JP2015054057A - 座屈防止シート及び穿刺器具セット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、ヤング率が0.007MPa以上20.0MPa以下であるシート体を備え、前記シート体は、極細針を対象物に穿刺する際に、前記対象物の穿刺する表面に配置され前記極細針が内部を貫通する。
【選択図】なし
Description
針を対象物である人間や動物の皮膚に刺す場合には、穿刺に伴う痛み等の刺激を伴う。そこでかかる刺激を低減するために、近年、極細の針を用いることが検討されている。
例えば、特許文献1には、外径が50μmと極めて細く形成された穿刺用の極細針が記載されている。
また、人間や動物の皮膚等の対象物の内部で極細針が座屈した場合には、人間や動物により強い痛みを与えるおそれがあるという問題があった。
ヤング率が0.007MPa以上20.0MPa以下であるシート体を備え、
前記シート体は、極細針を対象物に穿刺する際に、前記対象物の穿刺する表面に配置され前記極細針が内部を貫通する。
シート体の厚みが0.3mm以上34.6mm以下である場合には、該シート体の上から極細針を対象物に穿刺することで、極細針の座屈をより確実に抑制することができる。
前記シート体が、ポリジメチルシロキサンを含むものである場合には、対象物表面に配置した際に対象物表面の形状に沿って密着するため対象物表面上でずれにくく、配置しやすい。また、ポリジメチルシロキサンを含むシート体の上から極細針を対象物に穿刺することで、極細針の座屈をより確実に抑制することができる。
対象物に穿刺可能な極細針を有する穿刺器具と、
ヤング率が0.007MPa以上20.0MPa以下であるシート体を有し、前記シート体は、前記極細針を前記対象物に穿刺する際に、前記対象物の穿刺する表面に配置され、前記極細針が内部を貫通する座屈防止シートとを備える。
前記極細針が30μm以上120μm以下の外径を有する極めて細い極細針である場合には、前記座屈防止シートを用いることで極細針の座屈をより効果的に抑制することができる。
前記極細針は、タングステン、ステンレス、チタンからなる群から選択される少なくとも一種の金属からなるものである場合には、かかる極細針を前記座屈防止シートと共に用いることで、極細針の座屈をより確実に抑制することができる。
また、本発明は、極細針の座屈を抑制しつつ穿刺することができる穿刺器具セットを提供することができる。
まず、本発明の座屈防止シートについて説明する。
本実施形態の座屈防止シートは、
ヤング率が0.007MPa以上20.0MPa以下であるシート体を備え、
前記シート体は、極細針を対象物に穿刺する際に、前記対象物の穿刺する表面に配置され前記極細針が内部を貫通するものである。
具体的には、以下の式で算出される値をいい、さらに具体的には後述の実施例に示す測定方法で測定される。
ヤング率(Pa)=(引張荷重(N)/試料の断面積(mm2))×{試料の初期長さ(mm)/(試料の初期長さ(mm)−試料の長さの変化量(mm))}・・・(1)
シート体のヤング率が前記範囲であるため、極細針を穿刺した場合に極細針が座屈することを抑制できる。
シート体の厚みは前記範囲である場合には、該シート体の上から極細針を対象物に穿刺することで、極細針の座屈をより確実に抑制することができる。
尚、シート体の厚みは、後述するようにシート体のヤング率、極細針の材質、長さ及び外径に合わせて調節することが好ましい。
シート体が、エラストマーからなる場合には、シート体自体に粘着性があるため、接着剤などを塗布することなく対象物に貼り付けることで容易に対象物表面に配置することができる。
本実施形態の穿刺器具セットは、
対象物に穿刺可能な極細針を有する穿刺器具と、
ヤング率が0.007MPa以上20.0MPa以下であるシート体を備え、前記シート体は、前記極細針を前記対象物に穿刺する際に、前記対象物の穿刺する表面に配置され、前記極細針が内部を貫通する座屈防止シートとを備えている。
あるいは、本実施形態の穿刺器具は、皮膚等の対象物表面に接触する接触部を有する外装体と、該外装体の内部に収容された極細針と、前記接触部が対象物に接触した状態で、前記極細針が前記外装体の接触部から突出するように移動可能に該極細針を保持する保持部と、前記極細針を接触部から突出させるように押出可能な押出部とを備え、前記極細針を突出させて皮膚等に穿刺することで微量の血液を出血させて採血する採血用の穿刺器具であってもよい。
具体的には、前記極細針が中空である場合には、30μm以上120μm以下、好ましくは、30μm以上60μm以下の外径を有することが好ましい。
前記極細針が中実である場合には、30μm以上100μm以下、好ましくは、30μm以上60μm以下の外径を有することが好ましい。
本実施形態でいう針の外径とは、JIS T 3101「注射針」に記載の針管の外径をいう。
中でも、タングステンまたはタングステンを含む合金が、極細針をより外径を小さくなるように形成した場合にも高い強度が得られ、極細針の座屈をより確実に抑制することができるため好ましい。
特に人間や動物の皮膚を対象物とする場合、針による痛み等の刺激を低減することが求められるため、外径の小さい極細針を用いる必要性が高くなり、針が座屈するという問題が生じやすくなる。
本実施形態の穿刺器具セットは、極細針を有する穿刺器具と、座屈防止シートとを備えているため、穿刺器具を使用して穿刺する前に、対象物に座屈防止シートを配置して、該座屈防止シートのシート体の上から穿刺器具の極細針を対象物に穿刺することで、極細針の座屈を抑制することができる。
ヤング率が前記範囲であるシート体に極細針を挿入することで、極細針は座屈しない程度の柔らかさを有するシート体によって周囲が密着された状態で支えられることになり、対象物表面において極細針の周囲を固定しながら穿刺することができる。
このように極細針を固定しながら対象物に穿刺することで、挿入された部分の座屈応力が高くなり、該極細針の座屈を抑制できる。
また、座屈防止シートのシート体中に挿入されている極細針の部分は、前述のとおり、シート体に固定されている状態となり座屈しにくい。従って、極細針の全長のうち、シート体中に挿入されている部分は座屈の影響を受けにくい部分となり、極細針の座屈しやすい部分の長さを実質的に短くすることができる。
さらに、一般的には針の長さが短いことでも座屈応力が高くなるが、シート体に極細針を挿入することで実質的に極細針の長さを短くすることができ、座屈を抑制できる。
人間の皮膚のヤング率は、人種、年齢、性別、部位等によって相違するが、通常、0.4MPa〜20MPaの範囲であることが文献等に記載されている。
人間の皮膚を対象物とする場合、座屈防止シートのシート体のヤング率は、これらの皮膚のヤング率の範囲よりも低いことが好ましい。
例えば、タングステン等のように比較的硬い(ヤング率が高い)材質からなる極細針を穿刺する場合には、シート体のヤング率を比較的高めに調節することで、シート体内で極細針を固定しやすくなる。一方、樹脂のように比較的柔らかい(ヤング率が低い)材質からなる極細針を穿刺する場合には、シート体のヤング率を比較的低めに調節することで、シート体表面に極細針が座屈することをより効果的に抑制できる。
また、極細針の材質やシート体のヤング率に応じてシート体の厚みを調整することが好ましい。すなわち、極細針の外径が一定の場合、極細針の材質が硬いものであるほど、シート体の厚みは厚くても、シート体表面や内部で極細針が座屈することを抑制できる。
また、シート体のヤング率が低い程、シート体の厚みを大きくすることでシート体内部で極細針を固定しやすくなる。
また、シート体の厚みの上限は、極細針の外径が一定の場合には、極細針のヤング率及びシート体のヤング率との間に、図1(a)に示すような関係が見られる。
かかる関係性から求められる、好ましいシート体の厚みの上限は、比較的硬いタングステン製の極細針(外径0.03mm、長さ2.3mm)、シート体のヤング率が下限である0.007MPaである場合に、34.6mm程度である。
2種類のポリジメチルシロキサン(PDMS)製シート体A及びB(SILPOT184、東レダウコーニング社製)を準備した。
シート体Aは、原料の主剤と硬化剤(商品名:CAT)との重量比率を30:1として、加熱温度60℃、硬化時間17時間で製造したものを用いた。
シート体Bは、前記シート体Aと同様の主剤と硬化剤との重量比率を20:1として製造した。
シート体A及びBは、共に、長さ3.0mm、幅3.0mm、厚み1.0mmに形成した。
また、同じ材料を用いて擬似対象物としてのターゲットを作成した。
ターゲットは、前記シート体Aと同様の主剤と硬化剤との重量比率を20:3として製造した。
ターゲットは、長さ3.0mm、幅3.0mm、厚み2.0mmに形成した。
前記シート体A、B及びターゲットについて引張試験を行ない、変化量及び引張荷重の関係を求めた。各シート体の幅方向の両端部を固定し、一方の端部を幅方向に速度0.1mm/sで引張った際のシート体の長さの変化量(mm)と、引張荷重(N)とを測定した。
前記変化量は、材料強度測定装置(品番AY09160001、テック技販社製)内部の変位センサで測定し、引張荷重は同装置内部のひずみセンサで測定した。
測定結果を図1に示す。
前記引張試験の結果から下記算出式によって、前記シート体A、B及びターゲットのヤング率を算出した。
ヤング率(Pa)=(引張荷重(N)/試料の断面積(mm2))×{試料の初期長さ(mm)/(試料の初期長さ(mm)−試料の長さの変化量(mm))}・・・(1)
試料の断面積は、シート体A、B及びターゲットの幅×厚みで算出した。
試料の初期長さは、試験前のシート体A、B及びターゲットの幅とした。
引張荷重及び移動距離は、引張り試験前後での変位センサの差分より求めた。
結果を表1に示す。
文献1:Hendriks FMaet et al.,”A numerical-experimental method to characterize the non-linear mechanical behaviour of human skin.” Skin Res Technol. 2003 Aug;9(3):274-283.
文献2:G. Agache, et al.,"Mechanical properties and Young's modulus of human skin in vivo"
Archives of Dermatological Research December 1980, Volume 269, Issue 3, pp 221-232
文献3:Manschot JF, Brakkee AJ.”The measurement and modelling of the mechanical properties of human skin in vivo II. The model.”J Biomech. 1986;19(7):517-21.
図2に示すような装置を用いて穿刺試験を行なった。
ロードセルに取り付けたターゲット表面に、シート体AまたはBを貼り付けて固定した。
水平方向に移動可能なスライダーの固定板に固定した極細針(外径30μmのタングステンワイヤーを電解エッチングにより先鋭化した長さ5.0mm以上のもの)を取り付けた。
固定板は、厚み3mmの真鍮製の2枚の板からなり、ゲル(ポリウレタン樹脂,株式会社アクティー)を塗布した2枚の板の間に挟み、極細針を先端が3.0mm固定板の一端部から突出するようにゲルを介して固定した。
スライダーを速度0.1mm/sで移動させ、極細針がターゲットに1.0mm程度穿刺された位置でスライダーの移動を停止し、ズームマイクロスコープ(装置名:VC1000、オムロン社製)で穿刺する様子を上方からを観察した。
比較として、ターゲットのみ(シート体無し)で同様の穿刺試験も行なった。
シート体Aを用いた結果及び比較であるシート体無しの結果を図3乃至5に示す。
一方、図4に示すように、シート体Aを用いた場合には、極細針が座屈することなく、ターゲットに穿刺できた。
また、図5に示すように、シート体Bを用いた場合にもシート体Aを用いた場合と同様に極細針が座屈することなく、ターゲットに穿刺できた。
Claims (8)
- ヤング率が0.007MPa以上20.0MPa以下であるシート体を備え、
前記シート体は、極細針を対象物に穿刺する際に、前記対象物の穿刺する表面に配置され前記極細針が内部を貫通する座屈防止シート。 - 前記シート体の厚みは、0.3mm以上34.6mm以下である請求項1に記載の座屈防止シート。
- 前記シート体は、ポリジメチルシロキサンを含む請求項1又は2に記載の座屈防止シート。
- 対象物に穿刺可能な極細針を有する穿刺器具と、
ヤング率が0.007MPa以上20.0MPa以下であるシート体を有し、前記シート体は、前記極細針を前記対象物に穿刺する際に、前記対象物の穿刺する表面に配置され、前記極細針が内部を貫通する座屈防止シートとを備える穿刺器具セット。 - 前記シート体の厚みは、0.3mm以上34.6mmである請求項4に記載の穿刺器具セット。
- 前記シート体は、ポリジメチルシロキサンを含む請求項4又は5に記載の穿刺器具セット。
- 前記極細針は、30μm以上120μm以下の外径を有する請求項4乃至6のいずれか一項に記載の穿刺器具セット。
- 前記極細針は、タングステン、ステンレス、チタンからなる群から選択される少なくとも一種の金属からなる請求項4乃至7のいずれか一項に記載の穿刺器具セット。
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