JP5864594B2 - 抗菌性を有する剤が固定化された物品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、あらゆる素材の物品に対して効率的に、かつ、耐久性に優れるように、前記の抗菌剤を固定化する方法は知られていなかった。具体的には、ガラスや金属等の無機材料や、表面にヒドロキシル基を有する素材には比較的容易にこの抗菌剤を固定化できるのに対して、例えばポリエステル繊維等の合成繊維やポリプロピレン等の樹脂材料等の、表面にヒドロキシル基を有さない物品は、上記抗菌剤の固定化には不向きであった。
しかしながら、この発明ではプラズマ処理を行うことが必要であり、抗菌剤を固定化した樹脂を製造するための設備の中に、プラズマ処理装置を欠くことができない。
オゾン水処理及びマイクロ波照射はいずれも、物品の表面に−OH基(ヒドロキシル基)や−CHO基(アルデヒド基)、又は−O−基等を生じさせることを目的としている。これらの基が物品表面に存在すれば、抗菌剤分子のアルコキシシリル基と反応が可能となり、抗菌剤を物品の表面に固定化できるからである。
しかしながら、オゾン水処理を行うためには、処理に用いるオゾン水を供給するためのオゾン水生成設備を備える必要があった。また、マイクロ波照射を行う場合にも、マイクロ波を発生させるための専用の設備が必要であった。
また、抗菌剤を固定化した物品を実用に供するためには、使用による摩擦や多数回の洗濯等に抗して、抗菌剤が表面から脱落せずに抗菌効果が維持されること(耐久性)が求められるところ、耐久性については十分な検討が進んでいなかった。
なお、本明細書中で「カルボキシル基を有する」とは、物品の表面に存在するカルボキシル基が、解離していないフリーのカルボキシル基(−COOH)として存在する場合だけでなく、末端の水素原子が離脱してカルボキシラートアニオンになっている場合やカルボキシラートアニオンと抗菌剤分子とが化学的に結合している場合も、特に断りのない限り、含むものとする。
また、本明細書中で「物品の基材」とは、抗菌剤が付与された物品を構成する要素のうち、物品の構造や形態を規定する本体となる部分を意味する。
カルボキシル基を有する樹脂成分として、或いは、カルボキシル基を有する樹脂成分とともにこのようなポリマーを用いると、抗菌剤を表面に効率的に固定化できるのに加えて、所望の柔軟性や強度等の物性を得られるため、抗菌性と所望の物性とを両立した物品を得ることができる。また、適当な樹脂を選択することによって、コストの面でも有利となる。
(式中、R1は炭素原子数12〜24のアルキル基を示し、R2及びR3は同一又は異なっていてもよい炭素原子数1〜6の低級アルキル基を示し、Xはハロゲンイオン又は有機カルボニルオキシイオン(有機カルボン酸イオン)を示す)で表される抗菌剤であることが好ましく、オクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドがより好ましい。
カルボキシル基を有するバインダーは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を重合したアクリルポリマーを含むバインダーであることがより好ましく、物品は、布帛であることがより好ましい。
カルボキシル基を有するバインダーが表面に付与された物品は、物品自体にカルボキシル基を含有していなくても、その表面にカルボキシル基を得ることができる。そのため、バインダーを介して抗菌剤を付着させて、物品に抗菌剤を固定することができるようになる。また、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を重合したポリマーを含有するバインダーは一般に取扱いが容易であり、さらに、比較的安価で入手容易であるという利点がある。
また、物品が布帛である場合、カルボキシル基を有するバインダーを用いて、天然繊維、合成繊維を含む多様な材質の布帛に対して、エトキシシラン系第4級アンモニウム塩を固定化することができる。例えば、従来、ポリエステルからなる布帛にエトキシシラン系第4級アンモニウム塩を固定化し、優れた洗濯耐久性を持たせることは困難であったが、カルボキシル基を有するバインダーと組み合わせることで、抗菌性、洗濯耐久性、摩擦耐久性を備えたポリエステル繊維からなる布帛を低コストで得ることができる。
また、物品の表面に、カルボキシル基を有するバインダーを付与することによって、物品自体の材質として表面にカルボキシル基を有していない物品に対しても、エトキシシラン系第4級アンモニウム塩を含む抗菌剤を固定化することができる。
本発明の物品に固定化される抗菌剤は、エトキシシラン系第4級アンモニウム塩を含む抗菌剤であり、エトキシシラン系第4級アンモニウム塩は、抗菌性を発現する比較的長鎖のアルキル基を有するアンモニウム基と、物品の材質表面と共有結合を形成し得るアルコキシシリル基とを有している。エトキシシラン系第4級アンモニウム塩としては具体的には、下記一般式(1)
上記のエトキシシラン系第4級アンモニウム塩は、グラム陽性菌、グラム陰性菌に対する抗菌(制菌)効果、及び、インフルエンザウィルス、はしかウィルス等のエンベロープウィルスに対しても抗ウィルス作用を有している(抗菌効果、抗ウィルス効果をまとめて、抗菌効果という)。さらに、抗菌効果以外にも、制電効果、防臭効果も同時に有するものと考えられている。
本発明の抗菌剤が固定化される物品は、少なくとも物品の表面、物品の一部、又は物品の全体に、カルボキシル基を有する樹脂成分を有する物品である。
本発明の物品は、
1)物品の基材自体の少なくとも表面が、カルボキシル基を有する樹脂成分からなるもの
2)物品の基材の表面に、カルボキシル基を有するバインダー(樹脂成分)を付与したもの
のいずれでもよい。1)の場合にあっては、基材の表面のみがカルボキシル基を有する樹脂で構成されていても、基材の全体がカルボキシル基を有する樹脂で構成されていてもよい。
カルボキシル基を有する樹脂成分が表面にあれば、抗菌剤を効果的に固定化することが可能となる。表面以外の部分、例えば、通常の使用において菌やウィルスが付着することがない部分や、菌やウィルスの付着が問題とならない物品の内部は、カルボキシル基を含有する樹脂以外の材料からなっていてもよい。
物品の基材自体にカルボキシル基を有する樹脂成分が含まれる場合、カルボキシル基を有する樹脂成分としては、主鎖に結合した側鎖にカルボキシル基を有するポリマーを含む樹脂成分がある。このようなポリマーを与える、カルボキシル基を有するモノマーとしては公知の化合物、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらのうち、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を含むモノマーを重合させて得たポリマーを含む樹脂成分であることが好ましい。
カルボキシル基を有するポリオレフィン系ポリマーとする場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン等を酸変性したものを用いることができる。このようなポリマーとしては、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン、具体的には、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
本発明の物品に対する抗菌剤の付着量は、本発明の効果が得られる限り特に制限されないが、例えば物品に対して0.0005g/m2〜10g/m2、好ましくは0.001g/m2〜3g/m2とすることができる。
カルボキシル基を有するバインダーを物品に付与する場合、抗菌剤が固定化される物品はバインダーが接着する限りにおいて特に制限されず、用途及び目的によって適宜選択できる。例えば、糸、布帛、プラスチック成型品、フィルム、タッチパネル、化粧版、合板等が挙げられる。物品の材質も、バインダーが接着する物であれば特に制限されず、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、塩化ビニル、レーヨン、ポリカーボネート、合成ゴム、天然ゴム、各種天然繊維、各種木材、各種金属等が選択される。
カルボキシル基を有する成分とは、バインダーの成分であるポリマー(単独重合体及び/又は共重合体)の主鎖に結合した側鎖にカルボキシル基を有する成分をいう。このようなポリマーを構成する、カルボキシル基を有するモノマー成分としては、具体的に、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、カルボキシメチルセルロース等があるが、洗濯耐久性の観点からアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。
ポリオレフィン系バインダーとする場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン等を酸変性したものを用いることができる。このようなバインダーとしては、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン、具体的には、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
ポリマー中における、カルボキシル基を含むモノマーの割合は、65%を超える場合にはバインダーの耐水性が落ちるため、バインダー成分の固形分に対して65%以下であることが好ましい。
また、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマーの場合、カルボキシル基を含むモノマーと共重合されるモノマーとしては、ビニル系モノマー、例えば、グリシジル基含有ビニル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、シアン化ビニル系モノマー、エチレン性不飽和エーテルモノマー、エチレン性不飽和アミンモノマー、エチレン性不飽和シランモノマー、脂肪族共役ジエン系モノマー、ポリエーテルポリオールなどが挙げられる。
また、例えば、物品がポリプロピレン樹脂製品である場合、ポリプロピレンポリマー骨格を有するバインダーを用いると、物品とバインダーとの接着性が向上するためより好ましい。すなわち、前述したカルボキシル基を有するポリプロピレンポリマーをポリプロピレン樹脂製品に付与した後に抗菌剤を付与すると、バインダーと物品との接着性が更に向上することから結果的に、物品表面に抗菌剤が保持されやすくなるため好ましい。
物品が布帛である場合には、これらのうち、バインダーの造膜性や、布帛表面への固着性及び、布帛表面に固着させたときの布帛の柔らかさ等の観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ペンチル等のアクリル酸アルキルエステルをモノマーとして含むアクリル系ポリマーを含有するアクリル系バインダーがより好ましい。
本発明の抗菌性を有する物品は、少なくとも表面にカルボキシル基を有する樹脂成分を含む物品に、エトキシシラン系第4級アンモニウム塩を含む抗菌剤を付与し、固定化するステップを含む製造方法によって製造することができる。
物品の材質自体にカルボキシル基を含む場合、カルボキシル基を含有する樹脂を所望の形態に成型し、この成型物に対して抗菌剤を付与してもよいし、既に成型されている物品を入手して抗菌剤を付与することもできる。
抗菌剤の付与には、特別の前処理を必要とせず、多様な物品に対して常用される範囲での装置や処理条件で製造することができるため、低コストでの製造が可能である。
物品に抗菌剤を処理する際の処理温度は特に制限されず、常温を含む温度範囲で行うことができる。例えば、110℃〜180℃において処理を行う。
エトキシシラン系第4級アンモニウム塩は、比較的短時間で物品の表面に固定化されるものと考えられており、処理時間は30秒〜10分、好ましくは1分〜3分とすることができる。
あるいは、先ず、所望の成形品にカルボキシル基を有するバインダーを含む溶液を噴霧し、続いて、エトキシシラン系第4級アンモニウム塩を含む抗菌剤を含有する溶液を噴霧してもよい。又は、先ず、所望の成形品にカルボキシル基を有するバインダーを含む溶液を塗布し、続いて、エトキシシラン系第4級アンモニウム塩を含む抗菌剤を含有する溶液を塗布してもよい。
また、これらの浸漬、噴霧、塗布は組み合わせて用いてもよく、さらに、別の適当な表面処理方法を選択して用いてもよい。
Dip−Nip法で処理を行う場合、まず、布帛をバインダー溶液に浸漬し、マングル等で絞った後に加熱乾燥し、布帛にバインダーを付着させる。続いて、当該布帛を所望濃度の抗菌剤に浸漬し、マングル等で絞った後に加熱乾燥処理を行って、抗菌剤を固定化することができる。
また、乾燥・熱処理時間は、製造する布帛の材質、目付けや用途によって適宜選択することができるが、1〜5分間であることが好ましい。乾燥・熱処理には、ループ式乾燥機、ネット式ドライヤー、オーブン、ヒートセッターなどの装置を用いることができる。
[材料]
1.抗菌剤:エトキシシラン系第4級アンモニウム塩であるオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドのエタノール溶液(マナック社製、商品名ESi−QAC)に水を加えて所定の濃度にした溶液を用いた。
2.バインダー:下表1に示す、ヒドロキシル基を含有する(カルボキシル基を含有しない)バインダーa〜d、及び、カルボキシル基を含有するバインダー1〜5を用いた。
3.物品:布帛(ポリエステル布帛、ウール布帛、難燃加工(ザプロ加工)ウール布帛、綿布帛。目付等は各例に記載)、ポリプロピレン樹脂成形物、ニトリルゴムフィルムを用いた。
1.抗菌剤の検出:布帛に付着した抗菌剤の検出には、ブロモフェノールブルーとアンモニウム塩とのカチオン性の呈色反応を用いた。
具体的には、抗菌剤の固定処理後の布帛、又は、当該布帛を所定回数洗濯した後の布帛について、2.5cm×5cmのサンプル片を切り出し、ブロモフェノールブルーの呈色反応(反応剤濃度:0.03%sol、反応時間:30秒又は180秒)を行い、乾燥した後、呈色後の試験布の明度及びΔEを、SMカラーコンピューター(スガ試験機株式会社製)にて測定、算出した。測定及び算出方法は、JIS Z 8729に準じた。抗菌剤の保持率は、抗菌剤の固定化処理後(つまり、洗濯回数0回)の布帛のΔEを100として、所定回数洗濯後のΔEの値の割合を算出し、抗菌剤の保持率とした。
2.洗浄方法A:JIS L 0217 No.103 2項(普通)洗浄方法に準拠した。洗剤は、アタックALLin(花王社製)を用いた。
3.洗浄方法B:JIS L 0217 No.103 2項(普通)洗浄方法に準拠した。洗剤は、JAFET標準洗剤を用いた。
4.抗菌性能試験:JIS L 1902、菌液吸収法に準拠した。
(試験1−1)
表1に示した、ヒドロキシル基を含有する(カルボキシル基を含有しない)バインダーa〜dを用いてポリエステル布帛へ抗菌剤を固定化した。
抗菌剤を固定化した布帛の作成は次の通りとした。質量390g/m2のポリエステル原布Aからタテ、ヨコ各20cmの布帛片を切り出し、所定のバインダー溶液に浸漬した後、マングルにて絞った。この時の布帛のピックアップ率は70%であった。その後、ヒートセッターを用い、設定温度150℃で乾燥した。この時の各布帛へのバインダーの付着量については、表2に示す。
その後、抗菌剤有効成分であるオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドが0.3%となるように調製した抗菌剤溶液に浸漬した後、ヒートセッターを用い、設定温度150℃で乾燥した。この時の各布帛への抗菌剤の付着量は0.82g/m2であった。
洗濯は前記の洗浄方法Aを用い、洗濯0回、1回、3回後の各布帛について抗菌剤の付着量を測定した。抗菌剤の検出は上述の呈色反応を用い、ブロモフェノールブルーの呈色時間は30秒とした。結果を表2に示す。
表1のヒドロキシル基を含有する(カルボキシル基を含有しない)バインダーa、d及び、ヒドロキシル基及びカルボキシル基を有するバインダー1を用いて、ポリエステル布帛に抗菌剤を固定化した。
布帛への抗菌剤の固定化は、抗菌剤の有効成分(オクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド)を0.03〜0.3%の各濃度(表3に示す)とした以外は試験1−1と同様の条件で行った。洗濯は前記の洗浄方法Aを用い、洗濯0回、1回、3回後の各布帛について抗菌剤の付着量を測定した。抗菌剤の付着量の検出は上述の方法を用い、ブロモフェノールブルーの呈色時間は180秒とした。結果を表3に示す。
カルボキシル基を含有するバインダー2〜5を使用して、試験1−2と同様の方法にて抗菌剤をポリエステル布帛Aに付着させた。抗菌剤の有効成分濃度はいずれも0.3%solとした。洗濯は前記の洗浄方法Aを用い、洗濯0回、1回、3回後の各布帛について抗菌剤の付着量を測定した。抗菌剤の付着量の検出は上述の方法を用い、ブロモフェノールブルーの呈色時間は180秒とした。結果を表4に示す。
カルボキシル基を有するバインダー2、ヒドロキシル基を有するバインダーa及びd、また、バインダーを用いずに、試験1−2と同様の方法にて抗菌剤をポリエステル布帛Aに付着させた。抗菌剤の有効成分濃度はいずれも0.3%とした。洗濯は、洗浄方法Bを用い、洗濯0回、1回、3回後の各布帛について抗菌剤の付着量を測定した。抗菌剤の付着量の検出は上述の方法を用い、ブロモフェノールブルーの呈色時間は180秒とした。結果を表5に示す。
綿、ポリエステル、ウール、難燃加工(ザプロ加工)ウールの各布帛に抗菌剤を固定化し、洗濯10回(ウール及び難燃加工ウールについては洗濯7回)後の抗菌剤の付着量を確認した。各布帛について、バインダーを使用しない場合、カルボキシル基を含有するバインダー(バインダー2)を使用する場合のそれぞれについて試験を行った。
綿原布への抗菌剤の固定化は、バインダーを使用しない場合、質量84g/m2の綿原布からタテ、ヨコ各20cmの布帛片を切り出し、所定の抗菌剤溶液に浸漬した後、マングルにて絞った。この時の布帛のピックアップ率は89%であった。その後、ヒートセッターを用い、設定温度150℃で乾燥した。この時の布帛への抗菌剤の付着量は0.22g/m2であった。
バインダーを使用する場合、まず、所定のバインダー溶液に浸漬した後、マングルにて絞った。この時の布帛のピックアップ率は70%であった。その後、ヒートセッターを用い、設定温度150℃で乾燥した。布帛へのバインダーの付着量は表6に示す。その後、所定の抗菌剤溶液(抗菌剤の有効成分濃度0.3%)に浸漬した後、ヒートセッターを用い、設定温度150℃で乾燥した。
ポリエステル原布への抗菌剤の固定化は、ポリエステル原布として質量390g/m2のポリエステル布帛Aを用いた以外は、綿原布と同様の方法とした。ピックアップ率は70%であった。
ウール原布への抗菌剤の固定化は、ウール原布として質量118g/m2のものを用いた以外は、綿原布と同様の方法とした。ピックアップ率は63%であった。
難燃加工ウールへの抗菌剤の固定化は、難燃加工原布として質量366g/m2のものを用いた以外は、綿原布と同様の方法とした。ピックアップ率は58%であった。
洗濯は、洗浄方法Bを用い、洗濯0回、1回、3回、5回、10回(但し、ウール及び難燃加工ウールは7回)後の各布帛について抗菌剤の付着量を測定した。抗菌剤の付着量の検出は上述の方法を用い、ブロモフェノールブルーの呈色時間は180秒とした。結果を表6に示す。
カルボキシル基を有するバインダー2を用いて、浸漬処理後の乾燥温度を110〜180℃の各温度として、ポリエステル布帛Aに対して抗菌剤の固定化を行った。処理温度以外の条件は試験1−2と同様とした。洗濯は、洗浄方法Bを用い、洗濯0回、1回、3回、5回後の各布帛について抗菌剤の付着量を測定した。抗菌剤の付着量の検出は上述の方法を用い、ブロモフェノールブルーの呈色時間は180秒とした。結果を下表7に示す。
カルボキシル基を有するバインダー2を用いて抗菌剤を固定化したポリエステル布帛A、バインダーを用いずに抗菌剤処理したポリエステル布帛A(いずれも10回洗濯後)、及び、未処理の綿布帛について、抗菌性能を確認した。布帛の処理方法及び洗濯方法は、試験1−2と同様とした。抗菌性能試験方法はJIS L 1902、菌液吸収法に準じて行った。結果を表8に示す。
カルボキシル基を有するバインダー2を用いて抗菌剤を固定化したポリエステル布帛A、及び、バインダーを用いずに抗菌剤処理したポリエステル布帛Aについて、抗菌剤の摩擦耐久性を確認した。
試験片として、タテ230mm、ヨコ30mmのポリエステル布帛A(バインダー及び抗菌剤処理のもの、抗菌剤のみ処理のもの)を準備した。
JIS L 0849に規定する摩擦試験機IIを用い、JIS L 0803の綿帆布10番(50mm角)を荷重500gの摩擦子に取り付けた。その後、JIS L 0849に準じて、試験片を試験機に取り付け、試験片上100mm間を毎分30往復の速度で、10〜1000回の回数(表中に記載)で摩擦する。各回数の摩擦終了後、綿帆布を取り外し、綿帆布についてブロモフェノールブルーの呈色反応を行い、ポリエステルから綿帆布に脱落移行した抗菌剤を検出した。
評価は、明度、ΔE(摩擦10回時の値を基準としたΔEの悪化量)、及び級数(綿帆布の呈色反応結果を汚染色用グレースケール(JIS L 0805に準拠)にて読み取った値)で行った。結果を表9に示す。
カルボキシル基を有するバインダー2を用いて抗菌剤を固定化したプラスチック成型品、及び、バインダーを用いずに抗菌剤処理したプラスチック成型品について、抗菌剤の付着性を確認した。
試験片として、ポリプロピレン製プラスチック成型品を準備した。
ポリプロピレン製プラスチック成型品をバインダー2の溶液に1分間浸漬した後、取り出し、ドライヤーで熱風乾燥した。その後、抗菌剤溶液(有効成分濃度0.3%溶液)に1分間浸漬した後、取り出し、ドライヤーで熱風乾燥した。比較例として、バインダー処理を行わずに抗菌剤処理のみを行った試験片を作成した。
バインダー及び抗菌剤処理をした試験片(実施例23)、バインダー処理も抗菌剤処理も行っていない試験片(比較例21)、バインダー処理せずに抗菌剤処理のみを行った試験片(比較例22)についてブロモフェノールブルーの呈色反応を行い、各々の試験片に付着した抗菌剤を検出した。結果を表10に示す。なお、ΔEは、ポリプロピレン製プラスチック成型品の未試験品(ブロモフェノールブルー呈色反応なし)の値に対する変化量を示している。
カルボキシル基を有するポリオレフィン系バインダーである、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(酸価3.0)をバインダーとして用い、ポリプロピレンフィルムに対する抗菌剤の付着性及びバインダーの成型品との接着性を確認した。
試験片として、ポリプロピレンフィルム(厚さ0.20mm)を準備した。
ドクターナイフでバインダーをポリプロピレンフィルム上に塗布し、90℃×10分間乾燥した後、フィルムへの塗布量を測定した。このフィルムを幅70mm、長さ300mmの大きさにカットした。
フィルムの大きさと同じサイズのウレタンフォームを下に添えて、平面摩耗機の両端にサンプルを固定し、1Kgfの荷重で摩擦子を140mmの間を60±10回の速度で往復50回摩擦させた。平面摩耗機は、株式会社大栄科学精器製作所製、耐摩耗平面摩擦試験機No.E9660を用いた。
摩擦後のポリプロピレンフィルムをカットし、抗菌剤処理及び抗菌剤の検出を行った。
抗菌処理は所定の抗菌剤溶液(有効成分濃度0.3%)に浸漬した後、ギアオーブンを用い、設定温度90℃で乾燥した。抗菌剤の検出は前述のブロモフェノールブルーの呈色反応(反応時間180秒)により行った。測色は、スガ試験機株式会社製、SMカラーコンピュータを用いて、各サンプルに白版を重ねて測定し、バインダーも抗菌剤も付与していないブランクフィルムに対するΔEを測定した。その結果を下表に示す。
カルボキシル基を有するバインダー2を用いて抗菌剤を固定化した厚膜ニトリルゴムフィルム、及び、バインダーを用いずに抗菌剤処理した厚膜ニトリルゴムフィルムについて、抗菌剤抗菌剤摩擦耐久性を確認した。
試験片として、タテ50mm、ヨコ50mm、厚み90μmの厚膜ニトリルゴムフィルムを準備した。
ニトリルゴムフィルムをバインダー2の溶液に1分間浸漬した後、取り出し、ドライヤーで熱風乾燥した。その後、抗菌剤溶液(有効成分濃度0.3%溶液)に1分間浸漬した後、取り出し、ドライヤーで熱風乾燥した。比較例として、バインダー処理を行わずに抗菌剤処理のみを行った試験片を作成した。
バインダー及び抗菌剤処理をした試験片、及び、バインダー処理せずに抗菌剤処理のみを行った試験片について、ブロモフェノールブルーの呈色反応(反応時間:180秒)を行い、乾燥した後、摩擦耐久性試験を行った。
摩擦耐久性試験は、JIS L 0849に規定する摩擦試験機II型を用い、JIS L 0803の綿帆布10番(50mm角)を荷重500gの摩擦子に取り付けた。さらにその上に、ニトリルゴムフィルムである試験片を取り付け、JIS L 0803の綿帆布10番をタテ230mm、ヨコ30mmの長さに切ってJIS L 0849に規定する試験機に取り付け、綿帆布上100mm間を毎分30往復の速度で50回摩擦した。50回摩擦後、摩擦子に取り付けた試験片を取り外し、摩擦によって試験片から綿帆布に移行した抗菌剤を測定した。
抗菌剤の保持率は、抗菌剤の固定化処理後(つまり、摩擦耐久試験前)のニトリルゴムフィルムのΔEを100として、摩擦耐久試験後のΔEの値の割合を算出し、抗菌剤の保持率とした。結果を表12に示す。
カルボキシル基を有するバインダーとして、前述以外の様々なバインダーを用いて、カルボキシル基の効果を確認した。
[材料]
1.抗菌剤:エトキシシラン系第4級アンモニウム塩であるオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドのエタノール溶液(マナック社製、商品名ESi−QAC)に水を加えて所定の濃度にした溶液を用いた。
2.バインダー:下表13に示す、カルボキシル基を含有するバインダー6〜9、及び、比較としてカルボキシル基を含有しないバインダーeを用いた。
3.物品:試験例1で用いたものと同じポリエステル布帛Aを用いた。
抗菌剤の付与、検出、布帛の洗浄は試験例1と同様の方法で行った。抗菌剤の検出におけるブロモフェノールブルーの呈色時間は180秒間、布帛の洗浄には洗浄方法Aを用いた。
また、洗濯10回後と洗濯1回後の△Eの割合は、実施例101〜104では0.76〜1.00であり、△E値の減少が少ないのに対して、比較例101及び102では0.42〜0.52であり、ΔE値が大幅に低下した。このことは、実施例の布帛はいずれも抗菌剤の脱落が少なく、洗濯耐久性を有することを示している。
カルボキシル基を有するバインダーとして、前述以外の様々なバインダーを用いて、カルボキシル基の効果を確認した。
[材料]
1.抗菌剤:エトキシシラン系第4級アンモニウム塩であるオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドのエタノール溶液(マナック社製、商品名ESi−QAC)に水を加えて所定の濃度にした溶液を用いた。
2.バインダー:既述のバインダー2(酸価250)、及び、カルボキシル基を含有するバインダーである、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(酸価3.0)バインダー(バインダー10)、カルボキシル基を有するウレタン系樹脂(酸価40)バインダー(バインダー11)を用いた。
3.物品:試験例1で用いたポリエステル布帛Aと組織の異なる別種のポリエステル布帛B(目付350g/m2)を用いた。
前述の試験方法と同様に布帛に各種バインダーを付与した後、抗菌剤を付与した。
抗菌剤の付与は、dip−nip法の後、150℃、180秒の乾燥によって行った。布帛に付与される抗菌剤の有効成分が0.63g/m2となるよう加工液を調整した。
抗菌剤の検出、布帛の洗浄は試験例1と同様の方法で行った。抗菌剤の検出におけるブロモフェノールブルーの呈色時間は180秒間、布帛の洗浄には洗浄方法Bを用いた。
[試験9:樹脂製品への抗菌剤の固定化]
[材料]
1.抗菌剤:エトキシシラン系第4級アンモニウム塩であるオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドのエタノール溶液(マナック社製、商品名ESi−QAC)に水を加えて所定の濃度にした溶液を用いた。
2.物品:下表のポリマーを組み合わせて成型した樹脂フィルムを用いた。
(No.1)
ウレタンポリマーA100gを、常温下でガラス板(1.35cm×9.0cm)に流し込み、室温で2日間静置した後、100℃×10分、続いて、150℃×5分間乾燥させた。常温まで放冷後、各サンプルをガラス板から剥がして、成型された厚さ0.71mmの樹脂フィルムを得た。
(No.2)
ウレタンポリマーA100gに替えてウレタンポリマーB100gを用いた以外はNo.1と同様にして樹脂フィルムを得た。
ウレタンポリマーA100gに替えて、ウレタンポリマーA90gとカルボキシル基含有ポリマー10gとを均一に混合したものを用いた以外はNo.1と同様にして、樹脂フィルムを得た。
(No.4)
ウレタンポリマーA100gに替えて、ウレタンポリマーB90gとカルボキシル基含有ポリマー10gとを均一に混合したものを用いた以外はNo.1と同様にして、樹脂フィルムを得た。
(No.5)
ウレタンポリマーA100gに替えて、アクリル酸エステルポリマー90gとカルボキシル基含有ポリマー10gとを均一に混合したものを用いた以外はNo.1と同様にして、樹脂フィルムを得た。
1.抗菌剤の付与:上記No.1〜No.5の各樹脂フィルムを5cm×5cmに切り出し、0.3%(抗菌剤有効成分濃度)溶液に60秒間浸漬した後、引き上げて風乾した。
2.抗菌剤の検出:各樹脂フィルムに付着した抗菌剤の検出には、ブロモフェノールブルーとアンモニウム塩とのカチオン性の呈色反応を用いた。
抗菌剤を付与した樹脂フィルム(5cm×5cm)について、ブロモフェノールブルー溶液(反応剤濃度:0.03%sol)に60秒間浸漬した。続いて、水で洗浄及び風乾した。このサンプルについて、明度及びΔEをSMカラーコンピューター(スガ試験機株式会社製)にて測定、算出した。
各樹脂フィルムに付着した抗菌剤の検出結果を下表に示す。
Claims (11)
- 少なくとも表面にカルボキシル基を有する樹脂成分を含み、エトキシシラン系第4級アンモニウム塩を含む抗菌剤が付与されていることを特徴とする、抗菌性を有する物品。
- 前記カルボキシル基を有する樹脂成分が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれる1種以上を含むモノマーを重合したポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の物品。
- 前記カルボキシル基を有する樹脂成分が、アクリル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー及びウレタン系ポリマーからなる群から選択される1種以上のポリマーを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の物品。
- 前記エトキシシラン系第4級アンモニウム塩を含む抗菌剤が、オクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の物品。
- 前記カルボキシル基を有する樹脂成分が、物品の基材自体の少なくとも表面を構成しており、当該基材の表面に前記抗菌剤が付与されていることを特徴する請求項1〜5のいずれか1項に記載の物品。
- 物品の基材の表面に、バインダーを介して前記抗菌剤が付与されており、当該バインダーに前記カルボキシル基を有する樹脂成分が含まれていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の物品。
- 前記カルボキシル基を有するバインダーが、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を重合したアクリルポリマーを含むバインダーであることを特徴とする、請求項7に記載の物品。
- 前記物品が、布帛であることを特徴とする請求項7又は8に記載の物品。
- 物品の基材自体の少なくとも表面にカルボキシル基を有する樹脂成分を含む物品を、エトキシシラン系第4級アンモニウム塩を含む抗菌剤を含む組成物の溶液に接触させて、当該物品の表面にエトキシシラン系第4級アンモニウム塩を付与するステップを含むことを特徴とする、抗菌性を有する物品の製造方法。
- 物品の基材の表面にカルボキシル基を有するバインダーを付着させるステップと、前記バインダーが付着した物品を、エトキシシラン系第4級アンモニウム塩を含む抗菌剤を含む組成物の溶液に接触させて、当該物品の表面にエトキシシラン系第4級アンモニウム塩を付与するステップとを含むことを特徴とする、抗菌性を有する物品の製造方法。
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