JP2013163847A - 超電導薄膜作製用ターゲットおよびその製造方法 - Google Patents

超電導薄膜作製用ターゲットおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】PLD法による成膜過程で、割れや、微細粉末、液相の飛散が発生し難く、表面性および超電導特性に優れた超電導薄膜を作製することができる超電導薄膜作製用ターゲット、および、その製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の超電導薄膜作製用ターゲットは、REBaCu(REは希土類元素の内から選択される1種以上の元素)で表される希土類酸化物超電導焼結体を含み、RE化合物、Ba化合物、Cu化合物を含む原料粉末の圧密体の焼結体からなる超電導薄膜作製用ターゲットであって、メディアン径20μm以上、100μm以下の粒子からなる焼結体であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、超電導薄膜作製用ターゲットおよびその製造方法に関する。
RE−123系酸化物超電導体(REBaCu:REは希土類元素の内から選択される1種以上の元素)は、液体窒素温度で超電導性を示し、電流損失が低いため、これを超電導線材に加工して電力供給用の超電導導体あるいは超電導コイルを製造することがなされている。この酸化物超電導体を線材に加工するための方法として、金属テープの基材上に中間層を介し酸化物超電導薄膜を形成し、この酸化物超電導薄膜の上に安定化層を形成する方法が実施されている。
酸化物超電導線材に形成する酸化物超電導薄膜は、結晶配向性に優れ、不純物の無い薄膜でなければ優れた超電導特性を得ることができないので、酸化物超電導薄膜は不純物混入のおそれの少ない減圧雰囲気において成膜法により形成されている。
酸化物超電導薄膜を形成する技術の1つとして知られているパルスレーザー蒸着法(PLD:Pulse Laser Deposition)は、ターゲットにパルスレーザーを照射し、レーザー照射によりターゲットからアブレーション(蒸発侵食)されて放出された原子、分子あるいは微粒子の噴流(プルーム)を基板に接触させることで、基板上にターゲットの構成粒子を堆積させる薄膜作製技術であり、半導体や酸化物超電導薄膜の作製に適用されている。また、ターゲットから薄膜を作製した場合、ターゲットと薄膜との間で組成ずれが少ないことから、PLD法は他の薄膜作製プロセスに比べ、複雑な化学組成を転写する場合に優れている特徴がある。
ところで、PLD法を用いて超電導薄膜を作製する場合、RE化合物、Ba化合物、Cu化合物を混合、仮焼きした仮焼体の粉砕粉を成型し、この成型体を焼成した焼結体のターゲットが用いられている。
この種の焼結体ターゲットとして一般に、粉砕粉を用い、焼結体を高密度化することにより緻密な酸化物超電導層を成膜できると考えられているので、粒子径50μm以下となるように1次粉砕した後、粒子径15μm以下となるように2次粉砕し、この2次粉砕粉を圧密焼成して焼結体ターゲットを得る技術が知られている(特許文献1参照)。
また、焼結体ターゲットに対する他の技術思想として、高密度で結晶粒子径が小さいターゲットの場合、レーザー光のビーム径よりも小さな結晶粒子の粒界や空隙にもレーザー光が照射されるので、ターゲットの温度が急上昇しやすく、ターゲット溶融の前後にターゲットを構成する微細粒子が飛散する結果、パーティクルの発生が増加するとの技術思想がある。そして、この技術思想の基、ターゲットの構成粒子を1mm以上に大きく形成し、95%以上の高密度とした上に、焼結体を液相温度以上に加熱して部分溶融させた後に冷却して得たターゲットが提案されている(特許文献2参照)。
特開2009−215629号公報 特開平6−305891号公報
しかし、上述のように高密度のターゲットでは、レーザー光を照射した際、最表面からある程度深い部位までターゲットが溶融し、この溶融部分を含めてアブレーションにより構成粒子が飛び出すので、微細粒子の飛び出しと同時にドロップレットと称される粗大粒子の飛び出しを生じる問題がある。ドロップレットの堆積がなされると、得られた酸化物超電導薄膜の表面の凹凸が大きくなり、酸化物超電導薄膜の特性が劣化するか、酸化物超電導薄膜の上に他の層を積層する場合に平滑な層を形成し難くなる問題がある。
また、ターゲットが高密度になると、レーザー照射による熱膨張によってターゲットにクラックが入り易くなる問題がある。ターゲットにクラックを生じると、クラックにレーザー光が照射された時にプルームが傾き、膜の堆積条件が変化する。その結果、得られる超電導薄膜の膜厚分布にムラを生じ易くなり、超電導特性が不十分となる問題を生じる。
なお、高密度で粒子径の大きなターゲットを用いると空隙などにレーザー光が当たる確率が下がるので、パーティクルの発生数が下がり、高品質な酸化物超電導薄膜を形成できるとされてきた。しかしながら、ターゲットが高密度になればなるほど、レーザー光の照射時にターゲットが割れやすくなり、前述のプルームの傾きが生じる。
これらに対し、粒子径の小さな粉砕粒子を用いると、成型時に金型から空気が逃げにくく、気泡を含むターゲットになりやすいので、クラック発生を招きやすい問題がある。また、粒子同士や金型との摩擦が大きくなるので、密度ムラも大きくなり、焼結時に割れが無いターゲットであってもレーザー光の照射後に割れが発生し易いターゲットとなってしまう問題がある。
以上のようにPLD法に用いるターゲットには種々の開発課題があり、パーティクルの発生が少なく、クラックが生じ難く、特性の良好な超電導薄膜を製造し得るターゲットを得ることは困難であった。
本発明は、以上のような従来の実情に鑑みなされたものであり、PLD法による成膜過程で、割れや、パーティクルの発生が無く、ドロップレットが発生し難く、表面平滑性および超電導特性に優れた超電導薄膜を作製することができる超電導薄膜作製用ターゲット、および、その製造方法の提供を目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の超電導薄膜作製用ターゲットは、REBaCu(REは希土類元素の内から選択される1種以上の元素)で表される希土類酸化物超電導焼結体を含み、RE化合物、Ba化合物、Cu化合物を含む原料粉末の圧密体の焼結体からなる超電導薄膜作製用ターゲットであって、メディアン径20μm以上、100μm以下の粒子からなる焼結体であることを特徴とする。
本発明は、メディアン径20μm以上、100μm以下の粒子からなる焼結体であることを規定し、焼結体としての密度を低くしたことにより、レーザー光の熱が内部に伝わるのを高密度の焼結体よりも遅くでき、ターゲットの液状化を最表面に集中させることでひび割れを抑制できるターゲットとすることができる。
また、ターゲット材料の気化に伴う液状化を最表面近傍に生じさせ、ターゲットの深い位置での液状化を抑制し、レーザー光による液状化に伴う表面荒れを抑制するので、ドロップレットの発生を抑制できる結果、生成した超電導薄膜にドロップレットを付着させ難いターゲットを提供できる。
また、本発明のターゲットによれば、成膜時に割れ難いので成膜中にプルームを安定して発生させることができ、膜厚ムラの無い特性の優れた超電導薄膜を製造できるターゲットを提供できる。
本発明において、粒子径20μm以上の粒子が、粒子全量に対し40体積%以上含まれていることを特徴とする超電導薄膜作製用ターゲットとすることができる。
粒子径20μm以上の粒子の含有量を粒子全量の40体積%以上に規定し、それより微細な粒子量を少なくしているので、ターゲット表面からの微粒子の離脱に伴うパーティクルの発生を抑制したターゲットを提供できる。
従って、レーザー蒸着法により堆積させた超電導薄膜の表面にパーティクルやドロップレットが付着する現象を抑制でき、表面平滑性に優れ、膜厚ムラの無い特性の優れた超電導薄膜を製造可能なターゲットを提供できる。
本発明において、粒子径20μm以上、100μm以下の粒子のみからなることを特徴とするものでも良い。
この場合、超電導薄膜の表面に付着するパーティクル数を更に低減できる。
本発明の超電導薄膜作製用ターゲットの製造方法は、RE化合物、Ba化合物、Cu化合物を含む原料粉末を仮焼きして仮焼体を得る仮焼き工程と、前記仮焼体を粉砕して粉砕粉を得る粉砕工程と、前記粉砕粉を成型して成型体を得る成型工程と、前記成型体を焼成して焼結体を得る焼成工程と、によってREBaCu(REはYおよび/または希土類元素の内から選択される1以上の元素)で表される希土類酸化物超電導焼結体を含むターゲットを製造する超電導薄膜作製用ターゲットの製造方法であって、前記成型工程において、前記粉砕粉として、メディアン径20μm以上、100μm以下の粒子を用いることを特徴とする。
本発明の製造方法により、焼結体としての密度を低くしたターゲットを得ることができ、レーザー光の熱が内部に伝わるのを高密度の焼結体よりも遅くでき、ターゲットの液状化を最表面に集中させることでひび割れを抑制できるターゲットとすることができる。
本発明の超電導薄膜作製用ターゲットの製造方法によれば、前記粉砕粉として、粒子径20μm以上の粒子を粒子全量に対し40体積%以上含む粒子を用いることを特徴とする。
成型工程において、粉砕粉として、粒子径が20μm以上の粉砕粉を、粉砕粉の全量に対し40体積%以上含むものを用いるため、この粉砕粉を反映したターゲット、すなわち、粒子径が20μm以上の粒子を、粒子の全量に対して40体積%以上含むターゲットを製造することができる。
このターゲットは、PLD法の成膜過程でレーザー光が照射されたとき、割れを生じ難く、また、ターゲット材料の気化に伴う液状化が最表面近傍で生じる。このため、PLD法の実施にあたりターゲット表面を平滑な状態に維持することができ、ターゲットからプルームを安定に発生させることができる。また、ターゲットの表面から微細粉末や液相が飛散することがないので、堆積した超電導薄膜の表面にパーティクルやドロップレットの付着を抑制できる結果、表面平滑性および超電導特性に優れ、膜厚ムラを少なくした超電導薄膜を製造可能なターゲットを得ることができる。
本発明の超電導薄膜形成用ターゲットにおいて、前記粉砕粉として、粒子径20μm以上、100μm以下の粒子のみからなる粒子を用いることを特徴とする。
この場合、超電導薄膜の表面に付着するパーティクル数を更に低減できる。
本発明の超電導薄膜作製用ターゲットは、メディアン径20μm以上、100μm以下の粒子からなる焼結体であることを規定したことにより、PLD法の実施時にレーザー光を照射したとき、割れが生じ難く、ターゲットからプルームを安定的に発生させることができる。
また、ターゲット材料の気化に伴う液状化を表面近傍に生成できるため、PLD法の実施に際してターゲット表面を平滑な状態に維持することがき、ターゲットの表面から微細粉末や液相を飛散させるおそれが少なく、堆積した超電導薄膜の表面に対しパーティクルやドロップレットの付着を抑制できるターゲットを提供できる。その結果、本発明のターゲットを用いてレーザー蒸着法を実施することにより、表面平滑性および超電導特性に優れ、膜厚ムラを軽減した超電導薄膜を得ることができる。
本発明に係る超電導薄膜作製用ターゲットを備えた成膜装置の一概略構成を示す正面図。 図1に示す成膜装置の概略構成を示す側面図。 図1に示す成膜装置の要部概略構成を示す斜視図。 図1に示す成膜装置で成膜する場合に対象とする酸化物超電導線材の一例構造を示す斜視図。
以下、本発明に係る超電導薄膜作製用ターゲットおよびその製造方法について図面に基づいて説明する。
本発明に係る超電導薄膜作製用ターゲットは、例えばパルスレーザー蒸着法(PLD法)を用いて酸化物超電導薄膜を成膜する際、ターゲットとして用いられるものである。このターゲットは、希土類酸化物超電導焼結体を含み、希土類化合物、Ba化合物、Cu化合物を含む原料粉末を仮焼きして仮焼体を得る1回または複数回の仮焼き工程と、仮焼体を粉砕して粉砕粉を得る粉砕工程と、粉砕粉を成型して成型体を得る成型工程と、成型体を焼成して焼結体を得る焼成工程とによって製造されたものである。
ターゲットに含まれる希土類酸化物超電導焼結体は、REBaCu(REは希土類元素の内から選択される1種以上の元素)で表されるRE−123系酸化物超電導体であり、構成元素REとしてはY、La、Nd、Sm、Eu、Er、Gd等が挙げられる。RE−123系酸化物超電導体として好ましくは、Y123(YBaCu)又はGd123(GdBaCu)を例示することができる。
なお、ターゲットは、REBaCuなる組成式で表される焼結体の他、このターゲットを製造する場合に用いた原料としての希土類元素の化合物、Baの化合物、Cuの化合物由来の異相が含有されていても良い。ここで異相とは、母相である目的のREBaCuなる組成式で示される焼結体とは異なる組成比の相、REBaCuの組成比ではないが、REとBaとCuが複合酸化物になっているもの、もしくは、RE、Ba、Cuの個別の酸化物粒子、または、これら元素のうち、2種以上の複合酸化物粒子を意味する。
また、酸化物超電導薄膜に対し、人工ピンを導入する場合、ターゲットには、人工ピン材料が添加されていても良い。酸化物超電導薄膜に導入される人工ピン材料は、ペロブスカイト構造のABOなる一般式で示される物質が適用され、BaZrO(BZO)、BiFeO(BFO)を例示できるが、これらの他に、Y、SnO、BaSnOなどを適用することもできる。人工ピン材料は、酸化物超電導薄膜に対し10体積%以下程度含有させることができるので、ターゲットに予めこれらの元素の粒子を含ませておいても良い。
本発明では、焼結体としてターゲットを構成する粒子が、メディアン径(粒度分布を示すグラフにおいて横軸に粒子径、縦軸に累積%をとった場合に50%となる粒子径:D50)20μm以上、100μm以下の粒子であることが必要であり、粒子径20μm以上の粒子が、粒子全量に対し40体積%以上含まれていることが好ましい。
このターゲットは、ターゲットを構成する粒子が、メディアン径20μm以上、100μm以下の粒子であるので、密度が低く、PLD法の成膜過程でレーザー光が照射されたとき、ターゲットの表面で生成された熱が例えば90%以上の密度などの高密度ターゲットに比べて内部に伝わり難い。このため、熱膨張による内部応力が生じ難く、クラックの発生が抑えられる。また、レーザー光の照射時にターゲットの表面近傍は溶融温度以上になって液状化するが、その内部の深い部分にまで液状化が起こり難い。このため、内部の液状部分の突沸などによってターゲットの表面形状が大きく変化することが回避される。また、粒子径20μm以上の粒子の含有量が40体積%以上であるため、上述のクラック発生を抑制する効果が向上し、内部の液状部分の突沸などによってターゲットの表面形状が大きく変化することが確実に回避される。
これにより、このターゲットは、PLD法による成膜過程で、表面が平滑な状態を維持することができ、プルームを安定に発生させることができるとともに、表面から微細粉末や液相が飛散することが少なくなり、堆積した超電導薄膜の表面にパーティクルやドロップレットとして付着することを抑制できる。
堆積した超電導薄膜の表面にドロップレットが生じるのは、レーザー光の照射によって生成されたターゲット表面の熱がターゲットの内部側にまで拡散し、ターゲット内部で突沸(膨張)することによって、表面付近の粗大粒子が吹き飛ばされてドロップレットとして薄膜に取り込まれることが一つの原因であると推定できる。
これに対し、本発明のターゲットは、高密度のターゲットに比べて前述のように表面の熱が内部に拡散し難いため、内部で突沸が生じる可能性は少なく、この観点からもドロップレットの発生を効果的に抑えることができる。
これらの効果により、前記ターゲットによれば、表面性および超電導特性に優れ、膜厚ムラが軽減された超電導薄膜を得ることが可能となる。
前記ターゲットにおいて、粒子径20μm以上の粒子の含有量が40体積%未満である場合には、ターゲットの密度が大きくなり、レーザー光の照射による表面の熱が内部に伝わり易くなる結果、PLD法による成膜過程で、ターゲットの割れや、パーティクルおよびドロップレットの付着を生じる可能性が高くなる。
また、粒子径20μm以上の粒子の粒子径は、粒子径20μm以上、粒子径500μm以下であることが好ましく、粒子径20μm以上、粒子径100μm以下であることがより好ましい。粒子径が前記範囲から外れると、PLD法による成膜過程で、ターゲットの割れや、パーティクルおよびドロップレットの付着が増加する可能性がある。
次に、本発明に係るターゲットの製造方法の一例について説明する。この例の製造方法では、混合工程、仮焼き工程、粉砕工程、成型工程、焼成工程によってターゲットを製造する。以下、各工程について順次説明する。
[1]混合工程
ターゲットを製造するには、製造目的とする酸化物超電導薄膜の組成に応じた原料を用意する。本実施形態で製造目的とする酸化物超電導薄膜は、REBaCuなる組成比の酸化物超電導薄膜であるので、REの化合物、Baの化合物、Cuの化合物を原料として用い、これらの原料を用いてターゲットを製造する。
REの化合物、Baの化合物、Cuの化合物として用いるのは、原料の入手しやすさ、コスト等を考慮すると、希土類元素の酸化物、Baの炭酸塩、Cuの酸化物が望ましい。
中でも、YBaCuなる組成比の酸化物超電導薄膜とする場合に用いることが望ましいのはY、BaCO、CuOである。また、GdBaCuなる組成比の酸化物超電導薄膜とする場合に用いることが望ましいのはGd、BaCO、CuOである。また、BaCOの代わりにBaOを使用することもできる。
以下にY粉末と、BaCO粉末とCuO粉末を使用してターゲットを製造する場合を一例として説明する。
原料としてのY粉末と、BaCO粉末とCuO粉末をY:Ba:Cuが1:2:3の割合となるように秤量して混合し、湿式ボールミル装置などの混合装置で溶媒を添加しつつ粉砕混合する。この粉砕混合は数時間〜数10時間程度行なうことができる。
なお、前記の原料を秤量混合する場合、Y粉末と、BaCO粉末とCuO粉末をY:Ba:Cuが1:2±0.1:3±0.2の範囲の割合となるように秤量して混合しても良い。
[2]仮焼き工程
次に、粉砕混合した粉末を酸素含有雰囲気において880〜960℃で数時間〜数10時間程度仮焼きする第1の仮焼き工程を行う。次に、得られた仮焼体を、湿式ボールミル装置などの混合装置で溶媒を添加しつつ粉砕混合する。この粉砕混合は数時間〜数10時間程度行うことができる。その後、粉砕混合した粉末を酸素含有雰囲気において880〜960℃で数時間〜数10時間程度仮焼きする第2の仮焼き工程を行う。なお、本工程で酸素含有雰囲気とは10〜30%程度の酸素を含む雰囲気あるいは大気中で良い。
[3]粉砕工程
この後、仮焼物を再度湿式ボールミル装置などの混合装置で溶媒を添加しつつ粉砕混合することで粉砕粉を得る。この粉砕混合は数時間〜数10時間程度行なうことができる。
[4]成型工程
次に、粉砕粉を乾燥した後、篩いを用いて分粒し、成型体に供する粉砕粉を採取する。ここで、この採取した粉砕粉の粒子径が、最終的に得られる焼結体の結晶粒子径に略対応する。したがって、この工程では、メディアン径が20μm以上、100μm以下の粒子を篩い分けにより選択することが好ましい(メディアン径はD50を基準とする)。
また、粒子径20μm以上の粉砕粉の含有量が、粉砕粉の全量に対して40体積%以上となるように粉砕粉を採取する。
このような割合の粉砕粉を得るには、粉砕粉を篩い分けして粒子径毎の粉砕粉を用意し、粒子径20μm以上の粉砕粉の含有量が、粉砕粉の全量に対して40体積%以上となるように混合すればよい。粒子径20μm以上の粉砕粉として具体的には粒子径20μm以上、100μm以下の粒子径の粉砕粉を用意し、この20〜100μmの粒子径の粉砕粉と、それ以外の粉砕粉と混合して特定の割合とする方法を例示できる。
そして、採取した粉砕粉を、目的のターゲット形状、例えば円盤状にプレス成型する。
ここで、成型条件(温度・時間、プレス圧力など)は特に限定されない。また、粉砕粉をバインダーと混合して成型してもよく、冷間静水等方圧プレス(CIP)を使用しても良い。
[5]焼成工程
この焼成工程は、900〜980℃で数時間〜数10時間程度、酸素含有雰囲気中で行なうことができ、この焼成工程により目的のターゲットを得ることができる。
次に、本発明に係るターゲットを備えたレーザー蒸着装置、および、レーザー蒸着装置を用いて製造される酸化物超電導薄膜とそれを備えた酸化物超電導線材の一例について説明する。
図1は本発明に係るターゲットを備えたレーザー蒸着装置の概略構成を示す正面図、図2は同蒸着装置の概略構成を示す側面図、図3は同蒸着装置の要部を示す斜視図である。
図1〜図3に示す構成のレーザー蒸着装置Aを用いて製造しようとする酸化物超電導線材1の一構造例を図4に示す。なお、図1〜図3に示す酸化物超電導線材は、本発明に係るターゲットを用いて酸化物超電導層を成膜する対象としての一例であり、以下に説明する積層構造に限定されないのは勿論である。
この例の酸化物超電導線材1は、テープ状の基材2の上方に、配向層4とキャップ層5を含む中間層3と酸化物超電導薄膜6と第1の安定化層7と第2の安定化層8をこの順に積層してなる。この酸化物超電導線材1はその周面を図示略の絶縁被覆層などで覆って酸化物超電導導体として利用される。
前記基材2は、可撓性を有する酸化物超電導線材1とするためにテープ状の耐熱金属製、例えば、ハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)などのニッケル合金からなる。
中間層3は、以下に説明する下地層と配向層4とキャップ層5からなる構造を一例として適用できる。
下地層を設ける場合は、以下に説明する拡散防止層とベッド層の複層構造あるいは、これらのうちどちらか1層からなる構造とすることができる。
下地層は、窒化ケイ素(Si)、酸化アルミニウム(Al、「アルミナ」とも呼ぶ)、あるいは、GZO(GdZr)等から構成される単層あるいは複層構造が望ましい。
ベッド層は、例えば、イットリア(Y)などの希土類酸化物であり、より具体的には、Er、CeO、Dy3、Er、Eu、Ho、La等を例示することができ、これらの単層あるいは複層構造を採用できる。
配向層4として具体的には、GdZr、MgO、ZrO−Y(YSZ)、SrTiO、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等の金属酸化物を例示できる。配向層4は、単層でも良いし、複層構造でも良い。
配向層4は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザー蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法(以下、IBAD法と略記する。)等の物理的蒸着法;化学気相成長法(CVD法);有機金属塗布熱分解法(MOD法);溶射等、酸化物薄膜を形成する公知の方法で積層できる。これらの方法の中でも特に、IBAD法で形成された前記金属酸化物層は、結晶配向性が高く、酸化物超電導層やキャップ層の結晶配向性を制御する効果が高い点で好ましい。
前記キャップ層5は、前記配向層4の表面に対してエピタキシャル成長し、その後、横方向(面方向)に粒成長(オーバーグロース)して、結晶粒が面内方向に選択成長するという過程を経て形成されたものが好ましい。このようなキャップ層5は、前記配向層4よりも高い面内配向度を得られる可能性がある。キャップ層5として具体的には、CeO、LMO(LaMnO)、Y、Al、Gd、Zr等を例示できる。
酸化物超電導薄膜6はREBaCu(REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素の1種以上を表す)なる材料、具体的には、Y123(YBaCu)又はGd123(GdBaCu)を例示できる。
酸化物超電導薄膜6は、本実施形態では後に説明する構成の成膜装置Aを用い、後述するPLD法により形成できる。酸化物超電導薄膜6の厚みは、0.5〜5μm程度であって、均一な厚みであることが好ましい。
酸化物超電導薄膜6の上面を覆うように形成されている第1の安定化層7は、AgあるいはAg合金からなり、第2の安定化層8は、良導電性の金属材料からなる。第2の安定化層8を構成する金属材料としては、特に限定されないが、銅、黄銅(Cu−Zn合金)、Cu−Ni合金等の銅合金が好ましい。なお、酸化物超電導線材1を超電導限流器に使用する場合は、第2の安定化層8は高抵抗金属材料より構成され、例えば、Ni−Cr等のNi系合金などを使用できる。
本実施形態において、前記酸化物超電導線材1の酸化物超電導薄膜6を以下に説明するレーザー蒸着装置Aを用いて製造することができる。
本実施形態のレーザー蒸着装置Aは、レーザー光によってターゲット11から叩き出され若しくは蒸発した構成粒子の噴流(プルーム)を基材上に向け、構成粒子の堆積による酸化物超電導薄膜6を基材の上方に形成するレーザー蒸着法(PLD法)を実施する装置である。本実施形態のレーザー蒸着装置Aは、基材2上に中間層3を上述の各種の方法により成膜した積層体の状態からその上に酸化物超電導薄膜6を成膜する場合に用いることができる。
レーザー蒸着装置Aは、図1〜図3に示すようにテープ状の基材2をその長手方向に走行するための走行装置10と、この走行装置10の下側に設置されたターゲット11と、このターゲット11にレーザー光を照射するために図1に示すように処理容器(真空チャンバ)18の外部に設けられたレーザー光源12を備えている。ここで、ターゲット11は、本発明に係るターゲットによって構成されている。
前記走行装置10は、一例として、成膜領域15に沿って走行するテープ状の基材2を案内するための転向リールの集合体である転向部材群16、17を備え、これら転向部材群16、17に基材2を巻き掛けて成膜領域15に基材2の複数のレーンを構成するように基材2を案内できる装置として構成される。
前記走行装置10とターゲット11は処理容器18の内部に収容されており、処理容器18は、外部と成膜空間とを仕切る容器であり、気密性を有するとともに、内部が高真空状態とされるため耐圧性を有する構成とされる。この処理容器18には、処理容器内のガスを排気する排気手段19が接続され、他に、処理容器内にキャリアガスおよび反応ガスを導入するガス供給手段が形成されているが、図面ではガス供給手段を略し、各装置の概要のみを示している。
基材2は処理容器18の内部に設けられている供給リール20に巻き付けられ、必要長さ繰り出すことができるように構成されている。供給リール20から繰り出された基材2は、複数の転向リール16aを同軸的に隣接配置した転向部材群16と、複数の転向リール17aを同軸的に隣接配置した転向部材群17に交互に巻き掛けられている。これらの転向部材群16、17は処理容器18の内部において離間して配置され、それらの間に複数の平行なレーン2Aを構成するように基材2が配置され、基材2は転向部材群17から引き出されて巻取リール21に巻き取られるように構成されている。
また、処理容器18の内部に、転向部材群16、17とその周囲を囲む矩形箱状のヒーターボックス23が設けられ、供給リール20から繰り出された基材2はヒーターボックス23の一側の入口部23aを通過して転向部材群16に至るように構成され、転向部材群17から引き出された基材2はヒーターボックス23の他側の出口部23bを介し巻取リール21側に巻き取られるようになっている。なお、図に示す装置においてヒーターボックス23は成膜領域15の温度制御を行うために設けられているが、ヒーターボックス23は略しても差し支えない。
転向部材群16、17の間の中間位置の下方に本発明に係る円板状のターゲット11が設けられている。このターゲット11は、円盤状のターゲットホルダ25に装着されて支持され、ターゲットホルダ25は、その下面中央部に取り付けられた支持ロッド26により回転自在(自転自在)に支持され、更に図示略の往復移動機構により図2に示すY、Y方向(転向部材群16、17の間に形成される基材2のレーン2Aに沿う前後方向)に水平に往復移動自在に支持されている。これらの機構によるターゲットホルダ25の回転移動と往復前後移動により、ターゲット11の表面に照射されるレーザー光の位置を適宜変更できるように構成されている。
ターゲット11の上方のヒーターボックス23の下面には、転向部材群16、17間において基材2が走行する複数のレーン2Aの全幅に該当するように開口部23cが形成されている。また、ヒーターボックス23において開口部23cの内側には熱板などの加熱装置27が配置され、転向部材群16、17の間を複数のレーン状に走行移動される基材2をそれらの裏面側から所望の温度に加熱できるように構成されている。加熱装置27は基材2をその裏面側から目的の加熱できる装置であればその構成は問わないが、通電式の電熱ヒータを内蔵した金属盤からなる一般的な加熱ヒータを用いることができる。
図1に示すように処理容器18において、ターゲット11を中心としてターゲット11の一側に位置する側壁18Aにターゲット11に対向するように照射窓30が形成されている。照射窓30の外方には集光レンズ32と反射ミラー33を介しアブレーション用のレーザー光源12が配置されている。
前記アブレーション用のレーザー光源12はエキシマレーザーあるいはYAGレーザー等のようにパルスレーザーとして良好なエネルギー出力を示すレーザー光源を用いることができる。レーザー光源12の出力として、例えば、エネルギー密度1〜5J/cm程度、パルス周波数200〜600Hzのレーザー光源を用いることができる。
なお、図1に示す成膜装置Aでは、処理容器18の内部であって、ターゲット11の斜め上方側にターゲット表面のレーザー光照射領域の温度を計測するための赤外放射温度計36が設置されている。
以下に、図1〜図3に示すレーザー蒸着装置Aを用いて酸化物超電導薄膜6を製造する方法について説明する。
酸化物超電導薄膜6を成膜するには、一例として、基材2上に配向層4とキャップ層5を備えた中間層3を先に説明した種々の成膜法で形成したテープ状の基材を用いる。
このテープ状の基材を供給リール20から転向部材群16、17を介して巻取リール21に図2または図3に示すように巻き掛け、ターゲットホルダ25に上述の仮焼きを1回行うことで製造したターゲット11を装着した後、処理容器18の内部を減圧する。
目的の圧力に減圧後、レーザー光源12からパルス状のレーザー光をターゲット11の表面に集光照射する。
ターゲット11の表面にレーザー光源12からのパルス状のレーザー光を集光照射すると、ターゲット11の表面部分の構成粒子を叩き出し若しくは蒸発させて前記ターゲット11から構成粒子の噴流(プルーム)29を発生させることができ、レーン2Aを構成し走行しているテープ状の基材2のキャップ層5の上に目的の粒子堆積を行って、酸化物超電導薄膜6を成膜できる。
ここで、このレーザー蒸着装置では、ターゲット11が本発明のターゲットによって構成されていることにより、レーザー光が照射されたときにターゲットが割れ難く、全成膜過程に亘って、ターゲット表面を平滑な状態に維持できる。このため、プルームを基材に向けて安定に発生させることができるとともに、ターゲット表面からの微細粒子や液相の飛散が抑えられ、パーティクルやドロップレットの付着、膜厚ムラが軽減された特性に優れた酸化物超電導薄膜を成膜することが可能である。
以上、本発明の超電導薄膜作製用ターゲットおよびその製造方法について説明したが、上記実施形態において、超電導薄膜作製用ターゲットを構成する各部、超電導薄膜作製用ターゲットの製造方法を構成する各工程は一例であって、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、上記実施形態では、本発明に係るターゲットを、基材が複数レーンを走行する複数レーン方式のレーザー蒸着装置に適用しているが、基材がシングルレーンを走行するシングルレーン方式のレーザー蒸着装置に適用しても構わない。
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
「試験例1」
本発明に係るターゲットを製造するには、まず、Y粉末と、BaCO粉末とCuO粉末をY:Ba:Cu=1:2:3の割合になるように秤量し、φ100mmのアルミナポットにφ10mmのアルミナボールと溶媒としてヘキサンを用いて48時間粉砕混合した。この混合物を乾燥した後、920℃で酸素存在雰囲気中において48時間仮焼きした。次にこの1次仮焼体をφ100mmのアルミナポットにφ10mmのアルミナボールと溶媒としてヘキサンを用いて48時間粉砕混合し、乾燥させた後、920℃で酸素存在雰囲気中において48時間仮焼きし、2次仮焼体とした。次にこの2次仮焼体をφ100mmのアルミナポットにφ10mmのアルミナボールと溶媒としてヘキサンを用いて48時間粉砕混合し、乾燥させることによって粉砕粉を得た。次に、この粉砕粉を篩いを用いて分粒し、表1に示すメディアン径を有する粉砕粉を採取した。採取した粉砕粉を、φ100mmの金型を用いて一軸プレスにより円盤状に成型し、940℃で48時間、酸素存在下において焼成してターゲットを得た。
なお、粉砕粉の分粒工程において、メディアン径はレーザー回折式粒度分布計を用いて測定した。また、成型体と焼結体の観察結果から、焼結体は成型体に比べて粒子同士が強く結合しているものの、その結晶粒子径と粉砕粉の粒子径は略一致しており、焼結後も成型時の粒度分布を保っていることが確認された。
<評価>
実験例1で得た各ターゲットについて、成型体および焼結体(ターゲット)の割れの発生状況、焼結体の相対密度を調べた。また、得られたターゲットを用いて酸化物超電導薄膜を成膜し、成膜された酸化物超電導薄膜のパーティクル数と、ターゲットにおける割れの発生状況を調べた。評価結果を表1に示す。ここで、酸化物超電導薄膜の成膜は次のように行い、酸化物超電導薄膜のパーティクル数はFe−SEM(電界放出型走査電子顕微鏡)を用いて測定した。
成型体の割れとは金型により成型した状態で割れを生じたことを意味し、焼結体の割れとは焼成後に割れが発生したことを意味し、成膜後の割れとは成膜後にターゲットを観察したところ割れていることを確認できたことを意味する。
「酸化物超電導薄膜の成膜」
ハステロイC−276(米国ヘインズ社商品名)からなる幅10mm、厚さ0.1mm、長さ10mのテープ状の基材上に、アモルファスAlの拡散防止層(a−Alの厚さ80nm)と、アモルファスYのベッド層(a−Yの厚さ30nm)と、イオンビームアシスト蒸着法によるMgOの中間層(IBAD−MgOの厚さ10nm)と、PLD法によるCeOのキャップ層(厚さ300nm)を積層したテープ状の基材を用意した。この基材を用いて図1〜図3に示す構造のレーザー蒸着装置を用い、実験例で作成したターゲットを用いてレーザー蒸着法により酸化物超電導薄膜(YBaCu)を作製した。
酸化物超電導薄膜を成膜する条件は、レーザー光源として、エキシマレーザー(KrF:248nm)を用い、エネルギー密度3.0J/cm、テープ基材の移動時の線速30m/h、パルスレーザーの繰り返し周波数300Hz、熱板によるテープ状基材の加熱温度800℃、転向部材間に配置する基材のレーン数を5レーンとして、キャップ層上に膜厚1500nmになるように酸化物超電導薄膜の堆積を行った。
Figure 2013163847
表1から、ターゲットのメディアン径が20〜100μmである場合に、割れを生じないターゲットを得ることができ、また、パーティクルの発生を抑えつつ、成膜過程におけるターゲットの割れを防止できることもわかった。なお、ターゲットを作製する際、焼結前の成型体と焼結後のターゲットにおいて粒子の大きさが変動するか調べてみたが、焼結前後において粒子径は変化無かった。即ち、焼結時に粒子どうしが一体化して粒成長することがないので、焼結前の成型体を構成する粒子の粒子径と焼結後に得られたターゲットを構成する粒子の粒子径には変動が無かった。
「試験例2」
成型工程において、粒子径が20μm以上の粉砕粉(粗粉)と粒子径が20μm未満の粉砕粉(微粉)を表2に示す体積割合で混合した粉砕粉を用いる以外は、前記試験例1と同様にしてターゲットを得た。
<評価>
試験例2で得た各ターゲットについて、成型体および焼結体(ターゲット)の割れの発生状況、焼結体の相対密度を調べた。また、得られたターゲットを用いて試験例1の場合と同様に酸化物超電導薄膜を成膜し、成膜された酸化物超電導薄膜のパーティクル数、ターゲットの割れの発生状況を調べた。パーティクル数の測定条件および酸化物超電導薄膜の成膜条件は前述と同様である。評価結果を表2に示す。なお、表2のデータにおいて、比率0%の試料はメディアン径8μm、比率10%の試料はメディアン径10μm、比率20%の試料はメディアン径15μm、比率30%の試料はメディアン径18μm、比率40%の試料はメディアン径25μm、比率50%の試料はメディアン径31μm、比率60%の試料はメディアン径44μm、比率70%の試料はメディアン径58μm、比率80%の試料はメディアン径69μm、比率90%の試料はメディアン径80μm、比率100%の試料はメディアン径89μmである。
Figure 2013163847
表2から、粒子径20μm以上の粒子が粉砕粉全量に対し40%以上である場合に、割れのないターゲットとすることができ、また、パーティクルの発生を少なくし、成膜過程でのターゲットの割れを防止できることもわかった。また、表2の試料において、粒子径20μm以上の粒子が粉砕粉全量に対し40%以上である試料は、いずれもメディアン径20〜100μmの範囲であることも分かる。
「試験例3」
成型工程において、表3に示すように篩い分けによる粒子径範囲の粉砕粉を使用し、各粒子径の粉砕粉を用いて前記試験例1と同様にしてターゲットを得た。表3に示す各試料の粉砕粉は表示した粒子径の粉砕粉が100体積%であることを示す。
<評価>
試験例3で得た各ターゲットを用いて酸化物超電導薄膜を成膜し、成膜された酸化物超電導薄膜のドロップレット数および臨界電流値(Ic)、ターゲットの割れの発生状況を調べた。酸化物超電導薄膜の成膜条件は前述と同様である。評価結果を表3に示す。
Figure 2013163847
表3に示す結果から、粒子径20μm以上の粒子を用いた場合〜粒子径500μm以下の粒子を用いた場合の範囲において、ドロップレットが発生せず、成膜過程でのターゲットの割れを防止でき、超電導特性(Icの値)に優れた酸化物超電導薄膜が得られることがわかった。また、表3に示す粒子径500〜750μmの試料と粒子径750〜1mmの試料はいずれもターゲットが成膜中に崩壊したので、臨界電流を測定する試験はできなかった。
以上の結果を総合的に判断すると、粒子径20μm以上の粒子を40体積%以上含む焼結体のターゲットであるならば、ドロップレットの発生が少なく、表面が平滑であり、パーティクルの付着のない特性の優れた酸化物超電導層を製造するためのターゲットとして好ましいことが明らかとなった。
A…レーザー蒸着装置、1…酸化物超電導線材、2…基材、2A…レーン、4…中間層、5…キャップ層、6…酸化物超電導薄膜、7…第1の安定化層、8…第2の安定化層、11…ターゲット、12…レーザー光源、15…成膜領域、16、17…転向部材群、16a、17a…転向リール、18…処理容器、19…排気手段、20…供給リール、21…巻取リール、23…ヒーターボックス、25…ターゲットホルダ、26…支持ロッド、27…加熱装置、29…噴流(プルーム)。

Claims (6)

  1. REBaCu(REは希土類元素の内から選択される1種以上の元素)で表される希土類酸化物超電導焼結体を含み、RE化合物、Ba化合物、Cu化合物を含む原料粉末の圧密体の焼結体からなる超電導薄膜作製用ターゲットであって、
    メディアン径20μm以上、100μm以下の粒子からなる焼結体であることを特徴とする超電導薄膜作製用ターゲット。
  2. 粒子径20μm以上の粒子が、粒子全量に対し40体積%以上含まれていることを特徴とする請求項1に記載の超電導薄膜作製用ターゲット。
  3. 粒子径20μm以上、100μm以下の粒子のみからなることを特徴とする請求項2に記載の超電導薄膜作製用ターゲット。
  4. RE化合物、Ba化合物、Cu化合物を含む原料粉末を仮焼きして仮焼体を得る仮焼き工程と、前記仮焼体を粉砕して粉砕粉を得る粉砕工程と、前記粉砕粉を成型して成型体を得る成型工程と、前記成型体を焼成して焼結体を得る焼成工程と、によってREBaCu(REはYおよび/または希土類元素の内から選択される1以上の元素)で表される希土類酸化物超電導焼結体を含むターゲットを製造する超電導薄膜作製用ターゲットの製造方法であって、
    前記成型工程において、前記粉砕粉として、メディアン径20μm以上、100μm以下の粒子を用いることを特徴とする超電導薄膜作製用ターゲットの製造方法。
  5. 前記粉砕粉として、粒子径20μm以上の粒子を粒子全量に対し40体積%以上含む粒子を用いることを特徴とする超電導薄膜作製用ターゲットの製造方法。
  6. 前記粉砕粉として、粒子径20μm以上、100μm以下の粒子のみからなる粒子を用いることを特徴とする請求項3に記載の超電導薄膜作製用ターゲットの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110257778A (zh) * 2018-03-12 2019-09-20 索尔玛特斯有限责任公司 用于脉冲激光沉积的方法

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