JP2004313229A - 被覆穿刺針 - Google Patents
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Abstract
【課題】ゴム栓や皮膚へ繰り返し刺通しても刺通抵抗の低い穿刺針を提供する。
【解決手段】金属に配位可能なドナー基を2個以上有するキレート化剤が金属に配位した金属キレート化合物、反応性シリコーンおよび非反応性シリコーンを含む混合物を被覆した後、金属キレート化合物と反応性シリコーンを反応させた被覆層を有する被覆穿刺針およびその製造法。
【解決手段】金属に配位可能なドナー基を2個以上有するキレート化剤が金属に配位した金属キレート化合物、反応性シリコーンおよび非反応性シリコーンを含む混合物を被覆した後、金属キレート化合物と反応性シリコーンを反応させた被覆層を有する被覆穿刺針およびその製造法。
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、医療などの用途に使用する穿刺針に関し、さらに詳細には反応性シリコーン化合物を含むシリコーン化合物を用いて、少なくとも穿刺針のカヌラ表面を被覆処理することにより、ゴム栓、皮膚などへの刺通抵抗を改良した被覆穿刺針に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、種々の用途において金属表面をシリコーン化合物で処理し、摩擦抵抗を軽減する技術が実施されてきた。例えば、アミノアルキルシロキサンとメチルシロキサンの共重合体を主成分とする付着性コーティング物質を金属製切断用刃に塗布し、加熱または常温で放置して該コーティング物質を架橋により硬化させることが公知である(特公昭46−3627号公報)。しかし、前記コーティング物質を医療用の金属製針に塗布した場合、該針のゴム栓や皮膚への刺通抵抗は低減されるが、コーティング物質の硬化が不十分であるため、ゴム栓や皮膚へ繰り返し刺通する場合、該コーティング物質が該針から剥がれ落ちて前記刺通抵抗が上昇するという問題が生じていた。ここで、繰り返し刺通される医療用針とは、ゴム栓を有するバイアル瓶内の薬液を注射筒に導入し、該注射筒内の薬液を人体に注射する場合に使用される注射針等である。刺通抵抗とは、前記針をゴム栓や皮膚に刺通したときの抵抗のことを指し、該抵抗が低いほど、該針を人の皮膚に刺通したときに人が受ける痛みが少なくなる。また、医療用の針は滅菌が必要であるが、前記コーティング物質を塗布した針をガンマ線照射により滅菌した場合も、該針の刺通抵抗が上昇してしまう。
【0003】
一方、アミノ基含有シランとエポキシ基含有シランの反応生成物と、シラノール基を有するポリジオルガノシロキサンとの反応生成物を主成分とする組成物を注射針に塗布し、加熱または常温で放置して該組成物を硬化させて得られる注射針が知られている(特公昭61−35870号公報)。前記組成物は硬化性に優れているが、刺通抵抗が十分に低下しないことがある。
【0004】
また、側鎖及び/又は末端にアミノ基を含有するシリコーンとポリジオルガノシロキサンからなるシリコーン混合物を含有するコーティング剤を塗布し、ガンマ線照射を含む硬化方法により表面処理した注射針が公知である(特開平7−178159号公報)。該注射針は前記ガンマ線照射により、前記コーティング剤の硬化を促進させるだけでなく、該注射針の滅菌もできるものであるが、ガンマ線照射以外の滅菌方法を用いた場合は、該コーティング剤の硬化が不十分であり、該針をゴム栓や皮膚へ繰り返し刺通する場合、刺通抵抗が上昇する。
【0005】
上記問題を考慮して、本発明者らはすでに、アミノ基含有アルコキシシランとエポキシ基含有アルコキシシランおよび両末端にシラノール基を有するシリコーンを反応させて得られたシリコーンと、非反応性シリコーンとの混合物を塗布した穿刺針を見出した(特開平10−309316号公報)。この穿刺針はゴム栓や皮膚への刺通抵抗が低く、さらに滅菌手段を選ばないという点で非常に優れたものである。しかしながら、該穿刺針においても、繰り返し刺通した場合のゴム栓や皮膚への刺通抵抗がより良好であるよう、さらに改善が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記事情に鑑み、本発明はゴム栓や皮膚へ繰り返し刺通しても刺通抵抗の低い穿刺針を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々鋭意検討した結果、穿刺針に金属キレート化合物と反応性シリコーンの混合物を塗布し、硬化することにより、所期の目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は少なくとも穿刺針のカヌラ表面に金属キレート化合物と反応性シリコーンとを反応させた被覆層を有する被覆穿刺針である。
本発明の一実施態様は、少なくとも穿刺針のカヌラ表面に金属キレート化合物、反応性シリコーンおよび非反応性シリコーンを含む混合物を被覆した後、金属キレート化合物と反応性シリコーンを反応させた被覆層を有する被覆穿刺針である。
【0009】
また、本発明は、以下の工程を含む被覆穿刺針の製造方法である。
a)少なくとも穿刺針のカヌラ表面に金属キレート化合物および反応性シリコーン化合物を含む混合物溶液を塗布する工程;および
b)加熱または紫外線照射によって、硬化被覆層を形成する工程。
本発明の他の実施態様は、以下の工程を含む被覆穿刺針の製造方法である。
a)少なくとも穿刺針のカヌラ表面に金属キレート化合物、反応性シリコーン化合物および非反応性シリコーン化合物を含む混合物溶液を塗布する工程;および
b)加熱または紫外線照射によって、硬化被覆層を形成する工程。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、穿刺針とは注射針、採血針、留置針、翼状針、混注針、瓶針、縫合針等である。または、これらに限らず、物体を穿刺して薬剤等の物質を人体へ投与する器具あるいは人体から血液等を採取する器具を含む。針の材料としては、ステンレス、ニッケル−チタンなどの弾性を有する金属、PPS樹脂、ABS樹脂、PET樹脂、PP樹脂、POM樹脂などの合成樹脂があり、材料は、シリコーン化合物を被覆するものであれば、特に制限されない。
針の寸法、形状などは特に制限されない。本発明において金属キレート化合物と反応性シリコーンなどが被覆される部分は、少なくとも針のカヌラ部分であって、必要により針全体を被覆する。
【0011】
本発明の金属キレート化合物は、金属に配位可能なドナー基を2個以上有するキレート化剤が金属に配位し、1個以上の環状構造を有する化合物であり、アルコキシ基の一部をキレート化剤で置換し、キレート化した金属アルコキシドを含む。
前記金属キレート化合物は、キレート化剤の金属に配位可能なドナー基が酸素、窒素または硫黄である。
金属キレート化合物は、金属がチタン、アルミニウム、タンタル、バリウム、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、セリウム、クロム、コバルト、銅、ジスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、ガドリウム、ガリウム、ハフニウム、ホルミウム、インジウム、イリジウム、鉄、ランタン、鉛、ルテニウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ネオジウム、ニッケル、パラジウム、ネオジウム、パラジウム、白金、プラセオジウム、ロジウム、ルテニウム、サマリウム、スカンジウム、ストロンチウム、テルビウム、ツリウム、スズ、バナジウム、イッテリウム、イットリウムおよび亜鉛からなる群から選ばれた1種または2種以上の金属である。これらの中でも、チタン、アルミニウム、タンタルが好ましい。
【0012】
金属に配位可能なドナー基を2個以上有するキレート化剤としては、β−ジケトン、β−ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸またはそのエステルあるいは塩、ケトアルコール、アミノアルコールおよびエノール性活性水素化合物からなる群から選ばれた1種または2種以上の化合物がある。キレート化剤は、金属アルコキシドに配位して1個以上の環状構造を形成する。アルコキシドとしては、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシド、イソプロポキシドなどが挙げられる。金属の価数が高いほど、金属の結合する反応性シリコーンの数が増えるので、密な三元ネットワークが形成され機械的強度が向上する。
【0013】
β−ジケトンとしては、2,4−ペンタンジオン(別名、アセチルアセトン)、2,4−ヘプタンジオン、トリフリオロペンタンジオネート、ヘキサフルオロペンタンジオネート、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオネート、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオネートなどが挙げられる。
【0014】
β−ケトエステルとしては、メチルアセトアセテート(別名、アセト酢酸メチル)、エチルアセトアセテート、ブチルアセトアセテート、メタクリルオキシエチルアセトアセテート、メチル(トリメチル)アセトアセテート、アリルアセトアセテートなどのβ−ケト酸のエステルなどが挙げられる。
【0015】
ヒドロキシカルボン酸またはそのエステルあるいは塩としては、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸アンモニウム塩、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸、リンゴ酸エチル、酒石酸、酒石酸メチル、酒石酸エチルなどが挙げられる。
【0016】
ケトアルコールとしては、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ヘプタノンなどが挙げられる。
【0017】
アミノアルコールとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、N−エチル−モノエタノールアミン、N,N−ジメチルモノエタノールアミン、N,N−ジエチルモノエタノールアミンなどが挙げられる。
【0018】
エノール性活性水素化合物としては、マロン酸ジエチルエステル、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミドなどが挙げられる。
【0019】
前記キレート化合物のキレート化剤としては、上記化合物のうち、好ましくはエチルアセトアセテート、メチルアセトアセテート、トリフルオロペンタンジオネート、ヘキサフルオロペンタンジオネート、2,4−ペンタンジオネート、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、6,6,7,7,8,8,ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオネート、テノイルトリフルオロアセトネート、ベンゾイルアセトネート、ベンゾイルトリフルオロアセトネート、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオネート、メタクリルオキシエチルアセトアセテート、メチル(トリメチル)アセチルアセテート、アリルアセトアセテートなどが挙げられる。これらの中でも、特に好ましくは、エチルアセトアセテート、2,4−ペンタンジオネートなどが挙げられる。
【0020】
チタンキレート化合物としては、具体的には、チタンアリルアセトアセテートトリイソプロポキシド、チタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキシド、チタンビス(トリエタノールアミン)ジ−n−ブトキシド、チタンビスジイソプロポキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、チタンジ−n−ブトキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、チタンジジイソプロキシドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオネート)、チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタンジイソプロポキシドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンジ−n−ブトキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタンエチルアセトアセテートトリ−n−ブトキシド、チタンメタクリルオキシエチルアセテートトリイソプロポキシド、チタンオキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、チタンテトラ(2−エチル−3−ヒドロキシ−ヘキシルオキシド)、ジヒドロキシビス(ラクテート)チタン、(エチレングリコール)チタンビス(ジオクチルフォスフェート)などが挙げられる。
【0021】
アルミニウムキレート化合物としては、アルミニウムs−ブトキシドビス(エチルアセチアセテート)、アルミニウムジ−sブトキシドエチルアセトアセテート、アルミニウムジイソプロポキシドエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(ヘキサフルオロペンタジオネート)、アルミニウムトリス(2,4−ペンタンジオネート)、アルミニウム9−オクタデセニルアセトアセテートジイソプロポキシド、アルミニウムトリス(2,2,6,6,−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0022】
ジルコニウムキレート化合物としては、ジルコニウムジ−n−ブトキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムジテトラキス(ヘキサフルオロペンタンジオネート)、ジルコニウムテトラキス(トリフルオロペンタンジオネート)、ジルコニウムメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオネート)、トリグリコラートジルコン酸、トリラクテートジルコン酸などが挙げられる。
【0023】
これらの中では、好ましくは、チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタンジイソプロポキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、チタンアリルアセトアセテートトリイソプロポキシド、チタンジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリイソプロポキシド、アルミニウム(III)ジイソプロポキシドエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(2,4−ベンタンンジオネート)、アルミニウムs−ブトキシドビス(エトルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムジ−n−ブトキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)等が挙げられる。
本発明に用いる金属キレート化合物は、1種単独で用いても、または2種以上を併用してもよい。
【0024】
このような金属キレート化合物は、それに対応する金属アルコキシドに比べ、加水分解またはエステル交換反応等の反応性が緩慢であるため、取り扱い上および貯蔵安定性の上で有利であり、特に反応性シリコーンとの反応に有利に使用できる。
【0025】
本発明における反応性シリコーンとは、分子内に活性水素を有する反応性シリコーンであり、上記キレート化合物と反応する反応性官能基(活性水素)を有するシリコーンを指すものである。分子内に活性水素を有する反応性シリコーンとしては、例えば、−OH、−SH、−NH2、−NH−、−CO−NH−、−OCO−NH−、−NH−CO−NH−、−CO−OH、−CS−OH、−CO−SH、−CS−SH、−SO3H、−PO3H2、−SO2−NH2、−SO2、−NH−、−CO−CH2−CO−等の活性水素を有する構造単位を分子内に有するシリコーンである。
このような構造を有するシリコーンとしては、シラノール基含有シリコーン、メトキシ基含有シリコーン、ビニル基含有シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン等が挙げられる。
【0026】
該反応性シリコーンとしては、末端にシラノール基を含有するものが前記金属キレート化合物との反応性がよく、穿刺針を繰り返し刺通しても剥がれ落ちにくく、好ましい。また、両末端にシラノール基を有するものが特に好ましい。
【0027】
両末端にシラノール基を有するシリコーンとしては、両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン−ジエチルシロキサンコポリマー、トリフルオロプロピルメチルシロキサン等が挙げられる。
【0028】
本発明における非反応性シリコーンとは、前記キレート化合物と反応する反応性官能基(活性水素)を有しないシリコーンを指すものであり、例えば、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン等が挙げられる。
【0029】
本発明において、反応性シリコーンのシロキサン部分の平均重合度は10〜10,000であることが好ましく、より好ましくは10〜1,000である。該平均重合度が10より少ないと、非反応性シリコーンが障害になって反応性シリコーンの架橋反応が起こりにくく、硬化性が悪くなって穿刺針の刺通抵抗が上昇する。また、10,000より多いと、形成される架橋構造が粗となり、繰り返し刺通により剥がれ落ちやすくなる。
【0030】
また、非反応性シリコーンのシロキサン部分の平均重合度は、前記反応性シリコーンの平均重合度以下であることが好ましい。非反応性シリコーンのシロキサン部分の平均重合度が反応性シリコーンのそれを上回ると、反応性シリコーンの架橋反応が起こりにくくなる。
【0031】
本発明では金属キレート化合物、反応性シリコーンおよび非反応性シリコーンを含む混合物で少なくとも穿刺針のカヌラ表面を処理する。該混合物の混合割合は、反応性シリコーン10重量部に対して、キレート化合物が1〜5重量部、好ましくは1〜3重量部、非反応性シリコーンが1〜50重量部、好ましくは1〜20重量である。キレート化合物の混合割合が1重量部より少ないと、または非反応性シリコーンの混合割合が50重量より多いと、被膜が十分に硬化できず、穿刺針をゴム栓や皮膚へ繰り返し刺通することにより該混合物が剥がれ落ちるおそれがある。
また、キレート化合物の混合割合が5重量部より多いと、金属キレート化合物中のアルコキシ基が加水分解され、さらに金属キレート化合物間で脱水縮合が進み、沈殿が生じやすくなる。また、非反応性シリコーンの混合割合が1重量部より少ないと、穿刺針のゴム栓や皮膚への刺通抵抗が十分に低下しない。
本発明の混合物には、上記金属キレート化合物、反応性シリコーンおよび非反応性シリコーンのほかに、反応性調節剤としてジメチルベンジルアミンなどの塩基性化合物などを少量含んでいてもよい。
【0032】
前記混合物は、通常、芳香族炭化水素類、直鎖状炭化水素類、脂肪族炭化水素類、ケトン類、エーテル類、フロン類等の有機溶媒に溶解させ、溶液として使用する。該溶液中の該混合物の濃度は、1〜20重量%、好ましくは、1〜15重量%であり、より好ましくは5〜10重量%である。該濃度が1重量%より低いと、被覆層としての十分な膜厚が得られず、ゴム栓や皮膚への刺通抵抗の低い値が得られない。また、該濃度が20重量%より高いと、溶液粘度が高くなり、針の外表面を均一に被覆することができないうえ、該混合物の硬化に必要な時間が長くなる。
【0033】
本発明ではキレート化合物、反応性シリコーンおよび非反応性シリコーンを混合し、次いで穿刺針を該混合物で表面処理したのち、加熱により該混合物を硬化させる。加熱温度は、120℃〜200℃であることが好ましく、加熱時間は1分間から60分間であることが好ましい。加熱温度が120℃より低い、あるいは加熱時間が1分間より短いと、該混合物の硬化が十分に進まない。また、加熱温度が200℃より高い、あるいは加熱時間が60分間より長いと、該混合物が熱分解してしまうおそれがある。
【0034】
本発明の穿刺針の製法では、穿刺針を前記キレート化合物と反応性シリコーンおよび非反応性シリコーンの混合物を含む混合物溶液に、例えば、0.1〜1秒間浸漬し、その後、120〜200℃で1〜60分間放置、または1〜10分間紫外線を照射する。これにより、金属キレート化合物のアルコキシ基およびキレート部分と反応性シリコーン末端のシラノール基が縮合反応し、穿刺針表面に金属キレート化合物と反応性シリコーンの架橋物が結合する。また、加熱放置または紫外線照射している間に前記混合物の架橋がさらに進み、硬化する。
前記混合物による針の表面処理方法は、浸漬のみならず、刷毛塗り、噴霧または滴下によるものであってもよい。また、前記反応を促進するため、前記混合物の溶液に酢酸などの有機酸を添加してもよい。
前記反応中、非反応性シリコーンはこれらの反応に関与せずに、架橋されたキレート化合物と反応性シリコーンの中に存在し、潤滑性を発現する役割を有する。
【0035】
本発明の穿刺針は、金属キレート化合物と反応性シリコーンが十分に硬化しているため、γ線照射滅菌しても、過剰な硬化による刺通抵抗の上昇を引き起こすおそれがない。また、エチレンオキシドガス滅菌によっても、刺通抵抗の上昇は起こらないため、滅菌手段を選ばない。
【0036】
以下、実施例にて本発明の一例を具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されない。
[実施例1]
チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)(TC750、松本交商製)0.6gと平均重合度約300の両末端にシラノール基を有するシリコーン3.5gおよび100cSのジメチルシリコーン(KF96−100、信越化学社製)7gをジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−141b)に溶解して、100mLの黄色透明の溶液を調製した。該溶液に22G注射針(長さ30mm、材質Sus304)を0.5秒間浸漬させた後、該針を該溶液から取り出して150℃で3分間熱処理を行った。
上記熱処理を行った注射針を、硬度30であって厚さが1.5mmの天然ゴムからなるシートへ、クロスヘッドスピード100mm/分で垂直に刺通し、注射針の刃先が完全に天然ゴムを貫通したときの抵抗値(1回目および5回目(単位g)を万能試験機(AG−500、島津製作所社製)で測定した。また、前記刺通によりシート表面に付着し、前記注射針から剥がれ落ちたシリコーンの量(シリコーン付着量)を目視により観察した。その結果を表1に示す。
【0037】
[実施例2]
チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)(TC750、松本交商製)0.4gと平均重合度約300の両末端にシラノール基を有するシリコーン2.4gと平均重合度約4700の両末端にシラノール基を有するシリコーン0.6gおよび100cSのジメチルシリコーン(KF96−100、信越化学社製)5gをジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−141b)に溶解して、100mLの黄色透明の溶液を調製した。該溶液に22G注射針(長さ30mm、材質Sus304)を0.5秒浸漬させた後、該針を該溶液から取り出して150℃で3分間熱処理を行った。
実施例1と同様に、抵抗値およびシリコーンの付着量を測定した結果を表1に示す。
【0038】
[実施例3]
チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)(TC750、松本交商製)0.127gと平均重合度約300の両末端にシラノール基を有するシリコーン2.4gと平均重合度約4700の両末端にシラノール基を有するシリコーン0.6gおよび100cSのジメチルシリコーン(KF96−100、信越化学社製)4.5gをジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−141b)に溶解して、100mLの黄色透明の溶液を調製した。該溶液に22G注射針(長さ30mm、材質Sus304)を0.5秒浸漬させた後、該針を該溶液から取り出してUV照射機3010−EC(DYMAX CORP.製)で5分間硬化処理を行った。
実施例1と同様に、抵抗値およびシリコーンの付着量を測定した結果を表1に示す。
【0039】
[実施例4]
アルミニウム(III)ジイソプロポキシドエチルアセトアセテート(アヅマックス社製)0.082gと平均重合度約300の両末端にシラノール基を有するシリコーン2.4gと平均重合度約4700の両末端にシラノール基を有するシリコーン0.6gおよび100cSのジメチルシリコーン(KF96−100、信越化学社製)4.5gをジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−141b)に溶解して、100mLの無色透明の溶液を調製した。該溶液に22G注射針(長さ30mm、材質Sus304)を0.5秒浸漬させた後、該針を該溶液から取り出してUV照射機3010−EC(DYMAX CORP.製)で5分間硬化処理を行った。
実施例1と同様に、抵抗値およびシリコーンの付着量を測定した結果を表1に示す。
【0040】
[実施例5]
タンタル(V)テトラエトキシドペンタンジオネート(アヅマックス社製)g0.138gと平均重合度約300の両末端にシラノール基を有するシリコーン2.4gと平均重合度約4700の両末端にシラノール基を有するシリコーン0.6gおよび100cSのジメチルシリコーン(KF96−100、信越化学社製)4.5gをジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−141b)に溶解して、100mLの無色透明の溶液を調製した。該溶液に22G注射針(長さ30mm、材質Sus304)を0.5秒浸漬させた後、該針を該溶液から取り出してUV照射機3010−EC(DYMAX CORP.製)で5分間硬化処理を行った。
実施例1と同様に、抵抗値およびシリコーンの付着量を測定した結果を表1に示す。
【0041】
[比較例1]
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE−903、信越化学社製)0.6gおよびγ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−402、信越化学社製)0.6gを80℃で3時間加熱して反応させた。この反応生成物を、平均重合度約300の両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンの33重量%トルエン溶液90gに混合し、87℃で12時間加熱して、反応させた。反応終了後、前記反応により得られた反応生成物の8.43gと100cSのジメチルシリコーン(KF96−100、信越化学社製)4gをジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−141b)に溶解して、100mLの無色透明の溶液を調製した。該溶液に22G注射針(長さ30mm、材質Sus304)を0.5秒間浸漬させた後、該針を該溶液から取り出して室温で一晩放置した。
実施例1と同様に、抵抗値およびシリコーンの付着量を測定した結果を表1に示す。
【0042】
[比較例2]
チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)(TC750、松本交商製)0.4gと平均重合度約300の両末端にシラノール基を有するシリコーン2.4gと平均重合度約4700の両末端にシラノール基を有するシリコーン0.6gおよび100cSのジメチルシリコーン(KF96−100、信越化学社製)5gをジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−141b)に溶解して、100mLの黄色透明の溶液を調製した。該溶液に22G注射針(長さ30mm、材質sus304)を0.5秒浸漬させた後、該針を該溶液から取り出して室温でそのまま放置した。
実施例1と同様に、抵抗値およびシリコーンの付着量を測定した結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
上記表1から明らかなように、実施例1〜5の注射針は、1回目の刺通抵抗が従来の注射針(比較例1)と同等に低い。しかし、従来の注射針(比較例1および2)は繰り返し刺通により刺通抵抗が大きく悪化したが、実施例1〜5の注射針は刺通抵抗があまり上昇しないことがわかる。さらに、実施例1〜5の注射針は、従来の注射針(比較例1および2)に比べてシリコーンの剥がれ落ちる量も少ない。
【0045】
【発明の効果】
本発明の注射針は、金属キレート化合物と反応性シリコーンとを反応させた被覆層を有することにより、従来の注射針と同等のゴム栓や皮膚への刺通抵抗が得られる。また、ゴム栓や皮膚へ繰り返し刺通しても、その刺通抵抗がほとんど上昇せず、注射針表面に塗布したシリコーンの剥がれ落ちる量も極めて少ない。
【発明が属する技術分野】
本発明は、医療などの用途に使用する穿刺針に関し、さらに詳細には反応性シリコーン化合物を含むシリコーン化合物を用いて、少なくとも穿刺針のカヌラ表面を被覆処理することにより、ゴム栓、皮膚などへの刺通抵抗を改良した被覆穿刺針に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、種々の用途において金属表面をシリコーン化合物で処理し、摩擦抵抗を軽減する技術が実施されてきた。例えば、アミノアルキルシロキサンとメチルシロキサンの共重合体を主成分とする付着性コーティング物質を金属製切断用刃に塗布し、加熱または常温で放置して該コーティング物質を架橋により硬化させることが公知である(特公昭46−3627号公報)。しかし、前記コーティング物質を医療用の金属製針に塗布した場合、該針のゴム栓や皮膚への刺通抵抗は低減されるが、コーティング物質の硬化が不十分であるため、ゴム栓や皮膚へ繰り返し刺通する場合、該コーティング物質が該針から剥がれ落ちて前記刺通抵抗が上昇するという問題が生じていた。ここで、繰り返し刺通される医療用針とは、ゴム栓を有するバイアル瓶内の薬液を注射筒に導入し、該注射筒内の薬液を人体に注射する場合に使用される注射針等である。刺通抵抗とは、前記針をゴム栓や皮膚に刺通したときの抵抗のことを指し、該抵抗が低いほど、該針を人の皮膚に刺通したときに人が受ける痛みが少なくなる。また、医療用の針は滅菌が必要であるが、前記コーティング物質を塗布した針をガンマ線照射により滅菌した場合も、該針の刺通抵抗が上昇してしまう。
【0003】
一方、アミノ基含有シランとエポキシ基含有シランの反応生成物と、シラノール基を有するポリジオルガノシロキサンとの反応生成物を主成分とする組成物を注射針に塗布し、加熱または常温で放置して該組成物を硬化させて得られる注射針が知られている(特公昭61−35870号公報)。前記組成物は硬化性に優れているが、刺通抵抗が十分に低下しないことがある。
【0004】
また、側鎖及び/又は末端にアミノ基を含有するシリコーンとポリジオルガノシロキサンからなるシリコーン混合物を含有するコーティング剤を塗布し、ガンマ線照射を含む硬化方法により表面処理した注射針が公知である(特開平7−178159号公報)。該注射針は前記ガンマ線照射により、前記コーティング剤の硬化を促進させるだけでなく、該注射針の滅菌もできるものであるが、ガンマ線照射以外の滅菌方法を用いた場合は、該コーティング剤の硬化が不十分であり、該針をゴム栓や皮膚へ繰り返し刺通する場合、刺通抵抗が上昇する。
【0005】
上記問題を考慮して、本発明者らはすでに、アミノ基含有アルコキシシランとエポキシ基含有アルコキシシランおよび両末端にシラノール基を有するシリコーンを反応させて得られたシリコーンと、非反応性シリコーンとの混合物を塗布した穿刺針を見出した(特開平10−309316号公報)。この穿刺針はゴム栓や皮膚への刺通抵抗が低く、さらに滅菌手段を選ばないという点で非常に優れたものである。しかしながら、該穿刺針においても、繰り返し刺通した場合のゴム栓や皮膚への刺通抵抗がより良好であるよう、さらに改善が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記事情に鑑み、本発明はゴム栓や皮膚へ繰り返し刺通しても刺通抵抗の低い穿刺針を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々鋭意検討した結果、穿刺針に金属キレート化合物と反応性シリコーンの混合物を塗布し、硬化することにより、所期の目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は少なくとも穿刺針のカヌラ表面に金属キレート化合物と反応性シリコーンとを反応させた被覆層を有する被覆穿刺針である。
本発明の一実施態様は、少なくとも穿刺針のカヌラ表面に金属キレート化合物、反応性シリコーンおよび非反応性シリコーンを含む混合物を被覆した後、金属キレート化合物と反応性シリコーンを反応させた被覆層を有する被覆穿刺針である。
【0009】
また、本発明は、以下の工程を含む被覆穿刺針の製造方法である。
a)少なくとも穿刺針のカヌラ表面に金属キレート化合物および反応性シリコーン化合物を含む混合物溶液を塗布する工程;および
b)加熱または紫外線照射によって、硬化被覆層を形成する工程。
本発明の他の実施態様は、以下の工程を含む被覆穿刺針の製造方法である。
a)少なくとも穿刺針のカヌラ表面に金属キレート化合物、反応性シリコーン化合物および非反応性シリコーン化合物を含む混合物溶液を塗布する工程;および
b)加熱または紫外線照射によって、硬化被覆層を形成する工程。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、穿刺針とは注射針、採血針、留置針、翼状針、混注針、瓶針、縫合針等である。または、これらに限らず、物体を穿刺して薬剤等の物質を人体へ投与する器具あるいは人体から血液等を採取する器具を含む。針の材料としては、ステンレス、ニッケル−チタンなどの弾性を有する金属、PPS樹脂、ABS樹脂、PET樹脂、PP樹脂、POM樹脂などの合成樹脂があり、材料は、シリコーン化合物を被覆するものであれば、特に制限されない。
針の寸法、形状などは特に制限されない。本発明において金属キレート化合物と反応性シリコーンなどが被覆される部分は、少なくとも針のカヌラ部分であって、必要により針全体を被覆する。
【0011】
本発明の金属キレート化合物は、金属に配位可能なドナー基を2個以上有するキレート化剤が金属に配位し、1個以上の環状構造を有する化合物であり、アルコキシ基の一部をキレート化剤で置換し、キレート化した金属アルコキシドを含む。
前記金属キレート化合物は、キレート化剤の金属に配位可能なドナー基が酸素、窒素または硫黄である。
金属キレート化合物は、金属がチタン、アルミニウム、タンタル、バリウム、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、セリウム、クロム、コバルト、銅、ジスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、ガドリウム、ガリウム、ハフニウム、ホルミウム、インジウム、イリジウム、鉄、ランタン、鉛、ルテニウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ネオジウム、ニッケル、パラジウム、ネオジウム、パラジウム、白金、プラセオジウム、ロジウム、ルテニウム、サマリウム、スカンジウム、ストロンチウム、テルビウム、ツリウム、スズ、バナジウム、イッテリウム、イットリウムおよび亜鉛からなる群から選ばれた1種または2種以上の金属である。これらの中でも、チタン、アルミニウム、タンタルが好ましい。
【0012】
金属に配位可能なドナー基を2個以上有するキレート化剤としては、β−ジケトン、β−ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸またはそのエステルあるいは塩、ケトアルコール、アミノアルコールおよびエノール性活性水素化合物からなる群から選ばれた1種または2種以上の化合物がある。キレート化剤は、金属アルコキシドに配位して1個以上の環状構造を形成する。アルコキシドとしては、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシド、イソプロポキシドなどが挙げられる。金属の価数が高いほど、金属の結合する反応性シリコーンの数が増えるので、密な三元ネットワークが形成され機械的強度が向上する。
【0013】
β−ジケトンとしては、2,4−ペンタンジオン(別名、アセチルアセトン)、2,4−ヘプタンジオン、トリフリオロペンタンジオネート、ヘキサフルオロペンタンジオネート、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオネート、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオネートなどが挙げられる。
【0014】
β−ケトエステルとしては、メチルアセトアセテート(別名、アセト酢酸メチル)、エチルアセトアセテート、ブチルアセトアセテート、メタクリルオキシエチルアセトアセテート、メチル(トリメチル)アセトアセテート、アリルアセトアセテートなどのβ−ケト酸のエステルなどが挙げられる。
【0015】
ヒドロキシカルボン酸またはそのエステルあるいは塩としては、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸アンモニウム塩、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸、リンゴ酸エチル、酒石酸、酒石酸メチル、酒石酸エチルなどが挙げられる。
【0016】
ケトアルコールとしては、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ヘプタノンなどが挙げられる。
【0017】
アミノアルコールとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、N−エチル−モノエタノールアミン、N,N−ジメチルモノエタノールアミン、N,N−ジエチルモノエタノールアミンなどが挙げられる。
【0018】
エノール性活性水素化合物としては、マロン酸ジエチルエステル、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミドなどが挙げられる。
【0019】
前記キレート化合物のキレート化剤としては、上記化合物のうち、好ましくはエチルアセトアセテート、メチルアセトアセテート、トリフルオロペンタンジオネート、ヘキサフルオロペンタンジオネート、2,4−ペンタンジオネート、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、6,6,7,7,8,8,ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオネート、テノイルトリフルオロアセトネート、ベンゾイルアセトネート、ベンゾイルトリフルオロアセトネート、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオネート、メタクリルオキシエチルアセトアセテート、メチル(トリメチル)アセチルアセテート、アリルアセトアセテートなどが挙げられる。これらの中でも、特に好ましくは、エチルアセトアセテート、2,4−ペンタンジオネートなどが挙げられる。
【0020】
チタンキレート化合物としては、具体的には、チタンアリルアセトアセテートトリイソプロポキシド、チタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキシド、チタンビス(トリエタノールアミン)ジ−n−ブトキシド、チタンビスジイソプロポキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、チタンジ−n−ブトキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、チタンジジイソプロキシドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオネート)、チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタンジイソプロポキシドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンジ−n−ブトキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタンエチルアセトアセテートトリ−n−ブトキシド、チタンメタクリルオキシエチルアセテートトリイソプロポキシド、チタンオキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、チタンテトラ(2−エチル−3−ヒドロキシ−ヘキシルオキシド)、ジヒドロキシビス(ラクテート)チタン、(エチレングリコール)チタンビス(ジオクチルフォスフェート)などが挙げられる。
【0021】
アルミニウムキレート化合物としては、アルミニウムs−ブトキシドビス(エチルアセチアセテート)、アルミニウムジ−sブトキシドエチルアセトアセテート、アルミニウムジイソプロポキシドエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(ヘキサフルオロペンタジオネート)、アルミニウムトリス(2,4−ペンタンジオネート)、アルミニウム9−オクタデセニルアセトアセテートジイソプロポキシド、アルミニウムトリス(2,2,6,6,−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0022】
ジルコニウムキレート化合物としては、ジルコニウムジ−n−ブトキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムジテトラキス(ヘキサフルオロペンタンジオネート)、ジルコニウムテトラキス(トリフルオロペンタンジオネート)、ジルコニウムメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオネート)、トリグリコラートジルコン酸、トリラクテートジルコン酸などが挙げられる。
【0023】
これらの中では、好ましくは、チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタンジイソプロポキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、チタンアリルアセトアセテートトリイソプロポキシド、チタンジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリイソプロポキシド、アルミニウム(III)ジイソプロポキシドエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(2,4−ベンタンンジオネート)、アルミニウムs−ブトキシドビス(エトルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムジ−n−ブトキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)等が挙げられる。
本発明に用いる金属キレート化合物は、1種単独で用いても、または2種以上を併用してもよい。
【0024】
このような金属キレート化合物は、それに対応する金属アルコキシドに比べ、加水分解またはエステル交換反応等の反応性が緩慢であるため、取り扱い上および貯蔵安定性の上で有利であり、特に反応性シリコーンとの反応に有利に使用できる。
【0025】
本発明における反応性シリコーンとは、分子内に活性水素を有する反応性シリコーンであり、上記キレート化合物と反応する反応性官能基(活性水素)を有するシリコーンを指すものである。分子内に活性水素を有する反応性シリコーンとしては、例えば、−OH、−SH、−NH2、−NH−、−CO−NH−、−OCO−NH−、−NH−CO−NH−、−CO−OH、−CS−OH、−CO−SH、−CS−SH、−SO3H、−PO3H2、−SO2−NH2、−SO2、−NH−、−CO−CH2−CO−等の活性水素を有する構造単位を分子内に有するシリコーンである。
このような構造を有するシリコーンとしては、シラノール基含有シリコーン、メトキシ基含有シリコーン、ビニル基含有シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン等が挙げられる。
【0026】
該反応性シリコーンとしては、末端にシラノール基を含有するものが前記金属キレート化合物との反応性がよく、穿刺針を繰り返し刺通しても剥がれ落ちにくく、好ましい。また、両末端にシラノール基を有するものが特に好ましい。
【0027】
両末端にシラノール基を有するシリコーンとしては、両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン−ジエチルシロキサンコポリマー、トリフルオロプロピルメチルシロキサン等が挙げられる。
【0028】
本発明における非反応性シリコーンとは、前記キレート化合物と反応する反応性官能基(活性水素)を有しないシリコーンを指すものであり、例えば、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン等が挙げられる。
【0029】
本発明において、反応性シリコーンのシロキサン部分の平均重合度は10〜10,000であることが好ましく、より好ましくは10〜1,000である。該平均重合度が10より少ないと、非反応性シリコーンが障害になって反応性シリコーンの架橋反応が起こりにくく、硬化性が悪くなって穿刺針の刺通抵抗が上昇する。また、10,000より多いと、形成される架橋構造が粗となり、繰り返し刺通により剥がれ落ちやすくなる。
【0030】
また、非反応性シリコーンのシロキサン部分の平均重合度は、前記反応性シリコーンの平均重合度以下であることが好ましい。非反応性シリコーンのシロキサン部分の平均重合度が反応性シリコーンのそれを上回ると、反応性シリコーンの架橋反応が起こりにくくなる。
【0031】
本発明では金属キレート化合物、反応性シリコーンおよび非反応性シリコーンを含む混合物で少なくとも穿刺針のカヌラ表面を処理する。該混合物の混合割合は、反応性シリコーン10重量部に対して、キレート化合物が1〜5重量部、好ましくは1〜3重量部、非反応性シリコーンが1〜50重量部、好ましくは1〜20重量である。キレート化合物の混合割合が1重量部より少ないと、または非反応性シリコーンの混合割合が50重量より多いと、被膜が十分に硬化できず、穿刺針をゴム栓や皮膚へ繰り返し刺通することにより該混合物が剥がれ落ちるおそれがある。
また、キレート化合物の混合割合が5重量部より多いと、金属キレート化合物中のアルコキシ基が加水分解され、さらに金属キレート化合物間で脱水縮合が進み、沈殿が生じやすくなる。また、非反応性シリコーンの混合割合が1重量部より少ないと、穿刺針のゴム栓や皮膚への刺通抵抗が十分に低下しない。
本発明の混合物には、上記金属キレート化合物、反応性シリコーンおよび非反応性シリコーンのほかに、反応性調節剤としてジメチルベンジルアミンなどの塩基性化合物などを少量含んでいてもよい。
【0032】
前記混合物は、通常、芳香族炭化水素類、直鎖状炭化水素類、脂肪族炭化水素類、ケトン類、エーテル類、フロン類等の有機溶媒に溶解させ、溶液として使用する。該溶液中の該混合物の濃度は、1〜20重量%、好ましくは、1〜15重量%であり、より好ましくは5〜10重量%である。該濃度が1重量%より低いと、被覆層としての十分な膜厚が得られず、ゴム栓や皮膚への刺通抵抗の低い値が得られない。また、該濃度が20重量%より高いと、溶液粘度が高くなり、針の外表面を均一に被覆することができないうえ、該混合物の硬化に必要な時間が長くなる。
【0033】
本発明ではキレート化合物、反応性シリコーンおよび非反応性シリコーンを混合し、次いで穿刺針を該混合物で表面処理したのち、加熱により該混合物を硬化させる。加熱温度は、120℃〜200℃であることが好ましく、加熱時間は1分間から60分間であることが好ましい。加熱温度が120℃より低い、あるいは加熱時間が1分間より短いと、該混合物の硬化が十分に進まない。また、加熱温度が200℃より高い、あるいは加熱時間が60分間より長いと、該混合物が熱分解してしまうおそれがある。
【0034】
本発明の穿刺針の製法では、穿刺針を前記キレート化合物と反応性シリコーンおよび非反応性シリコーンの混合物を含む混合物溶液に、例えば、0.1〜1秒間浸漬し、その後、120〜200℃で1〜60分間放置、または1〜10分間紫外線を照射する。これにより、金属キレート化合物のアルコキシ基およびキレート部分と反応性シリコーン末端のシラノール基が縮合反応し、穿刺針表面に金属キレート化合物と反応性シリコーンの架橋物が結合する。また、加熱放置または紫外線照射している間に前記混合物の架橋がさらに進み、硬化する。
前記混合物による針の表面処理方法は、浸漬のみならず、刷毛塗り、噴霧または滴下によるものであってもよい。また、前記反応を促進するため、前記混合物の溶液に酢酸などの有機酸を添加してもよい。
前記反応中、非反応性シリコーンはこれらの反応に関与せずに、架橋されたキレート化合物と反応性シリコーンの中に存在し、潤滑性を発現する役割を有する。
【0035】
本発明の穿刺針は、金属キレート化合物と反応性シリコーンが十分に硬化しているため、γ線照射滅菌しても、過剰な硬化による刺通抵抗の上昇を引き起こすおそれがない。また、エチレンオキシドガス滅菌によっても、刺通抵抗の上昇は起こらないため、滅菌手段を選ばない。
【0036】
以下、実施例にて本発明の一例を具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されない。
[実施例1]
チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)(TC750、松本交商製)0.6gと平均重合度約300の両末端にシラノール基を有するシリコーン3.5gおよび100cSのジメチルシリコーン(KF96−100、信越化学社製)7gをジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−141b)に溶解して、100mLの黄色透明の溶液を調製した。該溶液に22G注射針(長さ30mm、材質Sus304)を0.5秒間浸漬させた後、該針を該溶液から取り出して150℃で3分間熱処理を行った。
上記熱処理を行った注射針を、硬度30であって厚さが1.5mmの天然ゴムからなるシートへ、クロスヘッドスピード100mm/分で垂直に刺通し、注射針の刃先が完全に天然ゴムを貫通したときの抵抗値(1回目および5回目(単位g)を万能試験機(AG−500、島津製作所社製)で測定した。また、前記刺通によりシート表面に付着し、前記注射針から剥がれ落ちたシリコーンの量(シリコーン付着量)を目視により観察した。その結果を表1に示す。
【0037】
[実施例2]
チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)(TC750、松本交商製)0.4gと平均重合度約300の両末端にシラノール基を有するシリコーン2.4gと平均重合度約4700の両末端にシラノール基を有するシリコーン0.6gおよび100cSのジメチルシリコーン(KF96−100、信越化学社製)5gをジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−141b)に溶解して、100mLの黄色透明の溶液を調製した。該溶液に22G注射針(長さ30mm、材質Sus304)を0.5秒浸漬させた後、該針を該溶液から取り出して150℃で3分間熱処理を行った。
実施例1と同様に、抵抗値およびシリコーンの付着量を測定した結果を表1に示す。
【0038】
[実施例3]
チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)(TC750、松本交商製)0.127gと平均重合度約300の両末端にシラノール基を有するシリコーン2.4gと平均重合度約4700の両末端にシラノール基を有するシリコーン0.6gおよび100cSのジメチルシリコーン(KF96−100、信越化学社製)4.5gをジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−141b)に溶解して、100mLの黄色透明の溶液を調製した。該溶液に22G注射針(長さ30mm、材質Sus304)を0.5秒浸漬させた後、該針を該溶液から取り出してUV照射機3010−EC(DYMAX CORP.製)で5分間硬化処理を行った。
実施例1と同様に、抵抗値およびシリコーンの付着量を測定した結果を表1に示す。
【0039】
[実施例4]
アルミニウム(III)ジイソプロポキシドエチルアセトアセテート(アヅマックス社製)0.082gと平均重合度約300の両末端にシラノール基を有するシリコーン2.4gと平均重合度約4700の両末端にシラノール基を有するシリコーン0.6gおよび100cSのジメチルシリコーン(KF96−100、信越化学社製)4.5gをジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−141b)に溶解して、100mLの無色透明の溶液を調製した。該溶液に22G注射針(長さ30mm、材質Sus304)を0.5秒浸漬させた後、該針を該溶液から取り出してUV照射機3010−EC(DYMAX CORP.製)で5分間硬化処理を行った。
実施例1と同様に、抵抗値およびシリコーンの付着量を測定した結果を表1に示す。
【0040】
[実施例5]
タンタル(V)テトラエトキシドペンタンジオネート(アヅマックス社製)g0.138gと平均重合度約300の両末端にシラノール基を有するシリコーン2.4gと平均重合度約4700の両末端にシラノール基を有するシリコーン0.6gおよび100cSのジメチルシリコーン(KF96−100、信越化学社製)4.5gをジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−141b)に溶解して、100mLの無色透明の溶液を調製した。該溶液に22G注射針(長さ30mm、材質Sus304)を0.5秒浸漬させた後、該針を該溶液から取り出してUV照射機3010−EC(DYMAX CORP.製)で5分間硬化処理を行った。
実施例1と同様に、抵抗値およびシリコーンの付着量を測定した結果を表1に示す。
【0041】
[比較例1]
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE−903、信越化学社製)0.6gおよびγ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−402、信越化学社製)0.6gを80℃で3時間加熱して反応させた。この反応生成物を、平均重合度約300の両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンの33重量%トルエン溶液90gに混合し、87℃で12時間加熱して、反応させた。反応終了後、前記反応により得られた反応生成物の8.43gと100cSのジメチルシリコーン(KF96−100、信越化学社製)4gをジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−141b)に溶解して、100mLの無色透明の溶液を調製した。該溶液に22G注射針(長さ30mm、材質Sus304)を0.5秒間浸漬させた後、該針を該溶液から取り出して室温で一晩放置した。
実施例1と同様に、抵抗値およびシリコーンの付着量を測定した結果を表1に示す。
【0042】
[比較例2]
チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)(TC750、松本交商製)0.4gと平均重合度約300の両末端にシラノール基を有するシリコーン2.4gと平均重合度約4700の両末端にシラノール基を有するシリコーン0.6gおよび100cSのジメチルシリコーン(KF96−100、信越化学社製)5gをジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−141b)に溶解して、100mLの黄色透明の溶液を調製した。該溶液に22G注射針(長さ30mm、材質sus304)を0.5秒浸漬させた後、該針を該溶液から取り出して室温でそのまま放置した。
実施例1と同様に、抵抗値およびシリコーンの付着量を測定した結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
上記表1から明らかなように、実施例1〜5の注射針は、1回目の刺通抵抗が従来の注射針(比較例1)と同等に低い。しかし、従来の注射針(比較例1および2)は繰り返し刺通により刺通抵抗が大きく悪化したが、実施例1〜5の注射針は刺通抵抗があまり上昇しないことがわかる。さらに、実施例1〜5の注射針は、従来の注射針(比較例1および2)に比べてシリコーンの剥がれ落ちる量も少ない。
【0045】
【発明の効果】
本発明の注射針は、金属キレート化合物と反応性シリコーンとを反応させた被覆層を有することにより、従来の注射針と同等のゴム栓や皮膚への刺通抵抗が得られる。また、ゴム栓や皮膚へ繰り返し刺通しても、その刺通抵抗がほとんど上昇せず、注射針表面に塗布したシリコーンの剥がれ落ちる量も極めて少ない。
Claims (21)
- 少なくとも穿刺針のカヌラ表面に金属キレート化合物と反応性シリコーンとを反応させた被覆層を有する被覆穿刺針。
- 少なくとも穿刺針のカヌラ表面に金属キレート化合物、反応性シリコーンおよび非反応性シリコーンを含む混合物を被覆した後、金属キレート化合物と反応性シリコーンを反応させた被覆層を有する、請求項1記載の被覆穿刺針。
- 前記金属キレート化合物は、金属に配位可能なドナー基を2個以上有するキレート化剤が金属に配位した化合物である、請求項1記載の被覆穿刺針。
- 前記金属キレート化合物は、キレート化剤の金属に配位可能なドナー基が、酸素、窒素または硫黄である、請求項3記載の被覆穿刺針。
- 前記金属キレート化合物は、金属がチタン、アルミニウム、タンタル、バリウム、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、セリウム、クロム、コバルト、銅、ジスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、ガドリウム、ガリウム、ハフニウム、ホルミウム、インジウム、イリジウム、鉄、ランタン、鉛、ルテニウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ネオジウム、ニッケル、パラジウム、ネオジウム、パラジウム、白金、プラセオジウム、ロジウム、ルテニウム、サマリウム、スカンジウム、ストロンチウム、テルビウム、ツリウム、スズ、バナジウム、イッテリウム、イットリウムおよび亜鉛からなる群から選ばれた1種または2種以上の金属である、請求項3記載の被覆穿刺針。
- 前記金属に配位可能なドナー基を2個以上有するキレート化剤は、β−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸またはそのエステルあるいは塩、ケトアルコール、アミノアルコールおよびエノール性活性水素化合物からなる群から選ばれた1種または2種以上の化合物である、請求項3記載の被覆穿刺針。
- 前記β−ジケトンは、2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘプタンジオン、トリフリオロペンタンジオネート、ヘキサフルオロペンタンジオネート、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオネート、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオネートから選択された化合物である、請求項6記載の被覆穿刺針。
- 前記ケトエステルは、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、ブチルアセトアセテート、メタクリルオキシエチルアセトアセテート、メチル(トリメチル)アセトアセテート、アリルアセトアセテートなどのβ−ケト酸のエステルから選択された化合物である、請求項6記載の被覆穿刺針。
- 前記ヒドロキシカルボン酸またはそのエステルあるいは塩は、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸アンモニウム塩、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸、リンゴ酸エチル、酒石酸、酒石酸メチルおよび酒石酸エチルから選択された化合物である、請求項6記載の被覆穿刺針。
- 前記ケトアルコールは、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンおよび4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ヘプタノンから選択された化合物である、請求項6記載の被覆穿刺針。
- 前記アミノアルコールは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、N−エチル−モノエタノールアミン、N,N−ジメチルモノエタノールアミンおよびN,N−ジエチルモノエタノールアミンから選択された化合物である、請求項6記載の被覆穿刺針。
- 前記エノール性活性水素化合物はマロン酸ジエチルエステル、メチロールメラミン、メチロール尿素およびメチロールアクリルアミドから選択された化合物である、請求項6記載の被覆穿刺針。
- 前記金属キレート化合物は、チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタンジイソプロポキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、チタンアリルアセトアセテートトリイソプロポキシド、チタンジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリイソプロポキシド、アルミニウム(III)ジイソプロポキシドエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(2,4−ペンタンンジオネート)、アルミニウムs−ブトキシドビス(エトルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(2,4−ペンタンジオネート)およびジルコニウムジ−n−ブトキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)から選択される、請求項1記載の被覆穿刺針。
- 前記反応性シリコーンは、分子内に活性水素を有する反応性シリコーンであり、前記金属キレート化合物と反応する反応性官能基を有するシリコーンである、請求項1被覆穿刺針。
- 前記非反応性シリコーンは、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン、ポリエーテル変性シリコーンおよび脂肪酸エステル変性シリコーンからなる群から選ばれた1種または2種以上の化合物である、請求項1記載の穿刺針。
- 前記混合物の混合割合は、反応性シリコーン10重量部に対して、金属キレート化合物1〜5重量部および非反応性シリコーン1〜50重量部である、請求項2記載の穿刺針。
- 前記反応性シリコーンのシロキサン部分の平均重合度は、10〜10,000であり、前記非反応性シリコーンのシロキサン部分の平均重合度は前記反応性シリコーンのシロキサン部分の平均重合度以下である、請求項2記載の穿刺針。
- 以下の工程を含む被覆穿刺針の製造方法。
a)少なくとも穿刺針のカヌラ表面に金属キレート化合物および反応性シリコーン化合物を含む混合物溶液を塗布する工程;および
b)加熱または紫外線照射によって、硬化被覆層を形成する工程。 - 以下の工程を含む被覆穿刺針の製造方法。
a)少なくとも穿刺針のカヌラ表面に金属キレート化合物、反応性シリコーン化合物および非反応性シリコーン化合物を含む混合物溶液を塗布する工程;および
b)加熱または紫外線照射によって、硬化被覆層を形成する工程。 - 前記工程b)の加熱温度は120℃〜200℃であり、加熱時間は1分間〜60分間である、請求項18または19記載の被覆穿刺針の製造方法。
- 前記工程b)の紫外線照射における紫外線の波長は320〜390nmであり、照射時間は1分間〜10分間である、請求項18または19記載の被覆穿刺針の製造方法。
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