JP5854642B2 - 粉体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、粉体、その成形体、被包体及び粉体の製造方法に関する。
室温での空気分子の平均自由行程は約100nmである。従って、直径100nm以下の空隙を有する多孔質体内では、空気による対流や伝導による伝熱が抑制されるため、このような多孔質体は優れた断熱作用を示す。
この断熱作用の原理に従い、超微粒子は熱伝導率が低く断熱材に適していることが知られている。例えば、下記特許文献1には、微孔性絶縁物質、赤外線遮蔽剤、粒状の絶縁性フィラー物質の混合物からなる、断熱材とその製造方法が開示されている。
特表2008−533402公報
熱伝導率に注目する限り、重要なのは確かに断熱材の構造であり、シリカのようにある程度熱伝導が小さい素材を選択した上で、多孔質体中の空隙が100nmより短くなるように設計することで、望まれる熱伝導率を達成しうる。しかし、断熱材を実用化しようとする場合、熱伝導率以外にも、取扱性や耐久性、使用される温度における挙動も重要になってくる。
例えば、施工場所や用途によっては、粉状や成形体の断熱材を剥き出しの状態でなく、袋(例えばガラスクロスの袋やチューブ)中に充填され、管状物等に巻きつけるなどして使用するのが望ましい場合もある。そこで、本発明者が特許文献1に記載の断熱材を樹脂製の袋に詰め、想定される使用温度まで加熱して性能を評価したところ、加熱によって水蒸気が発生した。この水蒸気の一部は袋を透過するものの、透過しないで袋内に残ってしまう水蒸気も存在するので、昇温と高温を繰り返される用途の場合、残存した水蒸気は結露してしまう。水が存在すると、断熱材が金属と接触している場合には金属を腐食させるし、金属が存在しない場合でも、気候によっては凍結して断熱材の孔径を広げ、断熱材自体の劣化を進めてしまうことも懸念され、実用化においては、断熱材の仕様として含水率も無視できないことが判明した。
この水蒸気は、断熱材の構成成分であるシリカの表面の水酸基に吸着していた水に由来すると想定されるが、断熱性を高めるためにシリカの粒径を微細化すると、自ずと表面積が増えて、水酸基及びそれに吸着する水を増加させることにつながってしまう。そのため、従来の製造方法では、熱伝導が低く、かつ含水率の小さいシリカは得られなかった。一方、断熱材の含水率に着目した本発明者が、シリカを疎水処理することにより含水率を少なくし、袋詰めしてみたところ、袋の開口部に粉状の断熱材が付着し易く、作業効率が非常に悪かった。さらに、袋の口をシールする際に、帯電した粉体がシール面に付着したため、十分にシールができなかった。つまり、含水率を低減しすぎると、粉状の断熱材の取扱性に難があることが分かった。粉体の用途に応じて、シリカと、例えば無機繊維や赤外線不透明化粒子とを混合する場合があるが、この時に粉体の含水率が少なすぎると、粉体の流動性が著しく大きく、その結果、混合容器の本体と蓋の接合部から粉体が噴出し、取扱い性に難があることも判明した。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、付着性が抑制され、水蒸気が発生しにくい粉体の製造方法を提供する。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、低い熱伝導率を有するシリカ粉体の含水率を適切に設定することで、断熱材として、特に袋詰めした態様の断熱材の内包物として適した粉体が得られることに見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下に示すとおりの粉体の製造方法である。
本発明の粉体の製造方法は、シリカを含有し、BET比表面積が10m/g以上400m/g以下であり、含水率が0.2質量%以上2.5質量%以下であり、かつ、30℃における熱伝導率が0.05W/m・K以下である粉体の製造方法であって、シリカを含み、平均粒子径Dが5nm以上30nm未満である小粒子、及び/又は、シリカを含み、平均粒子径Dが40nm以上60μm以下である大粒子、のうちの少なくとも一方の含水率を、粉体の含水率が0.2質量%以上2.5質量%以下となるように調整する工程と、小粒子及び大粒子を混合する工程と、を含む。
上記本発明の粉体の製造方法では、上記粉体が塩素を含有し、塩素の含有率は0.2質量%以下であることが好ましい。
上記本発明の粉体の製造方法では、上記粉体が赤外線不透明化粒子をさらに含有し、上記粉体の800℃における熱伝導率が0.15W/m・K以下であることが好ましい。
上記本発明の粉体の製造方法では、記粉体に含まれる赤外線不透明化粒子の平均粒子径が0.5μm以上30μm以下であって、上記赤外線不透明化粒子の含有率が、0質量%超49.5質量%以下であることが好ましい。
上記本発明の粉体の製造方法では、上記粉体が無機繊維をさらに含有し、無機繊維の含有率が0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
上記本発明の粉体の製造方法では、記粉体に含まれる無機繊維は、生体溶解性を有することが好ましい。
本発明によれば、付着性が抑制され、水蒸気が発生しにくい粉体の製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る被包体の断面模式図である。 本発明の一実施形態に係る成形体が含有する小粒子及び大粒子の断面模式図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[1]粉体
[1−1]シリカ
本実施形態の粉体はシリカを含有する。粉体中のシリカの含有率が50質量%以上であると、固体伝導による伝熱が小さいため、断熱材用途の場合は好ましい。シリカ粒子の含有率が粉体の75質量%以上であると、粉体同士の付着力が増して、粉体の飛散が少なくなるためより好ましい。なお、本明細書中シリカ粒子とは、組成式SiOで表される成分からなる粒子の他、SiOを含む材料を指し、SiOに加えて金属成分等、他の無機化合物を含有する粒子を包含する。シリカ粒子は、純粋な二酸化ケイ素に加えて、Si及び種々の他元素との塩や複合酸化物を含有してもよいし、水酸化物のような含水酸化物を含有してもよいし、シラノール基を有していてもよい。シリカ粒子中のシリカは、結晶質であっても、非晶質であっても、それらの混合体であってもよいが、断熱材用途の場合は非晶質であると、断熱材中の固体伝導による伝熱が小さく、断熱性能が向上するため、好ましい。
シリカ粒子の具体例としては、下記のものが挙げられる。
「シリカ」や「石英」と呼ばれるケイ素の酸化物。
ケイ素の部分酸化物。
シリカアルミナやゼオライトのようなケイ素の複合酸化物。
Na、Ca、K、Mg、Ba、Ce、B、Fe及びAlのいずれかのケイ酸塩(ガラス)。
ケイ素以外の元素の酸化物、部分酸化物、塩又は複合酸化物(アルミナやチタニア等)と、ケイ素の酸化物、部分酸化物、塩又は複合酸化物との混合体。
SiCやSiNの酸化物。
粉体を断熱材とする場合、使用される温度においてシリカ粒子が熱的に安定であることが好ましい。具体的には、断熱材の使用最高温度において1時間保持したときに、シリカ粒子の重量が10%以上減少しないことが好ましい。また、シリカ粒子は耐水性を有することが好ましい。具体的には、25℃の水100gに対するシリカ粒子の溶解量が0.1g未満であることが好ましく、0.01g未満であることがより好ましい。
シリカ粒子の比重は、粉体を断熱材とする場合、2.0以上4.0以下であることが好ましい。2.0以上3.0以下であると、断熱材のかさ密度が小さいためより好ましく、2.0以上2.5以下であるとさらに好ましい。ここで、シリカを含む無機化合物粒子の比重は、ピクノメーター法により求まる真比重を指す。
粉体の用途によっては、粉体がシリカ粒子以外の材料を含有してもよい。シリカ粒子以外の材料については後で詳述するが、粉体がシリカ粒子以外の材料を含有する場合、シリカ粒子の含有率は、粉体の全質量を基準として50質量%以上99.9質量%以下であることが好ましい。シリカ粒子の含有率が50質量%以上97.5質量%以下で無機繊維や赤外線不透明化粒子を含有する粉体は、粉体の飛散の減少や高い温度での断熱性能の向上といった効果がより好適にあらわれ、より好ましい。含有率が60質量%以上97.5質量%以下であると、粉体のかさ密度がより小さいため、さらに好ましい。
一般的に、粒子径が30nm未満のシリカ粒子(以下、「小粒子」)は比較的含水率が高い傾向がある。この理由について、本発明者は、粒子径が30nm未満のシリカ粒子は表面積が大きいため、シリカ表面の水酸基も多く、その結果水酸基に吸着する水の量が増加するためであると想定している。そのため、小粒子のみからなる粉体は、0.2質量%以上2.5質量%以下という含水率を満たす粉体を得難いので、比較的粒径が大きく、そのために含水率が低いシリカ粒子(以下、「大粒子」)と混合することで、粉体の含水率を調整することができる。大粒子の粒径は40nm以上60μm以下が好ましい。
すなわち、粉体はシリカ粒子を一種のみ含有してもよいし、2種類以上を含んでもよい。特に粒子径の異なる2種類の粒子、すなわちシリカからなる小粒子と大粒子を含有する場合、小粒子又は大粒子のみで存在する場合とは含水率や熱伝導率が異なるので、適当な割合で2種類の粒子を混合することで含水率及び/又は熱伝導率を調整することができる。
例えば平均粒子径DSが5nm以上30nm以下の小粒子は、含水率が2.5質量%超の場合があるが、これに例えば平均粒子径Dが40nm以上60μm未満で含水率が0.5質量%程度の大粒子を混合すると、含水率を2.5質量%以下にし易い。また大粒子は固体熱伝導が大きいので、熱伝導率が0.05W/m・K超の場合があるが、これに小粒子を混合することで、固体熱伝導を抑制し、0.05W/m・K以下にし易くなる傾向がある。上述のように、複数の種類の粒子を混合する際は、得られる混合粉体の含水率及び/又は熱伝導率には概ね加成性が成立するが、シリカの組み合わせによっては予想から大きくずれる可能性もあり得るため、シリカ粒子を段階的に混合し、粉体の含水率や熱伝導率を適宜測定し、上記範囲内になるように粉体の混合比率を調整するのが好ましい。
粉体が2種類以上のシリカ粒子を含有するようにする場合、粉体の含水率を0.2質量%以上2.5質量%以下とし、熱伝導率を0.05W/m・K以下とするように大粒子と小粒子の含有率を調整すればよく、例えば10nm程度の小粒子と5μm程度の大粒子を混合する場合、好ましくは大粒子の質量/(小粒子の質量+大粒子の質量)を0.02〜0.95、より好ましくは0.10〜0.90、特に好ましくは0.15〜0.85とすると、熱伝導率が0.028W/m・K程度〜0.047W/m・K程度になり、熱伝導率を調製することができる。これらの粒子によって形成される空隙が空間の熱伝導のボトルネックとなり、空間の熱伝導が抑制されやすい。
粒子径の異なる2種類のシリカ粒子、すなわちシリカ粒子からなる小粒子と大粒子を含有する場合、小粒子又は大粒子のみで存在する場合とはBET比面積が異なるので、適当な割合で2種類の粒子を混合することでBET比面積を調整することができる。例えば、平均粒子径Dが40nm以上60μm以下の大粒子は、BET比表面積が10m/g未満の場合があるが、これに平均粒子径Dsが5nm以上30nm未満の小粒子を混合すると、BET比表面積を10m/g以上にしやすくなる。大粒子は固体熱伝導が大きいが、熱伝導率が0.05W/m・K超の場合があるが、これに小粒子を混合することで、固体熱伝導を抑制し、0.05W/m・K以下にしやすくなる傾向がある。
粉体が2種類以上のシリカ粒子を含有するようにする場合、粉体のBET比表面積を10m/g以上400m/g以下とし、熱伝導率を0.05W/m・K以下とするように大粒子と小粒子の含有率を調整すればよく、例えば10nm程度の小粒子と5μm程度の大粒子を混合する場合、好ましくは大粒子の質量/(小粒子の質量+大粒子の質量)を0.02〜0.95、より好ましくは0.10〜0.90、特に好ましくは0.15〜0.85とすると、BET比表面積が270m/g程度〜40m/g程度になり、BET比表面積を調整することができる。大粒子の質量比がこの範囲であると、これらの粒子によって形成される空隙が空間の熱伝導のボトルネックとなり、空間の熱伝導が抑制されやすい。粒径20nm程度のいわゆる超微粒子は、熱伝導率が低く断熱材に適していることが知られている一方、それほど粒子径が小さくないシリカ粒子は断熱材に適していないとみなされていたが、超微粒子との混合粉体とすれば、そのようなシリカ粒子を利用しつつ優れた断熱性能を発現する粉体を得られることは、本発明者の発見の一つである。
シリカ粒子のBET比表面積は、粉体のBET比表面積に影響し、粉体がシリカ粒子のみからなる場合、シリカ粒子のBET比表面積は10m/g以上400m/g以下となるが、粉体がシリカ粒子以外の成分を含有する場合、その成分のBET比表面積に鑑みてシリカのBET比表面積を設定することが好ましい。具体的には、粉体が無機繊維を含有する場合、一般的な無機繊維のBET比表面積はシリカのBET比表面積よりも小さいので、シリカのBET比表面積は50m/g程度〜400m/g程度とするのが好ましく、シリカ粒子の粒子径は7nm程度〜50nm程度とするのが好ましい。また、粉体が赤外線不透明化粒子を含有する場合、一般的な赤外線不透明化粒子のBET比表面積はシリカのBET比表面積よりも小さいので、シリカのBET比表面積は70m/g程度〜450m/g程度とするのが好ましく、シリカ粒子の粒子径は5nm程度〜40nm程度とするのが好ましい。
シリカ粒子の粒子径は、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)で観察することにより測定できる。小粒子の平均粒子径D、大粒子の平均粒子径Dは、小粒子、大粒子各1000個をFE−SEMで観察し、その等面積円相当径を求めて数平均を算出することにより、確認することができる。シリカ粒子の固体伝導の観点から、シリカ粒子の平均粒子径は3nm以上80μm未満であることが好ましく、5nm以上50μm未満であることがより好ましく、5nm以上30μm未満であることがさらに好ましい。
大粒子と小粒子を含有する粉体においては、小粒子の平均粒子径Dは、5nm以上30nm未満であることが好ましい。Dが5nm以上であると、Dが上記の数値範囲外である場合に比べて、小粒子が化学的に安定である傾向があり、断熱性能が安定しやすい傾向がある。Dが30nm未満であると、Dが上記の数値範囲外である場合に比べて、小粒子同士の接触面積が小さく、粉体の固体伝導による伝熱が少なく、熱伝導率が小さい傾向がある。
は、5nm以上25nm以下であると、熱伝導率の観点からより好ましく、5nm以上20nm以下であるとさらに好ましい。
大粒子の平均粒子径Dは、D<Dを満たし、40nm以上60μm以下であることが好ましい。Dは、前述のDと同じ方法により求められる。Dが40nm以上であると、粉体を成形した場合に成形体におけるスプリングバックが小さい傾向がある。Dが60μm以下であると、熱伝導率が小さい傾向がある。
大粒子の平均粒子径Dは、40nm以上10μm以下であると、粉体が無機繊維や赤外線不透明化粒子を含む場合にこれらとの均一な混合が容易であるため、より好ましい。Dは、40nm以上5μm以下であると、粒子の付着力が大きく、粉体からの粒子の脱落が少ないため、さらに好ましい。
がDの2倍以上であると、粉体を成形した場合にスプリングバックが小さくなるため、好ましい。DはDの3倍以上であると、小粒子と大粒子の混合粉体のかさ比重が大きく、粉体体積が小さいと作業性が高いので、より好ましい。DはDの4倍以上であると、小粒子と大粒子の粒径の差が大きく、小粒子と大粒子を混合した際に大粒子の小粒子に対する分散が容易であるので、さらに好ましい。粉体が断熱材用途の場合、粒子の凝集による固体伝熱の観点から、各々の粒子が分散していることが好ましい。
粉体は、水が粉体や成形体に浸み込んだ場合にハンドリング性の低下や成形体の変形、ひび割れ等が起こるのを抑制する観点から、撥水剤を含むことが好ましい。撥水剤としては、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、アクリル・エチレン共重合体ワックス等のワックス系撥水剤;シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、アルキルアルコキシシラン等のシリコン系撥水剤;パーフロロアルキルカルボン酸塩、パーフロロアルキルリン酸エステル、パーフロロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のフッ素系撥水剤、アルキル基やパーフルオロ基を含むアルコキシシラン等のシランカップリング剤、トリメチルシリルクロライドや1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン等のシリル化剤等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。これらはそのまま用いてもよいし、溶液やエマルジョンの形態で用いることも可能である。このうち、本発明においてはワックス系撥水剤、シリコン系撥水剤が好ましく用いられる。粉体中の撥水剤の含有率は、十分な撥水効果を付与する観点から、粉体全体の質量/撥水剤の質量比は100/30〜100/0.1が好ましく、100/20〜100/0.5がより好ましく、100/10〜100/1がさらに好ましい。
[1−2]無機繊維
粉体を成形する場合、粉体は無機繊維を含有するのが好ましい。無機繊維を含有すると、特に、繊維を含む粉体は加圧成形において、成形体からの粒子の脱落が少なく、生産性が高いという利点を有する。粉体の状態においても、飛散が少ないので、取扱の上で好ましい。本明細書中、無機繊維とは平均太さに対する無機繊維の平均長さの比(アスペクト比)が10以上であるものをいう。アスペクト比は10以上であることが好ましく、粉体を成形する場合、小さい圧力で成形を可能とし、成形体の生産性を向上させる観点から50以上がより好ましく、成形体の曲げ強度の観点から100以上がさらに好ましい。無機繊維のアスペクト比は、FE−SEMにより測定した無機繊維1000本の太さ及び長さの平均値から求めることができる。無機繊維は粉体中で単分散して混合されていることが好ましいが、無機繊維が互いに絡まった状態や、複数の無機繊維が同一方向で揃った束の状態で混合されていてもかまわない。また、単分散状態において、無機繊維の向きが同一方向で揃った状態であってもかまわないが、熱伝導率を小さくする観点から、無機繊維は、伝熱方向に対して垂直方向に配向していることが好ましい。
無機繊維の例を示すと、ガラス長繊維(フィラメント)(SiO−Al−B−CaO)、グラスウール(SiO−Al−CaO−NaO)、耐アルカリガラス繊維(SiO−ZrO−CaO−NaO)、ロックウール(バサルトウール)(SiO−Al−Fe−MgO−CaO)、スラグウール(SiO−Al−MgO−CaO)、セラミックファイバー(ムライト繊維)(Al−SiO)、シリカ繊維(SiO)、アルミナ繊維(Al−SiO)、チタン酸カリウム繊維、アルミナウィスカー、炭化ケイ素ウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー(セッコウ繊維)、酸化亜鉛ウィスカー、ジルコニア繊維、炭素繊維、黒鉛ウィスカー、フォスフェート繊維、AES(Alkaline Earth Silicate)ファイバー(SiO−CaO−MgO)、 天然鉱物のウォラストナイト、セピオライト、アタパルジャイト、ブルーサイトなど、従来から知られる無機繊維を挙げることができる。
無機繊維の中でも、特に人体にとって安全である生体溶解性のAESファイバー(Alkaline Earth Silicate Fiber)を用いることが好ましい。AESファイバーとしては、例えば、SiO−CaO−MgO系の無機質のガラス(無機高分子)が挙げられる。
無機繊維の平均太さは飛散を防ぐ観点で1μm以上が好ましい。断熱材の場合は固体伝導による伝熱を押さえる観点で20μm以下であることが好ましい。無機繊維の平均太さは、FE−SEMにより、無機繊維1000本の太さを求めて、これを平均して求めることができる。
断熱用途の場合、粉体中の無機繊維の含有率は、加圧成形した成形体からの粉体の脱離抑制の観点で粉体全体の質量に対して0.1質量%以上が好ましく、熱伝導率が0.05W/m・K以下とする観点で50質量%以下であることが好ましい。
シリカ粒子、赤外線不透明化粒子との混合の容易さの観点から、無機繊維の含有率は0.2質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、かさ密度が小さくなる観点から0.2質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
無機繊維の含有率は、例えば、無機繊維を粉体から分級することにより、求めることができる。
無機繊維は水分を含んでいてもかまわないが、その場合、粉体における含水率が2.5質量%以下にできる含水率の無機繊維を選択した上で、無機繊維の混合量も、粉体における含水率が2.5質量%以下を満たすように決定する。その場合、もちろんシリカ粒子の含水率は、無機繊維の含水率に応じて少なくなる。従って、シリカ粒子、無機繊維における含水率を予め測定しておくことが好ましい。無機繊維が水分を含有しない場合は、シリカ粒子(又はシリカ粒子と赤外線不透明化粒子の混合物)が、含水率0.2質量%以上2.5質量%以下(粉体の全質量基準)を満たすようにすればよい。無機繊維によっては、親水性の表面処理が施されており含水率が多い場合もあるが、含水率の高い無機繊維を配合する場合は、無機繊維を洗浄する等して親水性の表面処理剤を除去してから、粉体の原料することも可能である。
[1−3]赤外線不透明化粒子
粉体は、赤外線不透明化粒子を含有することが、高い温度での断熱性能を要する場合は、好ましい。赤外線不透明化粒子とは、赤外線を反射、散乱又は吸収する材料からなる粒子を指す。断熱材に赤外線不透明化粒子が混合されていると、輻射による伝熱が抑制されるため、特に200℃以上の高い温度領域での断熱性能が高い。
赤外線不透明化粒子の例として、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、二酸化チタン、鉄チタン酸化物、酸化鉄、酸化銅、炭化ケイ素、金鉱石、二酸化クロム、二酸化マンガン、グラファイトなどの炭素質物質、炭素繊維、スピネル顔料、アルミニウムの粒子、ステンレス鋼の粒子、青銅の粒子、銅/亜鉛合金の粒子、銅/クロム合金の粒子を挙げることができる。従来、赤外線不透明物質として知られる上記の金属粒子又は非金属粒子を、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
赤外線不透明化粒子としては、特に、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、二酸化チタン又は炭化ケイ素が好ましい。赤外線不透明化粒子の組成はFE−SEM EDXにより求められる。
赤外線不透明化粒子の平均粒子径は、200℃以上での断熱性能の観点で0.5μm以上が好ましく、固体伝導の抑制による200℃未満での断熱性能の観点で30μm以下であることが好ましい。なお、赤外線不透明化粒子の平均粒子径は、シリカ粒子と同じ方法により求められる。無機繊維やシリカ粒子のサイズにもよるが、シリカ粒子が5nm〜50μmの場合、シリカ粒子との混合の容易さの観点で赤外線不透明化粒子の平均粒子径は、0.5μm以上10μm以下であることが、より好ましい。
粉体中の赤外線不透明化粒子の含有率は、0質量%超49.5質量%以下であることが好ましい。赤外線不透明化粒子の含有率が49.5質量%より大きいと、固体伝導による伝熱が大きいため、200℃未満での断熱性能が低い傾向がある。200℃以上での断熱性能を向上させるためには、赤外線不透明化粒子の含有率は、2質量%以上とすることが好ましい。赤外線不透明化粒子の含有率は、シリカ粒子との混合の容易さの観点で2質量%以上30質量%以下が、さらに好ましい。平均粒子径が10nm以上50μm以下で含水率が0.2質量%以上2.5質量%以下であるシリカを含む粉体と、赤外線不透明化粒子とを混合した混合粉体は、粉体がシリカのみで構成される場合よりもかさ比重が大きいため、粉塵が舞い上がりにくく、袋や成形型に充填する際に、周辺への粉体の飛散が少ない。
赤外線不透明化粒子の含有率は、例えば、赤外線不透明化粒子の組成をFE−SEM EDXに測定し、赤外線不透明化粒子のみが含有する元素を蛍光X線分析法により定量することで、求めることができる。
赤外線不透明化粒子は水分を含んでいてもかまわない。赤外線不透明化粒子が水分を含有する場合、粉体全体における含水率が0.2質量%以上2.5質量%以下となるように、シリカ粒子や、含有する場合は無機繊維のナトリウム量を差し引いて赤外線不透明化粒子のナトリウム含有率や混合量を調整する。従って、シリカ粒子、無機繊維における含水率を予め測定しておくことが好ましい。赤外線不透明化粒子の種類によっては、含水率が多いものもあるが、その際はシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤で赤外線不透明化粒子に疎水処理を施して含水率を低減したものを原料とすることも可能である。
[1−4]BET比表面積
本実施態様の粉体は、BET比表面積が10m/g以上400m/g以下である。この範囲にBET比表面積を有する粉体は、熱伝導率が小さい傾向があるので断熱材用途に好ましい。BET比表面積の測定方法は、後述する。
BET比表面積が10m/g以上400m/g以下であって、さらに含水率が0.2質量%以上2.5質量%以下であると、水分に起因する劣化が少なく、かつ外被材に収容する工程や混合工程において取扱いが容易である傾向がある。この理由は定かではないが、上述したように、シリカ粒子の表面積が含水率に影響を及ぼす他、シリカ粒子の凝集状態や帯電状態等に作用して粉体の流動性に影響を及ぼすと推測されることから、BET比表面積が10m/g以上400m/g以下であると含水率が0.2質量%以上2.5質量%以下である傾向があり、その結果水分に起因する劣化が少なく、かつ外被材に収容する工程や混合工程において取扱いが容易な粉体を得られると推定される。BET比表面積は10m/g以上300m/g以下が好ましく、10m/g以上200m/g以下がより好ましく、10m/g以上150m/g以下がさらに好ましい。
複数の種類のシリカ粒子、例えば小粒子と大粒子を混合して粉体を調製する際は、各々のBET比表面積を測定し、BET比表面積が10m/g以上400m/g以下になるように、混合量を調整することが好ましい。例えば、BET比表面積がそれぞれ200m/gの小粒子と0.3m/g大粒子を混合する場合、大粒子の質量/(小粒子の質量+大粒子の質量)が0〜0.88の範囲であることが好ましい。無機繊維、赤外線不透明化粒子を使用する場合も、各々のBET比表面積を予め測定し、混合量を決定することが好ましい。例えば、BET比表面積が200m/gのシリカにBET比表面積が0.15m/gの無機繊維を混合する場合、無機繊維の混合量は0.1質量%〜90質量%であることが好ましい。また、例えばBET比表面積が200m/gのシリカにBET比表面積が2m/gの赤外線不透明化粒子を混合する場合、赤外線不透明化粒子の混合量は0質量%超〜95質量%であることが好ましい。
[1−5]含水率
粉体は、水分を含む。粉体における水分の含有割合、すなわち含水率は、粉体の全質量を基準として0.2質量%以上2.5質量%以下である。含水率が0.2質量%未満であると粉体の飛散が多く、装置内に付着しやすい傾向があり、2.5質量%以上であると、粉体の加熱時に水蒸気の発生が多く、温度の上昇と下降を繰り返す用途の場合は結露の問題が起こり易い。また成形体の場合は加熱時の寸法安定性が悪化する傾向がある。この理由は定かではないが、以下のように推定される。粉体の含水率は、シリカ粒子表面の帯電状態に影響を及ぼし、例えば静電気が発生しにくくなることで装置等への付着が抑制されると推定される。一方で、シリカ粒子同士には適度な付着性が生じ、粉体の飛散が抑制されると推定される。含水率は0.2質量%以上2質量%以下が好ましく、0.3質量%以上1.5質量%がより好ましく、0.4質量%以上1.0%質量%以下がさらに好ましい。粉体における含水率は、カールフィッシャー水分計により定量することができる。
複数の種類のシリカ粒子、例えば小粒子と大粒子を混合して粉体を調製する際は、各々の含水率を予め測定し、混合後の粉体の含水率が0.2質量%以上2.5質量%以下になるように、混合量を調整することが好ましい。例えば、含水率がそれぞれ0.5質量%の小粒子と4質量%の大粒子を混合する場合、大粒子の質量/(小粒子の質量+大粒子の質量)が0〜0.55の範囲であることが好ましい。無機繊維、赤外線不透明化粒子を使用する場合も、各々の含水率を予め測定し、混合量を決定することが好ましい。例えば、含水率が0.7質量%のシリカに含水率が0質量%の無機繊維を混合する場合、無機繊維の混合量は任意に決定することが可能である。例えば、含水率が0.7質量%のシリカに含水率が0.4質量%の赤外線不透明化粒子を混合する場合、赤外線不透明化粒子の混合量は任意に決定することが可能である。
[1−6]熱伝導率
本実施態様の粉体は、30℃における熱伝導率が0.05W/m・K以下である。断熱性能の観点から、熱伝導率は0.045W/m・K以下が好ましく、0.040W/m・K以下がより好ましく、0.037W/m・K以下がさらに好ましい。赤外線不透明化粒子を含有する粉体は、特に200℃以上の高い温度領域での断熱性能を要する場合に、好ましい。粉体が赤外線不透明化粒子を含有する場合、800℃における熱伝導率は0.15W/m・K以下が好ましく、0.14W/m・K以下がより好ましく、0.13W/m・K以下がさらに好ましい。熱伝導率の測定方法は、後述する。
複数の種類のシリカ粒子、例えば小粒子と大粒子を混合して粉体を調製する際は、平均粒子径が5nm以上50μm以下のシリカ粒子を使用し、上述のように含水率を0.2質量%以上2.5質量%以下にした上で熱伝導率を測定することが好ましい。熱伝導率が0.05W/m・K超である場合は、含水率0.2質量%以上2.5質量%以下を維持する範囲で混合量を変えるのが好ましい。無機繊維、赤外線不透明化粒子を使用する場合も同様に混合量を決定することができる。小粒子と大粒子を混合して粉体を調製すると、粉体が大粒子のみで構成される場合に比較して熱伝導率が小さくなる傾向が見られる。例えば、10nm程度の小粒子と5μm程度の大粒子を混合する場合、大粒子の質量/(小粒子の質量+大粒子の質量)を0.02〜0.95とするのが好ましい。無機繊維、赤外線不透明化粒子の混合量は、過剰であると断熱性が低下する場合があるため、熱伝導率を測定し、確認しながら適宜調製することが好ましい。例えば、シリカに平均繊維径が12μm、平均長さが5mmの無機繊維を混合する場合、無機繊維の混合量は30質量%以下であることが好ましい。例えば、シリカに平均粒子径が2μmの赤外線不透明化粒子を混合する場合、赤外線不透明化粒子の混合量は23質量%以下であることが好ましい。また、熱伝導率の小さい材料からなる無機繊維や赤外線不透明化粒子を選択して使用すると、熱伝導率が前記範囲内である混合粉体を調整しやすい傾向がある。
[1−7]Cl、Na、K、その他の元素の含有率
粉体は、加熱時における塩素ガスの発生を少なくする観点や、水に接した際の塩素の溶出及び周辺部材の腐食を抑制する観点から、粉体の全質量を基準として0.2質量%以下であることが好ましく、0.15質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。粉体は、飛散を少なくする観点から、粉体の全質量を基準としてNaの含有率が0.005質量%以上3質量%以下、Kの含有率が0.005質量%以上5質量%以下であることが好ましく、Naの含有率が0.005質量%以上1.5質量%、Kの含有率が0.005質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、Naの含有率が0.005質量%以上1.0%質量%以下、Kの含有率が0.005質量%以上1.5質量%以下であることがさらに好ましい。また、粉体はCl、Na、Kの他に、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、リン(P)、硫黄(S)、ゲルマニウム(Ge)を含んでいてもかまわない。各元素の含有率は、Mgの含有率が0.002質量%以上2質量%以下、Caの含有率が0.002質量%以上0.5質量%以下、Feの含有率が0.005質量%以上6質量%以下、Pの含有率が0.003質量%以上0.3質量%以下、Sの含有率が0.003質量%以上0.3質量%以下、Geの含有率が10質量ppm以上1000質量ppm以下であることが好ましく、Mgの含有率が0.002質量%以上1.8質量%以下、Caの含有率が0.002質量%以上0.4質量%以下、Feの含有率が0.005質量%以上3質量%以下、Pの含有率が0.003質量%以上0.25質量%以下、Sの含有率が0.003質量%以上0.2質量%以下、Geの含有率が10質量ppm以上900質量ppm以下であることがより好ましく、Mgの含有率が0.002質量%以上1.6質量%以下、Caの含有率が0.002質量%以上0.2質量%以下、Feの含有率が0.005質量%以上2質量%以下、Pの含有率が0.003質量%以上0.2質量%以下、Sの含有率が0.003質量%以上0.1質量%以下、Geの含有率が10質量ppm以上800質量ppm以下であることがさらに好ましい。粉体におけるCl、Na、K、その他の元素の含有率は、XRF(蛍光X線分析)により定量することができる。
[2]粉体の製造方法
本実施形態の粉体の製造方法は、シリカを含み、平均粒子径Dが5nm以上30nm未満である小粒子、及び/又は、シリカを含み、平均粒子径Dが40nm以上60μm以下である大粒子、のうちの少なくとも一方の含水率を、粉体の含水率が0.2質量%以上2.5質量%以下となるように調整する工程と、小粒子及び大粒子を混合する工程と、を有する。
[2−1]シリカ粒子
シリカ粒子としては、従来の製法で製造されるシリカ成分を有する粒子を原料とし、平均粒子径、含水率、熱伝導率を調整したものとすることができる。例えば、シリカ粒子は、酸性又はアルカリ性の条件下での湿式法により、ケイ酸イオンを縮合して製造された粒子でもよい。シリカを含む無機化合物粒子は、湿式法でアルコキシシランを加水分解・縮合して製造されたものでもよい。シリカ粒子は、湿式法で製造されたシリカ成分を焼成して製造されたものでもよい。シリカを含む無機化合物粒子は、塩化物などケイ素の化合物を気相で燃焼して製造されたものでもよい。シリカ粒子は、ケイ素金属やケイ素を含む原料を加熱して得られたケイ素ガスを酸化・燃焼して製造されたものでもよい。シリカ粒子は、ケイ石などを溶融して製造されたものでもよい。
シリカ粒子に含まれるシリカ成分以外の成分としては、上記の製法において原料中に不純物として存在しているものを利用してもよい。シリカ成分以外の成分を、シリカの製造プロセス中に添加してもよい。
公知のシリカの製法には以下のものがある。
<湿式法で合成されるシリカ>
ケイ酸ナトリウムを原料に酸性で作られるゲル法シリカ。
ケイ酸ナトリウムを原料にアルカリ性で作られる沈降法シリカ。
アルコキシシランの加水分解・縮合で合成されるシリカ。
<乾式法で合成されるシリカ>
ケイ素の塩化物を燃焼して作られるヒュームドシリカ。
ケイ素金属ガスを燃焼して作られるシリカ。
フェロシリコン製造時などに副生するシリカヒューム。
アーク法やプラズマ法で製造されるシリカ。
粉砕したシリカ粉末を火炎中で溶融・球状化する溶融シリカ。
上記のシリカのうち、ケイ酸ナトリウムを原料に酸性で作られるゲル法シリカ、ケイ酸ナトリウムを原料にアルカリ性で作られる沈降法シリカ、アルコキシシランの加水分解・縮合で合成されるシリカは、含水率が2.5質量%超である。従って、得られたシリカに後述の方法で処理を施したり、例えばケイ素の塩化物を燃焼して作られるヒュームドシリカ、ケイ素金属ガスを燃焼して作られるシリカ、フェロシリコン製造時などに副生するシリカヒューム等の含水率が小さいシリカ粒子を混合したりすることで、含水率を2.5%質量以下にすると、シリカ粒子の原料として使用可能である。シリカ粒子の原料とすることができる。
粉体を高温で使用する場合、特に疎水処理に用いる物質(表面処理剤)の分解温度以上で使用する場合は、表面処理剤の分解物質がアウトガスとして発生する場合がある。
フェロシリコン製造時などに副生するシリカヒューム、粉砕したシリカ粉末を火炎中で溶融・球状化する溶融シリカは熱伝導率が0.05W/m・K超である。従って、この製造方法によって得られたシリカのみをシリカ粒子の原料とするのは、熱伝導率の点では好ましい態様ではないが、コストの面では有用な場合がある。他の製造方法で得られたシリカを混合することで、熱伝導率を0.05W/m・K以下に調整することは可能であるので、シリカヒューム等を原料とする場合は、他の製造方法で得られたシリカ粒子を混合することが好ましい。例えばケイ素の塩化物を燃焼して作られるヒュームドシリカ、ケイ素金属ガスを燃焼して作られるシリカを混合することで、シリカヒューム等の熱伝導率を低減することができる。
上記のシリカのうち、生産性やコストの観点からヒュームドシリカ、ケイ素金属ガスを燃焼して作られるシリカ、シリカヒューム、溶融シリカを用いることがより好ましい。
シリカを含む無機化合物粒子として、天然のケイ酸塩鉱物を使用することが可能である。天然の鉱物としては、例えばカンラン石類、緑簾石類、石英、長石類、沸石類等が挙げられる。天然のケイ酸塩鉱物に粉砕等の処理を施すことで平均粒子径が調整されて、粉体を構成するシリカ粒子として使用することが可能である。含水率が不十分もしくは過剰である場合、後述する方法で含水率を任意の値に調整し、粉体を構成するシリカ粒子として使用することが可能である。
[2−2]含水率
粉体は、含水率が0.2質量%以上2.5質量%以下であるシリカを含む無機化合物粒子を含有し得る。シリカ粒子の含水率が2.5質量%超である場合は、粉体の製造プロセス中に含水率を低減する処理を施して、含水率を所定範囲に調整してもよい。過剰な含水率を2.5質量%以下に調整する方法は特に限定されない。例えば、シリカ粒子に疎水化処理を施すことで、含水率を調整することが可能である。疎水化処理剤の例としては、ポリジメチルシロキサン等のシロキサン、ヘキサメチルジシラザン等のアルキルジシラザン、アルキルアルコキシシラン、界面活性剤、シランカップリング剤及びシリコーンオイルが挙げられる。疎水化処理方法としては、例えば、これらの疎水化処理剤を水又はアルコール等の溶媒で希釈したものを添加しながら粉体を攪拌後乾燥する方法、粉体を水又はアルコール等の溶媒に分散させてスラリーとし、そこへ疎水化処理剤を添加して攪拌及び濾過後、乾燥する方法や、クロロトリメチルシラン等での蒸気処理が挙げられる。シリカ粒子の含水率が0.2質量%未満である場合は、粉体の製造プロセス中に含水率を増加させる処理を施して、含水率を調整してもよい。不十分な含水率を0.2質量%以上に調整する方法は特に限定されない。例えば、シリカ粒子を強酸又は強アルカリ等で処理した後、乾燥し、粉体の原料とすることが可能である。含水率の調整は、シリカを含む無機化合物粒子を予め所望の粒子径まで粉砕した後に行ってもよいし、含水率を所定範囲に調整した後に、シリカ粒子を粉砕してもかまわない。
[2−3]塩素(Cl)
粉体は、Clの含有率が0.2質量%以下であるシリカ粒子を使用することが可能である。シリカ粒子のClの含有率が過剰である場合は、シリカの製造プロセスや粉体の製造プロセス中に何らかの処理を施して、Clの含有率を所定範囲に調整してもよい。過剰なClを所定範囲に調整する方法は特に限定されない。例えば、粉体を水洗した後、乾燥し、粉体の原料として用いることが可能である。また、適当な温度で加熱処理を施すことが可能である。過剰な量のClの低減は、シリカを含む無機化合物粒子を予め所望の粒子径まで粉砕した後に行ってもよいし、含水率を所定範囲に調整した後に、シリカ粒子を粉砕してもかまわない。
[2−4]Na、K、その他の元素
NaやK、Mg、Ca、Fe、P、S、Geは、シリカの製造プロセスや粉体の製造プロセス中に、シリカの製造プロセスや粉体の製造プロセス中に、Na、K、Mg、Ca、Fe、P、S、Geを含む化合物としてそれぞれ添加してもよいが、十分な量のNa、K、Mg、Ca、Fe、P、S、Geを予め含有しているシリカを含む無機化合物粒子を使用してもよい。Na、K、Mg、Ca、Fe、P、S、Geを含む化合物としては、特に限定されないが、例えばNa、K、Mg、Ca、Fe、P、S、Geの酸化物、複合酸化物、水酸化物、窒化物、炭化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、難溶性の塩、及びアルコキシド等が挙げられる。これらは単独で添加してもよく、もしくはこれらの混合物を添加してもよい。Na、K、Mg、Ca、Fe、P、S、Geを不純物として含有するシリカを含む無機化合物粒子を粉体の原料とするのは、生産性、コスト、作業性の観点から、好ましい態様である。このようなシリカを含む無機化合物粒子は、例えば沈殿法で作られたシリカゲル由来の粒子やフェロシリコン製造時などに複製するシリカヒュームとして得ることができる。
Na、K、Mg、Ca、Fe、P、S、Geをそれぞれ含む化合物を添加する方法は、特に限定されない。例えば、上記湿式法や乾式法で得られたシリカに添加してもよいし、シリカの上記各製造工程において添加してもよい。Na、K、Mg、Ca、Fe、P、S、Geをそれぞれ含む化合物は、水溶性であっても水に不溶であってもよい。Na、K、Mg、Ca、Fe、P、S、Geをそれぞれ含む化合物の水溶液として添加し、必要に応じて乾燥させてもよいし、Na、K、Mg、Ca、Fe、P、S、Geをそれぞれ含む化合物を固形物もしくは液状物の状態で添加してもよい。Na、K、Mg、Ca、Fe、P、S、Geをそれぞれ含む化合物は、予め所定の粒子径まで粉砕しておいてもよく、また、予備的に粗粉砕しておいてもよい。
シリカ粒子が過剰な量のNa、K、Mg、Ca、Fe、P、S、Geを含んでいる場合は、シリカの製造プロセスや粉体の製造プロセス中に何らかの処理を施して、前記元素の含有率を所定範囲に調整してもよい。過剰な量のNa、K、Mg、Ca、Fe、P、S、Geを所定範囲に調整する方法は特に限定されない。例えば、Naの含有率の調整方法としては、酸性物質または他の元素による、置換、抽出、除去方法等が挙げられ、シリカを含む無機化合物粒子を硝酸や王水等で処理した後、乾燥し、粉体の原料として用いることが可能である。過剰な量のNa、K、Mg、Ca、Fe、P、S、Geの調整は、シリカを含む無機化合物粒子を予め所望の粒子径まで粉砕した後に行ってもよいし、Na、K、Mg、Ca、Fe、P、S、Geを所定範囲に調整した後に、シリカ粒子を粉砕してもかまわない。
[2−5]混合方法
シリカ粒子、赤外線不透明化粒子及び無機繊維は、公知の粉体混合機、例えば、改訂六版 化学工学便覧(丸善)に掲載されているものを使用して混合することができる。この時、シリカを含む無機化合物粒子を2種類以上混合したり、Ge、Fe、K、Mg、Ca、P、Sをそれぞれ含む化合物やその水溶液を混合することも可能である。公知の粉体混合機としては、容器回転型(容器自体が回転、振動、揺動する)として水平円筒型、V型(攪拌羽根が付いていてもよい)、ダブルコーン型、立方体型及び揺動回転型、機械撹拌型(容器は固定され、羽根などで撹拌する)として、単軸リボン型、複軸パドル型、回転鋤型、二軸遊星攪拌型、円錐スクリュー型、高速撹拌型、回転円盤型、ローラー付き回転容器型、撹拌付き回転容器型、高速楕円ローター型、流動撹拌型(空気、ガスによって撹拌する)として、気流撹拌型、重力による無撹拌型が挙げられる。これらの混合機を組み合わせて使用してもよい。
シリカ粒子、赤外線不透明化粒子及び無機繊維の混合は、粉砕機として公知のもの、例えば、改訂六版 化学工学便覧(丸善)に掲載されているものを使用して、粒子を粉砕したり、無機繊維を裁断したり、粒子や無機繊維の分散性を向上させながら行ってもよい。この時、シリカ粒子を2種類以上粉砕、分散させたり、Ge、Fe、K、Mg、Ca、P、Sをそれぞれ含む化合物やその水溶液を粉砕、分散させたりすることも可能である。公知の粉砕機としては、ロールミル(高圧圧縮ロールミル、ロール回転ミル)、スタンプミル、エッジランナー(フレットミル、チリアンミル)、切断・せん断ミル(カッターミルなど)、ロッドミル、自生粉砕機(エロフォールミル、カスケードミルなど)、竪型ローラーミル(リングローラーミル、ローラーレスミル、ボールレースミル)、高速回転ミル(ハンマーミル、ケージミル、ディスインテグレーター、スクリーンミル、ディスクピンミル)、分級機内蔵型高速回転ミル(固定衝撃板型ミル、ターボ型ミル、遠心分級型ミル、アニュラー型ミル)、容器駆動媒体ミル(転動ボールミル(ポットミル、チューブミル、コニカルミル)、振動ボールミル(円形振動ミル、旋動振動ミル、遠心ミル)、遊星ミル、遠心流動化ミル)、媒体撹拌式ミル(塔式粉砕機、撹拌槽式ミル、横型流通槽式ミル、竪型流通槽式ミル、アニュラーミル)、気流式粉砕機(気流吸込型、ノズル内通過型、衝突型、流動層ジェット吹込型)、圧密せん断ミル(高速遠心ローラーミル、インナーピース式)、乳鉢、石臼などが挙げられる。これらの粉砕機を組み合わせて使用してもよい。
これらの混合機と粉砕機のうち、撹拌羽根を有する粉体混合機、高速回転ミル、分級機内蔵型高速回転ミル、容器駆動媒体ミル、圧密せん断ミルが、粒子や無機繊維の分散性が向上するため、好ましい。粒子や無機繊維の分散性を向上させるには、撹拌羽根、回転板、ハンマープレート、ブレード、ピン等の先端の周速を100km/h以上にするのが好ましく、200km/h以上がより好ましく、300km/h以上がさらに好ましい。
複数の種類のシリカ粒子を混合する場合、かさ比重が小さい順にシリカ粒子を攪拌機もしくは粉砕機に投入することが好ましい。無機繊維や赤外線不透明化粒子を含む場合は、シリカ粒子を混合した後に赤外線不透明化粒子を添加して混合し、さらにその後無機繊維を添加して混合するのが好ましい。
[2−6]成形方法
粉体が断熱用途の場合、成形等の工程を経ることなく、粉体を使用する箇所に充填しただけでそのまま用いてもよいし、粉体を加圧成形したものを断熱材として用いてもよい。
粉体を加圧成形して成形体を製造する場合、金型プレス成形法(ラム式加圧成形法)、ラバープレス法(静水圧成形法)、押出成形法など、従来から知られるセラミックス加圧成形法によって成形することができる。生産性の観点から、金型プレス成形法が好ましい。
金型プレス成形法やラバープレス法で粉体を型に充填するときには、粉体に振動を与えるなどして、均一に充填することが、成形体の厚みが均一となるため、好ましい。型内を減圧・脱気しながら粉体を型に充填すると、短時間で充填できるため、生産性の観点から好ましい。
得られる成形体のかさ密度は、運搬時の負担を軽減する観点から0.25g/cm〜2.0g/cmになるように設定するのが好ましい。成形の条件を加圧圧力で制御しようとすると、使用する粉体のすべり性、粉体の粒子間や細孔への空気の取り込み量等によって、加圧した状態で保持する時間の経過に伴って圧力値が変化してしまうため、生産管理が困難になる傾向がある。これに対し、かさ密度を制御する方法は、時間の制御を要することなく得られる成形体の荷重を目標値にし易い点で好ましい。成形体のかさ密度は、0.25g/cm〜1.7g/cmがより好ましく、0.25g/cm〜1.5g/cmがさらに好ましい。
得られる成形体のかさ密度が所定の大きさになるように、成形体を製造する方法の一例を説明すると、まず成形体の体積及びかさ密度から必要な無機混合物の重量を求める。次いで、秤量した無機混合物を成形型に充填し、所定の厚みになるように加圧して成形する。具体的には、縦30cm、横30cm、厚み20mmでかさ密度が0.5g/cmである成形体を製造する場合、目的とするかさ密度に製造する成形体の体積をかけることで、成形体の製造に必要な粉体の重量を求めることが可能である。すなわち、上述した成形体の例では、0.5[g/cm]×30[cm]×30[cm]×2[cm]=900[g]となり、必要な粉体は900gとなる。
一般化すると、体積αcmで、かさ密度がβg/cm(ただし、βは粉体のかさ密度より大きい)の成形体を製造する場合、αβgだけ、粉体を秤量し、体積αまで粉体を圧縮することによって、成形する。
粉体や、加圧成形中又は加圧成形後の成形体を、粉体もしくは成形体の耐熱性が十分である温度や時間の条件の範囲内で、加熱乾燥し、粉体もしくは成形体の吸着水を除去した後実用に供すると、熱伝導率が低くなるため好ましい。さらに、加熱処理を施してもよい。
成形は、加圧成形のみでもよいが、加圧成形したものを加熱処理するのが好ましい。粉体を加圧成形したものに加熱処理を施すと、圧縮強度が向上し、荷重が大きい用途において特に好適に使用することができる。
寸法安定性の観点から、加熱処理温度は、その粉体もしくは成形体の使用最高温度より高温が好ましい。粉体もしくは成形体の用途により様々であるが、具体的には400〜1200℃が好ましく、より好ましくは500〜1200℃、更に好ましくは600〜1200℃である。
粉体もしくは成形体の加熱処理の雰囲気は、空気中(又は大気中)、酸化性雰囲気中(酸素、オゾン、窒素酸化物、二酸化炭素、過酸化水素、次亜塩素酸、無機・有機過酸化物等)、及び不活性ガス雰囲気中(ヘリウム、アルゴン、窒素等)が挙げられる。加熱処理時間は、加熱処理温度及び断熱材の量に応じて適宜選択すればよい。加熱処理は、上記粉体を使用する箇所に充填した後に施してもよいし、粉体を加圧成形したものに施してもよい。
[3]被包体
被包体は、粉体及び/又は粉体からなる成形体と、それを収容する外被材とを備える。被包体は粉体や成形体と比較して取扱が容易で、施工もしやすいという利点を有する。図1は、本実施形態に係る被包体の断面模式図の一例である。また、図2は本実施形態に係る小粒子及び大粒子の断面模式図の一例である。図1及び図2に示すように、本実施形態の被包体1は、複数の小粒子Sと、小粒子Sよりも粒子径が大きい複数の大粒子Lと、を含有する成形体2と、成形体2を収容する外被材3から構成される。成形体2内において、小粒子S及び大粒子Lは混合しており、大粒子Lの周囲に小粒子Sが存在している。なお、成形体をコア材という場合がある。
[3−1]外被材
外被材は、コア材である粉体及び/又は成形体を収容可能な限り、特に限定されないが、例として、ガラスクロス、アルミナ繊維クロス、シリカクロス等の無機繊維織物、無機繊維編物、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、フッ素系樹脂フィルム等の樹脂フィルム、プラスチック−金属フィルム、アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔等の金属箔、セラミックペーパー、無機繊維不織布、有機繊維不織布、ガラス繊維紙、炭素繊維紙、ロックウール紙、無機充填紙、有機繊維紙、セラミックコーティング、フッ素樹脂コーティング、シロキサン樹脂コーティング等の樹脂コーティング等を挙げることができる。被包体を断熱材とする場合、外被材の熱容量を小さくする観点から、外被材の厚みは薄い方が好ましいが、使用状況や必要な強度等に応じて適宜選択することが可能である。外被材が、コア材を使用する温度で安定なものからなる場合、使用時においても、外被材がコア材である粉体もしくは成形体を収容した状態である。高温で使用される被包体の場合は、使用後のコア材の取扱いがし易い観点で、耐熱性の高い外被材は好ましいが、本明細書中、「外被材」はコア材の使用時にコア材を収容しているものの他、コア材の運搬や施工の工程でコア材を収容しているものを包含する。つまり、外被材は運搬時や施工時にのみコア材を保護し、使用時には溶融及び/又は揮発してしまうものを包含するので、外被材そのものや外被材に含まれる有機成分は、コア材の使用温度で溶融や消失をしてもよい。
外被材は、被覆工程が容易である観点から、ガラスクロス、アルミナ繊維クロス、シリカクロス等の無機繊維織物、無機繊維編物、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、フッ素系樹脂フィルム等の樹脂フィルム、プラスチック−金属フィルム、アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔等の金属箔、セラミックペーパー、無機繊維不織布、有機繊維不織布、ガラス繊維紙、炭素繊維紙、ロックウール紙、無機充填紙、有機繊維紙のようなシート形状が好ましい。
被包体が高温で使用される場合、外被材は、熱的な安定性の観点から、ガラスクロス、アルミナ繊維クロス、シリカクロス等の無機繊維織物、無機繊維編物、セラミックペーパー、無機繊維不織布がより好ましい。外被材は、強度の観点から無機繊維織物がさらに好ましい。
[3−2]外被材で被覆する方法
粉体は、シリカ粒子を含み、使用状況に応じて大粒子、赤外線不透明化粒子や無機繊維を添加し形成した粉体をコア材として、袋状やチューブ状に加工した外被材に充填したものでもよいし、この粉体を加圧成形してコア材とし、外被材で被覆したものでもよい。粉体をコア材とする場合、外被材が形成する容積に対する粉体の充填率は、粉体を使用する対象物に応じて適宜設定することが可能である。成形体をコア材とする場合は、後述するように、粉体と外被材を共に加圧成形してもよいし、粉体を加圧成形した後に外被材で被覆することも可能である。
コア材を外被材で被覆する方法は特に限定されず、コア材の調製や成形と外被材での被覆を同時に実施してもよいし、コア材を調製又は成形後に外被材で被覆してもよい。
外被材が無機繊維織物、樹脂フィルム、プラスチック−金属フィルム、金属箔、セラミックペーパー、無機繊維不織布、有機繊維不織布、ガラス繊維紙、炭素繊維紙、ロックウール紙、無機充填紙、有機繊維紙等のシート状の形態である場合、例えば無機繊維糸や樹脂繊維糸等での縫合、外被材の接着固定、縫合と接着の両方で被覆することが可能である。
シート状の外被材が樹脂フィルム、プラスチック−金属フィルム、金属箔等の場合は、被覆工程の容易さの観点から、真空パックやシュリンクパックが好ましい。
外被材がセラミックコーティング、樹脂コーティング等の場合は、コア材に刷毛やスプレーで塗布することにより、コア材を外被材で被覆することが可能である。
加圧成形したコア材と外被材から構成される成形体に線状のくぼみを設け、成形体に柔軟性を付与することも可能である。線の形態は、成形体の使用状況に応じて直線状、曲線状、破線状等を選ぶことができ、これらのうち2種類以上を組み合わせてもよい。線の太さ、くぼみの深さは成形体の厚み、強度、使用状況に応じて決定される。
外被材は、コア材の表面全体を被覆していてもよいし、コア材を部分的に被覆していてもよい。
熱接着性を有する外被材を用いる場合、製袋充填機を使用することが可能である。製袋充填機には、(1)製袋しながら粉体を充填、シール、カッティングを行う機能を有するものや、(2)外被材を製袋しカットした袋に粉体を充填後シールする機能を有するものがある。粉体を袋内に充填するためにシュート(粉体を高所から低所に流し送るための樋状又は管状の用具)が用いられるが、粉体の含水率が0.2質量%以上2.5質量%以下であると、シュート内やシール面への粉体の付着が抑制される傾向がある。
[4]用途
本実施形態のシリカ粒子を含む粉体、成形体及び被包体は、断熱材の他、吸音材、防音材、遮音材、反響防止材、消音材、研磨剤、触媒担体、吸着剤、芳香剤や殺菌剤などの薬剤を吸着する担体、脱臭剤、消臭剤、調湿材、充填剤、顔料等に好適に用いることもできる。
[5]パラメータの測定
粉体の平均粒子径の測定、含水率の測定、熱伝導率の測定は、次の方法により実施する。粉体の付着性や粉体から発生する水蒸気の評価は、次の方法により評価する。
[粉体のBET比表面積測定]
ユアサ・アイオニクス社製のガス吸着量測定装置「オートソーブ3MP」(商品名)により、吸着ガスとして窒素を用いて、粉体の比表面積を測定する(窒素吸着法)。比表面積はBET法を採用する。
[含水率の測定]
水分加熱気化装置 VA-100型(商品名、三菱化学アナリテック株式会社製)を用いて0.1g〜0.5gのサンプルをN中で200℃、5分間加熱して追い出した水分を水分分析計 CA-100型(商品名、三菱化学アナリテック株式会社製)を用いて測定する。測定サンプルは、温度25℃、湿度50%の雰囲気で24時間保管したサンプルを用いる。
[熱伝導率の測定]
縦30cm、横30cm、厚み5cmの発泡スチロールの中心部を縦24cm、横24cmの正方形状にくりぬき、発泡スチロールの枠を形成する。枠の一方に縦30cm、横30cmのアルミ箔を貼り付けて凹部を形成し、試料台とする。なお、アルミ箔で覆った面を試料台の底面とし、発泡スチロールの厚み方向に対するもう一方の面を天井面とする。粉体をタップや加圧をせずに凹部へ疎充填し、すりきりにした後、天井面に縦30cm、横30cmのアルミ箔をのせたものを測定試料とする。測定試料を用いて、30℃での熱伝導率を、ヒートフローメーター HFM 436 Lambda(商品名、NETZSCH社製)を使用して熱伝導率を測定する。較正は、JISA1412−2に従い、密度163.12kg/m、厚さ25.32mmのNIST SRM 1450c校正用標準板を使用して、高温側と低温側の温度差が20℃の条件において、15、20、24、30、40、50、60、65℃で予め実施する。成形体を測定する場合は、縦30cm、横30cm、厚み20mmの形状にした成形体を測定試料とする。800℃における熱伝導率は、JIS A 1421−1の方法に準拠して測定する。直径30cm、厚み20mmの円板状にした成形体2枚を測定試料とし、測定装置として、保護熱板法熱伝導率測定装置(英弘精機株式会社製)を使用する。
[粉体の付着性の評価]
容量500mL、外径55mm、高さ360mmの硬質ガラス製のメスシリンダー(アズワン株式会社、JIS R 3505規格品 クラスA)を水平面(実験台等)に対して60°傾斜させ、設置する。150mLの粉体を、上記メスシリンダーの内壁に接するように投入した後、水平面に対して垂直に立つように静かに動かす。さらに、粉体を投入したメスシリンダーを水平面から1cmの高さから5回自由落下させた後の、メスシリンダー内壁への粉体の付着を目視で観察し、粉体が付着している箇所がメスシリンダーの300mLの目盛よりも下である場合を○、300mLの目盛より上部にも付着している場合を×とする。
[粉体から発生する水蒸気の評価]
水分加熱気化装置 VA-100型(商品名、三菱化学アナリテック株式会社製)を用いて5gのサンプルをN中で200℃、20分加熱して追い出した水分を氷冷したガラス製のコールドトラップに採取し、コールドトラップ内壁への水滴の付着を目視で観察し、水滴の付着を目視で確認できない場合を○、確認できる場合を×とする。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。当業者は、以下に示す実施例のみならず様々な変更を加えて実施することが可能であり、かかる変更も本発明の特許請求の範囲に包含される。なお、実施例及び比較例におけるBET比表面積の測定、含水率の測定、熱伝導率の測定、粉体の付着性や発生する水蒸気の評価は、それぞれ上述のとおりとした。
[実施例1]
含水率が2.7質量%のシリカ粉体(平均粒子径Dは7.5nm)90質量%と、含水率が101ppmのシリカ粉体(平均粒子径Dは60μm)10質量%をハンマーミルで使用して均一に混合し、実施例1のシリカ粉体を得た。ハンマーミルで混合する際、接合部からの粉体の噴出は見られなかった。このシリカ粉体のBET比表面積は327m/gであり、含水率は2.2質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0200W/m・Kであった。このシリカ粉体421gを使用して、内寸が縦30cm、横30cmの金型で加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.23g/cmの成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0205W/m・Kであった。実施例1のシリカ粉体の付着性評価は○であり、粉体から発生する水蒸気の評価は○であった。
[実施例2]
含水率が2.7質量%のシリカ粉体(平均粒子径Dは7.5nm)25質量%と、含水率が97ppmのシリカ粉体(平均粒子径Dは6μm)75質量%をハンマーミルで使用して均一に混合し、実施例2のシリカ粉体を得た。ハンマーミルで混合する際、接合部からの粉体の噴出は見られなかった。このシリカ粉体のBET比表面積は91m/gであり、含水率は0.65質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0297W/m・Kであった。このシリカ粉体936gを使用して、実施例1と同じサイズの金型で加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.52g/cmの成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0301W/m・Kであった。実施例2のシリカ粉体の付着性評価は○であり、粉体から発生する水蒸気の評価は○であった。
[実施例3]
含水率が2.7質量%のシリカ粉体(平均粒子径Dは7.5nm)50質量%と、含水率が0.73質量%のシリカ粉体(平均粒子径Dは150nm)50質量%をハンマーミルで使用して均一に混合し、実施例3のシリカ粉体を得た。ハンマーミルで混合する際、接合部からの粉体の噴出は見られなかった。このシリカ粉体のBET比表面積は106m/gであり、含水率は1.7質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0204W/m・Kであった。このシリカ粉体576gを使用して、実施例1と同じ金型で加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.32g/cmの成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0201W/m・Kであった。実施例3のシリカ粉体の付着性評価は○であり、粉体から発生する水蒸気の評価は○であった。
[実施例4]
含水率が2.7質量%のシリカ粉体(平均粒子径Dは7.5nm)50質量%と、含水率が0.4質量%のシリカ粉体(平均粒子径Dは80nm)50質量%をハンマーミルで使用して均一に混合し、実施例4のシリカ粉体を得た。ハンマーミルで混合する際、接合部からの粉体の噴出は見られなかった。このシリカ粉体のBET比表面積は199m/gであり、含水率は1.5質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0199W/m・Kであった。このシリカ粉体594gを使用して、実施例1と同様に加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.33g/cmの成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0201W/m・Kであった。実施例4のシリカ粉体の付着性評価は○であり、粉体から発生する水蒸気の評価は○であった。
[実施例5]
含水率が201ppmのシリカ粉体(平均粒子径Dは14nm)60質量%と、含水率が3.5質量%のシリカ粉体(平均粒子径Dは80nm)40質量%をハンマーミルで使用して均一に混合し、実施例5のシリカ粉体を得た。ハンマーミルで混合する際、接合部からの粉体の噴出は見られなかった。このシリカ粉体のBET比表面積は135m/gであり、含水率は1.9質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0201W/m・Kであった。このシリカ粉体378gを使用して、実施例1と同様に加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.21g/cmの成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0203W/m・Kであった。実施例5のシリカ粉体の付着性評価は○であり、粉体から発生する水蒸気の評価は○であった。
[実施例6]
含水率が2.7質量%のシリカ粉体(平均粒子径Dは7.5nm)75質量%と、含水率が155ppmのシリカ粉体(平均粒子径Dは50μm)25質量%をハンマーミルで使用して均一に混合し、実施例6のシリカ粉体を得た。ハンマーミルで混合する際、接合部からの粉体の噴出は見られなかった。このシリカ粉体のBET比表面積は273m/gであり、含水率は2.0質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0195W/m・Kであった。このシリカ粉体396gを使用して、実施例1と同様に加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.22g/cmの成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0194W/m・Kであった。実施例6のシリカ粉体の付着性評価は○であり、粉体から発生する水蒸気の評価は○であった。
[実施例7]
含水率が3.5質量%のシリカ粉体をトルエンに分散させて85℃で攪拌していることころにヘキサメチルジシラザンを滴下し、引き続き85℃還流下で5時間攪拌を続けた。その後、エバポレーターで溶媒を除去し、120℃で18時間乾燥し、さらに室温で1ヶ月保管して実施例7のシリカ粉体を得た。このシリカ粉体のBET比表面積は45m/gであり、含水率は0.5質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0314W/m・Kであった。このシリカ粉体614gを使用して、実施例1と同様に加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.34g/cmの成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0312W/m・Kであった。なお、シリカ粒子の平均粒子径Dは80nmであった。実施例7のシリカ粉体の付着性評価は○であり、粉体から発生する水蒸気の評価は○であった。
[実施例8]
含水率が2.7質量%のシリカ粉体(平均粒子径Dは7.5nm)21質量%と、含水率が0.73質量%のシリカ粉体(平均粒子径Dは150nm)63質量%をハンマーミルで均一に混合した後、平均粒子径が1μmの、赤外不透明化粒子であるケイ酸ジルコニウム16質量%を添加して引き続き均一に混合し、実施例8のシリカ粉体を得た。ハンマーミルで混合する際、接合部からの粉体の噴出は見られなかった。このシリカ粉体のBET比表面積は88m/gであり、含水率は1.0質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0267W/m・Kであった。このシリカ粉体を使用して、実施例1と同様に加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.58g/cmの成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0266W/m・Kであった。また、このシリカ粉体を使用して、内径が直径30cmの円筒型の金型を使用して加圧成形を行い、直径30cm、厚み20mm、かさ密度が0.58g/cmの円板状の成形体を2枚得た。この2枚の成形体を用いて、800℃における熱伝導率を測定したところ、0.0847W/m・Kであった。実施例8のシリカ粉体の付着性評価は○であり、粉体から発生する水蒸気の評価は○であった。
[実施例9]
含水率が2.7質量%のシリカ粉体(平均粒子径Dは7.5nm)22.5質量%と、含水率が0.4質量%のシリカ粉体(平均粒子径Dは80nm)67.5質量%をハンマーミルで均一に混合した後、平均繊維径が11μmで平均繊維長が6.4mmのグラスファイバー10質量%を添加して高速せん断ミキサーで混合して均一にし、実施例9のシリカ粉体を得た。ハンマーミルで混合する際、高速せん断ミキサーで混合する際共に、接合部からの粉体の噴出は見られなかった。このシリカ粉体のBET比表面積は105m/gであり、含水率は0.68質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0261W/m・Kであった。このシリカ粉体864gを使用して、実施例1と同じ金型で加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.48g/cmの成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0263W/m・Kであった。実施例9のシリカ粉体の付着性評価は○であり、粉体から発生する水蒸気の評価は○であった。
[実施例10]
含水率が2.7質量%のシリカ粉体(平均粒子径Dは7.5nm)19質量%と、含水率が0.4質量%のシリカ粉体(平均粒子径Dは80nm)57質量%をハンマーミルで均一に混合した後、平均粒子径が1μmの、赤外不透明化粒子であるケイ酸ジルコニウム14質量%を添加して引き続き均一に混合し、さらに平均繊維径が11μmで平均繊維長が6.4mmのグラスファイバー10質量%を添加して高速せん断ミキサーで混合して均一にし、実施例10のシリカ粉体を得た。ハンマーミルで混合する際、高速せん断ミキサーで混合する際共に、接合部からの粉体の噴出は見られなかった。この粉体のBET比表面積は88m/gであり、含水率は0.66質量%であり、30℃における熱伝導率は0.0273W/m・Kであった。この粉体970gを使用して、実施例1と同じ金型で加圧成形を行い、縦30cm、横30cm、厚み20mm、かさ密度が0.54g/cmの成形体を得た。成形体の30℃における熱伝導率は0.0272W/m・Kであった。実施例10のシリカ粉体の付着性評価は○であり、粉体から発生する水蒸気の評価は○であった。
表1に、実施例1〜10の粉体におけるClの含有率を示す。
Figure 0005854642
[比較例1]
BET比表面積が45m/g、平均粒子径が80nm、含水率が3.5質量%のシリカ粉体の30℃における熱伝導率は0.0313W/m・Kであった。比較例1のシリカ粉体の付着性評価結果は○であったが、粉体から発生する水蒸気の評価は×であった。
[比較例2]
BET比表面積が0.04m/g、平均粒子径が60μm、含水率が101ppmのシリカ粉体の30℃における熱伝導率は0.0814W/m・Kであった。比較例2のシリカ粉体の付着性評価結果は×であり、粉体から発生する水蒸気の評価は○であった。
1…被包体(断熱材)、2…コア材(成形体)、3…外被材、S…小粒子、L…大粒子。

Claims (6)

  1. シリカを含有し、
    BET比表面積が10m/g以上400m/g以下であり、含水率が0.2質量%以上2.5質量%以下であり、30℃における熱伝導率が0.05W/m・K以下である粉体の製造方法であって、
    シリカを含み、平均粒子径Dが5nm以上30nm未満である小粒子、及び/又は、シリカを含み、平均粒子径Dが40nm以上60μm以下である大粒子、のうちの少なくとも一方の含水率を、粉体の含水率が0.2質量%以上2.5質量%以下となるように調整する工程と、
    前記小粒子及び前記大粒子を混合する工程と、
    を含む粉体の製造方法。
  2. 前記粉体が塩素を含有し、前記塩素の含有率が0.2質量%以下である、請求項1に記載の粉体の製造方法
  3. 前記粉体が赤外線不透明化粒子をさらに含有し、前記粉体の800℃における熱伝導率が0.15W/m・K以下である、請求項1又は2に記載の粉体の製造方法
  4. 前記赤外線不透明化粒子の平均粒子径が0.5μm以上30μm以下であって、前記赤外線不透明化粒子の含有率が、0質量%超49.5質量%以下である、請求項3に記載の粉体の製造方法
  5. 前記粉体が無機繊維をさらに含有し、前記無機繊維の含有率が0.1質量%以上50質量%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉体の製造方法
  6. 前記無機繊維が生体溶解性を有する、請求項5に記載の粉体の製造方法
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