JP5675507B2 - 粉体、成形体、被包体及び粉体の製造方法 - Google Patents

粉体、成形体、被包体及び粉体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、粉体、その成形体、被包体及び粉体の製造方法に関する。
室温での空気分子の平均自由行程は約100nmである。従って、直径100nm以下の空隙を有する多孔質体内では、空気による対流や伝導による伝熱が抑制されるため、このような多孔質体は優れた断熱作用を示す。
この断熱作用の原理に従い、超微粒子は熱伝導率が低く断熱材に適していることが知られている。例えば、下記特許文献1には、微孔性絶縁物質、赤外線遮蔽剤、粒状の絶縁性フィラー物質の混合物からなる、熱絶縁物質とその製造方法が開示されている。
特表2008−533402公報
しかしながら、特許文献1記載の断熱材のように複数の物質が混合されている場合、混合物を車両等で運搬する際に、振動等の影響を受けて混合状況が変化し、例えば袋に収納して運搬している場合、収納している袋中の上部と下部を比較した場合、混合状況が異なってしまうことがある。例えば安息角が大き過ぎると、粉体を収納した袋中や粉体の充填箇所等において、袋内壁や充填箇所の内壁付近で流動しにくくなってしまう。すると、混合されている他の成分(特に比重が大きい粒子)が振動に伴って分離されて下層にたまり、結果として混合状態が変化してしまう。またこの問題は、運搬時に限って生じるものではなく、粉体の状態のまま断熱材として使用する態様の場合も、長年に渡って振動を受け続けることで混合状態に変化が生じて断熱性能の低下を招く場合もある。
混合状態が変化すると、混合粉体の組成が袋中の上部と下部とで異なることになり、粉体の使用時に、例えば所定の断熱性能を示さないといった問題が発生する。これらの粉体を原料として成形する場合についても、成形体毎に混合組成が変化してしまうことになり、性能のばらつきが大きいために頻繁に不良が発生し、歩留まりが低下するので好ましくない。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、均一な混合状態を維持できる粉体を提供することを目的とする。また、上記粉体を含有する成形体、上記粉体及び/又は上記成形体が外被材に収容された被包体、並びに上記粉体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、従来技術を踏まえ、その課題の克服のために鋭意検討した結果、低い熱伝導率を有するシリカ粉体の安息角を適切に設定することで、混合状態が変化しにくい粉体が得られることに想到し、本発明に想到した。すなわち、本発明は以下に示すとおりの粉体、その成形体、被包体及び粉体の製造方法である。
本発明の粉体は、シリカを含み、安息角が35度以上55度以下であり、30℃における熱伝導率が0.05W/m・K以下である。このような粉体であれば均一な混合状態を維持することが可能である。
上記本発明の粉体で、赤外線不透明化粒子を含有する粉体は、800℃における熱伝導率が0.15W/m・K以下であることが好ましい。
上記本発明の粉体に含まれる赤外線不透明化粒子の平均粒子径は、0.5μm以上30μm以下であることが好ましく、赤外線不透明化粒子の含有率は、粉体の全質量を基準として、0.1質量%以上39.5質量%以下であることが好ましい。
上記本発明の粉体はナトリウム(Na)を含有し、ナトリウム(Na)の含有量が、粉体の全質量を基準として、0.005質量%以上3質量%以下であることが好ましい。
上記本発明の粉体は鉄(Fe)を含有し、鉄(Fe)の含有量が、粉体の全質量を基準として、0.005質量%以上6質量%以下であることが好ましい。
上記本発明の粉体は、無機繊維をさらに含有し、無機繊維の含有量が、粉体の全質量を基準として、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
上記本発明の粉体に含まれる無機繊維は、生体溶解性を有することが好ましい。
上記本発明の粉体はゲルマニウム(Ge)を含有し、ゲルマニウム(Ge)の含有量が、粉体の全質量を基準として、10質量ppm以上1000質量ppm以下であることが好ましい。
本発明の成形体は、上記粉体を含有する。このような成形体は、均一な混合状態を維持できる本発明の粉体が含有されてなるものであるため、成形体毎に混合組成が変化してしまうことによる性能のばらつきを抑制することが可能であり、歩留まりを向上することができる。
本発明の被包体は、外被材と、外被材に収容された上記粉体及び/又は上記成形体と、を備える。このような被包体は、本発明の粉体や成形体の優れた特徴を備えているだけでなく、粉体や成形体よりも取扱いがより容易であるため、施工性にも優れている。
上記本発明の被包体において、外被材は無機繊維を含むことが好ましい。
上記本発明の被包体において、外被材は樹脂フィルムであることが好ましい。
上記本発明の粉体の製造方法は、シリカを含み、平均粒子径Dが5nm以上30nm以下である小粒子と、シリカを含み、平均粒子径Dが40nm以上60μm以下である大粒子と、を混合し、無機混合物を得る工程を有し、小粒子の安息角が25度以上80度以下であり、大粒子の安息角が25度以上80度以下であり、無機混合物に含まれる小粒子及び大粒子の全質量に対する大粒子の質量の比を0.02〜0.95に調整する、製造方法である。本製造方法によれば、均一な混合状態を維持することが可能な粉体を製造することができる。
本発明によると、均一な混合状態を維持できる粉体を提供することができる。また、上記粉体を含有する成形体、上記粉体及び/又は上記成形体が外被材に収容された被包体、並びに上記粉体の製造方法を提供することができる。本発明の粉体を原料として作製した成形体は断熱性能のばらつきが少ない。被包体に加工しても、混合状態の保持性に優れている。
本発明の一実施形態に係る被包体の断面模式図である。 本発明の一実施形態に係る成形体が含有する小粒子及び大粒子の断面模式図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[1]粉体
本実施形態の粉体は、シリカを含み、安息角が35度以上55度以下であり、30℃における熱伝導率が0.05W/m・K以下である。このような粉体は、粉体の運搬時等において振動を受け続けても、混合状態を良好に保つことが可能である。
[1−1]シリカ(シリカ粒子)
粉体中、シリカ成分はシリカ粒子として含有されていることが好ましい。粉体中のシリカ粒子の含有率が50質量%以上であると、固体伝導による伝熱が小さいため、断熱材用途の場合は好ましい。シリカ粒子の含有率が粉体の75質量%以上であると、粉体同士の付着力が増して、粉体の飛散が少なくなるためより好ましい。なお、本明細書中、シリカ粒子とは、組成式SiOで表される成分からなる粒子の他、SiOを含む材料を指し、SiOに加えて金属成分等、他の無機化合物を含有する粒子を包含する。シリカ粒子は、純粋な二酸化ケイ素に加えて、Si及び種々の他元素との塩や複合酸化物を含有してもよいし、水酸化物のような含水酸化物を含有してもよいし、シラノール基を有していてもよい。シリカ粒子中のシリカは、結晶質であっても、非晶質であっても、それらの混合体であってもよいが、断熱材用途の場合は非晶質であると、断熱材中の固体伝導による伝熱が小さく、断熱性能が高いため、好ましい。
シリカ粒子の具体例としては、下記のものが挙げられる。
「シリカ」や「石英」と呼ばれるケイ素の酸化物。
ケイ素の部分酸化物。
シリカアルミナやゼオライトのようなケイ素の複合酸化物。
Na、Ca、K、Mg、Ba、Ce、B、Fe及びAlのいずれかのケイ酸塩(ガラス)。
ケイ素以外の元素の酸化物、部分酸化物、塩又は複合酸化物(アルミナやチタニア等)と、ケイ素の酸化物、部分酸化物、塩又は複合酸化物との混合体。
SiCやSiNの酸化物。
粉体を断熱材としてする場合、使用される温度においてシリカ粒子が熱的に安定であることが好ましい。具体的には、断熱材の使用最高温度において1時間保持したときに、シリカ粒子の重量が10%以上減少しないことが好ましい。また、シリカ粒子は、断熱材として使用する場合に断熱性能を維持する観点や、成形体の形状保持の観点から、耐水性を有することが好ましい。具体的には、25℃の水100gに対するシリカ粒子の溶解量が0.1g未満であることが好ましく、0.01g未満であることがより好ましい。
シリカ粒子の比重は、粉体を断熱材とする場合、2.0以上4.0以下であることが好ましい。2.0以上3.0以下であると、断熱材のかさ密度が小さいためより好ましく、2.0以上2.5以下であるとさらに好ましい。ここで、シリカを含む無機化合物粒子の比重は、ピクノメーター法により求まる真比重を指す。
粉体の用途によっては、粉体がシリカ粒子以外の材料を含有してもよい。シリカ粒子以外の材料については後で詳述するが、粉体がシリカ粒子以外の材料を含有する場合、シリカ粒子の含有量は、粉体の全質量を基準として50質量%以上99.9質量%以下であることが好ましい。シリカ粒子の含有量が50質量%以上97.5質量%以下で無機繊維や赤外線不透明化粒子を含有する粉体は、粉体の飛散の減少や高い温度での断熱性能の向上といった効果がより好適にあらわれ、より好ましい。含有量が60質量%以上97.5質量%以下であると、粉体のかさ密度がより小さいため、さらに好ましい。
一般的に、粒子径が30nm以下のシリカ粒子(以下、「小粒子」)は安息角が大きい傾向がある。この理由について、本発明者は、粒子径が30nm以下のシリカ粒子は凝集しやすいため、安息角が大きくなると想定している。そのため、小粒子のみからなる粉体は、55度以下という安息角を満たす粉体を得難いことから、比較的粒子径が大きく、安息角が小さいシリカ粒子(以下、「大粒子」)と混合することで、粉体の安息角を調整するのが好ましい。小粒子と混合した場合に、粉体全体の安息角を調整し易い観点で、大粒子の粒子径は40nm以上60μm以下が好ましい。なお、安息角は粒子間摩擦、又は粒子間の運動に対する抵抗に関係する特性値であり、粒度分布、粒子の表面粗度、粉体層の空隙率、水分等の影響を受ける。従って、粒子の性状によっては、大粒子のみからなる粉体であっても55度以下という安息角を満たさない場合がある。ところが、安息角55度超の大粒子と、安息角55度超の小粒子を混合することで、意外なことに、安息角を55度以下にすることが可能であることを本発明者は発見した。この理由は定かではないが、粒子径の異なる粒子が混合されることで、粒子同士の物理摩擦角である粒子間摩擦角や、粉体内部における層同士の摩擦角である内部摩擦角等が変化することにより、混合状態での安息角が低下すると推測している。
すなわち、粉体はシリカ粒子を一種のみ含有してもよいし、2種類以上を含んでもよいが、粒子径の異なる2種類の粒子、すなわちシリカからなる小粒子と大粒子を含有する場合、小粒子のみ又は大粒子のみで存在する場合とは安息角や熱伝導率が異なるので、適当な割合で2種類の粒子を混合することで安息角及び/又は熱伝導率を調整することができる。
例えば平均粒子径Dが5nm以上30nm以下の小粒子は、安息角が55度超の場合があるが、これに例えば平均粒子径Dが40nm以上60μm以下で安息角が30度程度の大粒子を混合すると、安息角を35度以上55度以下にし易い。また、安息角が55度超の大粒子であっても、Dが40nm以上60μm以下の大粒子をDが5nm以上30nm以下の小粒子と混合することで、安息角を55度以下に調製することが可能である。また、大粒子は固体熱伝導が大きく、熱伝導率が0.05W/m・K超の場合があるが、これに小粒子を混合すると、得られる混合粉体の固体熱伝導は大粒子のものより小さくなり、0.05W/m・K以下になり易い傾向がある。
上述のように、複数の種類の粒子を混合する場合、得られる混合粉体の安息角や熱伝導率は混合前のものとは異なるので、シリカ粒子を段階的に混合し、粉体の安息角や熱伝導率を適宜測定し、安息角35度以上55度以下、熱伝導率0.05W/m・K以下になるように粉体の混合比率を調整するのが好ましい。
粉体が2種類以上のシリカ粒子を含有するようにする場合、粉体の安息角を35度以上55度以下とし、熱伝導率を0.05W/m・K以下とするように大粒子と小粒子の含有量を調整すればよく、例えば10nm程度の小粒子と5μm程度の大粒子を混合する場合、好ましくは、大粒子の質量/(小粒子の質量+大粒子の質量)を0.02〜0.95、より好ましくは0.10〜0.90、特に好ましくは0.15〜0.85とすると、熱伝導率が0.028W/m・K程度〜0.047W/m・K程度になり、熱伝導率を調整することができる。これらの粒子によって形成される空隙が空間の熱伝導のボトルネックとなり、空間の熱伝導が抑制されやすい。上述したように、直径100nm以下の空隙を有する多孔質体は、熱伝導率が低く断熱材に適していることが知られている。このような粉体を得たい場合、粒子径100nm以下の超微粒子を加圧等によって成形するのが単純である。これに対して、従来は断熱材原料として適していないとみなされていた、例えばマイクロメートルオーダーのそれほど粒子径が小さくない粒子を原料にしても、適切な量で超微粒子(小粒子)と混合することにより優れた断熱性能を発現させることが可能であることが発見された。この発見を利用するのが、本発明の好ましい態様の1つである。
シリカ粒子の粒子径は、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)で観察することにより測定できる。小粒子の平均粒子径D、大粒子の平均粒子径Dは、小粒子、大粒子各1000個をFE−SEMで観察し、その等面積円相当径を求めて数平均を算出することにより、求めることができる。シリカ粒子の固体伝導の観点から、シリカ粒子の平均粒子径は5nm以上60μm以下であることが好ましく、5nm以上40μm以下であることがより好ましく、5nm以上30μm以下であることがさらに好ましい。
大粒子と小粒子を含有する粉体においては、小粒子の平均粒子径Dは、5nm以上30nm以下であることが好ましい。Dが5nm以上であると、Dが上記の数値範囲外である場合に比べて、小粒子が化学的に安定である傾向があり、断熱性能が安定しやすい傾向がある。Dが30nm以下であると、Dが上記の数値範囲外である場合に比べて、小粒子同士の接触面積が小さく、粉体の固体伝導による伝熱が少なく、熱伝導率が小さい傾向がある。Dは、5nm以上25nm以下であると、熱伝導率の観点からより好ましく、5nm以上20nm以下であるとさらに好ましい。
大粒子の平均粒子径Dは、D<Dを満たし、40nm以上60μm以下であることが好ましい。Dは、前述のDと同じ方法により求められる。Dが40nm以上であると、粉体を成形した場合に成形体におけるスプリングバックが小さい傾向がある。Dが60μm以下であると、熱伝導率が小さい傾向がある。大粒子の平均粒子径Dは、40nm以上10μm以下であると、粉体が無機繊維や赤外線不透明化粒子を含む場合にこれらとの均一な混合が容易であるため、より好ましい。Dは、40nm以上5μm以下であると、粒子の付着力が大きく、粉体からの粒子の脱落が少ないため、さらに好ましい。
がDの2倍以上であると、粉体を成形した場合にスプリングバックが小さくなるため、好ましい。DはDの3倍以上であると、小粒子と大粒子の混合粉体のかさ比重が大きく、粉体体積が小さいと作業性が高いので、より好ましい。DはDの4倍以上であると、小粒子と大粒子の粒径の差が大きく、小粒子と大粒子を混合した際に大粒子の小粒子に対する分散が容易であるので、さらに好ましい。粉体が断熱材用途の場合、粒子の凝集による固体伝熱の観点から、各々の粒子が分散していることが好ましい。
粉体は、水が粉体や成形体に浸み込んだ場合にハンドリング性の低下や成形体の変形、ひび割れ等が起こるのを抑制する観点から、撥水剤を含むことが好ましい。撥水剤としては、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、アクリル・エチレン共重合体ワックス等のワックス系撥水剤;シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、アルキルアルコキシシラン等のシリコン系撥水剤;パーフロロアルキルカルボン酸塩、パーフロロアルキルリン酸エステル、パーフロロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のフッ素系撥水剤、アルキル基やパーフルオロ基を含むアルコキシシラン等のシランカップリング剤、トリメチルシリルクロライドや1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン等のシリル化剤が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。これらはそのまま用いてもよいし、溶液やエマルジョンの形態で用いることも可能である。このうち、ワックス系撥水剤、シリコン系撥水剤が好ましく用いられる。粉体中の撥水剤の含有率は、十分な撥水効果を付与する観点から、粉体全体の質量/撥水剤の質量比は100/30〜100/0.1が好ましく、100/20〜100/0.5がより好ましく、100/10〜100/1がさらに好ましい。撥水剤の添加方法は特に限定されないが、例えば、これらの撥水剤を水又はアルコール等の溶媒で希釈したものを添加しながら粉体を攪拌後乾燥する方法、粉体を水又はアルコール等の溶媒に分散させてスラリーとし、そこへ撥水剤を添加して攪拌及び濾過後、乾燥する方法や、クロロトリメチルシラン等での蒸気処理が挙げられる。
[1−2]無機繊維
粉体を成形する場合、粉体は無機繊維を含有するのが好ましい。無機繊維を含有する粉体は、加圧成形において、成形体からの粒子の脱落が少なく、生産性が高いという利点を有する。さらに、無機繊維を含有する成形体は崩壊しにくく、取り扱いやすいという利点を有する。粉体の状態においても、飛散が少ないので、取扱の上で好ましい。本明細書中、無機繊維とは平均太さに対する無機繊維の平均長さの比(アスペクト比)が10以上であるものをいう。アスペクト比は10以上であることが好ましく、粉体を成形する場合、小さい圧力で成形を可能とし、成形体の生産性を向上させる観点から50以上がより好ましく、成形体の曲げ強度の観点から100以上がさらに好ましい。無機繊維のアスペクト比は、FE−SEMにより測定した無機繊維1000本の太さ及び長さの平均値から求めることができる。無機繊維は粉体中で単分散して混合されていることが好ましいが、無機繊維が互いに絡まった状態や、複数の無機繊維が同一方向で揃った束の状態で混合されていてもかまわない。また、単分散状態において、無機繊維の向きが同一方向で揃った状態であってもかまわないが、熱伝導率を小さくする観点から、無機繊維は、伝熱方向に対して垂直方向に配向していることが好ましい。無機繊維を伝熱方向に対して垂直に配向させる方法は特に限定されないが、例えば、外被材や施工箇所に粉体を充填する場合、充填箇所へ高所から粉体を落下させて充填することにより、無機繊維が伝熱方向に対して垂直に配向しやすい傾向がある。加圧成形体の場合、例えば伝熱方向と同じ方向で加圧することにより、伝熱方向に配向していた無機繊維を、伝熱方向に対して垂直方向へ配向させやすい。
無機繊維の例を示すと、ガラス長繊維(フィラメント)(SiO−Al−B−CaO)、グラスウール(SiO−Al−CaO−NaO)、耐アルカリガラス繊維(SiO−ZrO−CaO−NaO)、ロックウール(バサルトウール)(SiO−Al−Fe−MgO−CaO)、スラグウール(SiO−Al−MgO−CaO)、セラミックファイバー(ムライト繊維)(Al−SiO)、シリカ繊維(SiO)、アルミナ繊維(Al−SiO)、チタン酸カリウム繊維、アルミナウィスカー、炭化ケイ素ウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー(セッコウ繊維)、酸化亜鉛ウィスカー、ジルコニア繊維、炭素繊維、黒鉛ウィスカー、フォスフェート繊維、AES(Alkaline Earth Silicate)ファイバー(SiO−CaO−MgO)、天然鉱物のウォラストナイト、セピオライト、アタパルジャイト、ブルーサイトを挙げることができる。
無機繊維の中でも、特に人体にとって安全である生体溶解性のAESファイバー(Alkaline Earth Silicate Fiber)を用いることが好ましい。AESファイバーとしては、例えば、SiO−CaO−MgO系の無機質のガラス(無機高分子)が挙げられる。
無機繊維の平均太さは飛散を防ぐ観点で1μm以上が好ましい。断熱材の場合は固体伝導による伝熱を押さえる観点で20μm以下であることが好ましい。無機繊維の平均太さは、FE−SEMにより無機繊維1000本の太さを求めて、これを平均して求めることができる。
断熱用途の場合、粉体中の無機繊維の含有量は、加圧成形した成形体からの粉体の脱離抑制の観点で粉体全体の質量に対して0.1質量%以上が好ましく、熱伝導率が0.05W/m・K以下とする観点で50質量%以下であることが好ましい。
粉体が赤外線不透明化粒子を含有する場合、赤外線不透明化粒子との混合の容易さの観点から、無機繊維の含有量は0.2質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、かさ密度が小さくなる観点から0.2質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
無機繊維の含有量は、例えば、無機繊維を粉体から分級することにより、求めることができる。
[1−3]赤外線不透明化粒子
粉体は、赤外線不透明化粒子を含有することが、高い温度での断熱性能を要する場合は、好ましい。赤外線不透明化粒子とは、赤外線を反射、散乱又は吸収する材料からなる粒子を指す。断熱材に赤外線不透明化粒子が混合されていると、輻射による伝熱が抑制されるため、特に200℃以上の高い温度領域での断熱性能が高い。
赤外線不透明化粒子の例として、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、二酸化チタン、鉄チタン酸化物、酸化鉄、酸化銅、炭化ケイ素、金鉱石、二酸化クロム、二酸化マンガン、グラファイトなどの炭素質物質、炭素繊維、スピネル顔料、アルミニウムの粒子、ステンレス鋼の粒子、青銅の粒子、銅/亜鉛合金の粒子、銅/クロム合金の粒子を挙げることができる。従来、赤外線不透明物質として知られる上記の金属粒子又は非金属粒子を、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
赤外線不透明化粒子としては、特に、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、二酸化チタン又は炭化ケイ素が好ましい。赤外線不透明化粒子の組成はFE−SEM EDXにより求められる。
赤外線不透明化粒子の平均粒子径は、200℃以上での断熱性能の観点で0.5μm以上が好ましく、固体伝導の抑制による200℃未満での断熱性能の観点で30μm以下であることが好ましい。なお、赤外線不透明化粒子の平均粒子径は、シリカ粒子と同じ方法により求められる。無機繊維やシリカ粒子のサイズにもよるが、シリカ粒子が5nm〜60μmの場合、シリカ粒子との混合の容易さの観点で赤外線不透明化粒子の平均粒子径は、0.5μm以上10μm以下であることが、より好ましい。
粉体中の赤外線不透明化粒子の含有量は、0.1質量%以上39.5質量%以下であることが好ましい。赤外線不透明化粒子の含有率が39.5質量%より大きいと、固体伝導による伝熱が大きいため、200℃未満での断熱性能が低い傾向がある。200℃以上での断熱性能を向上させるためには、赤外線不透明化粒子の含有量は、0.5質量%以上35質量%以下がより好ましく、1質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。安息角が55度以下であるシリカを含む粉体と、赤外線不透明化粒子とを混合した混合粉体は、粉体の運搬時に、粉体を収納する袋や容器の内壁に付着しにくい傾向があり、袋や容器から粉体を取り出す際に、袋や容器の内壁に付着してしまうことによる粉体の重量損失が少ないという効果がある。
赤外線不透明化粒子の含有量は、例えば、赤外線不透明化粒子の組成をFE−SEM EDXに測定し、赤外線不透明化粒子のみが含有する元素を蛍光X線分析法により定量することで、求めることができる。
[1−4]安息角
粉体の安息角は35度以上55度以下である。35度未満の場合、例えば混合機の蓋等の接合部から粉体が吹き出しやすい傾向がある。安息角が55度超であると、例えば粉体の供給時において供給ラインが閉塞し、供給不能になりやすい上に、振動等の影響を受けて混合状況が変化しやすい傾向がある。この理由は定かではないが、以下のように推定される。安息角は、粉体の流動性を評価する指標とされており、安息角が小さい粉体は流動性に優れ、製造設備中の閉塞が少ないとされている。しかしながら、安息角が小さく、流動性が過剰に優れる粉体は、製造設備における微小空間に入り込み、結果として製造装置の接続箇所等からの噴出が生じると推測される。一方、安息角が大きい粉体では、例えば粉体を収納した袋中や粉体の充填箇所等において、袋内壁や充填箇所の内壁付近で流動しにくくなってしまう。すると、混合されている他の成分(特に比重が大きい粒子)が振動に伴って分離されて下層にたまり、結果として混合状態が変化してしまうと推測される。安息角は35度以上53度以下であることが好ましく、35度以上50度以下であることがより好ましく、38度以上50度以下がさらに好ましい。安息角は、後述する方法により定量することができる。
粉体が無機繊維及び/又は赤外線不透明化粒子を含有する場合も、シリカ粒子や無機繊維及び/又は赤外線不透明化粒子からなる混合粉体の安息角を測定し、混合割合を適宜調整していくことが好ましい。赤外線不透明化粒子を添加、混合する場合は、赤外線不透明化粒子の安息角を予め測定し、安息角が小さい赤外線不透明化粒子を原料とすると、粉体を調製しやすい。赤外線不透明化粒子の安息角が大きい場合であっても、上述のように、他の粒子(シリカ粒子)と混合することによって安息角を55度以下に調整することも可能である。無機繊維を添加、混合する場合は、無機繊維の安息角を測定するのは困難であるため、予めシリカ粒子及び/又は赤外線不透明化粒子からなる粉体の安息角を35度以上55度以下に調整しておき、そこへ無機繊維を添加、混合すると、混合粉体の安息角を35度以上55度以下にしやすい傾向がある。
[1−5]熱伝導率
本実施態様の粉体は、30℃における熱伝導率が0.05W/m・K以下である。断熱性能の観点から、熱伝導率は0.045W/m・K以下が好ましく、0.040W/m・K以下がより好ましく、0.037W/m・K以下がさらに好ましい。赤外線不透明化粒子を含有する粉体は、特に200℃以上の高い温度領域での断熱性能を要する場合に、好ましい。粉体が赤外線不透明化粒子を含有する場合、800℃における熱伝導率は0.15W/m・K以下が好ましく、0.14W/m・K以下がより好ましく、0.13W/m・K以下がさらに好ましい。熱伝導率の測定方法は、後述する。
複数の種類のシリカ粒子、例えば小粒子と大粒子を混合して粉体を調製する際は、平均粒子径が5nm以上60μm以下になるようにシリカ粒子を配合し、上述のように安息角を35度以上55度以下にした上で熱伝導率を測定することが好ましい。熱伝導率が0.05W/m・K超である場合は、安息角が35度以上55度以下を維持する範囲で混合量を変えるのが好ましい。無機繊維、赤外線不透明化粒子を使用する場合も同様に混合量を決定することができる。小粒子と大粒子を混合して粉体を調製すると、粉体が大粒子のみで構成される場合に比較して熱伝導率が小さくなる傾向が見られる。例えば、10nm程度の小粒子と5μm程度の大粒子を混合する場合、大粒子の質量/(小粒子の質量+大粒子の質量)を0.02〜0.95とするのが好ましく、0.10〜0.90とするのがより好ましく、0.15〜0.85とするのがさらに好ましい。無機繊維、赤外線不透明化粒子の混合量は、過剰であると断熱性が低下する場合があるため、熱伝導率を測定し、確認しながら適宜調製することが好ましい。例えば、シリカに平均繊維径が12μm、平均長さが5mmの無機繊維を混合する場合、無機繊維の混合量は30質量%以下であることが好ましい。例えば、シリカに平均粒子径が2μmの赤外線不透明化粒子を混合する場合、赤外線不透明化粒子の混合量は23質量%以下であることが好ましい。また、熱伝導率の小さい材料からなる無機繊維や赤外線不透明化粒子を選択すると、熱伝導率が0.05W/m・K以下の混合粉体を調製しやすい傾向がある。
[1−6]Na、Fe、Geの含有率
成形性に優れ、粉体の飛散を少なくする観点から、本実施形態の粉体におけるNaの含有率が、粉体の全質量を基準として0.005質量%以上3質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以上2質量%以下であることがより好ましく、0.005質量%以上1.5質量%以下であることがさらに好ましい。同様に、Feの含有率が0.005質量%以上6質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、0.005質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましい。また、同様に、Geの含有率が10質量ppm以上1000質量ppm以下であることが好ましく、20質量ppm以上900質量ppm以下であることがより好ましく、20質量ppm以上800質量ppm以下であることがさらに好ましい。
また、粉体はNa、Fe、Geの他に、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、リン(P)、硫黄(S)を含んでいてもかまわない。各元素の含有量は、Kの含有量が0.003質量%以上3質量%以下、Mgの含有量が0.002質量%以上2質量%以下、Caの含有量が0.002質量%以上0.5質量%以下、Pの含有量が0.003質量%以上0.3質量%以下、Sの含有量が0.003質量%以上0.3質量%以下であることが好ましく、Kの含有量が0.005質量%以上2質量%以下、Mgの含有量が0.002質量%以上1.8質量%以下、Caの含有量が0.002質量%以上0.4質量%以下、Pの含有量が0.003質量%以上0.25質量%以下、Sの含有量が0.003質量%以上0.0.2質量%以下であることがより好ましく、Kの含有量が0.005質量%以上1.5質量%以下、Mgの含有量が0.002質量%以上1.6質量%以下、Caの含有量が0.002質量%以上0.2質量%以下、Pの含有量が0.003質量%以上0.2質量%以下、Sの含有量が0.003質量%以上0.1質量%以下であることがさらに好ましい。粉体におけるNa、Fe、Ge等の各元素の含有率は、XRF(蛍光X線分析)により定量することができる。
[2]粉体の製造方法
本実施形態の粉体の製造方法は、シリカを含み、平均粒子径Dが5nm以上30nm以下である小粒子と、シリカを含み、平均粒子径Dが40nm以上60μm以下である大粒子と、を混合し、無機混合物を得る工程を有し、小粒子の安息角が25度以上80度以下であり、大粒子の安息角が25度以上80度以下であり、無機混合物に含まれる小粒子及び大粒子の全質量に対する大粒子の質量の比、すなわち、大粒子の質量/(小粒子の質量+大粒子の質量)を0.02〜0.95に調整する、製造方法である。
[2−1]シリカ粒子
シリカ粒子は、シリカ成分を有する粒子であって、安息角、熱伝導率を調整したものとすることができる。例えば、シリカ粒子は、酸性又はアルカリ性の条件下での湿式法により、ケイ酸イオンを縮合して製造された粒子でもよい。シリカ粒子は、湿式法でアルコキシシランを加水分解・縮合したものでもよいし、湿式法で製造されたシリカ成分を焼成しものでもよいし、塩化物などケイ素の化合物を気相で燃焼して製造したものでもよい。シリカ粒子は、ケイ素金属やケイ素を含む原料を加熱して得られたケイ素ガスを酸化・燃焼して製造されたものでもよい。シリカ粒子は、ケイ石などを溶融して製造されたものでもよい。
シリカ粒子は、シリカ以外の成分を含有してもよく、例として上記の製法において原料中に不純物として存在するものが挙げられる。シリカ以外の成分を、シリカの製造プロセス中に添加してもよい。
公知のシリカの製法には以下のものがある。
<湿式法で合成されるシリカ>
ケイ酸ナトリウムを原料に酸性で作られるゲル法シリカ。
ケイ酸ナトリウムを原料にアルカリ性で作られる沈降法シリカ。
アルコキシシランの加水分解・縮合で合成されるシリカ。
<乾式法で合成されるシリカ>
ケイ素の塩化物を燃焼して作られるヒュームドシリカ。
ケイ素金属ガスを燃焼して作られるシリカ。
フェロシリコン製造時などに副生するシリカヒューム。
アーク法やプラズマ法で製造されるシリカ。
粉砕したシリカ粉末を火炎中で溶融・球状化する溶融シリカ。
各製造方法によって得られるシリカのうち、ケイ酸ナトリウムを原料に酸性で作られるゲル法シリカ、ケイ酸ナトリウムを原料にアルカリ性で作られる沈降法シリカ、アルコキシシランの加水分解・縮合で合成されるシリカ、ケイ素の塩化物を燃焼して作られるヒュームドシリカ、ケイ素金属ガスを燃焼して作られるシリカ、アーク法やプラズマ法で製造されるシリカは、安息角が55度超である。上述した方法で平均粒子径の異なるシリカを混合することで、安息角を55度以下に調整することは可能であるので、他の製造方法で得られたシリカ粒子も含め、複数のシリカ粒子を混合することが好ましい。
フェロシリコン製造時などに副生するシリカヒューム、粉砕したシリカ粉末を火炎中で溶融・球状化する溶融シリカは熱伝導率が0.05W/m・K超である。従って、この製造方法によって得られたシリカのみをシリカ粒子の原料とするのは、熱伝導率の点では好ましい態様ではないが、コストの面では有用な場合がある。他の製造方法で得られたシリカを混合することで、熱伝導率を0.05W/m・K以下に調整することは可能であるので、シリカヒューム等を原料とする場合は、他の製造方法で得られたシリカ粒子を混合することが好ましい。例えばケイ素の塩化物を燃焼して作られるヒュームドシリカ、ケイ素金属ガスを燃焼して作られるシリカを混合することで、シリカヒューム等を含むシリカ粒子の熱伝導率を低減することができる。
上記のシリカのうち、生産性やコストの観点からヒュームドシリカ、ケイ素金属ガスを燃焼して作られるシリカ、シリカヒューム、溶融シリカを用いることがより好ましい。
シリカ粒子として、天然のケイ酸塩鉱物を使用することが可能である。天然の鉱物としては、例えばカンラン石類、緑簾石類、石英、長石類、沸石類等が挙げられる。天然のケイ酸塩鉱物に粉砕等の処理を施すことで平均粒子径が調整されて、粉体を構成するシリカ粒子として使用することが可能である。
[2−2]Na、Fe、Ge、その他の元素
シリカの製造プロセスや粉体の製造プロセス中に、Na、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sを含む化合物としてそれぞれ添加してもよいが、十分な量のNa、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sを予め含有しているシリカ粒子を粉体の原料としてもよい。Na、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sを含む化合物としては、特に限定されないが、例えばNa、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sの酸化物、複合酸化物、水酸化物、窒化物、炭化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、難溶性の塩、及びアルコキシド等が挙げられる。これらは単独で添加してもよく、もしくはこれらの混合物を添加してもよい。Na、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sを不純物として含有するシリカを含む無機化合物粒子を粉体の原料とするのは、生産性、コスト、作業性の観点から、好ましい態様である。このようなシリカを含む無機化合物粒子は、例えば沈殿法で作られたシリカゲル由来の粒子やフェロシリコン製造時などに複製するシリカヒュームとして得ることができる。
Na、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sをそれぞれ含む化合物を添加する方法は、特に限定されない。例えば、上記湿式法や乾式法で得られたシリカに添加してもよいし、シリカの上記各製造工程において添加してもよい。Na、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sをそれぞれ含む化合物は、水溶性であっても水に不溶であってもよい。Na、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sをそれぞれ含む化合物の水溶液として添加し、必要に応じて乾燥させてもよいし、Na、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sをそれぞれ含む化合物を固形物もしくは液状物の状態で添加してもよい。Na、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sをそれぞれ含む化合物は、予め所定の粒子径まで粉砕しておいてもよく、また、予備的に粗粉砕しておいてもよい。
シリカ粒子が過剰な量のNa、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sを含んでいる場合は、シリカの製造プロセスや粉体の製造プロセス中に何らかの処理を施して、前記元素の含有量を所定範囲に調整してもよい。過剰な量のNa、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sを所定範囲に調整する方法は特に限定されない。例えば、Naの含有量の調整方法としては、酸性物質または他の元素による、置換、抽出、除去方法等が挙げられ、シリカを含む無機化合物粒子を硝酸や王水等で処理した後、乾燥し、粉体の原料として用いることが可能である。過剰な量のNa、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sの調整は、シリカを含む無機化合物粒子を予め所望の粒子径まで粉砕した後に行ってもよいし、Na、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sを所定範囲に調整した後に、シリカ粒子を粉砕してもかまわない。
[2−3]混合方法
シリカ粒子、赤外線不透明化粒子及び無機繊維は、公知の粉体混合機、例えば、改訂六版 化学工学便覧(丸善)に掲載されているものを使用して混合することができる。この時、シリカを含む無機化合物粒子を2種類以上混合したり、Na、Fe、Ge、K、Mg、Ca、P、Sをそれぞれ含む化合物やその水溶液を混合したりすることも可能である。公知の粉体混合機としては、容器回転型(容器自体が回転、振動、揺動する)として水平円筒型、V型(攪拌羽根が付いていてもよい)、ダブルコーン型、立方体型及び揺動回転型、機械撹拌型(容器は固定され、羽根などで撹拌する)として、単軸リボン型、複軸パドル型、回転鋤型、二軸遊星攪拌型、円錐スクリュー型、高速撹拌型、回転円盤型、ローラー付き回転容器型、撹拌付き回転容器型、高速楕円ローター型、流動撹拌型(空気、ガスによって撹拌する)として、気流撹拌型、重力による無撹拌型が挙げられる。これらの混合機を組み合わせて使用してもよい。
シリカ粒子、赤外線不透明化粒子及び無機繊維の混合は、粉砕機として公知のもの、例えば、改訂六版 化学工学便覧(丸善)に掲載されているものを使用して、粒子を粉砕したり、無機繊維を裁断したり、粒子や無機繊維の分散性を向上させながら行ってもよい。この時、シリカ粒子を2種類以上粉砕、分散させたり、Ge、Fe、K、Mg、Ca、P、Sをそれぞれ含む化合物やその水溶液を粉砕、分散させたりすることも可能である。公知の粉砕機としては、ロールミル(高圧圧縮ロールミル、ロール回転ミル)、スタンプミル、エッジランナー(フレットミル、チリアンミル)、切断・せん断ミル(カッターミルなど)、ロッドミル、自生粉砕機(エロフォールミル、カスケードミルなど)、竪型ローラーミル(リングローラーミル、ローラーレスミル、ボールレースミル)、高速回転ミル(ハンマーミル、ケージミル、ディスインテグレーター、スクリーンミル、ディスクピンミル)、分級機内蔵型高速回転ミル(固定衝撃板型ミル、ターボ型ミル、遠心分級型ミル、アニュラー型ミル)、容器駆動媒体ミル(転動ボールミル(ポットミル、チューブミル、コニカルミル)、振動ボールミル(円形振動ミル、旋動振動ミル、遠心ミル)、遊星ミル、遠心流動化ミル)、媒体撹拌式ミル(塔式粉砕機、撹拌槽式ミル、横型流通槽式ミル、竪型流通槽式ミル、アニュラーミル)、気流式粉砕機(気流吸込型、ノズル内通過型、衝突型、流動層ジェット吹込型)、圧密せん断ミル(高速遠心ローラーミル、インナーピース式)、乳鉢、石臼などが挙げられる。これらの粉砕機を組み合わせて使用してもよい。
これらの混合機と粉砕機のうち、撹拌羽根を有する粉体混合機、高速回転ミル、分級機内蔵型高速回転ミル、容器駆動媒体ミル、圧密せん断ミルが、粒子や無機繊維の分散性が向上するため、好ましい。粒子や無機繊維の分散性を向上させるには、撹拌羽根、回転板、ハンマープレート、ブレード、ピン等の先端の周速を100km/h以上にするのが好ましく、200km/h以上がより好ましく、300km/h以上がさらに好ましい。
複数の種類のシリカ粒子を混合する場合、かさ比重が小さい順にシリカ粒子を攪拌機もしくは粉砕機に投入することが好ましい。無機繊維や赤外線不透明化粒子を含む場合は、シリカ粒子を混合した後に赤外線不透明化粒子を添加して混合し、さらにその後無機繊維を添加して混合するのが好ましい。
複数の種類のシリカ粒子、例えば小粒子と大粒子を混合して粉体を調製する際は、各々の安息角を予め測定し、混合後の粉体の安息角が35度以上55度以下になるように、混合量を調整することが好ましい。このとき、混合後の粉体の安息角が上記数値範囲となるようにするためには、小粒子の安息角は、25度以上80度以下であるが、25度以上75度以下であることが好ましく、25度以上70度以下であることがより好ましい。同様に、このとき、大粒子の安息角は、25度以上80度以下であるが、25度以上75度以下であることが好ましく、25度以上70度以下であることがより好ましい。なお、混合前の小粒子及び大粒子の安息角は、例えば、粒子の表面粗度を物理的処理、もしくは表面処理等の化学的処理で変化させる、粒子の形状を球状にする、含水量を変化させる等の方法により、好ましい範囲に調整することが可能である。そして、これらの小粒子及び大粒子を、小粒子及び大粒子の全質量に対する大粒子の質量の比、すなわち、大粒子の質量/(小粒子の質量+大粒子の質量)が、0.02〜0.95となるように、好ましくは0.10〜0.90となるように、より好ましくは0.15〜0.85となるように混合するとよい。例えば、安息角がそれぞれ65度程度の小粒子と30度程度の大粒子を混合する場合、大粒子の質量/(小粒子の質量+大粒子の質量)が0.05〜0.85の範囲であることが好ましい。一方で、上述のように、小粒子、大粒子各々の安息角が55度超であっても、両者を混合することで安息角を55度以下に調整することが可能であるため、平均粒子径Dが5nm以上30nm以下である小粒子と、平均粒子径Dが40nm以上60μm以下である大粒子を選択し、まずは両者を大粒子の質量/(小粒子の質量+大粒子の質量)が0.5、すなわち小粒子と大粒子の質量比が1対1になるように混合した粉体について測定した安息角を元に、混合割合を適宜調整していくことが好ましい。もちろん、混合するシリカ粒子は2種に限られず、3種以上混合することが可能である。
なお、粉体が断熱用途の場合、後述のように粉体を加圧成形した成形体を断熱材として用いることができるが、本実施形態においては、粉体は、成形等の工程を経ることなく、粉体を使用する箇所に充填しただけでそのまま用いることもできる。
[3]成形体
成形体は、上記本実施形態の粉体を含有する。このような成形体は、均一な混合状態を維持できる本実施形態の粉体が含有されてなるものであるため、成形体毎に混合組成が変化してしまうことによる性能のばらつきを抑制することが可能であり、歩留まりを向上することができる。
[3−1]成形方法
粉体を加圧成形して成形体を製造する場合、金型プレス成形法(ラム式加圧成形法)、ラバープレス法(静水圧成形法)、押出成形法など、従来から知られるセラミックス加圧成形法によって成形することができる。生産性の観点から、金型プレス成形法が好ましい。
金型プレス成形法やラバープレス法で粉体を型に充填するときには、粉体に振動を与えるなどして、均一に充填することが、成形体の厚みが均一となるため、好ましい。型内を減圧・脱気しながら粉体を型に充填すると、短時間で充填できるため、生産性の観点から好ましい。
得られる成形体のかさ密度は、運搬時の負担を軽減する観点から0.25g/cm〜2.0g/cmになるように設定するのが好ましい。成形の条件を加圧圧力で制御しようとすると、使用する粉体のすべり性、粉体の粒子間や細孔への空気の取り込み量等によって、加圧した状態で保持する時間の経過に伴って圧力値が変化してしまうため、生産管理が困難になる傾向がある。これに対し、かさ密度を制御する方法は、時間の制御を要することなく得られる成形体の荷重を目標値にし易い点で好ましい。成形体のかさ密度は、0.25g/cm〜1.7g/cmがより好ましく、0.25g/cm〜1.5g/cmがさらに好ましい。
得られる成形体のかさ密度が所定の大きさになるように、成形体を製造する方法の一例を説明すると、まず成形体の体積及びかさ密度から必要な無機混合物の重量を求める。次いで、秤量した無機混合物を成形型に充填し、所定の厚みになるように加圧して成形する。具体的には、縦30cm、横30cm、厚み20mmでかさ密度が0.5g/cmである成形体を製造する場合、目的とするかさ密度に製造する成形体の体積をかけることで、成形体の製造に必要な粉体の重量を求めることが可能である。すなわち、上述した成形体の例では、0.5[g/cm]×30[cm]×30[cm]×2[cm]=900[g]となり、必要な粉体は900gとなる。
一般化すると、体積αcmで、かさ密度がβg/cm(ただし、βは粉体のかさ密度より大きい)の成形体を製造する場合、αβgだけ、粉体を秤量し、体積αまで粉体を圧縮することによって、成形する。
粉体や、加圧成形中又は加圧成形後の成形体を、粉体もしくは成形体の耐熱性が十分である温度や時間の条件の範囲内で、加熱乾燥し、粉体もしくは成形体の吸着水を除去した後実用に供すると、熱伝導率が低くなるため好ましい。さらに、加熱処理を施してもよい。
成形は、加圧成形のみでもよいが、加圧成形したものを加熱処理するのが好ましい。粉体を加圧成形したものに加熱処理を施すと、圧縮強度が向上し、荷重が大きい用途において特に好適に使用することができる。
寸法安定性の観点から、加熱処理温度は、その粉体もしくは成形体の使用最高温度より高温が好ましい。粉体もしくは成形体の用途により様々であるが、具体的には400〜1200℃が好ましく、より好ましくは500〜1200℃、更に好ましくは600〜1200℃である。
粉体もしくは成形体の加熱処理の雰囲気は、空気中(又は大気中)、酸化性雰囲気中(酸素、オゾン、窒素酸化物、二酸化炭素、過酸化水素、次亜塩素酸、無機・有機過酸化物等)、及び不活性ガス雰囲気中(ヘリウム、アルゴン、窒素等)が挙げられる。加熱処理時間は、加熱処理温度及び断熱材の量に応じて適宜選択すればよい。加熱処理は、上記粉体を使用する箇所に充填した後に施してもよいし、粉体を加圧成形したものに施してもよい。
[4]被包体
被包体は、外被材と、外被材に収容された粉体及び/又は粉体からなる成形体と、を有する。被包体は粉体や成形体と比較して取扱が容易で、施工もしやすいという利点を有する。図1は、本実施形態に係る被包体の断面模式図である。また、図2は本実施形態に係る成形体が含有する小粒子及び大粒子の断面模式図である。図1及び図2に示すように、本実施形態の被包体1は、複数の小粒子Sと、小粒子Sよりも粒子径が大きい複数の大粒子Lと、を含有する成形体2と、成形体2を収容する外被材3から構成される。成形体2内において、小粒子S及び大粒子Lは混合されており、大粒子Lの周囲に小粒子Sが存在している。なお、このような成形体2をコア材という場合がある。
[4−1]外被材
外被材は、コア材である粉体及び/又は成形体を収容可能な限り、特に限定されないが、例として、ガラスクロス、アルミナ繊維クロス、シリカクロス等の無機繊維織物、無機繊維編物、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、フッ素系樹脂フィルム等の樹脂フィルム、プラスチック−金属フィルム、アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔等の金属箔、セラミックペーパー、無機繊維不織布、有機繊維不織布、ガラス繊維紙、炭素繊維紙、ロックウール紙、無機充填紙、有機繊維紙、セラミックコーティング、フッ素樹脂コーティング、シロキサン樹脂コーティング等の樹脂コーティング等を挙げることができる。被包体を断熱材とする場合、外被材の熱容量を小さくする観点から、外被材の厚みは薄い方が好ましいが、使用状況や必要な強度等に応じて適宜選択することが可能である。外被材が、コア材を使用する温度で安定なものからなる場合、使用時においても、外被材がコア材である粉体もしくは成形体を収容した状態である。高温で使用される被包体の場合は、使用後のコア材の取扱いがし易い観点で、耐熱性の高い外被材は好ましいが、本明細書中、「外被材」はコア材の使用時にコア材を収容しているものの他、コア材の運搬や施工の工程でコア材を収容しているものを包含する。つまり、外被材は運搬時や施工時にのみコア材を保護し、使用時には溶融及び/又は揮発してしまうものを包含するので、外被材そのものや外被材に含まれる有機成分は、コア材の使用温度で溶融や消失をしてもよい。
外被材は、被覆工程が容易である観点から、ガラスクロス、アルミナ繊維クロス、シリカクロス等の無機繊維織物、無機繊維編物、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、フッ素系樹脂フィルム等の樹脂フィルム、プラスチック−金属フィルム、アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔等の金属箔、セラミックペーパー、無機繊維不織布、有機繊維不織布、ガラス繊維紙、炭素繊維紙、ロックウール紙、無機充填紙、有機繊維紙のようなシート形状が好ましい。
被包体が高温で使用される場合、外被材は、熱的な安定性の観点から、ガラスクロス、アルミナ繊維クロス、シリカクロス等の無機繊維織物、無機繊維編物、セラミックペーパー、無機繊維不織布がより好ましい。外被材は、強度の観点から無機繊維織物がさらに好ましい。
[4−2]外被材で被覆する方法
粉体は、シリカ粒子を含み、使用状況に応じて大粒子、赤外線不透明化粒子や無機繊維を添加し形成した粉体をコア材として、袋状やチューブ状に加工した外被材に充填したものでもよいし、この粉体を加圧成形してコア材とし、外被材で被覆したものでもよい。粉体をコア材とする場合、外被材が形成する容積に対する粉体の充填率は、粉体を使用する対象物に応じて適宜設定することが可能である。成形体をコア材とする場合は、後述するように、粉体と外被材を共に加圧成形してもよいし、粉体を加圧成形した後に外被材で被覆することも可能である。
コア材を外被材で被覆する方法は特に限定されず、コア材の調製や成形と、外被材での被覆とを同時に実施してもよいし、コア材を調製又は成形後に外被材で被覆してもよい。
外被材が無機繊維織物、樹脂フィルム、プラスチック−金属フィルム、金属箔、セラミックペーパー、無機繊維不織布、有機繊維不織布、ガラス繊維紙、炭素繊維紙、ロックウール紙、無機充填紙、有機繊維紙等のシート状の形態である場合、例えば無機繊維糸や樹脂繊維糸等での縫合、外被材の接着固定、縫合と接着の両方で被覆することが可能である。
外被材が樹脂フィルム、プラスチック−金属フィルム、金属箔等の場合は、被覆工程の容易さの観点から、真空パックやシュリンクパックが好ましい。
外被材がセラミックコーティング、樹脂コーティング等の場合は、コア材に刷毛やスプレーで塗布することにより、コア材を外被材で被覆することが可能である。
加圧成形したコア材と外被材から構成される被包体に線状のくぼみを設け、被包体に柔軟性を付与することも可能である。線の形態は、被包体の使用状況に応じて直線状、曲線状、破線状等を選ぶことができ、これらのうち2種類以上を組み合わせてもよい。線の太さ、くぼみの深さは被包体の厚み、強度、使用状況に応じて決定される。
外被材は、コア材の表面全体を被覆していてもよいし、コア材を部分的に被覆していてもよい。
[5]用途
本実施形態のシリカ粒子を含む粉体、成形体及び被包体は、断熱材の他、吸音材、防音材、遮音材、反響防止材、消音材、研磨剤、触媒担体、吸着剤、芳香剤や殺菌剤などの薬剤を吸着する担体、脱臭剤、消臭剤、調湿材、充填剤、顔料等に好適に用いることもできる。
[6]パラメータの測定
粉体の安息角の測定、熱伝導率の測定は、次の方法により実施する。粉体の混合状態の評価は、次の方法により評価する。
[粉体の安息角測定]
円筒回転法による安息角測定器(筒井理化学器械株式会社製)を用いて測定する。500ccのガラス製試料容器(円筒形測定瓶)に粉体を250cc充填し、それを測定器のローラー部上に円筒形測定瓶の側面とローラーとが接するように、かつ円筒形測定瓶の中心軸が水平になるように置く。次いで、ローラー部を2.4rpmで、回転させて円筒形測定瓶の中心軸を中心に回転させながら、円筒形測定瓶内部の粉体層の表面が水平面となす角度を測定する。
[粉体の熱伝導率の測定]
縦30cm、横30cm、厚み5cmの発泡スチロールの中心部を縦24cm、横24cmの正方形状にくりぬき、発泡スチロールの枠を形成する。枠の一方に縦30cm、横30cmのアルミ箔を貼り付けて凹部を形成し、試料台とする。なお、アルミ箔で覆った面を試料台の底面とし、発泡スチロールの厚み方向に対するもう一方の面を天井面とする。粉体をタップや加圧をせずに凹部へ疎充填し、すりきりにした後、天井面に縦30cm、横30cmのアルミ箔をのせたものを測定試料とする。測定試料を用いて、30℃での熱伝導率を、ヒートフローメーター HFM 436 Lambda(商品名、NETZSCH社製)を使用して熱伝導率を測定する。較正は、JISA1412−2に従い、密度163.12kg/m、厚さ25.32mmのNIST SRM 1450c校正用標準板を使用して、高温側と低温側の温度差が20℃の条件において、15、20、24、30、40、50、60、65℃で予め実施する。成形体を測定する場合は、縦30cm、横30cm、厚み20mmの形状にした成形体を測定試料とする。800℃における熱伝導率は、JIS A 1421−1の方法に準拠して測定する。直径30cm、厚み20mmの円板状にした成形体2枚を測定試料とし、測定装置として、保護熱板法熱伝導率測定装置(英弘精機株式会社製)を使用する。
[粉体の混合状態の評価]
容量が19L(径280mm、高さ380mm、HDPE製)の円筒型タンクにタップや加圧をせずに粉体18Lを充填し、振動試験装置(恒温恒湿槽連動)(型式:J230/SA3M 、Syn−3HA−40 IMV株式会社製)を用いて、JIS Z 0232のランダム振動試験方法に準拠して測定する。加速度パワースペクトル密度はJIS Z 0232の附属書A表1に示されている加速度パワースペクトル密度に従い、振動時間は30分間とする。前述の条件で振動させた後、充填した粉体層を3等分してそれぞれ上部、中部、下部とし、ぞれぞれの粉体層における粉体のBET比表面積を測定する。粉体のBET比表面積測定は、ユアサ・アイオニクス社製のガス吸着量測定装置「オートソーブ3MP」(商品名)により、吸着ガスとして窒素を用いて、粉体の比表面積を測定する(窒素吸着法)。比表面積はBET法を採用する。振動によって粉体の混合状態が変化し、各々の構成粒子が分離・偏析すると、これに伴ってBET比表面積が変化する。振動によって混合状態が変化し、混合粉体のうち例えば粒子径の小さい粒子が偏在した箇所のBET比表面積は、振動前のBET比表面積に比較して大きくなる傾向がある。一方、粒子径の大きい粒子や、無機繊維のような比表面積が小さい物質が偏在した箇所のBET比表面積は、振動前のBET比表面積に比較して小さくなる傾向がある。本発明者が検討したところ、振動前の粉体のBET比表面積を1とした場合に、振動後のBET比表面積が1±0.1超であると、粉体の断熱性能にばらつきが見られたことから、振動前の粉体のBET比表面積を1とした場合、上部、中部、下部のいずれにおいてもBET比表面積が1±0.1以内であれば混合状態が均一に保持されているとし、上部、中部、下部のうち一箇所以上1±0.1超であれば混合状態が保持されていないとする。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。当業者は、以下に示す実施例のみならず様々な変更を加えて実施することが可能であり、かかる変更も本発明の特許請求の範囲に包含される。なお、実施例及び比較例における安息角の測定、熱伝導率の測定、粉体の混合状態の評価は、それぞれ上述のとおりとした。
[実施例1]
安息角が62度、平均粒子径が14nmのシリカ粉体57質量%と、安息角が29度、平均粒子径が60μmのシリカ粉体43質量%をハンマーミルで均一に混合し、実施例1の粉体を得た。この粉体の安息角は53度であり、30℃における熱伝導率は0.0223W/m・Kであった。実施例1の粉体について振動試験前後のBET比表面積を比較したところ、振動試験前のBET比表面積に対して、振動試験後の粉体の上部、中部、下部のBET比表面積はそれぞれ1.08、0.97、0.92であり、混合状態は均一に保持されていた。この粉体702gを使用して、内寸が縦30cm、横30cmの金型で加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.39g/cmの成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0225W/m・Kであった。
[実施例2]
安息角が62度、平均粒子径が14nmのシリカ粉体25質量%と、安息角が61度、平均粒子径が10μmのシリカ粉体75質量%をハンマーミルで均一に混合し、実施例2の粉体を得た。この粉体の安息角は40度であり、30℃における熱伝導率は0.0313W/m・Kであった。この粉体について振動試験前後のBET比表面積を比較したところ、振動試験前のBET比表面積に対して、振動試験後の粉体の上部、中部、下部のBET比表面積はそれぞれ1.07、1.04、0.96であり、混合状態は均一に保持されていた。この粉体1267gを使用して、実施例1と同じ金型で加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.70g/cmの成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0314W/m・Kであった。
[実施例3]
安息角が62度、平均粒子径が14nmのシリカ粉体50質量%と、安息角が65度、平均粒子径が150nmのシリカ粉体50質量%をハンマーミルで均一に混合し、実施例3の粉体を得た。この粉体の安息角は41度であり、30℃における熱伝導率は0.0214W/m・Kであった。この粉体について振動試験前後のBET比表面積を比較したところ、振動試験前のBET比表面積に対して、振動試験後の粉体の上部、中部、下部のBET比表面積はそれぞれ1.05、1.01、0.97であり、混合状態は均一に保持されていた。この粉体576gを使用して、実施例1と同じ金型で加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.32g/cmの成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0211W/m・Kであった。
[実施例4]
安息角が65度、平均粒子径が7.5nmのシリカ粉体50質量%と、安息角が61度、平均粒子径が80nmのシリカ粉体50質量%をハンマーミルで均一に混合し、実施例4の粉体を得た。この粉体の安息角は43度であり、30℃における熱伝導率は0.0199W/m・Kであった。この粉体について振動試験前後のBET比表面積を比較したところ、振動試験前のBET比表面積に対して、振動試験後の粉体の上部、中部、下部のBET比表面積はそれぞれ1.06、1.02、0.98であり、混合状態は均一に保持されていた。この粉体594gを使用して、実施例1と同じ金型で加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.33g/cmの成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0198W/m・Kであった。
[実施例5]
安息角が62度、平均粒子径が14nmのシリカ粉体21質量%と、安息角が65度、平均粒子径が150nmのシリカ粉体63質量%をハンマーミルで均一に混合した後、平均粒子径が1μmの、赤外不透明化粒子であるケイ酸ジルコニウム16質量%を添加して引き続き均一に混合し、実施例5の粉体を得た。この粉体の安息角は46度であり、30℃における熱伝導率は0.0273W/m・Kであった。この粉体について振動試験前後のBET比表面積を比較したところ、振動試験前のBET比表面積に対して、振動試験後のシリカ粉体の上部、中部、下部のBET比表面積はそれぞれ1.07、1.03、0.95であり、混合状態は均一に保持されていた。この粉体1042gを使用して、実施例1と同じ金型で加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.58g/cmの成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0275W/m・Kであった。また、この粉体819gずつ使用して、内径が直径30cmの円筒型の金型を使用して加圧成形を行い、直径30cm、厚み20mmの円板状の成形体を2枚得た。この2枚の成形体を用いて、800℃における熱伝導率を測定したところ、0.0851W/m・Kであった。
[実施例6]
安息角が62度、平均粒子径が14nmのシリカ粉体20質量%と、安息角が68度、平均粒子径が6μmのシリカ粉体60質量%をハンマーミルで均一に混合した後、平均粒子径が1μmの、赤外不透明化粒子であるケイ酸ジルコニウム15質量%を添加して引き続き均一に混合し、さらに平均繊維径が11μmで平均繊維長が6.4mmのグラスファイバー5質量%を添加して高速せん断ミキサーで混合して均一にし、実施例6の粉体を得た。この粉体の安息角は46度であり、30℃における熱伝導率は0.0315W/m・Kであった。この粉体について振動試験前後のBET比表面積を比較したところ、振動試験前のBET比表面積に対して、振動試験後のシリカ粉体の上部、中部、下部のBET比表面積はそれぞれ1.03、0.98、0.94であり、混合状態は均一に保持されていた。この粉体491gを使用して、実施例1と同じ金型で加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.27g/cmの成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0311W/m・Kであった。
[実施例7]
安息角が65度、平均粒子径が7.5nmのシリカ粉体19質量%と、安息角が61度、平均粒子径が80nmのシリカ粉体57質量%をハンマーミルで均一に混合した後、平均粒子径が1μmの、赤外不透明化粒子であるケイ酸ジルコニウム14質量%を添加して引き続き均一に混合し、さらに平均繊維径が11μmで平均繊維長が6.4mmのグラスファイバー10質量%を添加して高速せん断ミキサーで混合して均一にし、実施例7の粉体を得た。この粉体の安息角は47度であり、30℃における熱伝導率は0.0273W/m・Kであった。このシリカ粉体について振動試験前後のBET比表面積を比較したところ、振動試験前のBET比表面積に対して、振動試験後のシリカ粉体の上部、中部、下部のBET比表面積はそれぞれ1.04、0.97、0.95であり、混合状態は均一に保持されていた。この粉体970gを使用して、実施例1と同じ金型で加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.54g/cmの成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0272W/m・Kであった。
[比較例1]
安息角が62度、平均粒子径が14nmのシリカ粉体90質量%と、安息角が29度、平均粒子径が60μmのシリカ粉体10質量%をハンマーミルで使用して均一に混合し、比較例1の粉体を得た。この粉体の安息角は58度であり、30℃における熱伝導率は0.0200W/m・Kであった。この粉体について振動試験前後のBET比表面積を比較したところ、振動試験前のBET比表面積に対して、振動試験後の粉体の上部、中部、下部のBET比表面積はそれぞれ1.13、1.03、0.87であり、混合状態は保持されていなかった。
[比較例2]
安息角が62度、平均粒子径が14nmのシリカ粉体80質量%と、平均粒子径が1μmの、赤外不透明化粒子であるケイ酸ジルコニウム15質量%をハンマーミルで混合して均一にした後、さらに平均繊維径が11μmで平均繊維長が6.4mmのグラスファイバー5質量%を添加して高速せん断ミキサーで混合して均一にし、比較例2の粉体を得た。この粉体の安息角は71度であり、30℃における熱伝導率は0.0219W/m・Kであった。この粉体について振動試験前後のBET比表面積を比較したところ、振動試験前のBET比表面積に対して、振動試験後の粉体の上部、中部、下部のBET比表面積はそれぞれ1.15、0.99、0.86であり、混合状態は保持されていなかった。
[比較例3]
安息角が29度、平均粒子径が60μmのシリカ粉体の30℃における熱伝導率は0.814W/m・Kであった。
1…被包体、2…成形体、3…外被材、S…小粒子、L…大粒子。

Claims (13)

  1. シリカを含み、安息角が35度以上55度以下であり、30℃における熱伝導率が0.05W/m・K以下である粉体。
  2. 赤外線不透明化粒子を含有し、800℃における熱伝導率が0.15W/m・K以下である、請求項1に記載の粉体。
  3. 前記赤外線不透明化粒子の平均粒子径が0.5μm以上30μm以下であり、前記赤外線不透明化粒子の含有率が、粉体の全質量を基準として、0.1質量%以上39.5質量%以下である、請求項2に記載の粉体。
  4. ナトリウムを含有し、前記ナトリウムの含有量が、粉体の全質量を基準として、0.005質量%以上3質量%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉体。
  5. 鉄を含有し、前記鉄の含有量が、粉体の全質量を基準として、0.005質量%以上6質量%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉体。
  6. 無機繊維を含有し、前記無機繊維の含有量が、粉体の全質量を基準として0.1質量%以上50質量%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粉体。
  7. 前記無機繊維が生体溶解性を有する、請求項6に記載の粉体。
  8. ゲルマニウムを含有し、前記ゲルマニウムの含有量が、粉体の全質量を基準として、10質量ppm以上1000質量ppm以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の粉体。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の粉体を含有する成形体。
  10. 外被材と、
    該外被材に収容された請求項1〜8のいずれか一項に記載の粉体及び/又は請求項9に記載の成形体と、
    を備える被包体。
  11. 前記外被材が無機繊維を含む、請求項10に記載の被包体。
  12. 前記外被材が樹脂フィルムである、請求項10に記載の被包体。
  13. シリカを含み、平均粒子径Dが5nm以上30nm以下である小粒子と、シリカを含み、平均粒子径Dが40nm以上60μm以下である大粒子と、を混合し、無機混合物を得る工程を有し、
    前記小粒子の安息角が25度以上80度以下であり、前記大粒子の安息角が25度以上80度以下であり、前記無機混合物に含まれる前記小粒子及び前記大粒子の全質量に対する前記大粒子の質量の比を0.02〜0.95に調整する、
    粉体の製造方法。
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