以下、図面を参照しながら、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。なお、図面において、同一の要素については同一の符号を付し、同一の要素の符号の一部は省略する。各粒子の位置関係及び寸法比は図面に示すものに限定されない。
(断熱材)
図1は、本発明の一実施形態に係る断熱材の断面模式図である。また、図2は本発明の一実施形態に係るコア材が含有する小粒子及び大粒子の断面模式図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態の断熱材1は、複数の小粒子Sと、小粒子Sよりも粒子径が大きい複数の大粒子Lと、を含有するコア材2と、コア材2を収容する外被材3から構成される。コア材内において、小粒子S及び大粒子Lは混合している。小粒子Sは、シリカを含む第一の無機化合物からなる。小粒子Sの比重はCSである。大粒子Lは、第二の無機化合物からなる。大粒子Lの比重はCLである。
小粒子の平均粒子径DSは、5nm以上50nm未満である。平均粒子径DSは、小粒子1000個を電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)で観察し、その等面積円相当径を求めて数平均を算出することにより、確認することができる。
小粒子の平均粒子径DSが5nmよりも小さいと、DSが上記の数値範囲内である場合に比べて、小粒子が化学的に不安定となり、断熱性能が安定し難い。DSが50nm以上であると、DSが上記の数値範囲内である場合に比べて、小粒子同士の接触面積が大きくなり、断熱材の固体伝導による伝熱が増し、断熱性能が不十分となる。
小粒子の平均粒子径DSは、5nm以上40nm以下であると、小粒子と大粒子の粒径の差が大きくなり、大粒子の小粒子に対する分散が容易となり、好ましい。DSが5nm以上30nm以下であると、粒子の付着力が増して、コア材からの粒子の脱落が減少し、より好ましい。
小粒子を構成する第一の無機化合物は、シリカを含有する。第一の無機化合物におけるシリカの含有率が50質量%以上であると、コア材の固体伝導による伝熱が小さいため、好ましい。第一の無機化合物は、シリカを75質量%以上含むと、粒子の付着力が増して、コア材からの粒子の脱落が減少するため、より好ましい。なお、本発明においてシリカとは、組成式SiO2で表される成分を指す。第一の無機化合物は、純粋な二酸化ケイ素であってもよく、Si及び種々の他元素との塩や複合酸化物であってもよく、水酸化物のような含水酸化物であってもよい。第一の無機化合物が、シラノール基を有していてもよい。第一の無機化合物は、結晶質であっても、非晶質であっても、それらの混合体であってもよいが、非晶質であると、コア材中の固体伝導による伝熱が小さくなり、断熱性能が向上するため、好ましい。
シリカを含む第一の無機化合物の具体例としては、下記のものが挙げられる。
シリカや石英と呼ばれるケイ素の酸化物。
ケイ素の部分酸化物。
シリカアルミナやゼオライトのようなケイ素の複合酸化物。
Na、Ca、K、Mg、Ba、Ce、B、Fe及びAl等のいずれかのケイ酸塩(ガラス)。
ケイ素以外の元素の酸化物、部分酸化物、塩又は複合酸化物(アルミナやチタニア等)と、ケイ素の酸化物、部分酸化物、塩又は複合酸化物との混合体。
SiCやSiNの酸化物。
小粒子がシリカを含有することは、例えば、小粒子を断熱材より分級して固体Si−NMR測定を行い、Q4構造を検出することで、確認することができる。小粒子におけるシリカの含有量は、例えば、電界放射型走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法(FE−SEM EDX)により、求めることができる。
第一の無機化合物は、断熱材の使用される温度において、熱的に安定であることが好ましい。具体的には、断熱材の使用最高温度において1時間保持したときに、第一の無機化合物の重量が10%以上減少しないことが好ましい。また、第一の無機化合物は耐水性を有することが好ましい。具体的には、25℃の水100gに対する第一の無機化合物の溶解量が0.1g未満であることが好ましく、0.01g未満であることがより好ましい。
小粒子の比重CSは、ピクノメーター法により求まる真比重を指す。成形欠陥の抑制及び断熱性向上の観点からCSは2.0以上4.0以下であることが好ましい。2.0以上3.0以下であると、コア材のかさ密度が小さくなるため、より好ましい。2.0以上2.5以下であると、小粒子のかさ密度が小さいため、大粒子との混合時において、より小さな動力で混合が可能となるため、生産性が向上し、さらに好ましい。
大粒子の平均粒子径DLは50nm以上100μm以下である。DLは、前述のDSと同じ方法により求められる。DLが50nmより小さいと、DLが上記の数値範囲内である場合に比べて、コア材におけるスプリングバックが大きくなる。DLが100μmより大きいと、断熱性能が不十分となる。
大粒子の平均粒子径DLは、60nm以上30μm以下であると、コア材が無機繊維や赤外線不透明化粒子を含む場合にこれらとの均一な混合が容易であるため、好ましい。DLは、60nm以上10μm以下であると、粒子の付着力が増し、コア材からの粒子の脱落が減少するため、より好ましい。
DLはDSの2倍以上であることが、スプリングバックが小さくなるため、好ましい。DLはDSの3倍以上であると、小粒子と大粒子の混合粉体のかさ比重が大きくなり、粉体体積が小さくなるため作業性が向上するので、より好ましい。DLはDSの4倍以上であると、小粒子と大粒子の粒径の差が大きくなり、大粒子の小粒子に対する分散が容易となり、さらに好ましい。
複数の大粒子のうち粒子径が100nm以上である大粒子は、熱伝導率を小さくする観点から、球状であることが好ましい。この理由は明らかではないが、粒子径が100nm以上の粒子が球状であれば、粒子の接触抵抗が大きくなるため、コア材の熱伝導率が小さくなるためであると推測される。なお、「複数の大粒子」とは、粒子径が100nm以上の大粒子だけでなく、小粒子よりも粒子径が大きい全ての大粒子を意味する。
本実施形態において、「粒子径が100nm以上の粒子が球状」であるか否かは、以下のようにして判断される。すなわち、大粒子同士が重ならないように撮影、画像処理した大粒子のFE−SEM画像から、粒子径が100nm以上の1000個の大粒子の最大径及び面積を求める。そして、下記式(1)に基づき、個々の粒子の丸さの度合いを求め、その平均値を求める。このとき、丸さの度合いの平均値が、1以上1.3以下である場合に、大粒子中に含まれる、粒子径が100nm以上の粒子が球状であるものとする。
丸さの度合い={π×(最大径/2)2/面積} (1)
丸さの度合いの平均値が1以上1.28以下であると、大粒子の付着性が低下し、ハンドリングが容易であるため、好ましい。丸さの度合いの平均値が1以上1.26以下であると、大粒子と小粒子の混合が容易となるため、さらに好ましい。丸さの度合いの平均値が1以上1.24以下であると、大粒子の単分散が容易となり、混合粉体を成形すると均質なコア材を得ることが容易となるため、生産性が向上し、最も好ましい。
大粒子の比重CLは、前述のCSと同じ方法で求められる。大粒子の比重CLは、2.0以上3.0以下であると、コア材のかさ密度が小さくなるため、好ましい。CLが2.0以上2.9以下であると、小粒子との比重差が小さく、小粒子との均一混合が容易であるため、好ましい。CLは、2.1以上2.8以下であると、小粒子との比重差がさらに小さく、貯蔵や輸送において小粒子と大粒子の分離が起こりにくくなるため、より好ましい。
大粒子を構成する第二の無機化合物としては、特に限定されないが、第一の無機化合物同様、断熱材の使用される温度において熱的に安定であり、耐水性がある化合物が好ましい。第二の無機化合物は、第一の無機化合物と同一でもよく、異なっていてもよい。例えば、第二の無機化合物は、3〜11族、12族のZn、13族のAl、Ga、In、14族のSi、Ge、Sn、Pb及び15族のBiのいずれかの単体、合金、酸化物、複合酸化物、窒化物、炭化物及び難溶性の塩でもよい。第二の無機化合物は2族の難溶性の塩でもよい。第二の無機化合物は、これらの混合物でもよい。第二の無機化合物は、結晶質であっても、非晶質であっても、それらの混合体であってもよい。
好ましい第二の無機化合物の具体例としては、下記のものが挙げられる。
上記の第一の無機化合物と同様のもの。
SiC、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化鉄、ジルコニア、ケイ酸ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化銅、炭酸カルシウム。
Na、Mg、Ca、K、Ba及びCeのいずれかを含む難溶性ケイ酸塩。
これらの混合物。
第二の無機化合物は、第一の無機化合物と同様のもの、炭酸カルシウム又は上記の難溶性ケイ酸塩であることがより好ましい。難溶性ケイ酸塩としては、例えば鉄鋼スラグなどが挙げられる。さらに好ましいのは、第一の無機化合物と同様のものである。
大粒子の組成は、小粒子の場合と同様に、FE−SEM EDXにより求められる。
コア材に含まれる全小粒子の質量の合計値MSとコア材に含まれる全大粒子の質量の合計値MLとの比率MS/MLは、0.035CS/CL以上3以下である。MS/MLが0.035CS/CL以上3以下であるコア材は、そのスプリングバックが小さく、十分な断熱性能を有する。MS/MLは、例えば、コア材に含まれる小粒子及び大粒子を分級して、それぞれの質量を測定し、小粒子の質量を大粒子の質量で除することにより、求められる。
MS/MLは、0.092CS/CL以上0.9以下であることが、小粒子の体積が減少し、混合が容易となるため、より好ましい。MS/MLは、0.092CS/CL以上0.5以下であると、小粒子と大粒子の混合粉体を加圧成形する際に、混合粉体と成形体の体積差が小さくなり加圧成形が容易となるため、さらに好ましい。
本発明者らは、MS/MLが3より大きい場合、スプリングバックが大きいため成形欠陥が発生しやすく、また、MS/MLが0.035CS/CL未満の場合、成形体が脆くなり成形後金型から取り出す際に、極めて破損しやすいことを見出した。MS/MLが0.035CS/CL未満の場合、成形体が脆くなる理由は明らかではないが、小粒子の含有量が小さくなると、小粒子が有する付着力に起因する、成形体の粒子間の付着力が小さくなるためであると考えられる。
また、本発明者は、小粒子及び球状の大粒子の混合体を用いてコア材を作製し、その熱伝導率とMS/MLの関係を詳細に調べた。その結果、MS/MLが0.035CS/CL以上3以下の範囲では、コア材の熱伝導率は十分小さく、かつMS/MLの減少量に対する熱伝導率の増加量(熱伝導率の増加率)も小さいことを本発明者らは発見した。さらに、本発明者らは、MS/MLが閾値の0.035CS/CL未満の範囲では、驚くべきことに不連続な変化が現れ、MS/MLの減少に従い熱伝導率が急激に増加することを見出した。この理由は明らかではないが、MS/MLが0.035CS/CL以上の領域では、コア材が、気体伝導と固体伝導の伝熱に対するボトルネックを有する構造をとるためであると考えられる。
以下に、MS/MLが0.035CS/CL以上のとき、コア材中に伝熱に対するボトルネックが発生する構造となる原理を説明する。
仮に、すべての大粒子が球状で同一の粒子径DLを有し、粒子間力が無いため大粒子は凝集せずに単分散すると仮定する。
一定の空間に大粒子を充填し、コア材を形成すると、空間における大粒子の充填率は、最大で面心立方格子に占める大粒子の体積百分率の理論値である74体積%になる。この空間とは、コア材全体において大粒子及び小粒子が占める全体積に相当する。大粒子間に生じた26体積%のすべての空隙が、内部の細孔サイズが100nm以下の小粒子凝集体により充填される場合、この小粒子凝集体が気体伝導による伝熱に対するボトルネックとなり、コア材全体において気体伝導による伝熱が小さくなる。加えて、小粒子の数をわずかに増やして、大粒子同士の各接点に、2個分の小粒子を直列に挿入すれば、大粒子同士が直接接触しない構造となる。このような構造においては、大粒子から大粒子への固体伝導による伝熱経路は、必ず伝熱抵抗が大きな小粒子の点接合部を通ることとなる。この小粒子の点接合部が、固体伝導による伝熱に対するボトルネックとなるため、コア材全体において固体伝導による伝熱は小さくなる。
つまり、上記空間内に存在する小粒子凝集体の体積の合計値が上記空間内に存在する全大粒子の体積の理論値26体積%よりもわずかに大きい場合、コア材は、気体伝導及び固体伝導の伝熱に対するボトルネックを有する構造となる。
小粒子凝集体のかさ比重は、小粒子のみを加圧成形したコア材のかさ比重とほぼ等しいと考えることができる。このような小粒子のみを加圧成形したコア材の空隙率は、概ね90%程度であり、かさ比重は真比重CSの10分の1程度であることが知られている。
以上の前提に基づけば、上記空間内に存在する全大粒子の体積の理論値(下限)と、上記空間内に存在する小粒子凝集体の体積の合計値(上限)との比74:26は、下記数式(2)で表される。
74:26=(ML/CL):(MS/0.1CS) (2)
大粒子間に生じた全空隙を充填するために必要な小粒子凝集体の質量の合計値MSの下限は、上記式(2)に基づく下記数式(3)で表される。換言すれば、気体伝導及び固体伝導の伝熱に対するボトルネックを有する構造をコア材内に形成するために必要なMSの下限は下記数式(3)で表される。
MS=(ML/CL)×(26/74)×0.1CS=ML×0.035(CS/CL) (3)
上記数式(3)から明らかなように、MS/MLが0.035CS/CL以上であれば、大粒子間に生じた全空隙を充填するために充分な小粒子がコア材に含有される。コア材内で大粒子が凝集している場合、大粒子が単分散している場合と同様に、MS/MLを0.035CS/CL以上とすることにより、すべての大粒子凝集体の間の空隙を、小粒子凝集体により充填することが可能である。この時、大粒子同士の接触が起こるが、粒子が球状であるため、粒子同士の接触面積が小さく、大粒子間の固体伝導伝熱は低く抑えられる。
また、大粒子に粒径分布がある場合には、空間における大粒子の充填率は、最大で74%以上となり、同一の大粒子が単分散している場合と同様に、少なくともMS/MLを0.035CS/CL以上とすることにより、すべての大粒子凝集体の間の空隙を、小粒子凝集体により充填することが可能である。大粒子に粒径100nm以下の粒子が含まれる場合、仮にこれらの粒子同士の接触が起こったとしても、粒径が小さいため、粒子同士の接触面積が小さく、大粒子間の固体伝熱は低く抑えられる。
なお、MS/MLが0.035CS/CL以上のとき、コア材が伝熱に対するボトルネックを有する構造となる原理は、以上のものに限定されない。
小粒子及び大粒子の含有量の合計値は、コア材の全質量を基準として、30質量%以上100質量%以下であることが好ましい。小粒子及び大粒子の含有量の合計値が30質量%以上97.5質量%以下で無機繊維や赤外線不透明化粒子を含有するコア材は、コア材からの粒子の脱落の減少や高い温度での断熱性能の向上といった効果がより好適にあらわれ、より好ましい。小粒子及び大粒子の含有量の合計値が40質量%以上97.5質量%以下であると、コア材のかさ密度がより小さいため、さらに好ましい。
コア材に含まれる大粒子は、分散性が良いほど断熱性能が向上する傾向となるため、単分散し、大粒子同士が直接接触しないことが好ましい。つまり、大粒子が互いに接触している箇所が存在せず、コア材の端から端まで大粒子が直接連結していないことが好ましい。大粒子が直接連結しないことで生じる大粒子間の空隙は小粒子で充填され、大粒子同士が直接接触し難い。そのため、コア材中に固体伝導の大きい伝熱経路が存在せず、コア材全体の熱伝導率が低くなり易い。さらに、大粒子間の空隙を小粒子が充填することで、コア材中に存在する空隙の大きさが小さくなり、空気による対流や伝熱が抑制されるため、コア材全体の熱伝導率が低くなり易い。
コア材は、赤外線不透明化粒子を含有することが、高い温度での断熱性能を発現させることから、好ましい。赤外線不透明化粒子とは、赤外線を反射、散乱又は吸収する材料からなる粒子を指す。コア材に赤外線不透明化粒子が混合されていると、輻射による伝熱が抑制されるため、特に200℃以上の高い温度領域での断熱性能が向上する。
赤外線不透明化粒子の例を示すと、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、二酸化チタン、鉄チタン酸化物、酸化鉄、酸化銅、炭化ケイ素、金鉱石、二酸化クロム、二酸化マンガン、グラファイトなどの炭素質物質、炭素繊維、スピネル顔料、アルミニウムの粒子、ステンレス鋼の粒子、青銅の粒子、銅/亜鉛合金の粒子、銅/クロム合金の粒子を挙げることができる。従来、赤外線不透明物質として知られる上記の金属粒子又は非金属粒子を、単独で用いてもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
赤外線不透明化粒子としては、特に、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、二酸化チタン又は炭化ケイ素が好ましい。赤外線不透明化粒子の組成は、小粒子の場合と同様に、FE−SEM EDXにより求められる。
赤外線不透明化粒子の平均粒子径は、0.5μm以上30μm以下であることが好ましい。赤外線不透明化粒子の平均粒子径が0.5μm以上である場合、200℃以上での十分な断熱性能を達成し易い。赤外線不透明化粒子の平均粒子径が30μm以下である場合、コア材における固体伝導が抑制され、200℃未満での十分な断熱性能を達成し易い。なお、赤外線不透明化粒子の平均粒子径は、小粒子と同じ方法により求められる。赤外線不透明化粒子の平均粒子径は、0.5μm以上10μm以下であることが、無機繊維や小粒子、大粒子との混合が容易となるため、より好ましい。
コア材中の赤外線不透明化粒子の含有率は、0質量%以上50質量%以下であることが好ましい。赤外線不透明化粒子の含有率が50質量%より大きいと、固体伝導による伝熱が増すため、200℃未満での断熱性能が低下する傾向がある。200℃以上での断熱性能を向上させるためには、赤外線不透明化粒子の含有量は、2質量%以上であることが好ましい。
赤外線不透明化粒子の含有率は、2質量%以上40質量%以下であると、無機繊維や大粒子、小粒子との混合が容易となり、さらに好ましい。
赤外線不透明化粒子の含有率は、例えば、赤外線不透明化粒子のみが含有する元素を、蛍光X線分析法により定量することで、求めることができる。
コア材は、無機繊維を含有するのが好ましい場合もある。無機繊維を含有すると、コア材からの粒子の脱落が少ない。本明細書中、無機繊維とは平均太さに対する無機繊維の平均長さの比(アスペクト比)が10以上であるものをいう。アスペクト比は10以上であることが好ましく、小さい圧力で成形が可能となり、コア材の生産性を向上させる観点から50以上がより好ましく、コア材の曲げ強度の観点から100以上がさらに好ましい。無機繊維のアスペクト比は、FE−SEMにより測定した無機繊維1000本の太さ及び長さの平均値から求めることができる。無機繊維はコア材中で単分散して混合されていることが好ましいが、無機繊維が互いに絡まった状態や、複数の無機繊維が同一方向で揃った束の状態で混合されていてもかまわない。
無機繊維として例を示すと、ガラス長繊維(フィラメント)(SiO2−Al2O3−B2O3−CaO)、グラスウール(SiO2−Al2O3−CaO−Na2O)、耐アルカリガラス繊維(SiO2−ZrO2−CaO−Na2O)、ロックウール(バサルトウール)(SiO2−Al2O3−Fe2O3−MgO−CaO)、スラグウール(SiO2−Al2O3−MgO−CaO)、セラミックファイバー(ムライト繊維)(Al2O3−SiO2)、シリカ繊維(SiO2)、アルミナ繊維(Al2O3−SiO2)、チタン酸カリウム繊維、アルミナウィスカー、炭化ケイ素ウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー(セッコウ繊維)、酸化亜鉛ウィスカー、ジルコニア繊維、炭素繊維、黒鉛ウィスカー、フォスフェート繊維、AES(Alkaline Earth Silicate)ファイバー(SiO2−CaO−MgO)、 天然鉱物のウォラストナイト、セピオライト、アタパルジャイト、ブルーサイトなど、従来から知られる無機繊維を挙げることができる。
無機繊維の中でも、特に人体にとって安全である生体溶解性のAESファイバー(Alkaline Earth Silicate Fiber)を用いることが好ましい。AESファイバーとしては、例えば、SiO2−CaO−MgO系の無機質のガラス(無機高分子)が挙げられる。
無機繊維の平均太さは1μm以上20μm以下であることが好ましい。平均太さが1μm未満であると、無機繊維は飛散しやすいため、作業性が悪くなる。平均太さが20μmより大きいと、固体伝導による伝熱が大きくなり、断熱性能が不十分となる傾向がある。
無機繊維の平均太さは、FE−SEMにより、無機繊維1000本の太さを求めて、これを平均して求めることができる。
コア材中の無機繊維の含有率は、断熱材全体の質量に対して0質量%以上20質量%以下であることが好ましい。無機繊維の含有率が20質量%より大きいと、固体伝導による伝熱が大きくなり、断熱性能を低下させる傾向がある。
コア材からの粉体の脱離を抑制する効果の観点から、無機繊維の含有率は0.5質量%以上であることが好ましい。
小粒子や大粒子、赤外線不透明化粒子との混合を容易にする観点から、無機繊維の含有率は0.5質量%以上20質量%以下であることが、より好ましい。
無機繊維の含有率は、例えば、無機繊維をコア材から分級することにより、求めることができる。
本発明の断熱材は、外被材を備え、取扱や施工がしやすく、作業性に優れる。外被材は、コア材を収容可能な限り、特に限定されないが、例として、ガラスクロス、アルミナ繊維クロス、シリカクロス等の無機繊維織物、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、フッ素系樹脂フィルム等の樹脂フィルム、プラスチック−金属フィルム、アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔等の金属箔、セラミックペーパー、無機繊維不織布、有機繊維不織布、ガラス繊維紙、炭素繊維紙、ロックウール紙、無機充填紙、有機繊維紙、セラミックコーティング、フッ素樹脂コーティング、シロキサン樹脂コーティング等の樹脂コーティング等を挙げることができる。外被材の熱容量が小さくなる観点から、外被材の厚みは薄い方が好ましいが、使用状況や必要な強度等に応じて適宜選択することが可能である。外被材が、断熱材を使用する温度で安定なものからなる場合、使用時においても外被材がコア材を収容した状態である。使用後の断熱材の取扱いがし易い観点で、耐熱性の高い外被材は好ましいが、本発明において、「外被材」は断熱材の使用時にコア材を収容しているものの他、断熱材の運搬や施工の工程でコア材を収容しているものを包含する。つまり、外被材は運搬時や施工時にのみコア材を保護し、使用時には溶融及び/又は揮発してしまうものを包含するので、外被材そのものや外被材に含まれる有機成分は、断熱材の使用温度で溶融や消失をしてもよい。
外被材は、被覆工程が容易である観点から、ガラスクロス、アルミナ繊維クロス、シリカクロス等の無機繊維織物、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、フッ素系樹脂フィルム等の樹脂フィルム、プラスチック−金属フィルム、アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔等の金属箔、セラミックペーパー、無機繊維不織布、有機繊維不織布、ガラス繊維紙、炭素繊維紙、ロックウール紙、無機充填紙、有機繊維紙のようなシート形状が好ましい。
外被材は、熱的な安定性の観点から、ガラスクロス、アルミナ繊維クロス、シリカクロス等の無機繊維織物、セラミックペーパー、無機繊維不織布がより好ましい。外被材は、強度の観点から無機繊維織物がさらに好ましい。
(断熱材の製造方法)
小粒子及び大粒子としては、従来知られる製法で製造されるシリカ成分を有する粒子を使用することができる。例えば、小粒子及び大粒子は、酸性又はアルカリ性の条件下での湿式法により、ケイ酸イオンを縮合して製造された粒子でもよい。小粒子及び大粒子は、湿式法でアルコキシシランを加水分解・縮合して製造されたものでもよい。小粒子及び大粒子は、湿式法で製造されたシリカ成分を焼成して製造されたものでもよい。小粒子及び大粒子は、塩化物などケイ素の化合物を気相で燃焼して製造されたものでもよい。小粒子及び大粒子は、ケイ素金属やケイ素を含む原料を加熱して得られたケイ素ガスを酸化・燃焼して製造されたものでもよい。小粒子及び大粒子は、ケイ石などを溶融して製造されたものでもよい。
小粒子や大粒子に含まれるシリカ成分以外の成分としては、上記の製法において原料中に不純物として存在しているものを利用してもよい。シリカ成分以外の成分を、製造プロセス中に意図的に原料に添加してもよい。
大粒子や小粒子として用いるシリカとしては、従来から知られる製法で製造された下記のシリカが好適に使用される。
<湿式法で合成されるシリカ>
ケイ酸ナトリウムを原料に酸性で作られるゲル法シリカ。
ケイ酸ナトリウムを原料にアルカリ性で作られる沈降法シリカ。
アルコキシシランの加水分解・縮合で合成されるシリカ。
<乾式法で合成されるシリカ>
ケイ素の塩化物を燃焼して作られるヒュームドシリカ。
ケイ素金属ガスを燃焼して作られるシリカ。
フェロシリコン製造時などに副生するシリカヒューム。
アーク法やプラズマ法で製造されるシリカ。
粉砕したシリカ粉末を火炎中で溶融・球状化する溶融シリカ。
上記のシリカのうち、小粒子としては、ヒュームドシリカを用いることがより好ましい。大粒子しては、ヒュームドシリカ、ケイ素金属ガスを燃焼して作られるシリカ、シリカヒューム、溶融シリカを用いることがより好ましい。
大粒子として、天然のケイ酸塩鉱物を使用することが可能である。天然の鉱物としては、例えばカンラン石類、緑簾石類、石英、長石類、沸石類等が挙げられる。前記天然のケイ酸塩鉱物に粉砕等の処理を施し、上記コア材を構成する大粒子として使用することが可能である。
コア材は、小粒子と大粒子を混合することにより製造される。さらに使用状況に応じて、この混合体に赤外線不透明化粒子や無機繊維を添加して形成した粉体をコア材として用いてもよい。この粉体を加圧成形したものをコア材として用いてもよい。
小粒子、大粒子、赤外線不透明化粒子及び無機繊維は、公知の粉体混合機を使用して混合することができる。公知の粉体混合機としては、例えば、容器回転型(容器自体が回転、振動、揺動する)として水平円筒型、V型(攪拌羽根が付いていてもよい)、ダブルコーン型、立方体型及び揺動回転型、機械撹拌型(容器は固定され、羽根などで撹拌する)として、単軸リボン型、複軸パドル型、回転鋤型、二軸遊星攪拌型、円錐スクリュー型、高速撹拌型、回転円盤型、ローラー付き回転容器型、撹拌付き回転容器型、高速楕円ローター型、流動撹拌型(空気、ガスによって撹拌する)として、気流撹拌型、重力による無撹拌型が挙げられる。これらの混合機を組み合わせて使用してもよい。
小粒子、大粒子、赤外線不透明化粒子及び無機繊維の混合は、公知の粉砕機を使用して、粒子を粉砕したり、無機繊維を裁断したり、粒子や無機繊維の分散性を向上させながら行ってもよい。従来から知られる粉砕機としては、ロールミル(高圧圧縮ロールミル、ロール回転ミル)、スタンプミル、エッジランナー(フレットミル、チリアンミル)、切断・せん断ミル(カッターミルなど)、ロッドミル、自生粉砕機(エロフォールミル、カスケードミルなど)、竪型ローラーミル(リングローラーミル、ローラーレスミル、ボールレースミル)、高速回転ミル(ハンマーミル、ケージミル、ディスインテグレーター、スクリーンミル、ディスクピンミル)、分級機内蔵型高速回転ミル(固定衝撃板型ミル、ターボ型ミル、遠心分級型ミル、アニュラー型ミル)、容器駆動媒体ミル(転動ボールミル(ポットミル、チューブミル、コニカルミル)、振動ボールミル(円形振動ミル、旋動振動ミル、遠心ミル)、遊星ミル、遠心流動化ミル)、媒体撹拌式ミル(塔式粉砕機、撹拌槽式ミル、横型流通槽式ミル、竪型流通槽式ミル、アニュラーミル)、気流式粉砕機(気流吸込型、ノズル内通過型、衝突型、流動層ジェット吹込型)、圧密せん断ミル(高速遠心ローラーミル、インナーピース式)、乳鉢、石臼などが挙げられる。これらの粉砕機を組み合わせて使用してもよい。
これらの混合機と粉砕機のうち、高速回転ミル、分級機内蔵型高速回転ミル、容器駆動媒体ミル、圧密せん断ミルが、粒子や無機繊維の分散性が向上するため、好ましい。粒子や無機繊維の分散性を向上させるには、撹拌羽根を有する粉体混合機を使用し、撹拌羽根先端の周速を100km/h以上にするのが好ましい。大粒子同士の接触をより少なくする観点で200km/h以上がより好ましく、300km/h以上がさらに好ましい。
断熱材は、シリカを含む無機化合物からなる小粒子及び大粒子を含み、使用状況に応じて赤外線不透明化粒子や無機繊維を添加し形成した粉体をコア材として、袋状に加工した外被材に充填したものでもよいし、この粉体を加圧成形してコア材とし、外被材で被覆したものを断熱材として用いてもよい。前記粉体をコア材として使用する場合、外被材が形成する容積に対する粉体の充填率は、断熱材を使用する対象物に応じて適宜設定することが可能である。前記粉体を加圧成形してコア材とする場合は、後述するように、前記粉体と外被材を共に加圧成形してもよいし、前記粉体を加圧成形した後に外被材で被覆することも可能である。
コア材は、金型プレス成形法(ラム式加圧成形法)、ラバープレス法(静水圧成形法)、押出成形法など、従来から知られるセラミックス加圧成形法によって成形することができる。生産性の観点から、金型プレス成形法が好ましい。
金型プレス成形法やラバープレス法において粉末状のコア材を型に充填するときには、粉末状のコア材に振動を与えるなどして、均一に充填することが、コア材成形体の厚みが均一となるため、好ましい。
型内を減圧・脱気しながら粉末状のコア材を型に充填すると、粉体を短時間で充填できるため、生産性の観点から好ましい。
加圧成形中又は加圧成形後のコア材を、コア材の耐熱性が十分である温度や時間の条件の範囲内で、コア材が構造変化しないように加熱乾燥し、コア材中の吸着水を除去した後、実用に供すると、熱伝導率が低くなるため、好ましい。さらに、寸法安定性の観点から、加熱処理を施してもよい。
上記コア材を外被材で被覆する方法は特に限定されず、コア材の調整や成形と外被材での被覆を同時に実施してもよいし、コア材を調整又は成形後に外被材で被覆してもよい。
外被材が無機繊維織物、樹脂フィルム、プラスチック−金属フィルム、金属箔、セラミックペーパー、無機繊維不織布、有機繊維不織布、ガラス繊維紙、炭素繊維紙、ロックウール紙、無機充填紙、有機繊維紙等のシート状の形態である場合、例えば無機繊維糸や樹脂繊維糸等での縫合、外被材の接着固定、縫合と接着の両方で被覆することが可能である。
上記シート状の外被材が樹脂フィルム、プラスチック−金属フィルム、金属箔等の場合は、被覆工程の容易さの観点から、真空パックやシュリンクパックが好ましい。
外被材がセラミックコーティング、樹脂コーティング等の場合は、コア材に刷毛やスプレーで塗布することにより、コア材を外被材で被覆することが可能である。
加圧成形したコア材と外被材から構成される断熱材に線状のくぼみを設け、断熱材に柔軟性を付与することも可能である。線の形態は、断熱材の使用状況に応じて直線状、曲線状、破線状等を選ぶことができ、これらのうち2種類以上を組み合わせてもよい。線の太さ、くぼみの深さは断熱材の厚み、強度、使用状況に応じて決定される。
上記外被材は、コア材の表面全体を被覆していてもよいし、コア材を部分的に被覆していてもよい。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1では、小粒子として、ヒュームドシリカHDK−N20(商品名、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製)を用いた。大粒子として、シリカヒュームEFACO(商品名、巴工業株式会社製)を用いた。
各粒子の平均粒子径を、FE−SEM装置S−4700(商品名、日立ハイテクフィールディング製)を使用して求めた。ヒュームドシリカHDK−N20の平均粒子径は14nmであった。シリカヒュームEFACOの平均粒子径は150nmであった。
自動湿式真密度測定器オートトゥルーデンサーMAT−7000(商品名、セイシン企業製)を使用し、各粒子の真比重を求めた。シリカヒュームEFACOの真比重CLは2.2であり、ヒュームドシリカHDK−N20の真比重CSは2.2であった。これより、実施例1における0.035CS/CLは0.035であった。
450gのシリカヒュームEFACOと、150gのヒュームドシリカHDK−N20を、ボールミルにより均一に混合して、実施例1の混合粉末(粉末状のコア材)を調製した。ヒュームドシリカHDK−N20の質量の合計値MSは150gであり、シリカヒュームEFACOの質量の合計値MLは450gであることから、比率MS/MLは0.33であった。
上記の混合粉末328gを、内寸が縦20cm、横20cmの金型を使用して加圧成形を行い、縦20cm、横20cm、厚み20mmの成形体(コア材)を得た。成形体のかさ密度は、0.41g・cm−3だった。
実施例1の成形体には、成形欠陥は見られなかった。この成形体の25℃での熱伝導率を、熱伝導率測定装置オートΛ HC−074 200(商品名、英弘精機株式会社製)を利用して測定した。実施例1の成形体の熱伝導率は、0.027W・m−1・K−1であった。
外被材としてTガラスクロス(商品名、日東紡製)を使用して、実施例1の成形体を厚み方向の上下から挟み、Tガラス繊維(商品名、日東紡製)で縫合し、断熱材とした。コア材は縫合糸の張力によっても変形や破損はしなかった。
[実施例2]
457.5gのシリカヒュームEFACOと、42.5gのヒュームドシリカHDK−N20を、実施例1と同様にして混合して、実施例2の混合粉末を調製した。実施例2における比率MS/MLは0.092であった。
実施例2の混合粉末467gを、実施例1と同様にして加圧成形して成形体(コア材)を得た。成形体のかさ密度は0.58g・cm−3であった。実施例1と同様にして金型から取り出した実施例2の成形体に成形欠陥は見られなかった。
実施例2の成形体の25℃での熱伝導率を、実施例1と同様にして測定した。実施例2の成形体の熱伝導率は、0.036W・m−1・K−1であった。
実施例1と同様にして実施例2の成形体を厚み方向の上下から挟み、縫合した。コア材は縫合糸の張力によっても変形や破損はしなかった。
[参考例3]
55.0gのシリカヒュームEFACOと、165gのヒュームドシリカHDK−N20を、実施例1と同様にして混合して、参考例3の混合粉末を調製した。参考例3における比率MS/MLは3.0であった。
参考例3の混合粉末148gを、実施例1と同様にして加圧成形して成形体を得た。成形体のかさ密度は0.19g・cm−3であった。実施例1と同様にして金型から取り出した参考例3の成形体に成形欠陥は見られなかった。
参考例3の成形体の25℃での熱伝導率を、実施例1と同様にして測定した。参考例3の成形体の熱伝導率は、0.020W・m−1・K−1であった。
実施例1と同様にして参考例3の成形体を厚み方向の上下から挟み、縫合した。コア材は縫合糸の張力によっても変形や破損はしなかった。
[実施例4]
シリカヒュームEFACOの代わりに、384gのシリカヒュームSF−ST(商品名、巴工業株式会社製)と、128gのヒュームドシリカHDK−N20とを、M20汎用ミル(商品名、IKAジャパン株式会社製)を使用して均一に混合した後、32gの無機繊維であるセラミックファイバーのSCバルク1260(商品名、新日本サーマルセラミックス株式会社製)と、64gの赤外不透明化粒子であるケイ酸ジルコニウムのミクロパックスS(商品名、ハクスイテック株式会社製)を添加して、M20汎用ミルを使用して均一に混合し、実施例4の混合粉末(粉末状のコア材)を調製した。実施例4における比率MS/MLは0.33であった。
実施例1と同様にしてシリカヒュームSF−STの平均粒子径及び真比重CLを求めたところ、それぞれ80nm及び2.2であった。したがって、実施例4における0.035CS/CLは0.035であった。
実施例4の混合粉末300gずつを、内径が直径30cmの円筒型の金型を使用して加圧成形を行い、直径30cm、厚み20mmの円板状の成形体を2枚得た。成形体のかさ密度は、共に0.21g・cm−3であった。実施例4の成形体に成形欠陥は見られなかった。
この2枚の成形体を用いて、400℃での熱伝導率を、保護熱板法熱伝導率測定装置(英弘精機株式会社製)を利用して測定した。円板状の成形体の熱伝導率は、0.040W・m−1・K−1であった。
外被材として収縮フィルムであるCryovac(R) D−940(商品名、Seald Air製)を使用して、実施例4の成形体をシュリンクパックした。コア材はシュリンクパックによっても変形や破損はしなかった。
[実施例5]
125gのヒュームドシリカHDK−N20と、375gのシリカヒュームEFACOとを、実施例4と同様に混合した後、6gの無機繊維であるS−2グラスファイバー チョップドストランド(商品名、AGY社製)と、94gのミクロパックスSを添加して、実施例と同様に均一に混合し、実施例5の混合粉末(粉末状のコア材)を調製した。実施例5における比率MS/MLは0.33であった。
実施例5の混合粉末424gを、実施例1と同様にして加圧成形して成形体(コア材)を得た。成形体のかさ密度は0.53g・cm−3であった。実施例1と同様にして金型から取り出した実施例5の成形体に成形欠陥は見られなかった。
実施例5の成形体の25℃での熱伝導率を、実施例1と同様にして測定した。実施例5の成形体の熱伝導率は、0.028W・m−1・K−1であった。
外被材として真空パック用フィルムである飛竜(商品名、旭化成パックス(株)製)を使用して、実施例5の成形体を真空パックした。コア材は真空パックによっても変形や破損はしなかった。
[実施例6]
シリカヒュームEFACOの代わりに、SF−シリカヒューム25ksppBAG(商品名、巴工業株式会社製)を使用した他は、実施例1と同様にして、実施例6の混合粉末を調製した。
実施例1と同様にしてSF−シリカヒューム25ksppBAGの平均粒子径及び真比重CLを求めたところ、それぞれ320nm及び2.2であった。したがって、実施例6における0.035CS/CLは0.035であった。
実施例6の混合粉末384gを、実施例1と同様にして加圧成形して成形体(コア材)を得た。成形体のかさ密度は0.48g・cm−3であった。実施例1と同様にして金型から取り出した実施例6の成形体に成形欠陥は見られなかった。
実施例6の成形体の25℃での熱伝導率を、実施例1と同様にして測定した。実施例6の成形体の熱伝導率は、0.024W・m−1・K−1であった。
実施例5と同様にして実施例6の成形体を真空パックした。コア材は真空パックによっても変形や破損はしなかった。
[実施例7]
シリカヒュームEFACOの代わりに、ハイプレシカFQ N2N 5μm(商品名、宇部日東化成株式会社製)を使用した他は、実施例1と同様にして、実施例7の混合粉末を調製した。
実施例1と同様にしてハイプレシカFQ N2N 5μmの平均粒子径及び真比重CLを求めたところ、それぞれ5μm及び2.2であった。したがって、実施例7における0.035CS/CLは0.035であった。
実施例7の混合粉末400gを、実施例1と同様にして加圧成形して成形体(コア材)を得た。成形体のかさ密度は0.50g・cm−3であった。実施例1と同様にして金型から取り出した実施例7の成形体に成形欠陥は見られなかった。
実施例7の成形体の25℃での熱伝導率を、実施例1と同様にして測定した。実施例7の成形体の熱伝導率は、0.028W・m−1・K−1であった。
実施例5と同様にして実施例7の成形体を真空パックした。コア材は真空パックによっても変形や破損はしなかった。
[参考例8]
483gのシリカヒュームSF−STと、17.0gのヒュームドシリカHDK−N20を、高速回転式粉砕機であるロータリークラッシャーNR−08(商品名、三庄インダストリー株式会社製)を使用して、短時間で均一に混合し、参考例8の混合粉末を調製した。参考例8における比率MS/MLは0.035であった。
参考例8の混合粉末482gを、実施例1と同様にして加圧成形して成形体(コア材)を得た。成形体のかさ密度は0.60g・cm−3であった。実施例1と同様にして金型から取り出した参考例8の成形体に成形欠陥は見られなかった。
参考例8の成形体の25℃での熱伝導率を、実施例1と同様にして測定した。参考例8の成形体の熱伝導率は、0.030W・m−1・K−1であった。
実施例5と同様にして参考例8の成形体を真空パックした。コア材は真空パックによっても変形や破損はしなかった。
[比較例1]
122gのヒュームドシリカHDK−N20を、実施例1と同様にして加圧成形して成形体を得た。
実施例1と同様にして金型から取り出したヒュームドシリカHDK−N20の成形体には、成形欠陥が見られ、取り出す際に成形体の一部が破損した。前記成形体を実施例1と同様にして比較例1の成形体を厚み方向の上下から挟み、縫合したところ、コア材は縫合糸の張力によってさらに破損した。
[比較例2]
509.6gのシリカヒュームSF−STと、10.4gのヒュームドシリカHDK−N20を、参考例8と同様にして混合して、比較例2の混合粉末を調製した。比較例2における比率MS/MLは0.020であった。
比較例2の混合粉末504gを、実施例1と同様にして加圧成形したところ、成形体は極めて脆く、金型から取り出す際に破損した。そのため、比較例2の成形体は外被材で被覆することができなかった。
[比較例3]
32gのシリカヒュームEFACOと、128gのヒュームドシリカHDK−N20を、実施例1と同様にして混合して、比較例3の混合粉末を調製した。比較例3における比率MS/MLは4.0であった。
比較例3の混合粉末141gを、実施例1と同様にして加圧成形して成形体を得た。成形体のかさ密度は0.18g・cm−3であった。実施例1と同様にして金型から取り出した比較例3の成形体には、成形欠陥が見られ、取り出す際に成形体の一部が破損した。前記成形体を実施例5と同様にして比較例3の成形体を真空パックしたところ、コア材はさらに破損した。