JP5817733B2 - 背もたれ用フレーム構造体およびその製造方法 - Google Patents

背もたれ用フレーム構造体およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、背もたれ用フレーム構造体およびその製造方法に関し、とくに、軽量な樹脂製でありながら高い剛性を効率よく達成可能な、自動車のシートに用いて最適な背もたれ用フレーム構造体、およびその製造方法に関する。
背もたれ用フレーム構造体、とくに車両用の背もたれ用フレーム構造体は、車両全体の軽量化の要求から軽量であることが望まれ、かつ、車両後方や側面からの衝突された際に乗員等からの大荷重によるモーメントに耐え、乗員を適切に保護することが要求されることに加え、背もたれ角度変更のために下部支点周りに回動可能な調節機構が要求されることから、高剛性であることが望まれる。
フレーム構造体を主として金属で構成する場合、上記のような要望を満たそうとすると、比較的複雑な構造となり(例えば、特許文献1)、フレームを構成する部材を溶接等により接合する必要があるため、多くの製造工程を必要とする。しかも、主として金属で構成されることから軽量化には限界が生じる。
一方、金属に代わる軽量、高剛性な素材として、FRP(繊維強化プラスチック)が知られており、FRPを用いて背もたれ用フレーム構造体を構成することも試みられている(例えば、特許文献2、3、4)。とくに特許文献2に開示されている構造では、板状の骨格材本体の両側部に凸からなる上側補強部が一体に形成されているが、骨格材本体が平板状で大きな面積にわたって広がる部材に構成されているため、この背もたれ構造体の剛性を向上しようとすると、結局、この骨格材本体の板厚を増大させなければならず、全体を軽量化する上で限界が生じることになる。一方、特許文献3に開示されている構造では、背もたれ構造体の左右両側に配置されるフレーム部分(本発明におけるサイドフレームと同等の場所に位置するフレーム部分)の剛性は著しく高められているものの、その間にわたるフレーム部分(本発明における横フレームと同等の場所に位置するフレーム部分)の剛性向上についてはとくに考慮されていないため、背もたれ構造体全体としての剛性、とくに上記左右にわたる部分の剛性が不足するおそれがある。また、特許文献3では、左右のフレーム部分の剛性向上のために、多くのリブを配設した構造を採用しているが、このような構造では、優れた成形性を望めないばかりか、使用材料量も多くなり、製造コスト上好ましくない。また、特許文献4においてはフレームを製造するために、マンドレル上に三次元ブレイディングを形成したのち、マンドレルを抜く工程と押しつぶし工程を経て、RTM工程で樹脂含浸を行って成形するといった多岐にわたる工程を経ており、製造に手間がかかる。したがって、特許文献2、3、4に開示されているような従来構造では、軽量、高剛性の背もたれ用フレーム構造体を効率よく、より容易にかつより安価に製造するための改善の余地が残されている。
特開2010−94436号公報 特開2005−194号公報 特表2010−500198号公報 特開2010−220748号公報
そこで本発明の課題は、上記のような現状に鑑み、両側のサイドフレーム間にわたって延びる部位である、横フレームを、とくに構造的に改良して、さらに強化繊維を配置することにより全体としての軽量化を達成しつつ効率よく剛性を向上可能で、しかも、安価にかつ容易に製造可能な背もたれ用フレーム構造体と、その製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る背もたれ用フレーム構造体は、両側で互いに並行に延びるサイドフレームと、両サイドフレームの上部間にわたって面状に延びる横フレームとが一体的に接続され、全体として門形に形成された樹脂製の背もたれ用フレーム構造体であって、前記横フレーム、その上部で前記両サイドフレームの背もたれ後面側に接続され、その下部では前記両サイドフレームの背もたれ前面側に接続され、縦断面で見て両サイドフレームに対し滑らかに斜行する面状体に形成されるとともに、該横フレームに対し、少なくとも、両サイドフレーム間にわたって連続的ないし断続的に延びるように強化繊維配置されたことを特徴とするものからなる。
このような本発明に係る背もたれ用フレーム構造体においては、両サイドフレームの上部間にわたって延び一体的に接続される横フレームが面状に構成されていることで、まず軽量化がはかられつつ全体として門形の背もたれ用フレーム構造体が形成される。しかし単に横フレームを面状に構成するだけでは、この横フレーム部分に大きな剛性向上効果は期待できない。本発明では、この横フレームが、その上部で両サイドフレームの背もたれ後面側に接続し、その下部では両サイドフレームの背もたれ前面側に接続し、縦断面で見て両サイドフレームに対し滑らかに斜行する面状体に形成される。サイドフレームはその背もたれ後面側と背もたれ前面側との間に多かれ少なかれある幅を有しているので、面状体からなる横フレームがこの間にわたって斜行することにより、横フレームの横断面でみた場合、この斜行高さが実質的に横フレームの断面二次モーメントの計算上の高さに相当することになり、面状体でありながら断面二次モーメントが断面形状的に効果的に増大されて、横フレームの厚みが薄肉でも横フレームの剛性が効率よく高められることになる。横フレームは乗員の背もたれ荷重を受ける部位であり、かつ、荷重を両サイドフレームへと伝達する部位である。この横フレームが、上記の如く斜行面状体とされることで、まず構造的に剛性が向上されて十分に良好に荷重が受け止められ、かつ、強化繊維が両サイドフレーム間にわたって延びるように配置されることで、構成材料的に剛性が一層向上されるとともに、横フレーム側から両サイドフレーム側への荷重伝達経路が効率よく形成される。しかも、上記の如く面状体からなる横フレームは、その上部で両サイドフレームの背もたれ後面側に接続し、その下部では両サイドフレームの背もたれ前面側に接続するように構成されるので、横フレーム側から両サイドフレーム側への荷重伝達経路は、結局、荷重が、横フレームの中央部から両サイドフレームの背もたれ前面側へと流れるように形成できることになり、両サイドフレームの上部側に横フレームが配置された門形の背もたれ用フレーム構造体として、望ましい荷重伝達経路の形成が可能となる。このように、本発明による構成とすることにより、構造体全体の軽量化をはかりつつ、とくに横フレームの剛性を効率よく高めることができ、しかも横フレーム側から両サイドフレーム側への望ましい荷重伝達経路を形成することが可能になる。さらに、この本発明による構成は、基本的には、とくに横フレームを上記特定の面状体構造とすることにより実現できるので、複雑な形状や構造の採用は不要であって、優れた生産性をもって容易に製造することが可能であり、しかも、面状体構造の採用により使用材料量も少なくて済むことから、優れた生産性と相まって安価に製造することが可能になる。
上記本発明に係る背もたれ用フレーム構造体においては、上記横フレームは、サイドフレーム側でより大きな幅を有し、両サイドフレーム間の中央部でより小さな幅を有していることが好ましい。このような構成により、より小さな横フレームの面積で、横フレームに負荷される荷重を適切に受けることができるとともに、その荷重をサイドフレーム側へと効率よく伝達することが可能になる。また、横フレームの面積を適切に小さくできることから、フレーム構造体全体の軽量化にも寄与できる。
なかでも、横フレームの下縁がアーチ状に形成されている形成されていると、横フレームの面積を適切に小さくしつつ、応力集中等が生じにくい形状となるので、フレーム構造体全体の望ましい強度、剛性の確保に寄与できる。
また、上記サイドフレームの断面構造についてはとくに限定されないが、サイドフレームが、外側方に向かって開いたコ字状の横断面を有していると、上記サイドフレームの面に延びるFRPシートを容易に貼り付けられ、簡単な断面構造でサイドフレームの剛性を効果的に高めることが可能であり、剛性の向上と、成形、製造の容易化をともに達成することが可能になる。
また、背もたれに角度調節機能等を持たせるために、上記サイドフレームの下部に、該サイドフレームを回動可能に支持する支持部との連結部が形成されていることが好ましい。本発明に係る背もたれ用フレーム構造体は、基本的には一体成形可能な樹脂製のフレーム構造体であるから、このような連結部は成形の際に容易に形成可能である。
上記本発明に係る背もたれ用フレーム構造体においては、上記横フレーム表面上に、強化繊維を一方向に配向させた帯状のFRPシートが貼設され、貼設されたFRPシートのマトリックス樹脂と横フレームを構成する樹脂とが一体的に接合されている構造とすることができる。このような構造においては、横フレームに帯状のFRPシートが貼設されて一体化されることにより、樹脂製の横フレームの軽量特性が生かされつつ、横フレームが適切に補強されて高剛性化される。FRPシートは樹脂フレーム表面上に一体化される前には貼設されるだけであるから、極めて容易に所定の部位に配置され、フレーム構造体の製造が容易化されるとともに、フレーム断面を全てFRPとした構造と比較してFRPシートの量を少なくでき、より安価に製造可能となる。また、FRPシート貼設による補強に関しても、薄いFRPシートを横フレームの表面形状に沿わせて貼り付けるだけでよいので、補強対象部位自体については凹凸構造や特殊リブ構造等の複雑な構造を採用する必要がなく、この面からも製造の容易化、低コスト化がはかられることになる。したがって、全体が軽量でかつ特定の必要部位が高剛性化された背もたれ用フレーム構造体が容易にかつ安価に製造される。
また、このようにFRPシートを貼設する形態においては、上記横フレームのFRPシート貼設部の少なくとも一部において、上記強化繊維が上記両サイドフレーム間中央部から横フレームとサイドフレーム前面側との接続部にかけて延びるように上記FRPシートが連続的ないし断続的に貼設されていることが好ましい。このようにFRPシートが貼設されていると、延設された強化繊維によって、横フレームに負荷された荷重のサイドフレーム前面側への伝達経路が効率よく形成されることになり、少ないFRPシート使用量をもって、したがって、少ない強化繊維使用量をもって、横フレームからサイドフレーム側へと効率よく荷重が伝達されることになり、効率よく軽量化がはかられつつ効率よく高剛性化が達成されることになる。
また、上記横フレームのFRPシート貼設部の少なくとも一部において、強化繊維がフレーム構造体の幅方向に略平行に延びるように前記FRPシートが連続的ないし断続的に貼設されていることも好ましい。このような構成は上記の強化繊維が両サイドフレーム間中央部から横フレームとサイドフレーム前側との接続部にかけて延びるFRPシートの配置構成と併せて適用できる。強化繊維がフレーム構造体の幅方向に略平行に延びるように配置されることにより、乗員からの背もたれ荷重による曲げ変形に対する剛性を高められるとともに横フレームによる両サイドフレーム間の連結強度が高められ、門形のフレーム構造体全体としての剛性がより高められる。
また、上記横フレームのFRPシート貼設部の少なくとも一部において、強化繊維がフレーム構造体の幅方向に斜行する方向に延びるようにFRPシートが連続的ないし断続的に貼設されている形態、例えば、強化繊維がサイドフレーム側から横フレームの中央部に向かって斜め上方に延びるように、上記FRPシートが連続的ないし断続的に貼設されている形態も好ましい。このようにFRPシートが貼設されていると、延設された強化繊維によって、横フレームに負荷された荷重のサイドフレーム側への伝達経路が効率よく形成されることになり横フレームからサイドフレーム側へと効率よく荷重が伝達されることになり、より望ましい荷重伝達経路の形成が達成される。従って、FRPシートを効率よく用いて、横フレームの高剛性化が達成される。
また、上記両サイドフレームの少なくとも一部に、強化繊維を一方向に配向させた帯状のFRPシートが連続的ないし断続的に貼設され、貼設されたFRPシートのマトリックス樹脂とサイドフレームを構成する樹脂とが一体的に接合されていることも好ましい。このような構成においては、フレーム構造体の幅方向に作用する側方荷重によって生じるサイドフレームの曲げ変形を効率よく抑えることができ、サイドフレームの剛性も効率よく容易に高められるので、フレーム構造体全体としての剛性がより望ましい剛性へと高められる。
上記両サイドフレームへのFRPシートの貼設箇所は適切に選択できるが、とくに、両サイドフレームの背もたれ前面側から後面側に回り込んで延びる周面の少なくとも上記横フレームとの接続部を含む一部に、強化繊維を一方向に配向させた帯状のFRPシートが周面に沿って連続的ないし断続的に貼設され、貼設されたFRPシートのマトリックス樹脂とサイドフレームを構成する樹脂とが一体的に接合されていると、サイドフレームのフレーム構造体前後方向の曲げ剛性を効率よく高められる。さらには、両サイドフレームの中央部からサイドフレーム前部の接続部にかけて延びるFRPシートの配置構成と併せることで、サイドフレームから横フレームにかけての荷重伝達経路も形成できるため、さらにフレーム構造体の剛性を高めることができる。
また、上記横フレームは、該横フレームを後面側より支持可能な補強部を有することもできる。このような補強部も、フレーム構造体の全体を成形する際に容易に一体に成形することが可能であり、補強部を設けることにより、横フレームの強度、剛性が適切により高められ、フレーム構造体全体としても、強度、剛性が適切により高められることになる。
上記補強部の形態としては特に限定されず、例えば、上記サイドフレーム間を延在方向とするリブの形態とすることが可能であり、また、その補強部の延在範囲についても、横フレームに対し広い範囲にわたって延在する形態、狭い範囲に局部的に存在する形態のいずれであってもよい。
また、サイドフレーム自体は、フレーム構造体全体を一体成形する観点からは極力簡素な構造であることが好ましいが、サイドフレーム自体を補強するために、サイドフレームにリブが配置されている形態を採用することも可能である。
また、上記帯状のFRPシートの強化繊維としては連続繊維からなることが好ましい。FRPシートの貼設により、少なくとも横フレームの特定箇所を補強できるとともに、横フレーム側からサイドフレーム側への望ましい荷重の伝達経路を形成することが可能であるので、補強を効率よく行い、かつ、荷重の伝達経路を効率よく形成するために、FRPシートの強化繊維としては連続繊維からなることが好ましい。FRPシートは比較的長いシートをフレーム構造体に貼り付けることが強化繊維に作用する応力の連続性を維持するために理想的である。しかし、複雑な曲面上に貼り付ける必要があるなど1枚のシートを貼設することが困難である場合には、複数枚の短いFRPシートを用いて端部を重ね合わせるなどFRPシート間の間隔を小さくしながら、断続的に繊維を連続させて貼り付ける方法を取っても良い。または、シートの一部を切断してシートを折り曲げて貼り付ける方法などを適宜選択しても良い。
また、上記貼設される帯状のFRPシートの形態としては特に限定されないが、FRPシートが上記一方向に配向させた強化繊維のシートに熱可塑性樹脂を予め含浸させたプリプレグシートであると、成形の際、該シートの目標部位への貼設、具体的には例えば一体成形での貼設のための型内への配置が、より容易化され、所望の成形をより容易に行うことが可能になる。
本発明における強化繊維としてはとくに限定されず、炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維など、さらにはそれらが混在した強化繊維の使用が可能であるが、強化繊維が炭素繊維からなると、良好な成形性を実現しつつ、優れた強度、剛性向上効果が得られることから、とくに好ましい。また、炭素繊維を使用することにより、目標とする構造設計を容易に行うことも可能となる。
また、本発明において、上記樹脂製の背もたれ用フレーム構造体を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂からなることが好ましい。熱硬化性樹脂の使用も可能であるが、良好な成形性を得るためには、熱可塑性樹脂からなることが好ましい。とくに、熱可塑性樹脂を使用することにより、射出成形できるので、大量生産の場合にあっても、所望の背もたれ用フレーム構造体を高い生産性をもって製造することが可能になる。
また、本発明においては、上記熱可塑性樹脂が不連続強化繊維を含有している形態とすることも可能である。このように構成すれば、全体として、より強度、剛性の高い背もたれ用フレーム構造体を製造可能となる。
また、本発明に係る背もたれ用フレーム構造体は、あらゆるシートに適用可能であるが、とくに、軽量化や高剛性化、生産性向上の要求が高い車両用シート、中でも自動車用シートに好適なものである。
本発明に係る背もたれ用フレーム構造体の製造方法は、上記のような背もたれ用フレーム構造体を製造する方法であって、強化繊維を一方向に配向させた帯状のFRPシートを型内に配置し、該型内に樹脂を射出して全体を一体成形することを特徴とする方法からなる。この方法以外にも、例えば樹脂フレームを成形後にFRPシートを貼設した後、熱を加えて樹脂フレームと一体化する方法も挙げられるが、あらかじめ準備した所定の帯状のFRPシートを型内に所定位置に配置し、射出樹脂とともに全体を、とくに横フレームが所定の斜行形態となるように、一体成形する方法のほうが、品質の高い背もたれ用フレーム構造体を高い生産性を持って効率よく製造できる。
本発明に係る背もたれ用フレーム構造体およびその製造方法によれば、とくに、強化繊維を配置した横フレームを、その上部で両サイドフレームの背もたれ後面側に接続し、その下部では両サイドフレームの背もたれ前面側に接続する、斜行した面状体に形成したので、フレーム構造体全体としての軽量化を達成しつつ、とくに横フレームの剛性を効率よく向上でき、かつ、横フレームからサイドフレームへの望ましい荷重伝達経路の形成が可能になり、しかも、背もたれ用フレーム構造体全体を容易にかつ安価に一体成形することが可能になる。
本発明の一実施態様に係る背もたれ用フレーム構造体の概略斜視図である。 図1の背もたれ用フレーム構造体のA−A線に沿う概略縦断面図である。 本発明の別の実施態様に係る背もたれ用フレーム構造体の概略斜視図である。 本発明のさらに別の実施態様に係る背もたれ用フレーム構造体の概略斜視図である。 本発明のさらに別の実施態様に係る背もたれ用フレーム構造体の概略斜視図である。 図3の背もたれ用フレーム構造体のB−B線に沿う拡大横断面図である。 本発明のさらに別の実施態様に係る背もたれ用フレーム構造体の背面側から見た概略斜視図である。 図7の背もたれ用フレーム構造体のC−C線に沿う断面図であり、(a)と(b)は互いに異なる横フレーム補強形態を例示している。 さらに別の横フレーム補強形態を例示した背もたれ用フレーム構造体の背面側から見た概略斜視図である。
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1、図2は、本発明の一実施態様に係る背もたれ用フレーム構造体1を示している。背もたれ用フレーム構造体1は、両側で互いに並行に延びるサイドフレーム3と、両サイドフレーム3の上部間にわたって延びる横フレーム2とが一体的に接続され、全体として門形に形成された樹脂製の背もたれ用フレーム構造体に構成されており、車両用シートに用いられるものを示している。両サイドフレーム3の下部には、該サイドフレーム3を回動可能に支持する支持部(車両用シートに設けられる支持部、図示略)との連結部4(連結用穴)が形成されている。また、本実施態様においては、横フレーム2は、サイドフレーム3の延在方向を幅方向とする面状体に形成されている。そして、サイドフレーム3側でより大きな幅を有し、両サイドフレーム3間の中央部でより小さな幅を有する形状に形成されており、とくに、下縁がアーチ形状5に形成されている。
上記横フレーム2は、その上部で両サイドフレーム3の背もたれ後面側部位6に接続し、その下部では両サイドフレーム3の背もたれ前面側部位7に接続し、図2に示す縦断面で見て、サイドフレーム3に対し滑らかに斜行する面状体に形成されている。この横フレーム2に対し、少なくとも、両サイドフレーム3間にわたって連続的ないし断続的に延びるように強化繊維、例えば炭素繊維が配置されている。
このような門形に形成された樹脂製の背もたれ用フレーム構造体1においては、横フレーム2が比較的肉厚の小さい面状体に構成されていることで、まずフレーム構造体全体としての軽量化がはかられる。また、この横フレーム2が、その上部で両サイドフレーム3の背もたれ後面側部位6に接続し、その下部では両サイドフレームの背もたれ前面側部位7に接続し、縦断面で見て両サイドフレーム3に対し滑らかに斜行する面状体に形成されることにより、図2に示すように横フレーム2の横断面でみた場合、この斜行横フレーム2の横断面はサイドフレーム3の上部におけるその背もたれ後面側と背もたれ前面側との間の幅に相当する高さHを有することになる。高さHは、実質的に横フレームの断面二次モーメントの計算上の高さに相当することになるから、比較的肉厚の小さい面状体でありながら断面二次モーメントが断面形状的に効果的に増大されることになって、横フレーム2の剛性が効率よく高められる。このような横フレーム2に、両サイドフレーム3間にわたって連続的ないし断続的に延びるように強化繊維が配置されている。横フレーム2は、前述したように、乗員の背もたれ荷重を受ける部位であり、かつ、荷重を両サイドフレーム3へと伝達する部位であり、この横フレーム2が、上記の如く斜行面状体とされることで、まず構造的に剛性が向上されて十分に高い荷重が良好に受け止められ、かつ、強化繊維が両サイドフレーム3間にわたって延びるように配置されることで、構成材料的に剛性が一層向上されるとともに、横フレーム2側から両サイドフレーム3側への荷重伝達経路、特に両サイドフレーム3の背もたれ前面側部位7への荷重伝達経路が効率よく形成される。このような門形の背もたれ用フレーム構造体1は、全体として一体成形可能であるから、優れた生産性をもって容易に製造される。さらにまた、本実施態様では、横フレーム2の下縁がアーチ状に形成されているので、横フレーム2の面積が小さくされて軽量化がはかられつつ、応力集中等が発生しにくい形状に形成され、フレーム構造体1全体の一層の軽量化がはかられている。
強化繊維の横フレームやサイドフレームへの配置については、強化繊維を一方向に配向させた帯状のFRPシートの貼設構造を採用できる。例えば図3に示すように、背もたれ用フレーム構造体21は、横フレーム22と両サイドフレーム23からなる門形のフレーム構造体に構成されるが、各サイドフレーム23は、外側方に向かって開いたコ字状の横断面を有している。この横断面構造については、図6を用いて後述する。この背もたれ用フレーム構造体21においては、強化繊維、とくに炭素繊維を一方向に配向させた複数の帯状のFRPシートが貼設されている。横フレーム22に対しては、複数のFRPシート24a、24b、25a、25b、26a、26b、27a、27bが貼設されており、このうち一部のFRPシートは他のFRPシートと交差したり、FRPシートの上端部同士が接続されたりしている。また、フレーム構造体21の幅方向に延びるFRPシートとしても複数のFRPシート28a、28b、28cが間隔を開けて貼設されている。このように複数条のFRPシートを適切に貼設した形態とすれば、より確実により大きく横フレーム22が補強されることになる。また、本実施態様においては、コ字状の横断面を有するサイドフレーム23の周面に沿ってFRPシート29が貼設されており、サイドフレーム23の外側面にはFRPシート30が貼設されている。なお、図3においては、貼設されたFRPシートは横フレーム22のフレーム構造体前面側やサイドフレーム23の側方に貼設されているが、横フレーム22の後面側やサイドフレーム23の内側側面に貼設する方法を採用しても良い。さらに、本実施態様においては、サイドフレーム23の外側面の下部側には、互いに交差して延びるリブ31が一体的に立設されており、サイドフレーム23が全体にわたって補強されている。その他の構成、作用は図1、図2に示した態様に準じる。
また、図4に示す実施態様に係る背もたれ用フレーム構造体41においては、サイドフレーム3から斜め上方に向かって延びる帯状のFRPシート42a、42bが、横フレーム2の中央部に至った後さらに延びて反対側の各サイドフレーム3側まで延びている。また、両サイドフレーム3間にわたってフレーム構造体41の幅方向に延びるFRPシート43も貼設されている。本実施態様では、FRPシート42a、42bが比較的長く延びていることにより、横フレーム2の剛性が少ないFRPシート本数にて効率よく高められている。その他の構成、作用は図1から図3に示した態様に準じる。
また、図5に示す実施態様に係る背もたれ用フレーム構造体51においては、横フレーム2に貼設されるFRPシートが、左右のサイドフレーム3から斜め上方に向かって延びるように貼設されるものの、複数の比較的短く延びるFRPシート52a、52bが貼設されている。この場合、各複数のFRPシート52a、52b貼設によって配置される強化繊維は実質的に断続的に延びることになるが、各複数のFRPシート52a、52bを、間隔を開けることなく貼設することで、十分に高い補強効果を得ることが可能である。各FRPシート52a、52bをそれぞれ短く形成しておくことで、各FRPシート52a、52bの所定部位への配置、貼設しやすくなる。また、FRPシートを貼設すべき部位が湾曲や屈曲している場合にも、その部位の形状に対応しやすくなる。また、図示例では、各サイドフレーム3のコ字状の横断面の前面側腕部に、とくに、FRPシート52a、52bとの接続部にも、短く延びるFRPシート53a、53bが貼設されており、FRPシート同士の接続強度が高められている。このような構成では、横フレーム2側からサイドフレーム3側への荷重伝達経路がより確実に形成されることになり、この荷重伝達がより確実に行われることになる。その他の構成、作用は図1から図3に示した態様に準じる。
また、好ましいサイドフレームの横断面構造としては、外側方に向けて開いたコ字状の横断面構造が挙げられる。例えば、図3の背もたれ用フレーム構造体21のサイドフレーム23のB−B線に沿って見た横断面構造32は、図6に示すようになっている。すなわち、横断面コ字状のサイドフレーム23のコ字状両腕部の外周面上にFRPシート29が貼設されており、コ字状横断面構造の底部側の外側面上にFRPシート30が貼設されている。このような構造においては、サイドフレーム23に複雑な凹凸や、互いに交差するリブ等を極力省くことが可能になるとともに、外側方に向けて型開きできるので、成形も容易化されている。
また、本発明においては、横フレームを構造的にさらに適切に補強するために、とくに、横フレームを後面側より支持可能な補強部を設けることが可能である。例えば図7に背面側から見た別の実施態様に係る背もたれ用フレーム構造体51を示すが、本実施態様においては、背もたれ用フレーム構造体51は、横フレーム52と左右のサイドフレーム53(図示例では、周面上にFRPシート54が貼設されたサイドフレーム53)から構成され、その横フレーム52の後面側(背面側)に補強部としてのリブ55が立設されている。このリブ55は、左右のサイドフレーム53間にわたって延びており、図8(a)に示すように、横フレーム52の後面から後方に向かって延びる形状に形成されている。また、このような横フレーム52を後面側より支持可能な補強部の構造としては、種々の形態を採り得、例えば図8(b)に示すように、横フレーム52の後面側に、さらに面状体からなる補強部材56がダブルシェル構造的に設けられた構造、好ましくは補強部材56も一体的に設けられた構造とすることも可能である。このような補強構造を設けるためにはフレーム構造体を射出成形する際には射出樹脂で形成しても良いし、別体で形成したものを型内で一体成形しても良い。
さらに、上記のような補強部は左右のサイドフレーム間全長にわたって延びている形態以外、適切な部位に局部的に配置された形態とすることも可能である。例えば図9に背面側から見た別の実施態様に係る背もたれ用フレーム構造体61を示すように、横フレーム62の後面側において、横フレーム62の左右両側の部位のみに、各サイドフレーム63(図示例では、周面上にFRPシート64が貼設されたサイドフレーム63)の後面部へと斜めに延びるリブ65a、65bを補強部として設けることができる。このようなリブ65a、65bは、各サイドフレーム63の後面部に対して横フレーム62を後面側から突っかい棒のように支えることができ、横フレーム62の剛性を効率よく高めることができるとともに、門形形状の背もたれ用フレーム構造体61全体の剛性も効率よく高めることができる。このように、本発明において、横フレームの後面側からの補強は種々の形態を採ることができる。
本発明に係る背もたれ用フレーム構造体およびその製造方法は、とくに軽量化が望まれるあらゆるシートに適用可能であり、とくに、車両用シートに好適なものである。
1、21、41、51、61 背もたれ用フレーム構造体
2、22、52、62 横フレーム
3、23、53、63 サイドフレーム
4 連結部
5 アーチ形状
6 背もたれ後面側部位
7 背もたれ前面側部位
24a、24b、25a、25b、26a、26b、27a、27b、28a、28b、28c、29、30、42a、42b、43、52a、52b、53a、53b、54、64 FRPシート
31 リブ
32 横断面構造
55、65a、65b リブ
56 補強部材

Claims (21)

  1. 両側で互いに並行に延びるサイドフレームと、両サイドフレームの上部間にわたって面状に延びる横フレームとが一体的に接続され、全体として門形に形成された樹脂製の背もたれ用フレーム構造体であって、前記横フレーム、その上部で前記両サイドフレームの背もたれ後面側に接続され、その下部では前記両サイドフレームの背もたれ前面側に接続され、縦断面で見て両サイドフレームに対し滑らかに斜行する面状体に形成されるとともに、該横フレームに対し、少なくとも、両サイドフレーム間にわたって連続的ないし断続的に延びるように強化繊維配置されたことを特徴とする背もたれ用フレーム構造体。
  2. 前記横フレームは、サイドフレーム側でより大きな幅を有し、両サイドフレーム間の中央部でより小さな幅を有している、請求項1に記載の背もたれ用フレーム構造体。
  3. 前記横フレームの下縁がアーチ状に形成されている、請求項2に記載の背もたれ用フレーム構造体。
  4. 前記サイドフレームが、外側方に向かって開いたコ字状の横断面を有している、請求項1〜3のいずれかに記載の背もたれ用フレーム構造体。
  5. 前記サイドフレームの下部に、該サイドフレームを回動可能に支持する支持部との連結部が形成されている、請求項1〜4のいずれかに記載の背もたれ用フレーム構造体。
  6. 前記横フレーム表面上に、強化繊維を一方向に配向させた帯状のFRPシートが貼設され、貼設されたFRPシートのマトリックス樹脂と横フレームを構成する樹脂とが一体的に接合されている、請求項1〜5のいずれかに記載の背もたれ用フレーム構造体。
  7. 前記横フレームのFRPシート貼設部の少なくとも一部において、前記強化繊維が前記両サイドフレーム間中央部から前記横フレームと前記サイドフレーム前面側との接続部にかけて延びるように前記FRPシートが連続的ないし断続的に貼設されている、請求項6に記載の背もたれ用フレーム構造体。
  8. 前記横フレームのFRPシート貼設部の少なくとも一部において、前記強化繊維が前記フレーム構造体の幅方向に略平行に延びるように前記FRPシートが連続的ないし断続的に貼設されている、請求項6または7に記載の背もたれ用フレーム構造体。
  9. 前記横フレームのFRPシート貼設部の少なくとも一部において、前記強化繊維が前記フレーム構造体の幅方向に斜行する方向に延びるように前記FRPシートが連続的ないし断続的に貼設されている、請求項6〜8のいずれかに記載の背もたれ用フレーム構造体。
  10. 前記両サイドフレームの少なくとも一部に、強化繊維を一方向に配向させた帯状のFRPシートが連続的ないし断続的に貼設され、貼設されたFRPシートのマトリックス樹脂とサイドフレームを構成する樹脂とが一体的に接合されている、請求項1〜9のいずれかに記載の背もたれ用フレーム構造体。
  11. 前記両サイドフレームの背もたれ前面側から後面側に回り込んで延びる周面の少なくとも前記横フレームとの接続部を含む部位に、強化繊維を一方向に配向させた帯状のFRPシートが周面に沿って連続的ないし断続的に貼設され、貼設されたFRPシートのマトリックス樹脂とサイドフレームを構成する樹脂とが一体的に接合されている、請求項1〜10のいずれかに記載の背もたれ用フレーム構造体。
  12. 前記横フレームは、前記横フレームを後面側より支持可能な補強部を有する、請求項1〜11のいずれかに記載の背もたれ用フレーム構造体。
  13. 前記補強部は、前記サイドフレーム間を延在方向とするリブである、請求項12に記載の背もたれ用フレーム構造体。
  14. 前記サイドフレームにリブが配置されている、請求項1〜13のいずれかに記載の背もたれ用フレーム構造体。
  15. 前記帯状のFRPシートの強化繊維が連続繊維からなる、請求項6〜9のいずれかに記載の背もたれ用フレーム構造体。
  16. 前記帯状のFRPシートが、前記一方向に配向させた強化繊維のシートに熱可塑性樹脂を予め含浸させたプリプレグシートである、請求項6〜9、15のいずれかに記載の背もたれ用フレーム構造体。
  17. 前記強化繊維が炭素繊維からなる、請求項1〜16のいずれかに記載の背もたれ用フレーム構造体。
  18. 前記樹脂製の背もたれ用フレーム構造体を構成する樹脂が熱可塑性樹脂からなる、請求項1〜17のいずれかに記載の背もたれ用フレーム構造体。
  19. 前記熱可塑性樹脂が不連続強化繊維を含有している、請求項18に記載の背もたれ用フレーム構造体。
  20. 車両用シートに用いられる、請求項1〜19のいずれかに記載の背もたれ用フレーム構造体。
  21. 強化繊維を一方向に配向させた帯状のFRPシートを型内に配置し、該型内に樹脂を射出して全体を一体成形することを特徴とする、請求項1〜20のいずれかに記載の背もたれ用フレーム構造体の製造方法。
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