続することにより未架橋ゴム組成物を作製した。その未架橋ゴム組成物をゴム1とした。なお、ゴム1における可塑剤の含有量は、マスターバッチに含まれていたものと、後に添加したものとを合わせてH−NBR100質量部に対して25質量部である。
<ゴム2>
セルロース微細繊維の含有量がH−NBR100質量部に対して3質量部となるようにしたことを除いてゴム1と同様に作製した未架橋ゴム組成物をゴム2とした。
<ゴム3>
セルロース微細繊維の含有量がH−NBR100質量部に対して5質量部となるようにしたことを除いてゴム1と同様に作製した未架橋ゴム組成物をゴム3とした。
<ゴム4>
セルロース微細繊維の含有量がH−NBR100質量部に対して10質量部となるようにしたことを除いてゴム1と同様に作製した未架橋ゴム組成物をゴム4とした。
<ゴム5>
セルロース微細繊維の含有量がH−NBR100質量部に対して15質量部となるようにしたことを除いてゴム1と同様に作製した未架橋ゴム組成物をゴム5とした。
<ゴム6>
セルロース微細繊維の含有量がH−NBR100質量部に対して25質量部となるようにしたことを除いてゴム1と同様に作製した未架橋ゴム組成物をゴム6とした。
<ゴム7>
H−NBRを素練りすると共に、そこに、H−NBR100質量部に対し、補強材のFEFカーボンブラックを40質量部、加工助剤のステアリン酸を1質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛を5質量部、可塑剤を10質量部、共架橋剤の液状NBRを5質量部、架橋剤の硫黄を0.5質量部、チウラム系加硫促進剤を2質量部、及びアミン−ケトン系老化防止剤を2質量部それぞれ投入して混練することにより未架橋ゴム組成物を作製した。その未架橋ゴム組成物をゴム7とした。従って、ゴム7は、セルロース微細繊維を含まない。
Figure 2019143813
<ゴム8>
メタクリル酸亜鉛強化H−NBR(日本ゼオン社製 商品名:Zeoforte ZSC 2295)及びH−NBR(日本ゼオン社製 商品名:Zetpole 2020)を、前者及び後者の混合質量比を50:50として素練りすると共に、そこに、これらのゴム成分100質量部に対し、補強材のFEFカーボンブラック(東海カーボン社製 商品名:シーストSO)を20質量部、摩擦係数低減材の超高分子量ポリエチレン粉末(三井化学社製 商品名:ミペロンXM−220)を10質量部、架橋剤の硫黄(日本乾溜工業社製 商品名:オイルサルファー)を0.5質量部、チウラム系加硫促進剤(大内新興化学社製、商品名:ノクセラーTET−G)を2質量部、及びアミン−ケトン系老化防止剤(大内新興株式会社製、商品名:ノクラック224)を2質量部それぞれ投入して混練することにより未架橋ゴム組成物を作製した。その未架橋ゴム組成物をゴム8とした。従って、ゴム8は、セルロース微細繊維を含まない。
<ゴム9>
メタクリル酸亜鉛強化H−NBR及びH−NBRを素練りすると共に、そこにマスターバッチを投入して混練した。メタクリル酸亜鉛強化H−NBR、H−NBR、及びマスターバッチの混合質量比を50:48:4とし、トータルのH−NBRを100質量部としたときのセルロース微細繊維の含有量が1質量部となるようにした。
そして、メタクリル酸亜鉛強化H−NBR、H−NBR、セルロース微細繊維、及び可塑剤を混練すると共に、そこに、メタクリル酸亜鉛強化H−NBR及びH−NBRのゴム成分100質量部に対し、補強材のFEFカーボンブラックを20質量部、超高分子量ポリエチレン粉末を10質量部、架橋剤の硫黄を0.5質量部、チウラム系加硫促進剤を2質量部、及びアミン−ケトン系老化防止剤を2質量部それぞれ投入して混練することにより未架橋ゴム組成物を作製した。その未架橋ゴム組成物をゴム9とした。
<ゴム10>
セルロース微細繊維の含有量がゴム成分100質量部に対して3質量部となるようにしたことを除いてゴム9と同様に作製した未架橋ゴム組成物をゴム10とした。
<ゴム11>
セルロース微細繊維の含有量がゴム成分100質量部に対して5質量部となるようにしたことを除いてゴム9と同様に作製した未架橋ゴム組成物をゴム11とした。
<ゴム12>
セルロース微細繊維の含有量がゴム成分100質量部に対して10質量部となるようにしたことを除いてゴム9と同様に作製した未架橋ゴム組成物をゴム12とした。
<ゴム13>
セルロース微細繊維の含有量がゴム成分100質量部に対して15質量部となるようにしたことを除いてゴム9と同様に作製した未架橋ゴム組成物をゴム13とした。
<ゴム14>
セルロース微細繊維の含有量がゴム成分100質量部に対して25質量部となるようにしたことを除いてゴム9と同様に作製した未架橋ゴム組成物をゴム14とした。
Figure 2019143813
(試作評価用歯付ベルト)
以下の実施例1〜13及び比較例1の試験評価用歯付ベルト(歯部ピッチ8mm及びベルト幅10mm)を作製した。それぞれの構成は表3にも示す。
<実施例1>
実施例1の歯付ベルトには、歯付ベルト本体を形成する未架橋ゴム組成物として、セルロース微細繊維を含有するゴム1を用いた。
歯部側補強布として、ウレタン糸にアラミド繊維(帝人社製、商品名:テクノーラ)を巻き付けて伸縮性を付与したカバーリング糸を緯糸、及びナイロン撚糸を経糸とした織布を用いた。この歯部側補強布の織布に対し、下地接着処理としてエポキシ樹脂溶液に浸漬した後に加熱する下地接着処理、及びRFL水溶液に浸漬した後に加熱するRFL接着処理を施した。また、RFL接着処理を施した歯部側補強布の織布に対し、ゴム糊に浸漬して乾燥させるソーキングゴム糊接着処理を2度繰り返して施した。ゴム糊として、セルロース微細繊維を含有しないゴム8を溶剤のトルエンに溶解させた固形分濃度が10質量%のものを用いた。ゴム糊の液温は25℃であった。ゴム糊への浸漬時間は5秒とした。ゴム糊への浸漬後の乾燥温度は100℃及び乾燥時間は40秒とした。
心線として、ガラス繊維製のものを用いた。
<実施例2>
歯付ベルト本体を形成する未架橋ゴム組成物として、セルロース微細繊維を含有するゴム2を用いたことを除いて実施例1と同様に実施例2の歯付ベルトを作製した。
<実施例3>
歯付ベルト本体を形成する未架橋ゴム組成物として、セルロース微細繊維を含有するゴム3を用いたことを除いて実施例1と同様に実施例3の歯付ベルトを作製した。
<実施例4>
歯付ベルト本体を形成する未架橋ゴム組成物として、セルロース微細繊維を含有するゴム4を用いたことを除いて実施例1と同様に実施例4の歯付ベルトを作製した。
<実施例5>
歯部側補強布のソーキングゴム糊接着処理にセルロース微細繊維を含有するゴム9のゴム糊を用いたことを除いて実施例4と同様に実施例5の歯付ベルトを作製した。
<実施例6>
歯部側補強布のソーキングゴム糊接着処理にセルロース微細繊維を含有するゴム10のゴム糊を用いたことを除いて実施例4と同様に実施例6の歯付ベルトを作製した。
<実施例7>
歯部側補強布のソーキングゴム糊接着処理にセルロース微細繊維を含有するゴム11のゴム糊を用いたことを除いて実施例4と同様に実施例7の歯付ベルトを作製した。
<実施例8>
歯部側補強布のソーキングゴム糊接着処理にセルロース微細繊維を含有するゴム12のゴム糊を用いたことを除いて実施例4と同様に実施例8の歯付ベルトを作製した。
<実施例9>
歯部側補強布のソーキングゴム糊接着処理にセルロース微細繊維を含有するゴム13のゴム糊を用いたことを除いて実施例4と同様に実施例9の歯付ベルトを作製した。
<実施例10>
歯部側補強布のソーキングゴム糊接着処理にセルロース微細繊維を含有するゴム14のゴム糊を用いたことを除いて実施例4と同様に実施例10の歯付ベルトを作製した。
<実施例11>
歯付ベルト本体を形成する未架橋ゴム組成物として、セルロース微細繊維を含有するゴム5を用いたことを除いて実施例1と同様に実施例11の歯付ベルトを作製した。
<実施例12>
歯付ベルト本体を形成する未架橋ゴム組成物として、セルロース微細繊維を含有するゴム6を用いたことを除いて実施例1と同様に実施例12の歯付ベルトを作製した。
<実施例13>
歯付ベルト本体を形成する未架橋ゴム組成物として、セルロース微細繊維を含有しないゴム7を用い、歯部側補強布のソーキングゴム糊接着処理にセルロース微細繊維を含有するゴム12のゴム糊を用いたことを除いて実施例1と同様に実施例13の歯付ベルトを作製した。
<比較例>
歯付ベルト本体を形成する未架橋ゴム組成物として、セルロース微細繊維を含有しないゴム7を用い、歯部側補強布のソーキングゴム糊接着処理にセルロース微細繊維を含有しないゴム8のゴム糊を用いたことを除いて実施例1と同様に比較例の歯付ベルトを作製した。
Figure 2019143813
(試験評価方法)
<セルロース微細繊維の平均繊維径・繊維径分布>
ゴム1〜6及びゴム9〜14を架橋させたゴム組成物の試料を、実施例1〜13の歯付ベルトの歯付ベルト本体及びゴム糊接着層から採取し、そのゴム組成物の試料を凍結粉砕した後、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると共に、50本の繊維を任意に選択して繊維径を測定し、その数平均を求めて平均繊維径とした。また、50本のセルロース微細繊維のうち繊維径の最大値及び最小値を求めた。
<ベルト走行試験>
図11は、ベルト走行試験機30のプーリレイアウトを示す。
このベルト走行試験機30は、駆動プーリ31と、従動プーリ32と、アイドラプーリ33とを有する。駆動プーリ31は、プーリ周縁に21箇所の歯部噛合溝が設けられている。従動プーリ32は、プーリ周縁に42箇所の歯部噛合溝が設けられている。アイドラプーリ33は、ベルト背面を押圧するためにプーリ周縁がフラットに形成されている。駆動プーリ31、従動プーリ32、及びアイドラプーリ33は、いずれも炭素鋼(S45C)製である。
実施例1〜13及び比較例のそれぞれの歯付ベルトBについて、このベルト走行試験機30を用い、以下のようにして耐歯欠け性及び耐摩耗性を評価した。
−耐歯欠け性評価−
予め、歯付ベルトBの質量を測定した。その後、ベルト走行試験機30に歯付ベルトBを巻き掛け、従動プーリ32に後方向きに荷重をかけて歯付ベルトBに216Nの張力を負荷した。そして、歯付ベルトBに負荷される張力が550Nとなるようにし、駆動プーリ31を3000rpmの回転数で回転させてベルト走行させ、歯部の欠損が発生するまでの走行時間を歯部耐久寿命とした。ベルト走行試験は、実施例1〜13及び比較例の全てについて室温雰囲気で行うと共に、実施例1〜4、11、12、及び比較例については80℃雰囲気でも行った。
−耐摩耗性評価−
前記の耐摩耗性の測定と同条件にて歯付ベルトBを300時間ベルト走行させた。ベルト走行後、再び歯付ベルトBの質量を測定し、走行前後の質量差を摩耗質量として算出した。
<耐油性試験>
実施例1〜13及び比較例のそれぞれの歯付ベルトについて、質量を測定した後に新品のエンジンオイル中に140℃にて168時間浸漬した。その後、付着油をエアーガンにて十分に除去し、再度質量を測定した。浸漬前後の質量の変化率(%にて表記)を算出した。
(試験評価結果)
試験結果を表4及び5に示す。なお、以下、セルロース微細繊維の含有量は、特に記載しなくても、ゴム成分100質量部に対する質量部を意味する。
Figure 2019143813
Figure 2019143813
<セルロース微細繊維の平均繊維径・繊維径分布>
表4によれば、ゴム1〜6及びゴム9〜14を架橋させたゴム組成物に含有されたセルロース微細繊維は、いずれも繊維径の分布が広いことが分かる。
<ベルト走行試験>
−耐歯欠け性(室温)−
歯付ベルト本体及びゴム糊接着層のいずれにもセルロース微細繊維が含有されていない比較例1では、室温における歯部耐久寿命は384時間であった。
これに対し、歯付ベルト本体のみにセルロース微細繊維が含有されており、その含有量が、それぞれ0質量部、1質量部、3質量部、5質量部、10質量部、15質量部、及び25質量部である実施例1〜4及び11〜12では、室温における歯部耐久寿命が順に528時間、696時間、時間792、864時間、936時間、及び1056時間であった。つまり、本実施例の範囲では、セルロース微細繊維の含有量が増えるにつれて歯部耐久寿命が長くなることが分かる。
また、歯付ベルト本体におけるセルロース微細繊維の含有量が同じ10質量部である実施例4〜10において、ゴム糊接着層におけるセルロース微細繊維の含有量が増えるにつれて、基本的に歯部耐久寿命が長くなっているのが分かる。具体的には、実施例4〜10におけるゴム糊接着層におけるセルロース微細繊維の含有量が、それぞれ0質量部、1質量部、3質量部、5質量部、10質量部、15質量部、及び25質量部であるのに対し、室温における歯部耐久寿命が順に864時間、912時間、960時間、1032時間、1080時間、1128時間、及び1128時間であった。なお、実施例9及び10では、歯部耐久寿命が同じであることから、セルロース微細繊維の含有量が15質量部以上では、歯部耐久性を高める効果が飽和している可能性が考えられる。
また、ゴム糊接着層のみにセルロース微細繊維を10質量部含有させた実施例13では、歯部耐久寿命が456時間であり、比較例1の384時間に対しては幾分長い。しかしながら、歯付ベルト本体におけるセルロース微細繊維の含有量が10質量部である実施例8の場合、ゴム糊接着層におけるセルロース微細繊維の含有量が実施例13と同じであるが、歯部耐久寿命が1080時間と大幅に優れることが分かる。
以上から、歯付ベルト本体及びゴム糊接着層のいずれにセルロース微細繊維を含有させた場合でも歯部耐久寿命は向上するものの、歯付ベルト本体に含有させる場合の方がその効果は顕著であることが分かる。
−耐歯欠け性(80℃)−
歯付ベルト本体及びゴム糊接着層のいずれにもセルロース微細繊維が含有されていない比較例1では、80℃における歯部耐久寿命は240時間であった。
これに対し、歯付ベルト本体のみにセルロース微細繊維が含有されており、その含有量が、それぞれ0質量部、1質量部、3質量部、5質量部、10質量部、15質量部、及び25質量部である実施例1〜4及び11〜12では、80℃における歯部耐久寿命が順に432時間、624時間、744時間、792時間、888時間、及び9126時間であった。つまり、本実施例の範囲では、セルロース微細繊維の含有量が増えるにつれて高温での歯部耐久寿命が長くなることが分かる。
また、高温(80℃)における歯部耐久寿命は、いずれも、室温における歯部耐久寿命よりも短くなっている。しかしながら、セルロース微細繊維が含有されていることにより、その劣化が軽減されていることが分かる。つまり、比較例1では、室温における歯部耐久寿命が384時間であったのに対し、80℃における歯部耐久寿命が240時間であり、38%程度劣化している。これに対し、歯付ベルト本体に1質量部のセルロース微細繊維を含有させた実施例1では、室温における歯部耐久寿命が528時間であったのに対し、80℃における歯部耐久寿命が432時間であり、劣化は18%程度である。実施例2、3、4、11及び12においても、その劣化は順に10%、6%、8%、5%、及び14%程度であり、いずれの場合も、セルロース微細繊維を含まない場合に比べると大きく軽減されていることが分かる。
このように、セルロース微細繊維が含有されていることによる高温における歯部耐久寿命の劣化が軽減される要因としては、線膨張係数の低下が考えられる。つまり、セルロース微細繊維が含有されていることにより、歯付ベルトの線膨張係数が低下する。線膨張係数が低下すると、高温における歯部の膨張が抑制される。その結果、歯部とプーリとの噛み合い精度が高温においても維持され、温度上昇に伴う歯部に対する負担の増加が抑制され、その結果、高温における歯部耐久寿命の劣化が抑制されるのではないかと推測される。
−耐摩耗性−
歯付ベルト本体及びゴム糊接着層のいずれにもセルロース微細繊維が含有されていない比較例1では摩耗質量が4.1gであった。また、歯付ベルト本体のみにセルロース微細繊維が含有されている実施例1〜4及び11〜12では、摩耗質量が3.9g〜4.3gであった。従って、歯付ベルト本体のみにセルロース微細繊維が含有されていても、耐摩耗性の特別の向上が見られないことが分かる。
これに対し、歯付ベルト本体におけるセルロース微細繊維の含有量が同じ10質量部である実施例4〜10において、ゴム糊接着層におけるセルロース微細繊維の含有量は、それぞれ0質量部、1質量部、3質量部、5質量部、10質量部、15質量部、及び25質量部であるのに対し、摩耗質量が順に4.2g、3.3g、2.5g、2.1g、1.8g、1.4g、及び1.3gであった。つまり、ゴム糊接着層におけるセルロース微細繊維の含有量が増えるにつれて摩耗質量が減少していることが分かる。ここで、摩耗質量が3.5g以下となっていれば、従来に対して優位に改善されていると考えられる。
また、歯付ベルト本体にセルロース微細繊維が含有されていない実施例13では、ゴム糊接着層にセルロース微細繊維が10質量部含有されており、摩耗質量が2.0gであって、顕著に耐摩耗性が改善されていることが分かる。
以上から、耐摩耗性については、歯部側補強布のゴム糊接着層にセルロース微細繊維が含有されていることによって向上させる効果が発揮されると考えられる。
<耐油性試験>
歯付ベルト本体及びゴム糊接着層のいずれにもセルロース微細繊維が含有されていない比較例1では、耐油性の評価指標としての油膨潤前後の質量変化量が4.4%であった。
これに対し、歯付ベルト本体のみにセルロース微細繊維が含有されており、その含有量が、それぞれ0質量部、1質量部、3質量部、5質量部、10質量部、15質量部、及び25質量部である実施例1〜4及び11〜12では、質量変化量が順に3.9%、3.7%、3.1%、2.8%、1.9%、及び1.5%であった。つまり、本実施例の範囲では、セルロース微細繊維の含有量が増えるにつれて質量変化量が小さくなっており、耐油性が向上することが分かる。
また、歯付ベルト本体におけるセルロース微細繊維の含有量が同じ10質量部である実施例4〜10において、ゴム糊接着層におけるセルロース微細繊維の含有量が、それぞれ0質量部、1質量部、3質量部、5質量部、10質量部、15質量部、及び25質量部であるのに対し、質量変化量が順に2.8%、2.8%、2.7%、2.6%、2.3%、2.2%、及び2.1%であった。つまり、ゴム糊接着層におけるセルロース微細繊維の含有量が増えるにつれて、質量変化率が小さくなっており、耐油性は向上することが分かる。
また、ゴム糊接着層のみにセルロース微細繊維を10質量部含有させた実施例13では、質量変化率が4.3%であり、比較例1の4.4%に対して僅かに抑制されている。歯付ベルト本体におけるセルロース微細繊維の含有量が10質量部である実施例8の場合、ゴム糊接着層におけるセルロース微細繊維の含有量は実施例13同じであるが、質量変化率が2.3%である。
以上から、歯付ベルト本体にセルロース系微細繊維を含有させることにより耐油性を向上させることができ、歯部側補強布のゴム糊接着層のみにセルロース微細繊維を含有させた場合でも、効果は小さいとしても、耐油性が向上することが分かる。また、歯付ベルト本体に加えてゴム糊接着層にもセルロース微細繊維を含有させた場合には、耐油性がより顕著に向上することが分かる。
本開示は、歯付ベルトの技術分野において有用である。
B 歯付ベルト
10 歯付ベルト本体
11a 基部
11b 歯部
12 心線
13 歯部側補強布
14 RFL接着層
15 ゴム糊接着層

Claims (7)

  1. 平帯状の基部と、前記基部の一方側の面にベルト長さ方向に間隔をおいて一体に設けられた複数の歯部と、を有するゴム組成物で形成された歯付ベルト本体
    を備えた歯付ベルトであって、
    前記基部を形成するゴム組成物、及び、前記歯部を形成するゴム組成物のうち少なくとも1つは、繊維径の分布範囲が83〜390nmを含むセルロース系微細繊維を含有する歯付ベルト。
  2. 請求項1に記載された歯付ベルトにおいて、
    前記セルロース系微細繊維が化学的解繊手段によって製造されたものである歯付ベルト。
  3. 請求項1に記載された歯付ベルトにおいて、
    前記セルロース系微細繊維が機械的解繊手段によって製造されたものである歯付ベルト。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載された歯付ベルトにおいて、
    前記基部を形成するゴム組成物、及び、前記歯部を形成するゴム組成物のうち少なくとも1つにおける前記セルロース系微細繊維の含有量が、ゴム成分100質量部に対して1〜30質量部である歯付ベルト。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載された歯付ベルトにおいて、
    前記歯付ベルト本体を形成するゴム組成物のゴム成分が水素添加アクリロニトリルゴムを含む歯付ベルト。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載された歯付ベルトにおいて、
    前記歯付ベルト本体に、ゴム成分を含む接着層を介してその歯部側表面を被覆するように貼設された歯部側補強布を備え、
    前記接着層に含まれるゴム成分が水素添加アクリロニトリルゴム及び不飽和カルボン酸金属塩で強化された水素添加アクリロニトリルゴムを含む歯付ベルト。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1つに記載された歯付ベルトにおいて、
    前記セルロース系微細繊維の繊維径の分布範囲が83〜400nmを含むことを特徴とする歯付ベルト。
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