JP5813502B2 - コールタールから低パッフィングニードルコークスを生成する方法 - Google Patents

コールタールから低パッフィングニードルコークスを生成する方法 Download PDF

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Description

本発明は、グラファイト製品製造などの種々の応用に有用なニードルコークスに関する。特に、本発明は、コールタール原料出発物質からパッフィング(puffing)性質が減少したニードルコークスを製造する方法に関する。本発明はさらに低パッフィングニードルコークスに関する。
炭素電極、特にグラファイト電極は、鋼鉄産業において鋼鉄形成に使用される金属及び補助的材料を電熱炉内で溶かすために使用される。基板金属を溶かすために必要な熱は、複数の電極に電流を流して電極と金属との間にアークを発生させることにより生じる。多くの場合、100,000アンペアを上回る電流が用いられる。
電極は通常ニードルコークスから製造され、コークスは針状性及び異方性の微細構造を有している。超高出力に耐え得るグラファイト電極を作成するために、ニードルコークスは、電気抵抗及び熱膨張係数(CTE)が低くなければならず、かつグラファイト化したときに比較的高強度の製品を作成することができるものである必要がある。
ニードルコークスの具体的な性質は、適切な炭素原料をニードルコークスへ変換させるコークス化プロセスの性質を制御することにより決定される。通常、ニードルコークスの品質レベルは、所定の温度範囲におけるCTEの関数である。例えば、標準的な品質のニードルコークスにおいては、約30℃〜約100℃の温度範囲で平均CTEは約0.50〜約5.00x10-6/℃であり、高品質のニードルコークスにおいては、約30℃〜約100℃の温度範囲で平均CTEは約0.00〜約0.30x10-6/℃である。
コークスのCTEを評価するために、まずコークスを約1,000〜1,400℃の温度にまでか焼する。その後、融解されたピッチバインダと混合し、ピッチとコークスの混合物を押出ししてグリーン(生)電極を形成する。電極はその後約800〜900℃の温度まで焼かれ、そして、グラファイト化するために2,800〜3,400℃の温度から加熱される。CTEは、グラファイト化電極に対して膨張計又は電気容量法を使用して測定される(電気容量法については、発行物「熱膨張のキャパシタンスブリッジ測定」、1986年、ドイツバーデンバーデンで行われた炭素関連国際会議、に記載がある。コークスのCTEを評価する手順は、E.A Heintz著のCarbon第34巻、699〜709頁、1996年発行、に記載がある。これらの発行物は本明細書に参照して盛り込まれる)。
グラファイト電極の製造に適するニードルコークスは、CTEが低いだけでなく硫黄及び窒素含有量が非常に低くなければならない。一般的に、コークスに含まれる硫黄及び窒素はか焼後に残留しており高温でのグラファイト化プロセス中でのみ完全に取り除かれる。
ニードルコークスの窒素又は硫黄含有量が非常に高い場合、電極がグラファイト化されたときこの電極に「パッフィング」が生じる。パッフィングはコークス粒子の不可逆性の膨張であって、電極内のひび割れや空洞の発生、電極の構造的完全性の低下、及び電極の強度及び密度の大幅な変化の原因となる。
一般的に、パッフィングの度合いはニードルコークス中に存在する窒素及び硫黄の割合と相関する。窒素原子及び硫黄原子は、原料内で炭素と、典型的にはリング配置で、共有結合を介して結合する。窒素−炭素結合及び硫黄−炭素結合は、高温環境において炭素−炭素結合よりも安定性が非常に低く加熱により切断する。この結合の切断によって高温加熱中に窒素及び硫黄が急激に発生し、その結果ニードルコークスの物理的なパッフィングが生じる。その他のパッフィングの原因としては窒素結合のために窒素原子が切断することが挙げられる。
グラファイト化プロセス中におけるニードルコークスのパッフィングを減少させる様々な方法の試みがなされており、硫黄の効果に多くの注目が向けられている。用いられるアプローチにおいて、ニードルコークスの原料を触媒及び水素を用いて処理することにより、コークス化前に硫黄を除去する又はパッフィングプロセスを抑制する化学添加物がコークスに導入される。
そのようなアプローチの一つにおいて、電極体をグラファイト化する前に最初の原料又はコークス混合物に抑制剤が用いられる。米国特許第2,814,076号は、パッフィングを抑制するためにアルカリ金属塩を添加することを教示している。そのような塩は電極へとグラファイト化される直前に添加される。具体的には、製品を重曹液中で含浸させることにより炭酸ナトリウム溶液が添加される。
米国特許第4,312,745号には、硫黄含有コークスのパッフィングを減少させるために添加物を用いることが記載されている。酸化鉄などの鉄化合物を硫黄含有原料に添加してディレードコークス化プロセスによりコークスが製造される。しかしながら、このプロセルはコークスのCTEを増大させる可能性がある。
Oracら(米国特許第5,118,287号)は、添加物が炭素と反応し始める温度以上でかつパッフィング開始温度以下の温度において、アルカリ又はアルカリ土類金属をコークスに添加することによりパッフィングを防止することを開示している。
Jager(米国特許第5,104,518号)は、コークス化の前にコールタールにスルフォン酸塩、カルボン酸塩、又はアルカリ土類金属のフェノラートを用いることにより1400〜2000℃の温度範囲で窒素パッフィングが減少することを開示している。Jagerら(米国特許第5,068,026号)は、同じ添加物を焼き及びグラファイト化の前にコークスとピッチの混合物に用いて窒素に起因するパッフィングを減少させることを記載している。
その他、炭素添加物又は種々のハイドロ除去技術を用いて、電極のパッフィングを阻止するための試みがなされてきた。米国特許第4,814,063号において、Murakamiらは、水素化触媒存在下で出発材料の水素化を行うことにより改善されたニードルコークスを生成することを記載している。その後、水素化された生成物は熱分解により異なる物質に切断される。特開昭59−122585号において、Kajiらは、水素化触媒存在下でピッチを水素化精製することにより窒素及び硫黄を除去し、その後ピッチをコークス化してパッフィングの少ないニードルコークスを得ることを記載している。
Govalら(米国特許第5,286,371号)は、水素化反応ゾーンに原料を通過させて水素化残留生成物を生成し、生成物に対して溶剤抽出法を行うことを教示している。
Didchenkoら(米国特許第5,167,796号)は、大きなサイズの孔を有する水素化触媒と水素とを用いてコークス化の前に石油デカントオイル(petroleum decant oil)から硫黄を除去することを教示している。
しかしながら、従来の方法により製造されたニードルコークスは、多くの場合、その後電極へとグラファイト化されるニードルコークス中に残る窒素に関する問題を有している。ニードルコークスのパッフィング特性を減少させるために用いられる添加物は、硫黄化合物の影響を弱めるか又は硫黄化合物をニードルコークスから解放するものの、窒素化合物に起因するパッフィングは阻止できない。窒素によるパッフィングが制御されていないので、そのような添加物の使用により最終製品である電極は、低品質、低密度かつ低強度なものとなる。コークス原料又はピッチに化学物質を添加することは、メソフェーズ形成中に固体が生成されてコークスのCTEが増大することとなる。さらに、水素化プロセスにおいては、原料から大量の窒素を除去するための拡大された熱処理に非常に大きなエネルギー入力及び高温を必要とする。さらに、水素化並びにそれに伴う硫黄及び窒素の原料からの除去において水素を用いる必要がある。
したがって、パッフィング抑制添加物を使用しない即ち最終製品である電極の強度及び密度を低下させない、低パッフィングニードルコークスの製造方法が所望される。さらに、原料から窒素を除去するために必要とされる熱エネルギーを減少させるとともに水素の導入を必要としない方法が所望される。実際、グラファイト化電極製品製造のためのニードルコークス及び/又はバインダピッチを製造するための、原料からの窒素除去に優れた方法が、高強度低パッフィング電極を製造するために必要であることが明らかになっている。また、グラファイト電極製造に用いる新規の窒素低含有低パッフィングニードルコークスの提供が望まれる。さらに、コールタールなどの石炭ベースのニードルコークス原料は窒素含有量が大きいことから、高性能グラファイト電極に適したニードルコークス製造のためにそのような原料を使用することを可能とする方法が所望される。
本発明は、低パッフィングニードルコークス生成のためのコールタール原料の窒素含有量を減少させる独自の方法を提供する。本発明の方法は、ニードルコークス作成のプロセスにおいてコールタール原料から窒素を除去するために、添加物も高温水素化ステップも必要としない。そのような低パッフィングニードルコークスは、グラファイト化中に膨張せず密度及び強度の向上した特性を有する、即ちこれまでにないニードルコークスの特性の組み合わせを有する電極製品を提供する。さらに、本発明に係るニードルコークスの製造方法は、水素及び熱エネルギーの両方を過度に使用することなくコールタールから低パッフィングニードルコークスを製造する。
より具体的には、本発明の方法は、窒素除去システムを用いてコールタール原料中の窒素を減少させる。窒素除去システムは、吸着材を使用してコールタール原料の窒素含有成分を物理的に除去する。そのような窒素除去システムは、流入されるコールタール原料流の窒素含有量を約0.4重量%〜約2重量%にし、窒素含有量が約0.03重量%〜約0.4重量%のか焼ニードルコークス製品が生成される。本発明の方法における重要な特徴は、窒素除去プロセスが広い温度範囲にわたり機能可能な点である。特に、窒素除去システムは、コールタール原料の流れに要求される標準温度及び周囲環境下で機能する。窒素の除去において、コールタール原料は様々な設計の反応器を通過して流れることができ、様々な反応器としては、反応器がオフライン中であってもコールタール原料を継続的に処理するよう構成された吸収床やマルチ反応器が含まれる。
本発明に係る低パッフィングニードルコークス炭素を製造するための窒素除去システムにおいては、コールタール原料からの窒素除去を促進するための過度な熱エネルギー又は水素ガスを追加使用せずに動作する窒素除去法が用いられてもよい。窒素除去システムは、好ましくは、窒素除去システムの窒素除去主要要素として活性炭製品を含んでもよい。活性炭製品は、コールタール原料が窒素除去システムを通過する際にコールタール原料から窒素含有成分を物理的に除去するモレキュラーシーブ吸着剤として作用する。
あるいは、窒素除去システムは、活性炭繊維、活性アルミナ、シリカアルミナ、シリカゲル、ゼオライトなどのその他の適切な吸着材料を含んでもよく、これらは原料の窒素含有量を約0.4重量%以下に最適に減少させることができ、好ましくは約0.2%重量以下、より好ましくは約0.03重量%にまで又はそれ以下に減少させることができる。
さらに、窒素除去システムに復元システムを設けることが非常に有利であることが明らかになっている。復元システムは、除去システムから窒素含有成分を取り除いて窒素除去システムの除去性能を再生させる。活性炭構造が組み込まれた窒素除去システムにおいては、復元システムは活性炭の窒素結合サイトから窒素成分を除去する。同様にして、アルミナ又はシリカベースの吸着材を有する窒素除去システムにおいては、復元システムは活性吸着サイトから窒素成分を除去して次の窒素吸着のために活性サイトを空にする。
窒素除去カラムに供給されたコールタール原料は、ニードルコークス形成を抑制する可能性のある溶けていないキノリン(QI)(quinoline insolubles)を比較的含まないほうがよい。特に、QI成分(特にQIの微粒子)はコークス化プロセス中に結合して小球体を形成してメソフェーズの正常成長を阻害する。
コールタール原料が窒素除去カラムから出ると、原料はその後ディレードコークス化装置に入り、処理されたコールタール原料がニードルコークスに変換される。当分野で知られるように、ディレードコークス化は液状のコールタール原料を固体状のニードルコークスに変換する熱分解プロセスである。低パッフィングコールタール原料のディレードコークス化は、複数のニードルコークスドラムを用いるとともに一つのドラムが常に原料で満たされているようにする、バッチ式連続プロセスである。あるいは本プロセスは半連続プロセスであってもよい。
したがって、本発明の目的は、コールタール原料を用いてグラファイト電極などに応用される低パッフィングニードルコークスを製造するプロセスを提供することである。
本発明の別の目的は、窒素化合物吸着材として活性炭を組み込んだ窒素低減システムを有する、低パッフィングニードルコークスを生成するためのプロセスを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、コールタール原料からの窒素化合物除去用にアルミナ又はシリカ含有吸着材が組み込まれた窒素低減システムを有する、低パッフィングニードルコークスを生成するためのプロセスを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、実質的により少ない窒素を含みかつグラファイト化中の膨張がない又は膨張が非常に少ない低パッフィングコークスを提供することである。
本明細書の記載において当業者に明らかとなるこれらの側面及びその他の側面は、平均窒素含有量が約0.5重量%〜約2重量%のコールタール原料を準備し、該コールタール原料を140℃以下の温度の比較的穏和な条件下で窒素除去システムを用いて処理することにより達成される。本発明のプロセスの一実施形態において、コールタール原料の窒素含有量を約0.4重量%以下、好ましくは約0.2重量%以下、より好ましくは約0.03重量%にまで又はそれ以下に有利に減少させ、これにより原料をパッフィングが減少したニードルコークスに変換する。好ましくは、コールタール原料を、粘性のある液体から窒素含有種がより容易に吸着される液体へと変換する。
開示されるプロセスにおいては、特に活性炭並びに活性アルミナ、シリカゲル、シリカアルミナ及びゼオライトなどの種々の化学物質を用いる窒素除去システムを使用してもよい。そのような吸着材はAldrich Chem. Co.などからすでに市販されており、クロマトグラフ分離及び石油由来ディーゼル油からの複素環式要素の分離に使用されている(Y. Sanoら著、「燃料」84巻(2005年)、903頁)。
以上の全般的な記載及び並びに以下の詳細な記載及び図面により本発明の実施形態が提供されるとともに、特許請求の範囲に記載される本発明の性質及び特徴についての理解の概観及び枠組みを提供することが意図される。
コールタール原料から低パッフィングニードルコークスを製造するプロセスを示すフロー図である。
低パッフィングニードルコークスがコールタール原料から用意され、コールタール原料は溶けていないキノリン(QI)を含んでいないことが好ましい。QI構成成分は、直径が約1ミクロン〜約50ミクロン以下の固体粒子であり、これらは石炭をコークス化することにより得られるコールタール中に存在する。特に、QIが存在することによりメソフェーズが合体して大きな領域となることを防止し、これにより高品質のニードルコークスが形成されることを阻害する。そのようにして、コールタール出発原料にQIが存在する場合には、低パッフィングニードルコークスを作成するために不溶性物質を除去する必要がある。
図1を参照すると、QIを含有するコールタール10がQIを除去するためにQI除去システム内に流れこむ。当業者にとって周知のように、溶けてないキノリンは、溶媒抽出プロセス又は特開昭第62―124188号に記載される固体分離プロセスなどを介してコールタールから取り除くことができる。QI除去システムによる処理の前における初期のコールタール10のQI含有量は約2重量%〜20重量%であってもよい。溶媒抽出法を利用するQI除去システムによる処理を介して、QI含有量が約0.01重量%〜約0.5重量%のQIフリーコールタール14が生成される。
QI除去システムによる処理後、QIフリーコールタール14は窒素除去システム16に向けて導入される。特定の窒素除去システム16で必要とされるように、QIフリーコールタール14を加熱して、その粘性を低下させるともに窒素除去システム16内のプロセス中に窒素成分を最も効率的に除去されるようにしてもよい。特に、わずかな加熱はコールタールの粘性を低下させて窒素除去システム内でコールタールと反応表面との接触を容易にする。あるいは、溶剤を混ぜて希釈することによりコールタールの粘性を低下させることもできる。特定のコールタール原料の処理においては、溶剤で希釈すること及び窒素除去システムが最も効率良く動作する温度にまで加熱することの両方が必要となる。
一実施形態において、窒素除去システム16は窒素除去材が搭載されたカラムを有する。この窒素除去システム16は、平行に配置された一以上のカラムを有していてもよい。複数のカラムを有していることが理想的であり、これによりそのうちの一つがオフラインとなっても窒素除去システム16は継続して動作できる。
あるいは、窒素除去システムの構成要素が固定床式(静止)カラムであってもよい。これらの装置において、窒素除去材は固定されており、窒素除去材を除去又は再生させるためには反応物をコールタール蒸留プロセスからオフラインで取りだす必要がある。あるいは、窒素除去システムは移動床を有する。移動床式カラムにおいて、装置は窒素除去材の流動床を有し、窒素除去材は連続的に除去されるとともに所望の窒素除去システム活動を維持するために追加される。
窒素除去材の一つとして活性炭が挙げられ、該活性炭は、炭素構造全体に分岐した細孔系を設けて大きな内部比表面積を有するよう処理された炭素である。具体的には、窒素除去システム16内の活性炭は、200m2/g以上の表面積を有し、上限は約3000m 2 /gを超えてもよい。そのような窒素除去システム16用活性炭は、硬材、石炭及びコークス製品、セルロース系材料、ポリマー樹脂などを含む、しかしこれらに限定されない、種々の有機源から生成される。さらに、活性炭は、典型的な粒状活性炭よりもむしろ活性炭繊維であってもよい。典型的には、活性炭は、微小孔、メソ細孔、及びマクロ孔の三つの細孔を有し、細孔のサイズは、微小孔における2ナノメートル以下からマクロ孔における50ナノメートル以上である。
窒素除去システム16内でコールタール原料から窒素成分を除去する主な手段は、活性炭による吸着を介するものである。コールタール原料から窒素成分を吸着するのに最適な活性炭を選択するために考慮すべき活性炭の二つの主な物理的考慮点は、総表面積及び細孔構造である。活性炭の総表面積が大きいと、コールタール原料の窒素成分と作用するより多くの活性サイトを利用することが可能となる。さらに、活性炭のマクロ孔及びメソ細孔の両方は、活性炭の分岐細孔系内に粒子が吸着されることを機械的に排除し、同時により小さい分子が内部微小孔に入ることを許容する。細孔のサイズにより、活性炭の内部微小孔に到達可能な分子の具体的なサイズが物理的に制限されるので、分子はコールタール原料から除去される。コールタール中の窒素含有成分の分子サイズは活性炭の微小孔に到達するよう十分小さく、したがって窒素含有成分は捕捉されてコールタールから除去される。
本発明に係る窒素除去においては任意の種類の活性炭が有効であるが、同時に、pHが中性である活性炭が特に有効であることが明らかとなっている。さらに、窒素除去システム16での活性炭使用の別の実施形態においては、酸洗浄された(又は部分的に中和された)活性炭、又は窒素親和性の高い表面機能原子団を有する活性炭が、中性pHの活性炭の代わりに又はこれと組み合わせて用いられる。本明細書の「活性炭」は、一般的な活性炭、中性pH活性炭、酸洗浄された又は部分的に中和された活性炭、もしくは表面機能原子団(surface functional group)を有する活性炭のうちの任意の又は全ての又はこれらの組み合わせの活性炭である。
酸洗浄された又は部分的に中和された活性炭の使用が、油及びタールから窒素含有複素環式化合物(典型的にはLewisベース)を除去するのにより有効である。酸洗浄された又は部分的に中和された活性炭は、中性pH活性炭と比べてさらなる酸性機能原子団(acidic functional group)を有し、これにより窒素含有種との結合を促進する。例えばNiCl2などの金属を含浸させた窒素親和性の高い表面機能原子団を有する活性炭は、窒素種を有する金属種複合体をより有効に形成するので、炭素内に窒素化合物を捕捉することができる。
窒素除去システム16は、コールタール原料が床を通過する際に活性炭を維持する構造要素をさらに有する。活性炭を用いる吸着においては、通常、窒素を除去するために、活性炭に対するにコールタール原料の滞留時間が長くなければならない。原料からの窒素除去を適切に行うために、コールタール原料を活性炭に数時間程度接触させてもよい。活性炭を不動状態にするために、固定床器型カラム(fixed bed vessel type column)を用いることが好ましく、この型のカラムは液体からの吸着に一般的に使用される。別の実施形態においては、活性炭を移動床式カラムに格納してもよく、この場合活性炭は使用されるにつれゆっくりと後退する。
窒素除去システム16を用いてQIフリーコールタール14から窒素を最も有利に除去するには、プロセスパラメータを活性炭及びコールタール間の最適反応条件に設定する。通常、吸着は温度の低下と共に増大するので、コールタールの適切な流れが維持される最低温度でQIフリーコールタール14を窒素除去システム16に供給してもよい。さらに、吸着をより容易にするためにpHを任意的に変更してもよく、典型的にはコールタール内の窒素がより吸着しやすい条件となる。
その他のプロセスにおける重要な考慮点は、コールタール原料と活性炭との接触時間である。吸着作用は窒素成分が活性炭と接触することのでき合計時間に依存する。したがって、活性炭とコールタール原料との間の接触時間が増大するとより多くの窒素が除去される。接触時間を増大させる方法として、コールタール原料の流速を減少させる、床内の活性炭の量を増大させる、又は活性炭の表面積を増大させることが挙げられる。
コールタール原料から窒素を吸着する性能が減少した際には、活性炭成分は破棄又は継続使用のために再活性化される。熱エネルギー費用や活性炭の価格によっては、活性炭を破棄して新しい活性炭を窒素除去システム16の静止床内に設置する方が経済的な場合もある。窒素除去システム16が一以上の移動床式反応器を有する場合、触媒が使用されるにつれ活性炭は連続的に後退する。そうでない場合には、反応器を閉鎖して活性炭を一括除去する。
あるいは、窒素除去システム16の活性炭は、吸着した窒素成分を大幅に解放することにより再生される。一実施形態においては、使用済み炭素は窒素除去システム16からコネクション18を介して再生装置20へ流される。窒素除去システム16から再生装置20へ活性炭を移動させる機構は、重力又は圧力を利用して流す配置を含み、その機構により使用済活性炭が再生装置20に運ばれる。あるいは、使用済活性炭を有する静止床を完全にオフラインに取り出して使用済活性炭を一括除去し再生システム20内に挿入してもよい。
再生システム20の一実施形態において、窒素除去システムは熱再生技法を用いて使用済活性炭を再活性化する。具体的には、再生装置は、活性炭上の吸着材を熱蒸発させるための加熱炉又は回転炉を有していてもよい。吸収された分子を蒸発させるための典型的な温度は、約400℃〜約1000℃である。一実施形態においては、吸収された分子は約900℃以下の温度で蒸発される。別の実施形態においては、この温度は約400℃〜約600℃である。さらに別の実施形態においては、この温度は約700℃〜約1000℃である。あるいは、使用済活性炭にスチームストリッピングを施して混入物質を除去してもよい。スチームストリッピングを用いた再生ではスチームの温度は約100℃〜約900℃の間でさまざまであり、この温度範囲で大部分の吸着材が除去される。
上記の再生技法並びに熱再生技法及び蒸気再生技法においては、毎回、活性炭の一部が酸化し、即ち活性炭の約10重量%が各熱再生中に失われ、活性炭の約5重量%が上記再生技法を使用する際に失われので、活性炭は最終的には交換されなければならない。
窒素除去システム16の別の実施形態において、種々の無機吸着材がカラム型配置で用いられてもよく、これにより、穏和な条件下又は少なくとも従来プロセスよりも大幅に低い温度で窒素除去システムとして機能することができる。吸着材は、大きな表面積を有する種々の材料、例えば好ましくは活性アルミナ、ガンマ型アルミナ、非晶質アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカゲル、帯電シリカ、ゼオライト、並びにニッケル、銅、鉄などの大きな表面積を有する種々の活性金属酸化物であってもよい。これらの表面積が大きい材料により、コールタール原料から窒素成分を除去するための活性サイト数が増大する。
具体的には、ガンマ型アルミナの表面積は約1m2/g〜100m2/g以上であり、非常に硬く、また窒素除去システム16内に配置するために様々な形状に形成される。これらの形状には、様々な寸法に形成された小さな球形、ハチの巣形状、らせん形状、及び固定床式反応器に典型的な多様な多角形形状がある。
窒素成分の吸着に適切な細孔サイズ及び表面積を有するアルミナ吸着材は、異なるフォーム又は形状で使用可能であり、例えば様々な寸法に形成された小さな球形、ハチの巣形状、らせん形状、及び固定床式カラムに典型的な多様な多角形形状、しかしこれらに限定されない、がある。シリカゲル、シリカ/アルミナ及びゼオライトなどのその他の市販の吸着剤もまた同様に固定床式カラムに用いることができる。分析用分離に一般的に使用されるそのような吸着剤はAldrich Chemical Co.などから市販されており容易に入手できる。
活性炭と同様に、低パッフィングニードルコークス製造中に破棄するのに費用がかかるガンマ型アルミナなどの無機吸着材もまた再利用できる。スチームストリッピングプロセスを用いて比較的大きな混入物質を除去することができ、この場合、吸着材が温度約100℃〜約500℃及び圧力約10psig〜約50psigでスチームにさらされる。特定の実施形態においては、より高温の沸点を有する混入物質の除去が有益な場合には温度を500℃以上としてもよい。吸着材から除去されなかった混入物質は後続の熱処理により除去して吸着力を再生する。熱処理プロセスは約500℃〜約900℃の温度で行われる。再生の合計プロセス時間は選択された熱処理温度に依存し、これによりユーザは全ニードルコークス製造プロセスに合わせて再生を最適化することができる。吸着材は再生を繰り返すことによって吸着力を失うので交換又は復元が必要となる。
処理されたコールタール原料流24は窒素除去システム16から出るとコークス化装置26に向かう。コールタール原料のコークス化には様々な方法があり、ニードルコークスを生成する最も一般的な方法はディレードコークス化である。
標準的なディレードコークス化装置は、好ましくは、バッチ式連続プロセスで動作する二以上のニードルコークスドラムを有する。典型的には、複数のドラムの一部分が熱処理されると同時に他部分が原料で満たされる。
ニードルコークスドラムが満たされる前に、このドラムは、他のニードルコークスドラム内で実施されているコークス化からの再循環熱気体によって予熱される。その後、加熱されたドラムに予熱されたコールタール原料が満たされ、ここで液体原料はドラムの下部に注入されて沸騰し始める。コークスドラムの温度及び圧力の両方が増大するにつれて液体原料の粘性が増大する。コークス化プロセスは、約400℃〜約500℃の温度、及びおおよそ周囲環境圧力〜約100psigの圧力で起こる。処理されたコールタール原料の粘性がゆっくりと増大してニードルコークスを形成し始める。
上記プロセスに基づき製造されたコークスは、次に約1400℃又はそれ以下の温度でか焼される。か焼低パッフィングニードルコークスのCTEは、好ましくは約2.0cm/cm/℃x10-7よりも小さく、より好ましくは約1.25cm/cm/℃x10-7よりも小さく、最も好ましくは約0.1cm/cm/℃x10-7よりも小さい。さらに、か焼低パッフィングニードルコークスの窒素含有量は、約0.4重量%未満、より典型的には約0.2重量%未満、最も好ましくは約0.03重量%又はそれより少なく、同時に硫黄含有量は約1.0重量%よりも少なく、そして、このニードルコークスが示す2000℃よりも十分大きな温度でのグラファイト化中の窒素に起因する物理的膨張は非常に小さい。
以下に低パッフィングニードルコークスの生成方法を記載する。この方法は、a)コールタールを選択するステップと、b)溶けてないキノリンを前記コールタールから除去して、キノリン不溶物質が減少したコールタールを生成するステップと、c)前記溶けてないキノリンが減少した(キノリンフリー)コールタールを活性炭窒素除去システムに通過させて窒素が減少したコールタールを作成するステップと、d)前記窒素が減少したコールタールをコークス化するステップと、e)前記窒素が減少したコールタールから得られた前記コークスをか焼してか焼低パッフィングニードルコークスを生成するステップと、を含む。前記活性炭窒素除去システムは、表面積が約200m2/g〜約3000m2/gである活性炭を含んでもよい。活性炭は活性炭繊維であってもよい。前記活性炭窒素除去システムは一以上のカラムを有していてもよく、カラムの種類は固定床式及び/又は移動床式であってもよい。前記ステップc)の活性炭窒素除去システムは、再生装置をさらに含んでもよく、再生装置は約400℃〜約1000℃の温度における熱再生を利用するものであってもよい。前記再生装置は約100℃以上でのスチーム再生を利用するものであってもよい。前記ステップe)の低パッフィングニードルコークスの窒素含有量は、好ましくは約0.4%より少なく、より好ましくは約0.2%よりも小さい。
本明細書に開示する別の方法は、低パッフィングニードルコークスを生成するさらなる方法である。そのような方法は、a)コールタールを選択するステップと、b)溶けてないキノリンを前記コールタールから除去して、溶けていないキノリンをほぼ含有しないコールタールを生成するステップと、c)前記溶けてないキノリンをほぼ含有しないコールタールを吸着ゾーンに通過させて窒素が減少したコールタールを作成するステップと、d)前記窒素が減少したコールタールをコークス化するステップと、e)前記窒素が減少したコールタールから得られた前記コークスをか焼してか焼低パッフィングニードルコークスを生成するステップと、を含む。再生装置はスチームストリッピングを用いて吸着材から混入物質を除去するものであってもよく、また、再生装置は吸着材から混入物質を熱的にストリッピングするものであってもよい。
本出願に引用される全ての特許及び発行物の記載の全てが本明細書に参照することで盛り込まれる。
本明細書の記載は、当業者が本発明を実施することを可能とするものである。当業者にとって本明細書から明確となる可能なバリエーション及び変更の詳細を記載することは意図していない。しかしながら、そのようなバリエーション及び変更は全て特許請求の範囲の項に記載される本発明の範囲内に含まれる。特許請求の範囲の項の記載は、特に記載の無い限り、本発明の目的を達成するために有効な任意の配置又は順番における構成要素及び工程をカバーすることを意図している。

Claims (3)

  1. 低パッフィングニードルコークスを生成する方法において、
    a)コールタールを選択するステップと、
    b)溶けてないキノリンを前記コールタールから除去して、溶けていないキノリンが減少したコールタールを生成するステップと、
    c)前記溶けてないキノリンが減少したコールタールを、200m2/g〜3000m 2 /gの表面積を有する活性炭を含む活性炭窒素除去システムに通過させて、窒素が減少したコールタールを作成するステップと、
    d)前記窒素が減少したコールタールをコークス化するステップと、
    e)前記窒素が減少したコールタールから得られた前記コークスをか焼してか焼低パッフィングニードルコークスを生成するステップと、
    を含むことを特徴とする低パッフィングニードルコークスを生成する方法。
  2. 前記活性炭が、酸洗浄された又は部分的に中和された活性炭であることを特徴とする請求項1に記載の低パッフィングニードルコークスを生成する方法。
  3. 前記活性炭が、微小孔、メソ細孔、および、マクロ孔からなる細孔を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の低パッフィングニードルコークスを生成する方法。
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