JP5767384B1 - 磁気ディスク用アルミニウム合金板、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク及び磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート - Google Patents
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Abstract
【課題】めっき前処理の酸エッチング処理を弱い条件で行った場合でも微小めっき欠陥が発生し難い磁気ディスク用アルミニウム合金板の提供。【解決手段】本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金板は、Mg:3.5〜5.5質量%、Fe:0.025質量%以下に規制し、Si:0.020質量%以下に規制し、Cr:0.010〜0.20質量%を含有し、Cu:0.010〜0.1質量%及びZn:0.05〜0.4質量%のうちの少なくとも一方を含有し、さらに、Mn:0.005質量%以下、及び、Ni:0.001質量%以下に規制し、残部Al及び不可避不純物からなり、Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比がMn/Fe比で0.50以下、及び、Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比がNi/Fe比で0.20以下であり、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が10μm以下であることを特徴とする。【選択図】なし
Description
本発明は、磁気ディスク用アルミニウム合金板、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク及び磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレートに関する。
コンピュータ等の記録媒体として使用される磁気ディスクは、非磁性の基板に磁性膜を形成されてなる。一般的に、当該基板には、軽量且つ高い剛性を有し、平滑な表面であることが要求されるため、JIS H 4000:2006に規定の5086合金(Al−Mg系合金)が用いられている。
この基板は、前記合金を用いて板材として製造された後、例えば、当該板材の表面を鏡面加工し、脱脂処理、酸エッチング処理、デスマット処理、1stジンケート処理、硝酸剥離処理、2ndジンケート処理、無電解Ni−Pめっき処理が順に行われる。そして、無電解Ni−Pめっき膜の上に磁性膜等が形成され、磁気ディスクが製造される。
磁気ディスクに用いられるアルミニウム(Al)合金基板が、例えば、特許文献1、2に記載されている。具体的に、特許文献1には、Cu:0.01乃至0.1質量%、Mg:3.0乃至6.0質量%、Cr:0.02乃至0.1質量%、Zn:0.04乃至0.7質量%、Ni:0.001乃至0.02質量%を含有し、残部がAl及び不純物からなり、この不純物のうちFeとSiを、Fe:0.02質量%以下、Si:0.02質量%以下に規制し、その他の不可避的不純物を個々で0.01質量%以下に規制すると共に、Fe+Niを0.03質量%以下とし、Al−Fe系金属間化合物の最大サイズが6μm以下で、Mg−Si系金属間化合物の最大サイズが3μm以下であることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金が記載されている。
また、特許文献2には、Mg:3.5質量%以上4.5質量%以下、Si:0.001質量%以上0.06質量%以下及びFe:0.001質量%以上0.06質量%以下を含み、Cu:0.01質量%以上0.2質量%以下及びZn:0.001質量%以上0.4質量%以下のうち少なくとも1種を含有し、さらに必須成分として、Cr:0.10質量%超え0.3質量%以下及びMn:0.10質量%超え0.3質量%以下のうち少なくとも1種を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、最大長さが5μmを超える金属間化合物が1個/mm2以下であり、かつ平均結晶粒径が20μm以下である磁気ディスク用アルミニウム合金基板が記載されている。
特許文献1に記載されている磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、従来の磁気ディスク用アルミニウム合金基板と同程度の機械的性質を保ちながら所望の平滑度を得ることができ、リサイクル性に優れている。また、特許文献2に記載されている磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、めっきピットなどの表面欠陥が少ないとともに微細な結晶粒組織を有するため、Ni−Pめっき表面の微小うねりを小さくすることができる。
しかしながら、近年、さらに磁気ディスクの高記録密度化が進み、より平滑性の高いめっき面が要求されるようになってきた。当該要求に応えるため、めっき前処理時の酸エッチング処理の条件を弱くし、基板表面のエッチングダメージを抑制したいという意向がある。
このような意向を反映し、特許文献1、2に記載されている磁気ディスク用アルミニウム合金基板に対して弱い条件で酸エッチング処理を行うと、めっき膜を形成する板表面の平滑性を高くすることが可能となる。しかし、その一方で、従来、酸エッチング処理で溶解されていたAl−Fe系金属間化合物の一部が溶解されずに溶け残ることがある。そして、これが原因で、ノジュールやガスピットなどの微小めっき欠陥が発生することがある。
ここで、図1(a)〜(h)は、磁気ディスク用アルミニウム合金基板を鏡面加工して製造したサブストレート(図1において「サブストレート」と記載する。当該サブストレートは、グラインドサブストレート(GRサブストレート)と呼称されることもある。)に対して弱い条件で酸エッチング処理を行った後、ジンケート処理及びNi−Pめっき処理を行った場合に生じるノジュールやガスピットなどの微小めっき欠陥とその発生メカニズムを説明する説明図である。
図1(a)は、磁気ディスク用アルミニウム合金基板を鏡面加工して製造したサブストレートを示している。当該サブストレートの表面を脱脂処理し、次いで弱い条件の酸エッチング処理を行うと、前記したように、Al−Fe系金属間化合物の一部が溶解されずに溶け残ることがある(図1(b))。この現象は、酸エッチング処理の条件を弱くしたため、Al−Fe系金属間化合物が電気化学的に貴となることによって生じると考えられる。
そして、図1(b)に示す状態のサブストレートに対してジンケート処理を行うと、図1(c)に示すように、溶け残ったAl−Fe系金属間化合物(具体的には、Al−Fe−Mn系金属間化合物及びAl−Fe−Ni系金属間化合物)上に亜鉛が異常に析出することがある。この状態で無電解Ni−Pめっき処理を行うと、図1(d)に示すように、亜鉛が異常に析出した部分にNi−Pめっき膜が異常に析出し、ドーム状の突起(所謂ノジュール)が形成される。ノジュールはめっき後ポリッシュで除去することができるが、平滑性を阻害し、ポリッシュ時間を増加させる。そのため、生産性が悪くなる。
また、図1(c)に示す、亜鉛が異常に析出したサブストレートに対し、めっき処理に先立って行う洗浄工程にて、前記溶け残ったAl−Fe系金属間化合物が亜鉛とともに脱落し、Al面が露出することがある(図1(e))。この状態で無電解Ni−Pめっき処理を行うと、図1(f)に示すように、Al面が露出した部分にはNi−Pめっき膜が成膜しないばかりか、めっき液に含まれる次亜リン酸とAlが反応し、H2ガス発生の起点となるため、ガスピットが形成される。
他方、図1(b)に示す状態のサブストレートに対してジンケート処理を行うと、亜鉛が不均一に析出する場合や、亜鉛が析出しない場合がある(図1(g))。この状態で無電解Ni−Pめっき処理を行うと、図1(h)に示すように、溶け残ったAl−Fe系金属間化合物がカソードとなり、H2ガスを発生させ続けることになる。従って、その部分にはNi−Pめっき膜が成膜せず、ガスピットが形成される。
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、めっき前処理の酸エッチング処理を弱い条件で行った場合でも微小めっき欠陥が発生し難い磁気ディスク用アルミニウム合金板、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク及び磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレートを提供することを課題とする。
前記課題を解決した本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金板は、Mg:3.5〜5.5質量%、Fe:0.025質量%以下に規制し、Si:0.020質量%以下に規制し、Cr:0.010〜0.20質量%を含有し、Cu:0.010〜0.1質量%及びZn:0.05〜0.4質量%のうちの少なくとも一方を含有し、さらに、Mn:0.005質量%以下、及び、Ni:0.001質量%以下に規制し、残部Al及び不可避不純物からなり、Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比がMn/Fe比で0.50以下、及び、Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比がNi/Fe比で0.20以下であり、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が10μm以下である構成とした。
このように、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金板は、化学組成を特定し、Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比と、Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比と、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長と、を制御しているので、金属間化合物がエッチング溶液に対して電気化学的に貴となり難い。そのため、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金板は、めっき前処理の酸エッチング処理を弱い条件で行った場合でも微小めっき欠陥を発生し難くすることができる。また、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金板は、Fe、Si、Crをそれぞれ所定量含有しているので、耐力などの機械的特性を向上させることができる。
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクは、前記した磁気ディスク用アルミニウム合金板を円盤状に打ち抜いたという構成を採用する。
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクは、前記した磁気ディスク用アルミニウム合金板を円盤状に打ち抜いたものであるので、微小めっき欠陥が発生し難い。
さらに、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレートは、前記した磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクを使用したという構成を採用する。
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレートは、前記した磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクを使用しているので、微小めっき欠陥が発生し難い。
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金板は、化学組成を特定し、Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比と、Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比と、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長と、を制御しているので、めっき前処理の酸エッチング処理を弱い条件で行った場合でも微小めっき欠陥を発生し難くすることができる。また、磁気ディスク用アルミニウム合金板は、化学組成を特定しているので耐力に優れている。
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクは、前記した磁気ディスク用アルミニウム合金板を円盤状に打ち抜いたものであるので、めっき前処理の酸エッチング処理を弱い条件で行った場合でも微小めっき欠陥が発生し難い。
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレートは、前記した磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクを使用しているので、めっき前処理の酸エッチング処理を弱い条件で行った場合でも微小めっき欠陥が発生し難い。
以下、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金板、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク及び磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート(以下、それぞれを単に「Al合金板」、「ブランク」及び「サブストレート」という。)の一実施形態について詳細に説明する。
[Al合金板]
本実施形態に係るAl合金板は、磁気ディスクに用いられる。本実施形態に係るAl合金板は、Mg:3.5〜5.5質量%、Fe:0.025質量%以下に規制し、Si:0.020質量%以下に規制し、Cr:0.010〜0.20質量%を含有し、Cu:0.010〜0.1質量%及びZn:0.05〜0.4質量%のうちの少なくとも一方を含有し、さらに、Mn:0.005質量%以下、及び、Ni:0.001質量%以下に規制し、残部Al及び不可避不純物からなる。このような化学組成からなる本実施形態に係るAl合金板において、Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比がMn/Fe比で0.50以下、及び、Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比がNi/Fe比で0.20以下であり、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長を10μm以下としている。なお、絶対最大長とは、例えば、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)のCOMPO像などで観察した際に認識される該当粒子上で、最も離れた2点間の距離をいう。
本実施形態に係るAl合金板は、磁気ディスクに用いられる。本実施形態に係るAl合金板は、Mg:3.5〜5.5質量%、Fe:0.025質量%以下に規制し、Si:0.020質量%以下に規制し、Cr:0.010〜0.20質量%を含有し、Cu:0.010〜0.1質量%及びZn:0.05〜0.4質量%のうちの少なくとも一方を含有し、さらに、Mn:0.005質量%以下、及び、Ni:0.001質量%以下に規制し、残部Al及び不可避不純物からなる。このような化学組成からなる本実施形態に係るAl合金板において、Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比がMn/Fe比で0.50以下、及び、Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比がNi/Fe比で0.20以下であり、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長を10μm以下としている。なお、絶対最大長とは、例えば、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)のCOMPO像などで観察した際に認識される該当粒子上で、最も離れた2点間の距離をいう。
Mn及びNiは、Al−Fe系金属間化合物が鋳造工程で晶出する際に、Al−Fe系金属間化合物に共析し易い。Mn及びNiがAl−Fe系金属間化合物中に多く含まれると、エッチング溶液に対して電気化学的に貴となり易い。そのため、めっき前処理の酸エッチング処理を弱い条件で行った場合に、Al−Fe系金属間化合物の一部(具体的には、Al−Fe−Mn系金属間化合物及びAl−Fe−Ni系金属間化合物の一部)が溶解されずに溶け残ることがある。本発明では、Al−Fe系金属間化合物中の元素構成比とAl−Fe系金属間化合物の絶対最大長をそれぞれ前記したように制御することで、当該酸エッチング処理を弱い条件で行った場合であってもAl−Fe系金属間化合物を溶解し易くしている。そして、これにより微小めっき欠陥の発生を抑制し、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が高くなるようにしている。以下、本実施形態に係るAl合金板を構成する各要素について説明する。
なお、弱い条件の酸エッチング処理とは、例えば、素材をほとんど侵食することなく、Al合金板(サブストレート)表面の酸化皮膜を除去するソフトエッチング剤でエッチング処理することが挙げられる。ここで、本明細書における「ソフトエッチング剤」とは、温和な条件で金属板の表面をエッチング処理することのできる溶剤(エッチング剤)をいう。このようなソフトエッチング剤として具体的には、上村工業株式会社製AD−101Fを用いることができる。当該ソフトエッチング剤での処理は68℃で2分間としたり、50℃で5分間などとすることができるが、素材をほとんど侵食することなく、アルミニウム表面の酸化皮膜を除去できればよく、これに限定されない。「温和な条件」とは、エッチング処理した金属板の表面を光学顕微鏡で観察したときに、微小な凹凸の生成が視認できる程度の軽微な荒れしか生じさせないことをいう。弱い条件の酸エッチング処理の具体的な目安としては、例えば、5〜15mg/サブストレート(なお、当該サブストレートのサイズは、外径95mm、内径25mmの円環形状であり、板厚1.0mmである。)程度減じる処理とすることが挙げられる。
(Mg:3.5〜5.5質量%)
Mgは、Al合金板及び後記するブランクやサブストレートとして必要な所定の機械的特性を備える役割を担っている。機械的特性としては、例えば、耐力が挙げられる。耐力は、例えば、90MPa以上であるのが好ましい。耐力が90MPa以上であると磁気ディスク用のAl合金板として十分な強度を有することができる。Mg量が前記した数値範囲にあると機械的特性(例えば、耐力など)に優れたものとすることができる。
Mg量が3.5質量%未満であると、Al合金板、ブランク及びサブストレートとしての機械的特性に劣ることがある。
その一方で、Mg量が5.5質量%を超えると、高温での割れ感受性が高まり、熱間圧延中に割れが生じやすくなるため、圧延が困難になる。
なお、Mg量の下限は、3.6質量%とするのが好ましく、4.2質量%とするのがより好ましい。また、Mg量の上限は、5.4質量%とするのが好ましく、4.8質量%とするのがより好ましい。
Mgは、Al合金板及び後記するブランクやサブストレートとして必要な所定の機械的特性を備える役割を担っている。機械的特性としては、例えば、耐力が挙げられる。耐力は、例えば、90MPa以上であるのが好ましい。耐力が90MPa以上であると磁気ディスク用のAl合金板として十分な強度を有することができる。Mg量が前記した数値範囲にあると機械的特性(例えば、耐力など)に優れたものとすることができる。
Mg量が3.5質量%未満であると、Al合金板、ブランク及びサブストレートとしての機械的特性に劣ることがある。
その一方で、Mg量が5.5質量%を超えると、高温での割れ感受性が高まり、熱間圧延中に割れが生じやすくなるため、圧延が困難になる。
なお、Mg量の下限は、3.6質量%とするのが好ましく、4.2質量%とするのがより好ましい。また、Mg量の上限は、5.4質量%とするのが好ましく、4.8質量%とするのがより好ましい。
(Fe:0.025質量%以下に規制)
Feは、通常、地金不純物としてAl合金中に混入するものであり、鋳造工程でAl−Fe系金属間化合物を晶出させる。
Fe量が0.025質量%以下であると、サブストレート製造時の研削性を向上させることができる。また、Fe量が0.025質量%以下であると、Al合金板や、ブランク及びサブストレートとした場合の強度向上を図ることができ、また、再結晶粒微細化に寄与したり、ジンケート処理の均質性を向上させたりすることもできる。
Fe量が0.025質量%を超えると、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が長くなり過ぎてしまう。Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が長くなり過ぎると、めっき前処理の酸エッチング処理を弱い条件で行った場合にAl−Fe系金属間化合物の一部が溶解されずに溶け残り、これが原因でノジュールやガスピットなどの微小めっき欠陥が発生する。そのため、Fe量が0.025質量%を超えると、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。従って、Fe量を0.025質量%以下に規制する。
Fe量の下限は特に規定しないが、前記したように地金不純物としてAl合金中に混入するものであるから、下限を規定するとすれば、0質量%超ということになる(つまり、0質量%を含まない)。なお、Fe量を0.005質量%以上とすると、研削性や耐力の向上効果、再結晶粒を微細化させてジンケート処理の均質性を向上させる効果が期待できるため、Fe量の下限を規定する場合は、0.005質量%とするのが好ましい。また、Fe量を0.005質量%未満とするには高純度な地金を用いる必要があり、非常に高コストとなるため現実的ではない。従って、コストの面からもFe量の下限は0.005質量%とするのが好ましい。
Fe量の下限は0.009質量%とするのが好ましく、上限は0.021質量%とするのが好ましい。
Feは、通常、地金不純物としてAl合金中に混入するものであり、鋳造工程でAl−Fe系金属間化合物を晶出させる。
Fe量が0.025質量%以下であると、サブストレート製造時の研削性を向上させることができる。また、Fe量が0.025質量%以下であると、Al合金板や、ブランク及びサブストレートとした場合の強度向上を図ることができ、また、再結晶粒微細化に寄与したり、ジンケート処理の均質性を向上させたりすることもできる。
Fe量が0.025質量%を超えると、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が長くなり過ぎてしまう。Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が長くなり過ぎると、めっき前処理の酸エッチング処理を弱い条件で行った場合にAl−Fe系金属間化合物の一部が溶解されずに溶け残り、これが原因でノジュールやガスピットなどの微小めっき欠陥が発生する。そのため、Fe量が0.025質量%を超えると、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。従って、Fe量を0.025質量%以下に規制する。
Fe量の下限は特に規定しないが、前記したように地金不純物としてAl合金中に混入するものであるから、下限を規定するとすれば、0質量%超ということになる(つまり、0質量%を含まない)。なお、Fe量を0.005質量%以上とすると、研削性や耐力の向上効果、再結晶粒を微細化させてジンケート処理の均質性を向上させる効果が期待できるため、Fe量の下限を規定する場合は、0.005質量%とするのが好ましい。また、Fe量を0.005質量%未満とするには高純度な地金を用いる必要があり、非常に高コストとなるため現実的ではない。従って、コストの面からもFe量の下限は0.005質量%とするのが好ましい。
Fe量の下限は0.009質量%とするのが好ましく、上限は0.021質量%とするのが好ましい。
(Si:0.020質量%以下に規制)
Siは、通常、地金不純物としてAl合金中に混入するものであり、Al合金板を鋳造する工程等において、Al合金板の表面にMg−Si系金属間化合物を生じさせる。
Si量が0.020質量%を超えると、Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長が長くなり過ぎてしまう。Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長が長くなり過ぎると、サブストレートを製造する際の切削や研削等の鏡面加工時にMg−Si系金属間化合物がAl合金板の表面から脱落し、窪みが形成される。また、Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長が長くなり過ぎると、めっき前処理の酸エッチング処理によってMg−Si系金属間化合物が溶解され、窪みが形成される。そのため、Si量が0.020質量%を超えると、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。また、Si量が0.020質量%を超えると、当該エッチング処理によってMgのみが溶解してSiが残る箇所も生じる。残ったSi上にはめっき前処理のジンケート処理においてZnの置換反応が起こらないため、無電解Ni−Pめっき処理でめっき膜が成長せず、Ni−Pめっき膜の密着性が不足することになる。その結果、磁性膜成膜時等の加熱により、Al合金板(サブストレート)上に形成されたNi−Pめっき膜にフクレが生じる。従って、Si量を0.020質量%以下に規制する。なお、Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長は4μm以下であるのが好ましく、3μm以下であるのがより好ましく、2μm以下であるのがさらに好ましい。
Si量の下限は特に規定しないが、前記したように地金不純物としてAl合金中に混入するものであるから、下限を規定するとすれば、0質量%超ということになる(つまり、0質量%を含まない)。なお、Si量を0.005質量%未満とするには高純度な地金を用いる必要があり、非常に高コストとなるため現実的ではない。従って、Si量の下限は0.005質量%とするのが好ましく、0.008質量%とするのがより好ましい。なお、Si量の上限は0.015質量%とするのが好ましい。Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長は、Si量を(及び好ましくはMg量も)前記した数値範囲内に規制することによって制御することができる。
Siは、通常、地金不純物としてAl合金中に混入するものであり、Al合金板を鋳造する工程等において、Al合金板の表面にMg−Si系金属間化合物を生じさせる。
Si量が0.020質量%を超えると、Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長が長くなり過ぎてしまう。Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長が長くなり過ぎると、サブストレートを製造する際の切削や研削等の鏡面加工時にMg−Si系金属間化合物がAl合金板の表面から脱落し、窪みが形成される。また、Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長が長くなり過ぎると、めっき前処理の酸エッチング処理によってMg−Si系金属間化合物が溶解され、窪みが形成される。そのため、Si量が0.020質量%を超えると、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。また、Si量が0.020質量%を超えると、当該エッチング処理によってMgのみが溶解してSiが残る箇所も生じる。残ったSi上にはめっき前処理のジンケート処理においてZnの置換反応が起こらないため、無電解Ni−Pめっき処理でめっき膜が成長せず、Ni−Pめっき膜の密着性が不足することになる。その結果、磁性膜成膜時等の加熱により、Al合金板(サブストレート)上に形成されたNi−Pめっき膜にフクレが生じる。従って、Si量を0.020質量%以下に規制する。なお、Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長は4μm以下であるのが好ましく、3μm以下であるのがより好ましく、2μm以下であるのがさらに好ましい。
Si量の下限は特に規定しないが、前記したように地金不純物としてAl合金中に混入するものであるから、下限を規定するとすれば、0質量%超ということになる(つまり、0質量%を含まない)。なお、Si量を0.005質量%未満とするには高純度な地金を用いる必要があり、非常に高コストとなるため現実的ではない。従って、Si量の下限は0.005質量%とするのが好ましく、0.008質量%とするのがより好ましい。なお、Si量の上限は0.015質量%とするのが好ましい。Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長は、Si量を(及び好ましくはMg量も)前記した数値範囲内に規制することによって制御することができる。
(Cr:0.010〜0.20質量%)
Crを含有させることにより、Al合金板、ブランク及びサブストレートの機械的特性(例えば、耐力など)を向上させることができる。機械的特性を向上させる効果は、Cr量を0.010質量%以上とすることにより、確実に得ることができる。Cr量が0.010質量%未満であると、機械的特性を向上させる効果を十分に得ることができないおそれがある。
その一方で、Cr量が0.20質量%を超えると、粗大なAl−Cr系金属間化合物が生成される。粗大なAl−Cr系金属間化合物が生成されると、サブストレートを製造する際に行う切削や研削等の鏡面加工時に表面から脱落し、窪みを形成する。そのため、Cr量が0.20質量%を超えると、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。
Crを含有させることにより、Al合金板、ブランク及びサブストレートの機械的特性(例えば、耐力など)を向上させることができる。機械的特性を向上させる効果は、Cr量を0.010質量%以上とすることにより、確実に得ることができる。Cr量が0.010質量%未満であると、機械的特性を向上させる効果を十分に得ることができないおそれがある。
その一方で、Cr量が0.20質量%を超えると、粗大なAl−Cr系金属間化合物が生成される。粗大なAl−Cr系金属間化合物が生成されると、サブストレートを製造する際に行う切削や研削等の鏡面加工時に表面から脱落し、窪みを形成する。そのため、Cr量が0.20質量%を超えると、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。
(Cu:0.01〜0.1質量%及びZn:0.05〜0.4質量%のうちの少なくとも一方)
Cuは、Al合金板中に均一に固溶し、めっき前処理のジンケート処理において、ジンケート浴中のZnイオンをAl合金板(サブストレート)の表面へ均一に微細析出させることができる。つまり、Cu量を前記した数値範囲内で含むことによって、ジンケート皮膜を均一に形成させることができ、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生を抑制することができる。すなわち、Cuには、前記範囲で含むことでAl合金板(サブストレート)のNi−Pめっき膜表面の平滑性を向上させる効果がある。
Cu量が0.01質量%未満であるとジンケート皮膜の均一性が低下してノジュールが発生する。そのため、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。
その一方で、Cu量が0.1質量%を超えると粒界にCuが析出するため、めっき前処理の酸エッチング処理において粒界部が過エッチングを受け、ピットを生じるとともに、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生が多大となる。
Cu量の下限は0.02質量%とするのが好ましく、上限は0.05質量%とするのが好ましい。
Cuは、Al合金板中に均一に固溶し、めっき前処理のジンケート処理において、ジンケート浴中のZnイオンをAl合金板(サブストレート)の表面へ均一に微細析出させることができる。つまり、Cu量を前記した数値範囲内で含むことによって、ジンケート皮膜を均一に形成させることができ、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生を抑制することができる。すなわち、Cuには、前記範囲で含むことでAl合金板(サブストレート)のNi−Pめっき膜表面の平滑性を向上させる効果がある。
Cu量が0.01質量%未満であるとジンケート皮膜の均一性が低下してノジュールが発生する。そのため、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。
その一方で、Cu量が0.1質量%を超えると粒界にCuが析出するため、めっき前処理の酸エッチング処理において粒界部が過エッチングを受け、ピットを生じるとともに、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生が多大となる。
Cu量の下限は0.02質量%とするのが好ましく、上限は0.05質量%とするのが好ましい。
ZnもCuと同様、Al合金板中に均一に固溶し、めっき前処理のジンケート処理において、ジンケート浴中のZnイオンをAl合金板(サブストレート)の表面へ均一に微細析出させることができる。つまり、Zn量を前記した数値範囲内で含むことによって、ジンケート皮膜を均一に形成させることができ、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生を抑制することができる。すなわち、Znには、前記範囲で含むことでAl合金板(サブストレート)のNi−Pめっき膜表面の平滑性を向上させる効果がある。また、含有量の増加に伴いZnがAl合金板中に均一に析出し、サブストレートに対して行うめっき前処理の酸エッチング処理において、エッチング起点及びジンケート処理時のZnイオン析出拠点になる。このため、Znを前記範囲で含むことで結晶粒による段差を抑制する効果を有することができる。
Zn量が0.05質量%未満であるとジンケート皮膜の均一性が低下してノジュールが発生する。そのため、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。
その一方で、Zn量が0.4質量%を超えると、Znの析出核が大きくなるのに伴い、めっき前処理のエッチングで形成される窪みも大きくなる。そのため、Zn量が0.4質量%を超えると、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。さらに、Zn量が0.4質量%を超えると、粒界にAl−Mg−Zn系金属間化合物が析出するため、めっき前処理のエッチングにおいて粒界部が過エッチングを受け、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生が多大となる。また、Zn量が0.4質量%を超えると、Al−Mg−Zn系金属間化合物も溶解して窪み(ピット)となり、それがめっき後も残存する。
Zn量の下限は0.1質量%とするのが好ましく、上限は0.35質量%とするのが好ましい。さらに好ましいZn量の下限値は0.15質量%である。
Zn量が0.05質量%未満であるとジンケート皮膜の均一性が低下してノジュールが発生する。そのため、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。
その一方で、Zn量が0.4質量%を超えると、Znの析出核が大きくなるのに伴い、めっき前処理のエッチングで形成される窪みも大きくなる。そのため、Zn量が0.4質量%を超えると、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。さらに、Zn量が0.4質量%を超えると、粒界にAl−Mg−Zn系金属間化合物が析出するため、めっき前処理のエッチングにおいて粒界部が過エッチングを受け、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生が多大となる。また、Zn量が0.4質量%を超えると、Al−Mg−Zn系金属間化合物も溶解して窪み(ピット)となり、それがめっき後も残存する。
Zn量の下限は0.1質量%とするのが好ましく、上限は0.35質量%とするのが好ましい。さらに好ましいZn量の下限値は0.15質量%である。
(Mn:0.005質量%以下に規制)
(Ni:0.001質量%以下に規制)
MnとNiは不可避不純物として含有されるものである。後記するように、JIS H 4000:2006では不可避不純物として含まれる元素は個々で0.05質量%以下、合計で0.15質量%以下と規定されているが、本発明においてはMnとNiの量をJIS規格よりもさらに低くしている。具体的には前記したように、Mn:0.005質量%以下、及びNi:0.001質量%以下に制限している。Mn:0.005質量%以下、及びNi:0.001質量%以下と規制することにより、後記するAl−Fe系金属間化合物中の元素構成比を特定の範囲に規制することができる。また、Mn:0.005質量%以下、及びNi:0.001質量%以下と規制することにより、後記するAl−Fe系金属間化合物の絶対最大長を10μm以下に規制することができる。
Mn量が0.005質量%を超えたり、Ni量が0.001質量%を超えたりすると、Al−Fe系金属間化合物中の元素構成比(Mn/Fe比、Ni/Fe比)が後記する特定の数値範囲とならない。そのため、Al合金板(サブストレート)に対してめっき前処理の酸エッチング処理を弱い条件で行った場合にAl−Fe系金属間化合物の一部が溶解されずに溶け残る。Al−Fe系金属間化合物の一部が溶解されずに溶け残ると、ノジュールなどの微小めっき欠陥が発生し、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。
なお、Mn量は0.001質量%以下とするのが好ましく、Ni量は0.0005質量%以下とするのが好ましい。
(Ni:0.001質量%以下に規制)
MnとNiは不可避不純物として含有されるものである。後記するように、JIS H 4000:2006では不可避不純物として含まれる元素は個々で0.05質量%以下、合計で0.15質量%以下と規定されているが、本発明においてはMnとNiの量をJIS規格よりもさらに低くしている。具体的には前記したように、Mn:0.005質量%以下、及びNi:0.001質量%以下に制限している。Mn:0.005質量%以下、及びNi:0.001質量%以下と規制することにより、後記するAl−Fe系金属間化合物中の元素構成比を特定の範囲に規制することができる。また、Mn:0.005質量%以下、及びNi:0.001質量%以下と規制することにより、後記するAl−Fe系金属間化合物の絶対最大長を10μm以下に規制することができる。
Mn量が0.005質量%を超えたり、Ni量が0.001質量%を超えたりすると、Al−Fe系金属間化合物中の元素構成比(Mn/Fe比、Ni/Fe比)が後記する特定の数値範囲とならない。そのため、Al合金板(サブストレート)に対してめっき前処理の酸エッチング処理を弱い条件で行った場合にAl−Fe系金属間化合物の一部が溶解されずに溶け残る。Al−Fe系金属間化合物の一部が溶解されずに溶け残ると、ノジュールなどの微小めっき欠陥が発生し、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。
なお、Mn量は0.001質量%以下とするのが好ましく、Ni量は0.0005質量%以下とするのが好ましい。
前記したFe、Si、Mn、Niの含有量の規制は、例えば、三層電解法により精錬した地金を使用したり、偏析法を利用してこれらを排除したりすることによって行うことができる。なお、Fe、Si、Mn、Niの含有量の規制はこれらの手段に限定されるものではなく、公知の技術を適用して行うことができる。
(残部:Al及びその他の不可避不純物)
本発明に係るAl合金板を構成する化学組成の基本成分は前記のとおりであり、残部成分はAl及びその他の不可避不純物である。その他の不可避不純物としては、例えば、Ti、Zr、V、Bなどが挙げられる。前記したFe、Si、Mn及びNiといった不可避不純物(地金不純物)及びここで挙げたその他の不可避不純物は、溶解時に不可避的に混入する不純物である。なお、前記したその他の不可避不純物は、個々に0.005質量%以下、合計で0.015質量%以下であれば本発明の効果を阻害しないので、前記条件を満たす限り前記したその他の不可避不純物や、本明細書で説明した元素以外の元素を積極的に含有させてもよい(つまり、本発明の技術的範囲に含まれる。)。
本発明に係るAl合金板を構成する化学組成の基本成分は前記のとおりであり、残部成分はAl及びその他の不可避不純物である。その他の不可避不純物としては、例えば、Ti、Zr、V、Bなどが挙げられる。前記したFe、Si、Mn及びNiといった不可避不純物(地金不純物)及びここで挙げたその他の不可避不純物は、溶解時に不可避的に混入する不純物である。なお、前記したその他の不可避不純物は、個々に0.005質量%以下、合計で0.015質量%以下であれば本発明の効果を阻害しないので、前記条件を満たす限り前記したその他の不可避不純物や、本明細書で説明した元素以外の元素を積極的に含有させてもよい(つまり、本発明の技術的範囲に含まれる。)。
(Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比:Mn/Fe比で0.50以下)
(Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比:Ni/Fe比で0.20以下)
Al−Fe−M系金属間化合物(但し、Mは、Mn又はNiである。)中の元素構成比は、めっき前処理の酸エッチング処理を弱い条件で行った場合における、当該金属間化合物の溶け易さに影響を与える。
Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比がMn/Fe比で0.50以下、及び、Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比がNi/Fe比で0.20以下であると、これらの金属間化合物が酸エッチング溶液(ソフトエッチング剤)に対して電気化学的に卑となり易く、前記したような弱い条件での酸エッチング処理によっても十分に溶解することが可能となる。
Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比がMn/Fe比で0.50を超えたり、Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比がNi/Fe比が0.20を超えたりすると、これらの金属間化合物が酸エッチング溶液に対して電気化学的に貴となり易く、前記したような弱い条件での酸エッチング処理によって溶解することが困難となる。そのため、前記Mn/Fe比が0.50を超えたり、前記Ni/Fe比が0.20を超えたりすると、Al−Fe−M系金属間化合物の一部が溶け残り、これが原因でノジュールやガスピットなどの微小めっき欠陥が発生し、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。
(Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比:Ni/Fe比で0.20以下)
Al−Fe−M系金属間化合物(但し、Mは、Mn又はNiである。)中の元素構成比は、めっき前処理の酸エッチング処理を弱い条件で行った場合における、当該金属間化合物の溶け易さに影響を与える。
Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比がMn/Fe比で0.50以下、及び、Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比がNi/Fe比で0.20以下であると、これらの金属間化合物が酸エッチング溶液(ソフトエッチング剤)に対して電気化学的に卑となり易く、前記したような弱い条件での酸エッチング処理によっても十分に溶解することが可能となる。
Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比がMn/Fe比で0.50を超えたり、Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比がNi/Fe比が0.20を超えたりすると、これらの金属間化合物が酸エッチング溶液に対して電気化学的に貴となり易く、前記したような弱い条件での酸エッチング処理によって溶解することが困難となる。そのため、前記Mn/Fe比が0.50を超えたり、前記Ni/Fe比が0.20を超えたりすると、Al−Fe−M系金属間化合物の一部が溶け残り、これが原因でノジュールやガスピットなどの微小めっき欠陥が発生し、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。
Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比をMn/Fe比で0.50以下とし、Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比をNi/Fe比で0.20以下とするには、Fe量を0.025質量%以下、Mn量を0.005質量%以下、Ni量を0.001質量%以下に規制し、後記する製造方法に記載の条件でAl合金板を製造すればよい。より具体的、且つ、確実には、後記する[実施例]の項目に記載の条件でAl合金板を製造すればよい。
(Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長:10μm以下)
また、本実施形態に係るAl合金板におけるAl−Fe系金属間化合物の絶対最大長は10μm以下とする。Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が10μmを超えると、その長さが長過ぎるため、サブストレート製造前に行うめっき前処理の酸エッチング処理において、当該処理を弱い条件で行った場合にAl−Fe系金属間化合物の一部が溶解されずに溶け残る。従って、これが原因でノジュールやガスピットなどの微小めっき欠陥が発生し、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。従って、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長を10μm以下とすることでNi−Pめっき膜表面の平滑性を向上させることができる。
なお、本実施形態に係るAl合金板におけるAl−Fe系金属間化合物の絶対最大長は9μm以下であるのが好ましく、8μm以下であるのがより好ましく、7μm以下であるのがさらに好ましく、6μm以下であるのがよりさらに好ましい。
Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長は前記したように、Fe量、Mn量及びNi量のそれぞれを前記した特定の数値以下に規制し、鋳造温度を700℃以上とすることにより制御することができる。
また、本実施形態に係るAl合金板におけるAl−Fe系金属間化合物の絶対最大長は10μm以下とする。Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が10μmを超えると、その長さが長過ぎるため、サブストレート製造前に行うめっき前処理の酸エッチング処理において、当該処理を弱い条件で行った場合にAl−Fe系金属間化合物の一部が溶解されずに溶け残る。従って、これが原因でノジュールやガスピットなどの微小めっき欠陥が発生し、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。従って、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長を10μm以下とすることでNi−Pめっき膜表面の平滑性を向上させることができる。
なお、本実施形態に係るAl合金板におけるAl−Fe系金属間化合物の絶対最大長は9μm以下であるのが好ましく、8μm以下であるのがより好ましく、7μm以下であるのがさらに好ましく、6μm以下であるのがよりさらに好ましい。
Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長は前記したように、Fe量、Mn量及びNi量のそれぞれを前記した特定の数値以下に規制し、鋳造温度を700℃以上とすることにより制御することができる。
以上に説明した本実施形態に係るAl合金板は、化学組成を特定の範囲に規制するとともに、Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比(Mn/Fe比)、及び、Al−Fe−Ni系金属間化合物の元素構成比(Ni/Fe比)を前記したように制御している。そのため、これらの金属間化合物がエッチング溶液に対して電気化学的に卑となり易い。また、本実施形態に係るAl合金板は、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長を前記したように制御している。従って、本実施形態に係るAl合金板は、めっき前処理の酸エッチング処理を弱い条件で行った場合であってもAl−Fe系金属間化合物が溶解され易く、溶け残しを抑制することができる。つまり、前記した弱い条件の酸エッチング処理を行った後に溶け残るAl−Fe系金属間化合物の個数を20個/mm2以下とすることができる。その結果、Ni−Pめっき膜表面の平滑性を高くすることができる。なお、このような処理によって溶け残るAl−Fe系金属間化合物の個数が20個/mm2を超えると、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下するため好ましくない。
なお、絶対最大長が3μm以上であるAl−Fe系金属間化合物の個数(個数密度)は、例えば、50個/mm2以下であるのが好ましい。当該Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長の上限は10μmとすることができる。絶対最大長が3μm以上であるAl−Fe系金属間化合物の個数が50個/mm2以下であると、Ni−Pめっき膜表面の平滑性を向上させることができる。
[ブランク及びサブストレート]
本実施形態に係るブランクは、前記した本実施形態に係るAl合金板を必要に応じて調質し、これをプレス成形により所定の円盤状に打ち抜くことで製造される。
また、本実施形態に係るサブストレートは、前記した本実施形態に係るブランクに対して研削加工(鏡面加工)を行うことにより製造される。
なお、本実施形態に係るブランク及びサブストレートの製造方法については後記する。
本実施形態に係るブランクは、前記した本実施形態に係るAl合金板を必要に応じて調質し、これをプレス成形により所定の円盤状に打ち抜くことで製造される。
また、本実施形態に係るサブストレートは、前記した本実施形態に係るブランクに対して研削加工(鏡面加工)を行うことにより製造される。
なお、本実施形態に係るブランク及びサブストレートの製造方法については後記する。
本実施形態に係るサブストレートは、前記した弱い条件の酸エッチング処理した後(具体的には、ソフトエッチング剤にて酸エッチング処理した後)に溶け残るAl−Fe系金属間化合物が20個/mm2以下となる。これは、既に説明しているように、本実施形態に係るAl合金板において、Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比をMn/Fe比で0.50以下とし、Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比をNi/Fe比で0.20以下とし、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長を10μm以下とすることによって得ることができる。
前記したように、弱い条件の酸エッチング処理した後に溶け残るAl−Fe系金属間化合物を20個/mm2以下とすることにより、ノジュールやガスピットなどの微小めっき欠陥を発生し難くすることができ、Ni−Pめっき膜表面の平滑性を向上させることができる。
これに対し、本実施形態に係るサブストレートにおいて、弱い条件の酸エッチング処理した後に溶け残るAl−Fe系金属間化合物が20個/mm2を超えると、ノジュールやガスピットなどの微小めっき欠陥が発生し易く、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下してしまう。
これに対し、本実施形態に係るサブストレートにおいて、弱い条件の酸エッチング処理した後に溶け残るAl−Fe系金属間化合物が20個/mm2を超えると、ノジュールやガスピットなどの微小めっき欠陥が発生し易く、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下してしまう。
[Al合金板の製造方法]
本実施形態に係るAl合金板は、磁気ディスク用の基板を製造する一般的な条件の製造方法及び設備によって製造することができる。例えば、前記した化学組成のAl合金を溶解し、前記した化学組成に調整した鋳塊を鋳造する工程、この鋳塊に対して均質化熱処理を行う工程、均質化熱処理を行った鋳塊を熱間圧延して所定の板厚の熱間圧延板を得る工程、熱間圧延板を冷間圧延して冷間圧延板を得る工程を含む一連の工程に供することによって製造することができる。なお、必要に応じて、冷間圧延する工程の前か、又は冷間圧延する工程の途中で中間焼鈍を行ってもよい。
本実施形態に係るAl合金板は、磁気ディスク用の基板を製造する一般的な条件の製造方法及び設備によって製造することができる。例えば、前記した化学組成のAl合金を溶解し、前記した化学組成に調整した鋳塊を鋳造する工程、この鋳塊に対して均質化熱処理を行う工程、均質化熱処理を行った鋳塊を熱間圧延して所定の板厚の熱間圧延板を得る工程、熱間圧延板を冷間圧延して冷間圧延板を得る工程を含む一連の工程に供することによって製造することができる。なお、必要に応じて、冷間圧延する工程の前か、又は冷間圧延する工程の途中で中間焼鈍を行ってもよい。
なお、前記したAl合金の鋳塊を製造する際は、Al合金を溶解した際に、アルゴン(Ar)などの不活性ガスを溶湯中に吹き込んで脱水素処理を行うのが好ましい。また、30〜80mm/分の鋳造速度で鋳塊を製造するのが好ましい。鋳造温度は、例えば、700℃以上とするのが好ましい。鋳造温度が700℃以上であると、より確実に、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長を10μm以下とすることができ、絶対最大長が3μm以上である金属間化合物の個数を50個/mm2以下とすることができる。また、鋳造温度が700℃以上であると、より確実に、Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比をMn/Fe比で0.50以下とすることができ、Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比をNi/Fe比で0.20以下とすることができる。
鋳造温度は、710℃以上とするのがより好ましい。また、鋳造温度は、例えば、730℃以下とするのが好ましく、720℃以下とするのがより好ましい。
鋳造温度は、710℃以上とするのがより好ましい。また、鋳造温度は、例えば、730℃以下とするのが好ましく、720℃以下とするのがより好ましい。
均質化熱処理は、Al合金の鋳塊を面削した後、例えば、500〜570℃で2時間以上行うのが好ましい。このようにすると、Mg2SiなどのMg−Si系金属間化合物を十分に固溶させることができる。なお、面削量は、偏析の程度を勘案して適宜変更することができるが、その量は片面当たり例えば、3〜20mmの範囲が好ましい。
熱間圧延は、例えば、490℃から400℃までの温度域を、30分以内の短時間で終了するような条件で行うのが好ましい。このようにすると、熱間圧延終了までMgSi系等の金属間化合物が粗大化したり、析出したりしないようにすることができる。
なお、熱間圧延終了温度が300℃前後を下回ると、その後の冷間圧延工程でリューダース模様が生じる。リューダース模様は研削後の表面には残らないため、磁気ディスク基板としての機能は損なわないが、研削前のAl合金板(ブランク)の美観が損なわれる。従って、これを防止するため、熱間圧延終了温度は300℃以上とするのが望ましい。
なお、熱間圧延終了温度が300℃前後を下回ると、その後の冷間圧延工程でリューダース模様が生じる。リューダース模様は研削後の表面には残らないため、磁気ディスク基板としての機能は損なわないが、研削前のAl合金板(ブランク)の美観が損なわれる。従って、これを防止するため、熱間圧延終了温度は300℃以上とするのが望ましい。
冷間圧延は、例えば、熱間圧延終了温度が250℃以上の場合は70%以上の冷間圧延率で行い、熱間圧延終了温度が250℃未満の場合は55%以上の冷間圧延率で行うのが好ましい。このようにすると、積み付け焼鈍後の結晶粒径を微細化するのに必要な歪エネルギーを加えることができる。
ここで、冷間圧延の前か、又は冷間圧延の途中で中間焼鈍を行う場合は、中間焼鈍後に冷間圧延率が70%以上である冷間圧延を行うのが好ましい。ここまでの工程を行うことにより、本実施形態に係るAl合金板を製造することができる。
ここで、冷間圧延の前か、又は冷間圧延の途中で中間焼鈍を行う場合は、中間焼鈍後に冷間圧延率が70%以上である冷間圧延を行うのが好ましい。ここまでの工程を行うことにより、本実施形態に係るAl合金板を製造することができる。
[ブランクの製造方法]
本実施形態に係るブランクは、例えば、ブランクを製造する工程、及び、積み付け焼鈍をする工程を行うことで製造することができる。
本実施形態に係るブランクは、例えば、ブランクを製造する工程、及び、積み付け焼鈍をする工程を行うことで製造することができる。
ブランクの製造は、前記した冷間圧延を行った板材を必要に応じて調質し、当該板材をプレス成形により所定の円盤状に打ち抜くことで行うことができる。
積み付け焼鈍は、円盤状の板材(円盤状板材)を、高平坦度のスペーサ間に積み付けし、全体を加圧しながら積み付け焼鈍する(一般に、この加圧焼鈍したものをブランクという)ことで行うことができる。この積み付け焼鈍は、例えば、30℃/時間以上の昇温速度で加熱し、300〜360℃の温度範囲で1〜5時間保持した後、30℃/時間以上の冷却速度で200℃以下まで冷却するのが好ましい。このようにすると、円盤状板材内の加工残留応力除去及び平坦度を向上させることができる。また、微細な組織が得られ、めっき後の表面の微小うねりを従来の円盤状板材より低減することが可能となる。
その後、円盤状板材の内周縁及び外周縁の端面に対し、所定の端面加工を施すことにより、本実施形態に係るブランクを製造することができる。
[サブストレートの製造方法]
本実施形態に係るサブストレートは、例えば、次のようにして製造することができる。
両面研削機に予めセットされたキャリアのポケット内に前記したブランクをセットする。そして、砥石により目標の板厚になるまで研削加工(鏡面加工)すると、本実施形態に係るサブストレートを製造することができる(なお、当該サブストレートは、グラインドサブストレート(GRサブストレート)と呼称されることもある。)。
このようにして製造された本実施形態に係るサブストレートの化学組成や金属組織は前記したブランクと同様であるが、鏡面加工を行っているので、ブランクと比較して高い平滑性を具備している。そのため、めっき前処理の酸エッチング処理を弱い条件で行った場合であっても、サブストレートの表面に微小めっき欠陥が発生し難いものとすることができる。
本実施形態に係るサブストレートは、例えば、次のようにして製造することができる。
両面研削機に予めセットされたキャリアのポケット内に前記したブランクをセットする。そして、砥石により目標の板厚になるまで研削加工(鏡面加工)すると、本実施形態に係るサブストレートを製造することができる(なお、当該サブストレートは、グラインドサブストレート(GRサブストレート)と呼称されることもある。)。
このようにして製造された本実施形態に係るサブストレートの化学組成や金属組織は前記したブランクと同様であるが、鏡面加工を行っているので、ブランクと比較して高い平滑性を具備している。そのため、めっき前処理の酸エッチング処理を弱い条件で行った場合であっても、サブストレートの表面に微小めっき欠陥が発生し難いものとすることができる。
(磁気ディスク)
そして、このようにして製造したサブストレートの表面を前記したように弱い条件で酸エッチング処理し、無電解Ni−Pめっき膜を形成し、その表面を研磨する(なお、無電解Ni−Pめっき膜を形成したサブストレートは、めっきサブストレートと呼称されることもある。)。次いで、このサブストレート上に、磁気特性を高めるための下地膜、Co基合金からなる磁性膜、及び磁性膜を保護するためのC(カーボン)からなる保護膜などをスパッタリング等により形成することで、磁気ディスクを作製することができる。
なお、前記した無電解Ni−Pめっき膜、下地膜、磁性膜、保護膜の形成は、磁気ディスクを製造するにあたって一般的に実施される条件で行うことができる。
そして、このようにして製造したサブストレートの表面を前記したように弱い条件で酸エッチング処理し、無電解Ni−Pめっき膜を形成し、その表面を研磨する(なお、無電解Ni−Pめっき膜を形成したサブストレートは、めっきサブストレートと呼称されることもある。)。次いで、このサブストレート上に、磁気特性を高めるための下地膜、Co基合金からなる磁性膜、及び磁性膜を保護するためのC(カーボン)からなる保護膜などをスパッタリング等により形成することで、磁気ディスクを作製することができる。
なお、前記した無電解Ni−Pめっき膜、下地膜、磁性膜、保護膜の形成は、磁気ディスクを製造するにあたって一般的に実施される条件で行うことができる。
また、Al合金板、ブランク及びサブストレートなどの製造条件については、例えば、特許第3471557号公報や特許第5199714号公報に詳しく記載されている。そのため、Al合金板、ブランク及びサブストレートを製造するにあたってこれらの文献を参照することもできる。
(測定方法などについて)
前記したAl合金板、ブランク及び/又はサブストレートにおけるAl−Fe−Mn系金属間化合物やAl−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長と個数密度、及び、Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長などの測定方法の一例について説明する。
前記したAl合金板、ブランク及び/又はサブストレートにおけるAl−Fe−Mn系金属間化合物やAl−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長と個数密度、及び、Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長などの測定方法の一例について説明する。
Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比(Mn/Fe比)、及び、Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比(Ni/Fe比)は、鏡面加工したサブストレートの表面を、SEMにエネルギー分散型X線分析装置(Energy Dispersive Spectroscopy;EDS)を接続した装置(以下、「SEM−EDS」という。)を用いて撮像し、任意の範囲を指定して分析し、算出することにより得ることができる。これらの元素構成比は、例えば、鏡面加工したサブストレートの表面に、SEM−EDSを用いて電子線を5秒程度照射し、任意の倍率(例えば1000倍)で20視野(0.2mm2)程度撮影して得られたCOMPO像の半定量分析値から算出することができる。なお、本実施形態におけるブランクとサブストレートの違いは、研削加工(鏡面加工)を行っているか否かであり、本実施形態におけるブランクとAl合金板の違いは、円盤状に打ち抜いているか否かである。そのため、サブストレートに対して行った前記した元素構成比、絶対最大長及び個数密度などの測定結果はそのままブランク及びAl合金板の元素構成比、絶対最大長及び個数密度などの測定結果と看做すことができる。
耐力などの機械的特性は、例えば、JIS Z 2241:2011に準拠してAl合金板(ブランク、サブストレート)から試験片を作製し、金属材料引張試験を行うことによって求めることができる。
Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長や個数及びMg−Si系金属間化合物の絶対最大長は、例えば、鏡面加工したサブストレートの表面をSEM−EDSにて任意の倍率(例えば1000倍)で20視野(0.2mm2)程度撮影し、得られたCOMPO像(組成像)を解析することにより測定することができる。なお、Al−Fe系金属間化合物及びMg−Si系金属間化合物は、SEMのCOMPO像において母相とのコントラストで識別することができる。具体的には、Al−Fe系金属間化合物は母相よりも白く写り、Mg−Si系金属間化合物は母相よりも黒く写る。従って、これらを分けてその長さを測定すればこれらの絶対最大長をそれぞれ求めることができる。なお、前記したように、本実施形態におけるブランクとサブストレートの違いは、研削加工(鏡面加工)を行っているか否かであり、本実施形態におけるブランクとAl合金板の違いは、円盤状に打ち抜いているか否かであるので、サブストレートに対して行ったこれらの金属間化合物の測定結果はそのままブランク及びAl合金板の測定結果と看做すことができる。
前記した弱い条件の酸エッチング処理を行った後に溶け残るAl−Fe系金属間化合物の個数は、次のようにして測定することができる。例えば、鏡面加工したサブストレートの素地を侵さないアルカリ洗浄剤にて洗浄した後、純水で洗浄し、さらに素材を殆ど侵食せずに表面の酸化皮膜を除去するソフトエッチング剤にてエッチング処理を行い、純水で洗浄する。そして、SEM−EDSを用いて任意の倍率(例えば500倍)で50視野(2mm2)程度撮影し、得られたCOMPO像(組成像)を解析することによって測定することができる。
次に、本発明の効果を奏する実施例とそうでない比較例とを参照して、本発明の内容について具体的に説明する。
まず、700℃で材料を溶解し、表1のNo.1〜24に示す化学組成となるように成分を調整し、表1に示す鋳造温度で鋳塊を鋳造した。次いで、鋳塊表面の偏析層を除去する面削を行い、540℃で8時間の均質化熱処理を行った。その後、直ちに、熱間圧延を行い、板厚3mmの熱間圧延板を作製した。そして、この熱間圧延板を冷間圧延し、板厚1.0mmの冷間圧延板を製造した。
当該冷間圧延板(Al合金板)を外径95mm、内径25mmの円環形状に打ち抜き、20枚ずつ積み付け、320℃で3時間焼鈍した後、30℃/時間の冷却速度で加圧焼鈍した。そして、端面加工を行い、3.5インチタイプのブランクを製造した。そして、ブランク表面(両面)をPVA砥石(日本特殊研砥株式会社製 4000番)によって片面10μm研削加工(鏡面加工)してNo.1〜24に係るサブストレートを製造した。なお、No.11については熱間圧延にて割れが発生したため、Al合金板、ブランク及びサブストレートを製造することができなかった。
当該冷間圧延板(Al合金板)を外径95mm、内径25mmの円環形状に打ち抜き、20枚ずつ積み付け、320℃で3時間焼鈍した後、30℃/時間の冷却速度で加圧焼鈍した。そして、端面加工を行い、3.5インチタイプのブランクを製造した。そして、ブランク表面(両面)をPVA砥石(日本特殊研砥株式会社製 4000番)によって片面10μm研削加工(鏡面加工)してNo.1〜24に係るサブストレートを製造した。なお、No.11については熱間圧延にて割れが発生したため、Al合金板、ブランク及びサブストレートを製造することができなかった。
作製したNo.1〜22に係るサブストレートについて、Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比(Mn/Fe比)及びAl−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比(Ni/Fe比)、耐力、Al−Fe系金属間化合物(Al−Fe−Mn系金属間化合物及びAl−Fe−Ni系金属間化合物を含む。以下同じ。)の絶対最大長、絶対最大長が3μm以上であるAl−Fe系金属間化合物の個数(個数密度)、Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長、脱脂及び酸エッチング処理後に溶け残ったAl−Fe系金属間化合物の個数(個数密度)、Ni−Pめっき膜表面の平滑性を以下のようにして評価した。
〔1〕Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比(Mn/Fe比)及びAl−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比(Ni/Fe比)
鏡面化したサブストレートの表面にSEM−EDS(日本電子株式会社製JSM−7001M)を用いてW/ZrOの電子線を5秒程度照射し、1000倍の倍率で20視野(0.2mm2)撮影して得られたCOMPO像の半定量分析値から算出した。Mn/Fe比は、0.50以下のものを合格とし、0.50を超えるものを不合格とした。Ni/Fe比は、0.20以下のものを合格とし、0.20を超えるものを不合格とした。
鏡面化したサブストレートの表面にSEM−EDS(日本電子株式会社製JSM−7001M)を用いてW/ZrOの電子線を5秒程度照射し、1000倍の倍率で20視野(0.2mm2)撮影して得られたCOMPO像の半定量分析値から算出した。Mn/Fe比は、0.50以下のものを合格とし、0.50を超えるものを不合格とした。Ni/Fe比は、0.20以下のものを合格とし、0.20を超えるものを不合格とした。
〔2〕耐力
まず、製造した冷間圧延板の一部を切り出し、前記加圧焼鈍と同等の条件、すなわち、320℃で3時間の焼鈍を行った。そして、焼鈍した冷間圧延板からJIS Z 2241:2011に準拠して試験片を作製し、金属材料引張試験を行うことにより、耐力を求めた。耐力が90MPa以上であるものを合格とし、90MPa未満のものを不合格とした。
まず、製造した冷間圧延板の一部を切り出し、前記加圧焼鈍と同等の条件、すなわち、320℃で3時間の焼鈍を行った。そして、焼鈍した冷間圧延板からJIS Z 2241:2011に準拠して試験片を作製し、金属材料引張試験を行うことにより、耐力を求めた。耐力が90MPa以上であるものを合格とし、90MPa未満のものを不合格とした。
〔3〕Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長や個数及びMg−Si系金属間化合物の絶対最大長
鏡面化したサブストレートの表面にSEM−EDS(日本電子株式会社製JSM−7001M)を用いて1000倍の倍率で20視野(0.2mm2)撮影し、COMPO像(組成像)を得た。母相よりも白く写っている部分をAl−Fe系金属間化合物とみなし、母相よりも黒く写っている部分をMg−Si系金属間化合物とみなしてそれぞれの絶対最大長を測定するとともに、絶対最大長が3μm以上であるAl−Fe系金属間化合物の個数(個数密度)を測定した。Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長は、10μm以下のものを合格とし、10μmを超えるものを不合格とした。Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長は、4μm以下のものを合格とし、4μmを超えるものを不合格とした。また、絶対最大長が3μm以上であるAl−Fe系金属間化合物の個数が50個/mm2以下のものを好ましいと評価し、50個/mm2を超えるものを好ましくないと評価した。
鏡面化したサブストレートの表面にSEM−EDS(日本電子株式会社製JSM−7001M)を用いて1000倍の倍率で20視野(0.2mm2)撮影し、COMPO像(組成像)を得た。母相よりも白く写っている部分をAl−Fe系金属間化合物とみなし、母相よりも黒く写っている部分をMg−Si系金属間化合物とみなしてそれぞれの絶対最大長を測定するとともに、絶対最大長が3μm以上であるAl−Fe系金属間化合物の個数(個数密度)を測定した。Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長は、10μm以下のものを合格とし、10μmを超えるものを不合格とした。Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長は、4μm以下のものを合格とし、4μmを超えるものを不合格とした。また、絶対最大長が3μm以上であるAl−Fe系金属間化合物の個数が50個/mm2以下のものを好ましいと評価し、50個/mm2を超えるものを好ましくないと評価した。
〔4〕脱脂及び酸エッチング処理後に溶け残ったAl−Fe系金属間化合物の個数
まず、鏡面化したサブストレートをアルカリ洗浄剤(上村工業株式会社製AD−68F)にて70℃、5分間の脱脂処理を行った後、純水で洗浄した。次いで、ソフトエッチング剤(上村工業株式会社製AD−101F)にて68℃、2分間の酸エッチング処理を行った後、純水で洗浄した。そして、前記〔2〕で記載したようにしてAl−Fe系金属間化合物の個数を測定した。ただし、SEMでの測定倍率は500倍とした。Al−Fe系金属間化合物の個数が20個/mm2以下のものを合格(○)とし、20個/mm2を超えるものを不合格(×)とした。
まず、鏡面化したサブストレートをアルカリ洗浄剤(上村工業株式会社製AD−68F)にて70℃、5分間の脱脂処理を行った後、純水で洗浄した。次いで、ソフトエッチング剤(上村工業株式会社製AD−101F)にて68℃、2分間の酸エッチング処理を行った後、純水で洗浄した。そして、前記〔2〕で記載したようにしてAl−Fe系金属間化合物の個数を測定した。ただし、SEMでの測定倍率は500倍とした。Al−Fe系金属間化合物の個数が20個/mm2以下のものを合格(○)とし、20個/mm2を超えるものを不合格(×)とした。
〔5〕Ni−Pめっき膜表面の平滑性
前記〔4〕の条件で脱脂及び酸エッチング処理を行った後、30%硝酸でデスマット処理を行い、さらにこれに続けてジンケート処理液(上村工業株式会社製AD−301F−3X)を用いて20℃、30秒のジンケート処理を行った。その後、一旦、30%硝酸でZnを溶解させた後に、再度、前記したジンケート処理液を用いて20℃、15秒のジンケート処理を行った。そして、Ni−Pめっき液(上村工業株式会社製ニムデン(登録商標)HDX)を使用し、90℃、2時間という条件で無電解Ni−Pめっき処理を行い、厚さが10μm程度のNi−Pめっき膜を形成した。
Ni−Pめっき膜を形成したサブストレートのめっき表面をブルカーナノ社製ContourGT X3(非接触3次元光干渉型表面形状粗さ計)を用いて対物レンズ×10、FOV×1、VSIモードで表面を測定した。幅5μm以上のピットが確認されないものを合格(○)とし、確認されたものを不合格(×)とした。
なお、Ni−Pめっき膜形成後のサブストレートを、コロイダルシリカ系のスラリー(株式会社フジミインコーポレーティッド製DISKLITE Z5601A等)と、パッド(カネボウ株式会社(現アイオン株式会社)製のN0058 72D等)と、を使用して研磨(ポリッシュ)し、その表面を評価に用いても、前記Ni−Pめっき膜形成後の評価結果と変わらなかった。
前記〔4〕の条件で脱脂及び酸エッチング処理を行った後、30%硝酸でデスマット処理を行い、さらにこれに続けてジンケート処理液(上村工業株式会社製AD−301F−3X)を用いて20℃、30秒のジンケート処理を行った。その後、一旦、30%硝酸でZnを溶解させた後に、再度、前記したジンケート処理液を用いて20℃、15秒のジンケート処理を行った。そして、Ni−Pめっき液(上村工業株式会社製ニムデン(登録商標)HDX)を使用し、90℃、2時間という条件で無電解Ni−Pめっき処理を行い、厚さが10μm程度のNi−Pめっき膜を形成した。
Ni−Pめっき膜を形成したサブストレートのめっき表面をブルカーナノ社製ContourGT X3(非接触3次元光干渉型表面形状粗さ計)を用いて対物レンズ×10、FOV×1、VSIモードで表面を測定した。幅5μm以上のピットが確認されないものを合格(○)とし、確認されたものを不合格(×)とした。
なお、Ni−Pめっき膜形成後のサブストレートを、コロイダルシリカ系のスラリー(株式会社フジミインコーポレーティッド製DISKLITE Z5601A等)と、パッド(カネボウ株式会社(現アイオン株式会社)製のN0058 72D等)と、を使用して研磨(ポリッシュ)し、その表面を評価に用いても、前記Ni−Pめっき膜形成後の評価結果と変わらなかった。
表1にNo.1〜24に係るサブストレート(ブランク、Al合金板)の化学組成(質量%)と鋳造温度(℃)を示すとともに、Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比(表1中において単に「Mn/Fe比」と表記する。)、Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比(表1中において単に「Ni/Fe比」と表記する。)、耐力(MPa)、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長(μm)、絶対最大長が3μm以上であるAl−Fe系金属間化合物の個数(個/mm2)、Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長(μm)、脱脂及び酸エッチング処理後に溶け残ったAl−Fe系金属間化合物の個数(個/mm2)、Ni−Pめっき膜表面の平滑性についての評価結果を示す。なお、表1中の「−」は含有していないか又は検出限界値未満であることを示し、下線を付した数値は本発明の要件を満たさないことを示している。
表1に示すように、No.1〜9に係るサブストレートは、本発明の要件を満たしていたので、絶対最大長が3μm以上であるAl−Fe系金属間化合物の個数、Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長、耐力が優れていた。そして、これらは、脱脂及び酸エッチング処理後に溶け残ったAl−Fe系金属間化合物の個数、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が優れており、めっき前処理の酸エッチング処理を弱い条件で行った場合でも微小めっき欠陥が殆ど発生していないことが確認された。
なかでも、No.2〜5、7〜9に係るサブストレートは、Mg量が比較的多かったので、特に耐力に優れていた。
他方、No.1、6に係るサブストレートは、Mg量、Si量、Fe量がともに比較的少なかったので、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長及びMg−Si系金属間化合物の絶対最大長が小さくなり、また、絶対最大長が3μm以上であるAl−Fe系金属間化合物の個数も少なかった。これらはまた、脱脂及び酸エッチング処理後に溶け残ったAl−Fe系金属間化合物の個数が少なかった。つまり、Ni−Pめっき膜表面の平滑性がより優れていた。
なかでも、No.2〜5、7〜9に係るサブストレートは、Mg量が比較的多かったので、特に耐力に優れていた。
他方、No.1、6に係るサブストレートは、Mg量、Si量、Fe量がともに比較的少なかったので、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長及びMg−Si系金属間化合物の絶対最大長が小さくなり、また、絶対最大長が3μm以上であるAl−Fe系金属間化合物の個数も少なかった。これらはまた、脱脂及び酸エッチング処理後に溶け残ったAl−Fe系金属間化合物の個数が少なかった。つまり、Ni−Pめっき膜表面の平滑性がより優れていた。
これに対し、No.10〜24に係るサブストレートは、本発明の要件を満たしていなかったので、絶対最大長が3μm以上であるAl−Fe系金属間化合物の個数、Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長、耐力、脱脂及び酸エッチング処理後に溶け残ったAl−Fe系金属間化合物の個数、Ni−Pめっき膜表面の平滑性のいずれかが劣る結果となった。具体的には、以下のとおりとなった。
No.10に係るサブストレートは、Mg量が少な過ぎたため、耐力が低くなった。
No.11に係るサブストレートは、Mg量が多過ぎたため、熱間圧延割れが生じた。従って、板を作製することができず、それ以降の評価ができなかった。
No.11に係るサブストレートは、Mg量が多過ぎたため、熱間圧延割れが生じた。従って、板を作製することができず、それ以降の評価ができなかった。
No.12に係るサブストレートは、Cu量が多過ぎたため、粒界にCuが析出した。そのため、めっき前処理の酸エッチング処理において粒界部が過エッチングを受けてピットが生じ、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下した。
No.13に係るサブストレートは、Zn量が多過ぎたため、Znの析出核が大きくなるのにともなって、めっき前処理のエッチングで形成される窪みも大きくなった。その結果、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下した。
No.14に係るサブストレートは、Cu量及びZn量が少な過ぎたため、ジンケート皮膜の均一性が低下してノジュールが発生した。その結果、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下した。
No.15に係るサブストレートは、Cu及びZnのいずれも含有していなかったため、ジンケート皮膜の均一性が低下してノジュールが発生した。その結果、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下した。
No.15に係るサブストレートは、Cu及びZnのいずれも含有していなかったため、ジンケート皮膜の均一性が低下してノジュールが発生した。その結果、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下した。
No.16に係るサブストレートは、Fe量が多過ぎたため、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が長くなり過ぎた。また、絶対最大長が3μm以上であるAl−Fe系金属間化合物の個数も多かった。さらに、脱脂及び酸エッチング処理後に溶け残るAl−Fe系金属間化合物の個数が多かった。その結果、ノジュールなどの微小めっき欠陥が発生し、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下した。
No.17に係るサブストレートは、Si量が多過ぎたため、Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長が長くなり過ぎた。その結果、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下した。
No.18に係るサブストレートは、Cr量が多過ぎたため、粗大なAl−Cr系金属間化合物が生成された。そして、鏡面加工を行った際に表面から脱落して、窪みを形成した。また、脱脂及び酸エッチング処理後に溶け残るAl−Fe系金属間化合物の個数が多かった。その結果、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下した。
No.19に係るサブストレートは、Cr量が少な過ぎたため、耐力が低下した。
No.18に係るサブストレートは、Cr量が多過ぎたため、粗大なAl−Cr系金属間化合物が生成された。そして、鏡面加工を行った際に表面から脱落して、窪みを形成した。また、脱脂及び酸エッチング処理後に溶け残るAl−Fe系金属間化合物の個数が多かった。その結果、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下した。
No.19に係るサブストレートは、Cr量が少な過ぎたため、耐力が低下した。
No.20に係るサブストレートは、Mn量が多過ぎたため、Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比に関してMn/Fe比が高くなった。その結果、脱脂及び酸エッチング処理後に溶け残るAl−Fe系金属間化合物の個数が多くなった。そのため、ノジュールなどの微小めっき欠陥が発生してNi−Pめっき膜表面の平滑性が低下した。
No.21に係るサブストレートは、Ni量が多過ぎたため、Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比に関してNi/Fe比が高くなった。その結果、脱脂及び酸エッチング処理後に溶け残るAl−Fe系金属間化合物の個数が多くなった。そのため、ノジュールなどの微小めっき欠陥が発生してNi−Pめっき膜表面の平滑性が低下した。
No.21に係るサブストレートは、Ni量が多過ぎたため、Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比に関してNi/Fe比が高くなった。その結果、脱脂及び酸エッチング処理後に溶け残るAl−Fe系金属間化合物の個数が多くなった。そのため、ノジュールなどの微小めっき欠陥が発生してNi−Pめっき膜表面の平滑性が低下した。
No.22に係るサブストレートは、Ni量及びFe量は本発明の要件を満たしていたものの、Ni量が比較的多く、Fe量が比較的少なく、且つ鋳造温度が低かったので、Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比に関してNi/Fe比が高くなった。その結果、脱脂及び酸エッチング処理後に溶け残るAl−Fe系金属間化合物の個数が多くなった。そのため、ノジュールなどの微小めっき欠陥が発生してNi−Pめっき膜表面の平滑性が低下した。
No.23に係るサブストレートは、Mn量及びFe量は本発明の要件を満たしていたものの、Mn量が比較的多く、Fe量が比較的少なく、且つ鋳造温度が低かったので、Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比に関してMn/Fe比が高くなった。その結果、脱脂及び酸エッチング処理後に溶け残るAl−Fe系金属間化合物の個数が多くなった。そのため、ノジュールなどの微小めっき欠陥が発生してNi−Pめっき膜表面の平滑性が低下した。
No.24に係るサブストレートは、Mn量、Ni量及びFe量は本発明の要件を満たしていたものの、Mn量、Ni量及びFe量が比較的多く、且つ鋳造温度が低かったので、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が長くなり過ぎた。また、絶対最大長が3μm以上であるAl−Fe系金属間化合物の個数も多かった。さらに、脱脂及び酸エッチング処理後に溶け残るAl−Fe系金属間化合物の個数が多かった。その結果、ノジュールなどの微小めっき欠陥が発生し、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下した。
Claims (3)
- Mg:3.5〜5.5質量%、
Fe:0.025質量%以下に規制し、
Si:0.020質量%以下に規制し、
Cr:0.010〜0.20質量%を含有し、
Cu:0.010〜0.1質量%及びZn:0.05〜0.4質量%のうちの少なくとも一方を含有し、さらに、
Mn:0.005質量%以下、及び、Ni:0.001質量%以下に規制し、
残部Al及び不可避不純物からなり、
Al−Fe−Mn系金属間化合物中の元素構成比がMn/Fe比で0.50以下、及び、
Al−Fe−Ni系金属間化合物中の元素構成比がNi/Fe比で0.20以下であり、
Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が10μm以下である
ことを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金板。 - 請求項1に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金板を円盤状に打ち抜いたことを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク。
- 請求項2に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクを使用したことを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート。
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