JP5891587B2 - レトルト冷やし粥 - Google Patents

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Description

本発明は、レトルト粥及びその製造方法に関する。
一般に粥等のレトルト食品米飯類は、洗米・浸漬した米を計量し、これと水、または種々に味付けされた調味液を容器に充填・密封した後、調理と殺菌を同時に行って製造されている。
このようにして製造されたレトルト粥類は、100℃程度に加熱された熱水中に数分間浸漬するだけで食することができるため、簡便性の観点から喫食される機会が多い。
レトルト粥類は、鍋等で炊飯した手作りしたお粥(所謂家庭の味)を目標の品質として、米の膨潤や粒残り、食感等に関して様々な改良が試みられている。
特許文献1は、レトルト白がゆの揮発成分を固相マイクロ抽出−ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME-GC-MS)で分析したとき、該レトルト白がゆの揮発成分である硫化水素のピーク面積(定量イオンm/z34)に対するヘキサナールのピーク面積(定量イオンm/z56)の比が100以下であることを特徴とするレトルト白がゆを開示している。これによって鍋等で炊飯した手作りの白がゆとほぼ同等の香りを有するレトルト粥を製造することができる。
特許文献2は、80〜100℃で5〜30分間の1次加熱処理を実施し、その後引き続いて加圧加熱殺菌処理を行うという、2段階の加熱処理を特徴としている(2段殺菌法)。80〜100℃で1次加熱処理することにより、米がより膨潤し、ふっくらとした米粒のレトルト粥を作ることができる。
特許文献3は、米と清水を耐熱性容器に充填密封し、レトルト処理を施すレトルト白がゆの製造方法において、精米に対し清水を、10%以下添加あるいは無添加の状態で除糠用粘着物質を用い糠層が除去された無洗米、及び清水として80℃以上の熱水をそれぞれ用いて、13〜20%の水分とした無洗米と前記熱水を耐熱性容器に充填密封し、そのまま中心部の品温が60℃以下となるように冷却した後、115〜120℃で10〜30分の殺菌条件でレトルト処理することを特徴としているレトルト白がゆを開示している。この製法によって鍋等で炊飯した手作りの白粥と同様に米粒の粒残りがよいレトルト白粥となる。
特許文献4では、調理の温度パターンを手作り製品の温度パターンに類似させ、使用する水等の酸素量を調整することにより風味の良いレトルト食品を得ている。
これらの方法では、調理や殺菌のための加圧加熱殺菌処理(所謂レトルト処理)時には米がパウチの底に沈んだ状態であり、加熱により米から漏出する粘性物質によって米同士が結着したり、容器内面に米が付着したりするという現象が見られた。しかしながら、これらの現象は、レトルト粥を喫食するために温める場合に、その過程で解消または緩和されるということ、また、米同士の結着現象は特に製造直後に顕著にみられ、時間と共に解消、緩和されていく傾向があるので食する場合には大きな問題とはならなかった。
一方、近年の生活スタイルの変遷に応じて多彩なレトルト食品のニーズが高まりつつある。例えば食欲のない夏場には、冷やして食することができる粥が望まれる。しかしながら、温めて食することを前提とした従来のレトルト粥では、食する際に温めずそのまま、あるいは冷やして食べると、米同士の結着や容器への付着が解消されず、容器から取り出しにくかったり、取り出した後にダマをほぐす必要があるなどして使用性が悪かったり、ダマをそのまま食べると不快な食感と感じられる場合がある。
米同士の結着を防止する方法として、特許文献5及び特許文献6に記載の方法が知られている。
特許文献5は、米と清水を耐熱性容器に充填密封し、レトルト処理を施すレトルト白がゆの製造方法において、精米に対し清水を、10%以下添加あるいは無添加の状態で除糠用粘着物質を用い糠層が除去された無洗米、及び清水として80℃以上の熱水をそれぞれ用いて、13〜20%の水分とした無洗米と前記熱水を耐熱性容器に充填密封し、そのまま中心部の品温が60℃以下となるように冷却した後、充填密封後20分間以内に昇温を開始し、前記密封物を反転および休止を繰返しながらレトルト処理を行うことを特徴とするレトルト白がゆの製造方法を開示している。
特許文献6は、ヒドロキシプロピルセルロースを含むことを特徴とする飯質改良剤を開示している。
しかしながら特許文献5の方法は、レトルト処理をしながら、レトルト機内部全体を揺り動かすという大掛かりなものである。また、特許文献5に記載されたレトルト粥は温めて喫食することを前提としたものであり、温めずにそのまま、あるいは冷やして食べる場合に、米同士の結着や容器への付着が十分に解消されているとは言えない。特許文献6の方法は、余分な成分の混入につながり、家庭の味とは言えない。
日本特許第4439450号公報 特開2002−253145号公報 日本特許第4080475号公報 日本特許第2986243号公報 特開2006−115804号公報 日本特許第4570543号公報
本発明は、温めずにそのまま、あるいは冷やして食べる場合であっても、米同士の結着や容器への付着が解消されている、すなわちダマのないレトルト粥類及びそれを製造する方法を提供することを目的とする。
レトルト食品を製造する場合、加圧加熱殺菌処理は必須の工程である(以下、当該加圧加熱殺菌処理をレトルト処理とも称する)。そこで、本発明者らは、上記課題に鑑みて加圧加熱殺菌処理の条件を鋭意検討した。その結果、高温短時間で殺菌することによって、加圧加熱殺菌処理の際のダマの発生を抑制することができることを見出し、得られた粥類が低温での喫食に適したものであることを確認して本発明を完成するに到った。
即ち、本発明は、以下の通りである。
[1]常温あるいは低温での、レトルト容器内のダマの発生が抑えられた、レトルト処理された粥類。
[2]4〜15℃でのレトルト容器内のダマの発生が抑えられた、レトルト処理された粥類。
[3]常温あるいは低温で、目開き13.2mmのメッシュ上に残存するダマの割合が投入した生米に対して2.3以下である、レトルト処理された粥類。
[4]製造後35日目における、常温あるいは低温での、レトルト容器内のダマの発生が抑えられた、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のレトルト処理された粥類。
[5]レトルト処理が、123〜135℃で5〜20分間の加圧加熱殺菌処理を含む、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の粥類。
[6]米が精米である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の粥類。
[7]低温での喫食用の、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の粥類。
[8]レトルト粥類を製造するにあたり、少なくとも米と水とを、耐熱性があるレトルト容器へ充填し密封した後に行なわれる加圧加熱殺菌処理を、123〜135℃で5〜20分間行なうことを特徴とする、レトルト粥類の製造方法。
[9]米が精米である、上記[8]記載の方法。
[10]上記[8]又は[9]に記載の製造方法によって得られる、レトルト粥類。
ここで、「レトルト容器内のダマの発生が抑えられている」とは、加圧加熱殺菌処理の際のダマの発生が抑えられていることに加え、常温あるいは低温においてもレトルト容器内にダマが実質的に残存しないことを意味する。
加圧加熱殺菌処理によるレトルト容器内のダマの発生が抑えられた、本発明のレトルト粥類は、温めないで、さらには冷やして食する場合であっても、容器への付着や、ダマの不快な食感がない。従って、冷やし粥として提供することが可能となる。
図1はレトルト処理の条件を種々にかえて製造したレトルト粥を常温保存して、そのダマの割合について翌日評価した結果を表す図である。A:117℃・49分20秒レトルト処理、B:121℃・24分7秒レトルト処理、C:125℃・12分20秒レトルト処理。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、別段の規定のない限り、「%」は「質量%」を意味する。
本発明において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない、平常の温度である。通常、15℃より高く35℃以下の温度を意図する。本発明において、「低温」としては、0〜15℃の温度を意図する。
本発明における使用原料の一つは米である。好ましくは搗精処理後の精米(精白米)である。精米歩合は好みや用途に応じて適宜設定することができる。精米歩合とは、白米のその玄米に対する重量の割合をいい、白米とは玄米から糠、胚芽等の表層部を取り去った状態の米をいう。本発明において使用する米の精米歩合は、通常85〜95%、好ましくは89〜93%程度である。
米の生産地、種類、品質等については、特に限定されるものではない。
米は洗米処理して用いるが、無洗米をそのまま用いてもよい。洗米処理は、常温程度の水によって実施することができる。洗米処理後の精米はザルで脱水するなどして、十分に水切りを行っておくことが好ましい。洗米処理後の精米、或いは無洗米は、所望により60〜120分間水中に浸漬させてもよい。この場合も、浸漬後は、十分に水切りを行う。ここで無洗米とは、精米を無洗化処理して炊飯の際に水洗を必要としない程度に糠を除去した米である。無洗化処理としては、糠の粘着力を利用して、精米から糠を剥がし取る方法(BG精米精製法)、米に少量の水を加え、タピオカに付着させて取り除く方法(NTWP)、水で洗い落とし短時間に乾燥させる方法やブラシや不織布等を用いて糠を取り除く方法等が挙げられる。本発明で用いる無洗米はどのような方法によって無洗化されたものであっても構わない。
本発明の方法では、上記した如く、洗米後の精米、或いは無洗米を、必要に応じて水中に浸漬した後、水切りしたものを、水または調味液と共に、耐熱性がある容器へ充填し密封する。容器としては、耐熱性があるものであればよく、更に酸素バリア性のあるものが好ましい。容器としては、特に制限はないが、例えば枕状パウチ、平パウチ、スタンディングパウチなどのレトルトパウチや、トレー本体とこれに対する蓋材からなるレトルト食品用容器などが挙げられる。このような容器の材料としては、プラスチック、プラスチックとアルミ箔のラミネート等を採用することができる。これらを総称してレトルト容器ともいう。該容器としては、さらに遮光性等を有するものであることが望ましい。
粥類であるという本発明の性質上、該容器は、好ましくはレトルトパウチである。
容器内に充填する米と水との量は、所望に応じて適宜設定すれば良く、その使用量に応じて、全粥、7分粥、5分粥、3分粥等となる。例えば、7分粥(白粥)の場合は、洗米前の生米の重量に対し、約7倍容量の水を使用すればよい。
本発明は、粥の他に雑炊を含んだ粥類を対象とするが、いずれも主原料は米である。一般的には生米から炊いたものを粥、炊飯したご飯から作るものを雑炊と呼ぶが、本発明では、これらを区別せず総称して粥類と称する。
粥としては、米と水だけの白粥に限られず、調味液や、肉、魚介類、野菜等の具材を入れたものであってもよい。また、雑炊は、水の他、醤油、味噌、その他、塩類又は糖類等の調味料などからなる調味液を用い、さらに肉、魚介類、野菜等の具材を入れたものが一般的であるが、そのような具材を含まないものであってもよい。なお、粥や雑炊中に添加する具材は、予め前処理しておいてもよい。
本発明においては、水もまた主原料である。本発明において用いる水は、食品で一般的に使用されている清水であればいずれのものでも良く、例えば、水道水(市水)、イオン交換水、蒸留水、ミネラルウォーター、ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター又は海洋深層水等が挙げられる。
米とともに容器に充填する水または調味液としては、事前に加熱しないものを用いるのが好ましい。加熱した熱水を用いることは、ダマの発生を抑制する観点から好ましくない。
少なくとも、上記した米及び水または調味液、更に必要に応じて具材等を、耐熱性があり、且つ、酸素バリア性のあるレトルト容器に充填した後、該容器を熱シール等の手段により密封する。本発明は、この後に行われる加圧加熱殺菌工程に特色を有するものであり、当該工程において、123〜135℃、好ましくは125〜130℃にて5〜20分間、好ましくは5〜15分間という高温、且つ短時間の殺菌処理を施すことを特徴とする。上記した処理条件の範囲内で達成されるFo値(微生物の耐熱性パラメータZ=10℃とした時の121.1℃における加熱時間で示される殺菌値)はいずれもレトルト食品として食品衛生法が定める基準を満たしている。加熱温度が123℃未満であると、加圧加熱殺菌処理中にレトルト容器内に米のダマが生じ、温めずに喫食しようとする場合には容器から取り出しにくかったり、取り出した後にダマをほぐす必要があったりするなど使用性が悪く、またダマをそのまま食した場合は不快な食感となる。加熱温度が135℃を超えると米粒がつぶれ糊化が進み食感が悪く不味くなる。加圧加熱殺菌処理時間が5分間より短いと十分な殺菌効果が得られない可能性があり、20分間より長いと、米粒がつぶれ食感が悪く不味くなる。
レトルト殺菌機における、熱媒体(蒸気)の導入を開始してから殺菌温度に到達するまでの時間(カムアップタイム)は、通常実施される範囲で任意に設定することができ、特に制限はないが、好ましくは4〜20分である。
加圧条件としては、通常実施される加圧加熱殺菌処理で用いられる条件と同様であり、大気圧以上、好ましくは0.1〜0.3MPa(ゲージ圧として)である。レトルト容器が破損、変形しない範囲で任意に調整することができる。
ここで、レトルト容器内に生じる米のダマとは、米の結着等によって生じる米粒とは異質な食味を呈する米の凝集物であり、比較的小さいものをダマ、大きいものを塊と呼ぶことがあるが、本発明ではこれらダマや塊を総称してダマと称する。本発明において、ダマは、後述の如く、目開き13.2mmのメッシュに付した際、そのメッシュ上に残存する。従来のレトルト粥類では、加圧加熱殺菌処理により、レトルト容器内で複数のダマが生じていたが、本発明で提供されるレトルト粥類は、ダマの発生が抑えられている。
本発明で提供されるレトルト粥類は、常温あるいは低温での、レトルト容器内のダマの発生が抑えられた、即ち、レトルト容器内にダマが実質的に残存しない。「ダマが実質的に残存しない」とは、外観的にダマが認められない状態を意味する。
より具体的には、本発明で提供されるレトルト粥類は、常温あるいは低温で、目開き13.2mmのメッシュ上に残存するダマの割合が投入した生米に対して2.3以下、更に好ましくは2.2以下である。ダマの割合は具体的には以下のようにして算出する。
1.レトルト処理後、レトルト容器を開封する。
2.粥と等量の水を別の容器に入れ、その上に静かにレトルト容器の内容物を注ぐ。米がレトルト容器に付着している場合はダマを壊さないようにスパチュラ等で静かに掻き出す。
3.ダマを壊さないようにスパチュラで数回静かに攪拌する。
4.目開き13.2mmのメッシュの上に静かに全量をあける。
5.メッシュ上に残存したダマの重量(メッシュオン重量(g))を測定する。
6.下記計算式に従い、投入した生米あたりのダマの割合を算出する。
ダマの割合=メッシュオン重量(g)/レトルト容器に投入された生米量(g)
ここで、常温測定の場合は常温の水を、低温測定の場合は冷水(氷水)を使用する。
ダマの割合が2.3よりも大きいと、外観的に明らかなダマが生じている。より良い食感を得るにはダマの割合は2.2以下であることが好ましい。
従来のレトルト粥類では、米同士の結着等によるダマの割合は製造直後で特に大きかった。ダマは時間と共に解消、緩和されていく傾向にあるが、製造後35日目の時点ではまだダマが残存する。
一方、本発明のレトルト粥類では、製造後35日目、好ましくは製造後30日目、より好ましくは製造後20日目、いっそう好ましくは製造後10日目、なおいっそう好ましくは製造後5日目の時点でも、常温あるいは低温での、レトルト容器内のダマの割合が低く抑えられている。本発明のレトルト粥類は製造翌日の時点でもレトルト容器内のダマが実質的に存在しない。
本発明において加圧加熱殺菌処理は、レトルト殺菌機により行われる。レトルト殺菌機は、上記した加圧加熱殺菌処理条件を達成することができれば、通常のレトルトパウチ食品の製造に使われる装置を用いることができる。また、レトルト殺菌機の殺菌方式としては、熱水式、蒸気式、熱水シャワー式等が挙げられるが、上記した加圧加熱殺菌処理条件を達成することができれば特に制限はない。
従来のレトルト粥類の製造方法のように、調理・殺菌のための加圧加熱殺菌処理を123℃よりも低い温度で行うと、加圧加熱殺菌処理後、レトルト容器内にダマが生じ、使用性が悪かったり、食味の低下した粥となってしまう。一方、本発明では、123℃以上、特に123〜135℃という高温で5〜20分間という短時間の加圧加熱殺菌処理を行うことで、殺菌処理後、常温あるいは低温においてもレトルト容器内にダマが認められず、食味に優れたレトルト粥類を製造することができる。
本発明のレトルト粥の製造方法は、好ましくは、126℃、8分間の加圧加熱殺菌処理を含む。
かくして、本発明の製造方法により、常温あるいは低温でのレトルト容器内のダマの発生が抑えられた、レトルト処理された粥類が提供される。
従って、本発明は、また、常温あるいは低温でのレトルト容器内のダマの発生が抑えられた、レトルト処理された粥類に関する。本発明のレトルト粥類は、製造中の加圧加熱殺菌処理でダマが生じないので、温めずに食することが所望される場合にも、ダマの懸念がない。したがって、本発明は低温から常温での喫食、特に0〜20℃での喫食、更に好ましくは4〜15℃での喫食に適したレトルト粥を提供することができる。従って、例えば冷やし粥としての提供が可能となる。4℃より低いと風味を感じにくい。15℃より高いと、冷やし粥としては生ぬるくすっきりしない風味となることがあるが、上記範囲以外の温度であっても個々人の好みにより食することができる。
レトルト食品業界において、レトルト粥は温めて食する(例:100℃程度に加熱された熱水中に数分間浸漬する)ものと考えられてきた。
一方、本発明によれば、常温あるいは低温、特に低温で食することが可能であり、又食することが好ましいレトルト粥類が提供される。従って、本発明のレトルト粥類を含むレトルト食品は、そのパッケージに、当該粥類が低温での喫食に適している旨を記載することができ、又、好ましい態様である(例:「冷やし粥」との表記)。
本明細書中で挙げられた特許及び特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記実施例等に何ら制限されるものではない。
実施例1:
以下に示す方法により、250g容量のレトルト粥を製造した。
原料精米(生米)を丁寧に3回洗米した後、30分間ザルで自然脱水させた。洗米により吸水し生米17gは18.5gとなった。別途に食塩1%、魚介エキス1.5%を市水に溶解した調味液を調製した。上記洗米した生米18.5gと調味液116g、水115.5gを計量し、耐熱性があり、実質的に酸素透過性のない容器に充填し、密封シールした。次いで、密封シール品を125℃、12分20秒レトルトすることにより調理と殺菌(加圧加熱殺菌処理:Fo値=19.1)を同時に行った後、これを冷却して250g容量のレトルト粥を得た。
実施例2:
レトルト処理を123℃、16分20秒(Fo値=17.9)で行うこと以外は実施例1と同様にしてレトルト粥を得た。
実施例3:
レトルト処理を125℃、11分05秒(Fo値=17.6)で行うこと以外は実施例1と同様にしてレトルト粥を得た。
実施例4:
レトルト処理を127℃、8分05秒(Fo値=17.2)で行うこと以外は実施例1と同様にしてレトルト粥を得た。
比較例1:
以下に示す方法により、250g容量のレトルト粥を製造した。
原料精米(生米)を丁寧に3回洗米した後、30分間ザルで自然脱水させた。洗米により吸水し生米17gは18.5gとなった。別途に食塩1%、魚介エキス1.5%を市水に溶解した調味液を調製した。上記洗米した生米18.5gと調味液116g、水115.5gを計量し、耐熱性があり、実質的に酸素透過性のない容器に充填し、密封シールした。次いで、密封シール品を117℃、49分20秒レトルトすることにより調理と殺菌(加圧加熱殺菌処理:Fo値=15.9)を同時に行った後、これを冷却して250g容量のレトルト粥を得た。
比較例2:
以下に示す方法により、250g容量のレトルト粥を製造した。
原料精米(生米)を丁寧に3回洗米した後、30分間ザルで自然脱水させた。洗米により吸水し生米17gは18.5gとなった。別途に食塩1%、魚介エキス1.5%を市水に溶解した調味液を調製した。上記洗米した生米18.5gと調味液116g、水115.5gを計量し、耐熱性があり、実質的に酸素透過性のない容器に充填し、密封シールした。次いで、密封シール品を121℃、24分7秒レトルトすることにより調理と殺菌(加圧加熱殺菌処理:Fo値=17.2)を同時に行った後、これを冷却して250g容量のレトルト粥を得た。
比較例3:
レトルト処理を117℃、54分間(Fo値=18.4)で行うこと以外は比較例1と同様にしてレトルト粥を得た。
比較例4:
レトルト処理を121℃、24分間(Fo値=18.2)で行うこと以外は比較例1と同様にしてレトルト粥を得た。
比較例5:
従来の殺菌法である2段殺菌法(特開2002−253145号公報)を用いレトルト粥を製造した。
原料米(品種名:コシヒカリ)を精米処理して得られた精白米(生米)を丁寧に3回洗米した。次いで、十分量の水中に120分間浸漬した(常温)後、一般的な家庭用ザルにあけ、30分間水切りした(自然脱水)。洗米及び吸水により生米27.5gは34.5gとなった。このように調製した吸水後の生米を、吸水前の生米と水が1:7となるように、吸水後の生米34.5gと水185.5gとをレトルトパウチに充填し、密封シールした。密封シールしたレトルトパウチをレトルト殺菌機(神垣社製レトルト機、インジェクション方式にて実施)を用い、下記の条件で殺菌を行った。
実験例1:レトルト処理条件変更によるレトルト粥中のダマ解消の検討(1)
米同士の結着により生じるダマの発生の程度を、レトルト処理条件(加熱温度、加熱時間)を種々に変えて検討した。
実施例1、比較例1及び比較例2で調製したレトルト粥を常温で保管して翌日評価した。各レトルト粥のパウチを開封して静かに皿にあけ、皿の中のダマの有無、及びパウチ内面に付着したダマの有無とその程度を確認した。結果を表2及び図1A〜Cに示す。
以上の結果より、高温短時間で加圧加熱殺菌処理することにより、ダマの発生を抑制することができることが示された。
実験例2:レトルト処理条件変更によるレトルト粥中のダマ解消の検討(2)
米同士の結着により生じるダマ発生の程度を、レトルト処理条件(加熱温度、加熱時間)を種々に変えて検討した。
実施例2〜4、比較例3及び比較例4で調製したレトルト粥について、常温及び低温でのダマの割合を確認した。レトルト粥は、常温測定の場合、常温で保管したものを用い、低温測定の場合、測定の約3時間前から氷水につけて冷却したものを用いた。低温測定サンプルの測定時の温度は4.7℃であった。測定は、レトルト粥を調製した翌日に行った。以下の手順で、投入した生米あたりのダマの割合を測定した。
1.レトルトパウチ上部をはさみで切り取り開封した。
2.粥と等量の水(常温測定の場合:常温の水、低温測定の場合:冷水(氷水)を用いた)を容器に入れ、その上に静かにパウチの内部を注いだ。米がパウチに付着している場合はダマを壊さないようにスパチュラ等で静かに掻き出した。
3.ダマを壊さないようにスパチュラで数回静かに攪拌した。
4.目開き13.2mmのメッシュ(JIS Z8801−1:2006)の上に静かに全量をあけた。
5.メッシュ上に残存したダマの重量(メッシュオン重量(g))を測定した。
6.下記計算式に従い、投入した生米あたりのダマの割合を算出した。
ダマの割合=メッシュオン重量(g)/レトルト容器に投入された生米量(g)
測定は1サンプルにつき3例で実施した。各サンプルについてダマの割合(平均値)とその外観評価を下記表にまとめる。
表中、×は許容範囲外、○は許容範囲内であることを示している。
外観評価より、殺菌温度が123℃以上であればダマの発生は許容範囲内であり、したがって生米に対するダマの割合が2.3以下であればダマの懸念がないレトルト粥であると考えられる。
実験例3:従来のレトルト処理(2段殺菌法)によるレトルト粥中のダマの発生
従来のレトルト処理(2段殺菌法;特開2002−253145号公報)より生じるダマの発生の程度を調べた。
サンプルとして比較例5を用いること以外は、実験例2と同様にして、常温及び低温でのダマの割合を測定し、また外観を評価した。結果を下記表に示す。尚、低温測定サンプルの測定時の温度は4.2℃であった。
さらに、常温及び低温ではパウチ内面へのダマの強い付着が見られた。
実験例4:ダマの割合の経時的変化
従来のレトルト粥類では、米同士の結着等によりダマが生じていたが、時間と共に解消、緩和されていく傾向にある。
既存のレトルト粥類を用いて、製造後のレトルト容器内のダマの割合の経時的変化を調べた。
測定サンプルとしては、白がゆ、紅鮭がゆ、玉子がゆ及び小豆がゆ(いずれも味の素KK)の市販品あるいは製造工場より直接入手したサンプルを用いた。いずれも製造後、常温保存されたものを用いた。
常温及び低温におけるダマの割合の確認は、実験例2と同様にして行った。
測定は1サンプルにつき3例で実施した。各サンプルについてダマの割合(平均値)を下記表にまとめる。
各レトルト粥について、常温測定及び低温測定時の、製造後日数に対するダマの割合の変化に基づいて近似曲線を作成し、ダマの割合が2.3となるとき(即ち、外観的に明らかなダマが認められるとき)の日数を算出した。結果、白粥、玉子粥、紅鮭粥及び小豆粥は、常温測定時には、それぞれ40.6日、54.6日、40.6日及び37.4日であり、低温測定時には、それぞれ47.9日、78.9日、59.8日及び49.9日であった。
これらの結果より、既存のレトルト粥では、時間の経過とともにダマの割合は小さくなるものの、製造後35日目の時点では、まだダマは解消されていないことがわかる。
本発明は、製造工程中の加圧加熱殺菌処理におけるレトルト容器内のダマの発生が抑えられたレトルト粥類を提供することができる。このようなレトルト粥類は、温めないで、さらには冷やして食する場合であっても、ダマの容器への付着や、ダマの不快な食感がないので、加温せずにそのまま、あるいは冷やして食することができる。

Claims (2)

  1. レトルト粥類を製造するにあたり、少なくとも米と水または調味液とを、耐熱性があるレトルト容器へ充填し密封した後に行なわれる加圧加熱殺菌処理を、123〜135℃で5〜20分間行なうことを特徴とする、レトルト粥類の製造方法であって、米とともに容器に充填する水または調味液が事前に加熱されていない、方法。
  2. 米が精米である、請求項記載の方法。
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