JP5843151B2 - 架橋樹脂組成物を用いた電線およびケーブル - Google Patents
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Description
(架橋樹脂組成物)
本発明の実施の形態は、熱可塑性ポリウレタン(以下TPUと称す)と熱可塑性ポリアミド(以下PAと称す)もしくは熱可塑性ポリアミドエラストマー(以下PAエラストマと称す)の重量比がTPU:PAもしくはPAエラストマ=90:10〜50:50の混合樹脂であり、前記混合樹脂100重量部に対し、分子中に複数のイソシアネート基を有するモノマを1〜20重量部含有し、前記分子中に複数のイソシアネート基を有するモノマがメタンジフェニルジイソシアネートである架橋樹脂組成物を用いる。
つぎに、上述した架橋樹脂組成物を電線、ケーブルの最外層へ適用した実施の形態を説明する。
(1)耐熱性評価は、耐熱試験としてJASO D 608 に準拠し、ケーブル同径(4mmφ)のマンドレルに6回巻付け、200℃の恒温槽内で30分間加熱した後、室温になるまで放冷したとき、ケーブル外観に溶融または亀裂がないものを合格とした。
(2)スコーチ評価として、ケーブル押出加工時にヤケが発生しないものを合格とした。
(3)耐グリコール性評価は、長さ約600mmのケーブルをとり、その両端40mmを残して100℃のJIS2233規定のグリコールエーテル油(ブレーキオイル)に20時間浸し、ケーブル外径変化が15%以下を合格とした。
(4)可とう性評価として、ケーブル片端を台座に固定し、他端を台座から空間に200mm突き出し、この他端に10gの重りを吊り下げ、ケーブルのたわみ量を測定した。たわみ量が50mm未満のものを×として不合格とし、50mm以上100mm未満のものを○、100mm以上のものを◎とし、◎と○を合格とした。
(5)引張強さの評価は、引張試験としてJASO D 608−92のAVXに準拠し、引張強さは15MPa以上を合格とした。
(6)破断伸びの評価は、同じくJASO D 608−92のAVXに準拠し、破断伸びは200%以上を合格とした。
(7)難燃性評価には、ケーブルを水平に保ち、10秒間火炎を当て続け、火炎を取り去った後30秒以内に消化したものを合格とした。
実施例1は、シースにおいて、TPUとしてET890(BASFジャパン製)90重量部、PAとしてSP−500(東レ製)10重量部、イソシアネート基を有するモノマとしてMDI(三菱化学ファイン製)1重量部を、2軸押出機(東洋精機製ラボプラストミル、L/D=30)を用いて混練し、ダイス温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量3kg/hでコンパウンド(混合樹脂)を作製した。シース外径4.0mmとなるようにスクリュー径40mmの押出機(L/D=24)により押出被覆し、図3に示すようなケーブルを作製した。得られたケーブルを常温常圧で7日間放置し架橋処理を行った。
実施例2は、イソシアネート基を有するモノマとして、MDIを20重量部混練した。その他の成分や作製方法については、実施例1と同じである。
実施例3は、シースにおいて、TPUとしてET890(BASFジャパン製)90重量部、PAエラストマとしてUBESTEXPA(宇部興産製)10重量部、イソシアネート基を有するモノマとしてMDI(三菱化学ファイン製)1重量部を、2軸押出機(東洋精機製ラボプラストミル、L/D=30)を用いて混練し、ダイス温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量3kg/hでコンパウンドを作製した。シース外径4.0mmとなるようにスクリュー径40mmの押出機(L/D=24)により押出被覆し、図3に示すようなケーブルを作製した。得られたケーブルを常温常圧で7日間放置し架橋処理を行った。
実施例4は、イソシアネート基を有するモノマとして、MDIを20重量部混練した。その他の成分や作製方法については、実施例3と同じである。
実施例5は、シースにおいて、TPUとしてET890(BASFジャパン製)50重量部、PAとしてSP−500(東レ製)50重量部、イソシアネート基を有するモノマとしてMDI(三菱化学ファイン製)1重量部を、2軸押出機(東洋精機製ラボプラストミル、L/D=30)を用いて混練し、ダイス温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量3kg/hでコンパウンドを作製した。シース外径4.0mmとなるようにスクリュー径40mmの押出機(L/D=24)により押出被覆し、図3に示すようなケーブルを作製した。得られたケーブルを常温常圧で7日間放置し架橋処理を行った。
実施例6は、イソシアネート基を有するモノマとして、MDIを20重量部混練した。その他の成分や作製方法については、実施例5と同じである。
シースにおいて、TPUとしてET890(BASFジャパン製)70重量部、PAエラストマとしてUBESTEXPA(宇部興産製)30重量部、イソシアネート基を有するモノマとしてMDI(三菱化学ファイン製)1重量部を、2軸押出機(東洋精機製ラボプラストミル、L/D=30)を用いて混練し、ダイス温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量3kg/hでコンパウンドを作製した。シース外径4.0mmとなるようにスクリュー径40mmの押出機(L/D=24)により押出被覆し、図3に示すようなケーブルを作製した。得られたケーブルを常温常圧で7日間放置し架橋処理を行った。
実施例8は、イソシアネート基を有するモノマとして、MDIを5重量部混練した。その他の成分や作製方法については、実施例7と同じである。
実施例9は、シースにおいて、TPUとしてET890(BASFジャパン製)70重量部、PAとしてSP−500(東レ製)30重量部、イソシアネート基を有するモノマとしてMDI(三菱化学ファイン製)1重量部、難燃剤としてメラミンシアヌレートMC−2010N(堺化学工業製)30重量部を、2軸押出機(東洋精機製ラボプラストミル、L/D=30)を用いて混練し、ダイス温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量3kg/hでコンパウンドを作製した。シース外径4.0mmとなるようにスクリュー径40mmの押出機(L/D=24)により押出被覆し、図3に示すようなケーブルを作製した。得られたケーブルを常温常圧で7日間放置し架橋処理を行った。
実施例10は、難燃剤としてのメラミンシアヌレートMC−2010N(堺化学工業製)を200重量部としたものであり、その他の成分や作製方法については、実施例9と同じである。
実施例11は、シースにおいて、TPUとしてET890(BASFジャパン製)70重量部、PAとしてSP−500(東レ製)30重量部、イソシアネート基を有するモノマとしてMDI(三菱化学ファイン製)1重量部、難燃剤としてMC−2010N(堺化学工業製)20重量部を、2軸押出機(東洋精機製ラボプラストミル、L/D=30)を用いて混練し、ダイス温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量3kg/hでコンパウンドを作製した。シース外径4.0mmとなるようにスクリュー径40mmの押出機(L/D=24)により押出被覆し、図3に示すようなケーブルを作製した。得られたケーブルを常温常圧で7日間放置し架橋処理を行った。
実施例12は、シースにおいて、TPUとしてET890(BASFジャパン製)70重量部、PAとしてSP−500(東レ製)30重量部、イソシアネート基を有するモノマとしてMDI(三菱化学ファイン製)1重量部、難燃剤としてMC−2010N(堺化学工業製)210重量部を、2軸押出機(東洋精機製ラボプラストミル、L/D=30)を用いて混練し、ダイス温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量3kg/hでコンパウンドを作製した。シース外径4.0mmとなるようにスクリュー径40mmの押出機(L/D=24)により押出被覆し、図3に示すようなケーブルを作製した。得られたケーブルを常温常圧で7日間放置し架橋処理を行った。
実施例13は、シースにおいて、TPUとしてET890(BASFジャパン製)70重量部、PAエラストマとしてUBESTEXPA(宇部興産製)30重量部、イソシアネート基を有するモノマとしてMDI(三菱化学ファイン製)5重量部、難燃剤としてMC−2010N(堺化学工業製)60重量部を、2軸押出機(東洋精機製ラボプラストミル、L/D=30)を用いて混練し、ダイス温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量3kg/hでコンパウンドを作製した。シース外径4.0mmとなるようにスクリュー径40mmの押出機(L/D=24)により押出被覆し、図3に示すようなケーブルを作製した。得られたケーブルを常温常圧で7日間放置し架橋処理を行った。
実施例14は、難燃剤としてのメラミンシアヌレートMC−2010N(堺化学工業製)を100重量部としたものであり、その他の成分や作製方法については、実施例13と同じである。
実施例15は、内層シースとして、EVA EV170(三井デュポンケミカル製)を用いた。外層シースにおいて、TPUとしてET890(BASFジャパン製)70重量部、PAエラストマとしてUBESTEXPA(宇部興産製)30重量部、イソシアネート基を有するモノマとしてMDI(三菱化学ファイン製)5重量部、難燃剤としてMC−2010N(堺化学工業製)60重量部を、2軸押出機(東洋精機製ラボプラストミル、L/D=30)を用いて混練し、ダイス温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量3kg/hでコンパウンドを作製した。シース外径4.0mmとなるように40mm押出機(L/D=24)により押出被覆し、図4に示すようなケーブルを作製した。得られたケーブルを常温常圧で7日間放置し架橋処理を行った。
実施例16は、内層シースとして、エチレン系αオレフィン共重合体タフマーDF605(三井化学製)を用いた。外層シースにおいて、TPUとしてET890(BASFジャパン製)70重量部、PAエラストマとしてUBESTEXPA(宇部興産製)30重量部、イソシアネート基を有するモノマとしてMDI(三菱化学ファイン製)5重量部、難燃剤としてMC−2010N(堺化学工業製)60重量部を、2軸押出機(東洋精機製ラボプラストミル、L/D=30)を用いて混練し、ダイス温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量3kg/hでコンパウンドを作製した。シース外径4.0mmとなるようにスクリュー径40mmの押出機(L/D=24)により押出被覆し、図4に示すようなケーブルを作製した。得られたケーブルを常温常圧で7日間放置し架橋処理を行った。
上記実施例1〜16の結果を示した表1からも明らかな通り、実施例1〜16は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)と熱可塑性ポリアミド(PA)もしくは熱可塑性ポリアミドエラストマー(PAエラストマ)を本発明が規定する範囲(TPU:PAもしくはPAエラストマ=90:10〜50:50)で含有し、さらに分子中に複数のイソシアネート基を有するモノマを本発明が規定する範囲(1〜20重量部)で含有したものである。それが故に、難燃特性の有無を問わず、実施例1〜16の外層シースは、耐熱性、スコーチの有無、耐グリコール性、可とう性の全ての特性においても良好な結果を示した。
比較例1は、本実施例1〜8と同様、難燃剤を加えていない単層シースのケーブルであるが、PAおよびPAエラストマを含有していない点で相違している。すなわち、比較例1では、シースとして、TPU100重量部、MDI1重量部を2軸押出機を用いて混練したコンパウンドを使用し、図3に示すようなケーブルを作製した。これを実施例と同じく、常温常圧で7日間放置し架橋処理を行った。本実施例に規定する条件とは、熱可塑性ポリアミドを含有していない点で相違している。
比較例2は、本実施例1〜8と同様、難燃剤を加えていない単層シースのケーブルであるが、TPUの比率(TPU/100)が本実施例1〜8の規定値より高くなっている点で相違している。すなわち、比較例2では、シースとして、TPU95重量部、PA5重量部、MDI1重量部を2軸押出機を用いて混練したコンパウンドを使用し、図3に示すようなケーブルを作製した。これを実施例と同じく、常温常圧で7日間放置し架橋処理を行った。本実施例に規定する条件とは、熱可塑性ポリウレタンの比率が規定値より高くなっている点で相違している。
比較例3は、本実施例1〜8と同様、難燃剤を加えていない単層シースのケーブルであるが、TPUの比率(TPU/100)が本実施例1〜8の規定値より低くなっている点で相違している。すなわち、比較例3では、シースとして、TPU45重量部、PA55重量部、MDI1重量部を2軸押出機を用いて混練したコンパウンドを使用し、図3に示すようなケーブルを作製した。これを実施例と同じく、常温常圧で7日間放置し架橋処理を行った。本実施例に規定する条件とは、熱可塑性ポリウレタンの比率が規定値より低くなっている点で相違している。
比較例4は、本実施例1〜8と同様、難燃剤を加えていない単層シースのケーブルであるが、イソシアネート基を有するモノマを含有していない点で相違している。すなわち、比較例4では、シースとして、TPU90重量部、PA10重量部を2軸押出機を用いて混練したコンパウンドを使用し、図3に示すようなケーブルを作製した。これを実施例と同じく、常温常圧で7日間放置し架橋処理を行った。本実施例に規定する条件とは、イソシアネート基を有するモノマを含有していない点で相違している。
比較例5は、本実施例1〜8と同様、難燃剤を加えていない単層シースのケーブルであるが、イソシアネート基を有するモノマの含有量が本実施例1〜8よりも少なくなっている点で相違している。すなわち、比較例5では、シースとして、TPU90重量部、PA10重量部、MDI0.5重量部を2軸押出機を用いて混練したコンパウンドを使用し、図3に示すようなケーブルを作製した。これを実施例と同じく、常温常圧で7日間放置し架橋処理を行った。本実施例に規定する条件とは、イソシアネート基を有するモノマの含有量が少なくなっている点で相違している。
比較例6は、本実施例1〜8と同様、難燃剤を加えていない単層シースのケーブルであるが、イソシアネート基を有するモノマの含有量が本実施例1〜8よりも多くなっている点で相違している。すなわち、比較例6では、シースとして、TPU90重量部、PA10重量部、MDI21重量部を2軸押出機を用いて混練したコンパウンドを使用し、図3に示すようなケーブルを作製した。これを実施例と同じく、常温常圧で7日間放置し架橋処理を行った。本実施例に規定する条件とは、イソシアネート基を有するモノマの含有量が多くなっている点で相違している。
表2に示すように、比較例1では、ケーブル外径の変化が16.4%であり、耐グリコール性に問題があった。比較例2では、耐グリコール性において、比較例1よりは改善が認められるものの、ケーブル外径の変化が15.9%であり、なお不合格であった。比較例3では、たわみ量が45mmであり、可とう性において問題があった。比較例4では、ゲル分率が0%となっており、耐熱性試験において溶融があり不合格であった。比較例5では、ゲル分率が40%となっており、耐熱性試験において溶融があり不合格であった。比較例6では、ケーブル押出し加工時にヤケが発生し、スコーチが有り不合格であった。
11 絶縁電線
11a 導体
11b 絶縁体(被覆層)
11b’内層絶縁体
11c 外層絶縁体(被覆層)
12 シース
12a 外層シース
12b 内層シース
13 多芯撚り線
Claims (4)
- 導体の外側に被覆層を有する電線において、
前記被覆層の主成分が、
熱可塑性ポリウレタンと熱可塑性ポリアミドもしくは熱可塑性ポリアミドエラストマーとが、重量比において、90:10〜50:50の比率で混合されており、
この混合された混合樹脂100重量部に対して、分子中に複数のイソシアネート基を有するモノマが1〜20重量部含有されている架橋樹脂組成物である電線であって、
片端を台座に固定し、他端を台座から空間に200mm突き出し、この他端に10gの重りを吊り下げたときのたわみ量が50mm以上である可とう性を有し、前記分子中に複数のイソシアネート基を有するモノマがメタンジフェニルジイソシアネートであることを特徴とする電線。 - 難燃剤が30〜200重量部含有されていることを特徴とする請求項1に記載の電線。
- 導体を絶縁体で被覆した絶縁電線の外側にシースを有するケーブルにおいて、
前記シースの主成分が、
熱可塑性ポリウレタンと熱可塑性ポリアミドもしくは熱可塑性ポリアミドエラストマーとが、重量比において、90:10〜50:50の比率で混合されており、
この混合された混合樹脂100重量部に対して、分子中に複数のイソシアネート基を有するモノマが1〜20重量部含有されている架橋樹脂組成物であるケーブルであって、
片端を台座に固定し、他端を台座から空間に200mm突き出し、この他端に10gの重りを吊り下げたときのたわみ量が50mm以上である可とう性を有し、前記分子中に複数のイソシアネート基を有するモノマがメタンジフェニルジイソシアネートであることを特徴とするケーブル。 - 難燃剤が30〜200重量部含有されていることを特徴とする請求項3に記載のケーブル。
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