以下、必要に応じて図面を参照しながら、実施形態に係るエレベータ群管理制御システムを説明する。これらのエレベータ群管理制御システムは、エレベータの乗場で各利用者が行先階を登録する乗場行先階制御方式(DCS:Destination Control System)を採用し、複数台のエレベータかご(乗りかごともいう)の運行サービスを提供する。本実施形態では、エレベータ群管理制御システムが6台の乗りかごを備え、このエレベータ群管理制御システムを12階建ての建物に適用した例を説明する。
本実施形態のエレベータの群管理制御装置では、個々の利用者が呼び登録を行い、即ち、行先階を登録することにより行先呼びを発生させ、行先呼び毎に割り当てる乗りかご(割当かご)を個別に決定する。割当かごの決定では、いずれかの乗りかごの決定済みの停止予定階で乗降できる相乗りが可能な行先呼びに対しては、相乗りが可能な乗りかごを、実際に満員となるまで割り当て、いずれの乗りかごを割り当てても、新たな停止予定階の追加を要する行先呼びに対しては、決定済みの停止予定階で乗降可能な利用者が今後、応答直前まで追加で割り当てられてとしても満員とならない見込みの乗りかごを割り当てる。このように割当かごを決定することにより、停止回数の抑制と十分多くの人数の乗車が両立されるようになり、より多くの利用者を効率よく輸送可能なエレベータ群管理制御システムを実現することができる。
なお、以下の実施形態では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るエレベータ群管理制御システム100を概略的に示している。このエレベータ群管理制御システムは、図1に示されるように、群管理制御装置101を備え、この群管理制御装置101は、建物内に設けられた昇降路を昇降可能に設置されている6台の乗りかご103A〜103Fの群管理制御を行う。
群管理制御装置101は、乗りかご103A〜103Fの各々の運行予定を生成し、乗りかご103A〜103Fを夫々制御するかご制御装置102A〜102Fに送出する。本実施形態では、乗りかごが同じ進行方向を保ちながら運行を続ける単位を便と呼び、乗りかご103A〜103Fの各々の運行予定を、便番号を用いて管理している。便番号は、乗りかごの運行順序を識別するための情報である。一例では、運行予定は、便番号に対応付けて進行方向、停止予定階、並びに各停止予定階において乗車する人数及び降車する人数等を保持している。
かご制御装置102A〜102Fの各々は、群管理制御装置101から受け取った運行予定に従って、乗りかご103A〜103Fの各々の昇降制御及びドアの開閉制御といった種々の制御を行う。
さらに、各階床のエレベータの乗場には、行先階の登録を受け付ける行先階登録装置104A〜104Zが設置されている。図1では、26台の行先階登録装置104A〜104Zが設けられている。出入口が設けられている階床(玄関階)では、エレベータを利用する人数が多く、その結果、行先階登録装置が操作される頻度が他の階床より高くなる。そのため、玄関階には、他の階床より多くの行先階登録装置が設置されることが好ましい。本実施形態では、1階が玄関階であり、1階に4台の行先階登録装置104A〜104Dが設置され、2階に行先階登録装置104E及び104Fが設置され、3階に行先階登録装置104G及び104Hが設置されるというように、2階から12階には2台ずつ行先階登録装置が設置される。
エレベータ群管理制御システム100では、乗りかごへの乗車を希望する各利用者は、行先階登録装置104xで行先階を登録して行先呼びを発生させることにより、群管理制御装置101に対して乗りかごの割当要求を行う。ここで、xはA,B,…,Zのうちの任意の1つの文字を表し、行先階登録装置104xは、行先階登録装置104A〜104Zのうちの任意の1つを指す。ある利用者が行先階登録装置104xで行先階を登録すると、この行先階登録装置104xにおいて行先呼びが発生し、発生した行先呼びの情報(行先呼び情報)が群管理制御装置101に送出される。群管理制御装置101は、行先呼び情報を受け取ると、行先呼びの発生を検知する。行先呼び情報は、行先呼びが発生した行先階登録装置104xの設置階(出発階ともいう)、及び登録された行先階を示す情報を含む。行先呼び情報は、行先呼びが発生した時刻、即ち、行先階が登録された時刻を含んでもよい。
群管理制御装置101は、行先呼びの発生を検知すると、その行先呼びに応答する乗りかごを割り当てる。乗りかごの割当では、群管理制御装置101は、いずれの乗りかごのいずれの便を割り当るかを決定し、即ち、割り当てる乗りかご及び便の組み合わせを決定する。ここでは、割り当てる乗りかごを乗りかご103yとし、割り当てた便の番号をzとする。ここで、yはA,B,…,Fのうちの任意の1つの文字を表し、zは自然数を表す。
群管理制御装置101は、割り当てた乗りかご103y及び便の組み合わせを示す割当情報を生成する。本実施形態では、割当情報は、割り当てられた号機番号及び便番号、出発階、行先階及び進行方向等を含む。号機番号は、乗りかご103A〜103Fを識別するための情報であり、乗りかご103A、103B、…、103Fの号機番号を夫々A号機、B号機、…、F号機とする。
群管理制御装置101は、生成した割当情報を用いて乗りかご103yの運行予定を更新し、更新した運行予定を対応するかご制御装置102yに通知する。かご制御装置102yは、通知された運行予定に従って乗りかご103yの運行を制御して行先呼びに応答させる。
また、群管理制御装置101により生成された割当情報は、行先呼びが発生した行先階登録装置104xに送出される。行先階登録装置104xは、群管理制御装置101から割当情報を受け取ると、行先階を登録した利用者に対して割当情報のうちの号機番号及び便番号を案内する。一例では、行先階登録装置104xには、「y号機の第z便に乗車してください」といったメッセージが表示案内される。利用者は、案内に従ってy号機のドアの近傍で乗りかご103yの到着を待ち、ドア付近に設置された表示装置(図4に示される)に表示される便番号を確認してから、到着した乗りかご103yに乗り込む。このようにして、エレベータ群管理制御システム100では、利用者を出発階から目的階まで輸送している。
なお、図1では、群管理制御装置101は、かご制御装置102A〜102F、乗りかご103A〜103F及び行先階登録装置104A〜104Zとは異なるブロックとして示されているが、かご制御装置102A〜102F、乗りかご103A〜103F及び行先階登録装置104A〜104Zを含んでもよい。
図2は、ある乗りかごの運行予定の一例を示す。図2では、簡単にするために、各停止予定階で乗車する人数及び降車する人数を示されていない。図2は、第N−1便の運行が終了した後の運行予定の例を示しており、第N−1便までのデータは消去されている。図2では、各停止予定階の欄にフラグ“1”が格納されている場合、その階床に停止することを示し、フラグ“0”が格納されている場合、その階床を通過することを示す。この例では、第N便は、進行方向が上昇方向であり、1階、3階、10階及び12階の順序に停止する予定を持ち、次の第N+1便は、進行方向が下降方向であり、12階、8階及び2階の順序に停止する予定を持つ。
本実施形態のエレベータ群管理制御システム100では、乗りかごへの乗車を希望する実質的に全ての利用者が行先階の登録を行う必要がある。このようなエレベータ群管理制御システム100は、利用者の負担が幾分大きいが、利用者に個別に乗りかごを割り当てることができ、出発階及び行先階が同じ利用者のうちの最初の1人のみが行先階の登録を行うエレベータ群管理制御システムと比較して、乗りかご内に存在する乗車人数をより確実に制御することができる。従って、本実施形態のエレベータ群管理制御システム100では、定員オーバーのために、割り当てられた乗りかごに乗車できない利用者の発生を防ぐことができる。
次に、図1の群管理制御装置101をより詳細に説明する。
群管理制御装置101は、かご情報取得部111、運行予定記憶部112、かご運行制御部113、将来予測部114、需要データ生成部115、需要データ記憶部116、第1割当候補選出部117、追加乗車人数算出部118、第2割当候補選出部119及び割当かご選定部120を備える。
かご情報取得部111は、かご制御装置102A〜102Fの各々から、乗りかご103A〜103Fの各々の情報(かご情報)を取得して記憶する。かご情報は、運行中の乗りかごの位置、進行方向、ドアの開閉状態等の情報を含む。
運行予定記憶部112は、乗りかご103A〜103Fの各々の運行予定を記憶する。前述したように、運行予定には、便番号に対応付けて、進行方向、停止予定階、並びに各停止予定階において乗車する人数及び降車する人数等が記述されている。この運行予定記憶部112は、後述する割当かご選定部120から割当情報を受け取り、受け取った割当情報を乗りかごの運行予定に追加する。さらに、運行予定記憶部112には、かご情報取得部111に記憶されているかご情報が与えられ、運行予定のうち終了した部分が削除される。これにより、運行予定記憶部112は、乗りかご103A〜103Fの各々の将来の運行予定を保持する。
かご運行制御部113は、運行予定記憶部112に記憶されている乗りかご103A〜103Fの運行予定をかご制御装置102A〜102Fに夫々送出する。
需要データ生成部115は、割当情報を用いて需要データを生成する。本実施形態では、需要データ生成部115は、所定時間の間(例えば5分間)に生成された割当情報を定期的に(例えば5分おきに)収集し、収集した割当情報を用いて需要データを生成する。需要データは、出発階と行先階の組み合わせ毎の交通需要の大きさを示す。一例では、需要の大きさは、単位時間当たりの利用者の発生数、即ち、利用者の発生頻度である。需要データ生成部115は、出発階と行先階の組み合わせ毎に、収集した割当情報を用いて所定時間の間に発生した利用者の数を集計し、利用者の発生頻度を算出する。例えば、出発階が1階であり且つ行先階が5階である行先呼びが5分間に20回発生した場合、その出発階と行先階の組み合わせにおける利用者の発生頻度は、約0.067(人/秒)と算出される。12の階床を有する建物の場合、出発階と行先階の組み合わせは132通りであり、需要データ生成部115は、132通りの組み合わせの各々について利用者の発生頻度を算出する。需要データ記憶部116は、需要データ生成部115で生成された需要データを記憶する。
なお、需要データ生成部115は、割当情報に代えて、行先階登録装置104A〜104Zから受け取った行先呼び情報を用いて、需要データを生成してもよい。
さらに、エレベータの利用者の発生状況を示す交通需要は、時間帯及び曜日毎に大きく異なることから、需要データ生成部115は、時間帯及び曜日毎に分類するなど、需要データに統計的な処理を施してもよい。一例では、需要データ生成部115は、平日と休日に分類し且つ平日を出勤の時間帯、昼食の時間帯、退勤の時間帯、及び他のいくつかの時間帯に分類し、分類した曜日及び時間帯毎に需要データを生成してもよい。長期間にわたって収集した需要データに統計操作を施すことにより、需要データの精度を向上させることができる。
さらにまた、需要データ生成部115は、出発階と行先階の全ての組み合わせを対象として需要データを生成する例に限らず、特定の組み合わせを対象として需要データを生成してもよい。一例として、需要データ生成部115は、利用者が多くなると見込まれる階床(例えば、玄関階、食堂が設けられている階床等)を出発階及び行先階の少なくとも一方に含む組み合わせについて利用者の発生頻度を算出する。このように特定の組み合わせを対象として需要データを生成することにより、メモリ使用量及び計算時間を低減することができる。
将来予測部114は、かご情報から得られる乗りかご103A〜103Fの位置及び進行方向を初期状態として、運行予定に従った乗りかご103A〜103Fの運行を時系列上で予測する。具体的には、将来予測部(第1予測乗車人数算出部ともいう)114は、乗りかご103A〜103Fの各々について、停止予定階の順序、各停止予定階の到着時刻、及び各停止予定階を出発する時点で乗りかご内に存在する利用者の予定人数(第1予測乗車人数)を算出する。第1予測乗車人数は、行先階を実際に登録して乗りかごを既に割り当てられている利用者(既割当の利用者)を集計することにより算出される。
具体的には、ある停止予定階の第1予測乗車人数は、この停止予定階の到着時にかご内に存在する利用者の人数からこの停止予定階で降車する利用者の人数を引き、さらにこの停止予定階で乗車する人数を足した人数である。各停止予定階の到着時にかご内に存在する利用者の人数、各停止予定階で降車する利用者の人数、及び各停止予定階で乗車する利用者の人数は、運行予定から取得することができる。
第1割当候補選出部117は、乗りかご103A〜103Fの各々について、将来予測部114の予測結果を用いて、相乗り可能な便を探索する。相乗り可能な便は、行先呼びの出発階及び行先階の両方を停止予定階に持ち、且つ、出発階から行先階の1つ前の階床までの区間に含まれる各停止予定階の第1予測乗車人数が予め設定される乗りかごの定員未満である便を指す。このような相乗り可能な便を行先呼びに応答させると、停止回数を増やさずに行先階の登録を行った利用者を目的階まで輸送することができる。第1割当候補選出部(相乗り候補選出部ともいう)117は、相乗り可能な便を発見すると、発見した便を第1割当候補(相乗り候補)として選出する。ある乗りかごが相乗り可能な便を複数持つ場合、それらの便のうち運行順序が最も早い便が第1割当候補として選出される。
追加乗車人数算出部(第2予測乗車人数算出部ともいう)118は、需要データを用いて今後発生すると予測される利用者の数(追加乗車人数)を算出し、算出した追加乗車人数を含めて、各停止予定階を出発する時点で乗りかご内に存在する見込みの人数(第2予測乗車人数)を算出する。第2予測乗車人数は、将来予測部114で算出された第1予測乗車人数に予測追加乗車人数を加えることにより、停止予定階毎に算出される。追加乗車人数は、その便の停止予定階で乗車及び降車の両方を行える利用者を対象として算出される。このため、停止予定階が1つも決まっていない便では、追加乗車人数は算出されずに、第2予測乗車人数は零となる。
第2割当候補選出部119は、乗りかご103A〜103Fの各々について、行先呼びの出発階から行先階の1つ前の階床までの区間に含まれる各停止予定階における第2予測乗車人数が乗りかごの定員未満である便の中から、運行順序が最も早い便を第2割当候補として選出する。
割当かご選定部120は、行先階登録装置104A〜104Zから行先呼び情報を受け取り、この行先呼びに応答する乗りかごを割り当てる。乗りかごの割当では、割当かご選定部120は、割り当てる乗りかご及び便の組み合わせを決定する。1つ以上の第1割当候補が選出されている場合、割当かご選定部120は、第1割当候補の中から、割り当てる乗りかご及び便の組み合わせを選定する。第1割当候補が選出されていない場合、割当かご選定部120は、第2割当候補の中から、割り当てる乗りかご及び便の組み合わせを選定する。割当かご選定部120は、選定した乗りかご及び便の組み合わせを示す割当情報を行先呼びが発生した行先階登録装置104xに通知する。さらに、割当かご選定部120は、割当情報を運行予定記憶部112に与えて、対応する乗りかごの運行予定を更新する。
このように、行先呼びの出発階及び行先階の両方を停止予定階に持つ乗りかご及び便の組み合わせを優先的に割り当てることにより、乗りかご103A〜103Fの各々の停止回数が低減され、乗りかご103A〜103Fを短時間で往復させることができる。さらに、各利用者が行先階を登録する方式により、乗りかご内に存在する人数を正確に制御することが可能となるので、定員に達するまで乗りかごを割り当てることができる。従って、乗りかごに十分多くの利用者を乗車させた上で往復に要する時間を短縮することができる。
図3Aは、行先階登録装置104A〜104Zの各々に対応する行先階登録装置300を概略的に示している。行先階登録装置300は、図3Aに示されるように、行先階を入力する行先階入力部301、当該行先階登録装置300の操作方法を案内する操作案内部302、群管理制御装置101からの割当情報を案内する割当案内部303、群管理制御装置101との通信を制御する通信制御部304を備える。
操作案内部302は、行先階入力部301で行先階の登録が可能なときに、利用者に対して行先階の入力を促す表示を行う。また、操作案内部302は、行先階入力部301で行先階の登録が不可能なときに、利用者に対して行先階の入力を制止する表示を行う。
通信制御部304は、利用者が行先階入力部301で行先階を入力して行先呼びが発生すると、行先呼び情報を群管理制御装置101に通知する。その後、通信制御部304は、通知した行先呼びに応答する号機番号及び便番号を示す割当情報を群管理制御装置101から受け取る。通信制御部304が受け取った割当情報は、割当案内部303によって利用者に案内される。利用者は、割当案内部303により案内された割当情報を確認した後に、割当情報の号機番号のドア付近へ移動し、案内された便が到着するのを待つことになる。
図3Bは、行先階登録装置300の一例としての押しボタン式の行先階登録装置310の外観を概略的に示している。この行先階登録装置310は、行先階入力部311及びディスプレイ装置312を備える。図3Bの行先階入力部311は、図3Aの行先階入力部301に対応する。行先階入力部311には、行先階の入力を受け付ける複数の押しボタンが配置されており、これらの押しボタンには、行先階登録装置310の設置階から移動可能な各階床を示す数字又は文字列が表示さている。図3Bは、1階に設置される行先階登録装置310を示し、2階から7階までの6つの押しボタンが配置されている。なお、図3Bでは、8階から12階の押しボタンが省略されている。
図3Bのディスプレイ装置312は、図3Aの操作案内部302及び割当案内部303に対応する。ディスプレイ装置312としては、例えば、液晶ディスプレイ又はEL(Electro Luminescent)ディスプレイを用いることができる。ディスプレイ装置312は、行先階入力部311の機能を備えたタッチパネル式のディスプレイ装置であってもよい。
利用者が目的階に対応する行先階入力部311内の押しボタンを押下すると、押下された押しボタンの裏面に設置されている図示しないランプが一時的に点灯する。このランプの点灯により、利用者は、行先階の登録が行われたことを確認する。群管理制御装置101で乗りかごが割り当てられると、ディスプレイ装置312に割当情報が表示される。ディスプレイ装置312は、図3Bに示されるように、文字に加えて、乗車位置を示す地図を表示して割当情報を案内してもよい。図3Bは、7階の押しボタンが押下され、A号機の第8便が割り当てられた例を示している。
なお、ディスプレイ装置312は、行先階を登録してから乗りかごが応答するまでに要する時間(待ち時間)の目安を表示してもよい。待ち時間を表示する方法としては、例えば、運行中の便番号又は次にその階床に到着する便番号を表示する方法がある。
図4は、各階床に設けられる乗場の外観の一例を概略的に示している。図4では、乗りかご103A及び103Bに対応して設けられているドア401A及び401Bの周辺の様子が示され、乗りかご103C〜103Fに対応するドアは省略されている。ドア401A及び401Bの上方の壁面には、乗りかご103A及び103Bの号機番号及び便番号を表示する表示装置402A及び402Bが設置されている。表示装置402A及び402Bに表示される便番号は、対応するドアが次に開くときの便の番号を示す。
なお、便番号は、進行方向が上昇方向である便番号を偶数に設定し、進行方向が下降方向である便番号を奇数に設定するというように、進行方向に応じて設定してもよい。また、便番号は、2桁以下の整数に制限してもよい。この場合、例えば、第98便の次の便番号を第1便に設定する。さらに、表示内容が固定の部分、即ち、号機番号は、印刷を行った金属板で表示し、表示内容が変化する部分、即ち、便番号は、LEDディスプレイ又は液晶ディスプレイに表示するようにしてもよい。
利用者は、行先階登録装置で提示された割当情報を確認した後に、割り当てられた乗りかごに対応するドアの付近に移動し、その場で待機する。その後、利用者は、表示装置に表示された便番号を確認してから、乗りかごに乗車することになるので、割り当てられた乗りかご及び便の組み合わせに容易に正しく乗車することができる。
本実施形態では、乗りかごの定員に達したために次に到着する便を割り当てることができないほど多くの利用者が発生した場合、後続の便を割り当てることになる。割当情報を案内する際に号機番号のみを案内する方式では、後続の便を割り当てる場合には、行先呼びの出発階から行先呼びの行先階に向かう方向と同じ進行方向を有する先行の便に当該出発階に停止する予定がなくなるまで割当情報を案内することができないのに対し、本実施形態のように号機番号及び便番号を案内する方式では、後続の便を割り当てる場合でも、割当情報をすぐに案内することができる。従って、号機番号及び便番号を案内する方式は、出勤、退勤及び昼食等の時間帯にように交通需要が大きい場合にも、割当情報の案内を滞りなく続けることができる。
図5は、行先呼びに応答する乗りかごを割り当てる手順の一例を概略的に示している。図5のステップS501では、利用者が行先階登録装置104xで行先階を登録すると、行先階登録装置104xにおいて行先呼びが発生する。発生した行先呼びの情報は、割当かご選定部120に送出される。
ステップS502では、将来予測部114は、ステップS501で新たな行先呼びが発生する直前におけるかご情報及び運行予定から、乗りかご103A〜103Fの各々の今後の運行を予測する。具体的には、将来予測部114は、乗りかご103A〜103Fの各々について、運行予定から各便の停止予定階を取得し、既割当の利用者が乗りかごに乗車するのに要する時間及び乗りかごから降車するのに要する時間を考慮した上で、各停止予定階の到着時間を算出する。さらに、将来予測部114は、運行予定を参照して、各停止予定階の第1予測乗車人数を算出する。
ステップS503では、第1割当候補選出部117は、相乗り可能な乗りかご及び便の組み合わせを探索する。具体的には、第1割当候補選出部117は、乗りかご103A〜103Fの各々について、ステップS502で得られた予測結果を用いて相乗り可能な便を探索する。相乗り可能な便を探索する際には、出発階から行先階の1つ前の階床までの区間に含まれる各停止予定階の第1予測乗車人数が乗りかごの定員未満である便を対象にする。本実施形態では、出発階から行先階の1つ前の階床までの区間を行先呼びの区間と呼ぶ。行先呼びの区間は、出発階及び行先階の1つ前の階床を含み、例えば、行先呼びの出発階及び行先階が2階及び5階であれば、行先呼びの区間には、2階、3階及び4階が含まれる。ステップS503の処理は、図6を参照して後に詳細に説明する。
ステップS504では、ステップS503で相乗り可能な便が発見されたか否かが判定される。相乗り可能な便が1つ以上発見された場合、ステップS505において、第1割当候補選出部117は、相乗り可能な便及びこの便を持つ乗りかごの組み合わせを第1割当候補に設定する。
ステップS503で相乗り可能な便が発見されなかった場合、ステップS506において、第2割当候補選出部119は、乗りかご103A〜103Fの各々から第2割当候補を選出する。より詳細には、第2割当候補選出部119は、乗りかご103A〜103Fの各々について、行先呼びの区間の各停止予定階の第2予測乗車人数が乗りかごの定員未満である便の中から運行順序が最も早い便を選出し、選出した便及びこの便を持つ乗りかごの組み合わせを第2割当候補に設定する。ステップS506の処理は、図7を参照して後に詳細に説明する。
ステップS507では、割当かご選定部120は、割当候補(ステップS505で設定された第1割当候補、若しくは、ステップS506で設定された第2割当候補)の中から割り当てる乗りかご及び便の組み合わせを選定する。割り当てる乗りかご及び便の組み合せの選定は、1つ以上の第1割当候補が選定されているときは第1割当候補を対象とし、第1割当候補が選定されていないときは、第2割当候補を対象とする。
選定の方法としては、割当候補の各々を割り当てた場合の乗りかごの運行を予測して割当評価値を求め、割当評価値が最も小さくなる割当候補を選定する。一例では、割当評価値は、待ち時間の予測値と乗車時間の予測値の和を二乗した値を利用者毎に算出し、得られた値を合計した値である。
割り当てる乗りかご及び便の組み合わせが決定されると、行先呼びが発生した行先階登録装置104xに割当情報が通知される。さらに、割当情報が運行予定記憶部112に与えられて運行予定が更新される。第2割当候補の中から乗りかご及び便の組み合わせが選定された場合、この便の停止予定階には、行先呼びの出発階及び行先階のうちの一方又は両方が含まれていないので、出発階及び行先階の両方に停止するように運行予定が更新される。
ステップS508では、行先階登録装置104xによって、割当情報の号機番号及び便番号が行先階の登録を行った利用者に対して案内される。
このようにして、群管理制御装置101は、行先呼びに応答する乗りかごを割り当てる。即ち、群管理制御装置101は、相乗り可能な便が存在する場合には、相乗り可能な便を割り当て、相乗り可能な便が存在しない場合には、停止予定を追加して、行先呼びの区間内の各階床において定員に達しない便を割り当てる。相乗り可能な便を割り当てる場合には、停止回数が増加せず、また、定員に達しない便を割り当てる場合には、定員に達していて乗車不可能な乗りかごを無駄に停止させることがない。従って、停止回数を低く抑えることができるので、乗りかごが往復するのに要する時間を短縮することができる。
なお、ステップS506においては、計算機資源の制約等により、処理の対象とする便を、現在運行中の便から指定数後の便まで(例えば4便後まで)に限定してもよい。その場合は、第2割当候補が1つも選出されない可能性が生じる。第1及び第2割当候補が1つも選出されない場合、ステップS502に戻り、ステップS502以降の割当候補の選出処理を再度おこなってもよい。この場合、割当が完了するまでの間、行先階登録装置104xに「しばらくお待ちください」といったメッセージを表示させて、行先階を登録した利用者にその場に待機するように促す。
図6は、図5のステップS503に示される相乗り可能な乗りかご及び便の組み合わせを探索する処理の一例を示す。図6のステップS601では、第1割当候補選出部117は、処理対象の乗りかごを設定する。第1割当候補選出部117は、最初にA号機を処理対象に設定し、後述するステップS602〜S606の処理を終えた後に、B号機を処理対象に設定するというように、A号機からF号機までを順番に処理対象に設定する。
ステップS602では、第1割当候補選出部117は、処理対象の便を設定する。第1割当候補選出部117は、処理対象の乗りかごの運行予定から、行先呼びが示す出発階から行先呼びに向かう方向と同じ進行方向を有し、且つ、行先呼びの出発階及び行先階を通る便を選出し、選出した便を運行順序の早い順に処理対象に設定する。本実施形態では、行先呼びの出発階から行先呼びの行先階に向かう方向を行先呼びの方向と呼ぶ。処理対象に最初に設定される便は、行先呼びの方向と同じ進行方向を有し、且つ、行先呼びの発生後最初に出発階を通る便である。処理対象に最後に設定される便は、停止予定階を持つ便のうちの運行順序が最も遅い便である。
ステップS603では、第1割当候補選出部117は、処理対象の乗りかごの運行予定を用いて、処理対象の便が行先呼びの出発階及び行先階の両方を停止予定階に持つかどうかを判定する。例えば、行先呼び情報が、出発階が3階で且つ行先階が5階であるという内容であった場合、第1割当候補選出部117は、処理対象の便が3階と5階の両方を停止予定階に持つかどうかを判定する。処理対象の便が行先呼びの出発階及び行先階のうちの少なくとも一方を停止予定階に持たない場合、第1割当候補選出部117が処理対象の便が相乗り可能でないと判断し、ステップS606に進む。
ステップS606では、処理対象の乗りかごの全ての便について処理が終了したかどうかを判定する。未処理の便がある場合、ステップS602に戻り、未処理の便のうち運行順序が最も早い便が次の処理対象に設定される。全ての便の処理が終了したら、ステップS607に進む。
ステップS603で処理対象の便が行先呼びの出発階及び行先階の両方を停止予定階に持つと判定された場合、ステップS604に進む。ステップS604では、第1割当候補選出部117は、行先呼びの区間に含まれる処理対象の便の各停止予定階の第1予測乗車人数が乗りかごの定員未満かどうかを、運行予定を用いて判定する。各停止予定階の第1予測乗車人数は、前述したように、将来予測部114により算出され、その停止予定階を出発する時点で乗りかご内に存在する利用者の予定人数である。例えば、行先呼び情報が、出発階が3階で且つ行先階が5階であるという内容であった場合、第1割当候補選出部117は、3階及び4階の第1予測乗車人数が乗りかごの定員未満であるかどうかを判定する。
なお、行先呼びの区間内の停止予定階でない階床を通過する時点での人数は、直前の停止予定階の第1予測乗車人数と等しいため考慮していないが、行先呼びの区間内の各階床の第1予測乗車人数を算出するようにしもよい。また、行先階の第1予測乗車人数が定員未満であるかどうかは判定しなくてよい。
行先呼びの区間内のいずれかの停止予定階の第1予測乗車人数が定員と等しくなる場合、即ち、行先呼びの区間に既割当の利用者により満員になる階床が1つ以上ある場合、行先呼びを登録した利用者がさらに乗車すると、定員オーバーとなり乗車できない利用者が発生することになる。従って、いずれかの停止予定階での第1予測乗車人数が定員と等しくなる場合、第1割当候補選出部117は、この便を相乗り不可能であると判断し、ステップS606に進む。
ステップS604で行先呼びの区間内のいずれの停止予定階においても第1予測乗車人数が定員未満であると判定された場合、即ち、行先呼びの区間に既割当の利用者により満員になる階床がない場合、ステップS605に進む。ステップS605では、第1割当候補選出部117は、処理対象の乗りかご及び便の組み合わせを相乗り可能な乗りかご及び便の組み合わせと判断する。
相乗り可能な乗りかご及び便の組み合わせが発見されると、処理対象の乗りかごのそれ以降の便については待ち時間がより長くなるため考慮せず、ステップS607に進む。ステップS607では、全ての乗りかご103A〜103Fに対する処理が終了したかどうかが判定される。未処理の乗りかごがある場合、ステップS601に戻り、未処理の乗りかごのいずれかが処理対象に設定される。全ての乗りかご103A〜103Fの処理が終了したら、一連の処理が終了となる。
図6に示した一連の処理で1以上の相乗り可能な乗りかご及び便の組み合わせが発見された場合、図5のステップS505において、これらの相乗り可能な乗りかご及び便の組み合わせが第1割当候補に設定される。相乗り可能な乗りかご及び便の組み合わせが発見されなかった場合、図5のステップS506において第2割当候補が設定される。
次に、図7を参照して、図5のステップS506において第2割当候補を設定する方法を説明する。
図7は、第2割当候補を設定する手順の一例を示している。図7のステップS701では、第2割当候補選出部119は、処理対象の乗りかごを設定する。例えば、第2割当候補選出部119は、最初にA号機を処理対象に設定し、後述するステップS702〜S717の処理を終えた後に、B号機を処理対象に設定するというように、A号機からF号機までを順番に処理対象に設定する。
ステップS702では、第2割当候補選出部119は、処理対象の便を設定する。第2割当候補選出部119は、処理対象の乗りかごの運行予定から、行先呼びの方向と同じ進行方向を持ち、且つ、行先呼びの出発階を通る便を取得し、取得した便を運行順序が早い順に処理対象に設定する。処理対象に最初に設定される便は、行先呼びの方向と同じ進行方向を有し、且つ、行先呼び発生後に最初に出発階を通る便とする。処理対象に最後に設定される便は、停止予定階を1つも持たない便のうち運行順序が最も早い便とする。
なお、処理対象に最後に設定される便は、停止予定階を持つ便のうち運行順序が最も遅い便としてもよい。また、行先呼びの方向と同じ進行方向を持つ便であれば、行先呼びの出発階を通らない便であっても処理対象に設定してもよい。例えば、行先呼び情報が、出発階が8階で且つ行先階が10階であるという内容であった場合、進行方向が上昇方向であり、且つ、停止予定階が1階、5階及び7階であるような便を処理対象としてもよい。
また、計算機資源の制約等により、処理対象に最後に設定される便を、現在運行中の便から指定数後の便まで(例えば4便後まで)に制限してもよい。この制限を行うと、第2割当候補が1つも選出されない可能性が生じる。
ステップS703では、第2割当候補選出部119は、運行予定を用いて、行先呼びの区間に含まれる各停止予定階の第1予測乗車人数が乗りかごの定員未満かどうかを判定する。ステップS703は、図6のステップS604と同様の処理である。
行先呼びの区間に第1予測乗車人数が定員と等しい階床がある場合、行先呼びを登録した利用者がさらに乗車すると、定員オーバーとなり乗車できない利用者が発生することになる。従って、行先呼びの区間に第1予測乗車人数が定員と等しい階床が1つでもある場合、第2割当候補選出部119は、この便を割当候補に設定することは不可能であると判断し、ステップS717に進む。ステップS717では、処理対象の乗りかごの全ての便について処理し終えたかどうかが判断される。未処理の便がある場合、ステップS702に戻り、次の処理対象の便が設定される。全ての便を処理し終えたら、ステップS718に進む。
ステップS703において行先呼びの区間に第1予測乗車人数が定員に達する階床が1つもないと判定された場合、ステップS704に進む。次のステップS704からステップS714は、追加乗車人数算出部118が行先呼びの区間内の各停止予定階における第2予測乗車人数を算出する手順を示している。
ステップS704では、追加乗車人数算出部118は、停止予定階を組み合わせて作られるOD(Origin, Destination)の中から、行先呼びが示す出発階から行先階までの区間の少なくとも一部を含む同乗ODを抽出する。ODは、出発階から行先階への輸送を示し、(出発階,行先階)で表現される。
なお、ステップS704で同乗ODが1つも抽出されない場合、ステップS705〜S715を省略し、ステップS716に進む。また、上述したような特定のODのみの需要データを生成する場合、同乗ODを抽出する対象はこれら特定のODのみとする。
ステップS705では、追加乗車人数算出部118は、ステップS704で抽出した同乗ODの中から処理対象の同乗ODを任意の順序で設定する。ステップS706では、追加乗車人数算出部118は、処理対象の同乗ODの区間に第1予測乗車人数が定員と等しい階床があるかどうかを判定する。同乗ODの区間は、同乗ODの出発階から同乗ODの行先階の1つ前の階床までの区間を示す。第1予測乗車人数が定員に達する階床がある場合、ステップS713に進み、第1予測乗車人数が定員と等しい階床が1つもない場合、ステップS707に進む。ただし、ステップS706において処理対象の便が処理対象の同乗ODの出発階を既に出発している場合には、この出発階で追加の利用者が発生する可能性はないので、ステップS713に進む。
ステップS707では、追加乗車人数算出部118は、処理対象の同乗ODの相乗り期間を算出する。相乗り期間は、処理対象の同乗ODと同じ出発階及び行先階を持つ行先呼びが今後発生した場合に、その行先呼びを処理対象の便が受け入れ可能な期間を示す。ステップS707で算出される相乗り期間を第1相乗り期間と呼ぶ。第1相乗り期間の起点は現在時刻であり、その終点は処理対象の便が処理対象の同乗ODの出発階に到着する予定時刻である。第1相乗り期間は、終点時刻から起点時刻を引いた値である。ただし、第1相乗り期間は、負になる場合は零とする。処理対象の乗りかごにおいて処理対象の便より前の便が処理対象の同乗ODと同じ出発階及び行先階に停止する予定を持つ場合、第1相乗り期間の起点を、処理対象の便より前の便が出発階に到着する予定時刻としてもよい。出発階に到着する予定時刻は、図5のステップS502で将来予測部114が予測した停止予定階の到着時刻から取得される。
処理対象の同乗ODにおける利用者の発生頻度をv(人/秒)とし、ステップS707で算出された第1相乗り期間をst(秒)とすると、処理対象の同乗ODにおける追加乗車人数a(人)は、数式(1)により算出される。
a=v×st (1)
ただし、実際には、処理対象の同乗ODの出発階及び行先階を停止予定階に持つ便を、処理対象の乗りかご以外の乗りかごが存在する場合があるので、他の乗りかごへの乗車が見込まれる人数を、数式(1)で算出された追加乗車人数aから差し引く必要がある。処理対象の乗りかごを含む複数の乗りかごが、処理対象の同乗ODに示される出発階及び行先階を停止予定階に持つ便を、持つ場合、処理対象の同乗ODと同じ出発階及び行先階を持つ行先呼びが発生した場合には、これら乗りかごのうちのいずれか1つが割り当てられる。次のステップS708からステップS711では、処理対象の乗りかご以外の乗りかごについて、相乗り期間を算出する。
ステップS708からステップS711では、ステップS702で処理対象に設定した乗りかご以外の乗りかごを対象に処理を行う。ステップS708では、ステップS702で処理対象に設定した乗りかご以外の乗りかごを順次に処理対象に設定する。ステップS708で処理対象に設定した乗りかごを処理対象の他の乗りかごと呼ぶ。
ステップS709では、まず、追加乗車人数算出部118は、処理対象の他の乗りかごの各便の中から、処理対象の同乗ODと同じ出発階及び行先階に停止する予定を持つ便を探索する。続いて、追加乗車人数算出部118は、処理対象の同乗ODと同じ出発階及び行先階に停止する予定を持つ便を発見したら、その便について、処理対象の同乗ODの区間に第1予測乗車人数が定員と等しい階床があるかどうかを判定する。処理対象の同乗ODの区間に第1予測乗車人数が定員と等しい階床が1つもない場合、その便は、処理対象の同乗ODと同じ出発階及び行先階を持つ行先呼びを割当可能な便であると判断され、ステップS710に進む。処理対象の同乗ODの区間内に第1予測乗車人数が定員と等しい階床が1つもない便が複数存在する場合、それらの便の中から運行順序が最も遅い便が選定される。処理対象の同乗ODと同じ出発階及び行先階の両方に停止する予定を持つ便が存在しない場合、或いは、処理対象の同乗ODと同じ出発階及び行先階の両方に停止する予定を持つ全ての便が処理対象の同乗ODの区間内のいずれかの階床で定員と等しくなる場合、ステップS711に進む。
ステップS710では、追加乗車人数算出部118は、処理対象の同乗ODの区間内のいずれの階床においても定員未満になる便の相乗り期間を算出する。ステップS710で算出された相乗り期間を第2相乗り期間と呼ぶ。この第2相乗り期間は、ステップS708で処理対象に設定された他の乗りかごに関して算出されるものであり、前述した第1相乗り期間は、ステップS701で処理対象に設定された乗りかごに関して算出されるものである。第2相乗り期間の起点は、第1相乗り期間と同様に現在時刻とする。第2相乗り期間の終点は、その便が処理対象の同乗ODの出発階に到着する予定時刻とする。ただし、この予定時刻が第1相乗り期間の終点より遅い場合、第2相乗り可能期間の終点は、第1相乗り期間の終点と同じにする。第2相乗り期間は、終点時刻から起点時刻を引いた値であり、負になる場合は零とする。
ステップS711では、処理対象の乗りかご以外の全ての乗りかごを処理し終えたかどうかが判断される。未処理の乗りかごが存在する場合、ステップS708に戻り、未処理の乗りかごが処理対象に設定される。全ての他の乗りかごを処理し終えたら、ステップS712に進む。ステップS708からステップS711では、第2相乗り期間が1つも算出されないこともあるが、ここでは、1以上の第2相乗り期間が算出されているものとして、算出された第2相乗り期間の各々をy(i)と表す。ここで、iは算出された第2相乗り期間の数以下の自然数を示す。
ステップS712では、追加乗車人数算出部118は、算出した第2相乗り期間y(i)及び需要データを用いて、処理対象の同乗ODにおける追加乗車人数を算出する。各乗りかごに割り当てる人数の配分方法は、適用する割当アルゴリズムにより決まる。ここでは、相乗り期間に比例した人数が割り当てられると仮定する。割り当てられる人数を相乗り期間に応じて比例分配すると仮定すると、処理対象の同乗ODにおける追加乗車人数b(人)は、数式(2)で算出される。
ただし、第1相乗り期間stが零である場合、追加乗車人数bは零とする。ステップS713では、ステップS704で抽出された全ての同乗ODを処理し終えたかどうかが判断される。未処理の同乗ODがある場合、ステップS705に戻り、未処理の同乗ODのうちの1つが処理対象に設定され、ステップS706からステップS712の処理が繰り返される。全ての同乗ODの処理が終了すると、ステップS714に進む。
ステップS714では、追加乗車人数算出部118は、同乗OD毎に算出した追加乗車人数から行先呼びの区間の各停止予定階での追加乗車人数を算出し、算出した追加乗車人数と第1予測乗車人数との合計である第2予測乗車人数を、行先呼びの区間内の停止予定階毎に算出する。処理対象の便の進行方向が上昇方向であり且つ停止予定階が1階、3階、4階及び8階であり、行先呼びの出発階及び行先階が3階及び5階である例を想定する。この場合、同乗ODは(1,4)、(1,8)、(3,4)、(3,8)及び(4,8)となる。ここで、同乗OD(1,4)において算出された追加乗車人数をb1とし、同乗OD(1,8)において算出された追加乗車人数をb2とし、同乗OD(3,4)において算出された追加乗車人数をb3とし、同乗OD(3,8)において算出された追加乗車人数をb4とし、同乗OD(4,8)において算出された追加乗車人数をb5とする。この例では、行先呼びの区間に含まれる階床は3階及び4階であり、3階における追加乗車人数は(b1+b2+b3+b4)と求まり、4階における追加乗車人数は(b2+b4+b5)と求まる。さらに3階及び4階における第1予測乗車人数を夫々c3及びc4とすると、3階における第2予測乗車人数は(c3+(b1+b2+b3+b4))と求まり、4階における第2予測乗車人数は(c4+(b2+b4+b5))と求まる。
なお、数式(2)で算出される追加予測人数は概して小数であるので、停止予定階毎に算出される第2予測乗車人数も小数であり、追加乗車人数算出部118は、停止予定階毎に算出した第2予測乗車人数を四捨五入し若しくは切り上げ若しくは切り捨てて整数値としてもよい。
ステップS704からステップS714に示されるように、追加乗車人数算出部118は、需要データを使用して、行先呼びが発生してからこの行先呼びを発生させた利用者が行先呼びの行先階に到着するまでの間に新たに発生する利用者の人数を追加乗車人数として予測し、第1予測乗車人数と追加乗車人数とを合計して第2予測乗車人数を算出する。
ステップS715では、第2割当候補選出部119は、行先呼びの区間内の停止予定階毎に、第2予測乗車人数が定員未満であるかどうかを判定する。定員以上になる階床が1つでも存在する場合、ステップS717に進む。行先呼びの区間内の各停止予定階の第2予測乗車人数が定員未満である場合、ステップS716に進み、行先呼びの出発階及び行先階を処理対象の便の停止予定階に仮想的に追加し、処理対象の乗りかご及び便の組み合わせを第2割当候補に設定する。
ステップS718では、全ての乗りかご103A〜103Fを処理し終えたかどうかが判断される。未処理の乗りかごが存在する場合、ステップS701に戻り、未処理の乗りかごが次の処理対象に設定され、全ての乗りかごを処理し終えるまで繰り返す。全ての乗りかご103A〜103Fについて処理が終了すると、第2割当候補を設定する一連の処理が終了する。
このように、需要データから予測される追加乗車人数を考慮することで、後に発生する可能性が高い相乗り可能な利用者に割り当てる余地が各第2割当候補に確保される。相乗り可能な利用者は、特定の便の停止予定階で乗車及び降車の両方を行える利用者を指す。これにより、第2割当候補の中から割り当てる乗りかご及び便の組み合わせを選定した場合にも、選定された乗りかご及び便の組み合わせを後に発生する相乗り可能な利用者にさらに割り当てることができるので、各乗りかご103A〜103Fの各々の停止回数を低く抑えることができる。
以上のように、本実施形態に係るエレベータ群管理制御システム100は、行先呼びの出発階及び行先階の両方を停止予定階に持ち、且つ、行先呼びの区間に含まれる各停止予定階における予測乗車人数が予め設定される定員未満である便を割り当て、そのような便がない場合には、停止予定を追加して、行先呼びの区間に含まれる各停止予定階での予測乗車人数が予め乗りかごの定員未満である便を割り当てるので、停止回数が削減され且つ十分多くの乗車人数が確保される。従って、輸送能力を向上させることができる。
(第2の実施形態)
図8から図13を参照して、第2の実施形態に係るエレベータ群管理制御システムを説明する。
第1の実施形態では、割当情報を案内する際に、乗車すべき号機番号及び便番号を案内している。号機番号及び便番号を案内する方式は、交通需要が高く次に到着する便より後続の便を割り当てた場合でも、割当情報を即時に案内することができる利点を有する。この方式では、利用者は、号機番号及び便番号の両方を覚え、便番号を確認してからエレベータに乗車する。このため、利用者は、便番号の確認を忘れて誤った便に乗車する可能性があり、また、便番号を忘れた場合には行先階を再び登録する必要がある。
これに対し、本実施形態では、便番号を案内せずに割当情報のうちの号機番号を案内することとし、割り当てられた便に利用者が正しく乗車することができるように、割当情報を案内するタイミングを調整する。
図8は、第2の実施形態に係るエレベータ群管理制御システム800を概略的に示している。このエレベータ群管理制御システム800は、6台の乗りかご103A〜103Fの群管理制御を行う群管理制御装置801を備える。群管理制御装置801は、図1の群管理制御装置101の構成に加えて、案内情報記憶部802、割当保留制御部803及び割当変更要求部804を備える。
案内情報記憶部802は、利用者に案内済みであるが未応答の便番号を、号機番号、出発階及び進行方向に対応付けて記述したデータテーブルを保持する。
割当保留制御部803は、案内情報記憶部802のデータテーブルを参照して、割当かご選定部120で生成された割当情報を案内可能かどうか判断する。割当情報を案内可能の場合、割当保留制御部803は、行先呼びが発生した行先階登録装置104xに割当情報を通知する。割当情報を案内可能でない場合、割当保留制御部803は、割当情報の行先階登録装置104xへの割当情報の通知を保留する。
割当変更要求部804は、割当保留制御部803で割当情報の通知の保留(割当保留)が所定時間継続した場合に、割当かご選定部120に対して割当の変更を要求し、即ち、割当を再度行うように指示する。割当変更要求部804は、割当変更を要求すると、運行予定記憶部112が保持する運行予定から対応するデータを消去する。
割当かご選定部120により行先呼びに応答する乗りかごが割り当てられて割当情報が生成されると、割当保留制御部803は、割当情報の号機番号、出発階及び進行方向でデータテーブルを参照して、割当済み且つ未応答の便番号を取得する。取得した便番号の中に割当情報の便番号より運行順序が早い便番号が発見された場合、割当保留制御部803は、この割当情報の通知を保留し、行先呼びが発生した行先階登録装置104xに割当保留を通知する。割当保留を受け取った行先階登録装置104xは、例えば「しばらくお待ちください」のように、割当情報を案内可能になるまで、利用者をその場に待機させる内容のメッセージを表示する。
その後、保留中の割当情報と同じ号機番号、出発階及び進行方向に対応付けられ、且つ、保留中の割当情報の便番号より運行順序が早い便番号がデータテーブルから消去されると、割当保留制御部803は、割当保留を解除し、行先階登録装置104xに割当情報を通知する。行先階登録装置104xは、受け取った割当情報のうちの号機番号を案内する。例えば、図9Aに示すように、行先階登録装置104xには、「A号機にご乗車ください」というメッセージが表示される。さらに、割当保留制御部803は、通知した割当情報、即ち、利用者に案内された割当情報の便番号を、号機番号、出発階及び進行方向に対応付けてデータテーブルに記憶させる。
本実施形態のエレベータ群管理制御システム800は、割当保留を行うことにより第1の実施形態と比べて輸送能力が幾分低くなるが、交通需要がある程度大きい状況でも十分高い輸送能力を実現することができる。さらに、割当情報を適切なタイミングで案内することで、利用者を正しい乗りかごに容易に乗車させることができる。
図9Bは、本実施形態に係る各階床のエレベータの乗場の外観の一例を概略的に示している。図9Bでは、乗りかご103A及び103Bに対応するドア401A及び401Bの周辺の様子が示され、乗りかご103C〜103Fに対応するドアは省略されている。ドア401A及び401Bの上方の壁面には、乗りかご103A及び103Bの号機番号を表示する表示板901A及び901Bが設置されている。
さらに、表示板901Aの近傍には、乗りかご103Aの進行方向を報知するための上昇方向ランタン902A及び下降方向ランタン903Aが設置されている。また、表示板901Bの近傍には、乗りかご103Bの進行方向を報知するための上昇方向ランタン902B及び下降方向ランタン903Bが設置されている。上昇方向ランタン902A及び902Bは、進行方向が上昇方向である乗りかごが停止してドアが開くときに点滅する。下降方向ランタン903A及び903Bは、進行方向が下降方向である乗りかごが停止してドアが開くときに点滅する。本実施形態では、利用者は、割り当てられた乗りかごの上昇方向ランタン及び下降方向ランタンで進行方向を確認して乗車すればよいので、割り当てられた乗りかごに利用者を確実に乗車させることができる。
さらに、上昇方向ランタン及び下降方向ランタンにより、所望の進行方向が異なる利用者が同じ階床で同じ乗りかごを待っていても、乗車すべき便を正しく把握できる。また、乗りかごから降車するためだけに停止する場合、ランタンを点滅させないことにより、乗車すべき便でないことを報知することができる。なお、降車のみのために乗りかごが停止する場合にもランタンを点滅させるようにしても構わない。
図10は、割当かご選定部120で生成された割当情報を案内する手順の一例を示している。図10のステップS501〜S507は、図5のステップS501〜S507と同じ動作であるので、重複する説明を省略する。図10のステップS501〜S507では、行先呼びが発生し、この行先呼びに応答する乗りかご及び便の組み合わせが決定されて割当情報が生成される。割当情報が生成されると、ステップS1001に進む。
ステップS1001では、割当保留制御部803は、割当情報を案内可能かどうか判断する。割当保留制御部803は、割当情報の号機番号、出発階及び進行方向で、案内情報記憶部802が保持するデータテーブルを参照して、割当情報の便番号より運行順序が早い便が存在するかどうかを判定する。割当情報と同じ号機番号、出発階及び進行方向に対応付けられ、且つ、割当情報の便番号より運行順序が早い便が存在しない場合、割当保留制御部803は、割当情報を案内可能と判断し、ステップS1006に進む。ステップS1006では、行先呼びが発生した行先階登録装置104xによって割当情報のうちの号機番号が案内される。
ステップS1001において割当情報と同じ号機番号、出発階及び進行方向に対応付けられ、且つ、割当情報の便番号より運行順序が早い便番号が存在すると判断された場合、割当保留制御部803は、割当情報を案内不可能と判断し、ステップS1002に進む。ステップS1002では、割当保留制御部803は、行先呼びが発生した行先階登録装置104xに割当保留を通知し、行先階登録装置104xによって割当保留のメッセージが案内される。一例として、行先階登録装置104xは、「しばらくお待ちください」のような割当保留のメッセージを表示することにより、行先階の登録を行った利用者に待機するように促す。
ステップS1003では、割当保留制御部803は、割当情報を案内済みの利用者に乗りかごを応答させた後に、割当情報を案内可能になったかどうか判断する。割当情報と同じ号機番号、出発階及び進行方向に対応付けられ、且つ、割当情報の便番号より運行順序が早い便番号がデータテーブルから消去されると、割当保留制御部803は、案内可能になったと判断する。案内可能になると、割当保留制御部803は、割当情報を行先階登録装置104xに通知し、ステップS1006において、行先階登録装置104xにより割当情報が案内される。
ステップS1003で依然として案内不可能である場合、ステップS1004に進み、ステップS507で割当が決定してから所定時間(例えば10秒)経過するまで、ステップS1003を繰り返す。割当決定後から所定時間経過しても案内不可能であれば、割当変更要求部804は、保留中の割当を変更すべきタイミングになったと判断し、ステップS1005に進む。
ステップS1005では、割当変更要求部804は、割当かご選定部120に割当の変更を要求するとともに、保留中の割当情報に対応するデータを運行予定記憶部112が保持する運行予定から消去する。その後、ステップS502に戻り、割当かご選定部120が再び割当を行う。割当情報の案内が完了するまで上述した一連の処理を繰り返す。
図10のステップS503に示される相乗り可能な乗りかご及び便の組み合わせを探索する処理は、第1の実施形態において図6を参照して説明したものと同様であるが、第1の実施形態と第2の実施形態とでは、図6のステップS602で処理対象に設定する便の決定方法が異なる。本実施形態では、便番号を通知しないことに起因して、同じ出発階及び同じ進行方向を持つ行先呼びに既に割り当てられ、その割当を利用者に案内済みの便より前の便を割り当てることはできないという制約が加わる。本実施形態のステップS602では、ステップS601で処理対象に設定された乗りかごの便の中に同じ出発階及び同じ進行方向を持つ行先呼びに既に割り当てられ、その割当が案内済みの便が存在する場合、第1割当候補選出部117は、この便を最初の処理対象に設定し、それより運行順序の早い便を処理対象に設定しない。そのような便が存在しない場合、第1割当候補選出部117は、第1の実施形態と同様に、行先呼びの方向と同じ進行方向を有し、且つ、行先呼びの出発階及び行先階を通る便のうち、行先呼びの発生後に最初に行先呼びの出発階を通る便から順番に処理対象に設定する。
さらに、図10のステップS506で第2割当候補を設定する処理は、第1の実施形態において図7を参照して説明したものと同様であるが、第1の実施形態と第2の実施形態では、ステップS702及びステップS704の処理が異なる。
本実施形態のステップS702では、ステップS701で処理対象に設定された乗りかごの便の中に、同じ出発階及び同じ進行方向を持つ行先呼びに既に割り当てられ、その割当が案内されている便が存在する場合、第2割当候補選出部119は、この便を最初の処理対象に設定し、それより運行順序の早い便を処理対象に設定しない。そのような便が存在しない場合、第2割当候補選出部119は、第1の実施形態と同様に、行先呼びの方向と同じ進行方向を持つ便を運行順序の早い順に処理対象に設定する。
また、本実施形態のステップS704では、第2割当候補選出部119は、処理対象の便より後の便に1以上の行先呼びが、割り当てられ且つその割当が案内されている場合には、それらの行先呼びの各々の出発階と同じ階床を出発階に持つODを除外した上で、第1の実施形態と同様の方法で同乗ODを抽出する。
図11は、案内情報記憶部802が保持するデータテーブルから案内が完了した割当に関するデータを消去する手順の一例を示している。割当保留制御部803は、かご情報取得部111からのかご情報及び運行予定記憶部112からの運行予定を用いて、応答が完了した割当を検出し、検出した割当に関するデータを案内情報記憶部802のデータベースから消去する。
図11のステップS1101では、乗りかごが選択方向を持つかどうかが判断され、即ち、乗りかごの現在の進行方向が行先呼びの方向と同じであるかどうかが判断される。乗りかごが選択方向を持っていない場合、乗りかごが選択方向を持つようになるまでステップS1101を繰り返す。乗りかごが選択方向を持つ場合、ステップS1102に進み、割当保留制御部803は、かご情報から乗りかごのドアを閉じる動作(戸閉動作)を検出する。戸閉動作を検出すると、ステップS1103において、この乗りかごの号機番号、戸閉動作を検出したときの停止階並びに現在の便番号及び進行方向が一致するデータがデータテーブルに記憶されているかどうかが判断される。一致するデータが記憶されていない場合、ステップS1101に戻る。一致するデータが記憶されている場合、ステップS1104に進み、データテーブルからそのデータが消去される。
以上のように、本実施形態に係るエレベータ群管理制御システム800においては、割当情報のうちの号機番号を適切なタイミングで案内することで、利用者を割り当てた乗りかごに確実に乗車させることができる。
(第3の実施形態)
図12から図15を参照して、第3の実施形態に係るエレベータ群管理制御システムを説明する。
交通需要は、曜日及び時間帯等により大きく異なり、交通需要に応じて群管理制御に求められる性質が異なる。例えば、交通需要が輸送能力と比べて十分に小さいときは、前述した割当保留を行わず、単に待ち時間を低減するように乗りかごを割り当てることで、利用者に与えるストレスを小さくすることができる。交通需要が大きくなると、割当保留を行う第2の実施形態のように、十分な輸送能力を確保することが望まれる。交通需要がさらに大きくなり、ある階床に設置された全ての行先階登録装置で割当保留のメッセージを通知するような状況になると、第1の実施形態のように、輸送能力を重視した制御が望まれる。
本実施形態では、割当保留の発生状況を用いて交通需要の大きさを判断し、交通需要に応じて制御方式(割当アルゴリズム)を変更する。
図12は、第3の実施形態に係るエレベータ群管理制御システム1200を概略的に示している。このエレベータ群管理制御システム1200は、6台の乗りかご103A〜103Fの群管理制御を行う群管理制御装置1201を備える。群管理制御装置1201は、図8の群管理制御装置801の構成に加えて、割当モード切替部1202、表示切替部1203、割当アルゴリズム切替部1204及び第3割当候補選出部1205を備えている。
割当モード切替部1202は、割当保留の発生状況を把握し、割当保留の発生状況に応じて適用する割当モードを決定する。本実施形態の割当モードの種類としては、通常モード、保留モード及び混雑モードがある。
表示切替部1203は、割当モード切替部1202が決定した割当モードに基づいて、行先階表示装置104A〜104Zで表示する内容を切り替える。通常モード及び保留モードでは、行先階表示装置104A〜104Zは、割当情報のうちの便番号を省略して、乗車すべき号機番号を案内する。混雑モードでは、行先階表示装置104A〜104Zは、乗車すべき号機番号及び便番号を案内する。
割当アルゴリズム切替部1204は、割当モード切替部1202が決定した割当モードに応じて割当アルゴリズムを切り換え、即ち、割当モードに応じた割当アルゴリズムを割当かご選定部120、第1割当候補選出部117、追加乗車人数算出部118、第2割当候補選出部119及び第3割当候補選出部1205に与える。通常モードの動作は、図14及び図15を参照して後に説明する。保留モードの動作は、第2の実施形態に従う動作である。混雑モードの動作は、第1の実施形態に従う動作である。
第3割当候補選出部1205は、乗りかご103A〜103Fの各々について、行先呼びの方向と同じ進行方向を持ち、且つ、行先呼びの区間内の各停止予定階床の第1予測乗車人数が定員未満である便を、第3割当候補として選出する。通常モード時には、第1及び第2割当候補選出部1205は動作されず、第3割当候補選出部1205が割当候補を選出する。
次に、図13を参照して、割当モード切替部1202による割当モード決定処理を説明する。
図13のステップS1301に示すように、エレベータの起動時は、通常モードに設定されている。ステップS1302では、割当モード切替部1202は、割当保留の発生を監視する。割当保留が検出されない間は、群管理制御装置1201は、通常モードで動作する。割当保留の発生が検出されると、ステップS1303に進む。
ステップS1303では、割当モード切替部1202は、交通需要が増大したと判断し、保留モードに切り替える。ステップS1304では、割当モード切替部1202は、全ての割当保留が解消したかどうかを判断する。全ての割当保留が解消された場合、割当モード切替部1202は、交通需要が低減したと判断し、ステップS1301に戻る。ステップS1301に戻ると、割当モード切替部1202は、通常モードに切り替える。ステップS1304で割当保留が継続している場合は、ステップS1305に進む。
ステップS1305では、割当モード切替部1202は、同一階床の全ての行先階登録装置が割当保留のメッセージを案内する状況が発生しているかどうかを判断する。同一階床の全ての行先階登録装置が割当保留を案内する状況が発生した場合、ステップS1306に進み、そうでなければ、ステップS1304に戻る。
ステップS1306では、割当モード切替部1202は、交通需要がさらに増大したと判断し、混雑モードに切り替える。ステップS1307では、割当モード切替部1202は、同じ階床で発生し且つ同じ進行方向を持つ複数の行先呼びに対して同じ乗りかごを応答させる場合に、これらの行先呼びに異なる便を割り当てる状況が解消したかどうかを判断する。異なる便を割り当てる状況が解消するまで、群管理制御装置1201は、混雑モードで動作する。異なる便を割り当てる状況が解消すると、ステップS1303に戻り、割当モード切替部1202は、保留モードに切り替える。
なお、ステップS1307からステップS1303に戻る場合、割当保留が発生していない状況であるので、ステップS1304において全ての割当保留が解消したと判断され、割当モード切替部1202は、保留モードに切り替えた後すぐに通常モードに切り替えることになる。混雑モードから保留モードへの切替時に保留モードを保つために、ステップS1303とステップS1304との間に所定期間(例えば3分間)待つ処理を追加してもよい。また、割当モードが頻繁に変わることがないように、ステップS1301とステップS1302との間に、並びに、ステップS1306とステップS1307との間に、所定期間(例えば3分間)待つ処理を追加してもよい。
図14は、通常モードにおける割当処理の一例を示している。通常モードは、相乗り可能な便を探索する処理、及び第2予測乗車人数を用いて停止回数の増加を抑制する処理を省略しており、それにより、保留モードより案内保留が発生する頻度が小さい。図14は、図10のステップS503〜S506をステップS1401に置き換えたものであり、即ち、図14のステップS501、S502、S507、S1001〜S1006は、図10のステップS501、S502、S507、S1001〜S1006と同じ処理である。ここでは、図10と同じ部分の説明を省略し、ステップS1401を説明する。
図14のステップS1401では、まず、第3割当候補選出部1205は、乗りかご103A〜103Fの各々について、ステップS501で発生した行先呼びの方向と同じ進行方向を有し、且つ、行先呼びの区間に含まれる各停止予定階における第1予測乗車人数が定員未満である便を探索する。続いて、第3割当候補選出部1205は、乗りかご103A〜103Fの各々について、発見した便の中から運行順序が最も早い便を第3割当候補として選出する。
図14のステップS507では、割当かご選定部120は、ステップS1401で選出された第3割当候補の中から、割り当てる乗りかご及び便の組み合わせを選定する。
次に、図15を参照して、このステップS1401をより詳細に説明する。図15のステップS1501では、第3割当候補選出部1205は、処理対象の乗りかごを設定する。第3割当候補選出部1205は、最初にA号機を処理対象に設定し、後述するステップS1502〜S1505の処理を終えた後に、B号機を処理対象に設定するというように、A号機からF号機までを順番に処理対象に設定する。
ステップS1502では、第3割当候補選出部1205は、処理対象の便を設定する。第3割当候補選出部1205は、処理対象の乗りかごの運行予定から、行先呼びの方向と同じ進行方向を持ち、且つ、行先呼びの出発階を通る便を取得し、取得した便を運行順序が早い順に処理対象に設定する。処理対象に最初に設定される便は、行先呼びの方向と同じ進行方向を有し、且つ、行先呼び発生後に最初に出発階を通る便とする。処理対象に最後に設定される便は、停止予定階を持たない便のうち運行順序が最も早い便とする。なお、行先呼びの方向と同じ進行方向を持つ便であれば、行先呼びの出発階を通らない便であっても処理対象に設定してもよい。
ステップS1503では、第3割当候補選出部1205は、運行予定を用いて、処理対象の便において、行先呼びの区間に第1予測乗車人数が定員と等しい階床が存在するかどうか判定する。定員と等しい階床が1つでもある場合、ステップS1505に進む。ステップS1505では、全ての便を処理し終えたかどうかが判断される。未処理の便がある場合、ステップS1502に戻り、そうでなければ、ステップS1506に進む。
ステップS1503で定員に達する階床がないと判断された場合、ステップS1504に進み、ステップS1504において、第3割当候補選出部1205は、処理対象の乗りかご及び便の組み合わせを第3割当候補に設定する。処理対象の便が第3割当候補に設定されると、ステップS1506に進む。
ステップS1506では、全ての乗りかごを処理し終えたかどうかが判断される。未処理の乗りかごがある場合、ステップS1501に戻る。全ての乗りかごを処理し終えた場合、第3割当候補を選出する一連の処理が終了する。
このように、通常モードでは、今後発生する見込みの利用者の人数を示す第2予測乗車人数を算出せずに、第1予測乗車人数に基づいて満員か否かの判断をしている。なお、通常モードは、割当保留モードと同様に、図11に示した案内情報記憶部802が保持するデータテーブルから案内が完了した割当に関するデータを消去する処理も行う。
以上のように、第3の実施形態に係るエレベータ群管理制御システム1200は、割当保留の発生状況に基づいて交通需要の状況を判定して割当モードを変更し、それにより、交通需要に応じた群管理制御を実現することができる。例えば、交通需要が低いときには、割当保留の発生を抑制する制御を行い、交通需要が高いときには、その程度により輸送能力を高める制御を行うことにより、快適な運行サービスを提供することができる。
(第4の実施形態)
図16及び図17を参照して、第4の実施形態に係るエレベータ群管理制御システムを説明する。
上述した実施形態では、輸送能力を向上させるために、予測乗車人数(第1及び第2予測乗車人数)が乗りかごの定員に達するまで、乗りかごを割り当てるように制御している。一方で、混雑の緩和及び待ち時間の短縮をバランスよく満たすことが重視される場合がある。例えば、交通需要が小さく利用者の平均待ち時間が20秒以内に抑えられている場合、乗りかご内の混雑度が低く抑えられることが望まれ、一方、交通需要が大きく利用者の平均待ち時間が40秒を越える場合、待ち時間を短縮することが望まれる。
本実施形態は、交通需要に応じて変化する平均待ち時間等の群管理性能指標に基づいて、乗車人数の上限値を制限する。予め設定される定員に代えて乗車人数の上限値を用いることにより、特定の乗りかごに同時に乗車している人数を一定数以下に抑えることができる。
図16は、第4の実施形態に係るエレベータ群管理制御システム1600を概略的に示している。このエレベータ群管理制御システム1600は、6台の乗りかご103A〜103Fの群管理制御を行う群管理制御装置1601を備える。群管理制御装置1601は、図12の群管理制御装置1201の構成に加えて、性能指標算出部1602及び上限人数設定部1603を備えている。
性能指標算出部1602は、交通需要に応じて変化する群管理性能指標を算出する。本実施形態では、群管理性能指標は、平均待ち時間である。即ち、性能指標算出部(平均待ち時間算出部ともいう)1602は、かご情報取得部111に記憶されているかご情報及び運行予定記憶部112に記憶されている運行予定から、行先呼びが発生してからこの行先呼びに乗りかごが応答するまでの待ち時間の実績を算出し、その平均値(平均待ち時間)を算出して記憶する。平均待ち時間は、定期的に算出され、例えば、直近の5分間に応答した行先呼びを対象に算出される。
なお、群管理性能指標は、平均待ち時間の例に限らず、全ての利用者に占める待ち時間が所定時間(例えば60秒)以上になる利用者の割合等であってもよい。
上限人数設定部1603は、性能指標算出部1602に記憶されている平均待ち時間を読み出し、読み出した平均待ち時間に応じて乗車人数の上限値(上限人数)を定期的に設定する。例えば、乗車人数の上限値の設定は、5分おきに行われる。乗車人数の上限値の初期値は、乗りかごの定員に設定してもよい。
本実施形態では、第1割当候補選出部117、第2割当候補選出部119及び第3割当候補選出部1205は、割当候補を選出する際に、乗りかごの定員に代えて乗車人数の上限値を使用する。これにより、上述した第1から第3の実施形態において、乗りかごが定員に達したかどうかを判断するのではなく、乗りかご内の乗車人数が上限値に達するかどうかを判断する処理となる。
図17は、上限人数設定部1603が乗車人数の上限値を算出する手順の一例を示している。図17のステップS1701では、上限人数設定部1603は、平均待ち時間が第1設定値(例えば20秒)未満であるかどうか、並びに、乗車人数の上限値が所定値を超えるかどうかを判定する。所定値は、乗車人数の上限値として許容される最低値であり、乗りかごの定員に応じて決められる。一例として、乗りかごの定員が15人である場合、所定値を、定員の約7割に当たる10人に設定する。平均待ち時間が第1設定値未満であり且つ乗車人数の上限値が所定値を超える場合、ステップS1702に進む。ステップS1702では、上限人数設定部1603は、乗車人数の上限値を減らしても平均待ち時間を十分短く抑えられると判断し、乗車人数の上限値を1人減らす。
ステップS1701で条件を満たさない場合、ステップS1703に進む。ステップS1703では、上限人数設定部1603は、平均待ち時間が第2設定値(例えば30秒)以上であるかどうか、並びに、乗車人数の上限値が乗りかごの定員未満かどうかを判定する。平均待ち時間が第2設定値以上であり且つ乗車人数の上限値が乗りかごの定員未満である場合、ステップS1704に進む。ステップS1704では、上限人数設定部1603は、平均待ち時間が長いと判断し、平均待ち時間を短縮するために乗車人数の上限値を1人増加させる。
このようにして、上限人数設定部1603は、平均待ち時間が第1設定値より短い場合には、乗車人数の上限値を小さくして乗りかごの混雑を抑制し、平均待ち時間が第2設定値より長い場合には、乗車人数の上限値を大きくして待ち時間を短縮する。
以上のように、本実施形態に係るエレベータ群管理制御システム1600は、群管理性能指標に応じて乗車人数の上限値を変更し、乗車人数の上限値に基づいて乗りかごが割当可能かどうかを判定するので、待ち時間及び混雑のバランスがよい制御を実現することができ、より快適なエレベータの運行サービスを提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。