JP5826524B2 - プラズマドーピング装置及びプラズマドーピング方法 - Google Patents

プラズマドーピング装置及びプラズマドーピング方法 Download PDF

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Description

本発明は、プラズマドーピング装置及びプラズマドーピング方法に関する。
半導体製造工程において基板表面に不純物注入層を形成するために、イオン注入技術に加えて、プラズマドーピング技術を適用することが試行されている。プラズマドーピング技術による不純物の注入は、低抵抗のごく浅い接合の形成を高スループットで実現する新たな方法として実用化が期待されている。
例えば特許文献1、2には、シリコン基板表面にプラズマを照射してアモルファス層を形成し、そうして得られたアモルファス層に不純物を導入する不純物導入方法が記載されている。導入されるべき不純物は例えばボロンであり、ボロンを含む原料ガスとして例えばジボランガスが使用される。また、特許文献3によれば、ジボランガスをヘリウムガスで低濃度に希釈したガスのプラズマを用いることがドーズ量の面内均一性の向上に有効であるとされている。特許文献4にも、ジボランが混合されたヘリウムガス雰囲気におけるプラズマドーピング方法が記載されている。
国際公開第2004/075274号 国際公開第2005/119745号 国際公開第2006/064772号 特開昭64−45117号公報
不純物注入工程におけるアモルファス層は、チャネリングの抑制効果がある。つまり、不純物注入前にアモルファス層を形成しておくことで、注入における余分な深さ方向への不純物拡散を抑止することができる。上記のプラズマ照射によるアモルファス層形成は、いわゆるボンバードメント効果を利用している。つまり、大量のヘリウムイオンを衝突させ基板表層に結晶欠陥を生じさせることによりアモルファス層が形成されている。不純物の注入工程は、このアモルファス層形成の後に行われる。
不純物注入後、不純物の電気的活性化のための熱処理が行われる。同工程はプラズマドーピングにおいても通常のイオン注入と同様に行われる。しかしながら、ヘリウムガスを用いるプラズマでのアモルファス化及びドーピングでは、生成されたアモルファス層に密度の偏在が発生する。この密度の偏在により、熱処理による結晶の再生の際に欠陥が発生する。その結果、最終製品として製造されるデバイスの歩留まりの低下、またはデバイス性能の低下を引き起こす。これらの問題が存在するため、上記各文献に記載の不純物導入方法は結局、未だ実用段階に到達していない。
本発明の目的は、上述の結晶欠陥の発生を抑制し、低抵抗のごく浅い接合の形成を高スループットで実現するプラズマドーピング装置及びプラズマドーピング方法を提供することにある。
本発明のある態様は、半導体基板に不純物を添加するためのプラズマドーピング装置である。この装置は、チャンバと、前記チャンバに気体を供給するための気体供給部と、供給された気体のプラズマを前記チャンバに発生させるためのプラズマ源と、を備える。前記気体供給部は、基板に添加されるべき不純物元素を含む原料ガスと、水素ガスと、前記原料ガスを希釈するための希釈ガスと、を含む混合ガスが前記チャンバに供給されるよう構成されている。
この態様によれば、プラズマへの水素の混入によって、プラズマからのイオン衝突に対する基板表層の結晶の自己回復作用が強化される。これにより、プラズマ照射により生じた基板表面アモルファス層におけるアモルファス層の密度の偏在が軽減され、後工程の活性化処理中の欠陥の成長が抑制される。
本発明の別の態様は、不純物元素を有する原料ガスを含む混合ガスを真空環境に供給し、該混合ガスのプラズマを発生させ、該真空環境で基板に該プラズマを照射して前記不純物元素を注入するプラズマドーピング方法である。この方法は、前記プラズマに水素を混入させることにより、該プラズマの照射により生じた基板表面のアモルファス層の密度の偏在を軽減する。
本発明によれば、プラズマドーピングによる不純物注入技術の実用化が促進される。
本発明の一実施形態に係るプラズマドーピング装置の構成を模式的に示す図である。 典型的なプラズマドーピング処理及びアニール処理をしたときの基板の表面粗さとバイアス電圧との関係を示す散布図である。 プラズマドーピング処理による表面粗さの発生メカニズムを説明するための図である。 本発明の一実施形態に係るシート抵抗の測定結果を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係る二次イオン質量分析法による分析結果を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係るシート抵抗の測定結果を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係るシート抵抗の測定結果を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係るシート抵抗の面内均一性の測定結果を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係るシート抵抗の測定結果を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係るシート抵抗の面内均一性の測定結果を示すグラフである。
図1は、本発明の一実施形態に係るプラズマドーピング装置10の構成を模式的に示す図である。プラズマドーピング装置10は、チャンバ12と、気体供給部14と、プラズマ源16と、基板ホルダ18と、を含んで構成される。プラズマドーピング装置10は、これらの構成要素及びその他の要素を制御するための制御装置(図示せず)を備える。
チャンバ12は、内部に真空環境を提供するための真空容器である。チャンバ12には、内部を真空排気するための真空ポンプ20が付設されている。真空ポンプ20は例えばターボ分子ポンプである。真空ポンプ20は真空バルブ22を介してチャンバ12に接続される。真空バルブ22は例えばバリアブルコンダクタンスバルブであり、ターボ分子ポンプの吸入口に取り付けられている。ターボ分子ポンプの後段には粗引きポンプ(図示せず)が設けられている。チャンバ12はアースに接続されている。
真空ポンプ20及び真空バルブ22は、チャンバ12の内部を所望の真空度に制御するための自動圧力調整システム(APC)を構成する。この自動圧力調整システムは、チャンバ12の圧力を測定するための圧力センサ(図示せず)、及び圧力測定値に基づき真空バルブ22(及び真空ポンプ20)を制御するための圧力コントローラ(図示せず)をさらに含む。自動圧力調整システムにより、チャンバ12内の真空環境は例えば、プラズマドーピング処理に好ましいプロセスガス圧力範囲に保持される。
気体供給部14は、チャンバ12にプロセスガスを供給するために設けられている。気体供給部14は、単一のまたは複数のガス源と、そのガス源をチャンバ12に接続しガスをチャンバ12に導入するための配管系統と、を含む。この配管系統は、チャンバ12に供給するガス流量を制御するためのマスフローコントローラを含んでもよい。気体供給部14が単一のガス源をもつ場合には、複数種類のガスを所望の比率に予め混合したプロセスガスがそのガス源に蓄えられていてもよい。
図示の実施例においては、気体供給部14は、不純物ガス源24及びキャリアガス源28を備える。気体供給部14は、不純物ガス源24から供給される不純物ガスの流量を制御するための第1マスフローコントローラ26と、キャリアガス源28から供給されるキャリアガスの流量を制御するための第2マスフローコントローラ30と、を備える。
不純物ガスは、基板Wに添加されるべき所望の不純物を含む原料ガス、またはこの原料ガスを希釈ガスで薄めたガスである。原料ガスは所望の不純物に合わせて選択される。原料ガスの分子には不純物元素が含まれる。基板Wに注入する不純物が例えばボロン(B)、リン(P)、ヒ素(As)である場合にはそれぞれ、原料ガスは例えばB、PH、AsH等が使用される。一実施例においては、不純物は、ボロン、リン、ヒ素、ガリウム、ゲルマニウム、及び炭素のうち少なくとも1種であってもよい。
原料ガスを希釈するための希釈ガスは例えば、水素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノンのいずれかである。あるいは、これらのうち複数種が希釈ガスとして併用されてもよい。希釈ガスは原料ガスのプラズマの着火性を改善するためのアシストガスとして使用されてもよい。一実施例においては、原料ガスとしてBガスを使用する場合には、ガス源でのボロンの粉末化を避けるために、水素ガスで20%以下に希釈して使用される。キャリアガス源28から供給されるキャリアガスは、希釈ガスと同様に、例えば、水素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノンのいずれかである。また、これらのうち複数種がキャリアガスとして併用されてもよい。
気体供給部14は、第1マスフローコントローラ26により不純物ガスの流量を制御し、第2マスフローコントローラ30によりキャリアガスの流量を制御することにより、所望の流量比で混合ガスをチャンバ12に供給する。後述するように本発明の一実施形態においては、混合ガスは、原料ガス、水素ガス、及び希釈ガスを含む。そのために、不純物ガス源24及びキャリアガス源28の少なくとも一方に蓄えられているガスは水素ガスを含む。あるいは、気体供給部14はチャンバ12に水素ガスを供給するための水素供給系統を備えてもよい。このようにして、原料ガス、水素ガス、及び希釈ガスを含む混合ガスがチャンバ12に供給されるように気体供給部14は構成されている。
プラズマ源16は、気体供給部14からチャンバ12に供給されたガスにプラズマを発生させる。プラズマ源16はチャンバ12に接してその外部に設置されている。一実施例においてはプラズマ源16はICP(誘導結合型プラズマ)と呼ばれるプラズマ発生方式のプラズマ源である。プラズマ源16は、高周波電源32、プラズマ発生用コイル34、及びインシュレータ36を含む。高周波電源32は例えば13.56MHzの交流電源であり、プラズマ発生用コイル34に電力を供給する。プラズマ発生用コイル34はチャンバ12の基板ホルダ18に対向する一面(図示の例では上面)に取り付けられている。コイル34が取り付けられているチャンバ12の一面には、誘電体の材料で構成されたフランジであるインシュレータ36が設けられている。
基板ホルダ18は、プラズマドーピング処理がなされる基板Wを保持するためにチャンバ12の内部に設けられている。基板Wは半導体基板であり、例えばシリコンを主材料とする基板である。基板ホルダ18は、基板Wを保持するために例えば静電チャックまたはその他の固定手段を備えてもよい。一実施例においては、基板ホルダ18は、温度が制御される基板接触部を有し、この基板接触部に基板Wが載置され静電吸着により固定される。こうして基板Wは、プラズマドーピング処理に好ましい基板温度に管理される。
また、基板ホルダ18にはバイアス電源38が接続されている。バイアス電源38は、基板ホルダ18に保持された基板Wに向けてプラズマ中のイオンを引きつけるための電位を基板Wに与える。バイアス電源38は直流電源、パルス電源、または交流電源である。図示の実施例ではバイアス電源38は交流電源である。この場合、プラズマ発生用の高周波電源32よりは低周波数(例えば1MHz以下)の交流電源が使用される。よって、以下ではバイアス電源38を低周波電源と称する場合もある。
プラズマドーピング装置10においては、例えば以下に述べるようにプラズマドーピング処理が実行される。まず、真空ポンプ20により所望の真空度にチャンバ12が排気され、処理されるべき基板Wがチャンバ12へと搬入される。基板Wは基板ホルダ18に保持される。気体供給部14により所望の流量比で混合されたプロセスガスがチャンバ12に供給される。このとき自動圧力調整システムにより継続して真空度が調節されている。高周波電源32からプラズマ発生用コイル34に通電して磁界を発生させる。磁界はインシュレータ36を通過してチャンバ12に進入し、プロセスガスのプラズマを発生させる。
バイアス電源38を使用して、基板ホルダ18に保持されている基板Wに電位を発生させる。プラズマに存在するイオンが基板Wに向けて加速され、基板Wの表層領域に不純物が注入される。所定の終了条件が成立したときに高周波電源32及びバイアス電源38からの給電は停止される。ガスの供給も停止される。処理済みの基板Wはチャンバ12から搬出される。
なお、原料ガスのチャンバ12への供給開始はプラズマの着火後であってもよい。この場合、まずキャリアガスの供給が先行して開始され、キャリアガスにプラズマを発生させてから、原料ガスがチャンバ12に供給される。また、プラズマドーピング処理を終了する際においても、まず原料ガスの供給を先行して停止し、そのうえで給電及びキャリアガス供給を停止してプラズマを消滅させるようにしてもよい。
プラズマドーピング処理がされた基板Wに対しては、プラズマドーピングの後工程である熱処理が行われる。この熱処理は、プラズマドーピング処理によって基板Wに生じた結晶欠陥を回復し、注入された不純物を電気的に活性化するための処理である。熱処理は例えば急熱アニール処理(RTA)、レーザーアニール、またはフラッシュランプアニールであり、図示しないアニール装置により行われる。一実施例においては、アニール装置がプラズマドーピング装置の後工程として連結され連続的に基板が処理されるインライン型の基板処理システムとして構成されていてもよい。なお図示の実施例においては、プラズマドーピング装置は他の工程から独立して設置されその都度基板が搬入出されるオフライン型の処理装置として構成されている。
図2は、典型的なプラズマドーピング処理及びアニール処理をしたときの基板の表面粗さとバイアス電圧との関係を示す散布図である。本発明者による測定結果を示す。図2に△印で示す測定結果は、300mmシリコンウエハの中心付近500nm角内での自乗平均粗さを原子力間顕微鏡(AFM)で測定したものである。測定対象のシリコンウエハは、ヘリウムガスで1000ppmに希釈されたBガスを使用してプラズマドーピングを行っている。ドーズ量は1.5×1015atoms/cmである。アニール条件は、窒素雰囲気で1150℃、30秒である。測定結果の傾向を図2に一点鎖線で示す。
また図2に示す点線の範囲Mは、公知の低エネルギ(300eV)のイオン注入で同一のドーズ量(1.5×1015atoms/cm)としたときの自乗平均粗さである。現在のデバイス作製はこの範囲Mで行われている。よって、他の手法で不純物を注入したときの自乗平均粗さが当該範囲Mにあれば、その手法に問題がないと評価することができる。
図2に示されるように、プラズマドーピングにおけるバイアス電圧が低い場合であれば、アニール処理後の基板表面粗さが低エネルギイオン注入の場合と同レベルである。しかし、プラズマドーピングの場合、バイアス電圧を高くするにつれて、アニール処理後の基板表面粗さは低エネルギイオン注入の場合よりも悪くなっていく傾向があることがわかる。これは、大量のヘリウムイオンによるボンバードメント効果により結晶の欠陥が残留した結果と考えられる。
図3は、プラズマドーピング処理による表面粗さの発生メカニズムを説明するための図である。図3には、本発明者の考察による表面粗さ発生メカニズムを示す。図3には、基板Wの初期状態100から、プラズマドーピング処理102及びアニール処理104を経て表面荒れ状態106までを示す。初期状態100においては、基板Wを構成する原子(例えばシリコン原子)108が結晶状態で配列されている。
プラズマドーピング処理102においては、大量のイオン110が基板表面に引き寄せられて衝突する。上述のように原料ガスをヘリウムガスで希釈している場合には、プラズマから大量のヘリウムイオンが基板Wに向けて加速され基板原子108に衝突する。基板原子108は衝突により散乱され、基板Wの表面に結晶層114よりも若干密度の低いアモルファス層112(破線で示す)が形成される。アモルファス層112の密度分布は均一ではない。図示のように、アモルファス層112の密度分布には局所的な疎密の偏在があると考えられる。
アニール処理104により基板Wに熱が与えられる。アニールの初期にアモルファス層112の下に存在する元々の結晶層114に引き寄せられ、上下方向にアモルファス層112内の基板原子108が再配列される。一旦上下に配列された基板原子108は拘束され、左右方向には移動しにくくなる。よって、アモルファス層112において上下方向に基板原子108の数が少ない位置は凹となり、上下方向に基板原子108の数が多い位置は凸となる。こうして、状態106に示すように、アモルファス層112における密度の偏在が基板表面の凹凸すなわち表面荒れとして現れたと考えられる。基板に印加するバイアス電圧を大きくするほど表面に生じる結晶の欠陥も大きくなることになる。
アニール処理により不純物が活性化されるので、基板表面のシート抵抗はアニール処理前よりも低下する。ところが、図3に示すように基板表面に欠陥が残留する結果として、不純物の活性化により本来低下するはずの水準まではシート抵抗は下がらない。そうすると、最終製品であるデバイスの動作速度の低下やオーム加熱によるエネルギ損失が生じ得る。デバイスのゲートとの接触部にちょうど欠陥が重なった場合には、最悪の場合、そのデバイスが動作しないおそれがある。プラズマドーピングを製造工程に採用したときのデバイスの歩留まり低下が懸念される。微細化の進展により回路線幅が狭くなるほど欠陥によるこれらの影響は大きくなる。
そもそもプラズマドーピングがイオン注入の代替技術と目されてきたのは、一括して注入することのできる面積の大型化が低エネルギであっても比較的容易であり、高スループットで浅い結合を形成することが期待されたからである。ヘリウムガスで極めて低濃度に希釈された原料ガスを使用することにより、注入される不純物のスパッタリングと注入とが平衡化され、不純物の注入量の均一性及び再現性を良好とすることができる。注入された不純物の拡散がアモルファス層と結晶との境界で止まるため、半導体の性能を決める要素であるドーズプロファイルの急峻性についても優れた結果を得ることができる。
よって、こうした利点を持つプラズマドーピングによる不純物注入技術の実用化を促進するために、不純物の活性化処理をした後における基板表面の欠陥を抑制する技術が求められるであろう。その技術の内容はおろか、そのような抑制対策の必要性すら未だ知られていない。例えば上掲の特許文献においてはアニール処理をした後において基板表面に無視できない荒れが生じること自体何ら言及されていない。
欠陥は大量のアシストガスイオンに起因しているから、これを抑制するいくつかの単純な方法が考えられる。例えば、(1)アシストガスとして使用する元素の原子量を小さくするとか、(2)注入エネルギを小さくするとか、(3)アシストガス量を減らすといったことが考えられる。しかし、いずれの手法も必ずしも現実的ではない。例えば、アシストガスとして比較的良好とされているヘリウムよりも原子量の小さいガスは水素に限られるにもかかわらず、水素ガスのみをアシストガスとした場合には均一性、再現性、急峻性が実用レベルにない。また、製造すべきデバイス性能により注入深さが決定され、これにより注入エネルギが決定されるので、注入エネルギは事実上調整可能なパラメータではない。アシストガス量を減らした場合には原料ガス濃度が高まるので、やはり均一性、再現性、急峻性が劣化する。
本発明者は斯かる状況のもとで研究及び実験に鋭意取り組んだところ、良好な均一性、再現性、急峻性を保ちつつアニール処理後の欠陥を抑制することのできる有効な方法を発見した。本発明者は、プラズマに適量の水素を混入することにより、衝突粒子によるボンバードメント効果ひいてはアモルファス層の密度の偏在が軽減され、アニール処理後において良好な均一性、再現性、急峻性を得られることを見出した。
プラズマへの適量の水素の混入によって、プラズマからのイオン衝突に対する基板表層の結晶の自己回復作用が強化される。つまり、ヘリウムのボンバードメントにより破壊される基板原子(例えばシリコン)同士の結合にプラズマによりラジカル化またはイオン化された水素が入り込み、瞬間的にシリコンと水素間に結合が生成される。この結合の結合力は弱く、結局はヘリウムのボンバードメントにより破壊される。しかしながら、このシリコン−水素間結合の存在によって、水素を混入しない場合よりも多くのエネルギーが結晶の破壊に必要となる。このため、同一エネルギーでは、結晶の破壊度合いは比較的弱くなる。したがって、プラズマ照射により生じた基板表面アモルファス層における密度の偏在が軽減され、後工程の活性化処理中の欠陥の成長が抑制される。
本発明の一実施形態においては、所望の不純物元素を含む原料ガスと、水素ガスと、原料ガスを希釈するための希釈ガスと、を含む混合ガスがチャンバ12に供給される。この混合ガスは、低濃度に希釈された原料ガスと、原料ガスよりも高濃度の水素ガスと、を含んでもよく、残部が実質的に希釈ガスであってもよい。希釈ガスは例えばヘリウムガスであり、ヘリウムガスは水素ガスよりも高濃度であってもよい。一実施例においては、原料ガス濃度は1%以下である。一実施例においては、水素ガス濃度は1%以上である。
一実施例においては、プラズマドーピング装置10は、ヘリウムガスまたはその他の希釈ガスによって1%以下の低濃度に希釈された不純物原料ガスを使用し、プラズマ照射による不純物注入時にプラズマに水素が混入されているように構成されていてもよい。あるいは、一実施例においては、プラズマドーピング装置10は、水素ガスまたはその他の希釈ガスによって1%以下の低濃度に希釈された不純物原料ガスを使用し、プラズマ照射による不純物注入時にプラズマにヘリウムが混入されているように構成されていてもよい。
このようにして水素とヘリウムとをプラズマに同時に存在させることにより、ヘリウムによる結晶構造の破壊と水素による結晶回復とを併存させることができる。これにより、アモルファス層の密度の偏在が軽減される。好ましい水素ガス濃度を定めるための1つの観点は水素ガスによる結晶回復作用と希釈ガスによるボンバードメント効果とのバランスを考慮することであり、水素ガス濃度の好ましい範囲は実験的に決めることが可能である。
図4乃至図6を参照して、本発明の一実施形態に係るプラズマドーピングによる測定結果を説明する。この実施例においては、流量比で水素ガスを7%、Bガスを0.2%、ヘリウムガスを残余の約93%とする混合ガスを用いて図1に示すプラズマドーピング装置10により基板にプラズマドーピングをした。使用した基板は300mm径のN型の半導体用ウエハである。ドーズ量は1.3×1015atoms/cmである。その後アニール装置により1150℃、30秒のアニール処理を行った。
なお、この1150℃、30秒のアニール処理は、注入された不純物の活性化に十分なアニールである。経験的に見て、1050℃以上かつ5秒以上のアニールであれば、注入された不純物の活性化に十分であると評価することができる。よって、以下に説明する測定結果は、プラズマドーピングの後工程として1050℃以上かつ5秒以上のアニールをしたときにも同等の良好な結果が得られると予測される。
図4は、本発明の一実施形態に係るシート抵抗の測定結果を示すグラフである。シート抵抗値Rs(Ω/□)は、四端子測定法により測定した。図4の縦軸はシート抵抗の測定値Rsであり、横軸は注入エネルギである低周波電源38のワット数である。上述の流量比の混合ガス及びアニール条件を使用したときのシート抵抗値を図4に■印で示し、その傾向を実線で示す。比較例として、希釈ガスをヘリウムのみとしたときの測定値を◆印で示し、希釈ガスを水素ガスのみとしたときの測定値を△印で示す。これら2つの比較例は希釈ガスを除いて実施例と同一の条件で処理され測定されている。比較例の測定結果の傾向を破線で示す。
ヘリウム及び水素の双方を含むガスを使用したときに、いずれか一方のみの場合に比べて、ドーズ量が約1.5×1015atoms/cmとほぼ同じであるにもかかわらず、シート抵抗値が大きく下がるという驚くべき結果が得られた。ヘリウムのみの比較例におけるシート抵抗測定値は約120Ω/□であり、水素のみの比較例におけるシート抵抗測定値は約100Ω/□であるのに対して、本実施例におけるシート抵抗測定値は約70Ω/□である。プラズマドーピング条件及びアニール条件によってシート抵抗値は変動する。しかし、水素を混入したときにシート抵抗値が小さくなるという大小関係は、これら処理条件によって変化しないであろう。なおヘリウムのみの比較例よりも水素のみの比較例のほうがシート抵抗が小さいのは、水素のほうが原子量が小さくボンバードメント効果も小さいからである。
本実施例によれば、100W程度の低エネルギから1000W程度の高エネルギまでの広い注入エネルギ範囲にわたってシート抵抗値は低レベルに保たれている。ちなみに、基板をシリコンとした場合、100Wでの不純物濃度が5×1018atoms/cmにまで落ちる基板表面からの深さは約2nmであり、1000Wでは約18nmである。また、比較例においてはいずれも注入エネルギを高くするにつれてシート抵抗も大きくなる傾向が見られるのに対して、本実施例においては注入エネルギが高くなるにつれてシート抵抗は減少している。図2に示すように典型的なプラズマドーピングにおいては注入エネルギを高くするにつれてアニール後の表面粗さも大きくなるのに対して、本実施例では高エネルギであっても低エネルギと同レベル以下の表面粗さが得られると推測される。
本実施例の良好な結果には、水素による結晶の自己回復機能が関与している。つまり、プラズマに水素が混入されていることにより、ヘリウムイオンの衝突によるシリコン原子の散乱がシリコン水素間結合によって抑制されていると考えられる。ヘリウムのみの比較例では大量のヘリウムイオンによるボンバードメント効果の影響が顕在化している。しかし、1つ1つのヘリウムイオンの衝突エネルギは、1000W程度の高エネルギであっても実際にはそれほど大きくはない。水素原子のもつ結合エネルギによってシリコン原子の散乱が抑制され、全体的に比較的高密度のアモルファス層が形成される。これにより、本実施例ではアニール後のシート抵抗及び表面粗さが低くなったと考えられる。
なお、同様の理由により、ヘリウムよりも原子量の大きい希釈ガス(例えばアルゴン、キセノン、ネオン等)を、ヘリウムとともにまたはヘリウムに代えて使用することも可能となると考えられる。つまり、原子量が大きいほどボンバードメント効果が大きくなるが、水素を混入させることによりボンバードメント効果を軽減することができるので、原子量の大きい希釈ガスを採用することが可能となる。
図5は、本発明の一実施形態に係る二次イオン質量分析法(SIMS)による分析結果を示すグラフである。図5に示すグラフAないしFはそれぞれ下記の使用ガス組成、ドーズ量、注入エネルギである点を除いて上述の共通のプラズマドーピング条件及びアニール条件で処理された基板の分析結果である。不純物ドーズ量は、SIMS分析での換算ドーズ量である。
グラフA(実施例) 混合ガス、1.28×1015atoms/cm、300W
グラフB(実施例) 混合ガス、1.56×1015atoms/cm、800W
グラフC 水素希釈、1.24×1015atoms/cm、300W
グラフD 水素希釈、1.29×1015atoms/cm、800W
グラフE ヘリウム希釈、1.13×1015atoms/cm、300W
グラフF ヘリウム希釈、1.14×1015atoms/cm、800W
グラフA及びグラフBの混合ガスは、流量比で水素ガスを7%、Bガスを0.2%、ヘリウムガスを残余の約93%とする混合ガスである。グラフC及びグラフDは比較例として、水素ガスのみでBガスを希釈したものである。グラフE及びグラフFは比較例として、ヘリウムガスのみでBガスを希釈したものである。また、グラフA、C、Eは注入エネルギが低い場合であり(300W)、グラフB、D、Fは注入エネルギが高い場合である(800W)。
SIMS分析結果はドーズプロファイルの急峻性を特定するために使用される。ここでは、ドーズ量が5×1019atoms/cmとなる基板表面からの深さからドーズ量が5×1018atoms/cmとなる深さまでの深さ差を急峻性を表す指標として定義する。図5においては、5×1019atoms/cmから5×1018atoms/cmまでのドーズ量を範囲Gで示している。この範囲Gにおける深さ変化量が急峻性を示す。数値が小さいほど急峻性が良好であることを表す。
よって、図5に示すSIMS分析結果から得られる急峻性は以下のとおりである。
グラフA(実施例、低エネルギ) 1.9nm
グラフB(実施例、高エネルギ) 2.5nm
グラフC(水素希釈、低エネルギ) 2.7nm
グラフD(水素希釈、高エネルギ) 3.9nm
グラフE(ヘリウム希釈、低エネルギ) 1.9nm
グラフF(ヘリウム希釈、高エネルギ) 3.4nm
水素ガスのみで希釈した場合には急峻性が悪い。水素のみの場合に急峻性が悪いのは、水素のボンバードメント効果によるアモルファス層の厚さが極めて薄いからと考えられる。アモルファス層を超える深さまで不純物がドーピングされることになり、アモルファス層が拡散のストッパ層として機能していない。これに対して本実施例及びヘリウム希釈の場合にはアモルファス層が水素の場合よりも深くなり、その深さ範囲にドーピングが収まるために、極めて良好な急峻性が得られる。
また、高エネルギの場合には低エネルギの場合よりも急峻性が低下しているが、本実施例の急峻性の低下が最も小さいこともわかる。これについても水素による結晶の自己回復機能が関与していると考えられる。本実施例によれば、広範な注入エネルギ範囲で優れた急峻性が実現される。
急峻性を定義するための範囲Gは不純物層の厚さを表しているとも言える。よって、図5に示されるように、本実施例にかかるプラズマドーピング方法は低エネルギの場合に約10nm以内の厚さの不純物層を基板に形成するために好適であり、高エネルギの場合に約15nm以内の厚さの不純物層を基板に形成するために好適である。本実施例にかかるプラズマドーピング方法は、処理条件を調整することにより、約30nm以内の厚さの不純物層を基板に形成するために好適である。
図6は、本発明の一実施形態に係るシート抵抗の測定結果を示すグラフである。図6は本実施例に係る混合ガスを使用し多数枚のウエハを処理したときのシート抵抗値Rs(Ω/□)の均一性及び再現性を示す。1000枚のウエハを処理したときのウエハ内の均一性は平均2.8%(1σ)であり、再現性は1.8%(1σ)と良好であった。本実施例のように水素を混入した場合においても、ヘリウムガスのみで低濃度に希釈された原料ガスを使用する場合と同様に良好な均一性及び再現性を得ることができる。
図7は、本発明の一実施形態に係るシート抵抗の測定結果を示すグラフである。図4に示す測定結果と同様に、ボロンのプラズマドーピング及びアニール処理をした試料に対し、四端子測定法によりシート抵抗値Rs(Ω/□)を測定した。図に示すプロットは、一枚の基板全面の平均シート抵抗値を表す。図7の縦軸はシート抵抗の測定値Rsである。図7の横軸は、プラズマドーピングのために供給される混合ガスの全流量に対する水素ガスの流量比である。図7に示す測定結果は、水素ガスの微量(例えば1%)の混入から約30%の流量比までの範囲と、比較例としてヘリウム非含有(つまり水素ガスと不純物ガスのみの混合ガス、即ち水素ガス流量比約100%)とを試験したものである。
図7の左側にはBガスの流量比を変化させた場合を示す。Bガス流量比は約0.1%から約0.3%の範囲で変化させている。図7の右側にはバイアス電源38の出力LFを135Wから800Wの範囲で変化させた場合を示す。各測定結果に共通するプラズマドーピングの条件は、プラズマ発生のための高周波電源32のパワーが1500W、処理中のガス圧が0.7Pa、混合ガスの全流量が300sccmである。水素ガス及びBガスを除く混合ガスの残部はヘリウムガスである。アニールの条件は、酸素添加率1%、設定温度1150℃、処理時間30秒である。
図7の左側に示されるように、水素ガス流量比が30%程度までの試験範囲においては、Bガス流量比を一定とすると、水素ガスの微量混入(例えば1%)から大きくシート抵抗値は低減され、更なる水素ガス混入によってシート抵抗値は最低レベルへと落ち着いていく傾向にあることがわかる。例えば、□印で示されるBガス流量比0.1%のプロットは、約12%の水素ガス流量比でシート抵抗値が最低レベルに到達している。本試験範囲においては水素ガス流量比約100%のシート抵抗値に向けての増加は観察されていない。本試験範囲を超えるある水素ガス流量比から水素ガス流量比約100%のシート抵抗値に向けてシート抵抗値が増加すると予測される。
上述のようにシート抵抗値は、アニール処理後の基板表面荒れの程度を表す指標であり、水素ガス混入による結晶回復作用を表す指標でもある。シート抵抗値が小さいほど表面荒れは小さく、結晶回復作用は大きい。したがって、図7に示す測定結果によれば、水素ガスによる結晶回復作用を重視する場合には、プラズマドーピングのための水素ガス流量比の好ましい範囲は約30%以下の範囲である。プラズマドーピングのためのプロセスガスの組成は、全流量に対するBガス流量比が約0.1%乃至約0.3%の範囲にあり、かつ水素ガス流量比は当該全流量の約30%以下であることが好ましい。
また、シート抵抗値の最低点への低下傾向は、Bガス流量比に応じていくらか異なることもわかる。Bガス流量比が大きいほど、シート抵抗値が最低点に到達する水素ガス流量比も大きくなっている。シート抵抗値が最低点に到達する値が水素ガス流量比の最適値とみなすことができる。上記の通り、Bガス流量比0.1%の場合には水素ガス流量比の最適値は約12%である。また、Bガス流量比0.1667%の場合には水素ガス流量比の最適値は約15%である。Bガス流量比0.25%の場合には水素ガス流量比の最適値は約20%である。
よって、一実施例においては、不純物ガス(例えばBガス)の流量比に応じて水素ガスの流量比が選択されることが好ましい。不純物ガス流量比が大きいほど水素ガス流量比を大きくすることが好ましい。そのために例えば、使用される不純物ガスの流量比範囲(例えば約0.1%から約0.3%の範囲)を複数に区分し、区分ごと(例えば0.05%の幅の区分ごと)に水素ガス流量比が設定されていてもよい。この場合、不純物ガス流量比の大きい区分ほど、水素ガス流量比は大きな値が設定される。このようにして、結晶回復作用を重視する水素ガス流量比を選択することができる。最終的に製造するデバイスにおいてシート抵抗値(表面荒れ)を小さくすることが重要である場合に有効である。
一方、図7の右側に示されるように、バイアス電源38のワット数LFの違いによっては、水素ガス流量比最適値の傾向に顕著な違いは観察されない。よって、プラズマドーピングのために基板に印加するバイアス電圧が水素ガス流量比の最適値に与える影響はないと考えられる。
図8は、本発明の一実施形態に係るシート抵抗の面内均一性の測定結果を示すグラフである。図8に示す測定結果は、図7の測定をした基板についてシート抵抗の面内均一性(1σ)を評価したものである。図8の縦軸はシート抵抗値Rsの面内均一性である。図8の横軸は、プラズマドーピングのために供給される混合ガスの全流量に対する水素ガスの流量比である。図7の左側にはBガスの流量比を変化させた場合を示し、図7の右側にはバイアス電源38の出力LFを135Wから800Wの範囲で変化させた場合を示す。
図8の左側に示されるように、不純物ガス流量比によって水素ガス流量比最適値に顕著な傾向の違いは観察されない。また、図8の右側に示されるように、バイアス電源38のワット数LFの違いによっても顕著な傾向の違いは観察されない。均一性については、不純物ガス流量比及びバイアス電圧にかかわらず、水素ガス流量比の最適値は約5%であることがわかる。
均一性が5%以内である場合には、製造されるデバイスの歩留まりへの影響が実質的にないとの知見がある。図8によれば、均一性が5%以内となる水素ガス流量比の範囲は、約20%以下である。よって、処理の均一性を重視する場合には、プラズマドーピングのための水素ガス流量比の好ましい範囲は約20%以下の範囲である。プラズマドーピングのためのプロセスガス全流量に対するBガス流量比が約0.1%乃至約0.3%の範囲にあり、かつ水素ガス流量比は当該全流量の約20%以下であることが好ましい。
また、図8によれば、水素ガスを微量混入した段階(例えば1%)で均一性は4%以内と低い水準にある。水素ガス流量比が約10%を超えると、均一性はその水準を超える。よって、プラズマドーピングのための水素ガス流量比は、より好ましくは約10%以下である。プラズマドーピングのためのプロセスガス全流量に対するBガス流量比が約0.1%乃至約0.3%の範囲にあり、かつ水素ガス流量比は当該全流量の約10%以下であることが好ましい。
均一性を重視する場合に更に好ましい水素ガス流量比の範囲は、約3%以上約5%以下である。プラズマドーピングのためのプロセスガス全流量に対するBガス流量比が約0.1%乃至約0.3%の範囲にあり、かつ水素ガス流量比は当該全流量の約3%以上約5%以下であることが好ましい。こうして、均一性を重視する水素ガス流量比を選択することができる。最終的に製造するデバイスにおいて均一性を高めることが重要である場合に有効である。
水素ガスは可燃性ガスであるから、慎重な取り扱いが求められる。プラズマドーピング処理後のガス廃棄のために、爆発限界(例えば体積比で4%)よりも低濃度に希釈ガス(例えば窒素ガス)で希釈され保管されることが好ましい。よって、そうした希釈のための作業負担及びコストを考慮すると、水素ガス流量比は小さいことが好ましい。プラズマドーピングのための水素ガス流量比が爆発限界(例えば体積比で4%)以下である場合には、プラズマドーピング処理後のガス廃棄の際に更なる希釈を要しない。したがって、ガスの取り扱いを容易にするためには、プラズマドーピングのための水素ガス流量比は4%以下とすることが好ましい。
図9は、本発明の一実施形態に係るシート抵抗の測定結果を示すグラフである。図9は、図7とは異なり、PHガスを使用するリンのプラズマドーピングについての測定結果を示す。水素ガス流量比の試験範囲は約15%までである。それ以外の処理条件については図7と同様である。図9の上側にはバイアス出力LFを500Wとした場合を示し、図9の下側にはバイアス出力LFを800Wとした場合を示す。それぞれについてPHガスの流量比を0.1%とした場合と0.3%とした場合とが示されている。
同様に考察すると、図9によれば、水素ガスによる結晶回復作用を重視する場合には、プラズマドーピングのための水素ガス流量比の好ましい範囲は例えば約10%以下の範囲である。プラズマドーピングのためのプロセスガス全流量に対するPHガス流量比が約0.1%乃至約0.3%の範囲にあり、かつ水素ガス流量比は当該全流量の約10%以下であることが好ましい。
ボロンの場合と同様にリンの場合においても、不純物ガス流量比が大きいほど、シート抵抗値が最低レベルに到達する水素ガス流量比は大きくなっている。PHガス流量比0.1%の場合には水素ガス流量比の最適値は約4%である。PHガス流量比0.3%の場合には水素ガス流量比の最適値は約7%である。こうした傾向は、ヒ素についても共通すると予測される。
図10は、本発明の一実施形態に係るシート抵抗の面内均一性の測定結果を示すグラフである。図10に示す測定結果は、図9の測定をした基板についてシート抵抗の面内均一性(1σ)を評価したものである。不純物ガス流量比及びバイアス電圧にかかわらず、図8に示すボロンの場合と同様に、均一性を重視する場合の水素ガス流量比の最適値は約5%であることがわかる。均一性を重視する場合の水素ガス流量比の最適値は、注入する不純物元素に依存しないと考えられる。よって、均一性を重視する場合の水素ガス流量比の好ましい範囲は、ボロンとリンとで共通である。例えば、プラズマドーピングのためのプロセスガス全流量に対するPHガス流量比が約0.1%乃至約0.3%の範囲にあり、かつ水素ガス流量比は当該全流量の約3%以上約5%以下であることが好ましい。ヒ素についても水素ガス流量比の好ましい範囲は共通であると予測される。
10 プラズマドーピング装置、 12 チャンバ、 14 気体供給部、 16 プラズマ源。

Claims (5)

  1. 半導体基板に不純物を添加するためのプラズマドーピング装置であって、
    チャンバと、
    前記チャンバに気体を供給するための気体供給部と、
    供給された気体のプラズマを前記チャンバに発生させるためのプラズマ源と、を備え、
    前記気体供給部は、基板に添加されるべき不純物元素を含む原料ガスと、水素ガスと、前記原料ガスを希釈するための希釈ガスと、を含む混合ガスが前記チャンバに供給されるよう構成され、前記水素ガスの前記混合ガスに対する流量比が0%以下であり、かつ前記原料ガスの前記混合ガスに対する流量比が0.1%乃至0.3%の範囲にあり、かつ前記原料ガスはB であることを特徴とするプラズマドーピング装置。
  2. 前記混合ガスは、低濃度に希釈された前記原料ガスと、該原料ガスよりも高濃度の前記水素ガスと、を含み、残部が実質的に前記希釈ガスであることを特徴とする請求項1に記載のプラズマドーピング装置。
  3. 前記希釈ガスはヘリウムガスであり、該ヘリウムガスは前記水素ガスよりも高濃度であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマドーピング装置。
  4. 前記水素ガスの前記混合ガスに対する流量比が3%乃至5%であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプラズマドーピング装置。
  5. 不純物元素を有する原料ガスを含む混合ガスを真空環境に供給し、該混合ガスのプラズマを発生させ、該真空環境で基板に該プラズマを照射して前記不純物元素を注入するプラズマドーピング方法であって、
    前記プラズマに水素を混入させることにより、該プラズマの照射により生じた基板表面のアモルファス層の密度の偏在を軽減し、
    前記水素の前記混合ガスに対する流量比が0%以下であり、かつ前記原料ガスの前記混合ガスに対する流量比が0.1%乃至0.3%の範囲にあり、かつ前記原料ガスはB であることを特徴とするプラズマドーピング方法。
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