JP5891167B2 - 酸化物超電導薄膜作製用ターゲットおよび酸化物超電導線材の製造方法 - Google Patents

酸化物超電導薄膜作製用ターゲットおよび酸化物超電導線材の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5891167B2
JP5891167B2 JP2012284700A JP2012284700A JP5891167B2 JP 5891167 B2 JP5891167 B2 JP 5891167B2 JP 2012284700 A JP2012284700 A JP 2012284700A JP 2012284700 A JP2012284700 A JP 2012284700A JP 5891167 B2 JP5891167 B2 JP 5891167B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
target
outer frame
laser
thin film
surface area
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012284700A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014125666A (ja
Inventor
渉 平田
渉 平田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujikura Ltd
Original Assignee
Fujikura Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fujikura Ltd filed Critical Fujikura Ltd
Priority to JP2012284700A priority Critical patent/JP5891167B2/ja
Publication of JP2014125666A publication Critical patent/JP2014125666A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5891167B2 publication Critical patent/JP5891167B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Superconductors And Manufacturing Methods Therefor (AREA)

Description

本発明は、酸化物超電導薄膜作製のためのレーザー蒸着用ターゲットと酸化物超電導線材の製造方法に関する。
RE−123系の酸化物超電導体(REBaCu7−X:REは希土類元素)を線材に加工して電力供給用の超電導導体あるいは超電導コイルを提供することが要望されている。酸化物超電導導体の一例構造として、金属テープ基材の表面にイオンビームアシスト蒸着法(IBAD法)により結晶配向性の良好な中間層を形成し、該中間層上に成膜法により酸化物超電導層を形成し、その表面にAgの保護層とCuの安定化層を積層した構造の酸化物超電導導体が開発されている。
RE123系の酸化物超電導導体の製造方法の一例として、酸化物超電導体と同等組成あるいは類似組成のターゲットにパルスレーザー光を照射してターゲットから原子や分子あるいは粒子などの噴流(プルーム)を発生させ、前記中間層上に酸化物超電導体の薄膜を堆積させることで酸化物超電導導体を作製することが行われている。
前記レーザー光を用いて成膜するレーザー蒸着法によって酸化物超電導体の薄膜を作製する場合に用いるターゲットは、一般に、原料となるREBaCuなる組成の混合粉末を圧粉成型した後、高温で焼成することにより製造されている。
酸化物超電導体を製造する技術分野においてターゲットにレーザー光を照射して基材上に超電導体の薄膜を形成する場合、ターゲットを円柱状に形成してターゲットを回転させ、ターゲットの周面にレーザー光を照射しながら成膜する装置が知られている(特許文献1参照)。この成膜装置で用いる円柱状のターゲットは、周方向に複数の分割体に区分され、各分割体が酸化物超電導体の構成元素の中から選択された複数の元素の合金あるいは単体金属元素から構成されている。
特開平6−325642号公報
ところで、RE−123系の酸化物超電導体は結晶格子が複雑な酸化物であり、薄膜とした場合にその結晶構造を整える必要があることから、レーザー蒸着装置に用いられるターゲットは、RE−123系の酸化物超電導体の組成比に近い焼結体のターゲットを用いるのが一般的である。例えば、原料となるREBaCuなる組成あるいは近似した組成の粉末を圧粉成形した後、高温で焼成してターゲットが作製されている。
ところが、現状において一般的に用いられているレーザー蒸着用の焼結体ターゲットは、レーザー光を照射した際、極めて短時間に温度上昇が起こり、熱応力が発生することから、成膜中にターゲットにクラックが生じることが多く、割れ易いという問題がある。クラックを生じたターゲットをそのまま利用して成膜を続行すると、クラックが大きい場合、ターゲットから基材に向かって発生する粒子の噴流、プルームが乱れるようになり、安定した超電導薄膜の成膜ができなくなる。特に、長尺の酸化物超電導導体を製造する場合、ターゲットが大型であること、レーザー光を照射する時間が長くなることから、ターゲットが割れる確率も高くなる。それ故、レーザー蒸着法によって高特性の酸化物超電導導体を製造するにあたり、ターゲットの割れを防ぐ必要がある。
前述のレーザー蒸着法を実施するレーザー蒸着装置には、ターゲットを保持するバッキングプレートが設置されているので、このバッキングプレートにターゲットをボンディングすることで、ターゲットを機械的に固定し、ターゲットの割れを防ぐことも可能である。ところが、ターゲットをバッキングプレートにボンディングすると、ターゲットを片面しか利用できなくなる問題があるとともに、ターゲットを再利用する場合に使用できない部分が生じてしまう問題がある。このため、レーザー蒸着用のターゲットをバッキングプレートにボンディングすることなく利用し、しかもターゲットに割れや亀裂を生じないように利用できることが望ましい。
本発明は、このような従来の実情に鑑みなされたものであり、焼結体からなる酸化物超電導薄膜作製のためのターゲットであって、バッキングプレートに機械的に固定しなくとも割れや亀裂の生じ難いレーザー蒸着用ターゲットと該ターゲットを用いた酸化物超電導線材の製造方法の提供を目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、REBaCuなる組成式(REは希土類元素の1種または2種以上)で示される酸化物超電導体の薄膜を基材上にレーザー蒸着法により生成する場合に用いられ、元素REとBaとCuを含む原料混合物の焼結体からなり、表面にレーザー光を集光照射して発生する原子、分子あるいは微粒子を基材上に堆積させて該基材上に成膜するためのレーザー蒸着用分割式ターゲットであって、中央部に設けられた焼結体からなるターゲット内側部と、該ターゲット内側部の周囲を取り囲むように設けられた1つあるいは複数の焼結体からなるターゲット外枠部とからなることを特徴とする。
酸化物超電導体の薄膜形成用の焼結体からなるターゲット内側部の周囲をターゲット外枠部で取り囲んだ構成とされているので、仮にターゲット内側部にクラックを生じたとしても、その周囲に存在するターゲット外枠部がターゲット内側部を拘束し、ターゲット内側部が割れて分散することが抑制される。このため、クラックを生じたターゲット内側部はその形状を維持できるので、表面にレーザー光を照射させて生成したプルームに、ほとんど乱れを生じることなく成膜を続行できる。また、乱れの少ないプルームを用いた成膜となるので、ターゲット内側部にクラックを生じたとしても、薄膜形成を続行することが可能となり、良質の酸化物超電導体の薄膜を長時間成膜できる。
レーザー蒸着法においてターゲットにレーザー光を照射する場合、中央部のターゲット内側部に主にレーザー光を照射し、レーザー光をターゲットの表面上で走査する場合、ターゲット外枠部側よりターゲット内側部側中心にレーザー光を照射するならば、ターゲット外枠部にクラックを生じさせるおそれは少なくなる。この場合、クラックを生じたとしてもターゲット内側部に制限することができ、ターゲット外枠部に周囲を拘束されたターゲット内側部が割れて分散されてしまうことがない。よってターゲットから生成させるプルームの乱れを少なくしてプルームを揃えることができ、良好な成膜状態を長時間維持できる。
本発明において、前記ターゲット内側部と前記ターゲット外枠部の両方の表面積を合計したターゲット全表面積に対する前記ターゲット外枠部の表面積比が50%以下、かつ、前記ターゲット全表面積に対する前記ターゲット内側部の表面積比が、前記ターゲット全表面積に対する前記ターゲット外枠部の表面積比以上とされ、前記ターゲット外枠部の幅が1.25cm以上にされた構造とすることができる。
ターゲット内側部およびターゲット外枠部の表面積比と、ターゲット外枠部の幅を上述のように設定することによりターゲット内側部にクラックを生じない状態を維持しつつ成膜できるか、一部クラックを生じたとしても、外枠部に拘束されてターゲット内側部が複数に分離して離散することのない状態を維持しつつ成膜できるターゲットを提供できる。
本発明において、前記ターゲット内側部と前記ターゲット外枠部を合わせたターゲット全体の外径15〜60cmであり、前記ターゲット内側部の面積が180cm以下にされたことを特徴としても良い。
ターゲット全体の外径が上述の範囲にあり、ターゲット内部側の面積が上述の範囲になることで、ターゲット内側部およびターゲット外枠部にクラックを生じない状態を維持しつつ成膜できるか、ターゲット内側部に一部クラックを生じたとしても、外枠部に拘束されて複数に分離して離散することのない状態を維持しつつ成膜できるターゲットを提供できる。
本発明において、前記ターゲット内側部と前記ターゲット外枠部の境界部分の隙間が0.25mm以下とされたことを特徴としても良い。
ターゲット内側部とターゲット外枠部の境界部分の隙間が0.25mm以下であることにより、ターゲット内側部とターゲット外枠部の境界部分をレーザー光が通過する場合もプルームの乱れを少なくしながら成膜できるので、超電導特性の優れた酸化物超電導体の薄膜を備えた酸化物超電導導体を得ることができる。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、先のいずれか一項に記載のターゲットを用いて酸化物超電導体の薄膜を形成することを特徴とする。
先の何れかのターゲットを用いて酸化物超電導体の薄膜を製造することにより、長尺であっても均一な膜質の超電導特性の優れた酸化物超電導線材を製造することができる。
本発明によれば、ターゲットにレーザー光を照射しつつ成膜している間、仮にターゲット内側部にクラックを生じたとしても、その周囲に存在するターゲット外枠部がターゲット内側部を拘束するので、ターゲット内側部が複数に割れて離散することがない。このため、クラックを生じたターゲット内側部はその形状を維持できるので、表面にレーザー光を照射させて生成したプルームにほとんど乱れを生じることなく成膜を続行できる。また、乱れの少ないプルームを用いた成膜となるので、ターゲット内側部にクラックを生じたとしても、超電導特性の劣化していない良質の酸化物超電導体の薄膜を提供できる。
本発明に係る超電導薄膜作製用ターゲットを備えたレーザー蒸着装置の一概略構成を示す正面図。 図1に示す成膜装置の概略構成を示す側面図。 図1に示す成膜装置の要部概略構成を示す斜視図。 本発明に係る超電導薄膜作製用ターゲットを示すもので、図4(a)は第1実施形態のターゲットを示す斜視図、図4(b)は第2実施形態のターゲットを示す斜視図、図4(c)は第3実施形態のターゲットを示す斜視図。 図1に示す成膜装置で成膜する場合に対象とする酸化物超電導導体の一例構造を示す斜視図。
以下、酸化物超電導導体の接続構造の第一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下説明の実施形態に限定されるものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするため、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
以下、本発明に係る酸化物超電導薄膜の成膜用レーザー蒸着法に適用する分割式ターゲットおよびその製造方法について図面に基づいて説明する。
本発明に係る超電導薄膜作製用ターゲットは、例えばパルスレーザー蒸着法(PLD法)を用いて酸化物超電導体の薄膜を成膜する際、ターゲットとして用いられるものである。このターゲットは、希土類酸化物超電導焼結体を含み、希土類元素の化合物(元素REの化合物)、Ba化合物、Cu化合物を含む原料粉末を仮焼きして仮焼体を得る1回または複数回の仮焼き工程と、仮焼体を粉砕して粉砕粉を得る粉砕工程と、粉砕粉を成型して成型体を得る成型工程と、成型体を焼成して焼結体を得る焼成工程とによって製造されたものである。前記希土類元素REの化合物、Baの化合物、Cuの化合物として、これら元素の酸化物や塩化物、炭酸塩などの粉末を用いることができる。
ターゲットに含まれる希土類酸化物超電導焼結体は、REBaCu(REは希土類元素の内から選択される1種以上の元素)で表されるRE−123系酸化物であり、構成元素REとしてはY、La、Nd、Sm、Eu、Er、Gd等が挙げられる。RE−123系酸化物超電導体として好ましくは、Y123(YBaCu)又はGd123(GdBaCu)を例示することができる。
なお、ターゲットは、REBaCuなる組成式で表される焼結体の他、このターゲットを製造する場合に用いた原料としての希土類元素の化合物、Baの化合物、Cuの化合物由来の異相が含有されていても良い。また、酸化物超電導体の薄膜に対し、人工ピンを導入する場合、ターゲットには、人工ピン材料が添加されていても良い。
本発明に係るターゲットを適用するレーザー蒸着装置Aは、図1〜図3に示すようにテープ状の基材2をその長手方向に走行するための走行装置10と、この走行装置10の下側に設置されたターゲット11と、このターゲット11にレーザー光を照射するために図1、図2に示すように処理容器(真空チャンバ)18の外部に設けられたレーザー光源12を備えている。ここで、ターゲット11は、本実施形態に係るターゲットによって構成される。
前記走行装置10は、一例として、成膜領域15に沿って走行するテープ状の基材2を案内するための転向リールの集合体である転向部材群16、17を備え、これら転向部材群16、17に基材2を巻き掛けて成膜領域15に基材2の複数のレーンを構成するように基材2を案内できる装置として構成される。
前記走行装置10とターゲット11は処理容器18の内部に収容され、処理容器18は外部と成膜空間とを仕切る容器であり、気密性を有するとともに、内部が高真空状態とされるため耐圧性を有する構成とされる。この処理容器18には、処理容器内のガスを排気する排気手段(真空ポンプ)19が接続され、他に、処理容器内にキャリアガスおよび反応ガスを導入するガス供給手段が形成されているが、図面ではガス供給手段を略し、各装置の概要のみを示している。
基材2は処理容器18の内部に設けられている供給リール20に巻き付けられ、必要長さ繰り出すことができるように構成されている。供給リール20から繰り出された基材2は、複数の転向リール16aを同軸的に隣接配置した転向部材群16と、複数の転向リール17aを同軸的に隣接配置した転向部材群17に交互に巻き掛けられている。これらの転向部材群16、17は処理容器18の内部において離間して配置され、それらの間に複数の平行なレーン2Aを構成するように基材2が配置され、基材2は転向部材群17から引き出されて巻取リール21に巻き取られるように構成されている。
また、処理容器18の内部に、転向部材群16、17とその周囲を囲む矩形箱状のヒーターボックス23が設けられ、供給リール20から繰り出された基材2はヒーターボックス23の一側の入口部23aを通過して転向部材群16に至るように構成され、転向部材群17から引き出された基材2はヒーターボックス23の他側の出口部23bを介し巻取リール21側に巻き取られるようになっている。なお、図に示す装置においてヒーターボックス23は成膜領域15の温度制御を行うために設けられているが、ヒーターボックス23は略しても差し支えない。
転向部材群16、17の間の中間位置の下方に本発明に係る円板状のターゲット11が設けられている。このターゲット11は、円板状のターゲットホルダ25に装着されて支持され、ターゲットホルダ25は、その下面中央部に取り付けられた支持ロッド26により回転自在(自転自在)に支持され、更に図示略の往復移動機構により図2に示すY、Y方向(転向部材群16、17の間に形成される基材2のレーン2Aに沿う前後方向)に水平に往復移動自在に支持されている。これらの機構によるターゲットホルダ25の回転移動と往復前後移動により、ターゲット11の表面に対するレーザー光の照射位置を適宜変更できるように構成されている。
本実施形態のレーザー蒸着装置Aに設けられるターゲット11は、図4(a)に示すように全体として円板状であるが、中央部に設けられた焼結体からなる円柱状のターゲット内側部11Aと、該ターゲット内側部11Aの周面全体をほとんど隙間無く取り囲むように設けられた焼結体からなるドーナツ盤状のターゲット外枠部11Bとからなる。
ターゲット11を平面視した場合、前記ターゲット内側部11Aと前記ターゲット外枠部11Bの両方の表面積(片面の表面積で、裏面と側面は除く)を合計したターゲット全表面積に対する前記ターゲット外枠部11Bの表面積比が50%以下、かつ、前記ターゲット全表面積に対する前記ターゲット内側部11Aの表面積比が、前記ターゲット全表面積に対する前記ターゲット外枠部11Bの表面積比以上とされていることが好ましい。また、前記ターゲット外枠部11Bの幅が1.25cm以上にされていることが好ましい。更に、前記ターゲット内側部11Aと前記ターゲット外枠部11Bを合わせたターゲット全体の外径が15〜60cmであり、前記ターゲット内側部11Aの面積が180cm以下にされていることが好ましい。ここで、ターゲット内側部11Aの外周縁とターゲット外枠部11Bの内周縁の間の隙間は、0.25mm以下であることが好ましい。
この隙間が0.3mm以上である場合、ターゲット11の表面にレーザー光を集光照射してターゲット11の表面から蒸気噴流(プルーム)を発生させた場合、プルームの方向が乱れるが、前記隙間が0.25mm以下であるならば、このプルームの乱れをほとんど無くすることができる。
ターゲット11の上方のヒーターボックス23の下面には、転向部材群16、17間において基材2が走行する複数のレーン2Aの全幅に該当するように開口部23cが形成されている。また、ヒーターボックス23において開口部23cの内側には熱板などの加熱装置27が配置され、転向部材群16、17の間を複数のレーン状に走行移動される基材2をそれらの裏面側から所望の温度に加熱できるように構成されている。加熱装置27は基材2をその裏面側から目的の加熱できる装置であればその構成は問わないが、通電式の電熱ヒータを内蔵した金属盤からなる一般的な加熱ヒータを用いることができる。
図1に示すように処理容器18において、ターゲット11を中心としてターゲット11の一側に位置する側壁18Aにターゲット11に対向するように照射窓30が形成されている。照射窓30の外方には集光レンズ32と反射ミラー33を介しアブレーション用のレーザー光源12が配置されている。
前記アブレーション用のレーザー光源12はエキシマレーザーあるいはYAGレーザー等のようにパルスレーザーとして良好なエネルギー出力を示すレーザー光源を用いることができる。レーザー光源12の出力として、例えば、エネルギー密度1〜5J/cm程度、パルス周波数200〜600Hzのレーザー光源を用いることができる。
なお、図1に示す成膜装置Aでは、処理容器18の内部であって、ターゲット11の斜め上方側にターゲット表面のレーザー光照射領域の温度を計測するための赤外放射温度計36が設置されている。
ところで、酸化物超電導導体1は、一例として図5に示すように、テープ状の基材2の一面(表面)上に、中間層5、酸化物超電導体の薄膜6、第1の金属安定化層7、第2の金属安定化層8を積層して積層体9が形成され、この積層体9のほぼ全周を絶縁材料などからなる被覆層10で覆って構成されている。なお、被覆層10は積層体9のほぼ全周を覆うように接合層11を介し密着されているが、超電導導体に絶縁処理が必要ない場合は略しても良い。
図5に示す酸化物超電導導体1において、基材2は、通常の酸化物超電導導体用の基板として使用し得るものであれば良く、可撓性を有するテープ状であることが好ましく、耐熱性の金属からなるものが好ましい。耐熱性の金属の中でも、ニッケル(Ni)合金が好ましい。中でも、市販品であればハステロイ(商品名、ヘインズ社製)が好適であり、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)等の成分量が異なる、ハステロイB、C、G、N、W等のいずれの種類も使用できる。また、基材2としてニッケル合金などに集合組織を導入した配向Ni-W合金テープ基材を用い、その上に中間層5および酸化物超電導層6を形成してもよい。
基材2の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良く、通常は、10〜500μmであることが好ましく、20〜200μmであることがより好ましい。
前記中間層5は、その上に形成する酸化物超電導層6との物理的特性(熱膨張率や格子定数等)の差を緩和するバッファー層として機能し、物理的特性が基材2と酸化物超電導層6との中間的な値を示す金属酸化物が好ましい。中間層5として具体的には、GdZr、MgO、ZrO−Y(YSZ)、SrTiO、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等の金属酸化物を例示でき、これらをIBAD法(イオンビームアシスト蒸着法)で形成して結晶配向性を整えたものが好ましい。
中間層5は、単層でも良いし、複数層でも良く、複数層である場合は、最外層(最も酸化物超電導体の薄膜6に近い層)が少なくとも良好な結晶配向性を有していることが好ましい。このため、IBAD法で結晶配向性の良好な第一の配向層を形成後、スパッタ法などの成膜法によりこの第一の配向層の上にエピタキシャル成長可能な第二の配向層を積層した複層構造とすることもできる。複層構造の場合、第一の配向層と第二の配向層は同じ材料からなる層であっても良いし、異なる材料からなる層であっても良い。
中間層5は、基板2側にベッド層が介在された複数層構造でもよい。ベッド層は、必要に応じて配され、イットリア(Y)、窒化ケイ素(Si)、酸化アルミニウム(Al、「アルミナ」とも呼ぶ)等から構成される。ベッド層の厚さは例えば10〜200nmである。
さらに、本発明において、中間層5は、基材2側に拡散防止層とベッド層からなる下地層5Aが積層された複数層構造でもよい。この場合、基材2とベッド層との間に拡散防止層が介在された構造となる。拡散防止層は、窒化ケイ素(Si)、酸化アルミニウム(Al)、あるいは希土類金属酸化物等から、単層あるいは複層構造とされ、その厚さは例えば10〜400nmである。
中間層5は、前記IBAD法による金属酸化物の配向層5Bの上に、さらにキャップ層5Cが積層された複層構造でも良い。キャップ層5Cは、酸化物超電導層6の配向性を制御し、単結晶のように良好な結晶配向性とする機能を有する。キャップ層5Cは、特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、CeO、Y、Al、Gd、ZrO、Ho、Nd、Zr、LaMnO等を例示できる。これらの中でも酸化物超電導体の薄膜6とのマッチング性からCeO、LaMnOが好ましい。キャップ層5Cの材質がCeOである場合、キャップ層5Cは、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。
前記酸化物超電導体の薄膜6は通常知られている組成の酸化物超電導体からなるものを広く適用することができ、REBaCu(REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素を表す)なる材質のもの、具体的には、Y123(YBaCu)又はGd123(GdBaCu)を例示できる。また、その他の酸化物超電導体、例えば、BiSrCan−1Cu4+2n+δなる組成等に代表される臨界温度の高い他の酸化物超電導体からなるものを用いても良いのは勿論である。酸化物超電導体の薄膜6の厚みは、0.5〜5μm程度であって、均一な厚みであることが好ましい。
前記第1の金属安定化層7は、AgあるいはAg合金などの良電導性かつ酸化物超電導層6と接触抵抗が低くなじみの良い金属材料からなる。
第1の金属安定化層7をAgから構成する理由としては、酸化物超電導体の薄膜6に酸素をドープするアニール工程において、ドープした酸素を酸化物超電導体の薄膜6から逃避し難くする性質を有する点を挙げることができる。Agからなる第1の金属安定化層7を成膜するには、スパッタ法などの成膜法を採用し、その厚さは1〜30μm程度とされる。
前記第2の金属安定化層8は、一例として良導電性の金属材料からなり、酸化物超電導体の薄膜6が超電導状態から常電導状態に遷移しようとした時に、第1の安定化層7とともに、酸化物超電導体の薄膜6の電流が転流するバイパスとして機能する。
第2の金属安定化層8を構成する金属材料としては、良導電性を有するものであればよく、特に限定されないが、銅、黄銅(Cu−Zn合金)、Cu−Ni合金等の銅合金、ステンレス等の比較的安価な材質からなるものを用いることが好ましく、中でも高い導電性を有し、安価であることから銅が好ましい。なお、酸化物超電導導体1を超電導限流器に使用する場合、第2の金属安定化層8は抵抗金属材料より構成され、Ni−Cr等のNi系合金などを使用できる。
図5に示す構造の酸化物超電導導体1を製造するには、基材2上に前述した種々の成膜法により必要に応じて拡散防止層やベッド層を形成後、IBAD法などを利用して中間層5を成膜し、以下に説明するレーザー蒸着法により酸化物超電導体の薄膜6を形成後、第1の金属安定化層7と第2の金属安定化層8を積層したテープ状の積層体9を作製し、被覆層10を形成して酸化物超電導導体1とすることができる。なお、被覆層10が不要な場合は第2の金属安定化層8の形成でもって酸化物超電導導体とする。
以下に、図1〜図3に示すレーザー蒸着装置Aを用いて酸化物超電導体の薄膜6を形成する方法について説明する。
酸化物超電導体の薄膜6を成膜するには、一例として、基材2上に配向層4とキャップ層5を備えた中間層3を先に説明した種々の成膜法で形成したテープ状の基材を用いる。
このテープ状の基材を供給リール20から転向部材群16、17を介して巻取リール21に図2または図3に示すように巻き掛け、ターゲットホルダ25にターゲット11を装着した後、処理容器18の内部を減圧する。
目的の圧力に減圧後、レーザー光源12からパルス状のレーザー光をターゲット11の表面に集光照射する。
この場合、ターゲット11を備えたターゲットホルダ25を支持ロッド26を中心として回転させ、更に図示略の往復移動機構により図2に示すY、Y方向に水平に往復移動させてターゲット11の表面の周縁部分を除くほぼ全域にレーザー光を照射するようにレーザー光の走査を行う。なお、ターゲット11の外周縁部分にレーザー光を照射するとターゲット11の外周縁部にクラックや欠けを生じさせるおそれがあるので、ターゲット11の外周縁部分を除いた領域にレーザー光を照射することが好ましい。
ターゲット11の表面にレーザー光を照射すると、ターゲット11の表面からターゲット構成材料の原子、分子あるいは蒸発粒子などが構成する蒸気噴流(プルーム)が生じるので、このプルームを基材2の中間層5上に向けることで中間層5上に酸化物超電導体の薄膜6を形成できる。具体的には、長尺の基材2を供給リール20から転向部材群16、17を介して巻取リール21に巻き取る間、転向部材群16、17間の走行レーンを移動中にプルームからの粒子堆積を行って中間層5上に酸化物超電導体の薄膜6を形成できる。
本実施形態のターゲット11は、ターゲット内側部11Aとターゲット外枠部11Bとからなるので、その表面にレーザー光を走査するとレーザー光はターゲット内側部11Aの表面とターゲット外枠部11Bの表面を繰り返し往復しながらプルームを発生させて成膜ができる。
成膜中にレーザー光はターゲット内側部11Aとターゲット外枠部11Bの境界部を通過するが境界部の隙間が0.25mm以下であれば、プルームに乱れを生じることなく成膜できるので、基材2の全長において超電導特性の優れた酸化物超電導体の薄膜6を形成できる。
また、ターゲット11の表面をレーザー光が走査する場合、ターゲット11を回転させつつY方向に往復前後移動させると、ターゲット内側部11の表面のほぼ全域に対しレーザー光を照射できるが、ターゲット外枠部11Bの外周縁部はレーザー光が走査しない領域であるので、ターゲット外枠部11Bに対するレーザー光を照射する領域はターゲット外枠部11Bの全域ではなくなる。
この照射条件において、仮にターゲット内側部11Aにクラックを生じてもターゲット外枠部11Bがターゲット内側部11Aの周囲を拘束するので、ターゲット内側部11Aが割れて離散することなく成膜ができる。従って、安定したプルームを長時間発生させつつ成膜できるので、長尺の基材2に対し成膜を行ったとしても、全長で良好な超電導特性を発揮する酸化物超電導体の薄膜6を備えた酸化物超電導導体1を製造することができる。
また、同様な照射条件において、前記ターゲット内側部11Aと前記ターゲット外枠部11Bの両方の表面積を合計したターゲット全表面積に対する前記ターゲット外枠部11Bの表面積比が50%以下、かつ、前記ターゲット全表面積に対する前記ターゲット内側部11Aの表面積比が、前記ターゲット全表面積に対する前記ターゲット外枠部11Bの表面積比以上、ターゲット外枠部11Bの幅が1.25cm以上ならば、レーザー光を照射してターゲットを部分的に急激に加熱したとしても、ターゲット11が割れて離散することがない。また、現状の技術と生産規模において妥当な規模のレーザー蒸着装置Aに対して適用可能な外径15〜60cmレベルのターゲット11を用いたと仮定し、ターゲット内側部11Aの面積は180cm以下が好ましい。
即ち、これらの条件を満足するターゲット11を用いることで、ターゲット内側部11Aとターゲット外枠部11Bの両方にクラックを生じ難いか、仮にターゲット内側部11Aにクラックを生じたとしても、ターゲット外枠部11Bがターゲット内側部11Aの周囲を拘束するので、ターゲット11の全体が割れて離散することなく成膜ができる効果がある。また、ターゲット外枠部11Bはその全面にレーザー光を照射する訳ではなく、ターゲット外枠部11Bにクラックが入る確率は低くなる。
図4(b)は本発明に係るレーザー蒸着用ターゲットの第2実施形態について示すもので、第2実施形態のターゲット41は、中央部に設けられている円柱状のターゲット内側部41Aとその外側に順次設けられた円環状の第1のターゲット外枠部41Bと第2のターゲット外枠部41Cとから構成されている。ターゲット41を分割構造とする場合、図4(b)に示す如く3分割構造とすることもできる。
また、ターゲット41を分割構造とする場合、4分割、5分割、あるいは6分割以上のようにより多くの分割数の分割構造としても良い。
いずれの分割数のターゲットであっても、ターゲット内側部と複数のターゲット外枠部の分割構造とすることにより本願発明の作用効果を得ることができる。
ただし、分割数が多い場合、ターゲット内側部とターゲット外枠部の境界部に加え、複数のターゲット外枠部どうしの境界部の数が増えるので、プルームの安定性を阻害する要因が増加する。このため、ターゲットの分割数は多くし過ぎないことが重要である。
なお、ターゲット内側部41Aの分割状態は特に制限はなく、扇形や円板状のものを組み合わせた形状、同心円状などいずれの分割形状でも良い。
図4(c)は本発明に係るターゲットの第3実施形態について示すもので、第3実施形態のターゲット51は、中央部に設けられている正方形板状のターゲット内側部51Aとその外側に設けられた矩形環状の第1のターゲット外枠部51Bとから構成されている。
図4(c)に示す構造のようにターゲットは円板状に限らず、正方形板状あるいはその他、矩形板状あるいは楕円板状など、形状に制限はない。
平面視いずれの形状のターゲットであっても、ターゲット内側部とターゲット外枠部の分割構造とすることにより本願発明の作用効果を得ることができる。
「実施例1」
幅10mm、厚さ100μm、長さ10mのテープ状のハステロイC276(米国ヘインズ社製商品名)製の基材上に、スパッタ法によりAl(拡散防止層;膜厚150nm)を成膜した上に、イオンビームスパッタ法によりY(ベッド層;膜厚20nm)を成膜した。次いで、このベッド層上に、イオンビームアシストスパッタ法(IBAD法)によりMgO(中間層;膜厚10nm)を形成した上に、パルスレーザー蒸着法(PLD法)により300nm厚のCeO(キャップ層)を成膜した。次いでCeO層上にPLD法により300nm厚のYBaCu(酸化物超電導層)を形成し、さらに酸化物超電導層上にスパッタ法により8μm厚のAgの第1の金属安定化層を形成し、テープ状の超電導積層体を作製した。
酸化物超電導薄膜を成膜する条件は、レーザー光源として、エキシマレーザー(KrF:248nm)を用い、エネルギー密度3.0J/cm、テープ基材の移動時の線速30m/h、パルスレーザーの繰り返し周波数300Hz、処理容器の酸素分圧PO=80mTorr、熱板によるテープ状基材の加熱温度800℃、転向部材間に配置する基材のレーン数を5レーンとして、キャップ層上に膜厚1000nmになるように酸化物超電導薄膜の堆積を行った。図1から図3に示すレーザー蒸着装置において、円板状のターゲットの自転速度45rpm、ターゲット移動速度55mm/分としてターゲット表面全域にレーザー光を走査しながら成膜した。レーザー光の走査の場合、最外周のターゲット外枠部の外周縁位置から、内側に8.0mmの範囲はレーザー光を照射しない領域とした。
パルスレーザー蒸着法に用いるターゲットは以下の方法で製造した。
原料粉末となるY粉末、BaCO粉末、CuO粉末を用意し、所定の比率になるように秤量し、ボールミルを用いて湿式混合した。このように得られたスラリーを乾燥させることで混合粉末を得た。この混合粉末をアルミナ製のるつぼに投入し、900℃に加熱した電気炉中で24時間焼成を行い、YBaCu粉末を得た。
YBaCu粉末をボールミルにて粉砕後、篩い分けを行い、粒径が100μm以下の微粉末を得た。この微粉末を1軸プレス装置により1.5t/cmの圧力で圧縮成型し、直径15cm、20cm、40cm、60cmのいずれかの直径であり、厚さ0.8cmの円板状のターゲットを複数製造した。なお、円板状のターゲットを作製する場合、中央側のターゲット内側部の周囲を円環状のターゲット外枠部が取り囲むような形状となるように各々を作製した。また、ターゲット内側部とターゲット外枠部の表面積比やサイズを以下の表1となるように種々変更して複数の試料を作製した。
得られた成形体を950℃で48時間焼結し、焼結体からなるターゲットを製造した。
なお、成形体は焼結前後に体積が変わるため、焼結後に適宜研削加工を行うことでターゲット内側部とターゲット外枠部とを組み合わせた際に、それらの間に形成される隙間の大きさを調節した。
これらを組み合わせて種々の分割型ターゲットを作製し、図1〜図3に示す構成のレーザー蒸着装置にセットして酸化物超電導層の成膜をキャップ層上に行った。
以上の結果を以下の表1に記載する。表1には、ターゲット外枠部とターゲット内側部のターゲット全面積に対する面積比(%)と、ターゲット外枠部の幅(cm)と、成膜中のターゲット外枠部の割れの有無と、ターゲット内側部の分割数と、ターゲット内側部の各々の面積(cm)とターゲット内側部の割れの有無を表記した。
Figure 0005891167
また、比較のために、1枚の焼結体からなる直径20cm、厚さ0.8mmの円板状のターゲットを上述と同等条件で作製し、比較例のターゲットとしてレーザー蒸着装置にセットして同等条件にて酸化物超電導層を成膜したところ、ターゲットの一部からクラックが発生し、成膜を続行することでクラックが全体に伝搬してターゲットが複数に割れるように分離し、生成したプルームが大きく乱れた状態(プルームの先端の方向が大きく左右に揺れる状態)となったので成膜続行不能と判断し、成膜を中止した。なお、プルームが乱れた状態であっても、成膜は可能であるが、プルームが乱れた位置に生成されている酸化物超電導体の薄膜は、超電導特性が劣化することが想定される。
表1に示すように成膜試験は直径15〜60cmの大きさのターゲットにおいて実施した。これは現状規模の酸化物超電導導体を製造するレーザー蒸着装置において、生産の規模を考慮すると、この範囲のターゲットの大きさが実用的であることから選択した。ターゲットの大きさが15cm未満でも酸化物超電導体の薄膜を生産するには特に支障はないが、長尺の酸化物超電導導体を製造するという面から見て制約が大きくなる。また、ターゲットの大きさが外径60cmを超えるようであると、レーザー蒸着装置が大がかりとなり、真空ポンプなどの排気装置の規模等も増大するので、実用的なレーザー蒸着装置の規模から鑑み、外径60cmを超えるようになると、レーザー蒸着装置のコスト的な面から見て実現が難しくなる。このため、上述の試験を直径15cm以上、直径60cm以下のターゲットにて実施した。
表1に示す結果から、最外周のターゲット外枠部の幅が1.25cmより大きく、かつ、ターゲットの全表面積に対するターゲット外枠部の表面積比が50%を超えなければ、ターゲット外枠部に割れは生じないことが判明した。ターゲット外枠部に割れを生じなければ、ターゲット全体の分解(ターゲットが複数に分離して離散すること)にまでつながらないため、成膜は続行できる。ターゲット外枠部の表面積比が50%を超えると、レーザー光を照射される面積が多くなるため、ターゲット外枠部が割れる確率が高くなる。
ターゲット内側部の面積を180cmより大きくすると割れが生じるが、180cm以下に分割すれば、割れを防止できる。
以上の結果から、ターゲット内側部に多少の割れを生じても、ターゲット外枠部に割れを生じない条件を維持しつつ成膜するためには、ターゲット直径15〜60cmの範囲内において、ターゲット外枠部の幅を1.25cm以上にし、ターゲット全体の表面積に対するターゲット外枠部の表面積比を50%以下とすることが望ましい。
また、ターゲット内側部とターゲット外枠部の両方において割れを生じないように成膜するためには、上述の条件を維持しつつ、更に、ターゲット内側部の表面積を180cm以下とすることが有利である。表1においては、ターゲット内側部の面積180cm以下において割れを生じていない。
「実施例2」
外径20cmのターゲットと外径40cmのターゲットにおいて、割れを生じなかった面積比の試料において、ターゲット内側部とターゲット外枠部の境界部の隙間を調整し、レーザー蒸着を行った場合に得られる酸化物超電導薄膜の超電導特性に対する影響を調べた。以下の表2に示す外径、面積比、内側の分割数、境界部の隙間に設定して得た酸化物超電導薄膜を備えた酸化物超電導導体について、Jc/Jcの値を求めた。Jc/Jcの値とは、得られた酸化物超電導導体のうち、臨界電流密度が最も高かった試料の臨界電流密度をJcとし、この値に対する相対値として求めた値である。
Figure 0005891167
レーザー光をターゲットの表面に照射してプルームを発生させ、レーザー蒸着を行っている場合、ターゲット内側部とターゲット外枠部の境界部の隙間が広くなると、プルームの乱れが目立つようになり、その結果として生成した酸化物超電導薄膜の結晶性が悪くなり、臨界電流密度も相対的に低くなる傾向がある。表2に示す試験結果から、境界部の隙間が0.1mm、0.15mm、0.2mm、0.25mmまではJc/Jcの値が外径20cmのターゲットにおいて0.98であり、優れているが、0.3mmの隙間の場合に0.89となり若干低下した。外径40cmのターゲットにおいては、0.1〜0.25mmまでの範囲において0.99〜0.94であるが、0.3mmの隙間の場合に0.85に低下した。このことから、境界部の隙間は0.25mmまでは特性劣化が少なく、0.3mm以上となるようであると超電導特性劣化に帰結すると想定できる。
なお、表2に示す結果から、ターゲットの分割数が多い場合、レーザー光の照射位置であるレザースポットが境界部を通過する確率が上がるため、ターゲットの分割数が少ない場合より、超電導特性が僅かながら低くなる傾向が認められた。従って、ターゲットを分割するにしても、優れた超電導特性を維持するために分割する数は少ない方が好ましい。
本発明は、例えば超電導ケーブル、超電導マグネット、超電導モーター、超電導限流器など、各種超電導機器に用いられる超電導線材の製造に利用することができる。
1…酸化物超電導導体、2…基材、5…中間層、6…酸化物超電導層、7…第1の金属安定化層、8…第2の金属安定化層、9…超電導積層体、11…ターゲット、11A…ターゲット内側部、11B…ターゲット外枠部、41…ターゲット、41A…ターゲット内側部、41B…第1のターゲット外枠部、41C…第2のターゲット外枠部、51…ターゲット、51A…ターゲット内側部、51B…ターゲット外枠部。

Claims (5)

  1. REBaCuなる組成式(REは希土類元素の1種または2種以上)で示される酸化物超電導体の薄膜を基材上にレーザー蒸着法により生成する場合に用いられ、元素REとBaとCuを含む原料混合物の焼結体からなり、表面にレーザー光を集光照射して発生する原子、分子あるいは微粒子を基材上に堆積させて該基材上に成膜するためのレーザー蒸着用ターゲットであって、
    中央部に設けられた焼結体からなるターゲット内側部と、該ターゲット内側部の周囲を取り囲むように設けられた1つあるいは複数の焼結体からなるターゲット外枠部に分割されたことを特徴とするレーザー蒸着用ターゲット。
  2. 前記ターゲット内側部と前記ターゲット外枠部の両方の表面積を合計したターゲット全表面積に対する前記ターゲット外枠部の表面積比が50%以下、かつ、前記ターゲット全表面積に対する前記ターゲット内側部の表面積比が、前記ターゲット全表面積に対する前記ターゲット外枠部の表面積比以上とされ、前記ターゲット外枠部の幅が1.25cm以上であることを特徴とする請求項1に記載のレーザー蒸着用ターゲット。
  3. 前記ターゲット内側部と前記ターゲット外枠部を合わせたターゲット全体の外径が15〜60cmであり、前記ターゲット内側部の面積が180cm以下であることを特徴とする請求項2に記載のレーザー蒸着用ターゲット。
  4. 前記ターゲット内側部と前記ターゲット外枠部の境界部分の隙間が0.25mm以下とされたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザー蒸着用ターゲット。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のレーザー蒸着用ターゲットを用いて基材の上方に酸化物超電導体の薄膜を形成することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
JP2012284700A 2012-12-27 2012-12-27 酸化物超電導薄膜作製用ターゲットおよび酸化物超電導線材の製造方法 Active JP5891167B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012284700A JP5891167B2 (ja) 2012-12-27 2012-12-27 酸化物超電導薄膜作製用ターゲットおよび酸化物超電導線材の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012284700A JP5891167B2 (ja) 2012-12-27 2012-12-27 酸化物超電導薄膜作製用ターゲットおよび酸化物超電導線材の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014125666A JP2014125666A (ja) 2014-07-07
JP5891167B2 true JP5891167B2 (ja) 2016-03-22

Family

ID=51405414

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012284700A Active JP5891167B2 (ja) 2012-12-27 2012-12-27 酸化物超電導薄膜作製用ターゲットおよび酸化物超電導線材の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5891167B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN107267926B (zh) * 2016-04-08 2020-03-17 清华大学 图案化薄膜真空蒸镀装置及方法
CN107884918A (zh) * 2017-11-13 2018-04-06 中国科学院合肥物质科学研究院 一种强磁场下高能紫外激光导入装置
CN112962076B (zh) * 2021-02-04 2022-04-05 西南交通大学 一种二代高温超导带材金属前驱膜的制备方法

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0266164A (ja) * 1988-08-31 1990-03-06 Toyota Motor Corp 蒸発材料
JPH05263234A (ja) * 1992-03-19 1993-10-12 Oki Electric Ind Co Ltd ターゲット構造
JPH05279028A (ja) * 1992-03-31 1993-10-26 Ngk Insulators Ltd 希土類系超電導性組成物及びその製造方法
JPH0718430A (ja) * 1993-07-06 1995-01-20 Ulvac Japan Ltd スパッタリング用カソード
JPH0953174A (ja) * 1995-08-18 1997-02-25 Chodendo Hatsuden Kanren Kiki Zairyo Gijutsu Kenkyu Kumiai スパッタリングターゲット
US20050005846A1 (en) * 2003-06-23 2005-01-13 Venkat Selvamanickam High throughput continuous pulsed laser deposition process and apparatus
JP2007063631A (ja) * 2005-08-31 2007-03-15 Dowa Holdings Co Ltd レーザーアブレージョン用ターゲットおよびその製造方法
JP5037193B2 (ja) * 2007-03-29 2012-09-26 新日本製鐵株式会社 酸化物超電導導体通電素子
JP2010116605A (ja) * 2008-11-13 2010-05-27 Fujikura Ltd ターゲット保持装置、ならびにこれを用いた成膜装置および成膜方法
JP2012021210A (ja) * 2010-07-16 2012-02-02 Fujikura Ltd 成膜装置および成膜方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014125666A (ja) 2014-07-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5470450B2 (ja) 酸化物超電導導体及びその製造方法
WO2011132731A1 (ja) 酸化物超電導導体及びその製造方法
JP5891167B2 (ja) 酸化物超電導薄膜作製用ターゲットおよび酸化物超電導線材の製造方法
WO2013002372A1 (ja) Re123系超電導線材およびその製造方法
JP2013136815A (ja) レーザーアブレーション用ターゲットとそれを用いた酸化物超電導線材の製造方法および酸化物超電導線材
JP5894907B2 (ja) 酸化物超電導線材およびその製造方法
JP6043487B2 (ja) 超電導薄膜作製用ターゲットの製造方法と酸化物超電導線材の製造方法
JP2013163847A (ja) 超電導薄膜作製用ターゲットおよびその製造方法
JP2012022882A (ja) 酸化物超電導導体用基材及びその製造方法と酸化物超電導導体及びその製造方法
JP6060008B2 (ja) 酸化物超電導薄膜形成用ターゲットおよびその製造方法と酸化物超電導線材の製造方法
JP5743877B2 (ja) ターゲットの製造方法
JP6155402B2 (ja) 超電導線材及びその製造方法
JP2013155418A (ja) 超電導薄膜作製用ターゲットおよびそれを用いた酸化物超電導線材の製造方法
WO2013015328A1 (ja) 超電導薄膜用基材、超電導薄膜及び超電導薄膜の製造方法
JP5758287B2 (ja) レーザー蒸着用複合ターゲット及びそれを用いた酸化物超電導線材の製造方法
JP2013136816A (ja) 超電導薄膜作製用ターゲットの製造方法、超電導薄膜作製用ターゲット、酸化物超電導導体の製造方法
JP5830238B2 (ja) 酸化物薄膜の製造方法
JP5658891B2 (ja) 酸化物超電導膜の製造方法
WO2017060968A1 (ja) 酸化物超電導線材
JP2012212571A (ja) 酸化物超電導導体
JP2012021210A (ja) 成膜装置および成膜方法
JP6167009B2 (ja) 超電導薄膜作製用ターゲットおよび酸化物超電導線材の製造方法
JP2015011867A (ja) 酸化物超電導体及び酸化物超電導導体
JP2016188392A (ja) 酸化物超電導薄膜作製用ターゲットおよび酸化物超電導線材の製造方法
JP5986871B2 (ja) 酸化物超電導導体およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150522

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160118

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160126

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160222

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5891167

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250