JP2008223005A - ベルト用ゴム組成物、動力伝動用ベルト及び歯付ベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた接着性を有するベルト用ゴム組成物、動力伝動用ベルト及び歯付ベルトを提供する。
【解決手段】ベルト用ゴム組成物は、ゴムと、心線と、帆布とを有している動力伝動用ベルトにおける前記ゴムと前記心線との接着層及び前記ゴムと前記帆布との接着層のいずれか一方又は両方の形成に使用され、水素化ニトリルゴムと、不飽和カルボン酸金属塩とを質量比20:80〜70:30で配合した複合ポリマー体と、水素化ニトリルゴムとを質量比10:90〜60:40となるように配合してなる配合物100質量部に対して、有機過酸化物0.1〜8質量部と、共架橋剤として用いるN−N´−m−フェニレンジマレイミド0.5〜8質量部とを配合してなる。また、動力伝動用ベルトは、前記ベルト用ゴム組成物を用いた接着層を有する。さらに、歯付ベルトは、前記ベルト用ゴム組成物を用いた、接着層及び背部を有する。
【選択図】図1
【解決手段】ベルト用ゴム組成物は、ゴムと、心線と、帆布とを有している動力伝動用ベルトにおける前記ゴムと前記心線との接着層及び前記ゴムと前記帆布との接着層のいずれか一方又は両方の形成に使用され、水素化ニトリルゴムと、不飽和カルボン酸金属塩とを質量比20:80〜70:30で配合した複合ポリマー体と、水素化ニトリルゴムとを質量比10:90〜60:40となるように配合してなる配合物100質量部に対して、有機過酸化物0.1〜8質量部と、共架橋剤として用いるN−N´−m−フェニレンジマレイミド0.5〜8質量部とを配合してなる。また、動力伝動用ベルトは、前記ベルト用ゴム組成物を用いた接着層を有する。さらに、歯付ベルトは、前記ベルト用ゴム組成物を用いた、接着層及び背部を有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、自動車用あるいは一般産業用の駆動装置などに装着される動力伝動用ベルトに関し、特に、優れた接着性を有するベルト用ゴム組成物、これを用いた動力伝動用ベルト及び歯付ベルトに関する。
近年、省エネルギー化及びコンパクト化の社会的要請を背景に、自動車のエンジンルーム内の部品が密集して配置される傾向があり、それに起因してエンジンルーム内の雰囲気温度は従来に比べて上昇してきている。従って、自動車用エンジン等に使用される動力伝動用ベルトは、このようなエンジンルーム内の温度への耐熱性や耐久性が要求され、ベルトに用いられるゴム組成物にも耐熱性や耐久性が必要とされる。例えば、耐熱性を有するゴム組成物として、水素化ニトリルゴムと、不飽和カルボン酸金属塩との混合物を有機過酸化物架橋させて得られたものが、下記特許文献1に開示されている。
上記特許文献1のようなゴム組成物は、二段階連続加硫によって製造されるので、優れた強度特性、高弾性及び耐屈曲疲労性を有している。しかしながら、不飽和カルボン酸金属塩が配合されているため、接着性が低下し、上記ゴム組成物は良好に複合化されにくいことがあり、上記特許文献1に開示されているゴム組成物を用いたベルトは、寿命が短くなるおそれがあった。
そこで、上記混合物にさらにシランカップリング剤が配合されたゴム組成物を考案し、加工性の改善を図ったが、混練や架橋などの成形加工時に、シランカップリング剤が蒸発逸散してしまうため、加工不良や架橋物の物性低下などの不具合を引き起こすおそれがあった。
そこで、本発明は、加工性が良好で、硬度やモジュラスなどの優れた物性を保持しつつ、接着性を向上させたベルト用ゴム組成物及びこれを用いた動力伝動用ベルトを提供することを目的とする。
(1) 本発明のベルト用ゴム組成物は、ゴムと、心線と、帆布とを有している動力伝動用ベルトにおける前記ゴムと前記心線との接着層及び前記ゴムと前記帆布との接着層のいずれか一方又は両方の形成に使用されるベルト用ゴム組成物であって、水素化ニトリルゴムと、不飽和カルボン酸金属塩とを質量比20:80〜70:30で配合した複合ポリマー体と、水素化ニトリルゴムとを質量比10:90〜60:40となるように配合してなる配合物100質量部に対して、有機過酸化物0.1〜8質量部と、共架橋剤として用いるN−N´−m−フェニレンジマレイミド0.5〜8質量部とを配合してなるものである。
上記(1)の構成によれば、N−N´−m−フェニレンジマレイミドを共架橋剤として用いているので、加工性が良く、硬度やモジュラスなどの優れた物性を保持しつつ、伸長性、弾性に優れ、高い接着性を有するベルト用ゴム組成物を提供することができる。
なお、水素化ニトリルゴムと、不飽和カルボン酸金属塩との質量比20:80よりも、水素化ニトリルゴムの含有量が少なくなった場合には、ゴム組成物のムーニー粘度が上昇し、加工性が低下する。一方、水素化ニトリルゴムと、不飽和カルボン酸金属塩との質量比70:30よりも、水素化ニトリルゴムの含有量が多くなった場合には、不飽和カルボン酸金属塩の補強効果が得られにくくなる。
また、水素化ニトリルゴムと、不飽和カルボン酸金属塩とを配合した複合ポリマー体と、水素化ニトリルゴムとの質量比10:90よりも、水素化ニトリルゴムと、不飽和カルボン酸金属塩とを配合した複合ポリマー体の含有量が少なくなった場合には、不飽和カルボン酸金属塩複合ポリマー体の補強効果が得られず、高硬度のゴム組成物を得ることが難しい。一方、水素化ニトリルゴムと、不飽和カルボン酸金属塩とを配合した複合ポリマー体と、水素化ニトリルゴムとの質量比60:40よりも、水素化ニトリルゴムと、不飽和カルボン酸金属塩とを配合した複合ポリマー体が多くなった場合には、繊維との接着性が急激に低下し、ベルト走行寿命が短くなる。
さらに、複合ポリマー体と、水素化ニトリルゴムとを配合してなる配合物100質量部に対して、有機過酸化物が0.1質量部未満となると、架橋速度が非常に小さくなり、架橋密度が急激に低下し、ゴム組成物の強度が低下する。一方、有機過酸化物が8質量部を超えると、架橋密度が大きくなりすぎ、伸びが低下し、耐引き裂き性が低下する。
加えて、複合ポリマー体と、水素化ニトリルゴムとを配合してなる配合物100質量部に対して、N−N´−m−フェニレンジマレイミドが0.5質量部未満となると、架橋速度が遅くなり、架橋密度が高くなりにくく、高硬度のゴム組成物が得られにくい。一方、N−N´−m−フェニレンジマレイミドが8質量部を超えると、未架橋でのスコーチが早くなり、混練時、練りゴムの昇温により早期架橋現象が起こり、ゴム組成物の強度が低下する。
(2) 本発明の動力伝動用ベルトは、ゴムと、心線と、帆布とを有している動力伝動用ベルトであって、(1)に記載のゴム組成物を用いて形成された、前記ゴムと前記心線との接着層及び前記ゴムと前記帆布との接着層のいずれか一方又は両方を有するものである。特に、前記動力伝動用ベルトが、歯付ベルトであることが好ましい。
上記(2)の構成によれば、前記ゴム組成物で形成されたゴムを接着層に用いているため、高硬度及び耐摩耗性に優れた耐久性を有する動力伝動用ベルトを提供することができる。また、上記(1)のゴム組成物で形成された接着層によって、ゴムと心線との接着及び/又はゴムと帆布との接着が良複合化するので、動力伝動用ベルトの長寿命化を図ることができる。
(3) 別の観点として、本発明の歯付ベルトは、ベルト長手方向に沿って所定間隔で配置された複数の歯部と、心線が埋設された背部と、前記歯部と前記背部との間に設けられた接着層と、前記複数の歯部を被覆する歯布とを備えた歯付ベルトであって、前記背部及び前記接着層のゴム組成物が、水素化ニトリルゴムと、不飽和カルボン酸金属塩とを質量比20:80〜70:30で配合した複合ポリマー体と、水素化ニトリルゴムとを質量比10:90〜60:40となるように配合してなる配合物100質量部に対して、有機過酸化物0.1〜8質量部と、共架橋剤として用いるN−N´−m−フェニレンジマレイミド0.5〜8質量部とを配合してなるものであることを特徴とする。また、歯部と心線との接着層にも、前記歯部と前記背部との間に設けられた接着層に用いたゴム組成物と同様の組成を有するゴム組成物を用いることが好ましい。
上記(3)の構成によれば、前記ゴム組成物で形成されたゴムを背部及び接着層に用いているため、高硬度及び耐摩耗性に優れた耐久性を有する歯付ベルトを提供することができる。また、上記(1)のゴム組成物と同様の組成を有するゴム組成物で形成された接着層によって、歯部と背部との接着及び歯部と心線との接着が良複合化するとともに、上記(1)のゴム組成物と同様の組成を有するゴム組成物で形成された背部によって、背部が高い耐摩耗性及び耐久性を有するので、動力伝動用ベルトの長寿命化を図ることができる。
<第1実施形態>
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る動力伝動用ベルトについて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る動力伝動用ベルトである歯付ベルトの断面斜視図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る動力伝動用ベルトについて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る動力伝動用ベルトである歯付ベルトの断面斜視図である。
図1において、歯付ベルト1は、長手方向に沿って所定間隔で配置したゴムを基材とした複数の歯部2と、歯部2と連続する背部3と、背部3に埋設されている心線4と、歯部2の表面に被覆された歯布5とを有する構造である。そして、歯布5は、ベルトの長手方向に延在する緯糸と、ベルトの幅方向に延在する経糸とを織成してなる繊維材料を基材として構成される。また、歯部2と歯布5との間及び歯部2と心線4との間には、図示していない接着層が設けられている。なお、歯布5の表面には図示していないが、樹脂フィルム等が積層される場合もある。
歯部2及び背部3の基材となるゴムの材質には特に制限はなく、使用条件に応じて適切なものが適宜選択される。自動車エンジン用及び各種エンジン用歯付ベルトの場合には、耐熱性と耐油性を備えたH−NBR、CR、CSM等を使用できる。また、一般産業用機械に用いられる場合には、H−NBR、CR、CSM以外に、NBR、EPDM、エチレンプロピレン共重合体(EPR)、SBR、イソプロピレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、フッ素ゴム、シリコンゴム等いずれのゴムも使用可能である。なお、本実施形態において、背部3は、後述する、歯部2と歯布5との接着層及び歯部2と心線4との接着層に用いられているゴム組成物を有したゴムが用いられている。また、歯部2にも、背部3と同様の、後述する、歯部2と歯布5との接着層及び歯部2と心線4との接着層に用いられているゴム組成物を有したゴムを用いることができる。
心線4は、ゴムを基材として構成される背部3にベルト幅方向に配置されており、ナイロン繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維等を使用することができる。また、ポリベンゾオキサゾール、ポリパラフェニレンナフタレート、ポリエステル、アクリル、カーボン、スチール等を組成とする撚コードのいずれでも使用できる。ガラス繊維の組成は、Eガラス、Sガラス(高強度ガラス)のいずれでもよく、フィラメントの太さ及びフィラメントの集束本数及びストランド本数に制限されない。
歯布5を構成する緯糸と、経糸としては、いずれか一方に、UHMW−PE繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維を使用し、他方にナイロン、ポリベンゾオキサゾール、綿、ポリオレフィン等の何れか又はこれらの組み合わせを採用できる。繊維の形態は、フィラメント糸及び紡績糸の何れでも良く、単独組成の撚糸又は混撚糸、混紡糸の何れであっても良い。また、織成構成は綾織り、繻手織り、平織りいずれであっても良い。
歯部2と歯布5との接着層及び歯部2と心線4との接着層には、水素化ニトリルゴムと、不飽和カルボン酸金属塩とを質量比20:80〜70:30で配合した複合ポリマー体と、水素化ニトリルゴムとを質量比10:90〜60:40となるように配合してなる配合物100質量部に対して、有機過酸化物0.1〜8質量部と、共架橋剤として用いるN−N´−m−フェニレンジマレイミド0.5〜8質量部とを配合して得られたゴム組成物が用いられている。
本実施形態によれば、背部及び接着層に用いられているゴムが上記配合比を有し、さらに、ゴムに共架橋剤としてN−N´−m−フェニレンジマレイミドが用いられているので、加工性が良く、硬度やモジュラスなどにおいて優れた物性を保持しつつ、伸長性、弾性に優れ、高い接着性を有するベルト用ゴム組成物を供えた背部及び接着層を提供することができる。また、歯付ベルト1において、上記配合比を有するゴム組成物を有するゴムを、背部3、歯部2と心線4との間の接着層及び歯部2と帆布5との間の接着層に用いているので、高硬度及び耐摩耗性にも優れた耐久性を有している歯付ベルト1を提供できる。さらに、上記ゴム組成物で形成された図示しない接着層によって、歯部2と心線4との接着及び歯部2と帆布5との接着が良複合化するとともに、上記ゴム組成物で形成された背部によって背部が高い耐摩耗性及び耐久性を有するので、歯付ベルト1の長寿命化を図ることができる。
次に、本発明に係るベルト用ゴム組成物と同様の組成からなるゴム組成物およびこれを用いた歯付ベルトの実施例を説明する。
(実施例1〜9、比較例1〜9)
表1、2に示す組成からなるゴム組成物のムーニー粘度を、JIS K6300−1に規定された方法によって測定した。また、表1、2に示す組成からなるゴム組成物を、165℃で30分間プレス架橋し、得られた架橋ゴムの硬度(JIS−A)をJIS K6253に規定された方法によって測定した。さらに、上記架橋ゴムの切断時の伸び及び強力(配向方向に対して平行方向)を、JIS K6251に規定された方法によって測定した。上記の測定結果を表3、4に示す。
表1、2に示す組成からなるゴム組成物のムーニー粘度を、JIS K6300−1に規定された方法によって測定した。また、表1、2に示す組成からなるゴム組成物を、165℃で30分間プレス架橋し、得られた架橋ゴムの硬度(JIS−A)をJIS K6253に規定された方法によって測定した。さらに、上記架橋ゴムの切断時の伸び及び強力(配向方向に対して平行方向)を、JIS K6251に規定された方法によって測定した。上記の測定結果を表3、4に示す。
表3、4に示すように、比較例1、9、10、18は、共架橋剤であるN−N´−m−フェニレンジマレイミドの配合が多く、未架橋でのスコーチが早くなり、早期架橋現象が起こったため、接着層の硬度が高く引き裂き力も40N/mm以下と弱くなり、ゴム組成物の強度が低いことがわかった。特に、実施例5と比較例9との結果並びに実施例14と比較例18との結果は、共架橋剤であるN−N´−m−フェニレンジマレイミドの配合の違いが少しにも関わらず、硬度、伸び及び引き裂き力が大きく異なり、比較例9及び比較例18の引裂き力が40N/mm未満となっていることがわかる。また、共架橋剤を用いなかった比較例2、11や共架橋剤の少ない比較例8、17は、架橋度が低く硬度が80未満と低くなり、接着性が低いことがわかる。特に、実施例4と比較例8との結果並びに実施例13と比較例17との結果は、共架橋剤であるN−N´−m−フェニレンジマレイミドの配合の違いが少しにも関わらず硬度が異なり、比較例8及び比較例17の硬度は80未満となっていることがわかる。比較例3及び比較例12は、共架橋剤にトリアリルイソシアヌレートを用いたので、引裂き力が40N/mm未満と弱く接着性が低いことがわかった。さらに、比較例4及び比較例13は、複合体ポリマー体中の水素化ニトリルゴムの配合が多いため、不飽和カルボン酸金属塩の補強効果が得られにくくなり、硬度、強力及び引き裂き力が低いことがわかる。そして、比較例5及び比較例14は、複合体ポリマー体と水素化ニトリルゴムとを配合してなる配合物の複合体ポリマーの含有量が少ないので、不飽和カルボン酸金属塩複合ポリマー体の補強効果が得られず、硬度が非常に低下していることがわかる。加えて、有機過酸化物の配合の少ない比較例6及び比較例15は、架橋密度が低下して硬度が低下しており、有機過酸化物の配合の多い比較例7及び比較例16は、架橋密度が大きくなりすぎて強力、伸び、引裂き力が低下していることがわかる。一方、実施例1〜18は、接着層に共架橋剤であるN−N´−m−フェニレンジマレイミドが適量配合されており、高硬度及び高い引き裂き力を有し、優れた接着性を有することがわかった。
次に、表1、表2に示す組成からなるゴム組成物で形成されたゴムシートを用いた、図1に示す本実施形態と同様の構成を有する歯付ベルトの実施例及び比較例を説明する。
(実施例19〜27、比較例19〜27)
実施例19〜27及び比較例19〜27の歯付ベルトは、先ずベルト作製用の歯形付き金型にナイロン帆布を巻き付けた後、接着処理を施したガラス心線を、所定のピッチにてスパイラルに、所定の張力で巻き付け、この心線の上に、表1に示す実施例1〜9並びに比較例1〜9の組成物からなるゴムシートを貼り付け、架橋缶に投入して通常の圧入方式により165℃で30分間加圧架橋し、ベルト背面を一定厚さに研磨して、25mm幅にカットして得られたものである。歯部と歯布との間には、表1に示す組成からなるゴム組成物で形成された接着層が用いられている。また、歯部及び背部も、表1に示す組成からなるゴム組成物を調整したものを用いており、このゴム組成物をバンバリーミキサーで混練後、カレンダーロールで圧延して形成されたものである。なお、ベルトサイズは、歯形:MY(図2参照)、歯数:105、ベルト幅:60mmである。
実施例19〜27及び比較例19〜27の歯付ベルトは、先ずベルト作製用の歯形付き金型にナイロン帆布を巻き付けた後、接着処理を施したガラス心線を、所定のピッチにてスパイラルに、所定の張力で巻き付け、この心線の上に、表1に示す実施例1〜9並びに比較例1〜9の組成物からなるゴムシートを貼り付け、架橋缶に投入して通常の圧入方式により165℃で30分間加圧架橋し、ベルト背面を一定厚さに研磨して、25mm幅にカットして得られたものである。歯部と歯布との間には、表1に示す組成からなるゴム組成物で形成された接着層が用いられている。また、歯部及び背部も、表1に示す組成からなるゴム組成物を調整したものを用いており、このゴム組成物をバンバリーミキサーで混練後、カレンダーロールで圧延して形成されたものである。なお、ベルトサイズは、歯形:MY(図2参照)、歯数:105、ベルト幅:60mmである。
(実施例28〜36、比較例28〜36)
実施例28〜36及び比較例28〜36の歯付ベルトは、先ずベルト作製用の歯形付き金型にナイロン帆布を巻き付けた後、接着処理を施したガラス心線を、所定のピッチにてスパイラルに、所定の張力で巻き付け、この心線の上に、表2に示す実施例10〜18並びに比較例10〜18の組成物からなるゴムシートを貼り付け、架橋缶に投入して通常の圧入方式により165℃で30分間加圧架橋し、ベルト背面を一定厚さに研磨して、25mm幅にカットして得られたものである。歯部と歯布との間には、表2に示す組成からなるゴム組成物で形成された接着層が用いられている。また、背部も、表2に示す組成からなるゴム組成物で形成されたものを用いており、このゴム組成物をバンバリーミキサーで混練後、カレンダーロールで圧延して形成されたものである。さらに、歯部は、表2に示す組成からなるゴム組成物を調整したものを用いており、このゴム組成物をバンバリーミキサーで混練後、カレンダーロールで圧延して形成されたものである。なお、ベルトサイズは、歯形:MY(図2参照)、歯数:105、ベルト幅:60mmである。
実施例28〜36及び比較例28〜36の歯付ベルトは、先ずベルト作製用の歯形付き金型にナイロン帆布を巻き付けた後、接着処理を施したガラス心線を、所定のピッチにてスパイラルに、所定の張力で巻き付け、この心線の上に、表2に示す実施例10〜18並びに比較例10〜18の組成物からなるゴムシートを貼り付け、架橋缶に投入して通常の圧入方式により165℃で30分間加圧架橋し、ベルト背面を一定厚さに研磨して、25mm幅にカットして得られたものである。歯部と歯布との間には、表2に示す組成からなるゴム組成物で形成された接着層が用いられている。また、背部も、表2に示す組成からなるゴム組成物で形成されたものを用いており、このゴム組成物をバンバリーミキサーで混練後、カレンダーロールで圧延して形成されたものである。さらに、歯部は、表2に示す組成からなるゴム組成物を調整したものを用いており、このゴム組成物をバンバリーミキサーで混練後、カレンダーロールで圧延して形成されたものである。なお、ベルトサイズは、歯形:MY(図2参照)、歯数:105、ベルト幅:60mmである。
このようにして得られた実施例19〜36及び比較例19〜36の歯付ベルトを、23℃、引っ張り速度50mm/minで、歯部と歯布との剥離試験を行い、歯部と歯布との間の接着層の接着力を測定した。また、図3に示す装置を用いて、雰囲気温度23℃下、ベルト1mm幅あたり15kgf(147N)という高負荷の条件下で走行試験を行った。
図3は、歯部と歯布との走行試験の評価に用いた試験機のレイアウトを示す図である。図3に示す試験機は、クランク(歯数=22)6と、オートテンショナー7と、カム(歯数=44)8と、インジェクションポンプ(歯数=44)9と、ウォーターポンプ10と、クランク(歯数=22)11とを順に配置して構成されたものである。これらの間に歯付ベルト1を掛架し、歯付ベルトを走行させた。
上記剥離試験及び走行試験における、実施例19〜27及び比較例19〜27の結果を表5に、実施例28〜36及び比較例28〜36の結果を表6に示す。
上記剥離試験及び走行試験における、実施例19〜27及び比較例19〜27の結果を表5に、実施例28〜36及び比較例28〜36の結果を表6に示す。
表5に示すように、比較例19は、ゴム組成物の硬度が高すぎ強度が低く、引き裂き力が弱いので、剥離試験において歯部が裂け、走行試験において早期に歯部が欠損し寿命が非常に短くなった。また、比較例20は、共架橋剤であるN−N´−m−フェニレンジマレイミドを用いていないので、架橋度が低く接着層の接着性が低いため、剥離試験において歯部と歯布が剥離し、走行試験においても歯布が歯部から剥離した。さらに、比較例21は、共架橋剤にトリアリルイソシアヌレートを用いたので、ゴムの引き裂き力が弱く、剥離試験において歯部が裂けた。また、接着層の接着力が低いため、走行試験において歯布が歯部から剥離した。そして、比較例22は、不飽和カルボン酸金属塩の補強効果が得られにくくなりゴム組成物の強度が低く引き裂き力が弱いため、また、比較例23、24、26は硬度が低いので、剥離試験において接着力が高いものの、走行試験において早期に歯部が欠損し寿命が短くなった。加えて、比較例25、27においては、ゴム組成物の硬度が高すぎ強度が低く引き裂き力が弱いので、剥離試験において歯部が裂け、接着層の接着力が低いため、走行試験において歯布が歯部から剥離した。一方、実施例19〜27においては、ゴム組成物が優れた接着性を有し、剥離試験において、歯部が裂けることもなく、また、歯部と歯布が剥離することもなかった。また、走行試験において、歯部の損傷が少なく、歯布も歯部から剥離することなく、200時間使用でき、ベルト寿命が長いことがわかった。特に、実施例22と比較例26とでは、ゴム組成の共架橋剤であるN−N´−m−フェニレンジマレイミドの配合の違いがわずかであるが、N−N´−m−フェニレンジマレイミドの配合の少ない比較例26は、ゴムの硬度が低くなり、歯付ベルトの寿命が短いことがわかる。また、実施例23と比較例27とでも、ゴム組成の共架橋剤であるN−N´−m−フェニレンジマレイミドの配合の違いが少であるが、N−N´−m−フェニレンジマレイミドの配合の多い比較例27は、引裂き力が小さくなり、接着層の接着力や歯付ベルトの寿命が短いことがわかる。
表4から、背部にも本発明に係るゴム組成物を用いた実施例28〜36では、全ての実施例において、ゴム組成物が優れた接着性を有し、剥離試験において、歯部が裂けることもなく、また、歯部と歯布が剥離することもなかった。また、走行試験において、歯部の損傷がほとんどみられず、歯布も歯部から剥離することなく、200時間使用でき、ベルト寿命が長いことがわかった。これは、背部及び歯部と歯布との間の接着層に本発明に係るゴム組成物を用いたので、背部及び歯部と歯布との間の接着層が一体となり、より接着性が増したことがわかる。一方、比較例28〜36では、比較例19〜27の剥離試験結果及び走行試験結果と同じ結果が得られ、剥離試験において、歯部が裂けたり、歯部と歯布が剥離したりした。また、走行試験において、歯部の損傷があり、歯布も歯部から剥離したりして、寿命が短くなった。これにより、背部及び歯部と歯布との間の接着層に同じゴム組成物を用いて接着性が増しているにも関わらず、本発明に係るゴム組成物を用いた場合に比べ、接着性が低く、寿命が短いことがわかる。
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態や実施例に限定されるものではない。なお、本実施形態及び実施例では歯付ベルを用いたが、本発明に係る動力伝動用ベルトは、この歯付ベルトに限定されるものではなく、Vリブドベルト、平ベルト等に用いても良い。
1 歯付ベルト
2 歯部
3 背部
4 心線
5 歯布
6 クランク
7 オートテンショナー
8 カム
9 インジェクションポンプ
10 ウォーターポンプ
11 クランク
2 歯部
3 背部
4 心線
5 歯布
6 クランク
7 オートテンショナー
8 カム
9 インジェクションポンプ
10 ウォーターポンプ
11 クランク
Claims (4)
- ゴムと、心線と、帆布とを有している動力伝動用ベルトにおける前記ゴムと前記心線との接着層及び前記ゴムと前記帆布との接着層のいずれか一方又は両方の形成に使用されるベルト用ゴム組成物であって、
水素化ニトリルゴムと、不飽和カルボン酸金属塩とを質量比20:80〜70:30で配合した複合ポリマー体と、水素化ニトリルゴムとを質量比10:90〜60:40となるように配合してなる配合物100質量部に対して、有機過酸化物0.1〜8質量部と、共架橋剤として用いるN−N´−m−フェニレンジマレイミド0.5〜8質量部とを配合してなるものであることを特徴とするベルト用ゴム組成物。 - ゴムと、心線と、帆布とを有している動力伝動用ベルトであって、
請求項1に記載のゴム組成物を用いて形成された、前記ゴムと前記心線との接着層及び前記ゴムと前記帆布との接着層のいずれか一方又は両方を有することを特徴とする動力伝動用ベルト。 - 前記動力伝動用ベルトが、歯付ベルトであることを特徴とする請求項2に記載の動力伝動用ベルト。
- ベルト長手方向に沿って所定間隔で配置された複数の歯部と、心線が埋設された背部と、前記歯部と前記背部との間に設けられた接着層と、前記複数の歯部を被覆する歯布とを備えた歯付ベルトであって、
前記背部及び前記接着層のゴム組成物が、水素化ニトリルゴムと、不飽和カルボン酸金属塩とを質量比20:80〜70:30で配合した複合ポリマー体と、水素化ニトリルゴムとを質量比10:90〜60:40となるように配合してなる配合物100質量部に対して、有機過酸化物0.1〜8質量部と、共架橋剤として用いるN−N´−m−フェニレンジマレイミド0.5〜8質量部とを配合してなるものであることを特徴とする歯付ベルト。
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