JP6266320B2 - シートフレーム - Google Patents

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Description

本発明は、乗員が着座する車両用シートに備えられるシートフレームに係り、特に、樹脂材料からなるフレーム片を組み合せて形成されるシートフレームに関する。
一般に、車両用シートは、骨格となるフレームにクッション材を配設するとともにこのクッション材を表皮材で被覆することにより構成される。
この骨格となるフレームは、通常、着座部の骨格となるシートクッションフレームと、背もたれの骨格となるシートバックフレームとにより構成され、このシートクッションフレームの後端部とシートバックフレームの下端部とが、直接的若しくは間接的(例えば、リクライニング機構を介して間接的に)取付けられて構築される。
これらのフレームには、骨格となる構成のみならず、様々な部材が配設されており、これらの部材が様々な機能を発揮することとなる。
このような、乗員を支持するための機能としては、例えば、一般的に、シートバックフレームの上方に、乗員の頭部をホールドするヘッドレストを取付けるための取付部が形成される。
このようなフレームを形成するにあたり、乗員の体重を支持するという観点から、高い剛性が求められるが、これととともに、車両用シート自体の軽量化も求められており、一般的に相反する両要求を充足する技術の開発が必要であった。
このような状況下、フレームの軽量化と剛性を同時に確保するための技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の技術によれば、シートバックフレームを構成するサイドフレーム外側及びクッションシートフレームを構成するサイドフレーム外側に、斜張ワイヤを配設し、この斜張ワイヤに、車両前方側への衝撃荷重と車両後方側への衝撃荷重との差分を負担させる。
また、サイドフレームの車両後端部の縁部周りに高さ方向に沿って延びる閉断面構造を設けることにより、最小断面二次半径を局所的に増大する。
このような構造により、特許文献1の技術によれば、フレームの剛性を確保することが可能となる。
また、軽量の斜張ワイヤ以外に補強のための部品が不要となるため、軽量化に寄与することができる。
また、近年、成形性や軽量性の観点から、フレームの材質として樹脂材料が用いられてきている傾向がある(例えば、特許文献2参照)。
この特許文献2の技術では、樹脂成形品からなる内側半体と外側半体とを組付けることにより、中空の閉断面形状のフレームが形成される。
そして、この組付けは、外側半体に形成された溶着用突条と、内側半体に形成された溶着用受部と、を振動溶着することにより接合することにより実現される。
このように、特許文献2に係る技術によれば、金属材料に替えて軽量な樹脂材料を使用することができるため、軽量化を実現することができる。
特開2011−001008号公報 特開2004−322881号公報
このように、シートフレームにおいては、強度及び軽量化を両立させることが必要であるが、特許文献1の技術では、斜張ワイヤを配設する必要があるため、部材点数が多くなり製造作業性が低下する。
また、縁部に閉断面形状を形成する等、成形に手間がかかる。
更に、特許文献2のように、シートフレームを樹脂化することによって軽量化を実現することができるが、樹脂は金属よりも剛性が低いため、剛性面に対する更なる工夫が必要である。
特に、中空閉断面形状のシートフレームにおいては、中空であるため、剛性を確保する工夫が一層必要となる。
昨今、成形性や軽量性の観点からシートフレームの材質として樹脂材料が用いられてきており、このような樹脂材料で形成されたフレーム本体は、樹脂成形品からなる内側半体と外側半体とを組付けることにより、中空の閉断面形状が形成されることがある。
このような状況下において、樹脂材料を使用してシートフレームを形成して軽量化を図るとともに、より一層高い剛性を確保することが必要となっている。
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、樹脂材料からなり、高い剛性を確保することが可能なシートフレームを提供することにある。
前記課題は、本発明のシートフレームによれば、乗員が着座する車両用シートの骨格を構成し、中空閉断面形状に形成された樹脂製のシートフレームであって、該シートフレームは、乗員の後背部を支持するシートバックフレームと、乗員の臀部を支持するシートクッションフレームと、有し、前記シートバックフレームは、前方を構成するフロントフレームと、後方を構成するリアフレームとを組み合せて形成される中空閉断面状のフレーム本体を備えており、前記シートバックフレームは、車両幅方向に離隔するとともに上下方向に延びて側方を規定する2個のサイドフレームを有し、前記フロントフレームは、前記サイドフレームの前方側を構成する2個のフロント側サイドフレームを有し、前記リアフレームは、前記サイドフレームの後方側を構成する2個のリア側サイドフレームを有し、前記シートフレームの少なくとも一部を構成する樹脂素材は、繊維方向が一方向に沿って走る繊維方向配向性を有する炭素繊維樹脂である一方向材を少なくとも含有して構成されており、前記一方向材の繊維が走る向きは、引張力が付加される方向に沿うよう構成されており、前記フロント側サイドフレームは、上下方向に炭素繊維が走る前記一方向材で構成されるとともに、前記リア側サイドフレームは、炭素繊維が編まれたクロス材で構成されていることで解決される。
このように、本発明においては、シートフレームを構成する樹脂の少なくとも一部に一方向材を使用した。
このため、単なる樹脂素材を使用するよりも高い強度を実現することができる。
具体的には、炭素繊維が一方向に沿って走るように整列した一方向材を使用することとした。
このため、引張力が付加される方向に沿って一方向材を配置すれば、引張力に対する強度を高くすることができ、付加力に対し強度の高いシートフレームを提供することができる。
また、このように構成されていると、上下方向への引張力が付加されるフロント側サイドフレームには、当該方向に炭素繊維が走る一方向材を使用し、伸縮力が付加されるリア側サイドフレームには、当該力により抗えるようにクロス材を使用することができる。
よって、各方向への付加力に対して高い強度を確保し、より強度の高いシートフレームを提供することができる。
また、前記シートバックフレームは、2個の前記サイドフレームの上方部を連結する上部フレームをさらに有し、前記フロントフレームは、2個の前記フロント側サイドフレームと、前記上部フレームの前方側を構成するフロント側上部フレームと、により逆U字形状に形成されている。
このように構成されているため、上下方向への引張力が付加されるシートバックフレームのサイドフレームの強度を同方向に対して高めることができる。
また、この引張力は、サイドフレームの前方面に主として付加され、後方面には伸縮力がかかるため、一方向材の炭素繊維が走る方向をフロント側サイドフレームに適用することにより、効率的にサイドフレームの強度を高めることができる。
体的構成として、前記一方向材は、前記サイドフレームと前記上部フレームとの連続部まで延びて配設されていると好適である。
また更に詳細な構成として、前記上部フレームは、一方の前記サイドフレームの上端部から内側方向に向けて屈曲して他方の前記サイドフレームに向けて延びており、前記一方向材は、前記サイドフレームの上端部から前記上部フレームに向かう屈曲部分の屈曲形状に沿って延びていること好適である。
更に、前記サイドフレームには、2個の該サイドフレーム間に架け渡されて乗員の背部を支持する乗員支持部材が掛着される乗員支持部材取付部が形成されており、前記一方向材は、少なくとも前記乗員支持部材取付部が形成される箇所にまで延設されると好適である。
このように構成されていると、総合的に強度の高いシートバックフレームを構成することが可能となるため好適である。
また、前フロント側サイドフレームの少なくとも一部を構成する樹脂素材としては、前記一方向材と、炭素繊維が編まれたクロス材とを積層させた積層樹脂素材が少なくとも一部に使用されていると好適である。
このように、シートフレームを構成する樹脂の少なくとも一部を積層樹脂素材としたことにより、単一の樹脂素材を使用するよりも高い強度を実現することができる。
具体的には、炭素繊維が一方向に沿って走るように整列した一方向材と、炭素繊維が格子状に編まれたクロス材を積層させて使用することとした。
このため、引張力が付加される方向に沿って一方向材を配置すれば、引張力に対する強度を高くすることができるとともに、格子状に繊維が走るクロス材によって当該繊維方向への強度もまた高くすることができる。
このように構成することにより、各方向への付加力に対し強度の高い積層樹脂素材を形成することができ、よって、シートフレームの強度が向上する。
更に、前記積層樹脂素材は、前記クロス材が表面層となるように積層されると好適である。
このように構成されているため、例えば、積層樹脂素材に部材配設用の孔等を穿孔した際に、カット面に損傷が発生したりすることを有効に防止することができる。
本発明によれば、引張力に対し強度の高い一方向材を使用し、これにより、シートフレームの強度を向上させることができる。
本発明によれば、上下方向への引張力が付加されるシートバックフレームのサイドフレームより詳細には、フロント側サイドフレームの強度を同方向に対して高めることができる。
本発明によれば、総合的に強度の高いシートバックフレームを構成することができる。
本発明によれば、各方向への付加力に対し強度の高い積層樹脂素材を形成することができ、よって、シートフレームの強度が向上する。
本発明によれば、表面に損傷が発生することを有効に防止することができる。
本発明によれば、力の付加構成がなるフロント側とリア側に異なる繊維走行構成の樹脂を使用し、各方向への付加力に対して高い強度を確保することができ、よって、より強度の高いシートフレームを提供することができる。
本発明の一実施形態に係る車両用シートの外観図である。 本発明の一実施形態に係る車両用シートのシートフレームを示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係るシートフレームの説明図である。 本発明の一実施形態に係るシートバックフレームの分解図である。 本発明の一実施形態に係るシートバックフレームの力後方入力時の引張荷重付加方向を示す説明図である。 図3のX部拡大模式図である。 本発明の一実施形態に係るシートバックフレームの各素材配置構成を示す断面説明模式図である。 本発明の一実施形態に係るシートバックフレームの各素材配置構成を示す側面説明図である。 本発明の一実施形態に係るシートクッションフレームの繊維配置構成を示す断面説明模式図である。 本発明の一実施形態に係るピラー配設部への補強構造を示す説明図である。
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る車両用シートについて、図1乃至図10を参照しながら説明する。
図1乃至図10は、本発明の一実施形態を示すものであって、図1は車両用シートの外観図、図2は車両用シートのシートフレームを示す斜視図、図3はシートフレームの説明図、図4はシートバックフレームの分解図、図5はシートバックフレームの力後方入力時の引張荷重付加方向を示す説明図、図6は図3のX部拡大模式図、図7はシートバックフレームの各素材配置構成を示す断面説明模式図、図8はシートバックフレームの各素材配置構成を示す側面説明図、図9はシートクッションフレームの繊維配置構成を示す断面説明模式図、図10はピラー配設部への補強構造を示す説明図である。
ここで、以下の説明中、車両用シートの前後方向とは、車両の進行方向に一致する方向のことであり、以下では単に前後方向と呼ぶ。
また、車両用シートの幅方向とは、車両の横幅に沿う方向と一致する方向のことであり、以下では単に幅方向と呼ぶ。また、上下方向とは、車両の上下方向のことである。
なお、以下の説明では、特に断る場合を除き、車両内において車両用シートが使用状態、すなわち、乗員が車両用シートに着座している状態にあるときの構成を示し、以下の説明で述べる方向や位置は、上記の状態における方向や位置であることとする。
また、本発明の一実施形態について、図を参照して説明するが、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、実施形態としての好適な一例であり、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることはもちろんである。
<<車両用シートSの基礎構成>>
図1及び図2を参照して、実施形態に係る車両用シートSについて説明する。
本発明の実施形態(以下、本実施形態)に係る車両用シートSは、車両の乗員が着座するものである。
車両用シートSは、図1に示すように、乗員が凭れ掛かるシートバックS1、乗員の臀部が載置されるシートクッションS2、及び、乗員の頭部を支えるヘッドレストS3を構成要素として備える。
このように、本実施形態に係る車両用シートSは、シートバックS1(背部)、シートクッションS2、ヘッドレストS3より構成されており、シートバックS1(背部)及びシートクッションS2は、シートバックフレーム1及びシートクッションフレーム2に不図示のクッションパッドを載置して、表皮材で被覆されている。
なお、ヘッドレストS3は、頭部の芯材(不図示)に不図示のクッションパッド材を配して、表皮材で被覆して形成される。また符号HPは、ヘッドレストS3を支持するヘッドレストピラーである。
本実施形態に係る車両用シートSのシートフレームFは、図2に示すように、シートバックS1を構成するシートバックフレーム1と、シートクッションS2を構成するシートクッションフレーム2と、を主要構成として有して構成されている。
<シートクッションフレームについて>
本実施形態に係るシートクッションフレーム2は、図2に示すように、平面視で略U字形状の枠体をなすように形成されており、特に本実施形態では、樹脂材料としての炭素繊維強化プラスチック(CFRP)にて一体成形されている。
シートクッションフレーム2は、幅方向に平行に離隔するとともに前後方向に延出した2個のシートクッションサイドフレーム部2aと、これらシートクッションサイドフレーム部2aの前方を架橋するように構成される板状の架設パン部2bによって、平面視で略U字形状の枠体として形成される。
また、2個のシートクッションサイドフレーム部2aの後端側は連結パイプ2cにより架橋連結されている。
更に図示は省略するが2個のシートクッションサイドフレーム部2aの前端側はサブマリン抑制パイプにより架橋されている。このサブマリン抑制パイプは、車両用シートSの幅方向一端から他端に亘って伸びたパイプ部材であり、衝突時等の強い衝撃を受けた際に車両用シートSの前方側を高く保ち、所謂「サブマリン現象」を抑制する。
このシートクッションフレーム2は脚部で支持されており、この脚部は、スライドレール装置4が連結されている。
このスライドレール装置4は、公知の装置が使用されており、例えば、車体フロアに固定されたアウタレール4Aに対して、インナレール4Bが前後方向にスライドするように構成されている。
シートクッションフレーム2の脚部は、このインナレール4Bに取付けられ、車体フロアに設置されるアウタレールとの間で前後方向に摺動するインナレール4Bに連動して、前後に位置調整を行うことが可能となる。
また、双方のインナレール4B,4B前端を連結するように操作レバー4Cが配設されている。
この操作レバー4Cは、略U字形状に屈曲したパイプ状の部材であり、その両自由端側が双方のインナレール4B,4Bに固定される。
またシートクッションフレーム2の後端部は、本例においては、リクライニング機構Kを介してシートバックフレーム1と連結されている。
リクライニング機構を使用する場合は、公知の機構が採用されていればよい。
なお、シートクッションフレーム2及びリクライニング機構については、公知のものが使用されていればよく、今回の出願の内容とは直接関係しないため、詳細な説明は省略する。
<シートバックフレームについて>
次いで、本実施形態に係るシートバックフレーム1を説明する。
なお、本実施形態においては、シートバックフレーム1に本願発明を適用した例を説明するが、これに限られるものではなく、他のフレームにおいても使用することができる。
シートバックフレーム1は、図2乃至図4に示すように、正面視で矩形状の枠体をなすフレーム本体10と、フレーム本体10の上下方向に架け渡される2本の乗員支持部材3とを有して構成される。
フレーム本体10には、この乗員支持部材3を係着するための乗員支持部材取付部31が4個形成されている。
この乗員支持部材取付部31は、左右方向片側に2個ずつ形成されている。
フレーム本体10は、図4(b)に示すように前後2つに分割されて構成されている。
つまり、フレーム本体10は、前方部を構成する略矩形枠体のフロントフレーム14と、後方部を構成する略矩形枠体のリアフレーム15と、を組合せることにより形成されている。
従来においては、図4(a)に示すように、フレーム本体は、金属製素材でできた各パーツ(上部フレーム、サイドフレーム、下部フレーム、ピラー支持部材となるパーツ)を溶接により連結することで構成されていた。
この場合には、8個の部品が必要であり、その各々に対して溶接作業を行う手間がかかる。
しかし、本実施形態においては、フロントフレーム14及びリアフレーム15を組合わせることによってフレーム本体10を構成することができるため、部品は2個で足りる(なお、両者を組合わせることによって、ピラー支持部もまた形成されるように成形されている)。
よって、部品点数を大きく減らすことができるとともに、作業効率もまた向上する。
本実施形態においては、フロントフレーム14及びリアフレーム15は、いずれも、樹脂材料としてのCFRPからなり、金型成形によって成形されている。
また、フロントフレーム14及びリアフレーム15は、樹脂材料からなるシートをフレーム形状に合わせて積層させて金型にセットして成形を行っている。
なお、この樹脂層の構成については、本発明の主要構成要素であるため、後に詳述する。
なお、以下、説明のため、フレーム本体10の上部を形成する略台形状の部分を「上部フレーム11」と、幅方向において互いに離れた状態で一対配設される部分を「サイドフレーム12」と、サイドフレーム12の下端部同士を連結する部分を「下部フレーム13」と、記し、上記の通り、これらにより、正面視において略矩形枠体を構成する。
そして、フロントフレーム14及びリアフレーム15は、当然のことながら、いずれも、上部フレーム11に対応する部分、サイドフレーム12に対応する部分、及び、下部フレーム13に対応する部分を有している。
ここで、上部フレーム11に対応する部分とは、各フロントフレーム14及びリアフレーム15中、フロントフレーム14及びリアフレーム15同士が組み合わさった際に上部フレーム11を構成する部分のことであり、当該部分のフロント側を「フロント側上部フレーム141」と、当該部分のリア側を「リア側上部フレーム151」と記す。
同様に、サイドフレーム12に対応する部分とは、各フロントフレーム14及びリアフレーム15中、フロントフレーム14及びリアフレーム15同士が組み合わさった際にサイドフレーム12を構成する部分のことであり、当該部分のフロント側を「フロント側サイドフレーム142」と、当該部分のリア側を「リア側サイドフレーム152」と記す。
更に同様に、下部フレーム13に対応する部分とは、フロントフレーム14及びリアフレーム15同士が組み合わさった際に下部フレーム13を構成する部分のことであり、フロント側を「フロント側下部フレーム143」と、リア側を「リア側下部フレーム153」と記す。
なお、本例においては、フロント側下部フレーム143は、フロント側サイドフレーム142,142の下端を完全に架橋しているのではなく、中央部が切り欠かれた状態となっている。
そして、図4に示すように、フロントフレーム14及びリアフレーム15同士が組み合わさると、中空状のフレーム本体10が形成され、より具体的に説明すると、例えば、サイドフレーム12の水平面で切断した際の断面については閉断面構造となる。
乗員支持部材3は、上部フレーム11と下部フレーム13とを架橋するように渡されて、本例においては、幅方向に並列して2個備えられる。
本実施形態では、フレーム本体10の上部フレーム11、サイドフレーム12及び下部フレーム13によって囲まれた略方形状の孔内に乗員支持部材3が配置される。
乗員支持部材3は、通常時には車両用シートSに着座した乗員を背側から支持する。
なお、上述した通り、シートバックフレーム1の下端側(詳しくは、サイドフレーム12,12の下端側)は、シートクッションフレーム2の後端部と、本例では、リクライニング機構Kを介して連結されている。
<樹脂素材の構成について>
図5乃至図10により、本実施形態に係る樹脂素材の構成について説明する。
以下、本実施形態に係る樹脂素材をシートバックフレーム1に適用した例を示す。
図5(a)に示すように、シートバックフレーム1には、着座者が凭れ掛かるため、後方入力F1の力が一般的に付与される。
このように、図5(b)のサイドフレーム12の内、特にフロント側サイドフレーム142に引張力F2が主として付加されることとなる。
本実施形態における当該部分の樹脂構成を図6により示す。
図6は、図3のX部の拡大模式図である。
本実施形態においては、クロス材M1及び一方向材M2(以下、「UD材M2」(uni-direction material)と記す)が積層されて積層樹脂素材Mを構成している。
なお、クロス材M1とは、CFRP素材において、炭素繊維が格子状に配向された素材である。
また、UD材M2とは、CFRP素材において、炭素繊維が一方向に配向された素材である。
本実施形態においては、図6に示すように、クロス材M1を3層、UD材M2を2層積層した5層構造が採用されている。
つまり、クロス材M1、UD材M2、クロス材M1、UD材M2、クロス材M1の順に5層積層して構成された積層樹脂素材Mが採用されている。
そして、この際、UD材M2の炭素繊維が走る繊維方向は、引張力F2の方向に沿うように配置される。
なお、本実施形態においては、好適に使用できる例として、上記5層構造を例示したが、層構造はこれに限られるものではない。
以下、図7乃至図9により、当該部分の積層樹脂素材Mの構成について、必要な条件の詳細な例を説明する。
図7は、図3のY−Y線断面を示す模式図であり、ペケ印がクロス材M1を示し、黒丸がUD材M2を示す。
いずれも共通であるのは、UD材M2の炭素繊維が走る繊維方向は、引張力F2の付加される方向(サイドフレーム12に関しては、車両上下方向である)に沿っていることである。
図7(a)に示す例では、フロント側サイドフレーム142の前方側の面にUD材M2を配置し、当該前方側の上下方向に走る繊維の密度を多くしている。
このように構成することによって、フロント側サイドフレーム142の表面側において、上下方向に付加される引張力に対する強度が強くなる。
なお、本例においては、リア側サイドフレーム152において、フロント側サイドフレーム142との連結部端部は、フロント側サイドフレーム142の前面部分と車両左右方向ではラップしていない。
しかし、図7(a)のR部に示すように、リア側サイドフレーム152において、フロント側サイドフレーム142との連結部を、UD材M2が配置されているフロント側サイドフレーム142の前面部分まで延出させる(つまり、この連結部の端部をフロント側サイドフレーム142の前面部分と車両左右方向でラップするように延出させる)と、より高い強度を確保することが可能となり好適である。
また、図7(b)に示す例では、フロント側サイドフレーム142の前方側の面にクロス材M1を配置し、その他の層(つまり、内側に積層される層)にUD材M2を配置する構成である。
この構成により、フロント側サイドフレーム142の前面がクロス材M1で構成されるため、例えば、フロント側サイドフレーム142に部品取付用の孔等を穿孔した際に、カット面にささくれが発生したり、亀裂が発生することを有効に防止することができる。
また、UD材M2は、内側の層に配置され、上下方向に炭素繊維が走っているため、上下方向の引張力に対する強度もまた確保することができる。
この際、UD層M2は、フロント側サイドフレーム142の前面表面により近い2層目に配置されると好適である。
図7(c)に示す例では、UD材M2の炭素繊維密度に差を設けた。
つまり、フロント側サイドフレーム142の前面には、上下方向に走る炭素繊維の密度が高くなるよう構成し、後方へ向けて屈曲した部分に走る炭素繊維の密度が低くなるよう構成した。
このように構成することで、衝撃耐性を向上させるとともに、大型化を抑制することができる。
図7(d)に示す例では、フロント側サイドフレーム142の前面部において、表裏面側にクロス材M1,M1を各々配置するとともに、これらクロス材M1,M1でUD材M2を挟持するような構成をとる。
このように構成することで、例えば、フロント側サイドフレーム142に部品取付用の孔等を穿孔した際に、カット面にささくれが発生したり、亀裂が発生することを、表裏面共に有効に防止することができる。
図7(e)に示す例では、フロント側サイドフレームの前面側表面と、リア側サイドフレームの後面側表面と、双方にUD材M2を配置し、上下方向に走る炭素繊維を多く配している。
なお、サイド部分の表面には、クロス材M1が配設されている。
次いで、図8の例を説明する。
図8の例は、乗員支持部材3に替えて、受圧部材(図示は省略する)が配置されている場合の例である。
この場合、サイドフレーム12には、移動部材を回動可能に軸支する凸部12aが形成されている。
図示は省略するが、この受圧部材は、フレーム本体10の上部フレーム11、サイドフレーム12及び下部フレーム13によって囲まれた略方形状の孔内に配置される。
受圧部材からは、車両幅方向にワイヤが突出しており、このワイヤの端部は、凸部12aに軸支された移動部材(図示せず)に取付けられている。
そして、移動部材は、後面衝突等により所定以上の衝撃荷重が受圧部材に加わったときに、ワイヤを介して伝わる衝撃荷重により乗物後方に移動すると共に受圧部材を後方へ移動させ、乗員を後方へ移動するものである。この移動部材の乗物後方への移動により受圧部材を乗物後方へ大きく移動させることができ、その結果、乗員を後方へ移動させるため、乗員にかかる荷重を効率的に低減することができる。
本実施形態においては、図8に示すように、この凸部12aを通る鉛直線L(車両フロアに対して鉛直な方向の線)を引いた場合、この鉛直線Lに対し、凸部12aよりも後方部分T1においては、その前方部分よりも上下方向に走る炭素繊維の数が少なくなるように構成されている。
これにより、強い衝撃荷重が受圧部材に付加された際に、より効率良く沈み込み量を確保することができる。
図8(a)に示す後方部分T1は、当該部分において、上下方向に走る炭素繊維の数が少なくなる例を示したものであり、図8(b)の後方部分T2においては、炭素繊維が前後方向に走る例を示したものである。
図8(b)に係る例では、炭素繊維を前後方向に走るように形成したことにより、強い衝撃荷重が受圧部材に付加された際に、より効率良く沈み込み量を確保することができる。
また、炭素繊維の数を前方部分よりも少なくすることにより、更により効率良く沈み込み量を確保することができる。
図8(c)の例では、乗員支持部材取付部31の後方部分T3の炭素繊維の数を前方部分よりも少なくした例である。
このように構成されているため、強い衝撃荷重が乗員支持部材3に付加された際に、より効率良く沈み込み量を確保することができる。
次いで、図9において、シートクッションフレーム2への適用について説明する。
図9(a)例では、シートクッションフレーム2の架橋パン2bに対し、車両左右方向に走る炭素繊維が多くなうように、UD材M2を使用している。
この構成により、所謂「サブマリン現象」を抑制する効果を得ることができる。
また、この際、シートクッションフレーム2の開口部分(つまり、U字形状の内側部分)端部に沿う位置において、車両左右方向に炭素繊維が走るようUD材M2を配置すると好適である。
換言すれば、開口部分の前方側において、車両左右方向に炭素繊維が走るようUD材M2を配置すると好適である。
なお、図9(b)に示すように、シートクッションフレーム2に、臀部受部として凹部を設けた場合には、この凹部の形状に沿って炭素繊維が走るようにUD材M2を配置すると好適である。
また、車両左右方向を対称にして配置すると好適である。
なお、本例においては、いずれも共通であるのは、UD材M2の炭素繊維が走る繊維方向は、引張力F2の付加される方向(サイドフレーム12に関しては、車両上下方向である)に沿っていることであった。
しかし、完全に引張力F2に沿うのではなく、引張力F2が走る方向に比して若干角度を成した方向に炭素繊維が走る構成であってもよい。
このように構成することによって、捻り力が加わる場所においては、この捻り力にも強度が確保できるため好適である。
次いで、図10により、ピラー配設部Pへの補強構造を説明する。
この例においては、四角筒状の補強部材P1をUD材M2にて作成し、ピラー配設部Pの外周を被覆するように補強部材P1を配設する。
このとき、UD材M2の炭素繊維が走る方向は周方向に沿うように設定される。
つまり、図10(b)の矢印に示すように、周方向に沿うように炭素繊維が走っている。
なお、図10(b)は、周方向に炭素繊維が走ることを視覚的に示すために矢印を記したものであり、この矢印が示すものは「炭素繊維が周方向に走る」という概念のみである。
つまり、一方向を示したものではなく、ベクトル的な意味はない。
これにより、ピラー配設部Pの強度をより高く確保することができる。
なお、一方向材M2の配設範囲に関してであるが、一方向材M2は、少なくとも、サイドフレーム12と上部フレーム11との連続部まで延びて配設される。
より好適には、フロント側サイドフレーム142とフロント側上部フレーム141との連続部まで延びて配設される。
また、サイドフレーム12と上部フレーム11との連続部に形成される屈曲部分(より好適には、フロント側サイドフレーム142とフロント側上部フレーム141との連続部に形成される屈曲部分)においては、この屈曲形状に沿って炭素繊維が走るように構成されている。
これにより、より高い強度を実現することができる。
更に、乗員支持部材取付部31が形成される位置まで、一方向材M2が延びていると、荷重付加部分を強化することができるためより好適である。
また、更に、好適な適用例としては、フロント側サイドフレーム142に一方向材M2若しくは一方向材M2とクロス材M1との積層樹脂素材Mを使用し(炭素繊維は上下方向に走っている)、リア側サイドフレーム152には、クロス材M1のみを使用してもよい。
このように構成することにより、上下方向への引張力がより付加されるフロント部分には、上下方向を強化する一方向材M2を使用し、伸縮力がかかるリア側にはクロス材M1を使用できるため、より効率的に強度を高めることができる。
S 車両用シート
S1 シートバック
S2 シートクッション
S3 ヘッドレスト
F シートフレーム
1 シートバックフレーム
10 フレーム本体
11 上部フレーム
12 サイドフレーム
12a 凸部
13 下部フレーム
14 フロントフレーム
141 フロント側上部フレーム
142 フロント側サイドフレーム
143 フロント側下部フレーム
15 リアフレーム
151 リア側上部フレーム
152 リア側サイドフレーム
153 リア側下部フレーム
P ピラー配設部
P1 補強部材
2 シートクッションフレーム
2a シートクッションサイドフレーム部
2b 架設パン部
2c 連結パイプ
3 乗員支持部材
31 乗員支持部材取付部
4 スライドレール装置
4A アウタレール
4B インナレール
4C 操作レバー
K リクライニング機構
M 積層樹脂素材
M1 クロス材
M2 UD材(一方向材)
HP ヘッドレストピラー

Claims (7)

  1. 乗員が着座する車両用シートの骨格を構成し、中空閉断面形状に形成された樹脂製のシートフレームであって、
    該シートフレームは、乗員の後背部を支持するシートバックフレームと、乗員の臀部を支持するシートクッションフレームと、有し、
    前記シートバックフレームは、前方を構成するフロントフレームと、後方を構成するリアフレームとを組み合せて形成される中空閉断面状のフレーム本体を備えており、
    前記シートバックフレームは、車両幅方向に離隔するとともに上下方向に延びて側方を規定する2個のサイドフレームを有し、
    前記フロントフレームは、前記サイドフレームの前方側を構成する2個のフロント側サイドフレームを有し、
    前記リアフレームは、前記サイドフレームの後方側を構成する2個のリア側サイドフレームを有し、
    前記シートフレームの少なくとも一部を構成する樹脂素材は、繊維方向が一方向に沿って走る繊維方向配向性を有する炭素繊維樹脂である一方向材を少なくとも含有して構成されており、
    前記一方向材の繊維が走る向きは、引張力が付加される方向に沿うよう構成されており、
    前記フロント側サイドフレームは、上下方向に炭素繊維が走る前記一方向材で構成されるとともに、前記リア側サイドフレームは、炭素繊維が編まれたクロス材で構成されていることを特徴とするシートフレーム。
  2. 記シートバックフレームは、2個の前記サイドフレームの上方部を連結する上部フレームをさらにし、
    前記フロントフレームは、2個の前記フロント側サイドフレームと、前記上部フレームの前方側を構成するフロント側上部フレームと、により逆U字形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシートフレーム。
  3. 前記一方向材は、前記サイドフレームと前記上部フレームとの連続部まで延びて配設されていることを特徴とする請求項に記載のシートフレーム。
  4. 前記上部フレームは、一方の前記サイドフレームの上端部から内側方向に向けて屈曲して他方の前記サイドフレームに向けて延びており、
    前記一方向材は、前記サイドフレームの上端部から前記上部フレームに向かう屈曲部分の屈曲形状に沿って延びていることを特徴とする請求項2又は3に記載のシートフレーム。
  5. 前記サイドフレームには、2個の該サイドフレーム間に架け渡されて乗員の背部を支持する乗員支持部材が掛着される乗員支持部材取付部が形成されており、
    前記一方向材は、少なくとも前記乗員支持部材取付部が形成される箇所にまで延設されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシートフレーム。
  6. 前記フロント側サイドフレームの少なくとも一部を構成する樹脂素材としては、
    前記一方向材と、炭素繊維が編まれたクロス材とを積層させた積層樹脂素材が少なくとも一部に使用されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシートフレーム。
  7. 前記積層樹脂素材は、前記クロス材が表面層となるように積層されることを特徴とする請求項に記載のシートフレーム。
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