JP6527009B2 - 伝動ベルト - Google Patents
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(VリブドベルトB)
図1及び2は、実施形態1に係るVリブドベルトBを示す。実施形態1に係るVリブドベルトBは、例えば、自動車のエンジンルーム内に設けられる補機駆動ベルト伝動装置等に用いられるエンドレスの動力伝達部材である。実施形態1に係るVリブドベルトBは、例えば、ベルト長さが700〜3000mm、ベルト幅が10〜36mm、及びベルト厚さが4.0〜5.0mmである。
実施形態1に係るVリブドベルトBの製造方法について、図4〜9に基づいて説明する。
−圧縮ゴム層用、接着ゴム層用、及び背面ゴム層用の未架橋ゴムシート11’,12’,13’−
圧縮ゴム層用、接着ゴム層用、及び背面ゴム層用の未架橋ゴムシート11’,12’,13’のうち、セルロース系微細繊維を含有させるものの作製を以下のようにして行う。
心線14’に対して接着処理を施す。具体的には、心線13’に、RFL水溶液に浸漬して加熱するRFL接着処理を施す。また、RFL接着処理前に下地接着処理液に浸漬して加熱する下地接着処理を施すことが好ましい。なお、RFL接着処理前にゴム糊に浸漬して乾燥させるゴム糊接着処理を施してもよい。
図6に示すように、表面が平滑な円筒ドラム34上にゴムスリーブ35を被せ、その外周上に、背面ゴム層用の未架橋ゴムシート13’、及び接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’を順に巻き付けて積層し、その上から心線14’を円筒状の内型31に対して螺旋状に巻き付け、更にその上から接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’、及び圧縮ゴム層用の未架橋ゴムシート11’を順に巻き付ける。このとき、ゴムスリーブ35上には積層成形体B’が形成される。
積層成形体B’を設けたゴムスリーブ35を円筒ドラム34から外し、図7に示すように、それを外型32の内周面側に内嵌め状態にセットした後、図8に示すように、内型31を外型32にセットされたゴムスリーブ35内に位置付けて密閉する。
内型31の内部を減圧して密閉を解き、内型31と外型32との間でゴムスリーブ35を介して成型されたベルトスラブSを取り出し、ベルトスラブSを所定幅に輪切りして表裏を裏返すことによりVリブドベルトBが製造される。
(平ベルトC)
図10は、実施形態2の平ベルトCを模式的に示す。実施形態2に係る平ベルトCは、例えば、送風機やコンプレッサーや発電機などの駆動伝達用途、自動車の補機駆動用途等の比較的高負荷条件下での使用において長寿命が要求される用途で用いられる動力伝達部材である。平ベルトCは、例えば、ベルト長さが600〜3000mm、ベルト幅が10〜20mm、及びベルト厚さが2〜3.5mmである。
実施形態2に係る平ベルトCの製造方法について、図11〜13に基づいて説明する。
内側ゴム層用、接着ゴム層用、及び外側ゴム層用の未架橋ゴムシート21’,22’,23’のうち、セルロース系微細繊維を含有させるものを、実施形態1と同様にして作製する。なお、セルロース系微細繊維を含有させないものの作製は、ゴム成分に各種のゴム配合剤を配合し、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練し、得られた未架橋ゴム組成物をカレンダー成形等によってシート状に成形することにより行う。
図11(a)に示すように、円筒金型30の外周に内側ゴム層用の未架橋ゴムシート13’を巻き付けた後、その上に接着ゴム層用の未架橋ゴムシート22’を巻き付ける。
続いて、図12に示すように、円筒金型30上の積層成形体C’にゴムスリーブ31を被せた後、それを加硫缶にセットして密閉し、高熱の水蒸気などにより円筒金型30を加熱すると共に、高圧をかけてゴムスリーブ31を円筒金型30側の半径方向に押圧する。このとき、積層成形体C’の未架橋ゴム組成物が流動すると共にゴム成分の架橋反応が進行し、加えて、心線24’の接着反応も進行し、これにより図13に示すように円筒金型30上に筒状のベルトスラブSが形成される。
研磨・仕上げ工程では、加硫缶から円筒金型30を取り出し、円筒金型30上に形成された円筒状のベルトスラブSを脱型した後、その外周面及び/又は内周面を研磨して厚さを均一化させる。
実施形態1ではVリブドベルトB及び実施形態2では平ベルトCをそれぞれ示したが、特にこれらに限定されるものではなく、繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維を含有するゴム組成物でベルト本体の少なくとも一部が形成されていれば、ローエッジVベルトやラップドVベルト等の他の摩擦伝動ベルト、或いは、噛み合い伝動ベルトの歯付ベルトであってもよい。
以下の実施例1-1〜1-9及び比較例1のVリブドベルトを作製した。それぞれの詳細については表1にも示す。
トルエンに木材を原料とする粉末セルロース(日本製紙社製 商品名:KCフロック W−50GK)を分散させた分散体を調製し、高圧ホモジナイザーを用い、その分散体同士を衝突させて粉末セルロースをセルロース微細繊維に解繊して、トルエンにセルロース微細繊維が分散した分散体を得た。従って、セルロース微細繊維は、機械的解繊手段によって製造され、また、疎水化処理されていないものである。
セルロース微細繊維の含有量がゴム成分100質量部に対して3質量部となるようにしたことを除いて実施例1-1と同様にして実施例1-2のVリブドベルトを作製した。
セルロース微細繊維の含有量がゴム成分100質量部に対して5質量部となるようにしたことを除いて実施例1-1と同様にして実施例1-3のVリブドベルトを作製した。
セルロース微細繊維の含有量がゴム成分100質量部に対して10質量部となるようにしたことを除いて実施例1-1と同様にして実施例1-4のVリブドベルトを作製した。
セルロース微細繊維の含有量がゴム成分100質量部に対して15質量部となるようにしたことを除いて実施例1-1と同様にして実施例1-5のVリブドベルトを作製した。
セルロース微細繊維の含有量がゴム成分100質量部に対して25質量部となるようにしたことを除いて実施例1-1と同様にして実施例1-6のVリブドベルトを作製した。
圧縮ゴム層用の未架橋ゴム組成物に、ゴム成分100質量部に対してナイロン短繊維(帝人社製 商品名:CFN3000 繊維径:26μm 繊維長:3mm)14質量部を含有させたことを除いて実施例1-1と同様にして実施例1-7のVリブドベルトを作製した。短繊維の含有量のセルロース系微細繊維の含有量に対する比(表1の“B/A”)は14である。セルロース系微細繊維及び短繊維の総含有量(表1の“A+B”)は、ゴム成分100質量部に対して15質量部である。
圧縮ゴム層用の未架橋ゴム組成物に、ゴム成分100質量部に対してナイロン短繊維12質量部を含有させたことを除いて実施例1-2と同様にして実施例1-8のVリブドベルトを作製した。短繊維の含有量のセルロース系微細繊維の含有量に対する比(B/A)は4である。セルロース系微細繊維及び短繊維の総含有量(A+B)は、ゴム成分100質量部に対して15質量部である。
圧縮ゴム層用の未架橋ゴム組成物に、ゴム成分100質量部に対してナイロン短繊維10質量部を含有させたことを除いて実施例1-3と同様にして実施例1-9のVリブドベルトを作製した。短繊維の含有量のセルロース系微細繊維の含有量に対する比(短繊維の含有量のセルロース系微細繊維の含有量)は3である。セルロース系微細繊維及び短繊維の総含有量は、ゴム成分100質量部に対して15質量部である。
圧縮ゴム層用の未架橋ゴム組成物に、セルロース微細繊維を含有させず、且つゴム成分100質量部に対してナイロン短繊維15質量部を含有させたことを除いて実施例1-1と同様にして比較例のVリブドベルトを作製した。
<平均繊維径・繊維径分布>
実施例1-1〜1-9のそれぞれのVリブドベルトの圧縮ゴム層を形成するゴム組成物について採取した試料を凍結粉砕した後、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると共に、50本の繊維を任意に選択して繊維径を測定し、その数平均を求めて平均繊維径とした。また、50本のセルロース微細繊維のうち繊維径の最大値及び最小値を求めた。
図14は摩擦係数測定装置40を示す。
図15は、耐摩耗性評価用ベルト走行試験機50のプーリレイアウトを示す。
図16は、耐屈曲疲労性評価用ベルト走行試験機60のプーリレイアウトを示す。
試験結果を表1に示す。なお、以下、セルロース微細繊維の含有量は、特に記載しなくても、ゴム成分100質量部に対する質量部を意味する。
実施例1-1〜1-9のそれぞれのVリブドベルトの圧縮ゴム層を形成するゴム組成物に含有されたセルロース微細繊維は、いずれも繊維径の分布が広いことが分かる。
比較例1の摩擦係数が0.6であったのに対し、実施例1-1〜1-9の摩擦係数は0.6〜1.1の範囲であり、比較例1と同等又は比較例1よりも幾分大きいことが分かる。しかしながら、全ての実施例1-1〜1-9について、乾燥時の摩擦係数と乾き際の摩擦係数との変化量(増加量)は、比較例1の場合の0.9よりも小さいことが分かる。特に、セルロース微細繊維の含有量が5質量部以上である実施例1-3〜1-6、及びセルロース微細繊維とナイロン短繊維との両方を含む実施例1-7〜1-9では、増加量が−0.05〜0.05と0に近く、従って、被水後の乾き際の摩擦係数の増加が抑制されていることが分かる。セルロース微細繊維の含有量が最も少ない(1質量部)実施例1-1の場合でも、摩擦係数の変化は0.5であり、比較例1に比べれば半分近い値であることが分かる。
比較例1の質量減量が摩耗率3.2%に対し、セルロース微細繊維の含有量が1質量部である実施例1-1でも2.8%と改善しており、セルロース微細繊維の含有量が増加するほど耐摩耗性が向上することが分かる(実施例1-2〜1-6において、順に2.7、2.1、1.9、1.8、及び1.7)。但し、セルロース微細繊維の含有量が10質量部を越えると、それ以上に含有量を増やしても改善は小さいことが分かる(実施例1-4〜1-6)。
ナイロン短繊維の含有量が15質量部である比較例1では、クラック発生寿命が520時間であったのに対し、セルロース微細繊維の含有量が1質量部である実施例1-1では、クラック発生寿命が1205時間であり、2倍以上に改善されているのが分かる。セルロース微細繊維の含有量を3質量部に増やすことで更にクラック発生寿命は改善されるが(実施例1-2)、それ以上増やすとむしろクラック発生寿命は短くなることが分かる(実施例1-3〜1-6)。但し、セルロース微細繊維の含有量が25質量部である実施例1-6でもクラック発生寿命は900時間であり、比較例1に比べれば大幅に改善している。
以下の実施例2-1〜2-6及び比較例2-1〜2-2の平ベルトを作製した。それぞれの詳細については表2にも示す。
実施例1-1と同様にしてセルロース微細繊維/EPDMのマスターバッチを作製した。
セルロース微細繊維の含有量がゴム成分100質量部に対して3質量部となるようにしたことを除いて実施例2-1と同様にして実施例2-2の平ベルトを作製した。
セルロース微細繊維の含有量がゴム成分100質量部に対して5質量部となるようにしたことを除いて実施例2-1と同様にして実施例2-3の平ベルトを作製した。
セルロース微細繊維の含有量がゴム成分100質量部に対して10質量部となるようにしたことを除いて実施例2-1と同様にして実施例2-4の平ベルトを作製した。
セルロース微細繊維の含有量がゴム成分100質量部に対して15質量部となるようにしたことを除いて実施例2-1と同様にして実施例2-5の平ベルトを作製した。
セルロース微細繊維の含有量がゴム成分100質量部に対して25質量部となるようにしたことを除いて実施例2-1と同様にして実施例2-6の平ベルトを作製した。
内側ゴム層を形成するゴム組成物にセルロース微細繊維を含有させていないことを除いて実施例2-1と同様にして比較例1-1の平ベルトを作製した。
内側ゴム層を形成するゴム組成物にセルロース微細繊維を含有させず、且つナイロン短繊維をゴム成分100質量部に対して5質量部含有させたことを除いて実施例2-1と同様にして比較例1-2の平ベルトを作製した。
<平均繊維径・繊維径分布>
実施例2-1〜2-6のそれぞれの平ベルトの内側ゴム層を形成するゴム組成物について試料を採取し、試験評価1と同様の方法により、セルロース微細繊維の平均繊維径、並びに繊維径の最大値及び最小値を求めた。
図17は、摩擦・摩耗特性評価用ベルト走行試験機70のプーリレイアウトを示す。
粉状の付着物がある場合:50、
付着物が無い場合:0
ここで、まとまり難いゴムは粉状になり、ベルト表面から脱落する傾向にある。耐摩耗性が良好であっても、摩耗粉の状態が悪いと摩耗粉が異物となり、製品価値は低く評価される。
図18は、耐摩耗性評価用ベルト走行試験機80のプーリレイアウトを示す。
試験結果を表2に示す。なお、以下、セルロース微細繊維の含有量は、特に記載しなくても、ゴム成分100質量部に対する質量部を意味する。
実施例2-1〜2-6のそれぞれの平ベルトの内側ゴム層を形成するゴム組成物に含有されたセルロース微細繊維は、いずれも繊維径の分布が広いことが分かる。
―摩擦係数―
比較例2-1の24時間ベルト走行後の摩擦係数は0.85であったのに対し、実施例2-1及び2-2でも同じ0.85であり、ゴム成分100質量部に対するセルロース微細繊維の含有量が1乃至3質量部程度では、摩擦係数に変化が認められない。セルロース微細繊維の含有量を更に増やす(実施例2-3〜2-6)と幾分低下し、25質量部(実施例2-6)では0.6となっているのが分かる。
比較例2-1及び2-2の粘着摩耗発生指数は100及び90という評価であるのに対し、セルロース微細繊維を含有するゴム組成物を用いた場合、その含有量が最も少ない(1質量部)実施例2-1でも粘着摩耗発生指数が45であり、顕著に改善していることが分かる。含有量を増やすことで更に粘着摩耗発生指数は改善し、セルロース微細繊維を25質量部含有した実施例2-6では、評価は10(ベルト表面の付着物は少なく、且つ、粘着性の低い粉体状のものが多い)となっているのが分かる。
比較例2-1及び2-2の耐摩耗性の評価は100であるのに対し、セルロース微細繊維の含有量が1質量部である実施例2-1でも65と改善しており、含有量を更に増やすことで評価は更に改善していることが分かる。但し、セルロース微細繊維の含有量が3〜25質量部の範囲(実施例2-2〜2-6)において評価は50又は45であり、セルロース微細繊維の含有量を増加させても耐摩耗性の改善は飽和する傾向が見られる。
C 平ベルト(伝動ベルト)
10 Vリブドベルト本体
11 圧縮ゴム層
12 接着ゴム層
13 背面ゴム層
16 短繊維
20 平ベルト本体
21 内側ゴム層
22 接着ゴム層
23 外側ゴム層
26 短繊維
Claims (5)
- 繊維径の分布範囲が50〜500nmを含むセルロース系微細繊維を含有するゴム組成物でベルト本体の少なくとも一部が形成された伝動ベルト。
- 請求項1に記載された伝動ベルトにおいて、
前記セルロース系微細繊維が機械的解繊手段によって製造されたものである伝動ベルト。 - 請求項1又は2に記載された伝動ベルトにおいて、
前記セルロース系微細繊維の前記ゴム組成物のゴム成分100質量部に対する含有量が1〜25質量部である伝動ベルト。 - 請求項1〜3のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記ゴム組成物は、繊維径が10μm以上の短繊維を含有する伝動ベルト。 - 請求項4に記載された伝動ベルトにおいて、
前記短繊維の前記ゴム組成物のゴム成分100質量部に対する含有量が、前記セルロース系微細繊維の前記ゴム組成物のゴム成分100質量部に対する含有量よりも多い伝動ベルト。
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