JP7324225B2 - アニオン変性セルロースナノファイバーを含有するマスターバッチおよびゴム組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)アニオン変性セルロースを準備する工程1、
キャビテーション噴流装置を用いてアニオン変性セルロースを解繊してアニオン変性セルロースナノファイバーを製造する工程2、及び
工程2で得られたアニオン変性セルロースナノファイバーをゴム成分と混合してマスターバッチを得る工程3、
を含む、マスターバッチの製造方法。
(2)キャビテーション噴流装置が、ノズルまたはオリフィスを通じて噴射した液体噴流によって生ずるキャビテーション気泡が崩壊する際の衝撃力をアニオン変性セルロースに与えるものであり、ノズルまたはオリフィスを通じて噴射する液体噴流の上流側圧力が0.01MPa以上30.00MPa以下であり、下流側圧力/上流側圧力の比が0.001~0.500である、(1)に記載の方法。
(3)アニオン変性セルロースが、カルボキシル基を有するセルロースである、(1)または(2)に記載の方法。
(4)アニオン変性セルロースにおけるカルボキシル基量が、アニオン変性セルロースの絶乾質量に対して、0.4mmol/g~3.0mmol/gである、(3)に記載の方法。
(5)アニオン変性セルロースが、カルボキシメチル基を有するセルロースである、(1)または(2)に記載の方法。
(6)アニオン変性セルロースにおけるカルボキシメチル置換度が、0.01以上0.40未満である、(5)に記載の方法。
(7)ゴム成分が、ジエン系ゴムポリマーを含む、(1)~(6)のいずれか1つに記載の方法。
(8)(1)~(7)のいずれか1つに記載の方法でマスターバッチを製造する工程、および
前記マスターバッチを架橋する工程
を含む、ゴム組成物の製造方法。
工程1では、アニオン変性セルローを準備する。アニオン変性セルロースとは、セルロースの分子鎖にアニオン性基が導入されたものである。具体的には酸化または置換反応によってセルロースのピラノース環にアニオン性基を導入したものである。
アニオン変性セルロースの原料となるセルロースの種類は、特に限定されない。セルロースは、一般に起源、製法等から、天然セルロース、再生セルロース、微細セルロース、非結晶領域を除いた微結晶セルロース等に分類される。本発明では、これらのセルロースのいずれも、原料として用いることができる。
アニオン変性とはセルロースにアニオン性基を導入することをいい、具体的には酸化または置換反応によってセルロースのピラノース環にアニオン性基を導入することをいう。本発明において前記酸化反応とはピラノース環の水酸基を直接カルボキシル基に酸化する反応をいう。また、本発明において置換反応とは、当該酸化以外の置換反応によってピラノース環にアニオン性基を導入する反応をいう。
アニオン変性の一例として、カルボキシル化(カルボキシル基のセルロースへの導入、「酸化」とも呼ぶ。)を挙げることができる。本明細書においてカルボキシル基とは、-COOH(酸型)および-COOM(金属塩型)をいう(式中、Mは金属イオンである)。カルボキシル化セルロース(「酸化セルロース」とも呼ぶ)は、上記のセルロース原料を公知の方法でカルボキシル化(酸化)することにより得ることができる。特に限定されないが、カルボキシル基の量はアニオン変性セルロースまたはアニオン変性セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して、0.4mmol/g~3.0mmol/gが好ましく、0.6mmol/g~2.0mmol/gがさらに好ましく、1.0mmol/g~2.0mmol/gがさらに好ましく、1.1mmol/g~2.0mmol/gがさらに好ましい。
カルボキシル化セルロースの0.5質量%スラリー(水分散液)60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出する:
カルボキシル基量〔mmol/gカルボキシル化セルロース〕=a〔ml〕×0.05/カルボキシル化セルロース質量〔g〕。
アニオン変性の一例として、カルボキシメチル基等のカルボキシアルキル基の導入を挙げることができる。本明細書においてカルボキシアルキル基とは、-RCOOH(酸型)および-RCOOM(金属塩型)をいう。ここでRはメチレン基、エチレン基等のアルキレン基であり、Mは金属イオンである。
i)発底原料と溶媒、マーセル化剤を混合し、反応温度0℃~70℃、好ましくは10℃~60℃、かつ反応時間15分~8時間、好ましくは30分~7時間、マーセル化処理する工程、
ii)次いで、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05~10.0倍モル添加し、反応温度30℃~90℃、好ましくは40℃~80℃、かつ反応時間30分~10時間、好ましくは1時間~4時間、エーテル化反応を行う工程。
カルボキシメチル化セルロース(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。メタノール900mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチル化セルロース塩(CM化セルロース)を水素型CM化セルロースに変換する。水素型CM化セルロース(絶乾)を1.5g~2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。80質量%メタノール15mLで水素型CM化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定した。カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する:
A=[(100×F’-(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型CM化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1-0.058×A)
A:水素型CM化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F:0.1NのH2SO4のファクター
F’:0.1NのNaOHのファクター。
アニオン変性の一例としてエステル化を挙げることができる。エステル化の方法としては、セルロース原料にリン酸系化合物の粉末や水溶液を混合する方法、セルロース原料のスラリーにリン酸系化合物の水溶液を添加する方法等が挙げられる。リン酸系化合物としては、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸あるいはこれらのエステルが挙げられる。これらは塩の形態であってもよい。上記の中でも、低コストであり、扱いやすく、またパルプ繊維のセルロースにリン酸基を導入して、解繊効率の向上が図れるなどの理由からリン酸基を有する化合物が好ましい。リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム等が挙げられる。これらの1種、あるいは2種以上を併用してセルロースにリン酸基を導入することができる。これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、下記解繊工程で解繊しやすく、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましい。特にリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムが好ましい。また、反応を均一に進行できかつリン酸基導入の効率が高くなることから前記リン酸系化合物は水溶液として用いることが望ましい。リン酸系化合物の水溶液のpHは、リン酸基導入の効率が高くなることから7以下であることが好ましいが、パルプ繊維の加水分解を抑える観点からpH3~7が好ましい。
固形分量が0.2質量%のリン酸エステル化セルロースのスラリーを調製する。次いで、スラリーに対し、体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ社製、コンディショニング済)を加え、1時間振とう処理を行った後、目開き90μmのメッシュ上に注いで樹脂とスラリーとを分離することにより、リン酸エステル化セルロースを水素型リン酸エステル化セルロースに変換する。次いで、イオン交換樹脂による処理後のスラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を、30秒に1回、50μLずつ加えながら、スラリーが示す電気伝導度の値の変化を計測する。計測結果のうち、急激に電気伝導度が低下する領域において必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除すことにより、水素型リン酸エステル化セルロース1g当たりのリン酸基量(mmol/g)を算出する。さらに、リン酸エステル化されたセルロースのグルコース単位当たりのリン酸基置換度(DS)を、次式によって算出する:
DS=0.162×A/(1-0.079×A)
A:水素型リン酸エステル化セルロースの1gあたりのリン酸基量(mmol/g)。
原料であるセルロースに対し、上記で例示したようなアニオン変性を行うことにより、アニオン変性セルロースを得ることができる。また、市販のものを用いてもよい。アニオン変性セルロースの種類としては、カルボキシル基を有するセルロースまたはカルボキシアルキル基を有するセルロースが好ましい。特に、N-オキシル化合物と酸化剤とを用いてセルロースを酸化することにより得られたカルボキシル化セルロースは、カルボキシル基が均一に導入されており、均一に解繊しやすく、透明度の高いセルロースナノファイバーが得られる点で好ましい。
試料をガラスセルに乗せ、X線回折測定装置(LabX XRD-6000、株式会社島津製作所製)を用いて測定する。結晶化度の算出はSegal等の手法を用いて行い、X線回折図の2θ=10゜~30゜の回折強度をベースラインとして、2θ=22.6゜の002面の回折強度と2θ=18.5゜のアモルファス部分の回折強度から次式により算出する。
Xc=(I002c-Ia)/I002c×100
Xc:セルロースのI型の結晶化度(%)
I002c:2θ=22.6゜、002面の回折強度
Ia:2θ=18.5゜、アモルファス部分の回折強度。
工程2では、アニオン変性セルロースをキャビテーション噴流装置を用いて処理(解繊)することにより、アニオン変性セルロースナノファイバーを製造する。
解繊に際しては、アニオン変性セルロースの分散体を準備する。分散媒は、水または有機溶媒、あるいはこれらの混合物を適宜選択できる。有機溶媒の種類は問わないが、例えばセルロース中の水酸基との親和性が高い極性溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド等を挙げることができる。上記分散媒は単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いてもよい。例えば、有機溶媒を2種類以上混合する形態、水と有機溶媒を含む形態、水のみの形態などを適宜選択することができる。水のみを分散媒として用いること(すなわち、水100%)は、取扱いの容易性から好ましい。水と有機溶媒とを混合する場合の混合割合は特に限定されず、使用する有機溶媒の種類に応じて適宜混合割合を調整すればよい。
キャビテーション噴流装置とは、噴射液体を圧縮し高速でノズル先端より被噴射液体に向けて噴射することで、ノズル近傍での極めて高いせん断力と、急激な減圧で液体が膨張することにより発生するキャビテーション気泡の崩壊エネルギーと、によって噴射液体及び被噴射液体中の固形の塊を細断する装置である。繊維に対して刃物等の物理的な接触がないことから、繊維の短小化を引き起こしにくい。
上記のキャビテーション噴流装置による解繊により、アニオン変性セルロースをナノオーダーの平均繊維径となるまで解繊してナノファイバーを得ることができる。ナノオーダーの平均繊維径とは、1μm未満の平均繊維径をいう。本発明では、アニオン変性セルロースナノファイバーは、好ましくは平均繊維径が3nm~500nm程度、更に好ましくは3nm~150nm程度、更に好ましくは3nm~20nm程度である。アスペクト比は30以上、好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上である。アスペクト比の上限は限定されないが、500以下程度となる。
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径。
所定の濃度のセルロースナノファイバー分散体を調製し、UV-VIS分光光度計 UV-1800(株式会社島津製作所製)を用い、光路長10mmの角型セルを用いて、660nm 光の透過率(%)を測定し、透明度とする。
所定の濃度のセルロースナノファイバー分散体を調製し、JIS-Z-8803の方法に準じて、B型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃で、回転数60rpmまたは6rpmで3分後の値を測定する。
工程3では、工程2で得られたアニオン変性セルロースナノファイバーをゴム成分と混合してマスターバッチを製造する。
ゴム成分とはゴムの原料であって架橋してゴムとなるものをいう。天然ゴム用のゴム成分および合成ゴム用のゴム成分が存在するが、本発明においてはいずれを用いてもよく、また両者を組合せてもよい。便宜上、天然ゴム用等のゴム成分を「天然ゴムポリマー」等という。
ゴム成分と混合されるセルロースナノファイバーの形態は特に限定されない。例えば、アニオン変性セルロースナノファイバーの分散体、当該分散体の乾燥固形物、当該分散体の湿潤固形物を混合に供してよい。分散体におけるセルロースナノファイバーの濃度は、分散媒が水である場合は0.1~5.0質量%とすることができる。分散媒が水の他にアルコール等の有機溶媒を含む場合は、前記濃度を0.1~20.0質量%としてもよい。湿潤固形物とは、前記分散体と乾燥固形物との中間の態様の固形物である。前記分散体を通常の方法で脱水して得た湿潤固形物中の分散媒の量はセルロースナノファイバーに対して5~15質量%程度であってもよいが、液状媒体の追加またはさらなる乾燥により分散媒の量は適宜調整してもよい。
工程3においては、ゴム成分とセルロースナノファイバーに加えて、他の配合剤を混合してもよい。他の配合剤としては、例えば、これらに限定されないが、補強剤(カーボンブラック、シリカ等)、シランカップリング剤、架橋剤(硫黄、過酸化物等)、加硫促進剤(酸化亜鉛、ステアリン酸、スルフェンアミド等)、加硫促進助剤、オイル、硬化レジン、ワックス、老化防止剤、しゃく解剤、着色剤、pH調整剤などゴム工業で使用され得る配合剤が挙げられる。加硫促進剤のスルフェンアミドとしては例えば、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドが挙げられる。
上述のアニオン変性セルロースナノファイバー及びゴム成分と、必要に応じて上述の他の配合剤を混合することにより、マスターバッチを製造する。
上記の方法により、マスターバッチを製造することができる。マスターバッチとはゴムの前駆体であり、架橋することによりゴムとすることができる未架橋の状態のゴム成分を含む組成物をいう。本明細書において、マスターバッチは、少なくとも未架橋のゴム成分とアニオン変性セルロースナノファイバーを含むものであり、硫黄や加硫促進剤を含む他の配合剤については、添加されていてもよいし、添加される前の状態であってもよい。また、最終製品の形態に応じて成形されていてもよいし、成形される前の状態であってもよい。
架橋剤を添加した状態のマスターバッチを用い、架橋を行うことにより、マスターバッチをゴム組成物へと変換することができる。
架橋は、架橋反応が進む条件で行えばよく、温度等の条件に特に制限は無い。一般的には、加熱温度は、140℃以上が好ましく、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。従って、加熱温度は140~200℃程度が好ましく、140~180℃程度がより好ましい。架橋には、例えば、これらに限定されないが、型加硫、缶加硫、連続加硫等を行う加硫装置を使用できる。本発明のゴム組成物はセルロースナノファイバーを含まない組成物に比べて架橋反応が速やかに進行する傾向にある。この理由は限定されないが、セルロースナノファイバー中のカルボキシル基等の官能基が架橋反応を促進するためではないかと推察される。
本明細書において、ゴム組成物とは、上述のマスターバッチを架橋することにより得られる組成物をいう。ゴム組成物におけるアニオン変性セルロースナノファイバー(固形分)の含有量は、ゴム成分100.0質量部に対して0.1~100.0質量部であることが好ましい。引張強度の向上の観点からは、前記含有量はゴム成分100.0質量部に対して1.0質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましく、3.0質量部以上がよりさらに好ましい。当該量の上限は、50.0質量部以下がより好ましく、40.0質量部以下がさらに好ましく、30.0質量部以下がよりさらに好ましい。当該量により製造工程における加工性を保持することができる。
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)を、TEMPO(Sigma Aldrich社製)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムが消費され系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.4mmol/gであった。反応混合物に水を加えて濃度を1質量%(w/v)に調整し、キャビテーション噴流装置を用いて上流圧9MPa、下流圧0.4MPaにて、キャビテーション処理を1~24パス繰り返し行い、カルボキシル化セルロースナノファイバー分散液を得た。なお、キャビテーション処理におけるパス数は、以下の式を用いて算出した:
パス数=ノズル流量×処理時間/サンプル量
次亜塩素酸ナトリウムを6.0mmol/gになるように添加して酸化反応を開始した以外は製造例1と同様にして、酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。反応混合物に水を加えて濃度を1.0質量%に調整し、ノズルの孔形状を調節したキャビテーション噴流装置(ノズル直後の配管内直径が2.3cm)を用いて上流圧9MPa、下流圧0.45MPaにて、キャビテーション処理を24パス行い、カルボキシル化セルロースナノファイバー分散液を得た。ノズル直後の配管内直径に対する噴流の最大幅の割合は70%であった。
TEMPO(Sigma Aldrich社製)80mg(絶乾1gのセルロースに対し0.1mmol)と臭化ナトリウム800mg(絶乾1gのセルロースに対し1.47mmol)を溶解した水溶液500mLを用い、次亜塩素酸ナトリウムが8.6mmol/gになるように添加して酸化反応を開始した以外は製造例1と同様にして、酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は86%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.9mmol/gであった。反応混合物に水を加えて濃度を1.0質量%に調整し、製造例2と同じノズルを装着したキャビテーション噴流装置(ノズル直後の配管内直径が2.3cm)を用いて上流圧9MPa、下流圧0.45MPaにて、キャビテーション処理を16パス行い、カルボキシル化セルロースナノファイバー分散液を得た。ノズル直後の配管内直径に対する噴流の最大幅の割合は59%であった。
TEMPO(Sigma Aldrich社製)20mg(絶乾1gのセルロースに対し0.025mmol)を用い、次亜塩素酸ナトリウムが2.2mmol/gになるように添加して酸化反応を開始した以外は製造例1と同様にして、酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は93%であり、酸化反応に要した時間は60分、カルボキシル基量は0.7mmol/gであった。反応混合物に水を加えて濃度を1.0質量%に調整し、製造例2と同じノズルを装着したキャビテーション噴流装置(ノズル直後の配管内直径が2.3cm)を用いて上流圧9MPa、下流圧0.40MPaにて、キャビテーション処理を70パス行い、カルボキシル化セルロースナノファイバー分散液を得た。ノズル直後の配管内直径に対する噴流の最大幅の割合は61%であった。
製造例2と同様にして、酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。反応混合物に水を加えて濃度を2.5質量%に調整し、製造例2と同じノズルを装着したキャビテーション噴流装置(ノズル直後の配管内直径が2.3cm)を用いて上流圧9MPa、下流圧0.40MPaにて、キャビテーション処理を63パス行い、カルボキシル化セルロースナノファイバー分散液を得た。ノズル直後の配管内直径に対する噴流の最大幅の割合は62%であった。
製造例2と同様にして、酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。反応混合物に水を加えて濃度を1.0質量%に調整し、製造例2と同じノズルを装着したキャビテーション噴流装置(ノズル直後の配管内直径が2.9cm)を用いて上流圧9MPa、下流圧0.04MPaにて、キャビテーション処理を30パス行い、カルボキシル化セルロースナノファイバー分散液を得た。ノズル直後の配管内直径に対する噴流の最大幅の割合は51%であった。
製造例2と同様にして、酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。反応混合物に水を加えて濃度を1.0質量%に調整し、製造例2と同じノズルを装着したキャビテーション噴流装置(ノズル直後の配管内直径が2.9cm)を用いて上流圧9MPa、下流圧0.27MPaにて、キャビテーション処理を30パス行い、カルボキシル化セルロースナノファイバー分散液を得た。ノズル直後の配管内直径に対する噴流の最大幅の割合は50%であった。
上流圧9MPa、下流圧0.45MPa、ノズル直後の配管内直径が2.3cmとした以外は製造例6と同様にして、カルボキシル化セルロースナノファイバー分散液を得た。ノズル直後の配管内直径に対する噴流の最大幅の割合は65%であった。
上流圧9MPa、下流圧0.63MPaとした以外は製造例8と同様にして、カルボキシル化セルロースナノファイバー分散液を得た。ノズル直後の配管内直径に対する噴流の最大幅の割合は66%であった。
製造例1と同様にして、酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。反応混合物に水を加えて濃度を1.0質量%に調整し、製造例2と同じノズルを装着したキャビテーション噴流装置(ノズル直後の配管内直径が2.3cm)を用いて上流圧9MPa、下流圧0.54MPaにて、キャビテーション処理を30パス行い、カルボキシル化セルロースナノファイバー分散液を得た。ノズル直後の配管内直径に対する噴流の最大幅の割合は60%であった。
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーに、水130質量部と、水酸化ナトリウム20質量部を水100質量部に溶解したものとを加え、広葉樹パルプ(日本製紙(株)製、LBKP)を100℃60分間乾燥した際の乾燥質量で100質量部仕込んだ。30℃で90分間撹拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に撹拌しつつイソプロパノール(IPA)230質量部と、モノクロロ酢酸ナトリウム60質量部を添加し、30分間撹拌した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応をさせた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕して、カルボキシメチル置換度0.31、セルロースI型の結晶化度67%のカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。反応混合物に水を加えて濃度を1.0質量%に調整し、製造例2と同じノズルを装着したキャビテーション噴流装置(ノズル直後の配管内直径が2.3cm)を用いて上流圧9MPa、下流圧0.40MPaにて、キャビテーション処理を40パス行い、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー分散液を得た。ノズル直後の配管内直径に対する噴流の最大幅の割合は63%であった。
リン酸二水素ナトリウム二水和物6.75g、リン酸水素二ナトリウム4.83gを19.62gの水に溶解させ、リン酸系化合物の水溶液(以下、「リン酸化試薬」という。)を得た。針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP、水分80%、JIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)580ml)に、濃度が4質量%になるように水を加えた。その後、ダブルディスクリファイナーを用いて、変則CSF(平織り80メッシュ、パルプ採取量を0.3gとした以外はJIS P8121に準ずる)が200ml、長さ平均繊維長が0.66mmになるまで叩解した。これにより得たセルロース懸濁液を0.3%に希釈し、含水率90%、固形分(絶乾質量)3gのパルプシート(厚み200μm)を抄紙法で得た。このパルプシートを前記リン酸化試薬31.2g(乾燥パルプ100質量部に対してリン元素量として80質量部)に浸漬させ、105℃の送風乾燥機(ヤマト科学株式会社 DKM400)で1時間加熱後、さらに150℃で1時間加熱処理して、セルロース繊維にリン酸基を導入した。次いで、セルロース繊維にリン酸基を導入したパルプシートに500mlのイオン交換水を加え、攪拌洗浄後、脱水した。脱水後のシートを300mlのイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液5mlを少しずつ添加し、pHが12~13のセルロース懸濁液を得た。その後、このセルロース懸濁液を脱水し、500mlのイオン交換水を加えて洗浄を行った。この脱水洗浄をさらに2回繰り返した。この時のリン酸基置換度は0.34であった。反応混合物に水を加えて濃度を1.0質量%に調整し、製造例2と同じノズルを装着したキャビテーション噴流装置(ノズル直後の配管内直径が2.3cm)を用いて上流圧9MPa、下流圧0.4MPaにて、キャビテーション処理を30パス行い、リン酸エステル化セルロースナノファイバー分散液を得た。ノズル直後の配管内直径に対する噴流の最大幅の割合は61%であった。
製造例1と同様にして得られた反応混合物(カルボキシル化セルロース)に水を加えて濃度を1.0質量%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で1~3パス処理して、カルボキシル化セルロースナノファイバー分散液を得た。
製造例4と同様にして得られた反応混合物(カルボキシル化セルロース)に水を加えて濃度を1.0質量%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で5パス処理して、カルボキシル化セルロースナノファイバー分散液を得た。
上記の製造例1のセルロースナノファイバーの1.0質量%水分散体と、天然ゴムラテックス(商品名:HAラテックス、レヂテックス社、固形分濃度61.5質量%)とを混合した。天然ゴムラテックス(絶乾固形分)とセルロースナノファイバー(絶乾固形分)との混合比は、天然ゴムラテックスを100質量部とした場合、セルロースナノファイバーが5.0質量部であった。これらをTKホモミキサー(8000rpm)で30分間撹拌して混合物を得た。この混合物を、70℃の加熱オーブン中で15時間乾燥させた。
製造例1のセルロースナノファイバーの代わりに、それぞれ製造例2~12のセルロースナノファイバーを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2~12の架橋ゴムシートを得た。
セルロースナノファイバーを混合しない以外は実施例1と同様にして、比較例1の架橋ゴムシートを得た。
製造例13または14のセルロースナノファイバーを用いた以外は実施例1と同様にして、参考例1及び2の架橋ゴムシートをそれぞれ得た。
ガラスビーカーに、アニオン変性セルロースナノファイバーの固形分濃度が1.0質量%となるように水分散体300gを調製する。水分散体を25℃とし、JIS-Z-8803の方法に準じて、B型粘度計(東機産業社製)を用いて、回転数60rpmまたは6rpmで3分後の粘度を測定する。
固形分濃度を1.0質量%となるようにアニオン変性セルロースナノファイバー水分散体を調製後、UV-VIS分光光度計 UV-1800(株式会社島津製作所製)を用い、光路長10mmの角型セルを用いて、660nm 光の透過率(%)を測定し、透明度とする。
Claims (9)
- アニオン変性セルロースを準備する工程1、
キャビテーション噴流装置を用いてアニオン変性セルロースを解繊してアニオン変性セルロースナノファイバーを製造する工程2、及び
工程2で得られたアニオン変性セルロースナノファイバーをゴム成分と混合してマスターバッチを得る工程3、
を含む、マスターバッチの製造方法。 - 工程2において製造されるアニオン変性セルロースナノファイバーが、分散媒を水とした固形分1.0質量%のアニオン変性セルロースナノファイバー分散体とした際に、光路長10mmの角型セルを用いて波長660nmの光で測定した透過率が、37%以上となる、請求項1に記載の方法。
- キャビテーション噴流装置が、ノズルまたはオリフィスを通じて噴射した液体噴流によって生ずるキャビテーション気泡が崩壊する際の衝撃力をアニオン変性セルロースに与えるものであり、ノズルまたはオリフィスを通じて噴射する液体噴流の上流側圧力が0.01MPa以上30.00MPa以下であり、下流側圧力/上流側圧力の比が0.001~0.500である、請求項1または2に記載の方法。
- アニオン変性セルロースが、カルボキシル基を有するセルロースである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
- アニオン変性セルロースにおけるカルボキシル基量が、アニオン変性セルロースの絶乾質量に対して、0.4mmol/g~3.0mmol/gである、請求項4に記載の方法。
- アニオン変性セルロースが、カルボキシメチル基を有するセルロースである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
- アニオン変性セルロースにおけるカルボキシメチル置換度が、0.01以上0.40未満である、請求項6に記載の方法。
- ゴム成分が、ジエン系ゴムポリマーを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項1~8のいずれか1項に記載の方法でマスターバッチを製造する工程、および
前記マスターバッチを架橋する工程
を含む、ゴム組成物の製造方法。
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