図1は、本発明の一実施例であるオルゴール10における演奏機構部100の構成を斜め上方から視た様子を例示する斜視図である。本実施例において、オルゴール10の上方とは、オルゴール10が図示しない設置平面部に設置される際の上方(略鉛直上方)をいう。図1に示すように、本実施例のオルゴール10は、第1軸12(図2等を参照)を中心として回転可能に設けられた複数(例えば、40個)のスターホイール14を備えている。第1軸12に沿って設けられた振動板16を備えている。振動板16には、複数のスターホイール14にそれぞれ対応する複数の振動弁18が第1軸12に沿って設けられている。第1軸12と並んで第3軸20が設けられている。好適には第1軸12と平行に第3軸20が設けられている。第3軸20を中心として回動可能に設けられた、複数のスターホイール14にそれぞれ対応する複数の係止部材22を備えている。複数の係止部材22にそれぞれ対応する複数の電磁石24を備えている。第1軸12と平行に設けられた第2軸26に相対回転不能に設けられてその第2軸26と一体的に回転させられる、複数のスターホイール14にそれぞれ対応する複数のサンホイール28を備えている。第1軸12及び第2軸26をそれぞれの軸心まわりの回転可能に、第3軸20を回転不能に支持すると共に、振動板16及び複数の電磁石24等が組み付けられるフレーム30を備えている。
オルゴール10は、第1軸12及び第2軸26をそれぞれの軸心まわりに同期して回転駆動するための駆動力を発生させる駆動部としてのモータ32を備えている。好適には、モータ32の出力軸のトルクが、よく知られたギヤ機構等を介して第1軸12及び第2軸26に伝達される。好適には、第1軸12及び第2軸26を等しい回転速度(回転角速度)で回転駆動する。すなわち、スターホイール14とサンホイール28とは、それぞれの軸端で駆動ギヤにより連結されており、モータ32の出力に対応してそれぞれの回転速度が等しくなるように減速比が設定されている。或いは、第1軸12及び第2軸26それぞれに対応して個別のモータが備えられ、それらが同じ回転速度で各軸を回転駆動するものであってもよい。複数の振動弁18は、予め定められた複数の音階にそれぞれ対応し、後述するようにスターホイール14の突起部36により弾かれることで対応する音階の音を奏でるように構成されている。オルゴール10において、図1のように構成された演奏機構部100は、フレーム30等が後述する筐体34に組み付けられることで、その筐体34の内部に収容される。
オルゴール10は、モータ32の変位量すなわち出力軸の回転量を検出する検出部を備えている。この検出部は、好適には、サンホイール28に隣接して設けられ、第2軸26の回転量を検出するエンコーダ80である。好適には、サンホイール28の外周歯40の間隔に対応する所定の角度毎の回転を検出するロータリエンコーダである。エンコーダ80は、第2軸26の回転と連動して回転させられる円盤状の回転盤82を備えている。回転盤82は、好適には、第2軸26に固定されており、第2軸26の回転駆動に連動して回転させられる。回転盤82には、サンホイール28の外周歯40(複数の歯)の配置に対応して周方向に所定の角度間隔で複数のスリット84が形成されている。エンコーダ80は、回転盤82のスリットの通過を検出するタイミングセンサ86を備えている。タイミングセンサ86は、好適には、回転盤82に対して所定の位置に設けられ、回転盤82の反対側からLED等により照射された光を受光することでスリットの通過を検出する光学式のセンサである。或いは、回転盤82に所定の角度間隔で付与された磁束を検出する磁気式のセンサであってもよい。
図15は、第2軸26に固定されたサンホイール28及び回転盤82の位置関係を説明するために、第2軸26の軸心方向に視た図である。図15に示すように、サンホイール28の外周歯40の歯数は例えば20歯であり、隣り合う2つの歯の間の角度は18°である。回転盤82に形成されたスリット84の数は例えば10個であり、隣り合う2つのスリット84の間の角度∠1(第2軸26の軸心C3を中心とする中心角)は例えば36°である。好適には、サンホイール14の外周歯40の歯数は、回転盤82に形成されたスリット84の数の整数倍である。サンホイール28の外周歯40と回転盤82のスリット84とは所定の位置関係とされている。例えば、図15に示すように、外周歯40における歯の谷間に対応する位置にスリット84が配置される位置関係とされる。外周歯40の歯数が20であり、スリット84の数が10個である場合、2つの歯毎に1つのスリット84が配置される位置関係とされる。換言すれば、回転盤82における2つのスリット84の間に外周歯40における2つの歯が配置される位置関係とされる。好適には、サンホイール28の外周歯40は、エンコーダ80が、後述する楽曲データに従って演奏される音の最短音長に対応する回転量を検出可能な間隔で、外周部に設けられている。
図16は、サンホイール28の外周歯40とスターホイール14の間欠歯車との位置関係を説明するために、第2軸26の軸心方向に視た図である。図16においては、スターホイール14の間欠歯車における間欠部分39に、ギヤ部38に対応する歯車の歯(実際には歯切りされていない)を破線で図示している。図16に示すように、スターホイール14の間欠歯車は、間欠部分39に歯が設けられているのであれば20歯の歯車である。すなわち、好適には、サンホイール14の外周歯40の歯数と等しい。好適には、間欠歯車における間欠部分39には、サンホイール28の外周歯40における所定数の歯が収まる。図16においては、4つの歯が収まっている。図16に示す例において、間欠部分39に対応する角度∠2(第1軸12の軸心C1を中心とする中心角)は72°である。間欠歯車における間欠部分39には、回転盤82における2つのスリット84が収まる。換言すれば、スターホイール14の間欠歯車における間欠部分39に対応する角度∠2は、回転盤82に形成された隣り合う2つのスリット84間の角度∠1の整数倍である。好適には、間欠部分39に対応する角度∠2は、隣り合う2つのスリット84間の角度∠1の2倍である。
図13は、図1に示す本実施例のオルゴール10における演奏機構部100が筐体34内に収容された様子を説明する概略図である。図13に示すように、オルゴール10は、第1軸12、複数のスターホイール14、振動板16、第3軸20、複数の係止部材22、複数の電磁石24、第2軸26、複数のサンホイール28等の構成を収容する筐体34を備えている。すなわち、図1のように構成された演奏機構部100は、フレーム30等が筐体34に組み付けられることで、筐体34の内部に収容されている。図13に一点鎖線で示すように、好適には、第3軸20の中心と、複数の電磁石24のうち少なくとも一部は、筐体34の底面34aに沿った同一平面上に配置されたものである。なお、全ての電磁石24が、筐体34の底面34aに沿った同一平面上に配置されたものでなくともよい。筐体34の上側平面部には、その筐体34内部の様子を視認するためののぞき窓34bが設けられている。こののぞき窓34bには、ガラス板等の透明な材料による蓋部(非図示)が設けられる。図13に示すように、オルゴール10は、複数の電磁石24それぞれの励磁乃至非励磁を制御する制御部としてのECU(Electric Control Unit)60を備えている。
図2は、オルゴール10の演奏機構部100におけるスターホイール14、係止部材22、及びサンホイール28等の構成を説明するために、それらの構成を第1軸12の軸心方向に視た図である。図3は、図2に示すスターホイール14、係止部材22、及びサンホイール28等の構成を斜め上方から視た様子を示す斜視図である。図3においては、複数のスターホイール14のうち2つのスターホイール14a、14bと、それらに対応する係止部材22a、22b及び電磁石24a、24b等を例示している。図3以外の図面である図1及び図2等において、個々のスターホイール14a、14bを特に区別しない場合には単にスターホイール14として図示している。個々の係止部材22a、22bを特に区別しない場合には単に係止部材22として図示している。個々のサンホイール28a、28b、28cを特に区別しない場合には単にサンホイール28として図示している。スターホイール14と係止部材22とが対応するとは、その係止部材22の係止状態においてそのスターホイール14の回転が係止されることをいう。スターホイール14とサンホイール28とが対応するとは、そのスターホイール14のギヤ部38とそのサンホイール28の外周歯40とが相互に噛み合うことをいう。図3においては、スターホイール14a、14bに対応するサンホイール28a、28bを例示すると共に、そのサンホイール28bに隣接するサンホイール28cを併せて示している。隣接するサンホイール28とは、第2軸26に沿ってその軸を中心に並んで配置されているサンホイール28をいう。図3においては、振動板16及びフレーム30の図示を省略すると共に、第1軸12、第3軸20、及び第2軸26それぞれの一部を省略(切断)して示している。
図2及び図3に示すように、スターホイール14は、径方向外側に向けて放射状に複数の突起部36を備えている。好適には、スターホイール14の周方向に等位相で4つの突起部36を備えている。すなわち、スターホイール14の周方向に90°毎に突起部36が設けられている。スターホイール14は、突起部36よりも内周側(径方向内側)に、径方向外側に向けて複数のギヤ部38を備えている。好適には、各突起部36に対応する位置に2歯ずつの突出部としてのギヤ部38を備えている。すなわち、スターホイール14は、ギヤ部38と、径方向外側の周の一部にサンホイール14の歯と噛み合わされない間欠部分39(図16を参照)とを有する間欠歯車を備えている。ギヤ部38は、複数のスターホイール14が第1軸12に沿って配置される間に配置されている。すなわち、ギヤ部38は、第1軸12の軸方向に関して、突起部36とは異なる位置に配置される。具体的には、軸方向に関して相互に隣接する突起部36相互間に配置される。サンホイール28は、径方向外側に向けて複数の外周歯40を備えて構成されている。すなわち、外周部に複数の歯を備えた歯車である。図2に示すように、スターホイール14が第1軸12に組み付けられた状態において、突起部36は、第1軸12の軸心を中心とするその回転軌跡が対応する振動弁18の少なくとも一部に接触する位置に設けられている。且つ、対応する係止部材22の後述する係止状態においてその係止部材22に係止される位置に設けられている。この係止される位置とは、突起部36が係止部材22に当接されられた状態において、スターホイール14の第1軸12の回転への追従回転を阻止する位置である。すなわち、突起部36は、振動板16における振動弁18を弾くと共に、係止部材22と接触することで、スターホイール14の第1軸12の回転に伴う追従回転を阻止するストッパとして機能する。ギヤ部38は、第1軸12の軸心を中心とするその回転軌跡が対応するサンホイール28の外周歯40と噛み合わされる位置に設けられている。
図2に一部(破線で囲繞した部分)を拡大して示すように、サンホイール28の外周歯40には面取り68が付けられている。面取り68は、好適には、外周歯40の先端部における軸方向の両側部に施されたものである。スターホイール14の外周部には面取り70(図4を参照)が付けられている。面取り70は、好適には、スターホイール14の外径稜線に施されたものである。スターホイール14の外径稜線とは、スターホイール14における外周面72における軸方向両端部である。サンホイール28及びスターホイール14の回転に従って、サンホイール28の外周歯40のエッジ(軸方向両端部)がスターホイール14の外周面(外径)の稜線に重なる際、面取り68、70が付けられていることで例えば後述するスターホイール14の外周面72等と相互に干渉することなくスムースに入り込む。これにより、衝撃音の発生を好適に抑制できる。サンホイール28の面取り68及びスターホイール14の面取り70の少なくとも一方が施されたものであればよい。スターホイール14の外周面72における端部の面取り70に加えて、突起部36の稜線(軸方向両端部)等に面取りが施されたものであってもよい。サンホイール28及びスターホイール14において、面取り68、70は必ずしも付けられたものでなくともよい。
図4は、スターホイール14の構成を詳しく説明するために、そのスターホイール14を軸心方向に視た正面図である。図4に示すように、スターホイール14は、好適には、径方向外側に向けて複数の突起部36を備えた金属板である金属プレート部42を備えている。金属プレート部42が、エンジニアリングプラスチック等の合成樹脂材料である合成樹脂部44内にインサート成形されているため、突起部36に強い力が加わっても、突起部36とギヤ部38の位置関係は保持される。インサート成形とは、例えば、金型内に予め挿入した金属部材の周囲に合成樹脂材料を注入して金属部材及び合成樹脂部材を一体的に成形する方法である(以下の説明において同じ)。好適には、複数の突起部36以外の部分が合成樹脂部44に覆われる。ギヤ部38は、好適には、合成樹脂部44の一部として構成される樹脂製ギヤ部である。合成樹脂部44は、その内周側に組付穴部46を備えており、組付穴部46に第1軸12が挿入されることでその第1軸12に組み付けられる。斯かる構成により、スターホイール14が、サンホイール28と接触する際のビビリが抑制される。スターホイール14が第1軸12に組み付けられた状態において、組付穴部46の内周面と第1軸12の外周面(接触面)との間には所定の摩擦力がはたらくように構成される。摩擦力を付与するため、好適には、図4に示すように、組付穴部46の内周面と第1軸12の外周面との間に摩擦力を付与するためのフリクションばね48が設けられる(摩擦力機能)。フリクションばね48が、第1軸12と接触する場合、互いに金属の部材が接触するため摩耗する恐れがある。本実施例では、フリクションばね48による第1軸12への押し付けは、合成樹脂部材からなる合成樹脂部44を介して行われるため、フリクションばね48と第1軸12とが摩耗することを防ぐ。好適には、フリクションバネ48はピアノ線であり、そのピアノ線の変形力で組付穴部46の内周面が第1軸12の外周面に押し付けられる(押し付け機能)。フリクションばね48によって発生する摩擦力は、スターホイール14を回転させる力より強く、スターホイール14の回転によって係止部材22を外す力より弱く設定されている。斯かる構成により、スターホイール14は、第1軸12に組み付けられた状態において、第1軸12を中心とする回転可能に設けられる。係止部材22が後述する非係止状態である場合においては第1軸12との接触部位における摩擦力によりその第1軸12に追従回転させられる。フリクションばね48によって発生する摩擦力がスターホイール14を回転させる力より弱いと、係止部材22の係止が解除された状態においてもスターホイール14が空転してしまうおそれがある。スターホイール14の回転によって係止部材22を外す力より強いと、係止部材22による係止状態において、係止部材22の板部材50が図5における左方向に動いてしまい、係止が解除されてしまうおそれがある。
図2に示すように、係止部材22は、好適には、係止部材22が第3軸20を中心としてスターホイール14に向けて回動させられることでスターホイール14における少なくとも1つの突起部36に当接させられる板部材50を備えている。電磁石24の励磁状態において、その電磁石24の磁力により係止部材22を第1回動方向すなわちスターホイール14から離隔させられる方向へ回動させる作用を発生させる磁性部材52を備えている。磁性部材52は、例えば、鉄、コバルト、ニッケル等の鉄属元素を主成分とする金属である。磁性部材52は、好適には特に磁化されていない鉄板であるが、磁化された所謂永久磁石であってもよい。係止部材22において、磁性部材52は、板部材50と一体的に設けられたエンジニアリングプラスチック等の合成樹脂部材54にインサート成形されたものであり、斯かる構成により電磁石24の吸引による磁性部材52のビビリが抑制される。例えば、磁性部材52は、合成樹脂部材54内に埋設されたものである。
電磁石24は、好適には、鉄等の磁性材料である鉄芯の周囲に円筒状のコイルを備えている。そのコイルに電流が流されることで励磁状態とされ磁力(磁場)を発生させる。一方、コイルに電流が流されないと非励磁状態とされるよく知られた一般的な電磁石である。本実施例においては、電磁石24のコイルに電流が流された状態が第1状態に相当する。電磁石24のコイルに電流が流されない状態が、第1励磁状態より磁力が弱い第2状態に相当する。
図2に示すように、電磁石24は、各係止部材22に対応して設けられている。係止部材22における磁性部材52が埋設された合成樹脂部材54の近傍に設けられている。磁性部材52と非接触に設けられている。すなわち、電磁石24と係止部材22とは、相互に最も接近した状態において非接触とされるものである。換言すれば、係止部材22は、後述する係止状態及び非係止状態の何れにおいても、磁性部材52と電磁石24との間に所定の間隔があくように構成されたものである。この間隔は、好適には、電磁石24の励磁状態において、その電磁石24の磁力作用を磁性部材52に及ぼし得る範囲内とされる。例えば、電磁石24と係止部材22とが相互に最も離隔させられた状態においても、電磁石24の励磁状態においてはその電磁石24の磁力により磁性部材52が引き寄せられるように間隔が設計される。すなわち、係止部材22をスターホイール14から離隔させる方向に回動させる引力が発生させられるように、間隔が設計される。後述する図8に一点鎖線で示すように、電磁石24の軸心(鉄芯の中心軸)は、係止部材22の回動中心すなわち第3軸20の軸心と交わる位置関係とされる。
図2及び図3に示すように、係止部材22は、好適には、スナップばね(ねじりコイルばね)56を備えている。スナップばね56は、係止部材22をスターホイール14に向けて回動させる方向に付勢する付勢部材である。係止部材22及び板部材50は、好適には、電磁石24の非励磁状態においては、スナップばね56により付勢されることでスターホイール14に向けて回動させられる。そして、板部材50は、スターホイール14に設けられた複数の突起部36の少なくとも1つを係止する係止状態(後述する図6等を参照)とされる。この係止状態が、スターホイール14の突起部36が所定の位置で停止する待機位置に相当する。一方、電磁石24の励磁状態においては、係止部材22及び板部材50は、電磁石24の磁力によりスナップばね56による付勢に逆らって第3軸20を中心として第1回動方向、すなわち、スターホイール14から離隔させられる方向に回動させられる。そして、電磁石24による磁力に応じた磁性部材52を引き寄せる力(引力)とスナップばね56の付勢力が釣り合った位置において係止部材22が停止される。すなわち、板部材50による突起部36の係止が解除される非係止状態(後述する図7〜図12等を参照)とされる。この非係止状態が、係止部材22によるスターホイール14の停止が解除された状態に相当する。
図2及び図3に示すように、複数の電磁石24及び各電磁石24に対応する係止部材22は、好適には、第1群に属する複数の電磁石24及び係止部材22と、第2群に属する複数の電磁石24及び係止部材22とが、第1軸12の軸心を中心とする周方向に90°の位相差で(すなわち相互に90°の角度を成す位置に)配設されている。好適には、複数の電磁石24のうち最も端に設けられた電磁石24から他端側へ向かって1からn(他端における電磁石24に対応)までの数値を付した場合、奇数を付された複数の電磁石24が前記第1群に、偶数を付された複数の電磁石24が前記第2群にそれぞれ属する。すなわち、本実施例のオルゴール10において、好適には、例えば図3に示すスターホイール14a、14bのように、相互に隣接するスターホイール14にそれぞれ対応する電磁石24(図3においては電磁石24a、24b)が、第1軸12の軸心を中心とする周方向に90°の位相差で交互に配設されている。斯かる構成とすることで、オルゴール10における演奏機構部100の構成(特に、複数の電磁石24)の配設スペースを可及的に小さくすることができ、装置を小型化することができる。
図5は、係止部材22が係止状態である場合におけるその係止部材22とスターホイール14との位置関係を例示する図である。好適には、図5に示すように、係止部材22が係止状態である場合において、突起部36と係止部材22の板部材50との接触部58とスターホイール14の回転中心C1とを結んだ直線と、接触部58と係止部材22の回動中心C2とを結んだ直線とが成す角度θは、直角(=90°)を中心とする規定の角度範囲内である。規定の角度範囲は、例えば90°±10°の範囲内である。角度θが規定の角度範囲よりも小さい場合、係止部材22が突起部36による係止から抜け易くなり、係止部材22がスターホイール14を係止しづらくなる。角度θが規定の角度範囲よりも大きい場合、係止部材22を突起部36による係止から解除するために抜くのに比較的大きな力を要し、抜きにくくなる。角度θが規定の角度範囲であれば、電磁石24が非励磁状態である場合において係止部材22による係止が解除されることを抑制しつつ、電磁石24の励磁状態においては係止部材22による係止を好適に解除することができる。
図6〜図12は、以上のように構成されたオルゴール10における演奏機構部100の具体的な作動について説明する図である。オルゴール10による演奏時において、第1軸12及び第2軸26は、図6等に矢印で示すように、モータ32の駆動により常時それぞれの軸心まわりに同期的に回転させられている。第1軸12及び第2軸26は、相互に逆回りに回転駆動されており、好適には、第1軸12はスターホイール14に設けられた突起部36が振動板16の振動弁18を下方から上方に向けて弾く方向に回転される。第2軸26はサンホイール28の外周歯40とスターホイール14のギヤ部38とが噛み合った状態において、スターホイール14を回転駆動する方向すなわち図6に矢印で示す方向にそれぞれ回転させられている。複数のサンホイール28は、第2軸26に対して相対回転不能に設けられているため、オルゴール10による演奏時においては、第2軸26の軸心まわりの回転に伴い常時それぞれの軸心まわりに回転させられている。
図6は、係止部材22が係止状態とされた場合における作動を説明している。この図6に示すように、対応する電磁石24に対する通電が行われず、電磁石24が非励磁状態とされている場合には、係止部材22の板部材50は、スナップばね56により付勢される。これにより、係止部材22は、スターホイール14側に回動させられ、スターホイール14に設けられた複数の突起部36の少なくとも1つを係止する係止状態とされる。すなわち、複数の突起部36の少なくとも1つにおける第1軸12の回転方向側(回転が進む側)に、板部材50における先端部が当接させられる。前述のように、スターホイール14は、第1軸12との接触部位における摩擦力により、第1軸12に追従回転させられるように構成されている。図6に示すような状態においては、係止部材22が係止状態とされていることで、接触部位における摩擦力に逆らってスターホイール14の第1軸12に対する追従回転が阻止される。換言すれば、第1軸12の軸心を中心とするスターホイール14の位相(振動弁18等に対する位置関係)が固定されたまま、そのスターホイール14における組付穴部46と第1軸12との接触面が軽い負荷をもって滑りつつそれらが相対回転させられる状態となる。斯かる状態においては、スターホイール14におけるギヤ部38はサンホイール28における外周歯40と噛み合わない位置とされ、サンホイール28の回転はスターホイール14の回転に影響しない。すなわち、第1軸12を中心に回転するスターホイール14が係止部材22により待機位置で停止させられるとき、サンホイール28の外周歯40は、スターホイール14の間欠部分39において空転させられる。
図7は、係止部材22が係止状態から非係止状態へ切り替えられる場合における作動を説明している。図6に示す状態から、電磁石24に対する通電が行われると、通電された電磁石24が励磁状態とされる。そして、係止部材22の板部材50が電磁石24の磁力によりスナップばね56による付勢に逆らって第3軸20を中心としてスターホイール14から離隔させられる方向(第1回動方向)に回動させられる。これにより、板部材50による突起部36の係止が解除される非係止状態とされる。すなわち、スターホイール14が、第1軸12との接触部位における摩擦力によりその第1軸12に追従回転させられる状態とされる。ここで、図6に示す状態から、電磁石24に対する通電が行われて係止が解除された直後、好適には、図7に示すように、板部材50はスターホイール14から離隔させられる。
図8は、図7の破線で囲んだ部分を拡大して示す図である。図7に示す非係止状態では、磁性部材52と、電磁石24における軸心の先端とが最も接近させられるが、図8に示すように、この状態において電磁石24と磁性部材52との間には間隔dの空間が存在し、非接触とされる。好適には、磁性部材52における電磁石24側の面は第3軸20を中心とする部分円筒状の曲面52aとされている。このため、係止部材22が第3軸20まわりに回動させられても、電磁石24と磁性部材52との間隔dが変化しないように構成されている。
図9は、スターホイール14の突起部36が振動板16の振動弁18を弾いて音を奏でる作動を説明している。係止部材22が非係止状態とされ、板部材50による突起部36の係止が解除される。その後、スターホイール14が、第1軸12との接触部位における摩擦力によりその第1軸12に追従回転させられる。すると、図9に示すように、複数の突起部36のうち1つの突起部36が振動板16の振動弁18に接触させられる位相付近において、突起部36に隣接する回転方向側(すなわち回転方向に90°の位相差で設けられた)突起部36に対応するギヤ部38がサンホイール28の外周歯40と噛み合わされる。この状態においては、サンホイール28の回転によりスターホイール14が図9に矢印で示す方向すなわち突起部36が振動板16の振動弁18を下方から上方に向けて弾く方向に駆動される。すなわち、サンホイール28の外周歯40とスターホイール14のギヤ部38とが噛み合わされた状態において、スターホイール14の突起部36が対応する振動弁18を弾く。斯かる作動によって振動弁18が突起部36により弾かれ、振動弁18に対応する音階の音が奏でられる。
前記のように突起部36が振動弁18を弾いた後、スターホイール14が更に第1軸12に追従回転させられることでギヤ部38とサンホイール28の外周歯40とが再び噛み合わない状態となる。すなわち、図9に示す状態から、図10〜図12に示すような作動を経て、再び図6に示す状態に復帰させられる。換言すれば、図6〜図12は、スターホイール14の第1の突起部36が係止部材22により係止させられている待機位置(図6に示す状態)から、スターホイール14の回転が開始させられ、振動弁18を1回弾き(図9に示す状態)、第1の突起部36に隣接する第2の突起部36が、係止部材22により待機位置で停止するまでの過程を示している。
以下、図14を参照して、係止部材22による係止動作及び解除動作について説明する。図14は、ECU60に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。この図14に示す楽曲データベース62は、オルゴール10による演奏の対象となる曲にそれぞれ対応する複数の楽曲データ(楽譜データ)を記憶する。楽曲データベース62は、よく知られたSDカード(Secure Digital Card)等の記憶媒体に納められ、ECU60が記憶媒体に記録されたデータを読み取り可能であってもよい。楽曲データは、例えば、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)形式のデータであり、予め定められた複数種類の楽器毎に、その楽器に対応する音の出力タイミング及び音階等が定められた複数のトラック(チャンネル)を含んでいる。
楽曲データベース62に記憶された楽曲データには、所定の音を鳴らしてから次の音を鳴らすまでの音長が定められている。この音長は、換言すれば、振動板16に備えられた振動弁18が弾かれてから、次の振動弁18(同一或いは他の振動弁18)が弾かれるまでの時間に相当する。すなわち、楽曲データベース62が楽曲データを記憶する記憶部に対応する。楽曲データに定められた音長は、例えば、時間の最小単位としてのティック(tick)により表される。このティックは、楽曲データのテンポ及びタイムベース(分解能)によって定められる。例えば、1ティックの時間(秒)=60/テンポ値/タイムベースである。楽曲データに定められた楽譜情報において、好適には、16分音符の長さが120ティックに相当する。好適には、楽曲データにおいて、音の最短音長は、16分音符の音長の3分の1に相当する長さに定められている。すなわち、楽曲データに定められた楽譜情報において、好適には、最短音長は40ティックに相当する。好適には、楽曲データにおいて、同音が連続して演奏されるとき、連続する同音の最短音長は16分音符に相当する長さに定められている。すなわち、楽曲データに定められた楽譜情報において、好適には、連続する同音の最短音長は120ティックに相当する。本実施例のオルゴール10は、例えば、MIDIデータに定められた出力タイミング及び音階に基づいて以下に詳述する演奏制御を行う。
係止解除タイミング判定部64は、複数の係止部材22それぞれによるスターホイール14における突起部36の係止を解除するタイミングを判定する。換言すれば、複数の係止部材22それぞれに対応する電磁石24の励磁乃至非励磁を切り替えるタイミング(電磁石24の通電を実行乃至停止するタイミング)を判定する。例えば、楽曲データベース62に記憶された複数の楽曲データのうち所定の楽曲データに対応する曲の演奏において、その楽曲データに定められた音の出力タイミング及び音階に基づいて前記判定を行う。具体的には、各音階に対応する複数の振動弁18を楽曲データに定められた出力タイミングで弾くために、係止部材22によるスターホイール14における突起部36の係止を解除するタイミングを判定する。第1軸12及び第2軸26それぞれの回転速度が一定の値に定まる場合、各スターホイール14に対応する係止部材22による係止が解除されてからそのスターホイール14の突起部36により対応する振動弁18が弾かれるまでのタイムラグは予め求められる。係止解除タイミング判定部64は、演奏対象となる楽曲データに基づいて前記判定を行う。楽曲データにおいては、各振動弁18に対応する音階の出力タイミングが定められている。係止解除タイミング判定部64は、前記電磁石24を非励磁状態から励磁状態へ切り替えた後、予め定められた規定時間後に前記電磁石24を励磁状態から非励磁状態へ切り替える判定を行う。
電磁石励磁/非励磁制御部66は、係止解除タイミング判定部64による判定結果に基づいて、複数の電磁石24それぞれの励磁乃至非励磁を切り替える。すなわち、係止解除タイミング判定部64による判定結果に基づいて、複数の電磁石24それぞれの通電を実行乃至停止する制御を行う。具体的には、係止解除タイミング判定部64により係止部材22によるスターホイール14における突起部36の係止を解除するタイミングが判定された場合、そのタイミングで対応する電磁石24を非励磁状態から励磁状態へ切り替える。すなわち、斯かるタイミングで電磁石24の通電を開始する。電磁石励磁/非励磁制御部66は、好適には、電磁石24を非励磁状態から励磁状態へ切り替えた後、予め定められた規定時間経過後にその電磁石24を励磁状態から非励磁状態へ切り替える。すなわち、斯かるタイミングで電磁石24の通電を停止させる。ここで、電磁石励磁/非励磁制御部66により電磁石24の通電が停止された後、係止部材22がスターホイール14における突起部36を係止し得る位置(スターホイール14の外周面72に接触する位置)まで戻るのに、例えば30ms程度の時間を要する。
モータ回転速度制御部67は、モータ32の回転速度を制御する。すなわち、モータ32により駆動される第1軸12及び第2軸26の回転速度を制御する。具体的には、楽曲データベース62に記憶された所定の楽曲データに対応する演奏に際して、その楽曲データに定められたテンポに基づく速度で第1軸12及び第2軸26が回転させられるようにモータ32の回転速度を制御する。換言すれば、第1軸12及び第2軸26は、楽曲データが演奏されるテンポに基づく速度で回転させられる。演奏対象となる楽曲データにおけるテンポが速いほど、モータ32の回転速度が速くなるように制御する。モータ回転速度制御部67は、好適には、エンコーダ80が検出するスリット84の間隔が、演奏対象となる楽曲データにおける16分音符の音長の3分の1の長さとなる回転速度で、サンホイール28を回転駆動させる。換言すれば、エンコーダ80により所定のスリット84の通過が検出された後、次のスリット84の通過が検出されるまでの時間が、演奏対象となる楽曲データにおける16分音符の音長の3分の1の長さとなる回転速度で、サンホイール28を回転駆動させる。好適には、エンコーダ80が検出するスリット84の間隔が、最短音長に相当する例えば40ティックとなる回転速度で、サンホイール28を回転駆動させる。
係止解除タイミング判定部64は、好適には、エンコーダ80により検出されるスリット84の通過タイミングに基づいて、スターホイール14の回転の停止を解除する係止部材22の動作タイミングを制御する。換言すれば、サンホイール28の回転軸である第2軸26に設けられたエンコーダ80のスリット位置とサンホイール28の外周歯40の歯先位置を特定することにより、サンホイール28の歯先位置を検出し、スターホイール14が回転し始めるタイミングを決定する。好適には、演奏対象となる楽曲データに定められた所定の音長と、エンコーダ80により検出される検出値とに、基づいて、スターホイール14の回転の停止を解除する係止部材22の作動タイミングを制御(判定)する。好適には、楽曲データに従って演奏される曲のテンポ(第2軸26の回転速度に対応)及び演奏される音の音長と、エンコーダ80により検出される回転量とに、基づいて、スターホイール14の回転の停止を解除する係止部材22の作動タイミングを制御する。
係止解除タイミング判定部64は、エンコーダ80により検出されるスリット84の通過タイミングに基づいて、スターホイール14のギヤ部38とサンホイール28の外周歯40とが正確に噛み合うように、スターホイール14の回転の停止を解除する係止部材22の動作タイミングを制御する。換言すれば、スターホイール14のギヤ部38とサンホイール28の外周歯40とが歯の山と山とで噛み合うことを抑制する。このために、係止解除タイミング判定部64は、例えば、演奏対象となる楽曲データにおける所定の音の出力タイミングが経過した後、エンコーダ80により少なくとも1つのスリット84の通過が検出されたことをきっかけとしてスターホイール14の回転の停止を解除する係止部材22の動作タイミングを制御する。オルゴール10においては、エンコーダ80により所定のスリット84の通過が検出されたことをきっかけとしてスターホイール14の回転の停止を解除することで、スターホイール14のギヤ部38とサンホイール28の外周歯40とが正確に噛み合うように、第1軸12及び第2軸26の回転速度、スターホイール14及びサンホイール28の相対位置等が設定されている。従って、前記のように制御することで、スターホイール14のギヤ部38とサンホイール28の外周歯40とが歯の山と山とで噛み合うことを抑制できる。すなわち、スターホイール14の突起部36が対応する振動弁18を弾くタイミングがずれることを好適に抑制できる。
係止解除タイミング判定部64は、好適には、楽曲データに定められた16分音符の音長の3分の1に相当する最短音長に対応する回転量がエンコーダ80により検出されたとき、係止部材22によるスターホイール14の回転の停止を解除するタイミングを制御する。例えば、エンコーダ80により検出される、楽曲データに定められた40ティック(約40ms)に相当する回転量に基づいて、係止部材22によるスターホイール14の回転の停止を解除するタイミングを制御する。例えば図15に示す例では、楽曲データに定められた40ティックの音長の音の演奏に際して、エンコーダ80により1つのスリット84の通過(1つのスリット84の通過が検出された後、次の1つのスリット84の通過)が検出されたことに基づいて、係止部材22によるスターホイール14の回転の停止を解除するタイミングを制御する。
係止解除タイミング判定部64は、好適には、楽曲データが演奏されるテンポに従って、その楽曲データに定められた音の音長と、エンコーダ80により検出されるサンホイール28の回転量とに、基づいて、エンコーダ80が楽曲データの演奏される音の音長に対応する回転量を検出したとき、係止部材22によるスターホイール14の回転の停止を解除するタイミングを制御する。例えば、エンコーダ80により検出される、楽曲データに定められた120ティック(約120ms)に相当する回転量に基づいて、係止部材22によるスターホイール14の回転の停止を解除するタイミングを制御する。例えば図15に示す例では、楽曲データに定められた120ティックの音長の音の演奏に際して、エンコーダ80により4つのスリット84の通過(1つのスリット84の通過が検出された後、3つのスリット84の通過)が検出されたことに基づいて、係止部材22によるスターホイール14の回転の停止を解除するタイミングを制御する。
図17は、振動弁18を1回弾く作動に対応する、スターホイール14及びサンホイール28の回転について説明する図である。オルゴール10において、好適には、モータ32により回転駆動されるスターホイール14は、突起部36が所定の位置で停止する待機位置から回転を開始した後、振動弁18を1回弾き、突起部36が待機位置で停止するまでの時間が、楽曲データに従って所定のテンポで演奏される音の音長に対応する時間よりも短い。この音長に対応する時間は、好適には、楽曲データに定められた16分音符に対応する時間である。例えば、楽曲データに定められた120ティックに対応する時間である。前述のように、楽曲データにおいて、同音が連続して演奏されるとき、連続する同音(同じ振動弁18を弾く音)の最短音長は16分音符に相当する長さに定められている。従って、好適には、モータ32により回転駆動されるスターホイール14は、楽曲データに従って同音が連続して演奏されるとき、突起部36が所定の位置で停止する待機位置から回転を開始した後、振動弁18を1回弾き、突起部36が待機位置で停止するまでの時間が、楽曲データに従って演奏される16分音符に相当する音長よりも短い。
図17に示すように、オルゴール10において、好適には、第2軸26の回転に伴いサンホイール28が、楽曲データに定められたテンポで演奏される音の音長に対応する角度∠3を回転させられる時間よりも、スターホイール14の第1の突起部36が、係止部材22により停止する待機位置からモータ32の駆動により回転を開始した後、第1の突起部36に隣接する第2の突起部36が、係止部材22により待機位置で停止するまでの時間の方が短い。前記音長は、好適には、楽曲データに定められた16分音符に対応する時間である。例えば、楽曲データに定められた120ティックに対応する時間である。従って、第2軸26の回転に伴いサンホイール28が前記音長に対応する角度∠3回転させられる時間は、例えば120ティックに対応する時間に相当する。前記角度∠3は、例えば回転盤82に形成された4つ分のスリット84に対応する角度である108°に相当する。スターホイール14の第1の突起部36が、係止部材22により停止する待機位置からモータ32の駆動により回転を開始した後、第1の突起部36に隣接する第2の突起部36が、係止部材22により待機位置で停止するまでに、スターホイール14は角度∠4回転させられる。この角度∠4は、前記角度∠3よりも小さく例えば90°である。スターホイール14における間欠歯車は、間欠部分39に歯があるものと考えた場合歯数20枚であるため、前記角度∠4は歯数5枚分に相当する。前述のように、スターホイール14とサンホイール28とは同じ回転速度で回転させられるため、それぞれ所定の位相から回転が開始された場合、例えば120ティックに相当する時間の経過後にスターホイール14の方が早く待機位置に復帰させられる。すなわち、スターホイール14は、係止部材22による突起部36の係止が解除されてモータ32の駆動により回転を開始した後、楽曲データに定められた所定の音長である例えば120ティックに相当する時間が経過する前に、係止が解除された前記突起部36と隣り合う突起部36が係止部材22により係止される状態とされる。
ECU60は、好適には、複数のスターホイール14の突起部36が、係止部材22による待機位置での停止が解除され、第1軸12を中心として回転し、それぞれ異なる複数の振動弁18を連続して弾く最短の時間間隔が、モータ32により回転駆動される第2軸26の回転と連動して回転する回転盤82の隣り合う2つのスリット84間の角度∠1だけ回転させる時間と等しくなるように、スターホイール14の停止を解除する係止部材22の動作タイミングを制御する。前述のように、モータ回転速度制御部67は、好適には、エンコーダ80が検出するスリット84の間隔が、例えば40ティックとなる回転速度で、サンホイール28を回転駆動させる。従って、回転盤82の隣り合う2つのスリット84間の角度∠1だけ回転させる時間は、例えば40ティックに対応する時間となる。換言すれば、ECU60は、複数のスターホイール14の突起部36が、係止部材22による待機位置での停止が解除され、第1軸12を中心として回転し、それぞれ異なる複数の振動弁18を連続して弾く最短の時間間隔が、楽曲データに定められた例えば40ティックに対応する時間となるように、スターホイール14の停止を解除する係止部材22の動作タイミングを制御する。これにより、オルゴール10において、それぞれ異なる複数の振動弁18を、最短で例えば40ティックの時間間隔で連続して弾くことが可能となる。すなわち、同音については120ティックの分解能で、異なる音については40ティックの分解能で振動弁18を弾くオルゴール10を実現することができる。
図18は、スターホイール14の停止が解除されてから突起部36が振動弁18を弾くまでの間における、スターホイール14及びサンホイール28の回転について説明する図である。オルゴール10において、好適には、所定の時間に対応するサンホイール28の回転量(移動量)Aとスターホイール14の回転量(移動量)Bとが等しい。このように、サンホイール28の回転量Aとスターホイール14の回転量Bとを同一にすることにより発音タイミングのずれを抑制できる。なお、好適には、スターホイール14と、サンホイール28の減速比が、1対1である場合には、ECU60により係止部材22によるスターホイール14の停止が解除され、第1軸12を中心としてスターホイール14が回転を開始してから、スターホイール14の間欠歯車の歯であるギヤ部38が、サンホイール28のギア部である外周歯40の歯と噛み合うまでの、スターホイール14の回転角度とサンホイール28の回転角度とが等しい。スターホイール14の間欠歯車の歯であるギヤ部38と、サンホイール28のギア部である外周歯40の歯とが噛み合う状態は、スターホイール14の突起部36が振動弁18を弾く(振動弁18に接触する)状態に相当する。
本実施例の係止部材22は、電磁石24の励磁状態において、電磁石24の磁力により係止部材22を第1回動方向へ回動させる作用を発生させる磁性部材として永久磁石を備えても良い。永久磁石は、好適には、電磁石24が励磁状態とされた場合に電磁石24との間で反発力(同種の磁極間の斥力)が発生する位置で、板部材50と一体的に設けられた合成樹脂部材54にインサート成形されても良い。係止部材22の板部材50が電磁石24の磁力すなわちその電磁石24と永久磁石との間の斥力によりスナップばね56による付勢に逆らう。これにより、係止部材22は、第3軸20を中心としてスターホイール14から離隔させられる方向(第1回動方向)に回動させられ、板部材50による突起部36の係止が解除される非係止状態とされる。
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
すなわち、本発明は、図1〜図18を用いて前述した構成に限定されるものではない。例えば、スターホイール14に設けられる突起部36の数は4つには限定されず、周方向に90°毎に設けられたものでなくともよい。スターホイール14におけるギヤ部38は、必ずしも突起部36に対応する位置に設けられたものでなくともよく、周方向に位相の異なる位置に設けられたものであってもよい。第1群に属する複数の電磁石24及び係止部材22と、第2群に属する複数の電磁石24及び係止部材22とが、第1軸12の軸心を中心とする周方向に90°の位相差で配設されたものでなくともよく、例えば全ての電磁石24が同一平面上に一列に配設されたものであってもよい。逆に、突起部36がスターホイール14の周方向に5つ以上設けられている場合等において、スターホイール14に設けられた突起部36の数に応じて、複数の電磁石24及び係止部材22が、第1軸12の軸心を中心とする周方向に所定の位相差で3つ以上の位相に対応する位置に配設されたものであってもよい。スターホイール14を係止させるための構成として、各スターホイール14に対応して2つ以上の係止部材22が設けられたものであってもよい。ECU60がインターネット等の通信回線に接続され、その通信回線を介して楽曲データをダウンロードして楽曲データベース62に蓄積するものであってもよい。その他、スターホイール14の形状、係止部材22の構成(板部材50の形状)、及び各構成の相対位置等は、オルゴールの設計に応じて適宜変更される。例えば、ギヤ部38は、必ずしも2歯ずつ設けられるものでなくともよく、突起部36が対応する振動弁18を弾くために十分な距離及び時間だけサンホイール28から駆動されればよく、1歯或いは3歯以上のギヤ部が設けられたものであってもよい。楽曲データに定められた楽譜情報において、連続する同音の最短音長は必ずしも120ティックでなくともよい。それぞれ異なる音の最短音長は必ずしも40ティックでなくともよい。
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。