JP5832428B2 - 有機タンタル錯体化合物およびその製造方法 - Google Patents

有機タンタル錯体化合物およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、有機タンタル錯体化合物、有機タンタル錯体化合物の製造方法および有機タンタル錯体化合物を含む光硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、ナノインプリント用のパターン形成材料として有用な有機タンタル錯体化合物、有機タンタル錯体化合物の製造方法および有機タンタル錯体化合物を含む光硬化性組成物に関する。
被加工媒体上に微細なパターンを形成する技術の一つとして、ナノインプリント技術が知られている(例えば、特許文献1)。この方法は、被加工媒体上に樹脂層を形成しておき、形成したいパターンが表面に施されているモールド(型)表面を、この樹脂層に押しつけ、モールドのパターンを樹脂層に転写することにより、微細な転写パターンを得るという方法である。このようにして得られたパターンが施されている樹脂層は、被加工媒体をエッチングする際のレジストとして使用される。
この樹脂層に用いる樹脂の材質によりインプリント方法が異なる。すなわち、熱可塑性樹脂を用いる場合は熱ナノインプリント法(例えば、S.Chou et al.: Appl. Phys. Lett. Vol.67, No.21, 3114(1995)(非特許文献1))が知られ、光硬化性樹脂を用いる場合は光ナノインプリント法(例えば、M.Colburn et al.: Proc. SPIE, Vol.3997, 453(2000)(非特許文献2))が知られている。そして、それぞれの方法に対応する、樹脂、製造方法、装置等について、種々の観点から検討がされている。
熱ナノインプリント法では、樹脂層にそのガラス転移点以上の温度で型押しをして、冷却した後に型を外すという工程が一般的であり、樹脂層として熱可塑性樹脂、例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)が用いられていた(非特許文献1)。そのために、型押し時の加熱と型押し後の冷却が必要であった。このような態様においては、型押し後の冷却の際に、温度変化により型押し後の転写パターンの位置精度、線幅精度が低下するという問題があった。また、加熱−冷却という工程を経るため作業性も良好ではなく、さらに、型押し時のモールド(型)へのレジスト付着による転写パターン精度が低下するという不具合もあった。
これに対して、光ナノインプリント法では、紫外線(UV)照射により硬化する光硬化性樹脂を用いる。光硬化性樹脂としては、例えば、PMMAやポリスチレンが用いられている(非特許文献2)。
光ナノインプリント法は、例えば下記の点で、上記熱ナノインプリント法に比して優位である:
加熱−冷却工程が不要であり高スループットが見込まれる;
液状組成物を用いることができるため低加圧でのインプリントが可能;
熱膨張・収縮に依る解像度低下が少ない;
透明なモールド(型)を使用することができるためアライメント調整が容易である;
硬化後頑強な三次元架橋構造を形成できる。
インプリント方法に用いる樹脂層は、被加工媒体の特性とそれに合った製造プロセスに基づき選択され、とりわけ樹脂層に形成されたパターンを被加工媒体に転写する加工工程に依って決定される。
樹脂層に形成されたパターンを、被加工媒体へ転写する方法としては、ドライエッチングに依る方法が検討されている。この加工方法を用いる場合、樹脂層には、均一な塗膜が形成されていること、耐熱性、エッチング耐性を有すること等が要求されるが、これまでに公知の材料にはこれらの特性について改良の余地がある。
なお、PMMAやポリスチレン以外の光硬化性樹脂としては、ナノインプリントに用いられた例はないが、例えば、次のものが知られている。
特開2008−56852号公報(特許文献2)には、下記式で表される繰り返し単位を有する重合体または共重合体が開示されている。
また、特許文献2の実施例には、ポリ(2−アセトアセトキシエチルビニルエーテル)が、亜鉛イオン捕捉性を有することや鉄のキレート化が可能であることが開示されている。
Yang-Bae Kim et al,:Macromol. Mater. Eng. 2004, 289, 923(非特許文献3)には、1、8−ジアゾビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンを触媒として用いて、マイケル付加により2−(アセトアセトキシ)エチルアクリレート(AAEA)から超分岐ポリ(β−ケトエステル)を合成したと記載されている。
なお、次のような有機金属錯体化合物などが知られている。
P.N.Kapoor et al.; J. Less-Common Metals, 8 (1965) 339(非特許文献4)には、ペンタエトキシニオブあるいはペンタエトキシタンタルとβ−ジケトン化合物とを反応させて得られるニオブ系有機化合物およびタンタル系有機化合物が記載されている。
そして、非特許文献4には、M(OEt)x(lig)5-X(M=ニオブまたはタンタル、lig=アセチルアセトンまたはベンゾイルアセトン、x=4、3または2)、下記式(I)〜(III)で表される化合物および表1〜4に示される化合物などが具体的に記載されている。
Kimberly D. Pollard et al.; Chem Mater. 11(1999) 1069(非特許文献5)には、[Ta2(OEt)10]にβ−ジケトン化合物を反応させて、下記のように有機タンタル錯体化合物を合成した例が開示されている。
Paul D. Lickiss et al.: J. Organometal Chem, 453 (1993) 13(非特許文献6)には、(HOMe2Si)2Oで表されるジシロキサンジオールの調製について開示されている。
しかし、これらの先行技術文献には、有機タンタル錯体化合物やそれを含む組成物を、ナノインプリント用パターン形成材料として用いることについては、なんら記載も示唆もされていない。
米国特許第5772905号明細書 特開2008−56852号公報
S.Chou et al.: Appl. Phys. Lett. Vol.67, No.21, 3114 (1995) M.Colburn et al.: Proc. SPIE, Vol.3997, 453(2000) Yang-Bae Kim et al,: Macromol. Mater. Eng. 2004, 289, 923 P.N.Kapoor et al.; J. Less-Common Metals, 8 (1965) 339 Kimberly D. Pollard et al.; Chem Mater. 11(1999) 1069 Paul D. Lickiss et al.: J. Organometal Chem, 453 (1993) 13
本発明は、紫外線(UV)により容易に硬化し、パターニングが可能であり、塗膜とした時に塗膜の均一性に優れ、窒素ガスなどのエッチングガスを用いたエッチングに高い耐性を有する硬化物となる有機タンタル錯体化合物、該有機タンタル錯体化合物の製造方法および該有機タンタル錯体化合物を含む光硬化性組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、次のことを見出した:
ジシロキサンジオール化合物とタンタルのアルコキシ化合物とを混合することで生じる脱アルコール反応により形成されるTa−O−Si(Taはタンタル原子を表し、Siは珪素原子を表す)結合は加水分解に強い;
得られた有機タンタル錯体化合物を、スピンコートなどの塗布方法に適用しても金属酸化物の粉体が析出しない(ペンタエトキシタンタルのようなタンタルアルコキシド化合物のように加水分解しない)。
光重合性の炭素-炭素不飽和結合を有する有機基を少なくとも1つ有するβ-ジケトン化合物(以下、単に「β−ジケトン化合物」ともいう)、タンタルアルコキシド化合物およびジシロキサンジオール化合物を反応させることにより、上記タンタル原子にキレート配位した、β-ジケトン化合物に由来する配位子を有し、かつTa−O−Si結合を有する有機タンタル錯体化合物が得られる;
この有機タンタル錯体化合物は、紫外線(UV)照射により強固な3次元の分子間結合を容易に形成し、かつタンタル酸化物由来のパーティクルを発生させずに硬化物を形成できる;
上記有機タンタル錯体化合物は、製膜後モールド(型)を押し付けて紫外線(UV)を照射する方法によるパターニングに適用することが可能である;
上記有機タンタル錯体化合物から得られる硬化物は、窒素ガスに対して金属タンタル並みのエッチング耐性を有する;
上記方法によれば、タンタル原子を含有する化合物を、光重合性の炭素−炭素不飽和結合を有するケイ素化合物に添加する方法(いわゆるゾル−ゲル法)とは異なり、タンタル原子を含有する化合物と炭素−炭素不飽和結合を有する化合物の反応時に、酸や塩基による該炭素−炭素不飽和結合の分解が生じない;
液体のタンタル化合物を光重合性の炭素−炭素不飽和結合を有するケイ素化合物に添加する方法と異なり、上記方法により得られた有機タンタル錯体化合物は、加水分解に対する安定性が高い。
そして、本発明者らは、上記有機タンタル錯体化合物、該有機タンタル錯体化合物の製造方法および該有機タンタル錯体化合物を含む光硬化性組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の事項を含む。
[1] 光重合性の炭素-炭素不飽和結合を有する有機基を少なくとも1つ有するβ-ジケトン化合物(A)とタンタルアルコキシド化合物(B)とを、該タンタルアルコキシド化合物(B)の量(b)に対する該β−ジケトン化合物(A)の量(a)がモル比(a/b)で1.0〜1.5となる割合で反応させて反応生成物を得て、
該反応生成物とジシロキサンジオール化合物(C)とを、タンタルアルコキシド化合物(B)の量(b)に対する該ジシロキサンジオール化合物(C)の量(c)がモル比(c/b)で2以上となる量の該ジシロキサンジオール化合物(C)を用いて反応させて得られる、有機タンタル錯体化合物。
[2] 前記β-ジケトン化合物(A)が下記一般式(1)で表される[1]に記載の有機タンタル錯体化合物。
(式中、R1は光重合性の炭素-炭素不飽和結合を有する有機基を表す。)
[3] 前記一般式(1)における有機基R1が、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基である[2]に記載の有機タンタル錯体化合物。
[4] 前記タンタルアルコキシド化合物(B)が一般式Ta(OR45(式中、R4は炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基を示す。)で表される化合物である[1]〜[3]のいずれか一項に記載の有機タンタル錯体化合物。
[5] 前記ジシロキサンジオール化合物(C)が、下記一般式(2)で表される[1] 〜[4]のいずれか一項に記載の有機タンタル錯体化合物。
(式中、R2およびR3は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、フェニル基またはメトキシ基のいずれかを表す。)
[6] 光重合性の炭素-炭素不飽和結合を有する有機基を少なくとも1つ有するβ-ジケトン化合物(A)とタンタルアルコキシド化合物(B)とを、該タンタルアルコキシド化合物(B)の量(b)に対する該β−ジケトン化合物(A)の量(a)がモル比(a/b)で1.0〜1.5となる割合で反応させて反応生成物を得る第一の工程と、
該反応生成物とジシロキサンジオール化合物(C)とを、タンタルアルコキシド化合物(B)の量(b)に対する該ジシロキサンジオール化合物(C)の量(c)がモル比(c/b)で2以上となる量の該ジシロキサンジオール化合物(C)を用いて反応させる第二の工程と
を含む有機タンタル錯体化合物の製造方法。
[7] 前記β-ジケトン化合物(A)が、下記一般式(1)で表される[6]に記載の有機タンタル錯体化合物の製造方法。
(式中、R1は光重合性の炭素-炭素不飽和結合を有する有機基を表す。)
[8] 前記一般式(1)における有機基R1が、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基である[7]に記載の有機タンタル錯体化合物の製造方法。
[9] 前記ジシロキサンジオール化合物(C)が、下記一般式(2)で表される[6] 〜[8]のいずれか一項に記載の有機タンタル錯体化合物の製造方法。
(式中、R2およびR3は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、フェニル基またはメトキシ基のいずれかを表す。)
[10] [1]〜[5]のいずれか1項に記載の有機タンタル錯体化合物および重合開始剤を含む光硬化性組成物。
[11] [10]に記載の有機タンタル錯体化合物および反応性希釈剤を含む光硬化性組成物。
[12] [1]〜[5]のいずれか1項に記載の有機タンタル錯体化合物または[10]もしくは[11]に記載の光硬化性組成物からなるナノインプリント用パターン形成材料。
本発明の有機タンタル錯体化合物および該有機タンタル錯体化合物を含む光硬化性組成物は、光重合性の炭素-炭素不飽和結合を有する有機基を有しているので光により容易に硬化する。
また本発明の有機タンタル錯体化合物は特定の遷移金属の原子(タンタル原子)を含み、本発明の光硬化性組成物は該有機タンタル錯体化合物を含むので、いずれもエッチングガス(特に窒素ガス)に対して高いエッチング耐性を有している。
よって、本発明の有機タンタル錯体化合物および該有機タンタル錯体化合物を含む光硬化性組成物は、モールドのパターンを転写可能な(UV)ナノインプリント用のパターン形成材料として有用である。
本発明の製造方法は、上記のような利点を有する有機タンタル錯体化合物や該有機タンタル錯体化合物を含む光硬化性組成物を提供する上で有用である。
合成例1で得られた2-アセトアセトキシエチルアクリレートの1H−NMRスペクトルを示す図である。 合成例2で得られた1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジオールの1H−NMRスペクトルを示す図である。 合成例2で得られた1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジオールの29Si−NMRスペクトルを示す図である。 実施例1の第一の工程で得られた反応粗生成物のIRスペクトルを示す図である。 ジシロキサンジオールと実施例1の第一の工程で得られた反応粗生成物との反応で得られた黄色い高粘度の液体のIRスペクトルを示す図である。 実施例1の第二の工程で得られた黄色い高粘度の液体の1H−NMRスペクトルを示す図である。 実施例2によるモールドのパターン転写、剥離後のパターニング後断面SEM画像を示す図である。 比較例2によるモールドのパターン転写、剥離後のパターニング後断面SEM画像を示す図である。 実施例4の製膜性評価結果を示す薄膜表面画像である。 比較例3の製膜性評価結果を示す薄膜表面画像である。
以下、本発明の有機タンタル錯体化合物の製造方法、該製造方法によって得られる有機タンタル錯体化合物、有機タンタル錯体化合物を含む光硬化性組成物ならびに有機タンタル錯体化合物および光硬化性組成物の用途について順次詳細に説明する。
(1)有機タンタル錯体化合物およびその製造方法
本発明の製造方法は、光重合性の炭素-炭素不飽和結合を有する有機基を少なくとも1つ有するβ-ジケトン化合物(A)(以下、単に「β−ジケトン化合物(A)」ともいう)とタンタルアルコキシド化合物(B)とを反応させる第一の工程と、第一の工程で得られた反応生成物にジシロキサンジオール化合物(C)を反応させる第二の工程とを含む。
ここで、本明細書において「光重合性の炭素−炭素不飽和結合」とは、直接光を吸収し活性化され重合を開始、あるいは光を吸収することで容易に分解し成長活性種を与える光増感剤(重合開始剤)の共存下で重合する炭素−炭素不飽和結合を意味する。また、「β-ジケトン化合物」とは、二つのカルボニル基がその間に存在する1個の炭素原子にそれぞれ結合している構造(一方のカルボニル基に対して他方のカルボニル基が炭素結合を介してβ位にある構造)を有するジケトン化合物である。
(1−1)第一の工程
<β-ジケトン化合物(A)>
β-ジケトン化合物(A)としては、光重合性の炭素-炭素不飽和結合を少なくとも1つ有する有機基を少なくとも1つ有するβ-ジケトン化合物であれば特に制限されないが、例えば、下記一般式(1)で表されるアセトアセトキシ化合物を挙げることができる。
一般式(1)中、R1は光重合性の炭素-炭素不飽和結合を少なくとも1つ有する有機基を表す。
本発明の有機タンタル錯体化合物は、タンタルアルコキシド化合物(B)とR1が光重合性の炭素-炭素不飽和結合を有する有機基であるβ−ジケトン化合物(A)を反応させる第一の工程で得られた反応生成物を、第二の工程に供して得られるものであるので、光硬化性を発現することができる。
光重合性の炭素-炭素不飽和結合を有する有機基については、特に制限されないが、アクリロイル基、メタアクロイル基およびビニル基などが挙げられる。これらの中でも、紫外線による硬化の速度が速い点でアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が好ましい。
これらβ-ジケトン化合物(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよく、R1がアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基であるβ-ジケトン化合物(A)が、UV照射による硬化の速度が速い有機タンタル錯体化合物を提供できる観点から好ましい。
なお、β−ジケトン化合物(A)は、ケト−エノール互変性を有し、ケト体、エノール体の両方が存在する。本明細書においてはβ−ジケトン化合物(A)をケト体で表記するが、エノール体を排除するものではない。
<タンタルアルコキシド化合物(B)>
タンタルアルコキシド化合物(B)としては、一般式Ta(OR45(式中、R4は炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基を示す。)で表される化合物を使用することができる。
このようなタンタルアルコキシド化合物(B)は、入手のしやすさ、及び、タンタルアルコキシド化合物(B)とβ-ジケトン化合物(A)の反応後に遊離するアルコールの除去のしやすさの点で好ましい。
また、このようなタンタルアルコキシド化合物(B)は、比重が4以上であるタンタルの原子を有しているため、エッチングガス(特に窒素ガス)に対する高いエッチング耐性を有する点で好ましく、またそのような性質を有する有機タンタル錯体化合物およびそれを含む光硬化性組成物を提供できる点で好ましい。
炭素数1〜5のアルキル基であるR4の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、イソブチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、およびtert−ペンチル基などが挙げられる。複数個あるR4は、互いに同一であっても異なってもよい。
タンタルアルコキシド化合物(B)の具体例としては、ペンタメトキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタn−プロポキシタンタル、ペンタイソブトキシタンタル、ペンタ−n−ブトキシタンタル、ペンタ−sec−ブトキシタンタル、ペンタ−tert−ブトキシタンタル、ペンタイソペントキシタンタル、ペンタ−tert−ペントキシタンタルを挙げることができる。
これらの中でも、常温で液体であるタンタルアルコキシド化合物、すなわち、ペンタエトキシタンタル、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタn−プロポキシタンタル、ペンタイソブトキシタンタル、ペンタ−n−ブトキシタンタル、ペンタ−sec−ブトキシタンタル、ペンタ−tert−ブトキシタンタルが、上記第一の工程における反応生成物の製造時に取り扱いやすい点で好ましく、さらに、ペンタエトキシタンタル、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタ−n−プロポキシタンタルが、上記第一の工程の反応後に得られた反応生成物から遊離アルコール除去をしやすい点で特に好ましい。
これらタンタルアルコキシド化合物(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
上記第一の工程では、光重合性の炭素-炭素不飽和結合を有する有機基を少なくとも1つ有するβ-ジケトン化合物(A)とタンタルアルコキシド化合物(B)とを、該タンタルアルコキシド化合物(B)の量(b)に対する該β−ジケトン化合物(A)の量(a)が、モル比(a/b)で、通常1.0〜1.5、好ましくは1.0〜1.3、より好ましくは1.0〜1.2となる割合で反応させて反応生成物を得る(aはβ−ジケトン化合物(A)のモル数を表し、bはタンタルアルコキシド化合物(B)のモル数を表す)。
本発明の有機タンタル錯体化合物あるいは該有機タンタル錯体化合物を含む光硬化性組成物を硬化させた硬化物のエッチングガス(特に窒素ガス)に対するエッチング耐性は、有機タンタル錯体化合物あるいは光硬化性組成物中の有機成分が少ない方が良好である。第一の工程において、上記モル比(a/b)が上記範囲にあると、光硬化性を有しかつ有機成分の少ない有機タンタル錯体化合物を得る上で有用な反応生成物が得られる。
第一の工程では、上記タンタルアルコキシド化合物(B)と上記β-ジケトン化合物(A)とを、通常、常圧下、露点−80℃以下の雰囲気下で、3時間以上(好ましくは3〜72時間)攪拌して反応させることで上記反応生成物を製造する。
第一の工程で得られた反応生成物からは、必要に応じて、減圧処理などにより遊離アルコールを留去する。被加工材料に塗布する用途に用いる有機タンタル錯体化合物を製造する目的で、該反応粗組成物を第二の工程に供する場合には、遊離アルコールを留去することが好ましい。
このような条件で上記反応を行って得られた反応生成物を第二の工程に供すると、耐加水分解性(保存安定性)がよく、ナノインプリントによるモールドパターンの転写性に優れる有機タンタル錯体化合物を製造できる。
上記反応は、タンタルアルコキシド化合物(B)の加水分解を防ぐために、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。
また、上記反応は、上記雰囲気の露点を、通常露点−80℃以下に制御して行う。上記雰囲気の露点は低いほど好ましいが、一般的には装置性能による制限などを考慮すると、上記反応は通常−100〜−80℃で実施することが多い。
上記反応をこのような雰囲気下で行なう場合は、上記反応は、例えば、アルゴンガスなどの不活性ガスで置換したグローブボックスなどの中で行なう。
上記反応は、必要に応じて、トルエン等の炭化水素系溶媒、タンタルアルコキシド化合物(B)のアルコキシ基に対応するアルコール(例えばエトキシ基に対応するアルコールはエタノール)などを反応系内に添加して行なってもよい。
また、(UV)ナノインプリント用パターン形成材料に好適に用いることのできる有機タンタル錯体化合物あるいはそれを含有する光硬化性組成物を提供する観点からは、第一の工程では触媒等の成分は用いないことが望ましい。
第一の工程で得られた反応生成物を赤外吸収分光法(IR)で測定することで、次のことを確認することができる。
原料であるタンタルアルコキシ化合物やβ−ジケトン化合物(A)では、C=Oの伸縮振動に基づく吸収が通常約1700cm-1付近に観測される。これに対して、反応生成物では、この吸収の他にも通常約1500cm-1〜1700cm-1に分裂した吸収が観測される。これにより、β−ジケトン化合物(A)のジケトン構造とタンタルアルコキシ化合物(B)のタンタル原子との間でキレート配位が生じたことを確認できる。
<第一の工程で得られる反応生成物>
第一の工程では、タンタル原子にβ-ジケトン化合物(A)が1つキレート配位した構造を有する化合物が主として得られ、その他に、タンタル原子にβ-ジケトン化合物(A)が2以上キレート配位した構造を有する化合物も得られると推定される。そのため、得られる反応生成物はこれら化合物から構成されると推定される。
第一の工程で得られる反応生成物は、β−ジケトン化合物(A)が前記一般式(1)で表される化合物である場合を例に挙げると、下記一般式(3)で表される構造を有する、1種または2種以上の化合物から構成されていると推定される。
式中R4はタンタルアルコキシド化合物(B)のアルコキシ基に由来する炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基を表し、R1は一般式(1)の有機基R1と同じである。また、mは1〜4の整数であり、nは1〜4の整数である。但し、m+n=5である。
反応生成物は、単離処理に供してもよい。
(1−2)第二の工程
<ジシロキサンジオール化合物(C)>
ジシロキサンジオール化合物(C)は、第一の工程で得られた反応生成物と反応して、ジシロキサンジオール化合物(C)のジオールに由来する構造(以下、単に「ジオールに由来する構造」ともいう)とタンタル原子との結合の形成を誘導する成分であり、下記一般式(2)で表される。
該結合は、ジシロキサンジオール化合物(C)の有するOH基と第一の工程で得られた反応生成物の有するアルコキシ基との反応(脱アルコール反応)により生成する。
式中、R2およびR3はそれぞれ独立にメチル基、エチル基、フェニル基またはメトキシ基のいずれかを表す。
ジシロキサンジオール化合物(C)の具体例としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3-ジオール、1,1,3,3−テトラエチルジシロキサン-1,3−ジオール、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン−1,3−ジオール、1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン−1,3−ジオールを挙げることができる。
上記第二の工程では、第一の工程で得られた反応生成物とジシロキサンジオール化合物(C)とを、タンタルアルコキシド化合物(B)の量(b)に対する該ジシロキサンジオール化合物(C)の量(c)がモル比(c/b)で2以上、好ましくは2.0〜3.0、より好ましくは2.0〜2.5、さらに好ましくは2.0〜2.2となる量の該ジシロキサンジオール化合物(C)を用いて反応させる(bは前述の通りタンタルアルコキシド化合物(B)のモル数を表し、cはジシロキサンジオール化合物(C)のモル数を表す)。
第二の工程においては、上記第一の工程で得られた反応生成物とジシロキサンジオール化合物(C)とを、通常、常圧下、露点−80℃以下の雰囲気下で、3時間以上(好ましくは3〜72時間)攪拌して反応させる。
第二の工程では、上記反応終了後、必要に応じて、遊離アルコールを留去するため、減圧処理などを行なってもよい。第二の工程で得られる有機タンタル錯体化合物を被加工材料に塗布する用途に用いる場合には、第二の工程で遊離アルコールを留去するための減圧処理などを行うことが好ましい。
このような条件で上記反応を行なうと、耐加水分解性(保存安定性)がよく、ナノインプリントによるモールドパターンの転写性に優れる有機タンタル錯体化合物を製造できる。
上記第二の工程の反応は、タンタルアルコキシド化合物(B)の加水分解を防ぐために、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。
また、上記反応は、上記雰囲気の露点を、通常露点−80℃以下に制御して行う。上記雰囲気の露点は低いほど好ましいが、一般的には装置性能による制限などを考慮すると、上記反応は通常−100〜−80℃で実施することが多い。
上記反応をこのような雰囲気下で行なう場合は、上記反応は、例えば、アルゴンガスなどの不活性ガスで置換したグローブボックスなどの中で行なう。
上記反応は、必要に応じて、トルエン等の炭化水素系溶媒、タンタルアルコキシド化合物(B)のアルコキシ基に対応するアルコール(例えばエトキシ基に対応するアルコールはエタノール)などを反応系内に添加して行なってもよい。
また、(UV)ナノインプリント用パターン形成材料に好適に用いることのできる有機タンタル錯体化合物またはそれを含有する光硬化性組成物を提供する観点からは、第二の工程においては触媒等の成分は用いないことが望ましい。
ジシロキササンジオール化合物(C)に由来する構造が第一の工程で得られた反応生成物のタンタル原子に結合したことは、第二の工程で得られた有機タンタル錯体化合物を赤外吸収分光法(IR)で測定することにより確認することができる。
具体的には次の通りである。
第二の工程で得られた有機タンタル錯体化合物のIRチャートでは、930cm-1付近にピークが観測される。
これに対して、ジシロキサンジオール化合物(C)や第一の工程で得られた反応生成物やIRチャートでは、930cm-1付近にピークは観測されない。
従って、930cm-1のピークの存在により、ジシロキサンジオール化合物(C)のジオールのOH基に由来する構造と第一の工程で得られた反応生成物のタンタル原子との間でTa−O−Si結合が生じたことを確認できる。
有機タンタル錯体化合物は、単離処理に供してもよい。
また、第2の工程の反応については、β−ジケトン化合物(A)が一般式(1)で表される構造を有するβ−ジケトン化合物であり、ジシロキサンジオール化合物(C)が一般式(2)で表される構造を有するジシロキサンジオール化合物である態様を例にとれば、以下の通り推定される。
上記第一の工程において得られた反応生成物中の主成分は、β−ジケトン化合物(A)に由来する配位子の数が1であり、アルコキシ基を4つ有する。
第二の工程において、これらのアルコキシ基は、ジシロキサンジオール化合物(C)の有するOH基と反応(脱アルコール反応)し、Ta−O−Si結合を形成する。
ここで、第一の工程で、タンタル原子にβ−ジケトン化合物(A)が1つ配位し、アルコキシ基が4つ結合してなる化合物がbモル得られたと仮定する。また、第二の工程で用いるジシロキサンジオール化合物(C)の量をcモルとする。
このように仮定すると、4つのアルコキシ基をジシロキサンジオール化合物(C)と反応させて、アルコキシ基を全てTa−O−Si結合に変えるために必要なジシロキサンジオール化合物(C)の量は、理論値でc=2bモル以上である。
以上を鑑みて、本発明では、ジシロキサンジオール化合物(C)を、タンタルアルコキシド化合物(B)の量(b)に対する該ジシロキサンジオール化合物(C)の量(c)がモル比(c/b)で2以上となる割合で用いる。ジシロキサンジオール化合物(C)をこのような量で用いると、未反応のアルコキシ基が残存しない有機タンタル錯体化合物が得られるので、未反応のアルコキシ基を有する有機タンタル錯体化合物が生成し、これが加水分解によりタンタル酸化物を生成するという不具合を抑制できる。
また、第二の工程で用いるジシロキサンジオール化合物(C)は、タンタルアルコキシド化合物(B)の量(b)に対する該ジシロキサンジオール化合物(C)の量(c)がモル比(c/b)で3未満となる割合で用いることが、光硬化性の官能基を有していないジシロキサンジオール化合物(C)を過剰に含み、光硬化性に支障をきたすことを抑制できる観点から好ましい。
<有機タンタル錯体化合物>
本発明の有機タンタル錯体化合物およびそれを含む光硬化性組成物は、次のような利点を有し、モールドのパターンを転写可能な(UV)ナノインプリント用のパターン形成材料として有用である:
光重合性の炭素-炭素不飽和結合を有する有機基を有しているので光により容易に硬化する;
特定の遷移金属の原子(タンタル原子)を含むので、エッチングガス(特に窒素ガス)に対して高いエッチング耐性を有している。
本発明の有機タンタル錯体化合物は、β-ジケトン化合物(A)とタンタルアルコキシド化合物(B)とを反応させて得られた反応生成物と、ジシロキサンジオール化合物(C)とを反応させて得られたものであるので、タンタル原子、該タンタル原子に配位したβ−ジケトン化合物(A)に由来する配位子、タンタル原子に結合したジシロキサン化合物(C)に由来する構造から構成される。
本発明の有機タンタル錯体化合物は、例えば、以下の一般式(4)で表される化合物および一般式(5)または(6)で表される構造を有する化合物などから構成されていると考えられる。
一般式(4)は2分子のジシロキサンジオール化合物の各々の両末端のOH基に由来する酸素原子が同一のタンタル原子と化学結合をして形成された2つの環状部を有する構造を表す。
一般式(5)は第一のジシロキサンジオール化合物の両末端のOH基に由来する酸素原子が同一のタンタル原子と化学結合をして形成された1つの環状部を有し、第二および第三のジシロキサンジオール化合物の各々の一方のOH基に由来する酸素原子が隣接するタンタル原子と化学結合した鎖状部を有する構造を表す。
一般式(6)は第一から第四のジシロキサンジオール化合物の各々の一方のOH基に由来する酸素原子が同一のタンタル原子と化学結合をして形成された鎖状部を有する構造を表す。第一から第四のジシロキサンジオール化合物の各々の他方のOH基に由来する酸素原子は隣接する他のタンタル原子と化学結合している鎖状部を有する。
なお、一般式(5)および一般式(6)における太線と点線は、結合を表す。以下、便宜的に、太線で表される結合を「結合a」、点線で表される結合を「結合b」ともいう。
一般式(5)で表される第一の構造は、一般式(5)で表される第二の構造と共に、Ta−O−Si結合を形成してもよい。
この場合、一般式(5)で表される第一の構造における結合aが該Ta−O−Si結合のTa−O結合に相当するのであれば、一般式(5)で表される第二の構造における結合bが該Ta−O−Si結合のTa−O結合に相当する。
また、一般式(5)で表される構造は、一般式(6)で表される構造と共に、Ta−O−Si結合を形成してもよい。
この場合、一般式(5)で表される第一の構造における結合aが該Ta−O−Si結合のTa−O結合に相当するのであれば、一般式(6)で表される構造における結合bが該Ta−O−Si結合のTa−O結合に相当する。
同様に、一般式(6)で表される第一の構造は、一般式(6)で表される第二の構造と共に、Ta−O−Si結合を形成してもよい。
この場合、一般式(6)で表される第一の構造における結合aが該Ta−O−Si結合のTa−O結合に相当するのであれば、一般式(6)で表される第二の構造における結合bが該Ta−O−Si結合のTa−O結合に相当する。
また、一般式(6)で表される構造は、一般式(5)で表される構造と共に、Ta−O−Si結合を形成していてもよい。
この場合、一般式(6)で表される構造における結合aが該Ta−O−Si結合のTa−O結合に相当するのであれば、一般式(5)で表される構造における結合bが該Ta−O−Si結合のTa−O結合に相当する。
以上のとおり第二の工程で得られた有機タンタル錯体化合物には、一般式(4)で表される化合物、一般式(5)で表される構造および/または一般式(6)で表される構造を含む化合物が含まれると考えられる。
(2)光硬化性組成物
本発明の光硬化性組成物は、上記有機タンタル錯体化合物と、重合開始剤および/または反応性希釈剤を含む。
以下、本発明の光硬化性組成物に配合される成分について説明する。
<重合開始剤、反応性希釈剤>
本発明の光硬化性組成物には、上記有機タンタル錯体化合物の他に、重合開始剤および/または反応性希釈剤を含む。
重合開始剤としては、
2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−フェニル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノンなどの、アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤;
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤;
カルバゾール系光ラジカル重合開始剤や、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄−ヘキサフルオロホスフェートなどの、ルイス酸のオニウム塩などの光ラジカル重合開始剤;
ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)―ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどのチタノセン型の重合開始剤があげられる。
これらの重合開始剤の中でも、400nm付近の波長でも機能するアシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤や可視光領域の波長で機能するチタノセン型の重合開始剤が好ましく、組成物の紫外線吸収領域を避けることのできる可視光領域の波長で機能するチタノセン型の重合開始剤が特に好ましい。
これらの重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記重合開始剤は、上記有機タンタル錯体化合物100質量部に対して、通常0.2〜10質量部であり、更に好ましくは0.5〜7質量部であり、特に好ましくは1〜5質量部となる量で配合する。上記重合開始剤がこのような範囲にあると、得られる光硬化性組成物の硬化性や該光硬化性組成物から得られる塗膜の物性が優れる。
<反応性希釈剤>
本発明の光硬化性組成物には、上記有機タンタル錯体化合物と共重合できる、上記有機タンタル錯体化合物以外の化合物を反応性希釈剤(「反応性モノマー」ともいう。)として配合してもよい。
上記有機タンタル錯体化合物をこのような反応性希釈剤の存在下にラジカル重合すれば、硬化性組成物が硬化する際の硬化速度を調整することが可能となる。
このような反応性希釈剤としては、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基、マレイル基、フマル基等を有する化合物等が挙げられ、これらの中でも特に(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、(メタ)アクリル酸エステルの構造を1つ以上有するモノマーまたはオリゴマーが好適に用いられる。
前記(メタ)アクリル酸エステルの構造を1つ以上有するモノマーまたはオリゴマーとしては、単官能もしくは多官能の(メタ)アクリレートが使用でき、その例として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチルなどが挙げられる。
また(メタ)アクリロイル基と共重合できる官能基を持つ化合物として、さらには、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加させたいわゆるエポキシアクリレートも用いることができる。
なお、本明細書において(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を、(メタ)アクリレートとはアクリレートおよび/またはメタクリレート、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸および/またはメタクリル酸を各々意味する。
このような反応性希釈剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記反応性希釈剤を用いる場合であれば、その量は、上記有機タンタル錯体化合物100質量部に対して、好ましくは30質量部以下である。
<溶媒など>
本発明の光硬化性組成物には、塗布性向上のため必要に応じて溶媒等を配合することができる。
溶媒は、β−ジケトン化合物(A)とタンタルアルコキシド化合物(B)とを反応させる際に用いた反応溶媒と同じであっても異なっていてもよい。
溶媒としては、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;
トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素溶媒;
酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶媒;
2−プロパノール、ブタノールおよびヘキサノール、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール系溶媒;
ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、n−メチルピロリドン等のアミド系溶媒
などを挙げることができる。
このような溶媒は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、上記有機タンタル錯体化合物100質量部に対して、通常500〜20000質量部の量で配合する。上記溶媒をこのような量で含む光硬化性組成物は、被塗物に、より効率的に塗布できる。
<その他>
本発明の光硬化性組成物は、有機タンタル錯体化合物、重合開始剤、反応性希釈剤の他に、さらに粘度調整剤、分散剤、表面調整剤などの添加剤を、光硬化性組成物の硬化性およびその硬化物としてのエッチング特性等を阻害しない範囲で含んでいてもよい。
添加剤の量は、前記有機タンタル錯体化合物、前記重合開始剤および反応性希釈剤の合計量100質量部に対して30質量部以下であることが好ましい。
(3)有機タンタル錯体化合物およびそれを含む光硬化性組成物の用途
本発明の有機タンタル錯体化合物およびそれを含む光硬化性組成物は、ナノインプリント用のパターン形成材料、層間絶縁膜などの用途に好適に用いることができる。
エッチング耐性をより高める観点からは、本発明の有機タンタル錯体化合物を、他成分を配合せずに、(UV)ナノインプリントなどのためのパターン形成材料に供することが好ましい。
<(UV)ナノインプリント用のパターン形成材料とパターニングされた媒体>
上記用途の中でも、ナノインプリント用のパターン形成材料がより好適である。
なお、本発明の有機タンタル錯体化合物およびそれを含む光硬化性組成物は、熱ナノインプリント用のパターン形成材料にも用いることができるが、硬化の速度の観点から、特に、光(特にUV)ナノインプリント用のパターン形成材料に好適に用いることができる。
光(特にUV)ナノインプリント用のパターン形成材料として本発明の有機タンタル錯体化合物あるいはそれを含む光硬化性組成物を用いることで、均一性に優れた塗膜が得られ、エッチングガス(特に窒素ガス)を用いたエッチングに高い耐性を有するパターン形成材料を提供できるため、十分にパターニングされた媒体を提供することができる。
<パターン形成方法>
パターン形成は、例えば、次のように行われる。
<スタンパーを用いたパターンニングによる方法>
上記有機タンタル錯体化合物と、必要に応じてさらに前記重合開始剤、反応性希釈剤、粘度調整剤、分散剤、表面調整剤などの添加剤とを、必要に応じてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの溶剤に溶解させて上記有機タンタル錯体化合物を含む光硬化性組成物を調製する。
得られた光硬化性組成物を、必要に応じてろ紙でろ過し、次いで、例えば、スピンコーターを用いて、ガラスやダイヤモンドライクカーボンなどの媒体に該光硬化性組成物をスピンコートして薄膜を形成する。
この薄膜の上に、スタンパー(例えば、日本ゼオン製ゼオノア)を搭載し、スタンパーの上部から紫外線を照射し、次いで、スタンパーを剥離して、パターン形成された媒体を得る。紫外線照射は、通常、波長365〜400nmにおいて、照度35〜60mW/cmの紫外線を3〜25秒間照射する。
得られた媒体のパターンの様子は、断面走査型電子顕微鏡(SEM)画像測定などにより観測することができる。
<エッチングによる方法>
上記「パターン形成方法」の項目において、スタンパーを用いないことを除いて、「パターン形成方法」の項目と同様の方法で、スピンコートした媒体上の薄膜に紫外線照射して、硬化膜を得る。
この硬化膜に、ガラス小片を貼り付けてエッチング処理を実施する。次いで、ガラス小片を取り外し、エッチングされた媒体を得る。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ制限されるものではない。
(合成例1)
<2―アセトアセトキシエチルアクリレートの合成>
上述の非特許文献3に記載の合成方法に従い、2-アセトアセトキシエチルアクリレートを合成した。
具体的には、次の通りである。
2−ヒドロキシエチルアクリレート(59g、0.5mol)をフラスコに仕込み、フラスコを55〜60℃に加熱した。
次いで、フラスコの中身を攪拌しながら、無水酢酸ナトリウム(0.2g、2.4mmol)を加え、次いで、50.7g(0.6mol)の下記式(IV)で表されるジケテンを2.5時間かけて滴下した。
次いで、さらに2時間、反応溶液の温度を60℃に維持した。
なお、反応中に、ラジカル重合禁止剤として0.005gの4−メトキシフェノールをフラスコに2度添加した。
得られた反応粗生成物を塩化メチレンと水を用いて3回抽出した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮した後、冷蔵により反応生成物を溶液中から結晶化させた。
次いで、得られた反応生成物をNMRで測定した。図1に測定により得られた1H−NMRスペクトルを示した。1H−NMR測定の結果より、得られた反応生成物は、2-アセトアセトキシエチルアクリレート(以下、「化合物(1)」ともいう)であった。
(合成例2)
<ジシロキサンジオールの合成>
ジシロキサンジオールは非特許文献6に記載の合成方法を参照して合成した。
具体的には、次の通りである。
炭酸アンモニウム(関東化学株式会社製)6.6g、4−ジメチルアミノピリジン(関東化学株式会社製)12mg、純水80ml、テトラヒドロフラン(純正化学株式会社製)40mlを容量が200mlの三口フラスコにいれ氷冷しながら攪拌子で攪拌した。
この三口フラスコ内に、1,3−ジクロロテトラメチルジシロキサン(Gelest社製)10gを、大気中でゆっくり滴下した。滴下完了後、そのまま氷冷しながら一時間攪拌した。次いで、塩化ナトリウム(純正化学株式会社製)10gを添加し、さらに氷冷したまま攪拌を一時間した。
得られた反応液を分液漏斗に移液し、静置して水層と有機層に分液し、次いで、有機層を回収した。
この有機層に、硫酸ナトリウム(純正化学株式会社製)10gを添加し、一晩乾燥させた。
乾燥後、5Cろ紙を用いてろ過により固形分をろ別し、ろ液をエバポレーターで濃縮した。得られた濃縮液にn−ヘキサンを40ml添加し、50℃に加熱して、n−ヘキサン添加により生じた析出物などを全て溶解させた。
この溶液を室温で放置して自然冷却すると白色結晶が析出した。この白色結晶をろ過により回収して、白色結晶6.8gを得た。
得られた白色結晶は、1H-NMRおよび29Si−NMRで分析したところ、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジオールであった。
なお、上記1H-NMR測定は、溶媒として重トルエン(Acros Organics社製)を用い、シングルパルス法にて室温(約25℃)で実施した。
上記29Si−NMR測定は、溶媒として重トルエン重クロロホルム(0.05vol/vol %のテトラメチルシラン含有、和光純薬工業株式会社製)を用い、デカップリング法にて室温(約25℃)で実施した。
上記1H-NMR測定の結果を図2に示し、上記29Si−NMR測定の結果を図3に示した。
(実施例1)
<第一の工程>
アルゴン置換したグローブボックス内で、2.0g(10.0mmol)の化合物(1)と4.0g(9.8mmol)のペンタエトキシタンタル(昭和電工株式会社製)とを室温下で混合した。
これらは混合直後は2層に分離していたが、グローブボックス内で一晩攪拌することで、単層となった反応粗生成物を得た。
この反応粗生成物をグローブボックスから取り出し、臭化カリウム板に該反応粗生成物を塗布しIRスペクトルの測定を実施した。
その結果を図4に示した。
なお、図4において、実線は第一の工程で得られた反応粗生成物のIRスペクトルであり、点線は化合物(1)のIRスペクトルである。
図4からは、次のことが分かる。
化合物(1)では、そのカルボニル基が金属(タンタル)に配位しておらず、IRチャートでは化合物(1)のC=Oの伸縮振動に基づく吸収が1703cm-1付近にまとまって観測される。
これに対して、第一の工程で得られた反応粗生成物のIRチャートでは、C=Oの伸縮振動に基づく吸収(1703cm-1付近)の他にも、1520cm-1と1610cm-1付近に分裂した吸収が観測されている。
これは、タンタルに対して2-アセトアセトキシエチルアクリレートがキレート配位していることを示している。
<第二の工程>
第一の工程で得られた反応粗生成物全量をトルエン10g(純正化学株式会社製)に溶解し、攪拌しながら55℃まで加熱した。
次いで、この溶液に、合成例2で得られた1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジオール3.6g(21.7mmol)をテトラヒドロフラン(純正化学株式会社製)10gに溶解した溶液を滴下した。
滴下終了後、55℃で6時間加熱攪拌し、得られた反応液を室温まで放冷した。
次いで、この反応液の溶媒および上記反応により遊離したエタノールを留去し、黄色い高粘度の液体(以下、「化合物(2)」ともいう)を6.8g得た。
この化合物(2)を臭化カリウム板に塗布し、IRスペクトルの測定を実施した。
その結果を図5に示した。
図5からは、次のことが分かる。
化合物(1)は、そのカルボニル基が金属(タンタル)に配位しておらず、IRチャートでは化合物(1)のC=Oの伸縮振動に基づく吸収が1703cm-1付近にまとまって観測される。
これに対して、化合物(2)のIRチャートでは、該C=Oの伸縮振動に基づく吸収(1703cm-1付近)の他にも、1529cm-1と1616cm-1付近に分裂した吸収が観測されている。
これは、タンタルに対して2-アセトアセトキシエチルアクリレートがキレート配位していることを示している。
また、この化合物(2)のIRチャートでは、930cm-1付近に吸収がみられ、これはTa−O−Si結合の生成を示している。
上記IR測定とは別に、以下のようにNMR測定も行なった。
化合物(2)をNMRチューブにいれ、重クロロホルム(0.05vol/vol%のテトラメチルシラン含有、和光純薬工業株式会社製)に溶解させた。
このNMRチューブを封管して、1H-NMR測定をシングルパルス法にて室温(約25℃)で実施した。
その結果を図6に示した。
図6からは、次のことが分かる。
原料であるペンタエトキシタンタルのTa−OCH2CH3では、メチル基のピークがδ=1.2付近に観測されるが、化合物(2)では該ピークの領域付近にシグナルは観測されなかった。
これより、上記第二の工程では、ジシロキサンジオールと第一の工程で得られた反応粗生成物との反応により、該反応粗生成物の全てのエトキシ基がジシロキサンジオール化合物に由来する配位子で置換されたと考えられる。
<パターニング>
(実施例2)
3.0gの化合物(2)及び90mgの2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(IRGACURE369:チバ・ジャパン株式会社製)を、72gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業株式会社製)に溶解させた。
この溶液を口径0.03μmのろ紙でろ過し、次いで、媒体にスピンコートした。
スピンコートは、次の通り実施した。
コーター内にセットした媒体に調製した溶液を約1ml滴下した後媒体を500rpmで5秒間回転させ、次いで3000rpmで2秒間回転させ、さらに5000rpmで25秒間回転させることにより媒体上に薄膜を形成した。このスピンコートした薄膜の上に、無色透明な樹脂スタンパー(日本ゼオン製ゼオノア、ライン/スペース=56nm/28nm、凹部深さ40nm)を搭載し、スタンパーの上部から紫外線(波長365nmに於いて照度35mW/cm2)を25秒照射した後スタンパーを剥離した。この媒体を破断した断面SEM画像測定を実施したところ、パターンが転写されていることが確認できた(図7)。
(比較例1)
3.0gの化合物(1)及び90mgの2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(IRGACURE369:チバ・ジャパン株式会社製)を、72gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業株式会社製)に溶解させた。
この溶液を口径0.03μmのろ紙でろ過し、次いで、媒体にスピンコートした。
スピンコートは、次の通り実施した。
コーター内にセットした媒体に調製した溶液を約1ml滴下した後、媒体を500rpmで5秒間回転させ、次いで3000rpmで2秒間回転させ、さらに5000rpmで25秒間回転させることにより媒体上に薄膜を形成した。
このスピンコートした薄膜の上に、無色透明な樹脂スタンパー(日本ゼオン製ゼオノア、ライン/スペース=56nm/28nm、凹部深さ40nm)を搭載し、スタンパーの上部から紫外線(波長365nmに於いて照度35mW/cm2)を25秒照射した後スタンパーを剥離した。この媒体を破断した断面SEM画像測定を実施したところ、パターンが転写されていないことが確認できた(図8)。
パターンニングの結果を、下記表1にまとめた。
<エッチングレートの測定>
(実施例3)
2.0gの化合物(2)及び60mgの2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(IRGACURE369:チバ・ジャパン株式会社製)を、48gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業株式会社製)に溶解させて溶液を得た。
これらの溶液を各々口径0.03μmのろ紙でろ過し、次いで、媒体にスピンコートした。
スピンコートは、次の通り実施した。
コーター内にセットした媒体に、調製した溶液を約1ml滴下した後、媒体を500rpmで5秒間回転させ、次いで3000rpmで2秒間、さらに5000rpmで25秒間回転させることにより媒体上に薄膜を形成した。
薄膜の形成された媒体を窒素気流下、紫外線(波長365nmに於いて照度35mW/cm2)を25秒間照射し、硬化膜を得た。
以下に示す方法で、上記硬化膜のエッチングレートの測定を実施した。
(エッチングレート測定方法)
作成した硬化膜上にガラス小片を貼り付け、以下の条件のエッチング装置を用いて、以下の条件で上記硬化膜のエッチング処理を実施した。次いで、ガラス小片を取り外し、ガラス小片に保護された硬化膜部分とエッチングされた硬化膜部分との段差を、AFM(原子間力顕微鏡)(日本ビーコ社製、型番 ステージ:D−3100 、コントロールステーション: nanoscope IIIa)を用いて測定した。
エッチングレート(nm/sec)=段差(nm)÷処理時間(sec)
エッチングの条件
エッチングガス : 窒素
圧力 : 0.17Pa
ガス流量 : 32sccm
プラズマ電圧 : 300W
加速電圧 : 500V
処理時間 : 30sec
*sccm=standard centi cubic meter
硬化膜の窒素ガスによるエッチングレートの測定結果を表2に示した。
(比較例2)
実施例3において、化合物(2)に替えて化合物(1)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で、硬化膜を得て、該硬化膜のエッチングレートの測定を実施した。
硬化膜の窒素ガスによるエッチングレートの測定結果を表2に示した。
上記表2から分かるように、化合物(2)の硬化膜の窒素ガスによるエッチングレート(実施例3)は、化合物(1)の硬化膜の窒素ガスによるエッチングレート(比較例2)に比べて小さく、窒素ガスに対するエッチング耐性が高い。
<製膜性評価>
(実施例4)
2.0gの化合物(2)及び60mgの2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(IRGACURE369:チバ・ジャパン株式会社製)を、48gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業株式会社製)に溶解させた。
この溶液を口径0.03μmのろ紙でろ過し、次いで、媒体にスピンコートした。
スピンコートは、次の通り実施した。
コーター内にセットした媒体に、調製した溶液を約1ml滴下した後媒体を500rpmで5秒間回転させ、次いで3000rpmで2秒間、さらに5000rpmで25秒間回転させることにより、媒体上に薄膜を形成した。
薄膜の形成された媒体を窒素気流下、紫外線(波長365nmに於いて照度35mW/cm2)を25秒間照射し、硬化膜を得た。
以下に示す方法で、上記硬化膜の製膜性評価を実施した。
(製膜性評価方法)
媒体表面に形成された硬化膜に向かって、斜め上方向からハロゲンランプの光を照射し、硬化膜の真上方向から硬化膜表面写真を撮影した。
実施例4で得られた硬化膜を撮影した画像を図9に示した。
なお、上記撮影により得られた写真では、媒体上にパーティクルが存在する場合は、パーティクルによる光乱反射により画像に白い光が観測される。これに対してパーティクルが存在しない場合は画像が真黒に映る。
(比較例3)
アルゴン置換されたグローブボックス内で、H末端ポリジメチルシロキサン(DMS−H03:Gelest社製)を1.0g秤量し、これにペンタエトキシタンタル(昭和電工社製)を1.1g添加し、17.9gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業株式会社製)に溶解させた。
この溶液を口径0.03μmのろ紙でろ過し、次いで、媒体にスピンコートした。
スピンコートは、次の通り実施した。
コーター内にセットした媒体に、調製した溶液を約1ml滴下した後、媒体を500rpmで5秒間回転させ、次いで3000rpmで2秒間回転させ、さらに5000rpmで25秒間回転させることにより、媒体上に薄膜を形成した。
形成された薄膜を実施例4と同様の方法で写真撮影した。得られた画像を図10に示した。
上記製膜性評価の結果について、下記表3にまとめた。
実施例4の場合、画像は概ね真黒であったことから、媒体表面にパーティクルの発生が無いことがわかった(図9)。
実施例4では、有機タンタル錯体化合物が加水分解に対して安定であり、パーティクルが発生していないことが示された。
これに対して比較例3では、媒体中央から外側に向けて白い筋状の跡が観測されたことから、パーティクルが存在することがわかった(図10)。
これは、反応点のないポリジメチルシロキサンとペンタエトキシタンタルとを混合しても両者は反応せず、スピンコート時にペンタエトキシタンタルが加水分解を受け、酸化タンタルのパーティクルが析出したことを示している。
本発明の有機タンタル錯体化合物および該有機タンタル錯体化合物を含む光硬化性組成物は、モールドのパターンを転写可能な(UV)ナノインプリント用のパターン形成材料として有用である。
本発明の製造方法は、上記のような利点を有する有機タンタル錯体化合物や該有機タンタル錯体化合物を含む光硬化性組成物を提供する上で有用である。

Claims (2)

  1. 光重合性の炭素-炭素不飽和結合を有する有機基を少なくとも1つ有するβ-ジケトン化合物(A)とタンタルアルコキシド化合物(B)とを、該タンタルアルコキシド化合物(B)の量(b)に対する該β−ジケトン化合物(A)の量(a)がモル比(a/b)で1.0〜1.5となる割合で、該β−ジケトン化合物(A)のジケトン構造と該タンタルアルコキシ化合物(B)のタンタル原子との間でキレート配位が生じるように反応させて反応生成物を得る第一の工程と、
    該反応生成物とジシロキサンジオール化合物(C)とを、タンタルアルコキシド化合物(B)の量(b)に対する該ジシロキサンジオール化合物(C)の量(c)がモル比(c/b)で2以上となる量の該ジシロキサンジオール化合物(C)を用いて、該ジシロキサンジオール化合物(C)のジオールのOH基に由来する構造と該反応生成物のタンタル原子との間でTa−O−Si結合が生じ、かつ、該反応生成物のアルコキシ基が全てTa−O−Si結合に変わるように反応させる第二の工程と
    を含み、
    前記β-ジケトン化合物(A)が、下記一般式(1):
    (式中、R1はアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基およびビニル基から選択される有機基を表す。)
    で表され、
    前記タンタルアルコキシド化合物(B)が、一般式Ta(OR45(式中、R4は炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基を示す。)で表され、
    前記ジシロキサンジオール化合物(C)が、下記一般式(2):
    (式中、R2およびR3はそれぞれ独立にメチル基、エチル基、フェニル基またはメトキシ基のいずれかを表す。)
    で表される
    有機タンタル錯体化合物の製造方法。
  2. 前記一般式(1)における有機基R1が、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基である請求項に記載の有機タンタル錯体化合物の製造方法。
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