JP5876668B2 - 成形体の製造方法及び切削体の製造方法 - Google Patents

成形体の製造方法及び切削体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、成形体、被包体、成形体の製造方法及び切削体の製造方法に関する。
室温での空気分子の平均自由行程は約100nmである。したがって、直径100nm以下の空隙を有する多孔質体内では、空気による対流や伝導による伝熱が抑制されるため、このような多孔質体は優れた断熱作用を示す。
この断熱作用の原理に従い、微細多孔構造により熱伝導率が極めて低い断熱材が得られることが知られている。例えば、下記非特許文献1には、低熱伝導度の物質としてフュームドシリカを選び、これにセラミックファイバーと、赤外線の透過を減少させるため、赤外線不透明化剤として特別な粒径と粒度分布の耐熱性の金属酸化物を配合し、空孔を設けて熱の通過路の断面積を小さくするように成型する方法が開示されている。
工業加熱 Vol.20 No.4 新しい断熱材「マイクロサーム」 江口隆之 著 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (委託先)株式会社日鉄技術情報センター、平成19年度調査委託成果報告書 ナノ多孔体構造をもつセラミックスの材料技術に関する調査報告書(平成20年3月)
確かに微細多孔構造は、断熱材の熱伝導を小さくするのに寄与するが、空孔の比率を上げることは、断熱材の強度を小さくすることに繋がる。一方、断熱材の使用目的を分析したところ、用途によっては、複雑な形状に加工することが望ましいのに対し、断熱材の強度が十分でないと、切断、くり抜き等の加工に耐えられないという問題がある。本発明者が検討したところによると、切断等の加工をする場合には、5%圧縮時の耐荷重が大きいことが必要であり、具体的には、圧縮率0〜5%における最大荷重が0.7MPa以上であることが必要と分かった。
しかしながら、非特許文献1に記載のマイクロサーム(商品名、日本マイクロサーム株式会社製)は、パネル型で密度が200〜275kg/mのタイプにおいて、圧縮率5%における荷重は2kg/cmである。また、同じタイプの断熱材に関して、掲載されているグラフ(上記非特許文献1中「図4 マイクロサームの耐圧縮性」)から、約4.5kg/cmの荷重で約10%圧縮変形することが示されており、本発明者が検討したところ、非特許文献1に記載の断熱材は十分な強度を有しておらず、切断しようとすると崩壊し易かった。
非特許文献2には、マイクロサームについて、固形またはフレキシブルな板状の成形体であり、5%圧縮時の圧縮強度は密度により75〜600kN/mであると記載されている。また、マイクロサームは破壊点が明確でなく変形が起きるような材料であることから、強度試験の方法としては、圧縮荷重と変形率の関係を測定すると記載されている。
非特許文献2には、ASTM(米国材料試験協会;American Society for Testing and Materials)の圧縮強度の標準化されている測定規格による断熱材の強度測定事例(ASTM Test Method C 165)が紹介されている。これによると、断熱材を通常の試験機で測定しているが、ある応力で崩壊するようなパターンを示さないので、荷重−変形曲線を描いてある変形率における荷重で比較等すると記載されている。このように、断熱材が荷重により大きく圧縮変形すると、断熱性能が低下しやすくなることや、圧縮変形によって隙間が生じ、その箇所の強度が低下し、崩壊しやすくなることなど、実用上好ましくない問題が生じる場合がある。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、圧縮時に崩壊や変形が生じにくく、崩壊することなく切断等の形状加工が可能であり、且つ断熱性を有する成形体の製造方法及び切削体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、シリカとナトリウムを含み、特定の圧縮強度を示すものは、荷重が大きい用途においても高い断熱性を示すことを発見し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
本発明の成形体の製造方法は、シリカとナトリウムとを含有し、ナトリウムの含有率が0.005質量%以上3質量%以下であり、圧縮率0〜5%における最大荷重が0.7MPa以上であり、30℃における熱伝導率が0.05W/m・K以下である成形体を得るための製造方法であって、シリカとナトリウムとを含有し、ナトリウムの含有率が0.005質量%以上3質量%以下である無機混合物を400℃以上の温度で加熱処理する工程を備える
上記本発明の成形体の製造方法では、上記成形体がカリウム(K)を含有し、Kの含有率が0.005質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
上記本発明の成形体の製造方法では、上記成形体がマグネシウム(Mg)を含有し、Mgの含有率が0.005質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
上記本発明の成形体の製造方法では、上記成形体がカルシウム(Ca)を含有し、Caの含有率が0.005質量%以上2質量%以下であることが好ましい。
上記本発明の成形体の製造方法では、上記成形体が鉄(Fe)を含有し、Feの含有率が0.005質量%以上6質量%以下であることが好ましい。
上記本発明の成形体の製造方法では、上記成形体が無機繊維をさらに含有し、無機繊維の含有率が0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
上記本発明の成形体の製造方法では、上記成形体が、平均粒子径が0.5μm以上30μm以下である赤外線不透明化粒子をさらに含有し、赤外線不透明化粒子の含有率が0質量%超49.5質量%以下であることが好ましい。
上記本発明の成形体の製造方法、赤外線不透明化粒子を含有する成形体は、800℃における熱伝導率が0.2W/m・K以下であることが好ましい。
上記本発明の成形体の製造方法では、上記成形体に含まれる無機繊維は、生体溶解性を有することが好ましい。
上記本発明の成形体の製造方法は、シリカとナトリウムとを含有し、ナトリウムの含有率が0.005質量%以上3質量%以下である無機混合物を、成形型に収容する収容工程と、無機混合物を成形する成形工程と、を備え、成形工程は、下記の工程(a)又は工程(b)を有することが好ましい。
(a)成形型により無機混合物を加圧しながら400℃以上に加熱する工程。
(b)加圧により無機混合物を成形した後、400℃以上の温度で加熱処理を施す工程。
上記本発明の成形体の製造方法は、シリカとナトリウムとを含有し、ナトリウムの含有率が0.005質量%以上3質量%以下であり、圧縮率0〜5%における最大荷重が0.7MPa以上であり、30℃における熱伝導率が0.05W/m・K以下である成形体を得るための製造方法であって、シリカとナトリウムとを含有し、ナトリウムの含有率が0.005質量%以上3質量%以下である無機混合物を、成形型に収容する収容工程と、無機混合物を成形する成形工程と、を備え、成形工程は、下記の工程(a)又は工程(b)を有することが好ましい。
(a)成形型により無機混合物を加圧しながら400℃以上に加熱する工程。
(b)加圧により無機混合物を成形した後、400℃以上の温度で加熱処理を施す工程。
上記成形工程において、成形体のかさ密度が0.25g/cm以上2.0g/cm以下になるように成形圧力を設定することが好ましい。
上記本発明の成形体の製造方法は、シリカを含む平均粒子径Dが5nm以上30nm未満である小粒子と、ナトリウム及びシリカを含む平均粒子径Dが30nm以上50μm以下である大粒子とを混合し、無機混合物を得る工程をさらに備えることが好ましい。
上記本発明の成形体の製造方法は、シリカを含む平均粒子径Dが5nm以上30nm未満である小粒子と、ナトリウム及びシリカを含む平均粒子径Dが30nm以上50μm以下である大粒子と、金属酸化物ゾルとを混合し、無機混合物を得る工程をさらに備えることが好ましい。
上記本発明の成形体の一部を切削して得られる切削体の製造方法は、シリカとナトリウムとを含有し、ナトリウムの含有率が0.005質量%以上3質量%以下である無機混合物を成形型に収容する収容工程と、無機混合物を成形する成形工程と、成形工程により得られた成形体の一部を切削する切削工程と、を備え、成形工程が下記の工程(c)又は工程(d)を有する。
(c)成形体のかさ密度が0.25g/cm以上2.0g/cm以下になるように成形型により無機混合物を加圧しながら加熱する工程。
(d)成形型で加圧することにより無機混合物を成形した後、400℃以上の温度で加熱処理を施す工程。
上記本発明の成形体の一部を切削して得られる切削体の製造方法は、シリカとナトリウムとを含有し、ナトリウムの含有率が0.005質量%以上3質量%以下である無機混合物を成形型に収容する収容工程と、無機混合物を成形する成形工程と、成形工程により得られた成形体の一部を切削する切削工程と、を備え、成形工程が下記の工程(c)又は工程(d)を有し、成形体が、シリカとナトリウムとを含有し、ナトリウムの含有率が0.005質量%以上3質量%以下であり、圧縮率0〜5%における最大荷重が0.7MPa以上であり、30℃における熱伝導率が0.05W/m・K以下であることが好ましい。
(c)成形体のかさ密度が0.25g/cm 以上2.0g/cm 以下になるように成形型により無機混合物を加圧しながら加熱する工程。
(d)成形型で加圧することにより無機混合物を成形した後、400℃以上の温度で加熱処理を施す工程。
上記本発明の切削体の製造方法では、上記成形体が、平均粒子径が0.5μm以上30μm以下である赤外線不透明化粒子をさらに含有し、赤外線不透明化粒子の含有率が0質量%超49.5質量%以下であることが好ましい。
上記本発明の切削体の製造方法では、赤外線不透明化粒子を含有する成形体は、800℃における熱伝導率が0.2W/m・K以下であることが好ましい。
本発明によれば、圧縮時に崩壊や変形が生じにくく、崩壊することなく切断等の形状加工が可能であり、且つ断熱性能を有する成形体の製造方法及び切削体の製造方法を提供することが可能である。
本発明の一実施形態に係る被包体の断面模式図である。 本発明の一実施形態に係る成形体が含有する小粒子及び大粒子の断面模式図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[1]成形体
[1−1]シリカ
本実施形態の成形体はシリカを含有する。成形体中のシリカの含有率が50質量%以上であると、固体伝導による伝熱が小さいため、断熱材用途の場合は好ましい。シリカの含有率が成形体の75質量%以上であると、シリカ粒子同士の付着力が増して、成形体の原料である無機混合物の飛散が少なくなるためより好ましい。なお、本明細書中シリカとは、組成式SiOで表される成分からなる粒子の他、SiOを含む粒子を指し、SiOに加えて金属成分等、他の無機化合物を含有する粒子を包含し、これらの粒子をシリカ粒子という場合がある。シリカ粒子は、純粋な二酸化ケイ素に加えて、Si及び種々の他元素との塩や複合酸化物を含有してもよいし、水酸化物のような含水酸化物を含有してもよいし、シラノール基を有していてもよい。成形体中のシリカは、結晶質であっても、非晶質であっても、それらの混合体であってもよいが、断熱材用途の場合は非晶質であると、断熱材中の固体伝導による伝熱が小さく、断熱性能が向上するため、好ましい。
成形体の用途によっては、成形体がシリカ粒子以外の材料を含有してもよい。シリカ粒子以外の材料については後で詳述するが、無機混合物がシリカ粒子以外の材料を含有する場合、シリカ粒子の含有率は、成形体の全質量を基準として50質量%以上99.9質量%以下であることが好ましい。シリカ粒子の含有率が50質量%以上97.5質量%以下で無機繊維や赤外線不透明化粒子を含有する成形体は、高い温度での断熱性能の向上といった効果がより好適にあらわれ、より好ましい。含有率が60質量%以上97.5質量%以下であると、成形体のかさ密度がより小さいため、さらに好ましい。
[1−2]無機繊維
本実施形態の成形体は無機繊維を含有するのが好ましい。無機繊維を含有すると、加圧成形において、成形体からの粒子の脱落が少なく、生産性が高いという利点を有する。本明細書中、無機繊維とは平均太さに対する無機繊維の平均長さの比(アスペクト比)が10以上であるものをいう。アスペクト比は10以上であることが好ましく、成形体の作製時において、小さい圧力で成形を可能とし、成形体の生産性を向上させる観点から50以上がより好ましく、成形体の曲げ強度の観点から100以上がさらに好ましい。無機繊維のアスペクト比は、FE−SEMにより測定した無機繊維1000本の太さ及び長さの平均値から求めることができる。無機繊維は成形体中で単分散して混合されていることが好ましいが、無機繊維が互いに絡まった状態や、複数の無機繊維が同一方向で揃った束の状態で混合されていてもかまわない。また、単分散状態において、無機繊維の向きが同一方向で揃った状態であってもかまわないが、熱伝導率を小さくする観点から、無機繊維は、伝熱方向に対して垂直方向に配向していることが好ましい。
無機繊維の例を示すと、ガラス長繊維(フィラメント)(SiO−Al−B−CaO)、グラスウール(SiO−Al−CaO−NaO)、耐アルカリガラス繊維(SiO−ZrO−CaO−NaO)、ロックウール(バサルトウール)(SiO−Al−Fe−MgO−CaO)、スラグウール(SiO−Al−MgO−CaO)、セラミックファイバー(ムライト繊維)(Al−SiO)、シリカ繊維(SiO)、アルミナ繊維(Al−SiO)、チタン酸カリウム繊維、アルミナウィスカー、炭化ケイ素ウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー(セッコウ繊維)、酸化亜鉛ウィスカー、ジルコニア繊維、炭素繊維、黒鉛ウィスカー、フォスフェート繊維、AES(Alkaline Earth Silicate)ファイバー(SiO−CaO−MgO)、天然鉱物のウォラストナイト、セピオライト、アタパルジャイト、ブルーサイトを挙げることができる。
無機繊維の中でも、特に人体にとって安全である生体溶解性のAESファイバー(Alkaline Earth Silicate Fiber)を用いることが好ましい。AESファイバーとしては、例えば、SiO−CaO−MgO系の無機質のガラス(無機高分子)が挙げられる。
無機繊維の平均太さは、飛散を防ぐ観点で1μm以上が好ましい。断熱材の場合は、固体伝導による伝熱を押さえる観点で20μm以下であることが好ましい。無機繊維の平均太さは、FE−SEMにより、無機繊維1000本の太さを求めて、これを平均して求めることができる。
断熱用途の場合、成形体中の無機繊維の含有率は、成形体からの粉体の脱離抑制の観点で成形体全体の質量に対して0.1質量%以上が好ましく、成形体のBET比表面積を10m/g以上とし、30℃における熱伝導率が0.05W/m・K以下とする観点で50質量%以下であることが好ましい。
シリカ粒子、赤外線不透明化粒子との混合の容易さの観点から、無機繊維の含有率は0.2質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、かさ密度が小さくなる観点から0.2質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
無機繊維はNaを含んでいてもかまわないが、その場合、成形体におけるNaの含有率が3質量%以下にできるNa含有率の無機繊維を選択した上で、無機繊維の混合量も、成形体におけるNaの含有率が3質量%以下を満たすように決定する。その場合、もちろんシリカ粒子が含有しうるNa量は、無機繊維のNa含有率に応じて少なくなる。従って、シリカ粒子、無機繊維におけるNaの含有率を予め測定しておくことが好ましい。無機繊維がNaを含有しない場合は、シリカ粒子(又はシリカ粒子と赤外線不透明化粒子の混合物)が、Na含有率0.005質量%以上3質量%以下(成形体の全質量基準)を満たすようにすればよい。
[1−3]赤外線不透明化粒子
本実施形態の成形体は、赤外線不透明化粒子を含有することが、高い温度での断熱性能を要する場合は、好ましい。赤外線不透明化粒子とは、赤外線を反射、散乱又は吸収する材料からなる粒子を指す。断熱材に赤外線不透明化粒子が混合されていると、輻射による伝熱が抑制されるため、特に200℃以上の高い温度領域での断熱性能が高い。
赤外線不透明化粒子の例として、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、二酸化チタン、鉄チタン酸化物、酸化鉄、酸化銅、炭化ケイ素、金鉱石、二酸化クロム、二酸化マンガン、グラファイトなどの炭素質物質、炭素繊維、スピネル顔料、アルミニウムの粒子、ステンレス鋼の粒子、青銅の粒子、銅/亜鉛合金の粒子、銅/クロム合金の粒子を挙げることができる。従来、赤外線不透明物質として知られる上記の金属粒子又は非金属粒子を、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
赤外線不透明化粒子としては、特に、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、二酸化チタン又は炭化ケイ素が好ましい。赤外線不透明化粒子の組成はFE−SEM EDXにより求められる。
赤外線不透明化粒子の平均粒子径は、200℃以上での断熱性能の観点で0.5μm以上が好ましく、固体伝導の抑制による200℃未満での断熱性能の観点で30μm以下であることが好ましい。なお、赤外線不透明化粒子の平均粒子径は、シリカ粒子と同じ方法により求められる。無機繊維やシリカ粒子のサイズにもよるが、シリカ粒子が5nm〜50μmの場合、シリカ粒子との混合の容易さの観点で赤外線不透明化粒子の平均粒子径は、0.5μm以上10μm以下であることが、より好ましい。
成形体中の赤外線不透明化粒子の含有率は、0質量%超49.5質量%以下であることが好ましい。赤外線不透明化粒子の含有率が49.5質量%より大きいと、固体伝導による伝熱が大きいため、200℃未満での断熱性能が低い傾向がある他、BET比表面積が小さい。200℃以上での断熱性能を向上させるためには、赤外線不透明化粒子の含有率は、2質量%以上とすることが好ましい。シリカとナトリウム及び赤外線不透明化粒子とを含有する成形体は、成形体からの粉落ちが少ない傾向があり、製造ラインにおいて成形体を運搬するベルトコンベヤーが汚れにくい、成形体を持ったときに手が汚れにくい等、成形体が接触した箇所が汚れにくい効果がある。
赤外線不透明化粒子の含有率は、例えば、赤外線不透明化粒子の組成をFE−SEM EDXに測定し、赤外線不透明化粒子のみが含有する元素を蛍光X線分析法により定量することで、求めることができる。
赤外線不透明化粒子はNaを含んでいてもかまわない。赤外線不透明化粒子がNaを含有する場合、成形体全体におけるNa含有率が0.005質量%以上3質量%以下となるように、シリカ粒子や、含有する場合は無機繊維のナトリウム量を差し引いて赤外線不透明化粒子のナトリウム含有率や混合量を調整する。従って、シリカ粒子、無機繊維におけるNaの含有率を予め測定しておくことが好ましい。
[1−4]ナトリウム(Na)の含有率
本実施形態の成形体は、Naを含む。Naの含有率は、成形体の全質量を基準として0.005質量%以上3質量%以下である。Naの含有率が0.005質量%未満であると圧縮強度が小さい傾向があり、3質量%以上であると断熱性能が低い傾向がある。この理由は定かではないが、以下のように推定される。後述するように、成形体の製造においては、成形体を加熱処理する工程を有する。この加熱処理工程においてNaが溶融することにより、成形体の硬化に寄与すると本発明者は推定している。Naの含有率は、成形体に不純物として含まれるシリカ成分以外の成分、例えばTiO、Fe、Al等の量に依存するが、成形体を十分に硬化させ、圧縮強度を高める観点から、断熱材の全質量を基準として0.005質量%以上2質量%以下が好ましく、0.005質量%以上1.5質量%がより好ましく、0.005質量%以上1.0%質量%以下がさらに好ましい。
加熱処理を施すことによりNaは溶融し、成形体の主要な構成成分であるシリカと反応すると推定される。その結果、シリカ粒子が互いに粒子界面で融着し、例えばSi−O−Siのような結合が生じ、強固な接合箇所を形成すると考えられる。接合箇所の形成は、シリカ粒子により形成される構造の安定化に作用する結果、成形体全体として硬化し、圧縮強度が向上すると考えられる。なお、ナトリウムの含有率を3質量%以下とすることで、シリカ粒子の界面において必要以上に大きい融着面が形成されないため、成形体中に固体伝導の大きい伝熱経路が存在せず、成形体全体の熱伝導率を低くすることが可能であると考えられる。
Naの含有率は、例えば、XRF(蛍光X線分析)により定量することができる。
複数の種類のシリカ粒子、例えば小粒子と大粒子を混合して成形体の原料である無機混合物を調製する際は、各々のNaの含有率を予め測定し、混合後の無機混合物のNaの含有率が0.005質量%以上3質量%以下になるように、混合量を調整することが好ましい。例えば、Naの含有率がそれぞれ0.02質量%の小粒子と5%の大粒子を混合する場合、大粒子の質量/(小粒子の質量+大粒子の質量)が0〜0.99の範囲であることが好ましい。無機繊維、赤外線不透明化粒子を使用する場合も、各々のNaの含有率を予め測定し、混合量を決定することが好ましい。例えば、Naの含有率が0.07質量%のシリカにNaの含有率が1質量%の無機繊維を混合する場合、無機繊維の混合量は任意に決定することが可能である。例えば、Naの含有率が0.07質量%のシリカにNaの含有率が0.6質量%の赤外線不透明化粒子を混合する場合、赤外線不透明化粒子の混合量は任意に決定することが可能である。
[1−5]BET比表面積
成形体は、BET比表面積が10m/g以上350m/g以下であるのが好ましい。この範囲にBET比表面積を有する成形体は、熱伝導率が小さい傾向がある。しかしながら、圧縮率0〜5%における最大荷重が0.7MPa以上であるとは限らない。ところが、前記範囲にBET比表面積を有し、さらにNaの含有率が0.005質量%以上3質量%以下であると、荷重による圧縮変形が小さい傾向がある。この理由は定かではないが、上述したように、Naの溶融が成形体の硬化に寄与すると推定されることから、BET比表面積が10m/g以上350m/g以下であり、且つNaの含有率が0.005質量%以上3質量%以下であると圧縮強度が大きくなる傾向があり、その結果荷重による圧縮変化が小さく、断熱性能に優れた成形体を得られると推定される。BET比表面積は10m/g以上250m/g以下がより好ましく、10m/g以上200m/g以下がさらに好ましい。
複数の種類のシリカ粒子、例えば後述する小粒子と大粒子を混合して無機混合物を得、それから成形体を調製する際は、各々のBET比表面積を測定し、BET比表面積が10m/g以上350m/g以下になるように、混合量を調整することが好ましい。例えば、BET比表面積がそれぞれ200m/gの小粒子と0.3m/g大粒子を混合する場合、大粒子の質量/(小粒子の質量+大粒子の質量)が0〜0.88の範囲であることが好ましい。無機繊維、赤外線不透明化粒子を使用する場合も、各々のBET比表面積を予め測定し、混合量を決定することが好ましい。例えば、BET比表面積が200m/gのシリカにBET比表面積が0.15m/gの無機繊維を混合する場合、無機繊維の混合量は0.1質量%〜90質量%であることが好ましい。例えばBET比表面積が200m/gのシリカにBET比表面積が2m/gの赤外線不透明化粒子を混合する場合、赤外線不透明化粒子の混合量は0質量%超〜95質量%であることが好ましい。後述するように、成形体の製造においては、成形体に加熱処理を施す工程を有するが、加熱処理を施した成形体は、加熱処理を施す前の成形体に比較してBET比表面積が小さくなる傾向があることから、加熱処理を施した後の成形体のBET比表面積を測定し、シリカ粒子や無機繊維、赤外線不透明化粒子の混合量を調整することも可能である。
[1−6]圧縮強度
本実施形態の成形体は、圧縮率が0〜5%の範囲における最大荷重が0.7MPa以上である。0.8MPaであることがより好ましく、0.9MPaであることが更に好ましい。
圧縮率は、圧縮強度測定時のサンプル厚み、すなわちサンプルの圧縮方向長さに対するストローク(押し込み距離)から算出することが可能である。例えば、成形体を1cm×1cm×1cmの立方体形状にしたサンプルを用いて圧縮強度を測定する場合、ストロークが0.5mmとなる状態を圧縮率が5%であると定義する。圧縮率は、下記数式(1)で算出される。
圧縮率=100×ストローク(押し込み距離)/サンプルの圧縮方向長さ (1)
圧縮強度測定時に描かれる荷重−圧縮率曲線のパターンは、特に限定されない。すなわち、上記圧縮率が0〜5%の範囲において、サンプルである成形体が崩壊し明確な破壊点を示しても、崩壊しなくてもかまわない。圧縮率が0〜5%の範囲においてサンプルである成形体が崩壊し破壊点を示す場合、その成形体の最大荷重は破壊点における荷重と定義する。その破壊点における荷重が0.7MPa以上であることが好ましく、0.8MPaであることがより好ましく、0.9MPaであることが更に好ましい。サンプルが崩壊しない場合は、圧縮率が0〜5%の範囲で示す最大荷重の値を使用して評価する。
圧縮強度は、後述する方法で測定することが可能である。
[1−7]熱伝導率
成形体は、30℃における熱伝導率が0.05W/m・K以下である。断熱性能の観点から、熱伝導率は0.045W/m・K以下が好ましく、0.040W/m・K以下がより好ましく、0.037W/m・K以下がさらに好ましい。成形体が赤外線不透明化粒子を含む場合は、800℃における熱伝導率が0.2W/m・K以下であることが好ましく、0.19W/m・K以下であることがより好ましく、0.18W/m・K以下であることがさらに好ましい。熱伝導率の測定方法は、後述する。
複数の種類のシリカ粒子、例えば小粒子と大粒子を混合して無機混合物を調製する際は、上述のようにNaの含有率を0.005質量%以上3質量%以下、BET比表面積を10m/g以上350m/g以下にした上で熱伝導率を測定することが好ましい。熱伝導率が0.05W/m・K超である場合は、Naの含有率0.005質量%以上3質量%以下、BET比表面積10m/g以上350m/g以下を維持する範囲で混合量を変えるのが好ましい。無機繊維、赤外線不透明化粒子を使用する場合も同様に混合量を決定することができる。小粒子と大粒子を混合して成形体の原料となる無機混合物を調製すると、無機混合物が大粒子のみで構成される場合に比較して熱伝導率が小さくなる傾向が見られる。例えば、10nm程度の小粒子と5μm程度の大粒子を混合する場合、大粒子の質量/(小粒子の質量+大粒子の質量)を0.02〜0.95とするのが好ましい。無機繊維、赤外線不透明化粒子の混合量は、過剰であると断熱性が低下する場合があるため、熱伝導率を測定し、確認しながら適宜調製することが好ましい。例えば、シリカに平均繊維径が12μm、平均長さが5mmの無機繊維を混合する場合、無機繊維の混合量は30質量%以下であることが好ましい。例えば、シリカに平均粒子径が2μmの赤外線不透明化粒子を混合する場合、赤外線不透明化粒子の混合量は23質量%以下であることが好ましい。また、熱伝導率の小さい材料からなる無機繊維や赤外線不透明化粒子を選択して使用すると、熱伝導率が0.05W/m・K以下の成形体を得やすい傾向がある。
[1−8]K、Mg、Ca、Feの含有率
成形体は、荷重による圧縮変形を小さくする観点から、成形体の全質量を基準として、Kの含有率が0.005質量%以上5質量%以下、Mgの含有率が0.005質量%以上5質量%以下、Caの含有率が0.005質量%以上2質量%以下、Feの含有率が0.005質量%以上6質量%以下であることが好ましく、Kの含有率が0.005質量%以上3質量%以下、Mgの含有率が0.005質量%以上3.5質量%以下、Caの含有率が0.005質量%以上1.5質量%以下、Feの含有率が0.005質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、Kの含有率が0.005質量%以上1.5質量%以下、Mgの含有率が0.005質量%以上2.5質量%以下、Caの含有率が0.005質量%以上1質量%以下、Feの含有率が0.005質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましい。成形体におけるK、Mg、Ca、Feの含有率は、XRF(蛍光X線分析)により定量することができる。成形体は不純物としてアルミニウム(Al)、リン(P)、硫黄(S)、塩素(Cl)、ニッケル(Ni)、ゲルマニウム(Ge)を含んでいてもかまわない。
[2]成形体の製造方法
本実施形態の成形体の製造方法は、シリカとナトリウムとを含有し、ナトリウムの含有率が0.005質量%以上3質量%以下である無機混合物を加熱処理する工程を備える。上記製造方法は、上記無機混合物を成形型に収容する収容工程と、無機混合物を成形する成形工程とを備え、成形工程は(a)成形型により無機混合物を加圧しながら400℃以上に加熱する工程、又は、(b)加圧により無機混合物を成形した後、400℃以上の温度で加熱処理を施す工程を有することが好ましい。以下、成形体の製造に用いる原料及び各工程を説明する。
[2−1]シリカ粒子
シリカ粒子の具体例としては、下記のものが挙げられる。
「シリカ」や「石英」と呼ばれるケイ素の酸化物。
ケイ素の部分酸化物。
シリカアルミナやゼオライトのようなケイ素の複合酸化物。
Na、Ca、K、Mg、Ba、Ce、B、Fe及びAlのいずれかのケイ酸塩(ガラス)。
ケイ素以外の元素の酸化物、部分酸化物、塩又は複合酸化物(アルミナやチタニア等)と、ケイ素の酸化物、部分酸化物、塩又は複合酸化物との混合体。
SiCやSiNの酸化物。
成形体を断熱材とする場合、使用される温度においてシリカ粒子が熱的に安定であることが好ましい。具体的には、断熱材の使用最高温度において1時間保持したときに、シリカ粒子の重量が10%以上減少しないことが好ましい。また、シリカ粒子は耐水性を有することが好ましい。具体的には、25℃の水100gに対するシリカ粒子の溶解量が0.1g未満であることが好ましく、0.01g未満であることがより好ましい。
シリカ粒子の比重は、成形体を断熱材とする場合、2.0以上4.0以下であることが好ましい。2.0以上3.0以下であると、成形体のかさ密度が小さいためより好ましく、2.0以上2.5以下であるとさらに好ましい。ここで、シリカ粒子の比重は、ピクノメーター法により求まる真比重を指す。
本実施形態の成形体は、シリカ粒子を一種のみ含有してもよいし、2種類以上を含んでもよい。特に粒子径の異なる2種類の粒子、すなわちシリカからなる小粒子と大粒子を含有する場合、小粒子又は大粒子のみで存在する場合とはBET比面積や熱伝導率が異なるので、適当な割合で2種類の粒子を混合することでBET比面積及び/又は熱伝導率を調整することができる。例えば、ある平均粒子径Dが30nm以上50μm以下の大粒子は、BET比表面積が10m/g未満の場合があるが、これに5nm以上30nm未満の小粒子を混合すると、BET比表面積を10m/g以上にし易い。また、大粒子は固体熱伝導が大きいので、熱伝導率が0.05W/m・K超の場合があるが、これに小粒子を混合することで、固体熱伝導を抑制し、0.05W/m・K以下にしやすくなる傾向がある。圧縮強度については、小粒子のみからなるものは小さすぎる場合があるが、小粒子に対して大粒子を添加することにより、圧縮率0〜5%における最大荷重を0.7MPa以上に調整しやすくなる傾向がある。
本実施形態の成形体が2種類以上のシリカ粒子を含有するようにする場合、成形体のBET比表面積を10m/g以上350m/g以下とし、熱伝導率を0.05W/m・K以下とするように大粒子と小粒子の含有率を調整すればよく、例えば10nm程度の小粒子と5μm程度の大粒子を混合する場合、好ましくは大粒子の質量/(小粒子の質量+大粒子の質量)を0.02〜0.95、より好ましくは0.10〜0.90、特に好ましくは0.15〜0.85とすると、BET比表面積が250m/g程度〜40m/g程度になり、BET比表面積を調整することができる。これらの粒子によって形成される空隙が空間の熱伝導のボトルネックとなり、空間の熱伝導が抑制されやすい。加熱処理によって成形体の圧縮強度、熱伝導率は大きくなる傾向があり、BET表面積は小さくなる傾向があるので、成形体に加熱処理を施す場合は、加熱処理を施した後に圧縮強度、熱伝導率及びBET比表面積を測定する。
シリカ粒子の粒子径は、成形体のBET比表面積に影響し、成形体がシリカのみからなる場合、シリカ粒子のBET比表面積は10m/g以上350m/g以下であるのが好ましいが、無機混合物がシリカ粒子以外の成分を含有する場合、その成分のBET比表面積に鑑みてシリカの粒子径を設定するのが好ましい。具体的には、無機混合物が無機繊維を含有する場合、一般的な無機繊維のBET比表面積はシリカのBET比表面積よりも小さいので、シリカのBET比表面積は50m/g程度〜400m/g程度とするのが好ましく、シリカ粒子の粒子径は7nm程度〜50nm程度とするのが好ましい。無機混合物が赤外線不透明化粒子を含有する場合、一般的な赤外線不透明化粒子のBET比表面積はシリカのBET比表面積よりも小さいので、シリカのBET比表面積は70m/g程度〜450m/g程度とするのが好ましく、シリカ粒子の粒子径は5nm程度〜40nm程度とするのが好ましい。シリカ粒子の粒子径は、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)で観察することにより測定できる。小粒子の平均粒子径D、大粒子の平均粒子径Dは、小粒子、大粒子各1000個をFE−SEMで観察し、その等面積円相当径を求めて数平均を算出することにより、確認することができる。シリカ粒子の固体伝導の観点から、シリカ粒子の平均粒子径は10nm以上80μm未満であることが好ましく、10nm以上50μm未満であることがより好ましく、10nm以上30μm未満であることがさらに好ましい。
大粒子と小粒子を原料に含む成形体において、小粒子の平均粒子径Dは、5nm以上30nm未満であることが好ましい。Dが5nm以上であると、Dが上記の数値範囲外である場合に比べて、小粒子が化学的に安定である傾向があり、断熱性能が安定しやすい傾向がある。Dが30nm未満であると、Dが上記の数値範囲外である場合に比べて、小粒子同士の接触面積が小さく、成形体の固体伝導による伝熱が少なく、熱伝導率が小さい傾向がある。
は、5nm以上25nm以下であると、熱伝導率を小さくする観点からより好ましく、5nm以上15nm以下であるとさらに好ましい。
大粒子の平均粒子径Dは、D<Dを満たし、30nm以上50μm以下であることが好ましい。Dは、前述のDと同じ方法により求められる。Dが30nm以上であると、成形体におけるスプリングバックが小さい傾向がある。ここでスプリングバックとは、超微粒子を主成分とする断熱材前駆体を加圧成形した後、圧力を開放した時に、成形体が大きく膨張する現象を言う。Dが50μm以下であると、熱伝導率が小さい傾向にある。
大粒子の平均粒子径Dは、30nm以上10μm以下であると、成形体が無機繊維や赤外線不透明化粒子を含む場合に、成形体の原料である無機混合物の調製時にこれらとの均一な混合が容易であるため、より好ましい。Dは、30nm以上5μm以下であると、粒子の付着力が大きく、成形体の原料である無機混合物からの粒子の脱落が少ないため、さらに好ましい。
がDの2倍以上であると、成形体のスプリングバックが小さくなるため、好ましい。DはDの3倍以上であると、小粒子と大粒子からなる成形体のかさ比重が大きく、成形体体積が小さいと作業性が高いので、より好ましい。DはDの4倍以上であると、小粒子と大粒子の粒径の差が大きく、小粒子と大粒子を混合した際に大粒子の小粒子に対する分散が容易であるので、さらに好ましい。成形体が断熱材用途の場合、粒子の凝集による固体伝熱の観点から、各々の粒子が分散していることが好ましい。
無機混合物は、水が成形体に浸み込んだ場合にハンドリング性の低下や成形体の変形、ひび割れ等が起こるのを抑制する観点から、撥水剤を含むことが好ましい。撥水剤としては、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、アクリル・エチレン共重合体ワックス等のワックス系撥水剤;シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、アルキルアルコキシシラン等のシリコン系撥水剤;パーフロロアルキルカルボン酸塩、パーフロロアルキルリン酸エステル、パーフロロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のフッ素系撥水剤、アルキル基やパーフルオロ基を含むアルコキシシラン等のシランカップリング剤、トリメチルシリルクロライドや1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン等のシリル化剤等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。これらはそのまま用いてもよいし、溶液やエマルジョンの形態で用いることも可能である。このうち、本実施形態においてはワックス系撥水剤、シリコン系撥水剤が好ましく用いられる。無機混合物中の撥水剤の含有率は、十分な撥水効果を付与する観点から、無機混合物全体の質量/撥水剤の質量比は100/30〜100/0.1が好ましく、100/20〜100/0.5がより好ましく、100/10〜100/1がさらに好ましい。
シリカ粒子としては、従来の製法で製造されるシリカ成分を有する粒子を原料とし、ナトリウムの含有率、熱伝導率を調整したものとすることができる。例えば、シリカ粒子は、酸性又はアルカリ性の条件下での湿式法により、ケイ酸イオンを縮合して製造された粒子でもよい。シリカを含む無機化合物粒子は、湿式法でアルコキシシランを加水分解・縮合して製造されたものでもよい。シリカ粒子は、湿式法で製造されたシリカ成分を焼成して製造されたものでもよい。シリカを含む無機化合物粒子は、塩化物などケイ素の化合物を気相で燃焼して製造されたものでもよい。シリカ粒子は、ケイ素金属やケイ素を含む原料を加熱して得られたケイ素ガスを酸化・燃焼して製造されたものでもよい。シリカ粒子は、ケイ石などを溶融して製造されたものでもよい。
シリカ粒子に含まれるシリカ成分以外の成分としては、上記の製法において原料中に不純物として存在しているものを利用してもよい。シリカ成分以外の成分を、シリカの製造プロセス中に添加してもよい。
公知のシリカの製法には以下のものがある。
<湿式法で合成されるシリカ>
ケイ酸ナトリウムを原料に酸性で作られるゲル法シリカ。
ケイ酸ナトリウムを原料にアルカリ性で作られる沈降法シリカ。
アルコキシシランの加水分解・縮合で合成されるシリカ。
<乾式法で合成されるシリカ>
ケイ素の塩化物を燃焼して作られるヒュームドシリカ。
ケイ素金属ガスを燃焼して作られるシリカ。
フェロシリコン製造時などに副生するシリカヒューム。
アーク法やプラズマ法で製造されるシリカ。
ケイ石を溶融して作られる溶融シリカなど。
2種類以上のシリカ粒子、例えば小粒子と大粒子を混合して成形体の原料を調製する場合、上記のシリカのうち、小粒子としては、ヒュームドシリカを用いることがより好ましい。大粒子しては、ヒュームドシリカ、ケイ素金属ガスを燃焼して作られるシリカ、シリカヒューム、溶融シリカを用いることがより好ましい。
シリカを含む無機化合物粒子として、天然のケイ酸塩鉱物を使用することが可能である。天然の鉱物としては、例えばカンラン石類、緑簾石類、石英、長石類、沸石類等が挙げられる。天然のケイ酸塩鉱物に粉砕等の処理を施すことでBET比表面積が調整されて、無機混合物を構成するシリカ粒子として使用することが可能である。Naの含有率が不十分もしくは過剰である場合、後述する方法でNaの添加又は除去処理を施してNaの含有率を任意の値に調整し、無機混合物を構成するシリカ粒子として使用することが可能である。
[2−2]Na、K、Mg、Ca、Fe
Na、K、Mg、Ca、Feは、シリカの製造プロセスや無機混合物の製造プロセス中に、Na、K、Mg、Ca、Feを含む化合物としてそれぞれ添加してもよいが、十分な量のNa、K、Mg、Ca、Feを予め含有しているシリカを含む無機化合物粒子を使用してもよい。Na、K、Mg、Ca、Feを含む化合物としては、特に限定されないが、例えばNa、K、Mg、Ca、Feの酸化物、複合酸化物、水酸化物、窒化物、炭化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、難溶性の塩、及びアルコキシド等が挙げられる。これらは単独で添加してもよく、もしくはこれらの混合物を添加してもよい。Na、K、Mg、Ca、Feを不純物として含有するシリカを含む無機化合物粒子を無機混合物の原料とするのは、生産性、コスト、作業性の観点から、好ましい態様である。このようなシリカを含む無機化合物粒子は、例えば沈殿法で作られたシリカゲル由来の粒子やフェロシリコン製造時などに複製するシリカヒュームとして得ることができる。
Na、K、Mg、Ca、Feをそれぞれ含む化合物を添加する方法は、特に限定されない。例えば、上記湿式法や乾式法で得られたシリカに添加してもよいし、シリカの上記各製造工程において添加してもよい。Na、K、Mg、Ca、Feをそれぞれ含む化合物は、水溶性であっても水に不溶であってもよい。Na、K、Mg、Ca、Feをそれぞれ含む化合物の水溶液として添加し、必要に応じて乾燥させてもよいし、Na、K、Mg、Ca、Feをそれぞれ含む化合物を固形物もしくは液状物の状態で添加してもよい。Na、K、Mg、Ca、Feをそれぞれ含む化合物は、予め所定の粒子径まで粉砕しておいてもよく、また、予備的に粗粉砕しておいてもよい。
シリカ粒子が過剰な量のNa、K、Mg、Ca、Feを含んでいる場合は、シリカの製造プロセスや成形体の製造プロセス中に何らかの処理を施して、前記元素の含有率を所定範囲に調整してもよい。過剰な量のNa、K、Mg、Ca、Feを所定範囲に調整する方法は特に限定されない。例えば、Naの含有率の調整方法としては、酸性物質または他の元素による、置換、抽出、除去方法等が挙げられ、シリカを含む無機化合物粒子を硝酸や王水等で処理した後、乾燥し、成形体の原料として用いることが可能である。過剰な量のNa、K、Mg、Ca、Feの調整は、シリカ粒子を予め所望の粒子径まで粉砕した後に行ってもよいし、Na、K、Mg、Ca、Feを所定範囲に調整した後に、シリカ粒子を粉砕してもかまわない。
[2−3]混合方法
シリカ粒子、赤外線不透明化粒子及び無機繊維は、公知の粉体混合機、例えば、改訂六版 化学工学便覧(丸善)に掲載されているものを使用して混合することができる。この時、シリカを含む無機化合物粒子を2種類以上混合したり、Na、K、Mg、Ca、Fe、P、Sをそれぞれ含む化合物やその水溶液を混合することも可能である。公知の粉体混合機としては、容器回転型(容器自体が回転、振動、揺動する)として水平円筒型、V型(攪拌羽根が付いていてもよい)、ダブルコーン型、立方体型及び揺動回転型、機械撹拌型(容器は固定され、羽根などで撹拌する)として、単軸リボン型、複軸パドル型、回転鋤型、二軸遊星攪拌型、円錐スクリュー型、高速撹拌型、回転円盤型、ローラー付き回転容器型、撹拌付き回転容器型、高速楕円ローター型、流動撹拌型(空気、ガスによって撹拌する)として、気流撹拌型、重力による無撹拌型が挙げられる。これらの混合機を組み合わせて使用してもよい。
シリカ粒子、赤外線不透明化粒子及び無機繊維の混合は、粉砕機として公知のもの、例えば、改訂六版 化学工学便覧(丸善)に掲載されているものを使用して、粒子を粉砕したり、無機繊維を裁断したり、粒子や無機繊維の分散性を向上させながら行ってもよい。この時、シリカを含む無機化合物粒子を2種類以上粉砕、分散させたり、Na、K、Mg、Ca、Fe、P、Sをそれぞれ含む化合物やその水溶液を粉砕、分散させたりすることも可能である。公知の粉砕機としては、ロールミル(高圧圧縮ロールミル、ロール回転ミル)、スタンプミル、エッジランナー(フレットミル、チリアンミル)、切断・せん断ミル(カッターミルなど)、ロッドミル、自生粉砕機(エロフォールミル、カスケードミルなど)、竪型ローラーミル(リングローラーミル、ローラーレスミル、ボールレースミル)、高速回転ミル(ハンマーミル、ケージミル、ディスインテグレーター、スクリーンミル、ディスクピンミル)、分級機内蔵型高速回転ミル(固定衝撃板型ミル、ターボ型ミル、遠心分級型ミル、アニュラー型ミル)、容器駆動媒体ミル(転動ボールミル(ポットミル、チューブミル、コニカルミル)、振動ボールミル(円形振動ミル、旋動振動ミル、遠心ミル)、遊星ミル、遠心流動化ミル)、媒体撹拌式ミル(塔式粉砕機、撹拌槽式ミル、横型流通槽式ミル、竪型流通槽式ミル、アニュラーミル)、気流式粉砕機(気流吸込型、ノズル内通過型、衝突型、流動層ジェット吹込型)、圧密せん断ミル(高速遠心ローラーミル、インナーピース式)、乳鉢、石臼などが挙げられる。これらの粉砕機を組み合わせて使用してもよい。
これらの混合機と粉砕機のうち、撹拌羽根を有する粉体混合機、高速回転ミル、分級機内蔵型高速回転ミル、容器駆動媒体ミル、圧密せん断ミルが、粒子や無機繊維の分散性が向上するため、好ましい。粒子や無機繊維の分散性を向上させるには、撹拌羽根、回転板、ハンマープレート、ブレード、ピン等の先端の周速を100km/h以上にするのが好ましく、200km/h以上がより好ましく、300km/h以上がさらに好ましい。
複数の種類のシリカ粒子を混合する場合、かさ比重が小さい順にシリカ粒子を攪拌機もしくは粉砕機に投入することが好ましい。無機繊維や赤外線不透明化粒子を含む場合は、シリカ粒子を混合した後に赤外線不透明化粒子を添加して混合し、さらにその後無機繊維を添加して混合するのが好ましい。
[2−4]金属酸化物ゾルの混合方法
本実施形態の成形体は、少なくともシリカを含有する無機混合物を特定の温度で加圧成形することによって製造できる。使用状況に応じて無機繊維や赤外線不透明化粒子、金属酸化物ゾルを添加して形成した無機混合物を原料とし、この無機混合物を加圧成形したものでもよい。添加した金属酸化物ゾルが無機バインダーとなり、高い圧縮強度を有する成形体を得ることができる。金属酸化物ゾルを成形体全体に高分散させる観点から、複数の種類のシリカ粒子を混合する場合、例えば小粒子と大粒子を予め上述の方法で混合した後に、金属酸化物ゾルを添加して混合するのが好ましい。金属酸化物ゾルを混合する際も、小粒子と大粒子を混合する場合と同様に、公知の攪拌羽根を備える粉砕機を使用して、粒子を粉砕したり、無機繊維を裁断したり、粒子や無機繊維の分散性を向上させながら、攪拌羽根先端の周速を100km/hとして混合することが好ましい。金属酸化物ゾルの分散性を向上させるには、撹拌羽根を有する粉体混合機を使用し、撹拌羽根先端の周速を100km/h以上にすることが好ましく、大粒子同士の接触をより少なくする観点で200km/h以上がより好ましく、300km/h以上がさらに好ましい。
金属酸化物ゾルの例としては、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、セリアゾル、チタニアゾルが挙げられる。熱伝導率を小さくする観点及び耐熱性の観点から、シリカゾル、アルミナゾルが好ましい。
金属酸化物ゾルの粒子径は、熱伝導率を小さくする観点から2nm〜450nmが好ましく、4nm〜300nmがより好ましく、4nm〜200nmがさらに好ましい。
金属酸化物ゾルの添加量は、シリカや無機繊維、赤外線不透明化粒子との混合時に、攪拌槽の内壁に混合物が付着し、攪拌が不均一になるのを抑制する観点から、成形体の質量全体に対する金属酸化物ゾルの固形分の含有率が0.5質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜25質量%がより好ましく、2質量%〜25質量%がさらに好ましい。
[2−5]成形方法
本実施形態の成形体は、原料である無機混合物を加圧成形して得ることができ、成形工程と後述の加熱工程とは、(a)同時に行ってもよいし、(b)成形工程の後に加熱工程を行ってもよい。すなわち、(a)無機化合物を充填(収容)した金型(成形型)を加熱しながら加圧する方法でもよいし、(b)無機化合物を充填した状態で金型を加圧することにより無機化合物を成形した後、得られた成形体を金型から取り出すか金型に入れたままの状態で加熱する方法でもよい。両態様において、好ましい加圧の圧力及び加熱温度はほぼ同じである。
加圧成形方法としては、金型プレス成形法(ラム式加圧成形法)、ラバープレス法(静水圧成形法)、押出成形法など、従来から知られるセラミックス加圧成形法によって成形することができる。生産性の観点から、金型プレス成形法が好ましい。
金型プレス成形法やラバープレス法において無機混合物を型に充填するときには、成形体の原料である無機混合物に振動を与えるなどして、均一に充填することが、成形体の厚みが均一となるため、好ましい。型内を減圧・脱気しながら無機混合物を型に充填すると、短時間で充填できるため、生産性の観点から好ましい。
圧縮率0〜5%における最大荷重及び/又は熱伝導率を所望の大きさにする観点で加圧成形の条件を設定する場合、得られる成形体のかさ密度が0.25g/cm以上2.0g/cm以下になるように設定するのが好ましい。成形の条件を加圧圧力で制御しようとすると、使用する粉体のすべり性、粉体の粒子間や細孔への空気の取り込み量等によって、加圧した状態で保持する時間の経過に伴って圧力値が変化してしまうため、生産管理が困難になる傾向がある。これに対し、かさ密度を制御する方法は、時間の制御を要することなく、得られる成形体の荷重を目標値にし易い点で好ましい。成形体のかさ密度は運搬時の負担を軽減する観点から、0.25g/cm以上1.7g/cm以下がより好ましく、0.25g/cm以上1.5g/cm以下がさらに好ましい。なお、成形体のかさ密度が0.25g/cm以上2.0g/cm以下になる成形圧力としては例えば0.01MPa以上50MPa以下の圧力であり、0.25g/cm以上1.7g/cm以下になる成形圧力としては例えば0.01MPa以上40MPa以下の圧力であり、0.25g/cm以上1.5g/cm以下になる成形圧力としては例えば0.01MPa以上30MPaの圧力である。
得られる成形体のかさ密度が所定の大きさになるように、成形体を製造する方法の一例を説明すると、まず成形体の体積及びかさ密度から必要な無機混合物の重量を求める。次いで、秤量した無機混合物を成形型に充填し、所定の厚みになるように加圧して成形する。具体的には、縦30cm、横30cm、厚み20mmでかさ密度が0.5g/cmである成形体を製造する場合、目的とするかさ密度に製造する成形体の体積をかけることで、成形体の製造に必要な粉体の重量を求めることが可能である。すなわち、上述した成形体の例では、0.5[g/cm]×30[cm]×30[cm]×2[cm]=900[g]となり、必要な粉体は900gとなる。
一般化すると、体積αcmで、かさ密度がβg/cm(ただし、βは粉体のかさ密度より大きい)の成形体を製造する場合、αβgだけ、粉体を秤量し、体積αまで粉体を圧縮することによって、成形する。
[2−6]加熱処理方法
加圧成形中又は加圧成形後の成形体を、成形体の耐熱性が十分である温度や時間の条件の範囲内で、加熱乾燥し、成形体の吸着水を除去した後実用に供すると、熱伝導率が低くなるため好ましい。さらに、加熱処理を施してもよい。
本実施形態の成形体の製造方法は、シリカとナトリウムとを含み、使用状況に応じて赤外線不透明化粒子や無機繊維を添加して形成した成形体を加熱処理する工程を有するのが好ましい。寸法安定性の観点から、加熱処理温度は、その成形体の使用最高温度より高温が好ましい。成形体の用途により様々であるが、具体的には400〜1200℃が好ましく、より好ましくは500〜1200℃、更に好ましくは600〜1200℃である。
圧縮率0〜5%における最大荷重を0.7MPa以上とするために、成形体は上述のように金属酸化物ゾルを含むことが可能である。成形体が金属酸化物ゾルを含む場合は、より低い加熱処理温度で成形体が硬化しやすい傾向があることから、具体的には200〜1200℃が好ましく、より好ましくは300〜1200℃、更に好ましくは400〜1200℃である。
加熱処理の雰囲気は、空気中(又は大気中)、酸化性雰囲気中(酸素、オゾン、窒素酸化物、二酸化炭素、過酸化水素、次亜塩素酸、無機・有機過酸化物等)、及び不活性ガス雰囲気中(ヘリウム、アルゴン、窒素等)が挙げられる。加熱処理時間は、加熱処理温度及び成形体の量に応じて適宜選択すればよい。
加熱処理は、成形体の原料である無機混合物を使用する箇所に充填した後に施してもよいし、無機混合物を加圧成形したものに施してもよい。
[2−7]切削体の製造方法
本実施形態の成形体は、その一部を切削することによって、切削体を得ることができる。切削体の製造方法としては、例えば、シリカとナトリウムとを含有し、ナトリウムの含有率が0.005質量%以上3質量%以下である無機混合物を金型に収容する収容工程と、無機混合物を成形する成形工程と、成形工程により得られた成形体の一部を切削する切削工程とを含む。成形体の切削手段としては、特に限定されないが、カッター、丸のこ、ジグソー、糸のこ盤、ドリル、グラインダー、バンドソー、サイドカッター、汎用旋盤、卓上旋盤やNC旋盤等の旋盤、汎用フライス、縦型マシニングセンタ、横型マシニングセンタ、5軸加工機等のフライス盤等を用いることができ、特にハンドソー、旋盤、フライス盤を用いることが好ましい。
ここで、上記切削体の製造方法における成形工程においては、切削・加工時に崩壊しにくくする観点から、(c)成形体のかさ密度が0.25g/cm以上2.0g/cm以下になるように成形型に加圧しながら加熱する工程を備えることが好ましく、(d)成形型を加圧することにより無機混合物を成形した後、400℃以上の温度で加熱処理を施す工程を備えることも好ましい。
[3]被包体
被包体は、成形体と、それを収容する外被材とを有する。被包体は成形体と比較して取扱が容易で、施工もしやすいという利点を有する。図1は、本実施形態に係る被包体の断面模式図の一例である。また、図2は本実施形態に係る小粒子及び大粒子の断面模式図の一例である。図1及び図2に示すように、本実施形態の被包体1は、複数の小粒子Sと、小粒子Sよりも粒子径が大きい複数の大粒子Lと、を含有する成形体2と、成形体2を収容する外被材3から構成される。成形体2内において、小粒子S及び大粒子Lは混合しており、大粒子Lの周囲に小粒子Sが存在している。なお、成形体をコア材という場合がある。
[3−1]外被材
外被材は、コア材である成形体を収容可能な限り、特に限定されないが、例として、ガラスクロス、アルミナ繊維クロス、シリカクロス等の無機繊維織物、無機繊維編物、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、フッ素系樹脂フィルム等の樹脂フィルム、プラスチック−金属フィルム、アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔等の金属箔、セラミックペーパー、無機繊維不織布、有機繊維不織布、ガラス繊維紙、炭素繊維紙、ロックウール紙、無機充填紙、有機繊維紙、セラミックコーティング、フッ素樹脂コーティング、シロキサン樹脂コーティング等の樹脂コーティング等を挙げることができる。被包体を断熱材とする場合、外被材の熱容量を小さくする観点から、外被材の厚みは薄い方が好ましいが、使用状況や必要な強度等に応じて適宜選択することが可能である。外被材が、コア材を使用する温度で安定なものからなる場合、使用時においても、外被材がコア材である無機混合物もしくは成形体を収容した状態である。高温で使用される被包体の場合は、使用後のコア材の取扱いがし易い観点で、耐熱性の高い外被材は好ましいが、本明細書中、「外被材」はコア材の使用時にコア材を収容しているものの他、コア材の運搬や施工の工程でコア材を収容しているものを包含する。つまり、外被材は運搬時や施工時にのみコア材を保護し、使用時には溶融及び/又は揮発してしまうものを包含するので、外被材そのものや外被材に含まれる有機成分は、コア材の使用温度で溶融や消失をしてもよい。
外被材は、被覆工程が容易である観点から、ガラスクロス、アルミナ繊維クロス、シリカクロス等の無機繊維織物、無機繊維編物、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、フッ素系樹脂フィルム等の樹脂フィルム、プラスチック−金属フィルム、アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔等の金属箔、セラミックペーパー、無機繊維不織布、有機繊維不織布、ガラス繊維紙、炭素繊維紙、ロックウール紙、無機充填紙、有機繊維紙のようなシート形状が好ましい。
被包体が高温で使用される場合、外被材は、熱的な安定性の観点から、ガラスクロス、アルミナ繊維クロス、シリカクロス等の無機繊維織物、無機繊維編物、セラミックペーパー、無機繊維不織布がより好ましい。外被材は、強度の観点から無機繊維織物がさらに好ましい。
[3−2]外被材で被覆する方法
本実施形態の成形体は、シリカ粒子を含み、使用状況に応じて大粒子、赤外線不透明化粒子や無機繊維を添加し形成した無機混合物を原料とし、この無機混合物を加圧成形してコア材とし、外被材で被覆したものでもよい。成形体をコア材とする場合は、後述するように、成形体の原料である無機混合物と外被材を共に加圧成形してもよいし、無機混合物を加圧成形した後に外被材で被覆することも可能である。
コア材を外被材で被覆する方法は特に限定されず、コア材の調製や成形と外被材での被覆を同時に実施してもよいし、コア材を調製又は成形後に外被材で被覆してもよい。
外被材が無機繊維織物、樹脂フィルム、プラスチック−金属フィルム、金属箔、セラミックペーパー、無機繊維不織布、有機繊維不織布、ガラス繊維紙、炭素繊維紙、ロックウール紙、無機充填紙、有機繊維紙等のシート状の形態である場合、例えば無機繊維糸や樹脂繊維糸等での縫合、外被材の接着固定、縫合と接着の両方で被覆することが可能である。
シート状の外被材が樹脂フィルム、プラスチック−金属フィルム、金属箔等の場合は、被覆工程の容易さの観点から、真空パックやシュリンクパックが好ましい。
外被材がセラミックコーティング、樹脂コーティング等の場合は、コア材に刷毛やスプレーで塗布することにより、コア材を外被材で被覆することが可能である。
加圧成形したコア材と外被材から構成される成形体に線状のくぼみを設け、成形体に柔軟性を付与することも可能である。線の形態は、成形体の使用状況に応じて直線状、曲線状、破線状等を選ぶことができ、これらのうち2種類以上を組み合わせてもよい。線の太さ、くぼみの深さは成形体の厚み、強度、使用状況に応じて決定される。
外被材は、コア材の表面全体を被覆していてもよいし、コア材を部分的に被覆していてもよい。
[4]用途
本実施形態のシリカ粒子とNaを含む成形体及び被包体は、断熱材の他、吸音材、防音材、遮音材、反響防止材、消音材、研磨剤、触媒担体、吸着剤、芳香剤や殺菌剤などの薬剤を吸着する担体、脱臭剤、消臭剤、調湿材、充填剤、顔料等に好適に用いることもできる。
[5]パラメータの測定
無機混合物のNaの含有率の測定、BET比表面積測定、圧縮強度の測定、熱伝導率の測定は、次の方法により実施する。
[Naの含有率の測定]
成形体をメノー乳鉢で粉砕し、30mmφ塩ビリングに充填してXRF錠剤成型器で加圧成形してタブレットを作成し、測定試料とする。これを株式会社リガク製蛍光X線分析装置RIX−3000で測定する。
[圧縮強度]
成形体を縦2cm、横2cm、厚み2cmに加工し、株式会社島津製作所製 精密万能試験機オートグラフAG−100KNを使用して、押し込み速度0.5mm/分で圧縮強度を測定する。
[熱伝導率の測定]
縦30cm、横30cm、厚み20mmの形状にした成形体を測定試料とし、30℃での熱伝導率を、ヒートフローメーター HFM 436 Lambda(商品名、NETZSCH社製)を使用して熱伝導率を測定する。較正は、JISA1412−2に従い、密度163.12kg/m、厚さ25.32mmのNIST SRM 1450c校正用標準板を使用して、高温側と低温側の温度差が20℃の条件において、15、20、24、30、40、50、60、65℃で予め実施する。800℃における熱伝導率は、JIS A 1421−1の方法に準拠して測定する。直径30cm、厚み20mmの円板状にした成形体2枚を測定試料とし、測定装置として、保護熱板法熱伝導率測定装置(英弘精機株式会社製)を使用する。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。当業者は、以下に示す実施例のみならず様々な変更を加えて実施することが可能であり、かかる変更も本発明の特許請求の範囲に包含される。なお、実施例及び比較例における無機混合物のBET比表面積の測定、Naの含有率の測定、熱伝導率の測定、圧縮度の測定は、それぞれ上述のとおりとした。
[実施例1]
Na含有率が0質量%のシリカ粉体に、0.5mol/LのNaOH水溶液を添加してロータリークラッシャーで混合した。縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.44g/cmの成形体を得られるように、内寸が縦30cm、横30cmの金型にシリカ粉体792gを充填し、加圧成形をした結果、かさ密度が0.44g/cmの成形体を得た。この成形体を900℃で3時間加熱処理を施し、実施例1の成形体とした。実施例1の成形体のNaの含有率は0.53質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0223W/m・Kであった。成形体を垂直方向に切断して縦6cm、横6cm、厚み20mmの切削体を25枚作成したが、これらのいずれの切削体にも欠けや破損はなかった。さらに、この縦6cm、横6cm、厚み20mmの切削体を切断して縦2cm、横2cm、厚み2cmに加工し、圧縮強度を測定した結果、圧縮率=5.0%における最大荷重は1.5MPaであった。
[実施例2]
Na含有率が0%のシリカ粉体(小粒子)90質量%と、Na含有率が10%のシリカ粉体(大粒子)10質量%をハンマーミルで使用して均一に混合したシリカ粉体を得た。このシリカ粉体421gを使用して実施例1と同様に加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.23g/cmの成形体を得た後、900℃で5時間加熱処理を施し、実施例2の成形体を得た。実施例2の成形体のNaの含有率は0.97質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0231W/m・Kであった。実施例2の成形体を実施例1と同様に切断して切削体を25枚作成したが、これらのいずれの切削体にも欠けや破損はなかった。さらに、実施例1と同様にして圧縮強度を測定した結果、圧縮率=3.9%においてサンプルが崩壊して破壊点を示し、この時の荷重が3.1MPaだった。なお、小粒子の平均粒子径Dは7.5nmであり、大粒子の平均粒子径Dは60μmであった。
[実施例3]
Na含有率が0質量%のシリカ粉体に、0.5mol/LのNaOH水溶液を添加してボールミルで混合して得たシリカ粉体787gを使用して実施例1と同様に加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.44g/cmの成形体を得た後、900℃で5時間加熱処理を施し、実施例3の成形体を得た。実施例3の成形体のNaの含有率は2.9質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0195W/m・Kであった。実施例3の成形体を実施例1と同様に切断して切削体を25枚作成したが、これらのいずれの切削体にも欠けや破損はなかった。さらに、実施例1と同様にして圧縮強度を測定した結果、圧縮率=5.0%における最大荷重は3.1MPaであった。
[実施例4]
Na含有率が0%のシリカ粉体(小粒子)25質量%と、Na含有率が0.1%のシリカ粉体(大粒子)75質量%をハンマーミルで使用して均一に混合して得たシリカ粉体936gを使用して実施例1と同様に加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.52g/cmの成形体を得た後、900℃で24時間加熱処理を施し、実施例4の成形体を得た。実施例4の成形体のNaの含有率は0.074質量%、30℃における熱伝導率は0.0339W/m・Kであった。実施例4の成形体を実施例1と同様に切断して切削体を25枚作成したが、これらのいずれの切削体にも欠けや破損はなかった。さらに、実施例1と同様にして圧縮強度を測定した結果、圧縮率=5.0%における最大荷重は1.1MPaであった。なお、小粒子の平均粒子径Dは7.5nmであり、大粒子の平均粒子径Dは6μmであった。
[実施例5]
Na含有率が0%のシリカ粉体(小粒子)50質量%と、Na含有率が0.34%のシリカ粉体(大粒子)50質量%をハンマーミルで均一に混合して得たシリカ粉体576gを使用して実施例1と同様に加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.32g/cmの成形体を得た後、900℃で5時間加熱処理を施し、実施例5の成形体を得た。実施例5の成形体のNaの含有率は0.17質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0421W/m・Kであった。実施例5の成形体を実施例1と同様に切断して切削体を25枚作成したが、これらのいずれの切削体にも欠けや破損はなかった。さらに、実施例1と同様にして圧縮強度を測定した結果、圧縮率=2.7%においてサンプルが崩壊して破壊点を示し、この時の荷重が2.2MPaだった。また、上記のシリカ粉体を使用して、縦30cm、横30cm、厚み20mmになるようにホットプレス機を使用して900℃で5時間加圧及び加熱を施した。得られた成形体の30℃における熱伝導率は0.0420W/m・Kであった。実施例1と同様にして切削体を25枚作成したが、これらのいずれの切削体にも欠けや破損はなかった。さらに、実施例1と同様にして圧縮強度を測定した結果、圧縮率=2.6%においてサンプルが崩壊して破壊点を示し、この時の荷重が2.2MPaだった。なお、小粒子の平均粒子径Dは14nmであり、大粒子の平均粒子径Dは150nmであった。
[実施例6]
Na含有率が0質量%のシリカ粉体(小粒子)25質量%と、Na含有率が0質量%のシリカ粉体(大粒子)75質量%をロータリークラッシャーで均一に混合した後、0.5mol/LのNaOH水溶液を添加してさらにロータリークラッシャーで混合して得たシリカ粉体1267gを使用して実施例1と同様に加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.70g/cmの成形体を得た後、1000℃で5時間加熱処理を施し、実施例6の成形体を得た。実施例6の成形体のNaの含有率は0.009質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0333W/m・Kであった。実施例6の成形体を実施例1と同様に切断して切削体を25枚作成したが、これらのいずれの切削体にも欠けや破損はなかった。さらに、実施例1と同様にして圧縮強度を測定した結果、圧縮率=5.0%における最大荷重は0.73MPaであった。なお、小粒子の平均粒子径Dは14nmであり、大粒子の平均粒子径Dは10μmであった。
[実施例7]
Naの含有率が4.15質量%のシリカ粉体を、硝酸で酸洗浄した。このシリカ粉体702gを使用して実施例1と同様に加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.39g/cmの成形体を得た後、900℃で5時間加熱処理を施し、実施例7の成形体を得た。実施例7の成形体のNaの含有率は2.3質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0310W/m・Kであった。実施例7の成形体を実施例1と同様に切断して切削体を25枚作成したが、これらのいずれの切削体にも欠けや破損はなかった。さらに、実施例1と同様にして圧縮強度を測定した結果、圧縮率=2.5%においてサンプルが崩壊して破壊点を示し、この時の荷重が7.8MPaだった。
[実施例8]
Na含有率が0質量%のシリカ粉体(小粒子)21質量%と、Na含有率が0.34%のシリカ粉体(大粒子)63質量%をハンマーミルで均一に混合した後、平均粒子径が1μmの、赤外不透明化粒子であるケイ酸ジルコニウム16質量%を添加して引き続き均一に混合し、シリカ粉体を得た。このシリカ粉体1042gを使用して実施例1と同様に加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.58g/cmの成形体を得た後、900℃で5時間加熱処理を施し、実施例8の成形体を得た。実施例8の成形体のNaの含有率は0.22質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0413W/m・Kであった。実施例8の成形体を実施例1と同様に切断して切削体を25枚作成したが、これらのいずれの切削体にも欠けや破損はなかった。さらに、実施例1と同様にして圧縮強度を測定した結果、圧縮率=4.5%においてサンプルが崩壊して破壊点を示し、この時の荷重が3.6MPaだった。また、このシリカ粉体を使用して、内径が直径30cmの円筒型の金型を使用して加圧成形を行い、直径30cm、厚み20mm、かさ密度が0.58g/cmの円板状の成形体を2枚得た。この2枚の成形体を用いて、800℃における熱伝導率を測定したところ、0.0937W/m・Kであった。なお、小粒子の平均粒子径Dは14nmであり、大粒子の平均粒子径Dは150nmであった。
[実施例9]
Na含有率が0質量%のシリカ粉体(小粒子)20質量%と、Na含有率が0.34%のシリカ粉体(大粒子)60質量%をハンマーミルで均一に混合した後、平均粒子径が1μmの、赤外不透明化粒子であるケイ酸ジルコニウム15質量%を添加して引き続き均一に混合し、さらに平均繊維径が11μmで平均繊維長が6.4mmのグラスファイバー5質量%を添加して高速せん断ミキサーで混合して均一にし、シリカ粉体を得た。このシリカ粉体702gを使用して実施例1と同様に加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.39g/cmの成形体を得た後、900℃で5時間加熱処理を施し、実施例9の成形体を得た。実施例9の成形体のNaの含有率は0.063質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0274W/m・Kであった。実施例9の成形体を実施例1と同様に切断して切削体を25枚作成したが、これらのいずれの切削体にも欠けや破損はなかった。さらに、実施例1と同様にして圧縮強度を測定した結果、圧縮率=4.4%においてサンプルが崩壊して破壊点を示し、この時の荷重が0.98MPaだった。なお、小粒子の平均粒子径Dは14nmであり、大粒子の平均粒子径Dは150nmであった。
[実施例10]
0.5mol/Lの硝酸ナトリウム水溶液を、15℃に保持した攪拌状態のコロイド粒子径10〜20nmのシリカゾル溶液(日産化学社製、商品名「スノーテックス 40」、SiO含有率:40質量%)中へ徐々に滴下し、シリカゾル、硝酸ナトリウムの混合スラリーを得た。その後、出口温度を130℃に設定したスプレードライヤー装置で混合スラリーを噴霧乾燥し固形物を得た。次いで、得られた固形物を電気炉中で室温から300℃まで2時間かけて昇温後、300℃で3時間保持した。さらに550℃まで2時間で昇温後、550℃で3時間保持して焼成した後、徐冷しシリカ粉体を得た。このシリカ粉体990gを使用して実施例1と同様に加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.55g/cmの成形体を得た後、900℃で5時間加熱処理を施し、実施例10の成形体を得た。実施例10の成形体のNaの含有率は1.7質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0357W/m・Kであった。実施例10の成形体を実施例1と同様に切断して切削体を25枚作成したが、これらのいずれの切削体にも欠けや破損はなかった。さらに、実施例1と同様にして圧縮強度を測定した結果、圧縮率=4.3%においてサンプルが崩壊して破壊点を示し、この時の荷重が2.5MPaだった。
[実施例11]
Na含有率が0%のシリカ粉体(小粒子)40質量%と、Na含有率が0.273%のシリカ粉体(大粒子)60質量%をハンマーミルで使用して均一に混合した後、コロイド粒子径が5nmのコロイダルシリカを、混合シリカ粉体の重量に対して外掛けで、固形分として10質量%添加して引き続き均一に混合し、シリカ粉体を得た。このシリカ粉体594gを使用して実施例1と同様に加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.33g/cmの成形体を得た後、1000℃で5時間加熱処理を施し、実施例11の成形体を得た。実施例11の成形体のNaの含有率は0.16質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0317W/m・Kであった。実施例11の成形体を実施例1と同様に切断して切削体を25枚作成したが、これらのいずれの切削体にも欠けや破損はなかった。さらに、実施例1と同様にして圧縮強度を測定した結果、圧縮率=3.9%においてサンプルが崩壊して破壊点を示し、この時の荷重が0.93MPaだった。なお、小粒子の平均粒子径Dは7.5nmであり、大粒子の平均粒子径Dは80nmであった。
表1に、実施例1〜11の成形体におけるK等の含有率を示す。
Figure 0005876668
[比較例1]
0.5mol/LのNaOH水溶液を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1の成形体を得た。比較例1の成形体を実施例1と同様に切断して切削体を25枚作成しようとしたが、欠けや破損がひどく、縦6cm、横6cm、厚み20mmの切削体を得ることはできなかった。さらに、実施例1と同様にして圧縮強度を測定した結果、圧縮率=0〜5%の範囲では圧縮に伴いサンプルが変形して明確な破壊点を示さず、圧縮率=5%における荷重は0.11MPaだった。
[比較例2]
シリカ粉体を酸洗浄しなかった以外は、実施例7と同様にして比較例2の成形体を得た。比較例1の成形体の30℃における熱伝導率は0.0578W/m・Kであった。
[比較例3]
加熱処理を施さなかった以外は、実施例9と同様にして比較例3の成形体を得た。比較例3の成形体を実施例1と同様に切断して切削体を25枚作成しようとしたが、切削体のうち13枚で角部分が崩壊し、得られた切削体は12枚だった。さらに、実施例1と同様にして圧縮強度を測定した結果、圧縮率=0〜5%の範囲では圧縮に伴いサンプルが変形して明確な破壊点を示さず、圧縮率=5%における荷重は0.41MPaだった。
1…被包体(断熱材)、2…コア材(成形体)、3…外被材、S…小粒子、L…大粒子。

Claims (18)

  1. シリカとナトリウムとを含有し、
    前記ナトリウムの含有率が0.005質量%以上3質量%以下であり、圧縮率0〜5%における最大荷重が0.7MPa以上であり、30℃における熱伝導率が0.05W/m・K以下である、成形体を得るための製造方法であって、
    シリカとナトリウムとを含有し、前記ナトリウムの含有率が0.005質量%以上3質量%以下である無機混合物を400℃以上の温度で加熱処理する工程を備える、成形体の製造方法
  2. シリカとナトリウムとを含有し、
    前記ナトリウムの含有率が0.005質量%以上3質量%以下であり、圧縮率0〜5%における最大荷重が0.7MPa以上であり、30℃における熱伝導率が0.05W/m・K以下である、成形体を得るための製造方法であって、
    シリカとナトリウムとを含有し、前記ナトリウムの含有率が0.005質量%以上3質量%以下である無機混合物を、成形型に収容する収容工程と、
    前記無機混合物を成形する成形工程と、を備え、
    前記成形工程は、下記の工程(a)又は工程(b)を有する、成形体の製造方法。
    (a)前記成形型により前記無機混合物を加圧しながら400℃以上に加熱する工程。
    (b)加圧により前記無機混合物を成形した後、400℃以上の温度で加熱処理を施す工程。
  3. 前記成形体がカリウムを含有し、前記カリウムの含有率が0.005質量%以上5質量%以下である、請求項1又は2に記載の成形体の製造方法
  4. 前記成形体がマグネシウムを含有し、前記マグネシウムの含有率が0.005質量%以上5質量%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形体の製造方法
  5. 前記成形体がカルシウムを含有し、前記カルシウムの含有率が0.005質量%以上2質量%以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の成形体の製造方法
  6. 前記成形体が鉄を含有し、前記鉄の含有率が0.005質量%以上6質量%以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の成形体の製造方法
  7. 前記成形体が無機繊維をさらに含有し、前記無機繊維の含有率が0.1質量%以上50質量%以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の成形体の製造方法
  8. 前記無機繊維が生体溶解性を有する、請求項に記載の成形体の製造方法
  9. 前記成形体が、平均粒子径が0.5μm以上30μm以下である赤外線不透明化粒子をさらに含有し、前記赤外線不透明化粒子の含有率が0質量%超49.5質量%以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の成形体の製造方法
  10. 前記成形体の800℃における熱伝導率が0.2W/m・K以下である、請求項に記載の成形体の製造方法
  11. シリカとナトリウムとを含有し、前記ナトリウムの含有率が0.005質量%以上3質量%以下である無機混合物を、成形型に収容する収容工程と、
    前記無機混合物を成形する成形工程と、を備え、
    前記成形工程は、下記の工程(a)又は工程(b)を有する、成形体の製造方法。
    (a)前記成形型により前記無機混合物を加圧しながら400℃以上に加熱する工程。
    (b)加圧により前記無機混合物を成形した後、400℃以上の温度で加熱処理を施す工程。
  12. 前記成形工程において、前記成形体のかさ密度が0.25g/cm以上2.0g/cm以下になるように成形圧力を設定する、請求項2又は11に記載の成形体の製造方法。
  13. シリカを含む平均粒子径Dが5nm以上30nm未満である小粒子と、ナトリウム及びシリカを含む平均粒子径Dが30nm以上50μm以下である大粒子とを混合し、前記無機混合物を得る工程をさらに備える、請求項2又は11に記載の成形体の製造方法。
  14. シリカを含む平均粒子径Dが5nm以上30nm未満である小粒子と、ナトリウム及びシリカを含む平均粒子径Dが30nm以上50μm以下である大粒子と、金属酸化物ゾルとを混合し、前記無機混合物を得る工程をさらに備える、請求項2又は11に記載の成形体の製造方法。
  15. シリカとナトリウムとを含有し、前記ナトリウムの含有率が0.005質量%以上3質量%以下である無機混合物を、成形型に収容する収容工程と、
    前記無機混合物を成形する成形工程と、
    前記成形工程により得られた成形体の一部を切削する切削工程と、を備え、
    前記成形工程が下記の工程(c)又は工程(d)を有する、切削体の製造方法。
    (c)成形体のかさ密度が0.25g/cm以上2.0g/cm以下になるように前記成形型により前記無機混合物を加圧しながら加熱する工程。
    (d)前記成形型で加圧することにより前記無機混合物を成形した後、400℃以上の温度で加熱処理を施す工程。
  16. シリカとナトリウムとを含有し、前記ナトリウムの含有率が0.005質量%以上3質量%以下である無機混合物を、成形型に収容する収容工程と、
    前記無機混合物を成形する成形工程と、
    前記成形工程により得られた成形体の一部を切削する切削工程と、を備え、
    前記成形工程が下記の工程(c)又は工程(d)を有し、
    前記成形体が、シリカとナトリウムとを含有し、前記ナトリウムの含有率が0.005質量%以上3質量%以下であり、圧縮率0〜5%における最大荷重が0.7MPa以上であり、30℃における熱伝導率が0.05W/m・K以下である、切削体の製造方法。
    (c)成形体のかさ密度が0.25g/cm 以上2.0g/cm 以下になるように前記成形型により前記無機混合物を加圧しながら加熱する工程。
    (d)前記成形型で加圧することにより前記無機混合物を成形した後、400℃以上の温度で加熱処理を施す工程。
  17. 前記成形体が、平均粒子径が0.5μm以上30μm以下である赤外線不透明化粒子をさらに含有し、前記赤外線不透明化粒子の含有率が0質量%超49.5質量%以下である、請求項16に記載の切削体の製造方法。
  18. 前記成形体の800℃における熱伝導率が0.2W/m・K以下である、請求項17に記載の切削体の製造方法。
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