[第1の形態]
以下,本発明を具体化した第1の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態の画像形成装置1は,図1に概略構成を示すように,中間転写ベルト30を有する,いわゆるタンデム方式のカラープリンターである。中間転写ベルト30は導電性を有する無端状のベルト部材であり,その図中両端部がローラー31,32によって支持されている。画像形成時には,図1中右側のローラー31が反時計回りに回転駆動される。これにより,中間転写ベルト30および図1中左側のローラー32が従動回転する。
中間転写ベルト30のうち,図1中右側のローラー31に支持されている部分の外周面には,二次転写ローラー41が設けられている。二次転写ローラー41と中間転写ベルト30の外周面とは接触しており,その接触している転写ニップN1により,二次転写領域が形成されている。
中間転写ベルト30の図1中下部には左から右に向かって順に,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の画像形成部10Y,10M,10C,10Kが配置されている。また,中間転写ベルト30の回転方向における画像形成部10Kの下流側であって転写ニップN1の上流側の位置には,濃度センサー20が設けられている。濃度センサー20は,中間転写ベルト30の外周面を検出位置としており,トナー像の像濃度を検出することができる。濃度センサー20はさらに,レジストセンサとしての機能をも有している。
また,画像形成部10Y,10M,10C,10Kはいずれも,該当色のトナー像を中間転写ベルト30上に転写するためのものである。画像形成部10Y,10M,10C,10Kはいずれも,その構成は同じである。このため,図1では,画像形成部10Yによって代表して符号をつけている。すなわち,画像形成部10Y,10M,10C,10Kは,円筒状の静電潜像担持体である感光体11を中心に,帯電器12,露光装置13,現像装置14,一次転写ローラー15,感光体クリーナー16を有している。一次転写ローラー15は,感光体11と中間転写ベルト30を挟んで対向する位置に配置されている。
図1中で下方に示すのは,給紙カセット51である。給紙カセット51には,複数の用紙Pが,積載により収容されている。また,給紙カセット51の図1中右側より上方に向かっては,搬送経路50が設けられている。そして,給紙カセット51に収容されている用紙Pは,その最上部のものより1枚ずつ給紙ローラー52によって搬送経路50に送り出されるようになっている。給紙ローラー52により送り出された用紙Pの搬送経路50には,転写ニップN1,定着装置100,排紙ローラー53がこの順で配置されている。搬送経路50のさらに下流側である図1中の上方には,排紙トレイ54が設けられている。定着装置100は,定着ニップN2において,用紙Pを加熱しつつ加圧することにより,用紙Pに転写されたトナー像の定着処理を行うためのものである。
本形態の画像形成装置1による,画像形成動作の一例について簡単に説明する。以下の説明は,4色のトナーを用いてカラー画像を形成するカラーモードにおける画像形成動作の一例である。
画像形成装置1は,画像形成の指示を受けると,その画像信号より各色の画像データを作成するとともに,感光体11の外周面を帯電器12によってほぼ一様に帯電させる。作成された各色の画像データはそれぞれ,対応する画像形成部10Y,10M,10C,10Kの露光装置13に送信される。また,帯電された感光体11の外周面には,露光装置13によって画像データに応じた光が投射され,静電潜像が形成される。次に,静電潜像は現像装置14によって現像され,感光体11上にはトナー像が形成される。各色のトナー像は,一次転写ローラー15によって中間転写ベルト30上に転写(一次転写)される。これにより,中間転写ベルト30上には,イエロー,マゼンタ,シアン,ブラックのトナー像がこの順で重ね合わされる。そして,重ね合わされた4色のトナー像は,中間転写ベルト30によって二次転写領域である転写ニップN1に搬送される。中間転写ベルト30に転写されず,一次転写ローラー15を過ぎた後も感光体11上に残留している転写残トナーは,感光体クリーナー16によって掻き取られ,感光体11上から除去される。
一方,給紙カセット51に収容されている用紙Pは,給紙ローラー52によって最上部のものから1枚ずつ搬送経路50に引き出される。引き出された用紙Pは,搬送経路50に沿って搬送され,中間転写ベルト30に載置されたトナー像とタイミングを合わせて転写ニップN1に到達する。そして,転写ニップN1において,重ね合わされた4色のトナー像が用紙Pに転写される。トナー像が転写された用紙Pは,さらに搬送経路50の下流側へと搬送される。すなわち,用紙Pは,定着装置100の定着ニップN2においてトナー像が定着された後,排紙ローラー53によって排紙トレイ54に排出される。
本形態の定着装置100の概略構成を図2に示す。定着装置100は,定着ローラー110,加圧ローラー120,均熱ローラー130,誘導加熱装置140を有する電磁誘導加熱方式の定着器である。定着ローラー110,加圧ローラー120,均熱ローラー130は平行に配置され,いずれも回転可能に支持されている。また,定着ローラー110および誘導加熱装置140は,定着ニップN2を通過する用紙Pのトナー像を坦持している面の側に配置されている。定着ローラー110および誘導加熱装置140は,定着ニップN2を通過する用紙Pを加熱するための加熱側の構成である。
一方,加熱側の構成と搬送経路50を挟んで対向する加圧側は,加圧ローラー120および均熱ローラー130により構成されている。加圧ローラー120は,定着ローラー110へ向けて軸と垂直の方向に圧接されている。これにより,定着ローラー110と加圧ローラー120との間には,用紙Pに定着処理を行う定着ニップN2が形成されている。また,均熱ローラー130は,加圧ローラー120へ向けて軸と垂直の方向に圧接されている。そして,定着処理時には,加圧ローラー120は,図2に矢印で示すように時計回り方向に回転駆動される。これにより,定着ローラー110および均熱ローラー130はそれぞれ,加圧ローラー120との圧接による摩擦力によって,図2に矢印で示す方向に従動回転する。
定着ローラー110の最外周は,定着ニップN2を通過した用紙Pが張り付いたままとならないよう,離型性の高い表面層111により構成されている。本形態においては,表面層111は,厚さ50μm程度である。表面層111の内周側には,定着ローラー110の外周面と用紙Pとの密着性を高めるための弾性層112が設けられている。弾性層112は,厚さ2mm程度である。また,定着ローラー110の最も内側は,十分な強度と耐熱性を有する基材である芯金113により構成されている。定着ローラー110の外径は,40mm程度である。
加圧ローラー120においても,その最外周は離型性の高い厚さ50μm程度の表面層121により構成されている。また表面層121の内周側には,厚さ4mm程度の弾性層122が設けられている。さらに加圧ローラー120の最も内側は,芯金123により構成されている。加圧ローラー120の外径も,40mm程度である。
ここで本形態では,定着ローラー110および加圧ローラー120の表面層111,121にはいずれも,PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブを用いている。なおこの他にも,表面層111,121として,PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)等のフッ素系樹脂材料を,フッ素系チューブまたはフッ素系コーティングとして用いることもできる。このような表面層111,121として用いられるフッ素系樹脂材料は,後述する超微粒子を透過させない性質を有する。また,本形態の定着ローラー110および加圧ローラー120の弾性層112,122にはいずれも,シリコーンゴムを用いている。なお,シリコーンゴムの発泡体であるシリコーンゴムスポンジなど,その他のシリコーン材料を用いることもできる。
均熱ローラー130は,定着ローラー110および加圧ローラー120の軸方向(図2中奥行き方向)における温度分布を均一にするための部材である。すなわち,均熱ローラー130は,加圧ローラー120に圧接されていることによりその軸方向に熱を移動させ,加圧ローラー120の軸方向の温度分布を均一にする。また,加圧ローラー120に圧接されて定着ニップN2を形成している定着ローラー110の温度分布も均一にする。
誘導加熱装置140は,定着ローラー110の軸方向に沿って配置されており,図2に示すように定着ローラー110の外周と対面している。誘導加熱装置140は高周波インバーター141と接続されている。誘導加熱装置140は,高周波インバーター141から供給される高周波電力により磁界を発生させ,その磁界により定着ローラー110を発熱させる。
また,定着ローラー110の図2中下方には,温度センサー143が近接して配置されている。温度センサー143は,定着ローラー110の表面温度を測定する,例えば非接触の赤外線センサーである。高周波インバーター141および温度センサー143は,制御部142と接続されている。
そして定着処理時には,制御部142は,温度センサー143が検出する定着ローラー110の表面温度を基に,高周波インバーター141から誘導加熱装置140に供給される電力を制御する。これにより,定着ローラー110の表面温度は,定着処理を行うための所定温度に自動制御される。
以上のような定着装置100では,定着装置100および定着装置100によりトナー像を担持した用紙Pに定着処理が行われる定着領域において,粒径が100nm以下の超微粒子が発生する。超微粒子は,例えば,定着処理時において,定着ローラー110や加圧ローラー120から発生する。詳細には,定着ローラー110および加圧ローラー120が定着処理時に加熱されることにより,その弾性層112,122をなすシリコーンゴムから揮発成分であるシロキサンが生成される。そして,生成されたシロキサンが凝集することにより,超微粒子が発生するのである。この超微粒子は,シリコーンゴムに限らず,例えばシリコーンスポンジなど,その他のシリコーン材料を用いた場合にも発生する。さらに,超微粒子は,定着処理時において,用紙Pに担持されたトナーからも発生する。トナーは,定着処理時には加熱しつつ加圧されることにより溶融し,用紙Pに定着される。その溶融する際のトナーより,超微粒子が発生するのである。
よって,これら定着装置100より発生する超微粒子を回収するため,本形態においては,図3から図5に示すようなダクト150を設けている。なお,図3から図5に示すダクト150は,定着装置100の加熱側において発生する超微粒子を回収するためのものである。図3は,加熱側の幅方向(図中奥行き方向)における中央付近の断面図である。幅方向とは,用紙Pの搬送方向に直行する方向であり,定着ローラー110の軸方向のことである。図4は,加熱側の幅方向における端部付近の断面図である。図5は,図3中および図4中のZ−Z位置における断面図である。また,図3は,図5中のX−X位置における断面である。図4は,図5中のY−Y位置における断面図である。
図5に示すように,ダクト150の内部は,隔壁154と隔壁155とによって幅方向に3分割されている。すなわち,ダクト150は,加熱側の構成の幅方向の両端付近をそれぞれ覆うダクト151,153と,加熱側の構成の幅方向の中央付近を覆うダクト152とを有している。なお,図3および図4に示すように,隔壁154,155にはそれぞれ,定着ローラー110の形状に合わせた切欠き156,157が形成されている。切欠き156,157は定着ローラー110の外周面に接触しておらず,それらの間は0.5〜2mm程度の隙間となっている。
ここで図5に示す長さL1は,隔壁154と隔壁155との間隔,すなわち,ダクト152の幅方向における長さである。長さL2は,誘導加熱装置140の幅方向における長さである。長さL3は,用紙Pの幅方向における長さである。なお,図5に示す用紙Pは,画像形成装置1において使用される中でも最も幅方向に長いものである。つまり,長さL3は,用紙Pが定着ニップN2に通紙されるときの最大通紙領域を示している。また,図5に示すように,弾性層112は,その幅方向の両端以外が表面層111に覆われており,これら表面層111および弾性層112の幅方向の長さをL4としている。
また,図5に示すように,誘導加熱装置140の長さL2および用紙Pの最大通紙領域の長さL3は,ダクト152の長さL1よりも短い。そして,誘導加熱装置140は,ダクト152の内部に位置している。また,用紙Pは,定着ローラー110の外周面のうち,必ず中央のダクト152に覆われた領域を通紙されるようになっている。
一方,表面層111および弾性層112の長さL4は,ダクト152の長さL1よりも長い。そして,表面層111および弾性層112の幅方向の両端はそれぞれ,ダクト152の幅方向の外側に位置するダクト151,153に覆われている。
また,ダクト151には排気路161が,ダクト152には排気路162が,ダクト153には排気路163が,それぞれ接続されている。排気路161,162,163はいずれも,ファン160を有する排気経路である。ファン160は,ダクト151,152,153のそれぞれの内部の空気を機外へと排出する気流を発生させるためのものである。そして,その気流により,加熱側より発生した超微粒子は空気とともに,排気路161,162,163へと導かれるようになっている。
排気路161,163の排気経路におけるファン160の上流側には,電気集塵装置165が設けられている。電気集塵装置165は,帯電部166および集塵部167を有している。これら帯電部166と集塵部167とは,排気路161,163に導かれた空気がこの順で通過するように配置されている。そして,定着処理時において,本形態の帯電部166には,負電圧が印加される。一方,集塵部167には,帯電部166とは反対の正電圧が印加される。これにより,帯電部166は,通過する超微粒子を負に帯電させることができる。集塵部167は,負に帯電した超微粒子を電気的に捕捉することができる。なお,帯電部166と集塵部167とに印加する電圧の正負はそれぞれ,上記に記載したものと逆であってもよい。
排気路162の排気経路におけるファン160の上流側には,ろ過フィルター164が設けられている。ろ過フィルター164は,通過する空気と超微粒子とのうち,超微粒子のみを物理的に捕捉するためのものである。ろ過フィルター164として,例えば不織布や織布等を用いることができる。
ここで,前述したように,定着ローラー110の弾性層112からは,シリコーンゴムが加熱されることにより超微粒子が発生する。この弾性層112から発生した超微粒子を,図4および図5において超微粒子Aとして示している。図4および図5に示すように,超微粒子Aは,定着ローラー110の両端付近からのみ噴出する。つまり,超微粒子Aは,図3に示す定着ローラー110の中央付近からは噴出しない。前述したように,定着ローラー110の最外周に位置する表面層111は,超微粒子Aを透過させない性質を有しているからである。このため,弾性層112において発生した超微粒子Aは,弾性層112の両端面からのみ噴出するのである。
そして,超微粒子Aの噴出する定着ローラー110の両端付近はそれぞれ,ダクト151,153により覆われている。このため,超微粒子Aは,ファン160による気流によって排気路161,163へと導かれる。すなわち,超微粒子Aは,帯電部166によって負に帯電された後,正に帯電している集塵部167によって回収される。
なお,図5に示す表面層111および弾性層112の長さL4は同じであるが,異なる長さであってもよい。すなわち幅方向において,弾性層112は,少なくとも図5に示す最大通紙領域の長さL3よりも長ければよい。定着ニップN2における表面層111と用紙Pとの密着性を保つことができるからである。さらに幅方向において,表面層111は,少なくとも図5に示すダクト152の長さL1よりも長ければよい。定着ローラー110のうち,ダクト151,153に覆われている部分において超微粒子Aが噴出することに変わりはないからである。また幅方向において,弾性層112の長さが表面層111の長さよりも長い場合には,弾性層112の両端面だけでなく,表面層111に覆われていない弾性層112の周面からも超微粒子Aは噴出する。
また,前述したように,用紙Pに担持されたトナーからも超微粒子が発生する。このトナーから発生する超微粒子を,図3および図5において超微粒子Bとして示している。図3および図5に示すように,超微粒子Bは,用紙Pが通紙される定着ローラー110の中央付近において発生する。つまり,超微粒子Bは,図4に示す定着ローラー110の両端付近には発生しない。超微粒子Bが発生するのは,図5に示すように,ダクト152に覆われた定着ローラー110の中央付近の最大通紙領域である。すなわち,用紙Pより発生した超微粒子Bは,ファン160によるダクト152内の気流によって排気路162へと導かれる。よって,超微粒子Bは,ろ過フィルター164によって回収される。
ここで図6は,定着装置100の定着処理時において発生する超微粒子の粒径分布を,その発生源別に示したものである。すなわち,シリコーン材料から発生する超微粒子Aの粒径分布と,トナーから発生する超微粒子Bの粒径分布とを示している。図6より,超微粒子Aおよび超微粒子Bはいずれも,ほぼ100nm以下の粒径であることが分かる。また,超微粒子Aには,粒径100nm以下の範囲内における大きい粒径のものが高い割合で存在していることが分かる。一方,超微粒子Bには,粒径100nm以下の範囲内における小さい粒径のものが高い割合で存在していることが分かる。
そして一般的には,粒径の大きい粒子ほど,ろ過フィルターによって回収されやすい傾向がある。粒径が大きい粒子ほど,ろ過フィルターの目を透過しにくいからである。しかし,粒径が100nm以下の超微粒子においては,逆に,粒径の小さいものほど,ろ過フィルターによって捕捉されやすい傾向があることが分かっている。このため,粒径100nm以下の範囲内における小さい粒径のものが高い割合で存在する超微粒子Bの排気路162には,ろ過フィルター164が設けられているのである。これにより,超微粒子Bを,効率良く回収することができるのである。
一方,粒径100nm以下の範囲内における大きい粒径のものが高い割合で存在する超微粒子Aについては,その多くがろ過フィルターを透過してしまうおそれがある。このため,本形態においては,超微粒子Aの排気路161,163には,電気集塵装置165が設けられている。これにより,超微粒子Aを,帯電部166によって負に帯電させつつ,正電圧が印加されている集塵部167によって効率良く回収することができるのである。
そして,電気集塵装置は,超微粒子の回収能力が高いほど,また,通過させることのできる空気の流量が多いほど高価なものとなる。能力の高い帯電部や集塵部が必要となるからである。そこで,本形態においては,超微粒子Aの排気経路である排気路161,163にのみ,電気集塵装置165を設けている。これにより,本形態の電気集塵装置165は,その帯電部166および集塵部167に必要とされる帯電能力および集塵能力は最小限で済むため,安価である。また,超微粒子Bの排気経路である排気路162に設けられたろ過フィルター164は,帯電部等を有していないため,安価である。よって,定着装置100の加熱側より発生する超微粒子Aおよび超微粒子Bを,効率良く,安価な構成で回収することができる。
なお,超微粒子Bを回収するろ過フィルター164としては,活性炭等の吸着剤を担持した吸着剤フィルターや,静電気を帯びた静電フィルター等を用いることもできる。また,超微粒子Aの排気路161,163にはさらに,ろ過フィルターや吸着剤フィルター,静電フィルター等を設けてもよい。これらのフィルターは,電気集塵装置165よりも下流側の位置に設けることが好ましい。そして,これらのフィルターは安価であるとともに,電気集塵装置165において回収できなかった超微粒子Aを回収することができる。すなわち,機外に排出される超微粒子Aの量を低減させることができるのである。
また,上記においては,加熱側のダクト150について説明しているが,同様のダクトを加圧側にも適用することができる。すなわち,加圧ローラー120においても定着ローラー110と同様に,表面層121と弾性層122とを有している。そして定着処理時には,弾性層122であるシリコーンゴムが加熱されることにより,超微粒子Aが発生する。発生した超微粒子Aは,加圧ローラー120の両端付近より噴出する。弾性層122の幅方向の両端以外は,表面層121に覆われているからである。さらに,用紙Pが通紙される加圧ローラー120の中央付近からは,トナーが加熱されることにより超微粒子Bが発生する。よって,加圧側においても,加熱側のダクト150と同様のダクトを設けることにより,発生する超微粒子Aおよび超微粒子Bを,効率良く,安価な構成で回収することができるのである。
以上詳細に説明したように,本形態の画像形成装置1では,定着装置100による定着処理がなされる定着領域において,粒径が100nm以下の超微粒子Aおよび超微粒子Bが発生する。超微粒子Aは,定着ローラーや加圧ローラーのシリコーン材料により形成された弾性層から発生する。そして,超微粒子Aの発生する弾性層の幅方向の両端以外は,超微粒子を透過させないフッ素系樹脂材料により形成された表面層に覆われている。このため,超微粒子Aは,弾性層の両端より噴出する。一方,超微粒子Bは,用紙に担持されたトナーから発生する。つまり,超微粒子Bは,弾性層および表面層の幅方向の中央付近の用紙の最大通紙領域において発生する。超微粒子Aには,粒径100nm以下の範囲内における大きい粒径のものが高い割合で存在する。超微粒子Bには,粒径100nm以下の範囲内における小さい粒径のものが高い割合で存在する。よって,超微粒子Aが噴出する弾性層および表面層の両端を吸引排気するダクトの排気経路には,電気集塵装置を設けている。超微粒子Bが発生する用紙の最大通紙領域を吸引排気するダクトの排気経路には,ろ過フィルターを設けている。これにより,超微粒子Aおよび超微粒子Bを,効率良く,安価に回収できる構成を有する画像形成装置が実現されている。
[第2の形態]
第2の形態について説明する。本形態は,第1の形態と比較して,定着装置の構成がやや異なる。詳細には,本形態では,加熱側の構成,すなわち,第1の形態における定着ローラー110等に相当する構成が異なる。第1の形態における加圧ローラー120等の加圧側の構成は,本形態においても同じである。
本形態の定着装置200の加熱側の概略構成を図7および図8に示す。図7は,定着装置200の加熱側の幅方向における中央付近の断面を示している。図8は,定着装置200の加熱側の幅方向における端部付近の断面を示している。なお,図8は,基本的には定着装置200の図中奥行き方向における手前側の端部を示しているが,括弧付した符号により奥側の端部を示している。
本形態の定着装置200は,加熱側の構成として,定着ローラー210,加熱ローラー220,定着ベルト230を有している。定着ベルト230は,定着ローラー210と加熱ローラー220とに巻き掛けられている。定着ベルト230の外周面には加圧ローラー120が圧接されており,図7に示すように,その接触している部分には定着ニップN2が形成されている。また,本形態においても,定着装置200の加熱側より発生する超微粒子を回収するため,ダクト250が設けられている。
本形態のダクト250においても,その内部は,図7に示す隔壁254と,図8に示す隔壁255とによって幅方向に3分割されている。すなわち,隔壁254は,図5に示す第1の形態のダクト150における隔壁154に相当する。隔壁255は,図5に示す第1の形態のダクト150における隔壁155に相当する。
そして,本形態のダクト250においても,図8に示す定着装置200の加熱側の両端付近をそれぞれ覆うダクト251,253と,図7に示す定着装置200の加熱側の中央付近を覆うダクト252とを有している。また,隔壁254,255にはそれぞれ,定着ベルト230の形状に合わせた切欠き256,257が形成されている。本形態においても,切欠き256,257は定着ベルト230の外周面に接触しておらず,それらの間は0.5〜2mm程度の隙間となっている。
また本形態においても,用紙Pの最大通紙領域は,隔壁254と隔壁255との間に位置している。すなわち,本形態においても,図5に示す第1の形態におけるL1とL3との関係は同じである。このため,用紙Pは,定着ベルト230の外周面のうち,必ず中央のダクト252に覆われた領域を通紙されるようになっている。また,定着ベルト230の幅方向の長さは,ダクト252の幅方向の長さよりも長い。すなわち,本形態においても,図5に示す第1の形態におけるL1とL4との関係は同じである。そして,定着ベルト230の幅方向の両端はそれぞれ,ダクト251,253に覆われている。
さらに,図7に示すように,ダクト252には排気路262が接続されている。本形態においても,排気路262の排気経路には,ろ過フィルター164,ファン160がこの順で設けられている。また,図8に示すように,ダクト251には排気路261が,ダクト253には排気路263が,それぞれ接続されている。排気路261,263の排気経路にはそれぞれ,電気集塵装置165,ファン160がこの順で設けられている。
また,本形態の定着ローラー210の最外周は,厚さ6mm程度の弾性層211により構成されている。弾性層211は,シリコーンゴムの発泡体であるシリコーンスポンジである。弾性層211には,その他のシリコーン材料を用いることもできる。弾性層211の内側は,芯金212により構成されている。定着ローラー210の外径は,40mm程度である。なお,定着ローラー210は,最外層として補強層を有するものであってもよい。
加熱ローラー220は,中空の円筒状の部材である芯金221と,その内部に設けられた熱源であるハロゲンヒーター222とを有している。加熱ローラー220の外径は,40mm程度である。
定着ベルト230は,無端状のベルト部材である。定着ベルト230は,図9に示すように,外側(図中上側)から順に,表層231,弾性層232,基層233を有している。本形態の定着ベルト230の表層231は,50μm厚のPFAチューブである。表層231には,その他のフッ素系樹脂材料を用いることもできる。弾性層232は,200μm厚のシリコーンゴムである。弾性層232には,その他のシリコーン材料を用いることもできる。基層233は,ニッケル電鋳ベルトである。また,弾性層232は,定着ベルトの幅方向の両端以外は表層231に覆われている。
このように,本形態においては,定着ローラー210および定着ベルト230がそれぞれ,シリコーン材料よりなる弾性層211および弾性層232を有している。このため,定着処理時には,図8に示すように,定着ローラー210および定着ベルト230から,超微粒子Aが発生する。そして,定着ベルト230の弾性層232から発生した超微粒子Aは,定着ベルト230の両端部より噴出する。定着ベルト230の最外周に位置する表層231は,超微粒子Aを透過させないからである。また,定着ローラー210の弾性層211より発生した超微粒子Aにおいても,定着ベルト230の両端より噴出する。定着ローラー210には,定着ベルト230が巻き掛けられているからである。
そして,超微粒子Aの噴出する定着ベルト230の両端付近はそれぞれ,ダクト251,253に覆われている。このため,超微粒子Aは,ファン160による気流によって排気路261,263へと導かれる。すなわち,粒径100nm以下の範囲内における大きい粒径のものが高い割合で存在する超微粒子Aは,帯電部166によって負に帯電された後,正に帯電している集塵部167によって効率良く回収される。
また,本形態においても,定着処理時には,図7に示すように,用紙Pに担持されたトナーが溶融することにより,超微粒子Bが発生する。本形態においても,超微粒子Bが発生するのは,ダクト252に覆われた定着ベルト230の中央付近の最大通紙領域である。このため,用紙Pより発生した超微粒子Bは,ダクト252内の気流によって排気路262へと導かれる。よって,粒径100nm以下の範囲内における小さい粒径のものが高い割合で存在する超微粒子Bは,ろ過フィルター164によって効率良く回収される。
そして,本形態においても,帯電部166と集塵部167とに必要とされる帯電能力および集塵能力は最小限で済む。帯電部166および集塵部167を,超微粒子Aの排気路261,263にのみ設けているからである。さらに,超微粒子Bの排気路262には,帯電部等を有していないろ過フィルター164が設けられている。これにより,本形態においても,定着装置200の加熱側より発生する超微粒子Aおよび超微粒子Bを,効率良く,安価な構成で回収することができる。
また,本形態の定着ローラー210に代えて,回転しない定着部材を用いる構成の場合もある。この場合においても,その定着部材の弾性体としてシリコーンゴムやシリコーンスポンジなどのシリコーン材料を用いることにより,定着処理時には超微粒子Aが発生することとなる。
そして,定着ローラー210に代えて回転しない定着部材を用いた場合には,定着処理時において,その定着部材の外周面と定着ベルト230の内周面とが摺動する。このため,定着ベルト230の内側には潤滑剤供給部が配置され,定着ベルト230の内周面には潤滑剤としてのシリコーンオイルが適宜供給されることがある。回転しない定着部材の外周面と定着ベルト230の内周面との摺動抵抗を低減させるためである。このシリコーンオイルからも,定着処理時には超微粒子Aが発生する。
しかし,回転しない定着部材は,定着ベルト230の内側に位置している。また,シリコーンオイルは,定着ベルト230の内周面に供給される。このため,発生した超微粒子Aは,ダクト251,253に覆われた定着ベルト230の幅方向の両端より噴出することとなる。よって,定着ローラー210に代えて回転しない定着部材を用い,定着ベルトの内周面にシリコーンオイルを供給した場合においても,超微粒子Aを,排気路261,263に設けられた電気集塵装置165によって効率良く回収することができるのである。
以上詳細に説明したように,本形態の定着装置200は,その加熱側の構成に定着ベルトを用いたものである。定着ベルトは,最外周にフッ素系樹脂材料を用いた表層を有している。そして,本形態においても定着ローラーおよび定着ベルトの弾性層に用いたシリコーン材料から超微粒子Aが発生する。また,定着ローラーに代えて回転しない定着部材を用いた構成の場合,その回転しない定着部材に用いたシリコーン材料,および定着ベルトの内周面に供給されるシリコーンオイルから超微粒子Aが発生する。これら超微粒子Aの発生源はいずれも,定着ベルトの表層の内側に位置している。このため,超微粒子Aは,定着ベルトの両端より噴出する。よって,超微粒子Aが噴出する定着ベルトの両端を吸引排気するダクトの排気経路には,電気集塵装置を設けている。超微粒子Bが発生する用紙の最大通紙領域を吸引排気するダクトの排気経路には,ろ過フィルターを設けている。これにより,本形態においても,超微粒子Aおよび超微粒子Bを,効率良く,安価に回収できる構成を有する画像形成装置が実現されている。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。従って本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,上記の形態では定着装置の両端部のダクトがそれぞれに排気路を有し,その排気路のそれぞれが帯電部と集塵部とを有する構成について説明したが,これに限るものではない。帯電部および集塵部は超微粒子Aの排気経路上にあれば良く,例えば,両端部のダクトの排気路を途中で合流させる構成の場合,排気路の合流した位置よりも下流側に帯電部と集塵部とを設ければよい。この場合には,帯電部および集塵部はそれぞれ,1つずつでよい。この場合には当然,ファンも1つでよい。
また本発明は,上記の形態においてタンデム方式のカラープリンターとした画像形成装置1に限らず,1つの感光体の周囲に各色の現像装置が設けられている,いわゆる4サイクル方式のものにも適用することができる。また例えば,モノクロの複写機やプリンター,ファクシミリ,またはこれらの機能を複合的に備える複合機等にも適用可能である。