JP5859383B2 - 電気化学素子用セパレータおよびその製造方法 - Google Patents
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(A)数平均繊維径が2〜500nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中の各グルコースユニットのC6位が選択的にアルデヒド基,ケトン基およびカルボキシル基のいずれかとなったものであり、カルボキシル基の含量が0.6〜2.5mmol/gの範囲であり、アルデヒド基とケトン基の合計含量が、セミカルバジド法による測定において0.3mmol/g以下であるセルロース繊維。
(A)数平均繊維径が2〜500nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中の各グルコースユニットのC6位が選択的にアルデヒド基,ケトン基およびカルボキシル基のいずれかとなったものであり、カルボキシル基の含量が0.6〜2.5mmol/gの範囲であり、アルデヒド基とケトン基の合計含量が、セミカルバジド法による測定において0.3mmol/g以下であるセルロース繊維。
上記セルロース繊維(A)としては、数平均繊維径が2〜500nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中の各グルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化変性されてアルデヒド基,ケトン基およびカルボキシル基のいずれかとなったものであり、カルボキシル基の含量が0.6〜2.5mmol/gの範囲である、微細なセルロース繊維が用いられる。上記セルロース繊維は、I型結晶構造を有する天然由来のセルロース固体原料を表面酸化し微細化した繊維である。すなわち、天然セルロースの生合成の過程においては、ほぼ例外なくミクロフィブリルと呼ばれるナノファイバーがまず形成され、これらが多束化して高次な固体構造を構成するが、上記ミクロフィブリル間の強い凝集力の原動となっている表面間の水素結合を弱めるために、その水酸基(セルロース分子中の各グルコースユニットのC6位の水酸基)の一部が酸化され、カルボキシル基やアルデヒド基やケトン基に変換されている。
カルボキシル基量(mmol/g)=V(ml)×〔0.05/セルロース重量〕……(1)
D:サンプルの滴定量(ml)
B:空試験の滴定量(ml)
f:0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター(−)
w:試料量(g)
天然セルロースとN−オキシル化合物とを水(分散媒体)に分散させた後、共酸化剤を添加して、反応を開始する。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10〜11に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なす。ここで、共酸化剤とは、直接的にセルロース水酸基を酸化する物質ではなく、酸化触媒として用いられるN−オキシル化合物を酸化する物質のことである。
上記セルロース繊維(A)は、上記酸化反応後に、さらに還元反応を行うことが好ましい。具体的には、酸化反応後の微細酸化セルロースを精製水に分散し、水分散体のpHを約10に調整し、各種還元剤により還元反応を行う。本発明に使用する還元剤としては、一般的なものを使用することが可能であるが、好ましくは、LiBH4、NaBH3CN、NaBH4等があげられる。なかでも、コストや利用可能性の点から、NaBH4が好ましい。
つぎに、未反応の共酸化剤(次亜塩素酸等)や、各種副生成物等を除く目的で精製を行う。反応物繊維は通常、この段階ではナノファイバー単位までばらばらに分散しているわけではないため、通常の精製法、すなわち水洗とろ過を繰り返すことで高純度(99重量%以上)の反応物繊維と水の分散体とする。
上記精製工程にて得られる水を含浸した反応物繊維(水分散体)を、分散媒体中に分散させ分散処理を行う。処理に伴って粘度が上昇し、微細化処理されたセルロース繊維の分散体を得ることができる。その後、上記セルロース繊維の分散体を乾燥することによって、セルロース繊維(A)を得ることできる。なお、上記セルロース繊維の分散体を乾燥することなく、分散体の状態で電気化学素子用セパレータに用いても差し支えない。
針葉樹パルプ2gに、水150ml、臭化ナトリウム0.25g、TEMPOを0.025gを加え、充分撹拌して分散させた後、13重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(共酸化剤)を、上記パルプ1.0gに対して次亜塩素酸ナトリウム量が3.0mmol/gとなるように加え、反応を開始した。反応の進行に伴いpHが低下するため、pHを10〜11に保持するように0.5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら、pHの変化が見られなくなるまで反応させた(反応時間:120分)。反応終了後、0.1N塩酸を添加して中和した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、繊維表面が酸化されたセルロース繊維を得た。つぎに、上記セルロース繊維に純水を加えて1%に希釈し、高圧ホモジナイザー(三和エンジニアリング社製、H11)を用いて圧力100MPaで1回処理することにより、セルロース繊維A1を製造した。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、上記パルプ1.0gに対して5.2mmol/gとした以外は、セルロース繊維A1の製造に準じて、セルロース繊維A2を製造した。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、上記パルプ1.0gに対して12.0mmol/gとした以外は、セルロース繊維A1の製造に準じて、セルロース繊維A3を製造した。
セルロース繊維A1の製造と同様の手法で針葉樹パルプを酸化した後、遠心分離機で固液分離し、純水を加えて固形分濃度4%に調整した。その後、24%NaOH水溶液にてスラリーのpHを10に調整した。スラリーの温度を30℃として水素化ホウ素ナトリウムをセルロース繊維に対して0.2mmol/g加え、2時間反応させることで還元処理した。反応後、0.1N塩酸を添加して中和した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、セルロース繊維を得た。つぎに、上記セルロース繊維に純水を加えて1%に希釈し、高圧ホモジナイザー(三和エンジニアリング社製、H11)を用いて圧力100MPaで1回処理することにより、セルロース繊維A4を製造した。
セルロース繊維A2の製造と同様の手法で針葉樹パルプを酸化した後、セルロース繊維A4の製造と同様の手法で還元、精製した。つぎに、上記セルロース繊維に純水を加えて1%に希釈し、高圧ホモジナイザー(三和エンジニアリング社製、H11)を用いて圧力100MPaで1回処理することにより、セルロース繊維A5を製造した。
セルロース繊維A3の製造と同様の手法で針葉樹パルプを酸化した後、セルロース繊維A4の製造と同様の手法で還元、精製した。つぎに、上記セルロース繊維に純水を加えて1%に希釈し、高圧ホモジナイザー(三和エンジニアリング社製、H11)を用いて圧力100MPaで1回処理することにより、セルロース繊維A6を製造した。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、上記パルプ1.0gに対して1.8mmol/gとした以外は、セルロース繊維A1の製造に準じて、セルロース繊維A′1を製造した。
原料の針葉樹パルプに替えて再生セルロースを使用するとともに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、再生セルロース1.0gに対して27.0mmol/gとした以外は、セルロース繊維A1の製造に準じて、セルロース繊維A′2を製造した。
針葉樹パルプに精製水を加えてスラリー濃度を1%とし、これを石臼型摩砕機スーパーマスコロイダー(増幸産業社製、MKZA10−15)を用いて1800rpmで10パス処理することにより、セルロース繊維A′3を製造した。
X線回折装置(リガク社製、RINT−Ultima3)を用いて、各セルロース繊維の回折プロファイルを測定し、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークが見られる場合は結晶構造(I型結晶構造)が「あり」と評価し、ピークが見られない場合は「なし」と評価した。
セルロース繊維の数平均繊維径を、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子社製、JEM−1400)を用いて観察した。すなわち、各セルロース繊維を親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:10000倍)から、先に述べた方法に従い、数平均繊維径を算出した。
セルロース繊維0.25gを水に分散させたセルロース水分散体60mlを調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行った。測定はpHが約11になるまで続けた。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下の式(1)に従いカルボキシル基量を求めた。
カルボキシル基量 (mmol/g)=V(ml)×〔0.05/セルロース重量〕……(1)
セルロース繊維を約0.2g精秤し、これに、リン酸緩衝液によりpH=5に調整したセミカルバジド塩酸塩3g/l水溶液を正確に50ml加え、密栓し、二日間振とうした。つぎに、この溶液10mlを正確に100mlビーカーに採取し、5N硫酸25ml、0.05Nヨウ素酸カリウム水溶液5mlを加え、10分間撹拌した。その後、5%ヨウ化カリウム水溶液10mlを加え、直ちに自動滴定装置を用いて、0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液にて滴定し、その滴定量等から、下記の式(2)に従い、試料中のカルボニル基量(アルデヒド基とケトン基との合計含量)を求めた。
カルボニル基量(mmol/g)=(D−B)×f×〔0.125/w〕……(2)
D:サンプルの滴定量(ml)
B:空試験の滴定量(ml)
f:0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター(−)
w:試料量(g)
セルロース繊維を0.4g精秤し、日本薬局方に従って調製したフェーリング試薬(酒石酸ナトリウムカリウムと水酸化ナトリウムとの混合溶液5mlと、硫酸銅五水和物水溶液5ml)を加えた後、80℃で1時間加熱した。そして、上澄みが青色、セルロース繊維部分が紺色を呈するものは、アルデヒド基は検出されなかったと判断し、「なし」と評価した。また、上澄みが黄色、セルロース繊維部分が赤色を呈するものは、アルデヒド基は検出されたと判断し、「あり」と評価した。
セルロース繊維Aをプラスチックシャーレにキャストし、40℃で15時間乾燥した後、さらに100℃で1時間乾燥し、膜厚10μmの皮膜を形成した。
セルロース繊維の種類を、下記の表2に示すように変更した以外は、参考例1と同様にして、膜厚10μmの皮膜を形成した。
各皮膜を走査型電子顕微鏡FE−SEM(日本電子社製、JSM−6701F)で観察し、表面の孔径を50点抽出して平均孔径を求めた。前述したように、平均孔径は、10μm以下が好ましい。
各皮膜をライトテーブルの上に置き、目視で確認可能なピンホールの有無を観察した。
各皮膜から試験片(5mm×60mm)を切り出し、引張試験機(ORIENTEC社製、RTC−1225A)を用いて、移動速度5mm/min、20℃、40%RHの条件で、試験片が破断した点の応力(MPa)を測定した。引張強度は、30MPa以上が好ましい。
比較例2品は、繊維径が小さすぎるセルロース繊維A′2を使用しているため、電子顕微鏡を用いても孔径が確認できなかった。孔径が小さすぎる場合にはイオン導電性等の機能が充分でないため、電気化学素子用セパレータには適していない。
比較例3品は、繊維幅が不均一のセルロース繊維A′3を使用しているため、平均孔径が大きく、ピンホールも発生した。
Claims (4)
- 下記の(A)を主成分とすることを特徴とする電気化学素子用セパレータ。
(A)数平均繊維径が2〜500nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中の各グルコースユニットのC6位が選択的にアルデヒド基,ケトン基およびカルボキシル基のいずれかとなったものであり、カルボキシル基の含量が0.6〜2.5mmol/gの範囲であり、アルデヒド基とケトン基の合計含量が、セミカルバジド法による測定において0.3mmol/g以下であるセルロース繊維。 - (A)のセルロース繊維が、フェーリング試薬によるアルデヒド基の検出が認められないセルロース繊維である請求項1記載の電気化学素子用セパレータ。
- 請求項1または2記載の電気化学素子用セパレータの製造方法であって、(A)のセルロース繊維が、N−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて酸化されたものであり、上記酸化反応により生じたアルデヒド基およびケトン基が、還元剤により還元されていることを特徴とする電気化学素子用セパレータの製造方法。
- 還元剤による還元が、水素化ホウ素ナトリウムによるものである請求項3記載の電気化学素子用セパレータの製造方法。
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