JP5675507B2 - 粉体、成形体、被包体及び粉体の製造方法 - Google Patents
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Description
本実施形態の粉体は、シリカを含み、安息角が35度以上55度以下であり、30℃における熱伝導率が0.05W/m・K以下である。このような粉体は、粉体の運搬時等において振動を受け続けても、混合状態を良好に保つことが可能である。
粉体中、シリカ成分はシリカ粒子として含有されていることが好ましい。粉体中のシリカ粒子の含有率が50質量%以上であると、固体伝導による伝熱が小さいため、断熱材用途の場合は好ましい。シリカ粒子の含有率が粉体の75質量%以上であると、粉体同士の付着力が増して、粉体の飛散が少なくなるためより好ましい。なお、本明細書中、シリカ粒子とは、組成式SiO2で表される成分からなる粒子の他、SiO2を含む材料を指し、SiO2に加えて金属成分等、他の無機化合物を含有する粒子を包含する。シリカ粒子は、純粋な二酸化ケイ素に加えて、Si及び種々の他元素との塩や複合酸化物を含有してもよいし、水酸化物のような含水酸化物を含有してもよいし、シラノール基を有していてもよい。シリカ粒子中のシリカは、結晶質であっても、非晶質であっても、それらの混合体であってもよいが、断熱材用途の場合は非晶質であると、断熱材中の固体伝導による伝熱が小さく、断熱性能が高いため、好ましい。
「シリカ」や「石英」と呼ばれるケイ素の酸化物。
ケイ素の部分酸化物。
シリカアルミナやゼオライトのようなケイ素の複合酸化物。
Na、Ca、K、Mg、Ba、Ce、B、Fe及びAlのいずれかのケイ酸塩(ガラス)。
ケイ素以外の元素の酸化物、部分酸化物、塩又は複合酸化物(アルミナやチタニア等)と、ケイ素の酸化物、部分酸化物、塩又は複合酸化物との混合体。
SiCやSiNの酸化物。
例えば平均粒子径DSが5nm以上30nm以下の小粒子は、安息角が55度超の場合があるが、これに例えば平均粒子径DLが40nm以上60μm以下で安息角が30度程度の大粒子を混合すると、安息角を35度以上55度以下にし易い。また、安息角が55度超の大粒子であっても、DLが40nm以上60μm以下の大粒子をDSが5nm以上30nm以下の小粒子と混合することで、安息角を55度以下に調製することが可能である。また、大粒子は固体熱伝導が大きく、熱伝導率が0.05W/m・K超の場合があるが、これに小粒子を混合すると、得られる混合粉体の固体熱伝導は大粒子のものより小さくなり、0.05W/m・K以下になり易い傾向がある。
粉体が2種類以上のシリカ粒子を含有するようにする場合、粉体の安息角を35度以上55度以下とし、熱伝導率を0.05W/m・K以下とするように大粒子と小粒子の含有量を調整すればよく、例えば10nm程度の小粒子と5μm程度の大粒子を混合する場合、好ましくは、大粒子の質量/(小粒子の質量+大粒子の質量)を0.02〜0.95、より好ましくは0.10〜0.90、特に好ましくは0.15〜0.85とすると、熱伝導率が0.028W/m・K程度〜0.047W/m・K程度になり、熱伝導率を調整することができる。これらの粒子によって形成される空隙が空間の熱伝導のボトルネックとなり、空間の熱伝導が抑制されやすい。上述したように、直径100nm以下の空隙を有する多孔質体は、熱伝導率が低く断熱材に適していることが知られている。このような粉体を得たい場合、粒子径100nm以下の超微粒子を加圧等によって成形するのが単純である。これに対して、従来は断熱材原料として適していないとみなされていた、例えばマイクロメートルオーダーのそれほど粒子径が小さくない粒子を原料にしても、適切な量で超微粒子(小粒子)と混合することにより優れた断熱性能を発現させることが可能であることが発見された。この発見を利用するのが、本発明の好ましい態様の1つである。
粉体を成形する場合、粉体は無機繊維を含有するのが好ましい。無機繊維を含有する粉体は、加圧成形において、成形体からの粒子の脱落が少なく、生産性が高いという利点を有する。さらに、無機繊維を含有する成形体は崩壊しにくく、取り扱いやすいという利点を有する。粉体の状態においても、飛散が少ないので、取扱の上で好ましい。本明細書中、無機繊維とは平均太さに対する無機繊維の平均長さの比(アスペクト比)が10以上であるものをいう。アスペクト比は10以上であることが好ましく、粉体を成形する場合、小さい圧力で成形を可能とし、成形体の生産性を向上させる観点から50以上がより好ましく、成形体の曲げ強度の観点から100以上がさらに好ましい。無機繊維のアスペクト比は、FE−SEMにより測定した無機繊維1000本の太さ及び長さの平均値から求めることができる。無機繊維は粉体中で単分散して混合されていることが好ましいが、無機繊維が互いに絡まった状態や、複数の無機繊維が同一方向で揃った束の状態で混合されていてもかまわない。また、単分散状態において、無機繊維の向きが同一方向で揃った状態であってもかまわないが、熱伝導率を小さくする観点から、無機繊維は、伝熱方向に対して垂直方向に配向していることが好ましい。無機繊維を伝熱方向に対して垂直に配向させる方法は特に限定されないが、例えば、外被材や施工箇所に粉体を充填する場合、充填箇所へ高所から粉体を落下させて充填することにより、無機繊維が伝熱方向に対して垂直に配向しやすい傾向がある。加圧成形体の場合、例えば伝熱方向と同じ方向で加圧することにより、伝熱方向に配向していた無機繊維を、伝熱方向に対して垂直方向へ配向させやすい。
粉体は、赤外線不透明化粒子を含有することが、高い温度での断熱性能を要する場合は、好ましい。赤外線不透明化粒子とは、赤外線を反射、散乱又は吸収する材料からなる粒子を指す。断熱材に赤外線不透明化粒子が混合されていると、輻射による伝熱が抑制されるため、特に200℃以上の高い温度領域での断熱性能が高い。
粉体の安息角は35度以上55度以下である。35度未満の場合、例えば混合機の蓋等の接合部から粉体が吹き出しやすい傾向がある。安息角が55度超であると、例えば粉体の供給時において供給ラインが閉塞し、供給不能になりやすい上に、振動等の影響を受けて混合状況が変化しやすい傾向がある。この理由は定かではないが、以下のように推定される。安息角は、粉体の流動性を評価する指標とされており、安息角が小さい粉体は流動性に優れ、製造設備中の閉塞が少ないとされている。しかしながら、安息角が小さく、流動性が過剰に優れる粉体は、製造設備における微小空間に入り込み、結果として製造装置の接続箇所等からの噴出が生じると推測される。一方、安息角が大きい粉体では、例えば粉体を収納した袋中や粉体の充填箇所等において、袋内壁や充填箇所の内壁付近で流動しにくくなってしまう。すると、混合されている他の成分(特に比重が大きい粒子)が振動に伴って分離されて下層にたまり、結果として混合状態が変化してしまうと推測される。安息角は35度以上53度以下であることが好ましく、35度以上50度以下であることがより好ましく、38度以上50度以下がさらに好ましい。安息角は、後述する方法により定量することができる。
本実施態様の粉体は、30℃における熱伝導率が0.05W/m・K以下である。断熱性能の観点から、熱伝導率は0.045W/m・K以下が好ましく、0.040W/m・K以下がより好ましく、0.037W/m・K以下がさらに好ましい。赤外線不透明化粒子を含有する粉体は、特に200℃以上の高い温度領域での断熱性能を要する場合に、好ましい。粉体が赤外線不透明化粒子を含有する場合、800℃における熱伝導率は0.15W/m・K以下が好ましく、0.14W/m・K以下がより好ましく、0.13W/m・K以下がさらに好ましい。熱伝導率の測定方法は、後述する。
成形性に優れ、粉体の飛散を少なくする観点から、本実施形態の粉体におけるNaの含有率が、粉体の全質量を基準として0.005質量%以上3質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以上2質量%以下であることがより好ましく、0.005質量%以上1.5質量%以下であることがさらに好ましい。同様に、Feの含有率が0.005質量%以上6質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、0.005質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましい。また、同様に、Geの含有率が10質量ppm以上1000質量ppm以下であることが好ましく、20質量ppm以上900質量ppm以下であることがより好ましく、20質量ppm以上800質量ppm以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の粉体の製造方法は、シリカを含み、平均粒子径DSが5nm以上30nm以下である小粒子と、シリカを含み、平均粒子径DLが40nm以上60μm以下である大粒子と、を混合し、無機混合物を得る工程を有し、小粒子の安息角が25度以上80度以下であり、大粒子の安息角が25度以上80度以下であり、無機混合物に含まれる小粒子及び大粒子の全質量に対する大粒子の質量の比、すなわち、大粒子の質量/(小粒子の質量+大粒子の質量)を0.02〜0.95に調整する、製造方法である。
シリカ粒子は、シリカ成分を有する粒子であって、安息角、熱伝導率を調整したものとすることができる。例えば、シリカ粒子は、酸性又はアルカリ性の条件下での湿式法により、ケイ酸イオンを縮合して製造された粒子でもよい。シリカ粒子は、湿式法でアルコキシシランを加水分解・縮合したものでもよいし、湿式法で製造されたシリカ成分を焼成しものでもよいし、塩化物などケイ素の化合物を気相で燃焼して製造したものでもよい。シリカ粒子は、ケイ素金属やケイ素を含む原料を加熱して得られたケイ素ガスを酸化・燃焼して製造されたものでもよい。シリカ粒子は、ケイ石などを溶融して製造されたものでもよい。
ケイ酸ナトリウムを原料に酸性で作られるゲル法シリカ。
ケイ酸ナトリウムを原料にアルカリ性で作られる沈降法シリカ。
アルコキシシランの加水分解・縮合で合成されるシリカ。
ケイ素の塩化物を燃焼して作られるヒュームドシリカ。
ケイ素金属ガスを燃焼して作られるシリカ。
フェロシリコン製造時などに副生するシリカヒューム。
アーク法やプラズマ法で製造されるシリカ。
粉砕したシリカ粉末を火炎中で溶融・球状化する溶融シリカ。
シリカの製造プロセスや粉体の製造プロセス中に、Na、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sを含む化合物としてそれぞれ添加してもよいが、十分な量のNa、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sを予め含有しているシリカ粒子を粉体の原料としてもよい。Na、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sを含む化合物としては、特に限定されないが、例えばNa、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sの酸化物、複合酸化物、水酸化物、窒化物、炭化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、難溶性の塩、及びアルコキシド等が挙げられる。これらは単独で添加してもよく、もしくはこれらの混合物を添加してもよい。Na、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sを不純物として含有するシリカを含む無機化合物粒子を粉体の原料とするのは、生産性、コスト、作業性の観点から、好ましい態様である。このようなシリカを含む無機化合物粒子は、例えば沈殿法で作られたシリカゲル由来の粒子やフェロシリコン製造時などに複製するシリカヒュームとして得ることができる。
シリカ粒子、赤外線不透明化粒子及び無機繊維は、公知の粉体混合機、例えば、改訂六版 化学工学便覧(丸善)に掲載されているものを使用して混合することができる。この時、シリカを含む無機化合物粒子を2種類以上混合したり、Na、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sをそれぞれ含む化合物やその水溶液を混合したりすることも可能である。公知の粉体混合機としては、容器回転型(容器自体が回転、振動、揺動する)として水平円筒型、V型(攪拌羽根が付いていてもよい)、ダブルコーン型、立方体型及び揺動回転型、機械撹拌型(容器は固定され、羽根などで撹拌する)として、単軸リボン型、複軸パドル型、回転鋤型、二軸遊星攪拌型、円錐スクリュー型、高速撹拌型、回転円盤型、ローラー付き回転容器型、撹拌付き回転容器型、高速楕円ローター型、流動撹拌型(空気、ガスによって撹拌する)として、気流撹拌型、重力による無撹拌型が挙げられる。これらの混合機を組み合わせて使用してもよい。
成形体は、上記本実施形態の粉体を含有する。このような成形体は、均一な混合状態を維持できる本実施形態の粉体が含有されてなるものであるため、成形体毎に混合組成が変化してしまうことによる性能のばらつきを抑制することが可能であり、歩留まりを向上することができる。
粉体を加圧成形して成形体を製造する場合、金型プレス成形法(ラム式加圧成形法)、ラバープレス法(静水圧成形法)、押出成形法など、従来から知られるセラミックス加圧成形法によって成形することができる。生産性の観点から、金型プレス成形法が好ましい。
得られる成形体のかさ密度は、運搬時の負担を軽減する観点から0.25g/cm3〜2.0g/cm3になるように設定するのが好ましい。成形の条件を加圧圧力で制御しようとすると、使用する粉体のすべり性、粉体の粒子間や細孔への空気の取り込み量等によって、加圧した状態で保持する時間の経過に伴って圧力値が変化してしまうため、生産管理が困難になる傾向がある。これに対し、かさ密度を制御する方法は、時間の制御を要することなく得られる成形体の荷重を目標値にし易い点で好ましい。成形体のかさ密度は、0.25g/cm3〜1.7g/cm3がより好ましく、0.25g/cm3〜1.5g/cm3がさらに好ましい。
一般化すると、体積αcm3で、かさ密度がβg/cm3(ただし、βは粉体のかさ密度より大きい)の成形体を製造する場合、αβgだけ、粉体を秤量し、体積αまで粉体を圧縮することによって、成形する。
被包体は、外被材と、外被材に収容された粉体及び/又は粉体からなる成形体と、を有する。被包体は粉体や成形体と比較して取扱が容易で、施工もしやすいという利点を有する。図1は、本実施形態に係る被包体の断面模式図である。また、図2は本実施形態に係る成形体が含有する小粒子及び大粒子の断面模式図である。図1及び図2に示すように、本実施形態の被包体1は、複数の小粒子Sと、小粒子Sよりも粒子径が大きい複数の大粒子Lと、を含有する成形体2と、成形体2を収容する外被材3から構成される。成形体2内において、小粒子S及び大粒子Lは混合されており、大粒子Lの周囲に小粒子Sが存在している。なお、このような成形体2をコア材という場合がある。
外被材は、コア材である粉体及び/又は成形体を収容可能な限り、特に限定されないが、例として、ガラスクロス、アルミナ繊維クロス、シリカクロス等の無機繊維織物、無機繊維編物、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、フッ素系樹脂フィルム等の樹脂フィルム、プラスチック−金属フィルム、アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔等の金属箔、セラミックペーパー、無機繊維不織布、有機繊維不織布、ガラス繊維紙、炭素繊維紙、ロックウール紙、無機充填紙、有機繊維紙、セラミックコーティング、フッ素樹脂コーティング、シロキサン樹脂コーティング等の樹脂コーティング等を挙げることができる。被包体を断熱材とする場合、外被材の熱容量を小さくする観点から、外被材の厚みは薄い方が好ましいが、使用状況や必要な強度等に応じて適宜選択することが可能である。外被材が、コア材を使用する温度で安定なものからなる場合、使用時においても、外被材がコア材である粉体もしくは成形体を収容した状態である。高温で使用される被包体の場合は、使用後のコア材の取扱いがし易い観点で、耐熱性の高い外被材は好ましいが、本明細書中、「外被材」はコア材の使用時にコア材を収容しているものの他、コア材の運搬や施工の工程でコア材を収容しているものを包含する。つまり、外被材は運搬時や施工時にのみコア材を保護し、使用時には溶融及び/又は揮発してしまうものを包含するので、外被材そのものや外被材に含まれる有機成分は、コア材の使用温度で溶融や消失をしてもよい。
粉体は、シリカ粒子を含み、使用状況に応じて大粒子、赤外線不透明化粒子や無機繊維を添加し形成した粉体をコア材として、袋状やチューブ状に加工した外被材に充填したものでもよいし、この粉体を加圧成形してコア材とし、外被材で被覆したものでもよい。粉体をコア材とする場合、外被材が形成する容積に対する粉体の充填率は、粉体を使用する対象物に応じて適宜設定することが可能である。成形体をコア材とする場合は、後述するように、粉体と外被材を共に加圧成形してもよいし、粉体を加圧成形した後に外被材で被覆することも可能である。
本実施形態のシリカ粒子を含む粉体、成形体及び被包体は、断熱材の他、吸音材、防音材、遮音材、反響防止材、消音材、研磨剤、触媒担体、吸着剤、芳香剤や殺菌剤などの薬剤を吸着する担体、脱臭剤、消臭剤、調湿材、充填剤、顔料等に好適に用いることもできる。
粉体の安息角の測定、熱伝導率の測定は、次の方法により実施する。粉体の混合状態の評価は、次の方法により評価する。
円筒回転法による安息角測定器(筒井理化学器械株式会社製)を用いて測定する。500ccのガラス製試料容器(円筒形測定瓶)に粉体を250cc充填し、それを測定器のローラー部上に円筒形測定瓶の側面とローラーとが接するように、かつ円筒形測定瓶の中心軸が水平になるように置く。次いで、ローラー部を2.4rpmで、回転させて円筒形測定瓶の中心軸を中心に回転させながら、円筒形測定瓶内部の粉体層の表面が水平面となす角度を測定する。
縦30cm、横30cm、厚み5cmの発泡スチロールの中心部を縦24cm、横24cmの正方形状にくりぬき、発泡スチロールの枠を形成する。枠の一方に縦30cm、横30cmのアルミ箔を貼り付けて凹部を形成し、試料台とする。なお、アルミ箔で覆った面を試料台の底面とし、発泡スチロールの厚み方向に対するもう一方の面を天井面とする。粉体をタップや加圧をせずに凹部へ疎充填し、すりきりにした後、天井面に縦30cm、横30cmのアルミ箔をのせたものを測定試料とする。測定試料を用いて、30℃での熱伝導率を、ヒートフローメーター HFM 436 Lambda(商品名、NETZSCH社製)を使用して熱伝導率を測定する。較正は、JISA1412−2に従い、密度163.12kg/m3、厚さ25.32mmのNIST SRM 1450c校正用標準板を使用して、高温側と低温側の温度差が20℃の条件において、15、20、24、30、40、50、60、65℃で予め実施する。成形体を測定する場合は、縦30cm、横30cm、厚み20mmの形状にした成形体を測定試料とする。800℃における熱伝導率は、JIS A 1421−1の方法に準拠して測定する。直径30cm、厚み20mmの円板状にした成形体2枚を測定試料とし、測定装置として、保護熱板法熱伝導率測定装置(英弘精機株式会社製)を使用する。
容量が19L(径280mm、高さ380mm、HDPE製)の円筒型タンクにタップや加圧をせずに粉体18Lを充填し、振動試験装置(恒温恒湿槽連動)(型式:J230/SA3M 、Syn−3HA−40 IMV株式会社製)を用いて、JIS Z 0232のランダム振動試験方法に準拠して測定する。加速度パワースペクトル密度はJIS Z 0232の附属書A表1に示されている加速度パワースペクトル密度に従い、振動時間は30分間とする。前述の条件で振動させた後、充填した粉体層を3等分してそれぞれ上部、中部、下部とし、ぞれぞれの粉体層における粉体のBET比表面積を測定する。粉体のBET比表面積測定は、ユアサ・アイオニクス社製のガス吸着量測定装置「オートソーブ3MP」(商品名)により、吸着ガスとして窒素を用いて、粉体の比表面積を測定する(窒素吸着法)。比表面積はBET法を採用する。振動によって粉体の混合状態が変化し、各々の構成粒子が分離・偏析すると、これに伴ってBET比表面積が変化する。振動によって混合状態が変化し、混合粉体のうち例えば粒子径の小さい粒子が偏在した箇所のBET比表面積は、振動前のBET比表面積に比較して大きくなる傾向がある。一方、粒子径の大きい粒子や、無機繊維のような比表面積が小さい物質が偏在した箇所のBET比表面積は、振動前のBET比表面積に比較して小さくなる傾向がある。本発明者が検討したところ、振動前の粉体のBET比表面積を1とした場合に、振動後のBET比表面積が1±0.1超であると、粉体の断熱性能にばらつきが見られたことから、振動前の粉体のBET比表面積を1とした場合、上部、中部、下部のいずれにおいてもBET比表面積が1±0.1以内であれば混合状態が均一に保持されているとし、上部、中部、下部のうち一箇所以上1±0.1超であれば混合状態が保持されていないとする。
安息角が62度、平均粒子径が14nmのシリカ粉体57質量%と、安息角が29度、平均粒子径が60μmのシリカ粉体43質量%をハンマーミルで均一に混合し、実施例1の粉体を得た。この粉体の安息角は53度であり、30℃における熱伝導率は0.0223W/m・Kであった。実施例1の粉体について振動試験前後のBET比表面積を比較したところ、振動試験前のBET比表面積に対して、振動試験後の粉体の上部、中部、下部のBET比表面積はそれぞれ1.08、0.97、0.92であり、混合状態は均一に保持されていた。この粉体702gを使用して、内寸が縦30cm、横30cmの金型で加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.39g/cm3の成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0225W/m・Kであった。
安息角が62度、平均粒子径が14nmのシリカ粉体25質量%と、安息角が61度、平均粒子径が10μmのシリカ粉体75質量%をハンマーミルで均一に混合し、実施例2の粉体を得た。この粉体の安息角は40度であり、30℃における熱伝導率は0.0313W/m・Kであった。この粉体について振動試験前後のBET比表面積を比較したところ、振動試験前のBET比表面積に対して、振動試験後の粉体の上部、中部、下部のBET比表面積はそれぞれ1.07、1.04、0.96であり、混合状態は均一に保持されていた。この粉体1267gを使用して、実施例1と同じ金型で加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.70g/cm3の成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0314W/m・Kであった。
安息角が62度、平均粒子径が14nmのシリカ粉体50質量%と、安息角が65度、平均粒子径が150nmのシリカ粉体50質量%をハンマーミルで均一に混合し、実施例3の粉体を得た。この粉体の安息角は41度であり、30℃における熱伝導率は0.0214W/m・Kであった。この粉体について振動試験前後のBET比表面積を比較したところ、振動試験前のBET比表面積に対して、振動試験後の粉体の上部、中部、下部のBET比表面積はそれぞれ1.05、1.01、0.97であり、混合状態は均一に保持されていた。この粉体576gを使用して、実施例1と同じ金型で加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.32g/cm3の成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0211W/m・Kであった。
安息角が65度、平均粒子径が7.5nmのシリカ粉体50質量%と、安息角が61度、平均粒子径が80nmのシリカ粉体50質量%をハンマーミルで均一に混合し、実施例4の粉体を得た。この粉体の安息角は43度であり、30℃における熱伝導率は0.0199W/m・Kであった。この粉体について振動試験前後のBET比表面積を比較したところ、振動試験前のBET比表面積に対して、振動試験後の粉体の上部、中部、下部のBET比表面積はそれぞれ1.06、1.02、0.98であり、混合状態は均一に保持されていた。この粉体594gを使用して、実施例1と同じ金型で加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.33g/cm3の成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0198W/m・Kであった。
安息角が62度、平均粒子径が14nmのシリカ粉体21質量%と、安息角が65度、平均粒子径が150nmのシリカ粉体63質量%をハンマーミルで均一に混合した後、平均粒子径が1μmの、赤外不透明化粒子であるケイ酸ジルコニウム16質量%を添加して引き続き均一に混合し、実施例5の粉体を得た。この粉体の安息角は46度であり、30℃における熱伝導率は0.0273W/m・Kであった。この粉体について振動試験前後のBET比表面積を比較したところ、振動試験前のBET比表面積に対して、振動試験後のシリカ粉体の上部、中部、下部のBET比表面積はそれぞれ1.07、1.03、0.95であり、混合状態は均一に保持されていた。この粉体1042gを使用して、実施例1と同じ金型で加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.58g/cm3の成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0275W/m・Kであった。また、この粉体819gずつ使用して、内径が直径30cmの円筒型の金型を使用して加圧成形を行い、直径30cm、厚み20mmの円板状の成形体を2枚得た。この2枚の成形体を用いて、800℃における熱伝導率を測定したところ、0.0851W/m・Kであった。
安息角が62度、平均粒子径が14nmのシリカ粉体20質量%と、安息角が68度、平均粒子径が6μmのシリカ粉体60質量%をハンマーミルで均一に混合した後、平均粒子径が1μmの、赤外不透明化粒子であるケイ酸ジルコニウム15質量%を添加して引き続き均一に混合し、さらに平均繊維径が11μmで平均繊維長が6.4mmのグラスファイバー5質量%を添加して高速せん断ミキサーで混合して均一にし、実施例6の粉体を得た。この粉体の安息角は46度であり、30℃における熱伝導率は0.0315W/m・Kであった。この粉体について振動試験前後のBET比表面積を比較したところ、振動試験前のBET比表面積に対して、振動試験後のシリカ粉体の上部、中部、下部のBET比表面積はそれぞれ1.03、0.98、0.94であり、混合状態は均一に保持されていた。この粉体491gを使用して、実施例1と同じ金型で加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.27g/cm3の成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0311W/m・Kであった。
安息角が65度、平均粒子径が7.5nmのシリカ粉体19質量%と、安息角が61度、平均粒子径が80nmのシリカ粉体57質量%をハンマーミルで均一に混合した後、平均粒子径が1μmの、赤外不透明化粒子であるケイ酸ジルコニウム14質量%を添加して引き続き均一に混合し、さらに平均繊維径が11μmで平均繊維長が6.4mmのグラスファイバー10質量%を添加して高速せん断ミキサーで混合して均一にし、実施例7の粉体を得た。この粉体の安息角は47度であり、30℃における熱伝導率は0.0273W/m・Kであった。このシリカ粉体について振動試験前後のBET比表面積を比較したところ、振動試験前のBET比表面積に対して、振動試験後のシリカ粉体の上部、中部、下部のBET比表面積はそれぞれ1.04、0.97、0.95であり、混合状態は均一に保持されていた。この粉体970gを使用して、実施例1と同じ金型で加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.54g/cm3の成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0272W/m・Kであった。
安息角が62度、平均粒子径が14nmのシリカ粉体90質量%と、安息角が29度、平均粒子径が60μmのシリカ粉体10質量%をハンマーミルで使用して均一に混合し、比較例1の粉体を得た。この粉体の安息角は58度であり、30℃における熱伝導率は0.0200W/m・Kであった。この粉体について振動試験前後のBET比表面積を比較したところ、振動試験前のBET比表面積に対して、振動試験後の粉体の上部、中部、下部のBET比表面積はそれぞれ1.13、1.03、0.87であり、混合状態は保持されていなかった。
安息角が62度、平均粒子径が14nmのシリカ粉体80質量%と、平均粒子径が1μmの、赤外不透明化粒子であるケイ酸ジルコニウム15質量%をハンマーミルで混合して均一にした後、さらに平均繊維径が11μmで平均繊維長が6.4mmのグラスファイバー5質量%を添加して高速せん断ミキサーで混合して均一にし、比較例2の粉体を得た。この粉体の安息角は71度であり、30℃における熱伝導率は0.0219W/m・Kであった。この粉体について振動試験前後のBET比表面積を比較したところ、振動試験前のBET比表面積に対して、振動試験後の粉体の上部、中部、下部のBET比表面積はそれぞれ1.15、0.99、0.86であり、混合状態は保持されていなかった。
安息角が29度、平均粒子径が60μmのシリカ粉体の30℃における熱伝導率は0.814W/m・Kであった。
Claims (13)
- シリカを含み、安息角が35度以上55度以下であり、30℃における熱伝導率が0.05W/m・K以下である粉体。
- 赤外線不透明化粒子を含有し、800℃における熱伝導率が0.15W/m・K以下である、請求項1に記載の粉体。
- 前記赤外線不透明化粒子の平均粒子径が0.5μm以上30μm以下であり、前記赤外線不透明化粒子の含有率が、粉体の全質量を基準として、0.1質量%以上39.5質量%以下である、請求項2に記載の粉体。
- ナトリウムを含有し、前記ナトリウムの含有量が、粉体の全質量を基準として、0.005質量%以上3質量%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉体。
- 鉄を含有し、前記鉄の含有量が、粉体の全質量を基準として、0.005質量%以上6質量%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉体。
- 無機繊維を含有し、前記無機繊維の含有量が、粉体の全質量を基準として0.1質量%以上50質量%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粉体。
- 前記無機繊維が生体溶解性を有する、請求項6に記載の粉体。
- ゲルマニウムを含有し、前記ゲルマニウムの含有量が、粉体の全質量を基準として、10質量ppm以上1000質量ppm以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の粉体。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載の粉体を含有する成形体。
- 外被材と、
該外被材に収容された請求項1〜8のいずれか一項に記載の粉体及び/又は請求項9に記載の成形体と、
を備える被包体。 - 前記外被材が無機繊維を含む、請求項10に記載の被包体。
- 前記外被材が樹脂フィルムである、請求項10に記載の被包体。
- シリカを含み、平均粒子径DSが5nm以上30nm以下である小粒子と、シリカを含み、平均粒子径DLが40nm以上60μm以下である大粒子と、を混合し、無機混合物を得る工程を有し、
前記小粒子の安息角が25度以上80度以下であり、前記大粒子の安息角が25度以上80度以下であり、前記無機混合物に含まれる前記小粒子及び前記大粒子の全質量に対する前記大粒子の質量の比を0.02〜0.95に調整する、
粉体の製造方法。
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