本発明は、前記のアコースティック楽器の問題に対処するためになされたもので、その目的は、小型かつ軽量で、定期的な調律及び調整が不要な鍵盤楽器を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明の特徴は、複数の鍵からなる鍵盤と、複数の鍵にそれぞれ対応して設けられ、支持部材に支持されるとともに、振動可能な自由端を有し、前記鍵の鍵音高に対応する周波数で振動する複数の片持ち振動板と、複数の鍵に対応して設けられるとともに、前記鍵の押鍵操作に連動して、前記複数の片持ち振動板をそれぞれ励振する複数の励振機構とを備え、励振機構は、片持ち振動板の自由端側を弾く弾き部材であって、回転可能に支持された本体部、及び前記本体部の外周部に設けられて、前記本体部の回転により、片持ち振動板を弾く1つ又は複数の弾き部からなる弾き部材と、前記鍵の押鍵操作時に、前記本体部を所定方向へ所定角度回転させ、前記鍵の離鍵操作時に、前記本体部を前記所定方向と同じ方向へ所定角度回転させるアームと、を備えたことにある。
この場合、複数の片持ち振動板の固定端を支持するとともに、片持ち振動板の振動と共振する共鳴体をさらに備え、共鳴体が支持部材に支持されるようにしてもよい。この場合、本体部に、鍵の押離鍵操作により駆動されて、本体部を回転させるための第1及び第2被駆動部を設けるとよい。そして、鍵の押鍵操作時に、アームが第1被駆動部に係合して本体部を所定方向へ回転させ、鍵の離鍵操作時に、アームが第2被駆動部に係合して本体部を押鍵操作時と同じ方向へ回転させるようにするとよい。
上記のように構成した鍵盤楽器においては、鍵を押すと、励振機構が片持ち振動板を振動させて発音する。この励振機構は単純な構造とすることができるので、楽器本体を小型化及び軽量化できる。また、経年変化で変形、変質する部分が無いため、定期的に楽器を調律及び調整する必要がない。
また、離鍵操作によって、弾き部が片持ち振動板から遠ざかる方向へ本体部を回転させることができるので、離鍵操作時に、弾き部が片持ち振動板に接触しない。そのため、離鍵操作時に雑音を発することがなく、演奏性を向上させることができる。
また、本発明の他の特徴は、複数の鍵からなる鍵盤と、複数の鍵にそれぞれ対応して設けられ、支持部材に支持されるとともに、振動可能な自由端を有し、前記鍵の鍵音高に対応する周波数で振動する複数の片持ち振動板と、複数の鍵に対応して設けられるとともに、前記鍵の押鍵操作に連動して、前記複数の片持ち振動板をそれぞれ励振する複数の励振機構とを備え、励振機構は、片持ち振動板の自由端側を弾く弾き部材であって、前記鍵の押離鍵操作によって揺動し前記鍵に連動する鍵連動部材、及び前記鍵連動部材の一端に設けられて、鍵連動部材の揺動により片持ち振動板を弾く弾き部を備えた弾き部材と、回転可能に支持されるとともに、鍵連動部材を揺動可能に支持し、前記鍵の押鍵操作時に鍵連動部材の一端を片持ち振動板側に移動させ、かつ前記鍵の離鍵操作時に鍵連動部材の一端を片持ち振動板とは反対側へ移動させるように、鍵連動部材の揺動を規制する揺動規制部材と、を備えたことにある。
この場合、揺動規制部材は、回転可能に支持されるとともに、鍵連動部材を偏心結合させたカムからなり、さらに、カムの外周上に、カムの逆回転を防止する逆回転防止機構を備えるようにするとよい。
上記のように構成した鍵盤楽器においては、揺動規制部材を構成するカムが押離鍵操作時に同じ方向に回転する。これにより、離鍵操作時に弾き部が片持ち振動板から遠ざけられるので、弾き部が片持ち振動板に接触しない。そのため、離鍵操作時に雑音を発することがなく、演奏性を向上させることができる。
また、本発明の他の特徴は、複数の鍵からなる鍵盤と、複数の鍵にそれぞれ対応して設けられ、支持部材に支持されるとともに、振動可能な自由端を有し、前記鍵の鍵音高に対応する周波数で振動する複数の片持ち振動板と、複数の鍵に対応して設けられるとともに、前記鍵の押鍵操作に連動して、前記複数の片持ち振動板をそれぞれ励振する複数の励振機構とを備え、励振機構は、片持ち振動板の自由端側を弾く弾き部材であって、揺動可能に支持された鍵連動部材、及び鍵連動部材の一端に設けられて、鍵連動部材の揺動により片持ち振動板を弾く弾き部を備えた弾き部材と、回転可能に支持されるとともに、前記鍵と鍵連動部材とを連結して前記鍵の押離鍵操作時に鍵連動部材を揺動させ、前記鍵の押鍵操作時に鍵連動部材の一端を片持ち振動板側に移動させ、かつ、前記鍵の離鍵操作時に鍵連動部材の一端を片持ち振動板とは反対側へ移動させるリンク機構と、を備えたことにある。
この場合、リンク機構は、回転可能に支持されるとともに、鍵連動部材を偏心結合させたカムからなり、さらに、カムの外周上に、カムの逆回転を防止する逆回転防止機構を備えるようにするとよい。
上記のように構成した鍵盤楽器においては、リンク機構を構成するカムが押離鍵操作時に同じ方向に回転する。これにより、離鍵操作時に弾き部が片持ち振動板から遠ざけられるので、弾き部が片持ち振動板に接触しない。そのため、離鍵操作時に雑音を発することがなく、演奏性を向上させることができる。
また、本発明の他の特徴は、複数の鍵からなる鍵盤と、複数の鍵にそれぞれ対応して設けられ、支持部材に支持されるとともに、振動可能な自由端を有し、前記鍵の鍵音高に対応する周波数で振動する複数の片持ち振動板と、複数の鍵に対応して設けられるとともに、前記鍵の押鍵操作に連動して、前記複数の片持ち振動板をそれぞれ励振する複数の励振機構とを備え、励振機構は、前記鍵の押離鍵操作に連動して揺動する鍵連動部材と、片持ち振動板の自由端側を弾く弾き部材であって、鍵連動部材に対し揺動可能に支持されるとともに、一端に片持ち振動板を弾く弾き部を有する弾き部材と、前記鍵の押鍵操作時に、弾き部材の一端が鍵連動部材の揺動により、片持ち振動板に接触するように弾き部材の鍵連動部材に対する角度を規制し、かつ、前記鍵の離鍵操作時に、弾き部材の一端が鍵連動部材の揺動によっても、片持ち振動板に接触しないように弾き部材の鍵連動部材に対する角度を規制する角度規制機構と、を備えたことにある。
上記のように構成した鍵盤楽器においては、押鍵によって発音した後、鍵連動部材に対する弾き部の角度が規制されて、鍵連動部材の揺動中心から弾き部の一端までの距離が小さくなるので、離鍵時において、弾き部が片持ち振動板に接触しない。そのため、離鍵操作時に雑音を発することがなく、演奏性を向上させることができる。
また、本発明の他の特徴は、ユーザーによって操作される操作子と、操作子の操作に応じて、片持ち振動板に接触し、片持ち振動板の振動を抑制する制振部材とをさらに備えるようにしたことにある。
上記のように構成した鍵盤楽器においては、片持ち振動板の振動が自然減衰して音が消える前に、操作子を操作することにより、片持ち振動板の振動を抑制し、音を消すことができるので、演奏中に音の長さを制御することができる。
また、本発明の他の特徴は、ユーザーによって操作される操作子と、操作子の操作に応じて、共鳴体に接触し、共鳴体の振動を抑制する制振部材とをさらに備えるようにしたことにある。
上記のように構成した鍵盤楽器においては、共鳴体の振動が自然減衰して音が消える前に、操作子を操作することにより、共鳴体の振動を抑制し、音を消すことができるので、演奏中に音の長さを制御することができる。
また、本発明の他の特徴は、ユーザーによって操作される操作子と、操作子の操作に応じて、複数の励振部材と複数の片持ち振動板の相対位置を変更することにより、複数の片持ち振動板に加えられる励振力を変化させる励振力変更手段とをさらに備えるようにしたことにある。
上記のように構成した鍵盤楽器においては、操作子を操作することにより、片持ち振動板への励振力を変更できるので、演奏中に音色及び音量を変化させることができる。
a.第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態について図面を用いて説明すると、図1は第1実施形態に係る鍵盤楽器の平面図である。この鍵盤楽器は、上面の前部に、横方向に配列された複数の白鍵10及び黒鍵10からなる鍵盤装置が設けられている。
図2(A)及び図2(B)は、この鍵盤楽器を縦断して一つの鍵について示す側面図である。なお、図2(A)及び図2(B)においては白鍵についてのみ示すが、黒鍵に関しても同様であり、以下、両者を共に鍵10として説明する。図2(A)は、鍵10が離鍵されている状態を示している。一方、図2(B)は、鍵10が押鍵されている状態を示している。鍵10は合成樹脂によって長尺状に形成されており、前後方向に延設されて配置されている。鍵10は、フレームFRの鍵支持部20により、後端部の回転中心21を中心にして、前端部を上下方向に揺動可能に支持される。フレームFRの前部には、フェルトなどの衝撃吸収材によって構成された長尺状の下限ストッパ22が鍵盤横方向に延設してフレームFRに固定されている。この下限ストッパ22は鍵10の前部の下方への変位を規制する。なお、フレームFRとは、鍵盤楽器の種々の部品を支持するための構造体及び鍵盤楽器のハウジング自体を意味する。鍵10の前部の下面には、棒状のハンマー駆動部23が一体的に設けられて、下方に延設されている。
ハンマー24は合成樹脂で長尺状に成形された基部25と、基部25の先端に組み付けられたゴム製の質量体26とにより構成されている。ハンマー駆動部23の下面は、ハンマー24の基部25の前部上面に当接している。ハンマー24は、フレームFRに設けられたハンマー支持部27に、ピンの軸線回りに回転可能に支持され、質量体26は上下方向に揺動可能となっている。鍵10が押鍵操作されない状態では、図2(A)に示すように、質量体26がハンマーストッパ部28上に位置する。なお、ハンマーストッパ部28は、フェルトなどの衝撃吸収材によって長尺状に構成され、横方向に延設してフレームFRに固定されている。
質量体26の上方には、発音体である振動板30が延設される。振動板30は金属などの板状弾性部材で長尺状に形成される。図2(A)、図2(B)及び図3に示すように、振動板30の一端は楽器後方に設けられた平板状の共鳴体31の上面に固定される。他端は共鳴体31から前方(質量体26の上方)へ張り出す。すなわち、振動板30は片持ち梁状に支持される。また、振動板30は、各鍵の音高に対応した振動周波数で振動するために、幅、厚み及び長さが異なるように構成される。共鳴体31は共鳴体支持部材32を介してフレームFRに固定される。なお、すべての振動板30に対して一つの共鳴体31を設けてもよいし、複数の振動板30ごとに共鳴体31を配設してもよい。
次に、上記のように構成した第1実施形態に係る鍵盤楽器の動作を説明する。鍵10を押鍵操作しない状態では、ハンマー24は、その自重によって図2(A)の状態にあり、質量体26がハンマーストッパ28に当接している。この状態では、鍵10の前部は、ハンマー駆動部23を介してハンマー24の基部25により、上方に押し上げられる。一方、鍵10を押鍵操作すると、ハンマー駆動部23がハンマー24の質量体26の重量に対抗して基部25を下方向に押しながら、鍵10は回転中心21を中心として、図2(A)及び図2(B)にて反時計回りに揺動し始めるとともに、ハンマー24は、フレームFRに設けられたハンマー支持部27を支点として反時計回りに回転し始める。このとき、鍵10の前部下面が下限ストッパ22に当接して鍵10の前部の下方への変位が規制される。一方、ハンマー24は、ハンマー駆動部23から解放されてさらに回転し、質量体26が振動板30を打撃する。これにより、振動板30が振動し、この振動が共鳴体31に伝わり、共鳴体31にて音量が増幅される。その結果、鍵音高に対応した楽器音が発音される。
振動板の打撃後、質量体26は、振動板30で跳ね返され、ハンマー24は、ハンマー支持部27を支点として、図2(A)及び図2(B)にて時計回りに回転する。その後、基部25がハンマー駆動部23に当接したところで、ハンマー24の回転は停止する。鍵10の押鍵操作が解除されると(すなわち鍵10が離鍵操作されると)、ハンマー24は、質量体26の重量により、ハンマー支持部27を支点として、さらに時計回りに回転する。そして、質量体26がハンマーストッパ28に当接すると、ハンマー24の回転は停止する。このハンマー24の回転により、基部25がハンマー駆動部23を介して、鍵10の前部を上方へ押し上げ、鍵10は元の位置(図2(A)の位置)へ復帰する。
上記のように構成した第1実施形態に係る鍵盤楽器においては、鍵10の押鍵操作によって、鍵10に連動する質量体26で振動板30を打撃し、発音することができる。質量体26は、振動板30を叩いた後、跳ね返って振動板30から離れるので、質量体26が振動板30を押さえ付けて振動板30の振動を抑制することがない。また、構造が単純であるので、楽器本体を小型化及び軽量化できる。さらに、経年変化で変形、変質する部分が無いため、定期的に楽器を調律及び調整する必要がない。
b.第2実施形態
次に、鍵10の後端に設けた弾き部44によって、振動板30の自由端を弾いて発音するようにした本発明の第2実施形態について説明する。図4は、鍵10が離鍵されている状態を第1実施形態と同様に示した側面図である。鍵10は、フレームFRに設けられた鍵支持部40にて、回転中心41を中心として、前端部を上下方向に揺動可能に支持される。フレームFRの前部には、下限ストッパ22が第1実施例と同様に固定されている。鍵10の前部下方には、フレームFRに板ばね42が固定されていて、鍵10の前部を上方へ付勢している。鍵10の後部下方には、下限ストッパ22と同様な上限ストッパ43がフレームFR上に固定されており、鍵10の前部の上方への変位を規制する。鍵10の後部上面には、振動板30を弾くための弾き部44が、その先端部が鍵10の後端から楽器後部側へ張り出すように組み付けられている。弾き部44は、先端部の縦断面形状が鋭角となるように金属製の平板で構成されている。弾き部44の上方には、振動板30が第1実施形態と同様に構成されている。
次に、上記のように構成した第2実施形態に係る鍵盤楽器の動作を説明する。鍵10を押鍵操作しない状態では、板ばね42によって鍵10の前部が上方へ付勢されている。一方、板ばね42の付勢力に対抗して、鍵10を押すと、鍵10は、回転中心41を中心として、図4にて反時計回りに回転し始め、弾き部44が上方へ変位する。その後、弾き部44は振動板30の自由端に当接して、振動板30の自由端側を上方へ押し曲げる。弾き部44がさらに上方へ変位すると、弾き部44は振動板30を乗り越える。すなわち、弾き部44が振動板30を弾く。これにより、第1実施形態と同様に、振動板30が振動し、その振動が共鳴体31により増幅され、鍵音高に対応する楽器音が発音される。さらに押鍵が進むと、鍵10の前部下面が下限ストッパ22に当接し、鍵10の前部の下方への変位が規制される。
鍵10の押鍵操作が解除されると、板ばね42の付勢力によって鍵10の前部が上方へ押し上げられる。これにより、鍵10は回転中心41を中心として、図4において時計回りに回転し始め、弾き部44が下方へ変位する。すると、弾き部44が振動板30の自由端に当接して、振動板30の振動を抑制する。弾き部44がさらに下方へ変位すると、弾き部44は振動板30を乗り越える。鍵10の後部下面が上限ストッパ43に当接すると、鍵10の前部の上方への変位が規制され、鍵10は元の位置(図4の位置)へ復帰する。
上記のように構成した第2実施形態に係る鍵盤楽器においては、鍵10の押鍵操作によって鍵10の後部上面に組み付けられた弾き部44で振動板30を弾き、発音することができる。また、構造が単純であるので、楽器本体を小型化及び軽量化できる。さらに、経年変化で変形、変質する部分が無いため、定期的に楽器を調律及び調整する必要がない。
c.第3実施形態
次に、弾き部44を、鍵10に連動して揺動する機構に設けるようにした本発明の第3実施形態について説明する。図5は、鍵10が離鍵されている状態を第1実施形態と同様に示した側面図である。鍵10は、第1実施例と同様に支持され、下限ストッパ22も第1実施例と同様に配設されている。鍵10の下面には、棒状の揺動レバー駆動部50が一体的に設けられて、下方に延設されている。揺動レバー駆動部50の下面は、揺動レバー51の前部上面に当接している。揺動レバー51は合成樹脂で長尺状に成形される。揺動レバー51の後部上面には、弾き部44が第2実施形態と同様に組み付けられている。揺動レバー51はフレームFRに設けられた揺動レバー支持部52に、ピンの軸線回りに回転可能に支持され、弾き部44が上下方向に揺動可能となっている。揺動レバー51の前部下方には、板ばね54がフレームFRに固定されていて、揺動レバー51の前部を上方へ付勢している。揺動レバー51の後部下方には、下限ストッパ22と同様な上限ストッパ43がフレームFR上に固定されており、揺動レバー51の前部の上方への変位を規制する。弾き部44の上方には、振動板30が第1実施形態と同様に構成されている。
次に、上記のように構成した第3実施形態に係る鍵盤楽器の動作を説明する。鍵10を押鍵操作しない状態では、板ばね54によって揺動レバー51の前部が上方へ付勢され、揺動レバー駆動部50を介して鍵10の前部が上方へ付勢される。一方、鍵10を押鍵操作すると、揺動レバー駆動部50が板ばね54の付勢力に対抗して、揺動レバー51の前部を下方向に押しながら、鍵10は回転中心21を中心として、図5にて反時計回りに回転し始める。揺動レバー51は、フレームに設けられた揺動レバー支持部52を支点として、反時計回りに回転し始め、弾き部44が上方へ変位する。その後、第2実施形態と同様に弾き部44が振動板30を弾き、振動板30が振動し、その振動が共鳴体31により増幅され、鍵音高に対応する楽器音が発音される。さらに押鍵が進むと、鍵10の前部下面が下限ストッパ22に当接し、鍵10の前部の下方への変位が規制される。
鍵10の押鍵操作が解除されると、板ばね54の付勢力によって揺動レバー51の前部が上方へ押し上げられる。これにより、揺動レバー51は揺動レバー支持部52を支点として、図5にて時計回りに揺動し始め、弾き部44が下方へ変位する。弾き部44は、振動板30に当接して、振動板30の振動を抑制する。弾き部44がさらに下方へ変位すると、弾き部44は振動板30を乗り越える。揺動レバー51の後部下面が上限ストッパ43に当接すると、揺動レバー51の前部の上方への変位が規制される。揺動レバー51に連動して鍵10の揺動も停止し、鍵10は元の位置(図5の位置)へ復帰する。
上記のように構成した第3実施形態に係る鍵盤楽器においても、鍵10の押鍵操作に連動する揺動レバー51に組み付けられた弾き部44で振動板30を弾き、発音することができる。また、構造が単純であるので、楽器本体を小型化及び軽量化できる。さらに、経年変化で変形、変質する部分が無いため、定期的に楽器を調律及び調整する必要がない。
d.第4実施形態
次に、弾き部44を一定方向に回転させるようにした本発明の第4実施形態について説明する。図6は、鍵10が離鍵されている状態を第2実施形態と同様に示した側面図である。鍵10は第2実施形態と同様に支持され、下限ストッパ22及び上限ストッパ43で揺動範囲が規制されている。鍵10の後部上面には、アーム61の前部が当接している。
アーム61は、基部62、第1駆動部63及び第2駆動部64から構成される。図7はアーム61の後部の拡大図である。基部62は、合成樹脂で、所定角度を持った2辺を有する長尺状の板状部材であり、第1駆動部63及び第2駆動部64は金属材料で円弧状に屈曲した屈曲部を有するように成形された板状部材である。各屈曲部の先端面は平面になっている。第1駆動部63は、基部62の後端部の高音部側(演奏者側から見て右側)の面上に、その屈曲部63が上方から下方に向かうように組み付けられる。第2駆動部64は、基部62の後端部の低音部側(演奏者側から見て左側)の面上に、その屈曲部が下方から上方へ向かうように組み付けられる。第1駆動部63及び第2駆動部64は、それぞれ屈曲部が基部62の後端から張り出しており、横方向に若干ずれて位置している。
アーム61は、フレームFRに固定されたアーム支持部材65に設けられた回転中心66を中心として回転可能に支持される。鍵10を押鍵操作しない状態では、アーム61はアームストッパ67上に位置する。なお、アームストッパ67は、フェルトなどの衝撃吸収材によって長尺状に構成され、横方向に延設してフレームFRに固定されている。アーム61の後方には、図8(A)及び図8(B)に拡大して示すように、回転爪90がアーム61の第1駆動部63及び第2駆動部64に挟み込まれるようにして、アーム支持部材65に設けられた回転中心68を中心として回転可能に支持される。
ここで、回転爪90の構成について図9を用いて説明する。図9(A)は回転爪90を高音部側(演奏者側から見て右側)から見た側面図であり、図9(B)は平面図である。図9(C)は低音部側(演奏者側から見て左側)から見た側面図である。回転爪90は、金属製の第1円板部91、第2円板部92及び第3円板部93から構成され、これらが一体的に接合された部材である。
第1円板部91は、外周部に複数(例えば4つ)の弾き部44を有している。弾き部44は、第1円板部91の外周に突起状に設けられていて、振動板30に当接して振動板30を弾く。弾き部44の振動板30と当接する面は、円弧状の曲面になっている。
第2円板部92は、弾き部44と同数の第1被駆動部95を外周部に有している。第1被駆動部95は、円板の外周部に突起状に設けられ、第1駆動部63の先端面と当接する平面部と、第1駆動部63の屈曲面と当接する円弧状の曲面部を有する。
第3円板部93も、第2円板部92と同様に、弾き部44と同数の第2被駆動部96を外周部に有している。第2被駆動部96には、第2駆動部64が当接するが、第2被駆動部96の形状は、第1被駆動部95と同じである。ただし、第3円板部93は、第2円板部92とは各被駆動部の方向が45度異なっている。
第1被駆動部95は弾き部44に対し高音部側(演奏者側から見て右側)に位置し、第2被駆動部96は低音部側(演奏者側から見て左側)に位置する。回転爪90の後方には、振動板30が第1実施形態と同様に構成されている。
次に、上記のように構成した第4実施形態に係る鍵盤楽器の動作を説明する。図10(A)、図11(A)、図12(A)及び図13(A)は、押離鍵操作時のアーム61及び回転爪90の動作を示すために、本発明に係る鍵盤楽器を縦断して、高音部側(演奏者側から見て右側)から見た拡大側面図である。また、図10(A)、図11(A)、図12(A)及び図13(A)にそれぞれ対応した、低音部側(演奏者側から見て左側)から見た拡大側面図を図10(B)、図11(B)、図12(B)及び図13(B)に示す。
鍵10を押鍵操作しない状態では、板ばね42によって、鍵10の前部が上方へ付勢されて、図6の状態にある。このとき、アーム61の第1駆動部63は、図10(A)に示すように、回転爪90の第1被駆動部95から離れている。一方、図10(B)に示すように、アーム61の第2駆動部64の先端面は、回転爪90の第2被駆動部96の平面部に当接した状態となっている。さらに、第2駆動部64と第2被駆動部96の円弧状の曲面同士が当接している。従って、この状態では、回転爪90は第2駆動部64によって固定された状態になり、回転不可能となっている。
一方、板ばね42の付勢力に対抗して鍵10を押すと、鍵10は回転中心41を中心として、図6にて反時計回りに回転し始める。すると、鍵10の後部が上方に変位し、鍵10に当接しているアーム61の前部を上方へ変位させる。これにより、アーム61は回転中心66を中心として、図6にて時計回りに回転する。押鍵が進むと、図11(A)に示すように、アーム61の第1駆動部63の先端面が回転爪90の第1被駆動部95に当接して、回転爪90を図11(A)にて時計回りに回転させようとする。このとき、図11(B)に示すように第2被駆動部96は、アーム61の第2駆動部64から解放されているので、回転爪90は回転可能となっている。押鍵が進むと、回転爪90が回転し、それに伴い弾き部44も回転する。その後、弾き部44は振動板30の自由端に当接して、振動板30の自由端側を下方へ押し曲げる。弾き部44がさらに回転すると、図12(A)に示すように、弾き部44は振動板30を乗り越える。すなわち、弾き部44が振動板30を弾く。そして、第2実施形態と同様に、振動板30が振動し、その振動が共鳴体31により増幅され、鍵音高に対応する楽器音が発音される。さらに押鍵が進むと、鍵10の前部下面が下限ストッパ22に当接して、鍵10の揺動は停止し、回転爪90の回転も停止する。この状態では、図12(B)に示すように、アーム61の第2駆動部64は、回転爪90の第2被駆動部96から離れている。一方、図12(A)に示すように、アーム61の第1駆動部63及び回転爪90の第1被駆動部63の円弧状の曲面同士が当接するので、回転爪90は回転不可能になっている。
鍵10の押鍵操作が解除されると、板ばね42の付勢力によって鍵10の前部が上方へ押し上げられる。これにより、鍵10は回転中心41を中心として、図6において時計回りに回転し始める。鍵10の後端部は下方へ変位し、アーム61は自重により回転中心66を中心として、図6にて反時計回りに回転する。すると、図13(B)に示すように、アーム61の第2駆動部64の先端面が回転爪90の第2被駆動部96の平面部に当接して、回転爪90を押鍵時と同じ方向(図13(A)にて時計回り)へ回転させようとする。このとき、図13(A)に示すように、回転爪90の第1被駆動部95はアーム61の第1駆動部63から解放されているので、回転爪90は回転可能となっている。離鍵が進むと、押鍵によって振動板30を弾いた弾き部44を、振動板30から遠ざかる方向へ回転させる。鍵10の後部下面が上限ストッパ43に当接すると、鍵10の前部の上方への変位が規制され、鍵10は元の位置(図6の位置)へ復帰し、アーム61と回転爪90も元の位置(図10(A)及び図10(B)の位置)へ復帰する。
上記のように構成した第4実施形態に係る鍵盤楽器においても、鍵10の押鍵操作に連動するアーム61によって、回転爪90を回転させて振動板30を弾き、発音することができる。また、離鍵操作によって、弾き部44が振動板30から遠ざかる方向へ回転爪90を回転させることができるので、離鍵操作時に、弾き部44が振動板30に接触しない。そのため、離鍵操作時に雑音を発することがなく、演奏性を向上させることができる。また、構造が単純であるので、楽器本体を小型化及び軽量化できる。さらに、経年変化で変形、変質する部分が無いため、定期的に楽器を調律及び調整する必要がない。
e.第5実施形態
次に、第3実施形態における揺動レバー51の揺動を規制する機構を備えるようにした本発明の第5実施形態について説明する。図14は、鍵10が離鍵されている状態を第3実施形態と同様に示した側面図である。鍵10は、第3実施形態と同様に構成され、揺動レバー駆動部50の下面が、揺動レバー51の前部上面に当接している。
揺動レバー51は第3実施形態とは形状を異ならせているが、この場合も合成樹脂で長尺状に成形される。揺動レバー51の後端部には、振動板30を弾くための金属製の弾き部44が組み付けられている。弾き部44の先端部は揺動レバー51の後端から楽器後部側へ張り出している。揺動レバー51はフレームFRに設けられた揺動レバー支持部52に、ピンの軸線回りに回転可能に支持され、弾き部44が上下方向に揺動可能となっている。さらに、揺動レバー51は、揺動レバー支持部52と係合する部分がスリット状になっていて、揺動レバー51が前後にも移動可能になっている。また、揺動レバー51の後部は、カム141に回転可能に偏心結合されている。カム141は外周部に凸部141aを有する円板状の部材で、フレームFRに設けられたカム支持部142に回転可能に支持されている。カム141の上方には、カム141の逆回転を防止するための逆回転防止機構143が備えられている。逆回転防止機構143は、押圧部材144、圧縮ばね145及び押圧部材ガイド146からなる。押圧部材ガイド146は、円筒状部材で一端にフランジを有し、フランジ部分でフレームFRに固定されている。押圧部材144は金属製の円柱状の部材で、先端部が半球状に成形されており、押圧部材ガイド146内に軸線方向に摺動可能に収容されて、圧縮ばね145により下方に付勢されている。押圧部材144の先端は押圧部材ガイド146から突出していて、カム141の外周に摺接している。また、弾き部44の後方には、振動板30が第3実施形態と同様に構成されている。
次に、上記のように構成した第5実施形態に係る鍵盤楽器の動作を説明する。鍵10を押鍵操作しない状態では、板ばね54によって揺動レバー51が上方へ付勢され、揺動レバー駆動部50を介して鍵10の前部が上方へ付勢される。一方、鍵10を押鍵操作すると、揺動レバー駆動部50が板ばね54の付勢力に対抗して、揺動レバー51を下方向に押しながら、鍵10は回転中心21を中心として、図14にて反時計回りに回転し始める。揺動レバー51は、フレームに設けられた揺動レバー支持部52を支点として、反時計回りに回転し始め、弾き部44が上方へ変位する。このとき、揺動レバー51は、後部がカム141に偏心結合されているから、揺動レバー51は、カム141をカム支持部142の回転中心を中心として、図14にて反時計回りに回転させる。その結果、揺動レバー51は、後方へ移動する。その後、第3実施形態と同様に弾き部44が振動板30を弾き、振動板30が振動し、その振動が共鳴体31により増幅され、鍵音高に対応する楽器音が発音される。
押鍵終了直前において、図15(A)に示すように、カム141の凸部141aにより押圧部材144が押圧部材ガイド146内に押し込まれ、圧縮ばね145が圧縮される。その後、図15(B)に示すように、押圧部材144が圧縮ばね145の反発力によってカム141の凸部141aを押すことにより、カム141を図14にて反時計回りに強制的に回転させて止まり、押鍵操作が終了する。このように強制的にカム141を回転させることにより、離鍵操作開始時の揺動レバー51の位置を、カム141が逆回転(図14にて時計回り)しない位置にすることができる。
鍵10の押鍵操作が解除されると、板ばね54の付勢力によって揺動レバー51の前部が上方へ押し上げられる。これにより、揺動レバー51は揺動レバー支持部52を支点として、図14にて時計回りに揺動し始め、弾き部44が下方へ変位する。このとき、揺動レバー51は、カム141を図14にてカム支持部142の回転中心を中心として、反時計回りに回転させる。その結果、揺動レバー51は、前方へ移動し、弾き部44の先端は、押鍵時とは異なり、振動板30から離れた経路を通る。離鍵操作終了直前においても、押鍵操作終了直前と同様に逆回転防止機構143が動作し、次の押鍵操作時にカム141が逆回転(図14にて時計回り)しないように、強制的にカム141を図14にて反時計回りに回転させる。その後、鍵10は元の位置(図14の位置)へ復帰する。
上記のように構成した第5実施形態に係る鍵盤楽器においても、鍵10の押鍵操作に連動する揺動レバー51に組み付けられた弾き部44で振動板30を弾き、発音することができる。揺動レバー51は、カム141及び逆回転防止機構143によって、その動きが規制され、離鍵時に弾き部44が振動板30から離れた経路を通るので、離鍵時に雑音を出すことがない。また、構造が単純であるので、楽器本体を小型化及び軽量化できる。さらに、経年変化で変形、変質する部分が無いため、定期的に楽器を調律及び調整する必要がない。
f.第6実施形態
次に、鍵10によって駆動されるリンク機構を備えた本発明の第6実施形態について説明する。図16は、鍵10が離鍵されている状態を第5実施形態と同様に示した側面図である。
鍵10の下面には、駆動アーム支持部162が鍵10に一体的に設けられている。鍵10の下方には、カム160がフレームFRに設けられたカム支持部142に回転可能に支持されている。カム160は3枚の円板状部材から構成され、それぞれの円板状部材が、円柱状の連結部材165a,165bを介して、板厚方向に円板状部材の中心軸を揃えて積層されている。図17(A)及び図17(B)に示すように、各円板状部材は偏心位置で連結され、それぞれの連結位置が90度異なっている。また、低音部側(演奏者側からみて左側)の円板状部材のみが、外周部に凸部160aを有している。
駆動アーム163は、合成樹脂で長尺状に成形された部材で、上端が駆動アーム支持部162の回転中心を中心として回転可能に支持されている。一方駆動アーム163の下端はカム160の低音部側(演奏者側から見て左側)の連結部材165aに回転可能に支持されている。
揺動レバー51は、第5実施形態とは形状を異ならせているが、この場合も合成樹脂で長尺状に成形され、後端部には振動板30を弾くための金属製の弾き部44が組み付けられている。揺動レバー51の前端は、高音部側(演奏者側から見て右側)の連結部材165bに回転可能に支持されている。また、揺動レバー51は、第5実施形態と同様に、フレームFRに設けられた揺動レバー支持部52に、ピンの軸線回りに回転可能に支持され、弾き部44が上下方向に揺動可能となっている。さらに、揺動レバー51は、揺動レバー支持部52と係合する部分がスリット状になっていて、揺動レバー51が前後に移動可能になっている。なお、揺動レバー51、カム160、駆動アーム163などが本発明のリンク機構を構成する。
さらに、第5実施形態と同様な逆回転防止機構143がカム160の前方に設けられていて、押圧部材144の先端がカム160の低音部側(演奏者側から見て左側)の円板状部材の外周に摺接している。また、弾き部44の後方には、振動板30が第5実施形態と同様に構成されている。
次に、上記のように構成した第6実施形態に係る鍵盤楽器の動作を説明する。鍵10を押鍵操作しない状態では、復帰手段としての板ばね42によって鍵10の前部が上方へ付勢される。一方、鍵10を押鍵操作すると、鍵10は回転中心21を中心として、図16にて反時計回りに回転し始める。駆動アーム163は、カム160をカム支持部142の回転中心を中心として、図16にて反時計まわりに回転させる。揺動レバー51は、フレームFRに設けられた揺動レバー支持部52を支点として、図16にて時計回りに回転し始め、弾き部44は下方へ変位する。その後、第5実施形態と同様に、弾き部44が振動板30を弾き、振動板30が振動し、その振動が共鳴体31により増幅され、鍵音高に対応する楽器音が発音される。揺動レバー51はカム160に偏心結合されているから、カム160の回転によって、揺動レバー支持部材52を支点として揺動しながら、前方へ移動する。押鍵終了直前には、第5実施形態と同様に、逆回転防止機構143によって、離鍵操作開始時にカム160が逆回転(図16にて時計回り)しない位置まで、カム160が強制的に回転させられる。
鍵10の押鍵操作が解除されると、板ばね42の付勢力によって鍵10の前部が上方へ押し上げられる。これにより、カム160は図16にて反時計回りに回転し、揺動レバー51は、支持部材52を支点として揺動しながら、レバー51の前端の支持部(連結部材165b)は下方かつ後方へ移動し、その後、後方かつ上方へ移動する。離鍵終了直前においても、第5実施形態と同様に、逆回転防止機構143によって、次の押鍵操作開始時にカム160が逆回転しない位置まで強制的に回転させられる。そして、鍵10及び揺動レバー51は元の位置(図16の位置)へ復帰する。
上記のように構成した第6実施形態に係る鍵盤楽器においても、鍵10の押鍵操作に連動する揺動レバー51に組み付けられた弾き部44で振動板30を弾き、発音することができる。カム160及び揺動レバー51によって構成されるリンク機構によって、押鍵時は、レバー51の前端の支持部(連結部材165b)がA3(図16)の経路を通るように移動することで、レバー51の前端が持ち上げられ、弾き部44がA1(図16)の経路で移動し、離鍵時には、レバー51の前端の支持部(連結部材165b)がA4(図16)の経路を通るように移動することで、弾き部44が振動板30から離れたA2(図16)の経路を通るので、離鍵時に雑音を出すことがない。また、構造が単純であるので、楽器本体を小型化及び軽量化できる。さらに、経年変化で変形、変質する部分が無いため、定期的に楽器を調律及び調整する必要がない。
g.第7実施形態
次に、揺動レバー51の後部を屈折させ、その屈折角度を規制するようにした本発明の第7実施形態について説明する。図18は、鍵10が離鍵されている状態を第3実施形態と同様に示した側面図である。鍵10は、第3実施形態と同様に構成され、揺動レバー駆動部50の下面が、揺動レバー51の前部上面に当接している。
揺動レバー51は第3実施形態とは異なり、基部51a及び屈折部51bから構成される。この場合、基部51a及び屈折部51bは合成樹脂で長尺状に成形される。基部51aはフレームFRに設けられた揺動レバー支持部52に、ピンの軸線回りに回転可能に支持される。
基部51aの後部の高音部側(演奏者側から見て右側)には、屈折部51bが基部51aに対して揺動可能に支持されている。屈折部51bの後端には、金属製の弾き部44が組み付けられている。図19は屈折部51bを拡大して示した斜視図である。屈折部51bは、上面の低音部側(演奏者側から見て左側)の側縁部に、第1凹部191b及び第2凹部191cを形成するために薄板状の三角形状の凸部が3個連なるように設けられる。上面のその他の部分は平面部191aとなっている。
第1凹部191b及び第2凹部191cには円柱状の角度規制部材182が選択的に係合する。角度規制部材182は、基部51aに固定された板ばね183によって、屈折部51b側へ付勢されている。従って、角度規制部材182が第1凹部191bに係合した場合は、屈折部51bの基部51aに対する角度を第1角度(図20(A))に規制する。一方、第2凹部191cに係合した場合は、第2角度(図20(B))に規制する。
第1角度(図20(A))の状態では、揺動レバー51の回転中心から弾き部44の先端までの距離が大きくなり、揺動レバー51の揺動時に、弾き部44の先端が振動板30の自由端に当接することができる。一方、第2角度(図20(B))の状態では、揺動レバー51の回転中心から弾き部44の先端までの距離が小さくなり、揺動レバー51の揺動時に、弾き部44の先端が振動板30の自由端に当接しない。
上限ストッパ43は、第3実施形態とは形状を異ならせているが、この場合も同様に揺動レバー51の後部下方に配設されて、離鍵時の鍵10の前部の上方への変位を規制する。さらに、上限ストッパ43は、離鍵終了時に屈折部51bの角度を第1角度(図20(A))に規制する。
一方、下限ストッパ22は、第3実施形態とは異なり、フェルトなどの衝撃吸収材による直方体の部材が鍵10ごとにフレームFRに配設され、押鍵時に各鍵10の屈折部51bの平面部191aにのみ当接し、基部51aには当接しないようになっている。これにより、下限ストッパ22は、押鍵時の鍵10の前部の下方への変位を規制するとともに、屈折部51bの角度を第2角度(図20(B))に規制する。なお、角度規制部材182、板ばね183、基部51a及び屈折部51bが本発明の角度規制機構を構成する。
次に、上記のように構成した第7実施形態に係る鍵盤楽器の動作を説明する。図21(A)乃至図21(D)は、押離鍵操作時の基部51aと屈折部51bの動作を示した図である。なお、図21(A)乃至図21(D)においては、角度規制部材182、第1凹部191b及び第2凹部191cを省略して示す。鍵10を押鍵操作しない状態では、第3実施形態と同様に板ばね54の付勢力により、揺動レバー51の前部が上方へ付勢される。このとき、屈折部51bの底面が上限ストッパ43に当接することにより、屈折部51bと基部51aの角度が第1角度(図20(A))に規制されている。
鍵10を押鍵すると、第3実施形態と同様に揺動レバー51が図21において反時計回りに回転し、弾き部44が上方へ変位する。このとき、角度規制部材182により、屈折部51bと基部51aの角度は第1角度(図20(A))に規制されているので、第3実施形態と同様に弾き部44が振動板30を弾くことができ、振動板30が振動し、その振動が共鳴体31により増幅され、鍵音高に対応する楽器音が発音される。さらに押鍵が進むと、図21(B)に示すように、上限ストッパ22が屈折部51bの上面の平面部191aに当接する。基部51aは上限ストッパ22に規制されることなく、さらに回転できるが、屈折部51bは上限ストッパ22に当接することにより動きが規制される。すなわち、屈折部51bは、基部51aに対して、図21にて反時計回りに回転させられる。このとき、板ばね183の付勢力に対抗して角度規制部材182が第2凹部191cへ移動する。これにより、図21(C)に示すように、基部51aと屈折部51bの角度が第2角度(図20(B))に規制される。
鍵10の押鍵操作が解除されると、揺動レバー51は、第3実施形態と同様に、図21にて時計回りに揺動し始め、弾き部44が下方へ変位する。このとき、屈折部51bと基部51aの間の角度は、角度規制部材182によって第2角度(図20(B))に規制されている。従って、弾き部44は、振動板30に当接しない。弾き部44がさらに下方へ変位すると、図21(D)に示すように、屈折部51bの後端が上限ストッパ43に当接する。すると、屈折部51bは、基部51aに対して図21にて時計回りに回転させられる。このとき、板ばね183の付勢力に対抗して角度規制部材182が第1凹部191bへ移動する。これにより、図21(A)に示すように、屈折部51bと基部51aの角度が第1角度(図20(A))に規制される。また、揺動レバー51に連動して鍵10の揺動も停止し、鍵10は元の位置(図21(A)の位置)へ復帰する。
上記のように構成した第7実施形態に係る鍵盤楽器においても、鍵10の押鍵操作に連動する屈折部51bに組み付けられた弾き部44で振動板30を弾き、発音することができる。離鍵時には、屈折部51bが第2角度(図20(B))に規制されることにより、揺動レバー51の回転中心から弾き部44の先端までの距離が小さくなり、弾き部44が振動板30から離れた経路を通るので、離鍵時に雑音を出すことがない。また、構造が単純であるので、楽器本体を小型化及び軽量化できる。さらに、経年変化で変形、変質する部分が無いため、定期的に楽器を調律及び調整する必要がない。
h.第8実施形態
上述した各実施形態に係る鍵盤楽器は、それぞれの構成に加えて、自動演奏機構を設けてもよい。
図22は、第2実施形態に係る鍵盤楽器に自動演奏機構を付加した図である。各鍵10の後部下方には、アクチュエータ支持台221がフレームFRに固定されている。アクチュエータ支持台221にはアクチュエータ220が固定され、駆動ロッド222が鍵10の後部下面に当接している。アクチュエータ220としては、電気的に駆動制御できるものであれば、種々のアクチュエータ(例えばソレノイド)を利用できるが、低電力でも比較的大きな駆動力が得られると同時に応答速度の速い超磁歪素子を用いた電気アクチュエータを用いることが好ましい。制御回路223は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータの指示によりアクチュエータ220に駆動信号を出力する駆動回路とを含む。
次に、上記のように構成した自動演奏機構の動作について説明する。あらかじめROMなどに記録された演奏データに基づいて、アクチュエータ駆動信号が制御回路内で生成される。生成された駆動信号が制御回路223からアクチュエータ220に供給されて、アクチュエータ220が駆動される。駆動ロッド222が図示上下方向に変位して、鍵10及び弾き部44を揺動させることにより、振動板30を弾くことができ、振動板30の振動が共鳴体31により増幅され、鍵音高に対応する楽器音が発音される。
同様に第3実施形態に係る鍵盤楽器にアクチュエータ220を適用した例を図23に示す。この場合は、揺動レバー51の後部下方にアクチュエータ220が配設される。その他の構成は、上記の第2実施形態に係る鍵盤楽器への適用例と同様である。また、同様に他の実施形態についても適用が可能である。
i.第9実施形態
上述した各実施形態に係る鍵盤楽器は、さらに、それぞれの構成に加えて、振動板30の振動を抑制する機構を設けてもよい。
図24は、第3実施形態に係る鍵盤楽器に振動抑制機構を付加した図である。振動板30の下方には、操作子240(例えばペダル)がフレームFRに固定された操作子支持部241にピンの軸線回りに回転可能に支持されている。操作子240の前部下方には板ばね243がフレームFRに固定されており、操作子240の前部を上方へ付勢している。また、操作子240の前部下方には、操作子240の下方への変位を規制する操作子下限ストッパ243がフレームFRに固定されている。操作子240の後部には、駆動ロッド244の一端が固定されている。駆動ロッド244は長尺状部材で、上方の振動板30へ向かって延設されている。駆動ロッド244の上端には、フェルトなどで構成される振動抑制部材245が振動板30に対向して組み付けられている。
次に、上記のように構成した振動板30の振動抑制機構の動作について説明する。操作子240を操作しない状態では、振動抑制部材245は振動板30から離れている。操作子240の前部を板ばね242の付勢力に対抗して下方へ押すと、操作子240は操作子支持部241の回転中心を中心に、図24において反時計回りに回転する。すると、駆動ロッド244が上方へ変位し、振動抑制部材245が振動板30に当接して、振動板30の振動を抑制する。このとき、操作子240の前部下面が操作子下限ストッパ243に当接するため、振動抑制部材245の上方への変位量も制限される。これにより、振動板抑制部材245が必要以上に振動板30を押さえ付けて、振動板30を破損させることがない。操作子240の操作を解除すると、板ばね242の付勢力によって、操作子240の前部が上方へ押し上げられ、操作子240が操作子支持部241の回転中心を中心として、図24にて時計回りに回転する。駆動ロッド245が下方へ変位し、振動抑制部材245が振動板30から離れて、元の状態(図24)に復帰する。
上記のように構成した鍵盤楽器においては、振動板30の振動が自然減衰して音が消える前に、操作子240を操作することにより、振動板30の振動を抑制し、音を消すことができるので、演奏中に音の長さを制御することができる。
なお、上記第9実施形態に係る鍵盤楽器では、振動抑制部材245を振動板30に当接させるようにしたが、これに代えて、図25に示すように、共鳴体31に当接させるようにしてもよい。このように構成した鍵盤楽器においても、演奏中に音の長さを調整することができる。
j.第10実施形態
上述した実施形態に係る鍵盤楽器は、さらに、それぞれの構成に加えて、振動板30と弾き部44の相対位置を変化させて、励振力を変更する機構を設けてもよい。
図26は、第3実施形態に係る鍵盤楽器に励振力変更機構を付加した図である。揺動レバー51の下方には、操作子240(例えばペダル)がフレームFRに固定された操作子支持部241にピンの軸線回りに回転可能に固定されている。操作子240の前部下方には板ばね242がフレームFRに固定されており、操作子240の前部を上方へ付勢している。また、操作子240の前部下方には、操作子240の下方への変位を規制する操作子下限ストッパ243がフレームFRに固定されている。操作子中間部には、駆動ロッド244の一端が回転可能に支持されている。駆動ロッド244は長尺状部材で、上方の揺動レバー支持部260へ向かって延設されている。駆動ロッド244の他端は、揺動レバー支持部260の下面に回転可能に接続されている。揺動レバー支持部260は、フレームFRに固定された支持ガイド261内で上下方向に一定の範囲で移動可能となっている。揺動レバー支持部260には、揺動レバー51が第3実施形態と同様に支持されている。図27に揺動レバー支持部260を拡大した斜視図を示す。
次に、上記のように構成した励振力変更機構の動作を説明する。操作子240を操作しない状態では、揺動レバー支持部260が支持ガイド261内において最も上方に位置する。すなわち、離鍵状態において、弾き部44と振動板30の距離が最も小さい状態になる。一方、操作子240の前部を板ばね242の付勢力に対抗して下方へ押すと、操作子240は操作子支持部241の回転中心を中心に、図26において反時計回りに回転する。すると、駆動ロッド244が下方へ変位し、揺動レバー支持部260が下方へ変位する。これにより、離鍵状態において、弾き部44と振動板30の距離が大きくなる。このとき、揺動レバー支持部260は支持ガイド261によって移動範囲が制限され、弾き部44と振動板30が必要以上に離れることがない。従って、必ず押鍵時に振動板30を弾くことができる。
操作子240の操作を解除すると、板ばね242の付勢力によって、操作子240の前部が上方へ押し上げられ、操作子240は操作子支持部241の回転中心を中心として、図26にて時計回りに回転する。駆動ロッド244は上方へ変位し、揺動レバー51は元の位置(図26の位置)に復帰する。
上記のように構成した鍵盤楽器においては、操作子240を操作することにより、振動板30と弾き部44の距離を変更することができる。これにより、弾き部44が振動板30を弾く際の、弾き部44の振動板30へのかかり量を調整することができ、音色及び音量を変化させることができる。具体的には、操作子240を操作しない状態で押鍵操作すると、振動板30は強く弾かれて、発生楽音の音量は大きくなる。操作子240を操作した状態で押鍵操作すると、振動板30は前記よりも弱く弾かれて、発生楽音の音量は小さくなる。また、これらの2状態では、振動板30は弾かれ方にも若干の変化があるので、発生楽音の音色も若干変化する。
なお、上記第10実施形態に係る鍵盤楽器では、揺動レバー51の支持部材52を上下に移動させるようにしたが、前後に移動させるようにしてもよい。また、振動板30を移動させるようにしてもよい。
10…鍵、20…鍵支持部(支持部材)22…下限ストッパ、23…ハンマー駆動部、24…ハンマー、26…質量体(打撃部材)28…ハンマーストッパ部、30…振動板(片持ち振動板)、31…共鳴体、32…共鳴体支持部、42,54,183,242…板ばね、43…上限ストッパ、44…弾き部、50…揺動レバー駆動部、51…揺動レバー(鍵連動部材)、51a…基部、51b…屈折部、61…アーム、63…第1駆動部、64…第2駆動部、67…アームストッパ、90…回転爪(弾き部材)、91…本体部、95…第1被駆動部、96…第2被駆動部、141…カム(揺動規制部材)、143…逆回転防止機構、144…押圧部材、146…押圧部材ガイド、160…カム、163…駆動アーム(リンク機構)、182…角度規制部材(角度規制機構)、220…アクチュエータ、222,244…駆動ロッド、223…制御回路、240…操作子、245…振動抑制部材(制振部材)、243…操作子下限ストッパ、260…揺動レバー支持部、261…支持ガイド
FR…フレーム