JP2013204061A - レーザー蒸着装置およびレーザー蒸着方法 - Google Patents

レーザー蒸着装置およびレーザー蒸着方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、レーザー蒸着法で薄膜を作製する場合にターゲット由来の異物粒子の混入を防止できるレーザー蒸着装置とレーザー蒸着方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、減圧可能な容器と、該容器の一側と他側に容器の内部空間を挟むように設けられた雰囲気ガスの導入部および排出部と、これらの間に導入部から容器の内部側を通過し排出部に向かって流れる気流の通過領域を挟むように対向して配置されたターゲット及び支持台と、容器の側壁に形成された窓部を介し容器の外部から容器内部のターゲット表面にレーザー光を照射する照射手段が具備され、ターゲットが容器の内部において上向きに傾斜した状態で配置され、支持台がその基材設置面をターゲットに向けて斜め下向きに傾斜した状態で配置され、傾斜されたターゲットの表面の下端縁位置を含む鉛直面よりも、排出部に近い側に、基材設置面が配置されたことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、レーザー蒸着装置およびレーザー蒸着方法に関する。
パルスレーザー蒸着法(PLD:Pulse Laser Deposition)は、ターゲットにパルスレーザーを照射し、レーザー照射によりターゲットからアブレーション(蒸発侵食)されて放出された原子、分子あるいは微粒子を基板上に堆積させる薄膜作製技術である。このPLD法により作製された酸化物超電導薄膜は、超電導コイル、超電導限流器、超電導ケーブルなどに応用されている。
また、ターゲットから薄膜を作製した場合、ターゲットと薄膜との間で組成ずれが少ないことから、PLD法は他の薄膜作製プロセスに比べ、複雑な化学組成を転写する場合に優れている特徴がある。PLD法は、酸化物や窒化物、硫化物などの複雑なターゲット組成を転写できるだけでなく、他の成膜方法に比べ、アブレーションされる原子や分子のエネルギーが高いため、金属ターゲットを用いても高品質な薄膜を作製するのに適しており、更に成膜の雰囲気を制御することで金属ターゲットから、酸化物や窒化物、硫化物などのセラミックス薄膜を作製することも可能な利点を有している。
上述のPLD法によりテープ状の基材上に酸化物超電導薄膜を形成する場合、成膜エリアにおいてテープ状の基材を支持台あるいは熱板に接触させてテープ状基材の走行を安定させる方法が一般的である。
図6はこの種PLD法に用いられているレーザー蒸着装置の要部構成を示す図であり、減圧室の底部に酸化物超電導体の原料からなる円板状のターゲット100が設置され、その上方に加熱用の熱板101が設置され、テープ状の基材102を熱板101の下面に沿って移動できるように構成されている。ここで、ターゲット100の上面にレーザー光103を照射してターゲット100の表面をアブレーションすることによりプルームと称される粒子の噴流105を発生させ、ターゲット100の構成粒子を基材102の下面に堆積させることで、テープ状の基材102の一面側に目的の酸化物超電導薄膜を形成することができる。
図6に示す水平配置したターゲット100とその上方に熱板101及びテープ状の基材102を設置する構造とする理由は、ターゲット100と基材102のセッティングが行い易いこと、レーザー光を照射したターゲット100が割れた場合であっても、破片の落下などの心配が無いことによっている。
特に酸化物超電導薄膜作製用のターゲット100はレーザー光を照射すると割れやすいと言われているので、この面に配慮して図6に示す構造を採用することが一般的である。
また、水平に設置したターゲットの上方に支持台を設置し、支持台に沿ってテープ状の基材を移動させる構造を採用するとともに、基材の進行方向に対し垂直な方向に基材または支持台を往復運動させて基材への異物付着を防止する構造が知られている。(特許文献1参照)
特開2010−80375号公報
前記特許文献1に記載の技術は、ターゲットからの粒子を基材の一面上に堆積させる際、基材よりも幅広の支持台であると、基材周囲の支持台側にも粒子が堆積するので、基材を支持台の幅方向に往復移動させることにより、支持台側に堆積した粒子を基材の側面で除去しようとする技術である。
図6に示すようにレーザー蒸着装置において水平に設置したターゲットの上方に支持台を設置し、テープ状の基材を支持台に沿って移動させる構造を採用すると、ターゲット100から発生させた粒子の噴流105を上向きとして粒子堆積を行うので、必然的に以下の問題を生じる。
まず、ターゲット100の上面に、粒子の噴流105を構成する蒸着粒子に加えてターゲット100から発生された異物も降り積もり、それらにレーザー光が照射されて蒸発され、粒子が生成されるので、目的とする膜中に異物粒子が取り込まれる問題がある。このような異物粒子が酸化物超電導薄膜中に取り込まれると、酸化物超電導薄膜の外観に影響を及ぼすような欠陥が生じ、超電導特性も部分的に劣化する問題がある。また、ターゲット100側から基材102を見た場合、基材102の背後側に設置されている熱板101は基材102よりも幅広であるので、熱板101の下面側にも粒子の堆積がなされる。この堆積物が熱板101に付着している場合は問題ないが、堆積物が落下すると、大きな塊となってターゲット100の表面に存在するので、生成される粒子の噴流105に乱れを生じたり、異物そのものを基材102側に堆積させてしまう問題があった。
本発明は、前記従来の実情に鑑みなされたものであり、レーザー蒸着法で薄膜を作製する場合にターゲット由来の異物粒子の混入を防止できるレーザー蒸着装置とレーザー蒸着方法の提供を目的とする。
前記課題を解決するため、本発明のレーザー蒸着装置は、減圧可能な容器と、該容器の一側と他側に容器の内部空間を挟むように設けられた雰囲気ガスの導入部および排出部と、前記導入部と前記排出部の間に前記導入部から前記容器の内部側を通過し前記排出部に向かって流れる気流の通過領域を挟むように互いに対向して配置された基材の支持台及びターゲットと、前記容器の側壁に形成された窓部を介し前記容器の外部から前記容器内部のターゲット表面にレーザー光を照射する照射手段が具備され、前記ターゲットが前記容器の内部において上向きに傾斜した状態で配置され、前記支持台が基材設置面を前記ターゲットに向けて斜め下向きに傾斜した状態で配置されるともに、前記傾斜されたターゲットの表面の下端縁位置を含む鉛直面よりも、前記排出部に近い側に、前記支持台の基材設置面が配置されたことを特徴とする。
ターゲット表面にレーザー光を照射してターゲットをアブレーションすると、ターゲットから基材設置面側に向かって粒子の噴流を生じるので、基材設置面に設置されている基材にターゲット粒子の堆積を行うことができ、ターゲット構成材料の薄膜を形成できる。
支持台の基材設置面側に堆積された粒子は、目的の薄膜の組成比と異なる組成比の異物粒子や粗大な粒子も含まれるので、基材設置面側に付着していたこれらの異物粒子や粗大な粒子が下方に落下することがある。しかし、傾斜されたターゲットの表面の下端縁位置を含む鉛直面よりも、雰囲気ガスの排出部に近い側に、基材設置面が配置されているので、落下する異物粒子や粗大な粒子は、ターゲット上ではなく、ターゲットから外れた位置に落下する。このため、成膜中にターゲットの表面を異物や粗大粒子で汚染することがない。従って、異物や粗大粒子の落下していない清浄なターゲット表面を用いてレーザー蒸着を行うことができ、異物や粗大な粒子の混入していない薄膜を基材上に成膜できる。
また、導入部から排出部に向かう雰囲気ガスの流れを生成しつつレーザー蒸着することができるので、基材設置面から落下する異物や粗大粒子をターゲットから離れる方向に導きつつ成膜することができる。このため、異物や粗大な粒子の混入していない薄膜を基材上に成膜できる。
本発明のレーザー蒸着装置において、前記雰囲気ガスの導入部から前記排出部に向かう気流が斜め下向きの気流の通過領域として前記容器の内部に規定されるとともに、前記傾斜されたターゲットの表面及び前記傾斜された基材設置面が前記斜め下向きの気流の通過領域に沿って配置されている構成とすることができる。
このようにターゲットと基材設置面を気流の通過領域の両側に配置することで、支持台の基材設置面から落下した異物や粒子をターゲットから離れる方向に確実に導くことができ、ターゲット表面への異物の付着を防止できる。
本発明のレーザー蒸着装置において、前記ターゲットの水平面に対する傾斜角度をθ、前記ターゲット中心と前記基材設置面中心との間隔をdts、前記ターゲットの中心から前記ターゲットの端縁までの距離をdt、前記基材設置面中心から前記基材設置面の端縁までの距離をdsと規定すると、以下の(1)式の関係が成り立つ構成を採用できる。
dts・cos(90−θ)≧(dt+ds)cosθ …(1)式
(ただし、(1)式において、θは75゜以下である。)
上記(1)式の関係を満足することで、支持台の基材設置面から落下した異物や粒子をターゲットから離れる位置に確実に落下させることができ、ターゲット表面への異物の付着を防止できる。
本発明のレーザー蒸着装置において、前記支持台の両側に複数の転向リールを備えた転向部材が配置され、前記支持台の両側の複数の転向リールにテープ状の基材を交互に掛け渡すことで前記基材設置面に沿って、前記テープ状の基材の複数のレーンを構成自在としても良い。
テープ状の基材が複数のレーンを構成するように支持台の基材設置面に沿って移動する構造では、レーン間に支持台の基材設置面が複数存在し、これらの基材設置面に粒子の堆積がなされる。そして、基材が基材設置面に沿って移動することで基材設置面に対し基材が摺動するので、基材設置面から異物や粒子が落下するおそれが高いが、基材設置面から落下する異物や粒子をターゲットの表面に落下させることがないので、ターゲット表面に対する異物や粒子の付着を無くすることができる。
本発明のレーザー蒸着方法は、減圧可能な容器と、該容器の一側と他側に容器の内部空間を挟むように設けられた雰囲気ガスの導入部および排出部と、前記導入部と前記排出部の間に前記導入部から前記容器の内部側を通過し前記排出部に向かって流れる気流の通過領域を挟むように互いに対向して配置された基材の支持台及びターゲットと、前記容器の側壁に形成された窓部を介し前記容器の外部から前記容器内部のターゲット表面にレーザー光を照射する照射手段が具備されたレーザー蒸着装置を用い、前記ターゲットを前記容器の内部において上向きに傾斜させた状態で配置し、前記支持台をその基材設置面が前記ターゲットに向いて斜め下向きに傾斜する状態で配置し、前記傾斜されたターゲットの表面の下端縁位置を、前記傾斜された支持台の基材設置面の上端縁位置よりも、前記気流通過領域の下流側に配置し、この状態から前記ターゲット表面にレーザー光を照射して前記ターゲットから斜め上向きの粒子の噴流を発生させるとともに、前記導入部から導入した雰囲気ガスを前記気流の通過領域に沿って前記排出部側に向けて流動させながら前記基材設置面に沿って配置した基材に成膜することを特徴とする。
導入部から排出部に向かう通過領域に沿って雰囲気ガスの流れを生成しつつレーザー蒸着することができるので、基材設置面から落下する異物や粗大粒子をターゲットから離れる方向に導きつつ成膜することができる。このため、異物や粗大な粒子の混入していない薄膜を基材上に成膜できる。
本発明のレーザー蒸着方法において、前記雰囲気ガスの導入部から前記排出部に向かう気流を斜め下向きの気流として雰囲気ガスの気流を生成しながら成膜することができる。
このようにターゲットと基材設置面を気流の通過領域の両側に配置することで、支持台の基材設置面から落下した異物や粒子をターゲットから離れる方向に確実に導くことができ、ターゲット表面への異物の付着を防止できる。
本発明のレーザー蒸着方法において、前記ターゲットの水平面に対する傾斜角度をθ、前記ターゲット中心と前記基材設置面中心との間隔をdts、前記ターゲットの中心から前記ターゲットの端縁までの距離をdt、前記基材設置面中心から前記基材設置面の端縁までの距離をdsと規定し、以下の(1)式の関係が成り立つように各値を規定して成膜することを特徴とする。
dts・cos(90−θ)≧(dt+ds)cosθ …(1)式
(ただし、(1)式において、θは75゜以下である。)
上記(1)式の関係を満足することで、支持台の基材設置面から落下した異物や粒子をターゲットから離れる位置に確実に落下させることができ、ターゲット表面への異物の付着を防止できる。
本発明のレーザー蒸着方法において、前記基材設置面に沿って、前記テープ状の基材を複数のレーンを構成するように移動させつつ成膜することができる。
テープ状の基材が複数のレーンを構成するように支持台の基材設置面に沿って移動させる方法では、レーン間に支持台の基材設置面が複数存在し、これらの基材設置面に粒子の堆積がなされる。そして、基材が基材設置面に沿って移動することで基材設置面に対し基材が摺動するので、基材設置面から異物や粒子を落下させるおそれが高いが、基材設置面から落下する異物や粒子をターゲットの表面に落下させることがないので、ターゲット表面に対する異物や粒子の付着を無くすることができる。
本発明によれば、ターゲット表面にレーザー光を照射してターゲットをアブレーションすると、ターゲットから基材設置面側に向かって粒子の噴流を生じるので、基材設置面に設置されている基材にターゲット粒子の堆積を行うことができ、ターゲット構成材料の薄膜を形成できる。
支持台の基材設置面側に堆積された粒子は、目的の薄膜の組成比と異なる組成比の異物粒子や粗大な粒子も含まれるので、基材設置面側に付着していたこれらの異物粒子や粗大な粒子が下方に落下することがある。しかし、傾斜されたターゲットの表面の下端縁位置を含む鉛直面よりも、雰囲気ガスの排出部に近い側に、基材設置面が配置されているので、落下する異物粒子や粗大な粒子は、ターゲット上ではなく、ターゲットから外れた位置に落下する。このため、成膜中にターゲットの表面を異物や粗大粒子で汚染することがない。従って、異物や粗大粒子の落下していない清浄なターゲット表面を用いてレーザー蒸着を行うことができ、異物や粗大な粒子の混入していない薄膜を基材上に成膜できる。
また、導入部から排出部に向かう雰囲気ガスの流れを生成しつつレーザー蒸着することができるので、基材設置面から落下する異物や粗大粒子をターゲットから離れる方向に導きつつ成膜することができる。このため、異物や粗大な粒子の混入していない薄膜を基材上に成膜できる。
本発明に係るレーザー蒸着装置の第1実施形態を示す概略構成図。 図1に示す装置の要部を示す斜視図。 図1に示す装置におけるターゲットと基材の位置関係を示す説明図。 図1に示す装置で製造目的とする酸化物超電導線材の一例構造を示す斜視図。 実施例と従来例において得られた超電導線材のIc特性を従来方法で得られたIc特性と比較して示すグラフ。 従来のレーザー蒸着装置の一例構造を示す図。
以下、本発明に係るレーザー蒸着装置を酸化物超電導薄膜の製造装置として適用した実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る第1実施形態のレーザー蒸着装置の概略構成を示す正面図、図2は同レーザー蒸着装置の内部構成を示す斜視図、図3は同レーザー蒸着装置の内部に収容されたターゲットと支持台の位置関係を示す説明図である。図1〜図3に示す本実施形態のレーザー蒸着装置Aを用いて製造しようとする酸化物超電導導体1の一例構造を図4に示す。
この例の酸化物超電導導体1は、テープ状の基材2の上方に、配向層4およびキャップ層5を積層した中間層3と、該中間層3上に積層された酸化物超電導層6と第1安定化層7と第2安定化層8を備えている。この酸化物超電導導体1はその周面を図示略の絶縁被覆層などで覆って酸化物超電導線材として利用される。なお、以下に説明する実施形態では、酸化物超電導層6の成膜にレーザー蒸着装置Aを適用する場合について説明するが、レーザー蒸着装置Aは、酸化物超電導導体1のための成膜に限らず、その他種々の導体や半導体基板、固体酸化物燃料電池基板、有機薄膜作製基板、光学素子用基板など、種々の基板上への薄膜作製に用いることができるのは勿論である。
前記酸化物超電導導体1に適用される基材2は、通常の酸化物超電導導体の基材本体として使用することができ、高強度であれば良く、長尺のケーブルとするためにテープ状やシート状あるいは薄板状であることが好ましく、耐熱性の金属からなるものが好ましい。例えば、ハステロイ等のニッケル合金等の各種耐熱性金属材料等が挙げられる。各種耐熱性金属の中でも、ニッケル合金が好ましい。なかでも、市販品であれば、ハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)が好適であり、ハステロイとして、モリブデン、クロム、鉄、コバルト等の成分量が異なる、ハステロイB、C、G、N、W等のいずれの種類も使用できる。なお、基材2としてNi合金に集合組織を導入したNi−W合金のような配向性基材を用いても良い。基材2の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良く、通常は、10〜500μmの範囲とすることができる。
中間層3は、以下に説明する配向層4とキャップ層5からなる構造を一例として適用できる。また、基材2と配向層4の間に下地層を設けることもできる。
下地層を設ける場合は、以下に説明する拡散防止層とベッド層の複層構造あるいは、これらのうちどちらか1層からなる構造とすることができるが、下地層は必須ではなく、略しても差し支えない。
下地層として拡散防止層を設ける場合、窒化ケイ素(Si)、酸化アルミニウム(Al、「アルミナ」とも呼ぶ)、あるいは、GZO(GdZr)等から構成される単層構造あるいは複層構造の層が望ましく、厚さは例えば10〜400nmである。
下地層としてベッド層を設ける場合、ベッド層は、例えば、イットリア(Y)などの希土類酸化物であり、より具体的には、Er、CeO、Dy3、Er、Eu、Ho、La等を例示することができ、これらの材料からなる単層構造あるいは複層構造を採用できる。ベッド層の厚さは例えば10〜100nmである。
配向層4は、酸化物超電導層6の結晶配向性を制御し、基材2中の金属元素の酸化物超電導層6への拡散を防止するものである。さらに、基材2と酸化物超電導層6との物理的特性(熱膨張率や格子定数等)の差を緩和するバッファー層として機能し、その材質は、物理的特性が基材2と酸化物超電導層6との中間的な値を示す金属酸化物が好ましい。配向層4の好ましい材質として具体的には、GdZr、MgO、ZrO−Y(YSZ)、SrTiO、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等の金属酸化物を例示できる。
配向層4は、単層でも良いし、複層構造でも良い。例えば、前記金属酸化物からなる層(金属酸化物層)は、IBAD法(イオンビームアシスト蒸着法)などにより成膜されて結晶配向性を有していることが好ましく、複数層である場合には、最外層(最も酸化物超電導層6に近い層)が少なくとも結晶配向性を有していることが好ましい。
キャップ層5は、前記中間層4の表面に対してエピタキシャル成長し、その後、横方向(面方向)に粒成長(オーバーグロース)して、結晶粒が面内方向に選択成長するという過程を経て形成されたものが好ましい。このようなキャップ層5は、前記中間層4よりも高い面内配向度が得られる可能性がある。
キャップ層5の材質は、前記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等が例示できる。キャップ層5の材質がCeOである場合、キャップ層は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。CeOのキャップ層の膜厚は50〜5000nmの範囲にすることができる。
酸化物超電導層6は通常知られている組成の酸化物超電導体からなるものを広く適用することができ、REBaCu(REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素を表す)なる材質のもの、具体的には、Y123(YBaCu)又はGd123(GdBaCu)を例示することができる。また、その他の酸化物超電導体、例えば、BiSrCan−1Cu4+2n+δなる組成等に代表される臨界温度の高い他の酸化物超電導体からなるものを用いても良いのは勿論である。
酸化物超電導層6は、本実施形態では後に説明する構成のレーザー蒸着装置Aを用いて後述するPLD法により形成することができる。酸化物超電導層6の厚みは、0.5〜5μm程度であって、均一な厚みであることが好ましい。
酸化物超電導層6の上面を覆うように形成されている第1安定化層7は、Agからなり、スパッタ法などの気相法により成膜されており、その厚さを1〜30μm程度とされる。
また、第2安定化層7は、良導電性の金属材料からなり、酸化物超電導層6が超電導状態から常電導状態に転移した時に、第1安定化層7とともに、電流を転流するバイパスとして機能する。第2安定化層8を構成する金属材料としては、良導電性を有するものであればよく、特に限定されないが、銅、黄銅(Cu−Zn合金)、Cu−Ni合金等の銅合金、ステンレス等の比較的安価な材質からなるものを用いることが好ましく、中でも高い導電性を有し、安価であることがらCuからなることが好ましい。なお、酸化物超電導導体1を超電導限流器に使用する場合は、第2安定化層は高抵抗金属材料より構成され、例えば、Ni−Cr等のNi系合金などを使用できる。第2安定化層の厚さは特に限定されず、適宜調整可能であるが、10〜300μmとすることが好ましい。
本実施形態においては、前記酸化物超電導層6を以下に説明するレーザー蒸着装置Aを用いて成膜することができる。
本実施形態のレーザー蒸着装置Aは、レーザー光によってターゲット11から叩き出され若しくは蒸発した構成粒子の噴流(プルーム)を基材に向け、構成粒子の堆積による薄膜を基材上に形成するレーザー蒸着法(PLD法)を実施する装置である。
本実施形態の成膜装置Aは、基材2上にキャップ層5までを形成した状態からその上に酸化物超電導層6を成膜する場合に用いることができる。
レーザー蒸着装置Aは、図1に示す処理容器(真空チャンバ)18の内部に図2に示すようにテープ状の基材2をその長手方向に走行するための走行装置10と、この走行装置10の下側に傾斜配置されたターゲット11を備え、このターゲット11にレーザー光を照射するために図1に示すように処理容器18の外部に設けられたレーザー光源12を備えている。
前記走行装置10は、一例として、成膜領域15に沿って走行するテープ状の基材2を案内するための転向リールの集合体である転向部材群16、17を図2に示すように備え、これら転向部材群16、17に基材2を交互に巻き掛けて成膜領域15に基材2による複数のレーンを構成するように基材2を案内する装置として構成されている。
処理容器18は、外部と成膜空間とを仕切る容器であり、気密性を有するとともに、内部を減圧状態とするため耐圧性を有する構成とされる。この処理容器18には、処理容器18内の雰囲気ガスを排気する排気手段13が排出部13Aを介し接続され、更に、処理容器18内に酸素などの反応ガスを導入するガス供給手段14が導入部14Aを介し接続されている。前記排出部13Aは処理容器18の一方の側壁18Aの下部に形成され、前記導入部14Aは前記処理容器18の他方の側壁18Bの上部に形成されている。即ち、導入部14Aと排出部13Aは図1に示すように処理容器18の一側と他側に処理容器18の内部空間を左右両側から挟むように対称位置に設けられている。このように導入部14Aと排出部13Aを設けることで、導入部14Aから処理容器18の内部に導入したガスを排出部13Aから排出することができ、処理容器18の内部空間を導入部14A側から排出部13A側に向かって斜め下向きに流れるガスの流れGを生成できる。また、処理容器18の内部空間において前述の斜め下向きのガスの流れGを生成する領域が気流通過領域Fとされる。
基材2は処理容器18の内部に設けられている図2に示す供給リール20に巻き付けられ、必要長さ繰り出すことができるように構成されている。供給リール20から繰り出された基材2は、複数の転向リール16aを同軸的に隣接配置した転向部材群16と、複数の転向リール17aを同軸的に隣接配置した転向部材群17に交互に巻き掛けられ、転向部材群16、17間に複数の直線状のレーンを構成するように配置された後、転向部材群17から引き出されて巻取リール21に巻き取られるように構成されている。
転向部材群16、17の間の中間位置の斜め下方にターゲット11が傾斜状態で配置されている。このターゲット11は、図示略のターゲットホルダに装着されて支持され、ターゲットホルダは、その下面中央部に取り付けられた支持ロッドにより回転自在に支持されている。この機構によりターゲットホルダとともにターゲット11を回転させ、後述するレーザー光の照射位置を変更できるようになっている。
転向部材群16、17の中間位置には、前記ターゲット11に対向するように熱板などの加熱装置(支持台)24が傾斜状態で配置されている。この加熱装置24は中空の板状体の内部にヒーターなどの熱源を備え、前記ターゲット11に対向した下向きの面が基材設置面24aとされている。前記供給リール20から引き出されて転向部材群16、17に交互に巻き掛けられて複数のレーンを構成して移動する基材2は、前記斜め下向きの基材設置面24aに沿って各レーンにおいて移動し、巻取リール21に巻き取られるようになっている。
図1において、図2に示されている転向部材群16、17等は略されており、加熱装置24の基材設置面24aに沿ってレーン状に移動される基材2のみを表記した。図1では基材2を用いて5つのレーンを構成しながら基材2を移動させる構成として示した。
従って、転向部材群16、17の間を複数のレーン状に走行移動される基材2をそれらの裏面側から加熱装置24により所望の温度に加熱できるように構成されている。加熱装置24は基材2をその裏面側から目的の温度に加熱できる装置であればその構成は問わないが、通電式の電熱ヒーターを内蔵した金属盤からなる一般的な加熱ヒーターを用いることができる。
ターゲット11は、酸化物超電導層6を成膜する場合、形成しようとする酸化物超電導層6と同等または近似した組成、あるいは、成膜中に逃避しやすい成分を多く含有させた複合酸化物の焼結体あるいは酸化物超電導体などの板材を用いることができる。従って、酸化物超電導体のターゲットは、RE−123系酸化物超電導体(REBaCu7−x:REはY、La、Nd、Sm、Eu、Gd等の希土類元素)またはそれらに類似した組成の材料を用いることができる。RE−123系酸化物として好ましいのは、Y123(YBaCu7−x)又はGd123(GdBaCu7−x)等であるが、これらの超電導体に制限されるものではなく、目的の超電導体に合わせた材料からなるターゲット11を用いることができる。
図1に示すように処理容器18において、側壁18Aにターゲット11に向くように窓部30が形成されている。窓部30の外方には集光レンズ31を介しアブレーション用のレーザー光源12が配置されている。
このレーザー光源12はエキシマレーザーあるいはYAGレーザー等のようにパルスレーザーとして良好なエネルギー出力を示すレーザー光源を用いることができる。
本実施形態のレーザー蒸着装置Aにあっては、ターゲット11がその表面11aを斜め上方に向けて傾斜配置されるとともに、加熱装置24がその基材設置面24aをターゲット11に対向させるように斜め下向きとして配置されている。また、処理容器18の上部に形成された導入部14A側から処理容器18の下部に形成された排出部13A側に向かうように、傾斜した気流通過領域Fが規定されているが、ターゲット11と加熱装置24はこの気流通過領域Fを上下から挟むように気流通過領域Fの両側に配置されている。また、ターゲット11の表面11aと加熱装置24の基材設置面24aはいずれも気流通過領域Fに沿うように傾斜されている。
ターゲット11と加熱装置24の位置関係を図3に拡大して示すが、傾斜された円板状のターゲット11の表面11aにおける下端縁位置(最下点)11cを通過する鉛直面Eよりも、傾斜された基材設置面24aの上端縁位置(最上点)24cが前記排出部13Aに近い側に位置ずれするように配置されている。即ち、ターゲット11よりも加熱装置24が排出部13A側に配置されている。
また、図3に示すようにターゲット11の水平面に対する傾斜角度をθ、前記ターゲット11の中心と前記基材設置面中心との間隔をdts(cm)、前記ターゲット11の中心から前記ターゲット11の下端縁位置11cまでの距離をdt(cm)、前記基材設置面24aの幅方向中心から前記基材設置面24aの上端縁位置24cまでの距離をds(cm)と規定すると、以下の(1)式の関係が成り立つことが好ましい。即ち、ターゲット11と加熱装置24は以下の(1)式を満足するように配置されていることが好ましい。なお、dtはターゲット11が円板の場合は半径に相当し、dsは基材2のレーンが設置される基材設置面24aの幅の半分に相当する。
dts・cos(90−θ)≧(dt+ds)cosθ …(1)式
(ただし、(1)式において、θは75゜以下である。)
(1)式において、θを75゜以下としたのは、ターゲット11の傾斜角度を大きくし過ぎるとレーザー光を照射したターゲット11が割れた場合に、ターゲットが落下してしまうためである。ターゲット11が割れた場合であっても、ターゲット11が落下することなくその形状をターゲットホルダ上で維持していれば、成膜続行可能であるが、ターゲット11が割れて落下し、崩れてしまうようであると、成膜続行は不可能となる。
前記構成の成膜装置Aを用いて酸化物超電導層6を成膜するには、拡散防止層3と中間層4とキャップ層5を順次積層した基材2を用いる。
このテープ状の基材2を供給リール20から転向部材群16、17を介して巻取リール21に図2に示すように巻き掛け、ターゲットホルダに目的のターゲット11を装着して傾斜配置した後、排出部13Aから処理容器18の内部の空気を抜いて処理容器18の内部を減圧する。目的の圧力に減圧後、酸化物超電導層6を形成する場合に必要な酸素ガスを供給部14Aから処理容器18内に一定量導入し、排出部13Aから一定量排出することで処理容器18の内部に一定流量の酸素ガスの流れGを生成する。処理容器18の内部圧力は例えば80〜90Pa程度、酸素の流量を100〜300sccm程度とすることができる。
また、加熱装置24のヒーターを作動させて酸化物超電導層6の成膜に必要な温度に基材2を裏面側から加熱する。この後、レーザー光源12からパルス状のレーザー光をターゲット11の表面に集光照射する。レーザー光の集光状態は集光レンズ31を調整することで必要なスポット径を実現できる。
ターゲット11の表面にレーザー光源12からのパルス状のレーザー光を集光照射すると、ターゲット11の表面部分の構成粒子を叩き出し若しくは蒸発させて前記ターゲット11から粒子の噴流(プルーム)29を発生させることができ、加熱装置24の基材設置面24aに沿ってレーン状に走行しているテープ状の基材2のキャップ層5に対し目的の粒子堆積を行って、酸化物超電導層6を成膜することができる。
ここで、ターゲット11からの噴流29によりキャップ層5上に粒子堆積を行う場合、レーン状に走行する基材2、2の間を通過して加熱装置24の基材設置面24aにも粒子堆積がなされる。基材2は長尺のテープ状であるため、酸化物超電導層6の成膜時間は長くなるが、連続成膜を行っている間、基材設置面24aに堆積した粒子が基材設置面24aから下方に落下するおそれがある。また、基材設置面24aに堆積した粒子がまとまって大きな粒子となって落下するおそれもある。
このような落下を生じても、本実施形態のレーザー蒸着装置Aであるならば、ターゲット11の下端縁位置11cを通過する鉛直面Eよりも排出部13A側に加熱装置24の基材設置面24aを配置しているので、落下した粒子はターゲット11の表面に落下することなくターゲット11の側方に落下する。このため、長時間成膜してもターゲット11の表面を異物等の落下のない清浄な状態に維持することができ、酸化物超電導積層6を成膜するために必要な粒子のみをキャップ層5に対し堆積させることができる。
このため、例えば数100mあるいは数kmに及ぶ長尺の酸化物超電導導体1を製造した場合であっても、長さ方向に臨界電流値の低下する部位を有していない、膜質の安定した酸化物超電導導体1を得ることができる。
更に説明すると、酸化物超電導層6の成膜処理中において、処理容器18の内部に酸素ガスを導入部14Aから導入し、排出部13Aから排出することでターゲット11と加熱装置24の間に斜め下向きの酸素ガスの流れGを生成しつつ酸化物超電導層6の成膜を行うので、加熱装置24の基材設置面24aから落下する粒子をこのガスの流れGによりターゲット11の表面から遠ざける方向に移動できるので、加熱装置24側から落下する異物をターゲット11の表面側に堆積させることがない。
このため、本実施形態のレーザー蒸着装置Aを用いて酸化物超電導層6を成膜するならば、長尺の酸化物超電導導体1を製造したとしても全長に渡り酸化物超電導層6に異物の混入を生じていない酸化物超電導導体1を製造できる。
なお、テープ状の基材2が長尺の場合、その長さ方向全域に均質な酸化物超電導層6を成膜するためには、成膜中にターゲット11の回転移動を適宜行ってレーザー光の照射位置を変更しながら成膜することが好ましい。
ところで、本実施形態においては、酸化物超電導層6の成膜に本発明に係るレーザー蒸着装置を適用した例について説明したが、本発明に係るレーザー蒸着装置を半導体基板やその他の各種基板などに対する成膜に利用できるのは勿論である。
また、本実施形態においては、図1に示すように処理容器18の一側上部に形成した導入部14Aから処理容器18の他側下部に形成した排出部13Aに向かう斜め下向きのガスの流れGを生じさせたが、導入部14Aと排出部13Aの設置位置は図1に示す例に限らない。例えば、導入部14Aを処理容器18の一側下部に設けてその導入部14Aから別途案内菅などにより一側上部までガスを引き込んで処理容器18の一側上部からガスを吹き出すならば、目的を達成できるので、導入部14Aを設ける位置は問わない。また、排出部13Aについても他側下部に設ける必要はなく、排出部13Aに連通する排気管などを設けてその排気管の排気口を処理容器18の他側下部に設けると良い。よって、処理容器18の任意の位置に導入部14Aと排出部13Aを設けても良く、ガスの吹出口と排出口の位置と、ガスの流れによって図1に示すように支持台24から落下する物質をターゲット11に落下しないように方向制御することで本発明の目的を達成できる。
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
「実施例1」
ハステロイC−276(米国ヘインズ社商品名)からなる幅10mm、厚さ0.1mm、長さ100mのテープ状の基材本体上に、アモルファスAlの拡散防止層(厚さ80nm)と、Yのベッド層(厚さ30nm)と、イオンビームアシスト蒸着法によるMgOの中間層(厚さ10nm)と、PLD法によるCeOのキャップ層(厚さ300nm)を成膜したテープ状の基材を用意した。
次に、図1〜図3に示す構成のレーザー蒸着装置を用い、アブレーション用のレーザー光源として、エキシマレーザー(KrF:248nm)を用いて、エネルギー密度3.0J/cm(150mJ)、テープ基材の移動時の線速30m/h、パルスレーザーの繰り返し周波数200Hz、処理容器の酸素分圧PO=80Pa、加熱装置によるテープ状基材の加熱温度900℃の条件で成膜処理を行った。酸化物超電導層成膜用のターゲットはGdBaCuなる組成の円板状のターゲットを用いた。このターゲットの半径dtは8cm、支持台とした熱板の基材設置面の幅(基材のレーンが並ぶ方向の幅)dsは5cm、ターゲットと熱板との距離dtsを9cm、ターゲットの水平面に対する傾斜角度θを60゜とした。これらの条件を前述の(1)式に代入すると、(1)式の関係を満たす。
以上の条件設定に従い、100mの基材を用い、キャップ層上に厚さ1μmの酸化物超電導層(GdBaCu層)を成膜し、次いでこの酸化物超電導層上にスパッタ法により厚さ10μmのAgの保護層を形成し、500℃で10時間、酸素雰囲気中において酸素アニールした後、Agの保護層上に厚さ300μmの安定化銅テープを全長に半田付けして酸化物超電導導体を得た。
この長さ100mの酸化物超電導導体に対し、位置毎の臨界電流値(Ic)を測定した結果、図5の◇印に示すように450〜460A/cmの範囲のIc値を得ることができ、100mの全長に渡りIc値のバラツキの少ない優れた酸化物超電導導体であることを確認できた。
比較例として、図1〜図3に示すレーザー蒸着装置とは異なり、ターゲットを処理容器の内部に水平に設置し、その真上に基材のレーンを配置し、各基材のレーン上に水平に熱板を設置する構成のレーザー蒸着装置を用いて、上述の例と同等の長さ、同等の積層構造の比較例の酸化物超電導導体を得た。比較例の酸化物超電導導体において、積層構造と各層の厚さ、成膜の速度、テープ基材の移動速度等の製造条件は同等であり、水平設置したターゲットの真上に基材をレーン状に水平に走行させる点のみが異なる。
比較例の酸化物超電導導体について、実施例の酸化物超電導導体と同様に長さ方向に沿って複数位置の臨界電流値(Ic)を測定した結果、図5の□印に示すように多くの位置で440〜470A/cmの範囲のIc値を得ることができたが、100mの長さの酸化物超電導導体において4箇所のみ大幅にIc値が低下する部分(320〜380A/cm)が生じた。
これらのIc値が低下した部分は、原因として、ターゲットの真上に存在する熱板から大きな粒径の異物粒子がターゲット上に落下し、この異物粒子がターゲットから上昇する粒子の噴流に沿って基板側に飛ばされて酸化物超電導層中に取り込まれるか、異物粒子がターゲットの表面に落下してこの異物粒子がレーザー光で蒸発されて異物として膜中に取り込まれて堆積した結果、100m長の酸化物超電導導体において部分的に異物を含んだ酸化物超電導層が生成した結果、異物を含む部位でIc値が大幅に低下したものと推定できる。
以上の対比から、図1〜図3に示す構造のレーザー蒸着装置Aを用いて成膜するならば、100mもの長尺の基材上に薄膜を形成した場合であっても、異物混入のおそれのない良質の薄膜を形成できる。
本発明は、例えば酸化物超電導導体として利用できる良質の酸化物超電導層の成膜、あるいはその他各種基板上に良質の薄膜を形成できる技術一般に広く適用することができる技術に関する。
A…レーザー蒸着装置、E…鉛直面、F…気流通過領域、G…ガスの流れ、1…酸化物超電導導体、2…基材、3…中間層、4…配向層、5…キャップ層、6…酸化物超電導層、7、8…安定化層、10…搬送装置、11…ターゲット、11a…表面、11c…下端縁位置(最下点)、12…レーザー光源、13…排気装置、13A…排出部、14…供給装置、14A…供給部、15…成膜領域、16…転向部材群、16a…転向リール、17…転向部材群、17a…転向リール、18…処理容器、18A、18B…側壁、20…供給リール、21…巻取リール、24…加熱装置(支持台)、24a…基材設置面、24c…上端縁位置(最上点)、29…粒子の噴流(プルーム)、30…窓部、dt:ターゲットの中心から端縁までの距離、ds…基材設置面の中心から端縁までの距離、dts…ターゲットと基材設置面との距離、θ…ターゲットの水平面に対する傾斜角。

Claims (8)

  1. 減圧可能な容器と、該容器の一側と他側に容器の内部空間を挟むように設けられた雰囲気ガスの導入部および排出部と、前記導入部と前記排出部の間に前記導入部から前記容器の内部側を通過し前記排出部に向かって流れる気流の通過領域を挟むように互いに対向して配置された基材の支持台及びターゲットと、前記容器の側壁に形成された窓部を介し前記容器の外部から前記容器内部のターゲット表面にレーザー光を照射する照射手段が具備され、
    前記ターゲットが前記容器の内部において上向きに傾斜した状態で配置され、前記支持台がその基材設置面を前記ターゲットに向けて斜め下向きに傾斜した状態で配置されるともに、
    前記傾斜されたターゲットの表面の下端縁位置を含む鉛直面よりも、前記排出部に近い側に、前記支持台の基材設置面が配置されたことを特徴とするレーザー蒸着装置。
  2. 前記雰囲気ガスの導入部から前記排出部に向かう気流が斜め下向きの気流の通過領域として前記容器の内部に規定されるとともに、前記傾斜されたターゲットの表面及び前記傾斜された基材設置面が前記斜め下向きの気流の通過領域に沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載のレーザー蒸着装置。
  3. 前記ターゲットの水平面に対する傾斜角度をθ、前記ターゲット中心と前記基材設置面中心との間隔をdts、前記ターゲットの中心から前記ターゲットの端縁までの距離をdt、前記基材設置面中心から前記基材設置面の端縁までの距離をdsと規定すると、以下の(1)式の関係が成り立つことを特徴とする請求項1または2に記載のレーザー蒸着装置。
    dts・cos(90−θ)=(dt+ds)cosθ …(1)式
    (ただし、(1)式において、θは75゜以下である。)
  4. 前記支持台の両側に複数の転向リールを備えた転向部材が配置され、前記支持台の両側の複数の転向リールにテープ状の基材を交互に掛け渡すことで前記基材設置面に沿って、前記テープ状の基材の複数のレーンを構成自在とされたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザー蒸着装置。
  5. 減圧可能な容器と、該容器の一側と他側に容器の内部空間を挟むように設けられた雰囲気ガスの導入部および排出部と、前記導入部と前記排出部の間に前記導入部から前記容器の内部側を通過し前記排出部に向かって流れる気流の通過領域を挟むように互いに対向して配置された基材の支持台及びターゲットと、前記容器の側壁に形成された窓部を介し前記容器の外部から前記容器内部のターゲット表面にレーザー光を照射する照射手段が具備されたレーザー蒸着装置を用い、
    前記ターゲットを前記容器の内部において上向きに傾斜させた状態で配置し、前記支持台をその基材設置面が前記ターゲットに向いて斜め下向きに傾斜する状態で配置し、
    前記傾斜されたターゲットの表面の下端縁位置を、前記傾斜された支持台の基材設置面の上端縁位置よりも、前記気流通過領域の下流側に配置し、
    この状態から前記ターゲット表面にレーザー光を照射して前記ターゲットから斜め上向きの粒子の噴流を発生させるとともに、前記導入部から導入した雰囲気ガスを前記気流の通過領域に沿って前記排出部側に向けて流動させながら前記基材設置面に沿って配置した基材に成膜することを特徴とするレーザー蒸着方法。
  6. 前記雰囲気ガスの導入部から前記排出部に向かう気流を斜め下向きの気流として、該雰囲気ガスの気流を生成しながら成膜することを特徴とする請求項5に記載のレーザー蒸着方法。
  7. 前記ターゲットの水平面に対する傾斜角度をθ、前記ターゲット中心と前記基材設置面中心との間隔をdts、前記ターゲットの中心から前記ターゲットの端縁までの距離をdt、前記基材設置面中心から前記基材設置面の端縁までの距離をdsと規定し、以下の(1)式の関係が成り立つように各値を規定して成膜することを特徴とする請求項5または6に記載のレーザー蒸着方法。
    dts・cos(90−θ)≧(dt+ds)cosθ …(1)式
    (ただし、(1)式において、θは75゜以下である。)
  8. 前記基材設置面に沿って、前記テープ状の基材を複数のレーンを構成するように移動させつつ成膜することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載のレーザー蒸着方法。
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