図1は、本発明の一実施例であるオルゴール10における演奏機構部100の構成を斜め上方から視た様子を例示する斜視図である。本実施例において、オルゴール10の上方とは、オルゴール10が図示しない設置平面部に設置される際の上方(略鉛直上方)をいう。図1に示すように、本実施例のオルゴール10は、第1軸12を中心として回転可能に設けられた複数(例えば、40個)のスターホイール14を備えている。第1軸12に沿って設けられた振動板16を備えている。振動板16には、複数のスターホイール14にそれぞれ対応する複数の振動弁18が第1軸12に沿って設けられている。第1軸12と並んで第2軸20が設けられている。好適には第1軸12と平行に第2軸20が設けられている。第2軸20を中心として回動可能に設けられた、複数のスターホイール14にそれぞれ対応する複数のストッパ22を備えている。複数のストッパ22にそれぞれ対応する複数の電磁石24を備えている。第1軸12と平行に第3軸26が設けられている。第3軸26に相対回転不能に設けられてその第3軸26と一体的に回転させられる、複数のスターホイール14にそれぞれ対応する複数のサンホイール28を備えている。第1軸12及び第3軸26をそれぞれの軸心まわりの回転可能に、第2軸20を回転不能に支持すると共に、複数の電磁石24等が組み付けられる組付フレーム104を備えている。振動板16が固定される台座30を備えている。第1軸12及び第3軸26をそれぞれの軸心まわりに同期して回転駆動するための駆動力を発生させるモータ32を備えている。複数の振動弁18は、予め定められた複数の音高(音階)にそれぞれ対応し、後述するようにスターホイール14の爪36により弾かれることで対応する音階の音を奏でるように構成されている。後述のように、スターホイール14、サンホイール28、及びストッパ22等が爪36を駆動する駆動機構102に対応する。オルゴール10において、図1のように構成された演奏機構部100は、第2フレーム70b等が後述する筐体34に組み付けられることで、その筐体34の内部に収容される。
図4は、図1に示す本実施例のオルゴール10における演奏機構部100が筐体34内に収容された様子を説明する平面図である。図5は、演奏機構部100が筐体34内に収容された様子を説明する概略図であり、図4のV-V視断面図である。図4及び図5に示すように、オルゴール10は、第1軸12、複数のスターホイール14、振動板16、第2軸20、複数のストッパ22、複数の電磁石24、第3軸26、複数のサンホイール28等の構成を収容する筐体34を備えている。第1軸12、複数のスターホイール14、振動板16、第2軸20、複数のストッパ22、複数の電磁石24、第3軸26、複数のサンホイール28等は、組付フレーム104に組み付けられている。組付フレーム104は、第1フレーム70aに組み付けられている。第1フレーム70aは、ねじ106(図12等を参照)により第2フレーム(下プレート)70bに固定されている。振動板16が取り付けられた台座30は、第2フレーム70bに固定されている。第2フレーム70bは、ねじ72、74により筐体34に固定されている。組付フレーム104、第1フレーム70a、及び第2フレーム70bは、好適には、それぞれ別個の部材として構成されたものである。図1のように構成された演奏機構部100は、第2フレーム70bが筐体34に固定されることで、筐体34の内部に収容されている。換言すれば、オルゴール10は、台座30と、スターホイール14、サンホイール28、及びストッパ22等を備えた駆動機構102とを、前記筐体34に固定する第2フレーム70を備えている。すなわち、本実施例においては、第2フレーム70bが、台座30と駆動機構102とを筐体34に固定するフレームに対応する。
筐体34の底板34aは、振動弁18の振動に共振する共鳴板として機能する。すなわち、筐体34は、好適には、共鳴板として機能する底板34aと、底板34aに垂直な方向に設けられて筐体34における四方を囲繞する側壁部34bとを、備えて構成されている。すなわち、共鳴板としての底板34aは、その四方の端部において筐体34(側壁部34b)に固定されている。オルゴール10の演奏においては、底板34aのみならず側壁部34bも振動弁18の振動に共振することが考えられる。すなわち、側壁部34bは、振動弁18の振動に共振する共鳴板として機能する。台座30は、底板34aに直接又は間接的に固定されている。好適には、台座30と、底板34aとが、振動伝達部材である円柱状(筒状)の魂柱76を介して接続されていることにより、間接して固定されている。すなわち、台座30に直接固定され且つ共鳴板34aに直接固定された魂柱76を備えている。換言すれば、魂柱76は、台座30と底板34aとの間に介在された支柱である。魂柱76は、好適には、共鳴板としての底板34aの端部よりも内側すなわち側壁部34bの内側に設けられている。本実施例においては、台座30と共鳴板34aとの間に1本の魂柱76が介在された構成について説明するが、2本以上の魂柱76が介在されたものであってもよい。或いは、台座30が底板34aに載置され、直接固定されたものであってもよい。すなわち、魂柱76は、必ずしも設けられなくともよい。本実施例においては、振動伝達部材である魂柱76が、台座30に固定され且つ底板34aに固定される第1部材の一例に対応する。図5に示すように、オルゴール10は、複数の電磁石24それぞれの励磁乃至非励磁を制御する制御部としてのECU(Electric Control Unit)60を備えている。
図2は、オルゴール10の演奏機構部100におけるスターホイール14、ストッパ22、及びサンホイール28等の構成を説明するために、それらの構成を第1軸12の軸心方向に視た図である。図3は、図2に示すスターホイール14、ストッパ22、及びサンホイール28等の構成を斜め上方から視た様子を示す斜視図である。図3においては、複数のスターホイール14のうち2つのスターホイール14a、14bと、それらに対応するストッパ22a、22b及び電磁石24a、24b等を例示している。スターホイール14a、14bに対応するサンホイール28a、28bを例示すると共に、そのサンホイール28bに隣接するサンホイール28cを併せて示している。隣接するサンホイール28とは、第3軸26に沿ってその軸を中心に並んで配置されているサンホイール28をいう。図3以外の図面である図1及び図2等において、個々のスターホイール14a、14bを特に区別しない場合には単にスターホイール14として図示している。個々のストッパ22a、22bを特に区別しない場合には単にストッパ22として図示している。個々のサンホイール28a、28b、28cを特に区別しない場合には単にサンホイール28として図示している。スターホイール14とストッパ22とが対応するとは、そのストッパ22の係止状態においてそのスターホイール14の回転が係止されることをいう。スターホイール14とサンホイール28とが対応するとは、そのスターホイール14のギヤ部38とそのサンホイール28の外周歯40とが相互に噛み合うことをいう。図2においては、フレーム29及び魂柱76等の図示を省略している。図6〜9において同じである。図3においては、振動板16、フレーム29、及び台座30等の図示を省略すると共に、第1軸12、第2軸20、及び第3軸26それぞれの一部を省略(切断)して示している。
図2及び図3に示すように、スターホイール14は、複数の爪36を備えている。爪36は、スターホイール14の径方向外側に向けて放射状に形成された突起部である。好適には、スターホイール14の周方向に等位相で4つの爪36を備えている。すなわち、スターホイール14の周方向に90°毎に爪36が設けられている。スターホイール14は、爪36よりも内周側(径方向内側)に複数のギヤ部38を備えている。好適には、各爪36に対応する位置に2歯ずつの突出部としてのギヤ部38を備えている。ギヤ部38は、複数のスターホイール14が第1軸12に沿って配置される間に配置されている。すなわち、ギヤ部38は、第1軸12の軸方向に関して、爪36とは異なる位置に配置される。具体的には、軸方向に関して相互に隣接する爪36相互間に配置される。サンホイール28は、径方向外側に向けて複数の外周歯40を備えて構成されている。図2に示すように、スターホイール14が第1軸12に組み付けられた状態において、爪36は、第1軸12の軸心を中心とするその回転軌跡が対応する振動弁18の少なくとも一部に接触する位置に設けられている。且つ、対応するストッパ22の後述する係止状態においてそのストッパ22に係止される位置に設けられている。この係止される位置とは、爪36がストッパ22に当接されられた状態において、スターホイール14の第1軸12の回転への追従回転を阻止する位置である。すなわち、爪36は、振動板16における振動弁18を弾くと共に、ストッパ22と接触することで、スターホイール14の第1軸12の回転に伴う追従回転を阻止するストッパとして機能する。ギヤ部38は、第1軸12の軸心を中心とするその回転軌跡が対応するサンホイール28の外周歯40と噛み合わされる位置に設けられている。
図2に一部(破線で囲繞した部分)を拡大して示すように、サンホイール28の外周歯40には面取り78が付けられている。面取り78は、好適には、外周歯40の先端部における軸方向の両側部に施されたものである。スターホイール14の外周部には面取り80が付けられている。面取り80は、好適には、スターホイール14の外径稜線に施されたものである。スターホイール14の外径稜線とは、スターホイール14における外周面82における軸方向両端部である。サンホイール28の面取り78及びスターホイール14の面取り80の少なくとも一方が施されたものであればよい。スターホイール14の外周面82における端部の面取り80に加えて、爪36の稜線(軸方向両端部)等に面取りが施されたものであってもよい。
図2に示すように、ストッパ22は、好適には、ストッパ22が第2軸20を中心にしてスターホイール14に向けて回動させられることでスターホイール14における少なくとも1つの爪36に当接させられる板部材50を備えている。電磁石24の励磁状態において、その電磁石24の磁力によりストッパ22を第1回動方向すなわちスターホイール14から離隔させられる方向へ回動させる作用を発生させる磁性部材52を備えている。磁性部材52は、例えば、鉄、コバルト、ニッケル等の鉄属元素を主成分とする金属である。磁性部材52は、好適には特に磁化されていない鉄板であるが、磁化された所謂永久磁石であってもよい。ストッパ22において、磁性部材52は、板部材50と一体的に設けられたエンジニアリングプラスチック等の合成樹脂部材54にインサート成形されたものであり、斯かる構成により電磁石24の吸引による磁性部材52のビビリが抑制される。
電磁石24は、好適には、鉄等の磁性材料である鉄芯の周囲に円筒状のコイルを備えている。そのコイルに電流が流されることで励磁状態とされ磁力(磁場)を発生させる。一方、コイルに電流が流されないと非励磁状態とされるよく知られた一般的な電磁石である。本実施例においては、電磁石24のコイルに電流が流された状態が、電磁石24が励磁された第1状態に相当する。電磁石24のコイルに電流が流されない状態が、第1励磁状態より磁力が弱い第2状態に相当する。
図10は、ECU60に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。この図10に示す楽譜データベース62は、オルゴール10による演奏の対象となる曲にそれぞれ対応する複数の楽譜データを記憶する。楽譜データベース62は、よく知られたSDカード(Secure Digital Card)等の記憶媒体に納められ、ECU60が記憶媒体に記録されたデータを読み取り可能であってもよい。楽譜データは、例えば、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)形式のデータであり、予め定められた複数種類の楽器毎に、その楽器に対応する音の出力タイミング及び音階等が定められた複数のトラック(チャンネル)を含んでいる。本実施例のオルゴール10は、例えば、MIDIデータにおけるガイドメロディすなわち主旋律に相当するトラック(チャンネル)の出力タイミング及び音階に基づいて以下に詳述する演奏制御を行う。
係止解除タイミング判定部64は、複数のストッパ22それぞれによるスターホイール14における爪36の係止を解除するタイミングを判定する。換言すれば、複数のストッパ22それぞれに対応する電磁石24の励磁乃至非励磁を切り替えるタイミング(電磁石24の通電を実行乃至停止するタイミング)を判定する。例えば、楽譜データベース62に記憶された複数の楽譜データのうち所定の楽譜データに対応する曲の演奏において、その楽譜データに定められた音の出力タイミング及び音階に基づいて前記判定を行う。具体的には、各音階に対応する複数の振動弁18を楽譜データに定められた出力タイミングで弾くために、ストッパ22によるスターホイール14における爪36の係止を解除するタイミングを判定する。第1軸12及び第3軸26それぞれの回転速度が一定の値に定まる場合、各スターホイール14に対応するストッパ22による係止が解除されてからそのスターホイール14の爪36により対応する振動弁18が弾かれるまでのタイムラグは予め求められる。係止解除タイミング判定部64は、演奏対象となる楽譜データに基づいて前記判定を行う。楽譜データにおいては、各振動弁18に対応する音階の出力タイミングが定められている。その出力タイミングよりも前記タイムラグに相当する時間前に、その振動弁18に対応するストッパ22によるスターホイール14における爪36の係止が解除されるように前記判定を行う。
電磁石励磁/非励磁制御部66は、係止解除タイミング判定部64による判定結果に基づいて、複数の電磁石24それぞれの励磁乃至非励磁を切り替える。すなわち、係止解除タイミング判定部64による判定結果に基づいて、複数の電磁石24それぞれの通電を実行乃至停止する制御を行う。具体的には、係止解除タイミング判定部64によりストッパ22によるスターホイール14における爪36の係止を解除するタイミングが判定された場合、そのタイミングで対応する電磁石24を非励磁状態から励磁状態へ切り替える。すなわち、斯かるタイミングで電磁石24の通電を開始する。電磁石励磁/非励磁制御部66は、好適には、電磁石24を非励磁状態から励磁状態へ切り替えた後、予め定められた規定時間経過後にその電磁石24を励磁状態から非励磁状態へ切り替える。すなわち、斯かるタイミングで電磁石24の通電を停止させる。
図2に示すように、電磁石24は、各ストッパ22に対応して設けられている。好適には、ストッパ22における磁性部材52が埋設された合成樹脂部材54の近傍に設けられている。電磁石24は、磁性部材52と非接触に設けられている。すなわち、電磁石24とストッパ22とは、相互に最も接近した状態において非接触とされるものである。換言すれば、ストッパ22は、後述する係止状態及び非係止状態の何れにおいても、磁性部材52と電磁石24との間に所定の間隔があくように構成されたものである。この間隔は、好適には、電磁石24の励磁状態において、その電磁石24の磁力作用を磁性部材52に及ぼし得る範囲内とされる。例えば、電磁石24とストッパ22とが相互に最も離隔させられた状態においても、電磁石24の励磁状態においてはその電磁石24の磁力により磁性部材52が引き寄せられるように間隔が設計される。すなわち、ストッパ22をスターホイール14から離隔させる方向に回動させる引力が発生させられるように、間隔が設計される。後述する図8に一点鎖線で示すように、電磁石24の軸心(鉄芯の中心軸)は、ストッパ22の回動中心すなわち第2軸20の軸心と交わる位置関係とされる。
図2及び図3に示すように、ストッパ22は、好適には、スナップばね(ねじりコイルばね)56を備えている。スナップばね56は、ストッパ22をスターホイール14に向けて回動させる方向に付勢する付勢部材である。ストッパ22及び板部材50は、好適には、電磁石24の非励磁状態においては、スナップばね56により付勢されることでスターホイール14に向けて回動させられる。そして、板部材50は、スターホイール14に設けられた複数の爪36の少なくとも1つを係止する係止状態(後述する図6等を参照)とされる。一方、電磁石24の励磁状態においては、ストッパ22及び板部材50は、電磁石24の磁力によりスナップばね56による付勢に逆らって第2軸20を中心として第1回動方向、すなわち、スターホイール14から離隔させられる方向に回動させられる。そして、電磁石24による磁力に応じた磁性部材52を引き寄せる力(引力)とスナップばね56の付勢力が釣り合った位置においてストッパ22が停止される。すなわち、板部材50による爪36の係止が解除される非係止状態(後述する図7〜図9等を参照)とされる。
図2及び図3に示すように、複数の電磁石24及び各電磁石24に対応するストッパ22は、好適には、第1群に属する複数の電磁石24及びストッパ22と、第2群に属する複数の電磁石24及びストッパ22とが、第1軸12の軸心を中心とする周方向に90°の位相差で(すなわち相互に90°の角度を成す位置に)配設されている。好適には、複数の電磁石24のうち最も端に設けられた電磁石24から他端側へ向かって1からn(他端における電磁石24に対応)までの数値を付した場合、奇数を付された複数の電磁石24が前記第1群に、偶数を付された複数の電磁石24が前記第2群にそれぞれ属する。すなわち、本実施例のオルゴール10において、好適には、例えば図3に示すスターホイール14a、14bのように、相互に隣接するスターホイール14にそれぞれ対応する電磁石24(図3においては電磁石24a、24b)が、第1軸12の軸心を中心とする周方向に90°の位相差で交互に配設されている。斯かる構成とすることで、オルゴール10における演奏機構部100の構成(特に、複数の電磁石24)の配設スペースを可及的に小さくすることができ、装置を小型化することができる。
図6〜図9は、以上のように構成されたオルゴール10における演奏機構部100の具体的な作動について説明する図である。オルゴール10による演奏時において、第1軸12及び第3軸26は、図6等に矢印で示すように、モータ32の駆動により常時それぞれの軸心まわりに同期的に回転させられている。第1軸12及び第3軸26は、相互に逆回りに回転駆動されており、好適には、第1軸12はスターホイール14に設けられた爪36が振動板16の振動弁18を下方から上方に向けて弾く方向に回転される。第3軸26はサンホイール28の外周歯40とスターホイール14のギヤ部38とが噛み合った状態において、スターホイール14を回転駆動する方向すなわち図6に矢印で示す方向にそれぞれ回転させられている。複数のサンホイール28は、第3軸26に対して相対回転不能に設けられているため、オルゴール10による演奏時においては、第3軸26の軸心まわりの回転に伴い常時それぞれの軸心まわりに回転させられている。
図6は、ストッパ22が係止状態とされた場合における作動を説明している。この図6に示すように、対応する電磁石24に対する通電が行われず、電磁石24が非励磁状態とされている場合には、ストッパ22の板部材50は、スナップばね56により付勢される。これにより、ストッパ22は、スターホイール14側に回動させられ、スターホイール14に設けられた複数の爪36の少なくとも1つを係止する係止状態とされる。すなわち、複数の爪36の少なくとも1つにおける第1軸12の回転方向側(回転が進む側)に、板部材50における先端部が当接させられる。スターホイール14は、第1軸12との接触部位における摩擦力により、第1軸12に追従回転させられるように構成されている。図6に示すような状態においては、ストッパ22が係止状態とされていることで、接触部位における摩擦力に逆らってスターホイール14の第1軸12に対する追従回転が阻止される。換言すれば、第1軸12の軸心を中心とするスターホイール14の位相(振動弁18等に対する位置関係)が固定されたまま、そのスターホイール14における組付穴部と第1軸12との接触面が軽い負荷をもって滑りつつそれらが相対回転させられる状態となる。斯かる状態においては、スターホイール14におけるギヤ部38はサンホイール28における外周歯40と噛み合わない位置とされ、サンホイール28の回転はスターホイール14の回転に影響しない。
図7は、ストッパ22が係止状態から非係止状態へ切り替えられる場合における作動を説明している。図6に示す状態から、電磁石24に対する通電が行われると、通電された電磁石24が励磁状態とされる。そして、ストッパ22の板部材50が電磁石24の磁力によりスナップばね56による付勢に逆らって第2軸20を中心としてスターホイール14から離隔させられる方向(第1回動方向)に回動させられる。これにより、板部材50による爪36の係止が解除される非係止状態とされる。すなわち、スターホイール14が、第1軸12との接触部位における摩擦力によりその第1軸12に追従回転させられる状態とされる。
図8は、図7の破線で囲んだ部分を拡大して示す図である。図7に示す非係止状態では、磁性部材52と、電磁石24における軸心の先端とが最も接近させられるが、図8に示すように、この状態において電磁石24と磁性部材52との間には間隔dの空間が存在し、非接触とされる。好適には、磁性部材52における電磁石24側の面は第2軸20を中心とする部分円筒状の曲面52aとされている。このため、ストッパ22が第2軸20まわりに回動させられても、電磁石24と磁性部材52との間隔dが変化しないように構成されている。
図9は、スターホイール14の爪36が振動板16の振動弁18を弾いて音を発生させる作動を説明している。ストッパ22が非係止状態とされ、板部材50による爪36の係止が解除される。その後、スターホイール14が、第1軸12との接触部位における摩擦力によりその第1軸12に追従回転させられる。すると、図9に示すように、複数の爪36のうち1つの爪36が振動板16の振動弁18に接触させられる位相付近において、爪36に隣接する回転方向側(すなわち回転方向に90°の位相差で設けられた)爪36に対応するギヤ部38がサンホイール28の外周歯40と噛み合わされる。この状態においては、サンホイール28の回転によりスターホイール14が図9に矢印で示す方向すなわち爪36が振動板16の振動弁18を下方から上方に向けて弾く方向に駆動される。斯かる作動によって振動弁18が爪36により弾かれ、振動弁18に対応する音階の音が奏でられる。そのようにして振動弁18を弾いた後、スターホイール14が更に第1軸12に追従回転させられることでギヤ部38とサンホイール28の外周歯40とが再び噛み合わない状態となる。図7に示す状態からギヤ部38と外周歯40とが噛み合わない状態への移行過程において電磁石24の通電が停止され、電磁石24が非励磁状態とされる。これにより、スナップばね56の付勢によりストッパ22がスターホイール14に向けて回動させられ、再び図6に示す状態に復帰させられる。
図4に示すように、振動板16は、複数の振動弁18が備えられた一端とは異なる部分において台座30に固定されている。好適には、複数の振動弁18が備えられた側の端部とは反対側の端部において台座30に固定されている。好適には、図5に示すように、台座30における振動板16が取り付けられる部分(上面部)に複数(本実施例では8本)のねじ穴(雌ねじ)30aが形成されている。振動板16における各ねじ穴30aに対応する部分には貫通穴16aが設けられている。振動板16は、複数(本実施例では8本)のねじ(雄ねじ)42が各貫通穴16aに挿通された状態で各ねじ穴30aに締結(螺合)されることで台座30に対して固定(ねじ止め)されている。振動板16の台座30に対する固定は、ねじ止め固定の他、溶接、ろう接、接着剤による接着等により行われるものであってもよい。
図4に示すように、振動板16には、複数(例えば、40本)の振動弁18が設けられている。振動板16は、各振動弁18が、一端を自由端、他方を固定端として形成されている。台座30は、固定部を備えている。固定部は、複数の振動弁18の固定端側を、台座30に対して固定するために備えられる。振動弁18それぞれの固定端に沿って、一定距離離れた間隔で、複数の固定部が備えられる。本実施例においては、ねじ穴30a及びねじ42等が斯かる固定部に対応する。複数の振動弁18は、図1に示すように、複数のスターホイール14にそれぞれ対応する。振動弁18がスターホイール14に対応するとは、スターホイール14に備えられた爪36が振動弁18を弾くことが可能な位置に配置されたことを言う。振動板16が台座30に組み付けられることで、複数の振動弁18が第1軸12に沿って設けられる構成となる。複数の振動弁18は、予め定められた複数の音階にそれぞれ対応する。スターホイール14の爪36により弾かれることで対応する音階の音を奏でるように構成されている。すなわち、振動弁18は、オルゴール10における発音体に対応する。換言すれば、複数の振動弁18は、スターホイール14の爪36により弾かれることで、それぞれ異なる周波数の音を発生させる。複数の振動弁18は、一端からそれぞれの音高に対応して高音から低音の順に配設されている。例えば、図4に示す例では図4における左側から右側に向かって高音から低音の順に配設されている。複数の振動弁18は、それぞれの特性が異なる。例えば、各振動弁18の長手方向の寸法(弁長さ寸法)が音高に応じて異なる。例えば、振動弁18に対応する音高が高いほど弁長さ寸法が短く、音高が低いほど弁長さ寸法が長い。すなわち、最高音に対応する振動弁18が最短の弁長さ寸法を備えた振動弁に、最低音に対応する振動弁18が最長の弁長さ寸法を備えた振動弁にそれぞれ対応する。図4に示すように、本実施例においては、複数の振動弁18の先端側すなわちスターホイール14に対向する側が揃えられているが、逆側すなわち根本側が揃えられたものであってもよい。
魂柱76は、例えば中空管状の部材であり、好適には木製である。例えば、スプルース(トウヒ)等の木材が好適に用いられる。或いは、魂柱76は金属製であってもよい。筐体34における底板34aは、好適には木製である。例えば、魂柱76と同様にスプルース等の木材が好適に用いられる。筐体34は、好適には、側壁部34bも含めて木製である。好適には、図5に示すように、台座30における魂柱76が取り付けられる部分(底面部)にねじ穴(雌ねじ)30bが形成されている。台座30の底面におけるねじ穴30bの周囲には、魂柱76の外径寸法に合わせて円形の窪み30cが形成されている。底板34aには、魂柱76が取り付けられる部分に対応して貫通穴34cが形成されている。魂柱76における一方の端部が台座30の窪み30cに嵌め入れられ、他方の端部が底板34aの貫通穴34cと中空が略一致する位置関係とされた状態で、ねじ(雄ねじ)である締結部材44が貫通穴34c及び魂柱76の中空に挿通されて台座30のねじ穴30bに締結(螺合)されることで、台座30、魂柱76、及び底板34aが相互に固定されている。締結部材44は、好適には金属製の部材(金属棒)であるが、木製のねじであってもよい。魂柱76は必ずしも円柱状ではなく、角柱状等に構成されたものであってもよい。魂柱76は中空管状に形成されたものでなくともよい。斯かる構成において、魂柱76は、その一方の端部において台座30にねじ止めされ、他方の端部において他のねじで底板34aにねじ止めされるものであってもよい。
図5に示すように、台座30には底面にねじ穴(雌ねじ)30dが形成されており、ねじ(雄ねじ)58により第2フレーム70bに締結されている。第2フレーム70bには、台座30が固定された位置に、魂柱76の外径よりも径が大きい貫通穴84が形成されている。好適には、台座30が第2フレーム70bに固定された場合における窪み30c(ねじ穴30a)に対応する位置に、窪み30cよりも径が大きい貫通穴84が形成されている。魂柱76は、台座30及び底板34aに固定される場合に、第2フレーム70bにおける貫通穴84に挿入され、且つ貫通穴84の径より内側において固定される。換言すれば、台座30、第2フレーム70b、及び魂柱76が相互に固定された場合に、魂柱76が貫通穴84に挿入され且つ貫通穴84の径より内側において固定されることで、魂柱76と第2フレーム70bとが非接触とされる。すなわち、台座30、第2フレーム70b、及び魂柱76が相互に固定された場合に、魂柱76と第2フレーム70b(貫通穴84)との間には所定の間隙が存在する。
図11は、筐体34における側壁部34bの一部を取り除いて示す斜視図である。この図11に示すように、振動伝達部材である魂柱76は、台座30と共鳴板である底板34aとの間に立設されている。好適には、台座30の底面及び底板34aに垂直に設けられている。魂柱76が介在されることで、台座30と底板34a(筐体34)とが相互に固定されている。すなわち、台座30が固定する振動弁18と離間する位置に底板34aが固定されている。台座30が固定する振動弁18と底板34aとの間に魂柱76が配置され、魂柱76の径と直交する方向の長さ分の距離を離して配置されている。魂柱76は、好適には、台座30において、台座30が固定する振動弁18の低音側に対応する位置に固定(締結)されたものである。オルゴールにおいては一般に低音側の振動弁18ほど共鳴が悪い。換言すれば、スターホイール14の爪36で弾いた際に発生させられる音が小さい。従って、台座30が固定する振動弁18の低音側に対応する位置に魂柱76が固定されることで低音側の振動弁18に対応する音量が増大する。よって、音域毎のバランスがよくなり、全体の音の共鳴が均一となる。或いは、台座30が固定する振動弁18の音階に関する略中央位置に魂柱76が設けられたものであってもよい。
図12は、図4のXII-XII視断面図である。図13は、図4のXIII-XIII視断面図である。図14は、筐体34における側壁部34bの一部を取り除いて示す斜視図である。図5、及び図12〜図14に示すように、本実施例のオルゴール10には、演奏機構部100と筐体34との間の各部に、振動の伝達を抑制する振動伝達抑制部材86、88、90が設けられている。好適には、筐体34と第2フレーム70bとの間に振動伝達抑制部材86、88が設けられている。駆動機構102(第1フレーム70a)と第2フレーム70bとの間に振動伝達抑制部材90が設けられている。
図5及び図13に示すように、筐体34に対して第2フレーム70bを締結するねじ72、74は、頂部にフランジ状の突出部が形成された所謂段ねじ(段付ボルト)である。振動伝達抑制部材86、88は、好適には、合成ゴムや天然ゴムをはじめとするゴム状弾性を示す弾性部材であり、ねじ72、74と第2フレーム70bとの間に介挿されている。すなわち、ねじ72、74は、振動伝達抑制部材86、88を介して第2フレーム70bを筐体34に固定する。換言すれば、ねじ72、74と第2フレーム70bとの間に振動伝達抑制部材86、88が噛まされている。斯かる構成において、振動伝達抑制部材86、88は、第2フレーム70bから筐体34へ伝達される振動を減衰させるダンパとして機能する。本実施例においては、振動伝達抑制部材86、88、90が、駆動機構102と、底板34aを備える筐体34との間に配置される第2部材の一例に対応する。
図12及び図14に示すように、振動伝達抑制部材90は、駆動機構102と第2フレーム70bとの間に介挿されたマット状(平面状)の部材であり、好適には、フェルトをはじめとする所定の厚みを有する布である。振動伝達抑制部材90は、好適には、第1フレーム70aと第2フレーム70bとの間に介在されている。振動伝達抑制部材90は、好適には、振動伝達抑制部材86、88よりも弾性が低い部材である。すなわち、オルゴール10において、駆動機構102と第2フレーム70bとの間には、第2フレーム70bと筐体34との間に設けられた第1材質の振動伝達抑制部材86、88より弾性が低い第2材質の振動伝達抑制部材90が設けられている。駆動機構102として、第1軸12、スターホイール14、第2軸20、ストッパ22、電磁石24、第3軸26、及びサンホイール28等が、組付フレーム104に組み付けられている。組付フレーム104は、第1フレーム70aに組み付けられている。第1フレーム70aは、第2フレーム70bとの間に振動伝達抑制部材90が介挿された状態でねじ106等により固定されている。換言すれば、第1フレーム70aと第2フレーム70bとの間に振動伝達抑制部材90が噛まされている。好適には、第1フレーム70aは第2フレーム70bと直接接触していない。図14に示すように、第1フレーム70aには、第2フレーム70bとの固定部に相当する部分に庇状に突出した突出部108が設けられている。振動伝達抑制部材90は、突出部108と第2フレーム70bとの間に、少なくとも突出部108の下面(第2フレーム70bと対向する面)を被覆するように設けられている。好適には、第1フレーム70aを第2フレーム70bに締結するねじ106の頭と第1フレーム70aとの間にも振動伝達抑制部材90が介挿される。斯かる構成において、振動伝達抑制部材90は、駆動機構102(第1フレーム70a)から第2フレーム70bへ伝達される振動を減衰させるダンパとして機能する。
以上のように構成された本実施例のオルゴール10においては、台座30と共鳴板である底板34aとが振動伝達部材である魂柱76を介して接続されていることから、振動弁18の振動が底板34aに効率的に伝達される。すなわち、振動弁18の振動は、台座30及び魂柱76を介して共鳴板である底板34aに伝播される。且つ、駆動機構102と筐体34との間に振動の伝達を抑制する振動伝達抑制部材86、88、90が介挿されていることから、駆動機構102の駆動音が筐体34に響くことを好適に抑制できる。更に、駆動機構102(第1フレーム70a)と第2フレーム70bとの間に比較的弾性が小さい振動伝達抑制部材90が介挿され、第2フレーム70bと筐体34との間に比較的弾性が大きい振動抑制部材86、88が介挿されている。すなわち、駆動機構102と第2フレーム70bとの間に比較的変形(弾性変形)が小さい振動伝達抑制部材90が介挿されている。これにより、駆動機構102から第2フレーム70bへの振動の伝達を抑制しつつ、振動伝達抑制部材90の変形によるスターホイール14の爪36と振動弁18との間の距離の変化を好適に抑制できる。スターホイール14の爪36と振動弁18との間の距離が変化すると振動弁18を弾いた際の音量が変化するため、上記の構成により、オルゴール10における意図しない音量の変化を抑制できる。第2フレーム70bと筐体34との間には、比較的弾性が大きい振動伝達抑制部材86、88が介挿されているため、第2フレーム70bから筐体34への振動の伝達を効率的に抑制できる。すなわち、本実施例によれば、駆動機構102の駆動音を抑制して、振動弁18で発生する音の音響を実現するオルゴール10を提供することができる。
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
本発明は、図1〜図14を用いて前述した構成に限定されるものではない。例えば、前述の実施例において、第1フレーム70a及び第2フレーム70bは、それぞれ別個の部材として構成されたものであったが、第1フレーム70a及び第2フレーム70bは一体に構成されたものであってもよい。斯かる構成においては、一体に構成された第1フレーム70a及び第2フレーム70bと筐体34との間に振動伝達抑制部材86、88、90の少なくとも1つが介挿される。組付フレーム104を備えることなく、駆動機構102が第1フレーム70aに組み付けられたものであってもよい。すなわち、第1軸12、スターホイール14、第2軸20、ストッパ22、電磁石24、第3軸26、及びサンホイール28等が第1フレーム70aに組み付けられたものであってもよい。斯かる構成においては、第1フレーム70aと筐体34との間に振動伝達抑制部材86、88、90の少なくとも1つが介挿される。
前述の実施例においては特に言及していないが、本発明は、音量調節機構を備えたオルゴールにも好適に適用される。例えば、前述のオルゴール10において、組付フレーム104が第1フレーム70aに対して移動可能に設けられ、組付フレーム104を第1フレーム70aに対して振動弁18の延伸方向に移動させることで、振動板16における各振動弁18と対応するスターホイール14との距離を変化させる音量調節機構を備えたものであってもよい。駆動機構102が取り付けられた組付フレーム104を平行移動させて各振動弁18とスターホイール14との距離を変化させることで、振動板16における各振動弁18それぞれに対して、均一な距離変化で対応するスターホイール14を移動させることができる。スターホイール14の爪36と振動弁18との間の距離が変化すると振動弁18を弾いた際の音量が変化するため、前記のような音量調節機構によりオルゴール10の音量を調節できる。斯かる構成においては、スターホイール14の爪36と振動弁18との間の距離が特に精密に調節されることが求められる。従って、例えば駆動機構102と第2フレーム70bとの間に比較的変形が小さい振動伝達抑制部材90が介挿されていることで、スターホイール14の爪36と振動弁18との間の距離を精密に調節することが可能となる。
スターホイール14に設けられる爪36の数は4つには限定されず、周方向に90°毎に設けられたものでなくともよい。スターホイール14におけるギヤ部38は、必ずしも爪36に対応する位置に設けられたものでなくともよく、周方向に位相の異なる位置に設けられたものであってもよい。第1群に属する複数の電磁石24及びストッパ22と、第2群に属する複数の電磁石24及びストッパ22とが、第1軸12の軸心を中心とする周方向に90°の位相差で配設されたものでなくともよく、例えば全ての電磁石24が同一平面上に一列に配設されたものであってもよい。逆に、爪36がスターホイール14の周方向に5つ以上設けられている場合等において、スターホイール14に設けられた爪36の数に応じて、複数の電磁石24及びストッパ22が、第1軸12の軸心を中心とする周方向に所定の位相差で3つ以上の位相に対応する位置に配設されたものであってもよい。スターホイール14を係止させるための構成として、各スターホイール14に対応して2つ以上のストッパ22が設けられたものであってもよい。ECU60がインターネット等の通信回線に接続され、その通信回線を介して楽譜データをダウンロードして楽譜データベース62に蓄積するものであってもよい。その他、スターホイール14の形状、ストッパ22の構成(板部材50の形状)、及び各構成の相対位置等は、オルゴールの設計に応じて適宜変更される。例えば、ギヤ部38は、必ずしも2歯ずつ設けられるものでなくともよく、爪36が対応する振動弁18を弾くために十分な距離及び時間だけサンホイール28から駆動されればよく、1歯或いは3歯以上のギヤ部が設けられたものであってもよい。ストッパ22は、電磁石24の励磁状態において、電磁石24の磁力によりストッパ22を第1回動方向へ回動させる作用を発生させる磁性部材として永久磁石を備えても良い。永久磁石は、好適には、電磁石24が励磁状態とされた場合に電磁石24との間で反発力(同種の磁極間の斥力)が発生する位置で、板部材50と一体的に設けられた合成樹脂部材54にインサート成形されても良い。ストッパ22の板部材50が電磁石24の磁力すなわちその電磁石24と永久磁石との間の斥力によりスナップばね56による付勢に逆らう。これにより、ストッパ22は、第2軸20を中心としてスターホイール14から離隔させられる方向(第1回動方向)に回動させられ、板部材50による爪36の係止が解除される非係止状態とされる。
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。