JP4477998B2 - 磁気ディスク用アルミニウム合金板の製造方法、磁気ディスク用アルミニウム合金板、および磁気ディスク用アルミニウム合金基板 - Google Patents
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Description
まず、所望の合金地金(例えば、JIS A 5086など)を用いて溶解、鋳造および圧延を行い、所定の板厚のアルミニウム合金板とした後、必要に応じて調質し、これをプレスにより所定の円環状基板に打ち抜く。次に、円環状基板内の加工残留応力除去および平坦度の向上のために、打ち抜かれた複数枚の円環状基板を高平坦度のスペーサ間に積み付けし、全体を加圧しながら焼鈍する(加圧焼鈍)。一般に、この加圧焼鈍したものをブランクという。その後、ブランクの内周縁および外周縁の端面に対し、所定の端面加工を施す。
このため、無電解NiPめっき膜と磁気ディスク用基板との界面に無電解NiPめっき液などが残存することで空孔が形成され、スパッタリングによる磁性膜作製時の基板加熱などにより、無電解NiPめっき膜表面にマイクロブリスター(微細なふくれ)が発生し、所望の平滑性を得ることができなくなる。
本発明者は、かかる知見に着目し、鋭意研究した結果、均質化熱処理の冷却について、特に530〜400℃までの温度域を50℃/時間以上の冷却速度で冷却すると、Mg−Si系金属間化合物の粗大化を抑制できることを見出し、また、熱間圧延の開始温度を350〜450℃とすれば加工発熱が発生してもバーニングが生じないことを見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金板の製造方法によって製造された磁気ディスク用アルミニウム合金板を用いた磁気ディスク用アルミニウム合金基板であって、Mg:3.0〜6.0質量%、Cr:0.02〜0.35質量%、Fe:0.005〜0.05質量%、Si:0.005〜0.05質量%、Cu:0.01〜0.2質量%、およびZn:0.01〜0.4質量%を含み、かつ、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、前記磁気ディスク用アルミニウム合金板中に含まれる最大長さが4μmを超えるMg−Si系金属間化合物の個数密度および最大長さが7μmを超えるAl−Fe系金属間化合物の個数密度がいずれも1個/mm 2 以下であり、かつ円環状に形成されている磁気ディスク用アルミニウム合金基板とした。
また、組成や製造条件を適切化したことにより、最大長さが4μmを超えるMg−Si系金属間化合物および最大長さが7μmを超えるAl−Fe系金属間化合物の個数密度が1個/mm2以下となり、高い平滑性を有する磁気ディスク用アルミニウム合金板を製造することができる。
さらに、本発明の磁気ディスク用アルミニウム合金板の製造方法におけるこのようなスラブや熱間圧延の温度管理は、格別困難な制御をともなわず、また、適切な温度範囲であるので、所望の磁気ディスク用アルミニウム合金板を再現性よく製造することができる。
また、本発明の磁気ディスク用アルミニウム合金板の製造方法によれば、高い平滑性を有する磁気ディスク用アルミニウム合金板を生産性良くかつ再現性高く製造することができる。
そして、本発明の磁気ディスク用アルミニウム合金板の製造方法によって製造された磁気ディスク用アルミニウム合金板、およびこれから作製された磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、高い平滑性を具備することができる。
まず、〔1〕本願発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金板の製造方法(合金成分)について説明する。
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金板の製造方法は、Mg:3.0〜6.0質量%、Cr:0.02〜0.35質量%、Fe:0.005〜0.05質量%、Si:0.005〜0.05質量%、Cu:0.01〜0.2質量%、およびZn:0.01〜0.4質量%を含み、かつ、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を使用している。そして、当該アルミニウム合金を用いて、後記で説明する各加工を行うことにより磁気ディスク用アルミニウム合金板を製造する。
Mgは、アルミニウム合金板の強度向上に有効な元素であり、通常の磁気ディスク用アルミニウム合金板としては4質量%程度含有されている場合が多い。Mgの含有量が3.0質量%未満では十分な強度が得られず、6.0質量%を超えるとAl−Mg系金属間化合物が生成するのでピットの発生原因になるとともに、熱間圧延工程などにおいて圧延割れが発生して圧延加工が困難になる。したがって、本発明におけるMgの含有量は、3.0〜6.0質量%とする。
Crは、鋳造工程および均質化熱処理工程で微細な化合物として析出し、結晶粒の成長を抑制する効果がある。しかし、Crの含有量が0.02質量%未満では最大長さが100μmを超えるような粗大な結晶粒が生成し易くなる。よって、均質化熱処理工程および熱間粗圧延工程での結晶粒の成長を抑制し、かつ再結晶粒の異常成長を抑えて組織を均質化するためには0.02質量%以上のCrの添加が必要となる。一方、Crの含有量が0.35質量%を超えると、初晶として最大長さが7μmを超えるAl−Cr系金属間化合物が晶出しやすくなる。最大長さが7μmを超えるAl−Cr系金属間化合物は、磁気ディスク用の基板を作製する際に行われる表面の研削加工工程などで脱落しやすく、無電解NiPめっき膜表面のピットの原因となり、めっき膜表面の平滑性が悪化する。したがって、本発明におけるCrの含有量は、0.02〜0.35質量%とする。
Feは、通常、地金の不純物として混入するものであり、鋳造工程などにおいてAl−Fe系金属間化合物を生じさせやすい。このAl−Fe系金属間化合物は、無電解NiPめっき処理のめっき前処理工程で溶解し、めっき膜表面のピットの原因となる。特に、Feの含有量が0.05質量%を超えると、最大長さが7μmを超えるAl−Fe系金属間化合物が増加し、めっき前処理工程で溶解してピットの原因となるほか、磁気ディスク用の基板としての加工、例えば、サブストレート加工時の切削工程、研磨工程、あるいは研削工程などにおいて脱落し、ピットの原因ともなり、めっき膜表面の平滑性が悪化する。また、Feの含有量が0.005質量%未満であると、地金が高純度となり、コストが高くなる。したがって、本発明におけるFeの含有量は、0.005〜0.05質量%とする。
Siは、通常、地金不純物として混入するものであり、鋳造工程や均質化熱処理後の冷却過程などにおいてMg−Si系金属間化合物を生成する。Siの含有量が0.05質量%を超えると、最大長さが4μmを超える粗大なMg−Si系金属間化合物が析出する。このようなMg−Si系金属間化合物は、無電解NiPめっき処理のめっき前処理工程において脱落しやすく、ピットの原因となる。また、無電解NiPめっき処理の前処理工程で溶け残った場合でも、Mg−Si系金属間化合物上では、ジンケート処理工程においてZn(亜鉛)の置換反応が起こらないため、Mg−Si系金属間化合物上に無電解NiPめっき膜が成長せず、密着性不足となる。そのため、磁性膜作製時のスパッタリング工程などでの加熱によりマイクロブリスターが生じやすく、めっき膜表面の平滑性が悪化する。また、Siの含有量が0.005質量%未満であると、地金が高純度となり、コストが高くなってしまう。したがって、本発明におけるSiの含有量は、0.005〜0.05質量%とする。
Cuは、無電解NiPめっき性を改善するために有効な元素である。Cuは、アルミニウム合金中に均一に固溶し、ジンケート処理時にジンケート浴中のZnイオンが基板表面へ均一に微細析出する効果をもたらす。これによってNiPめっき膜表面でのノジュールの発生を抑制することができる。この効果を発揮するためには、Cuを0.01質量%以上含有させることが必要である。しかし、0.2質量%を超えて含有させると結晶粒界にCuが析出するため粒界部が過エッチングを受ける。このため、ノジュールの発生が多くなり、めっき膜表面の平滑性が悪化する。したがって、本発明におけるCuの含有量は、0.01〜0.2質量%とする。
Znも無電解NiPめっき性を改善するために有効な元素である。すなわち、ZnもCuと同様、アルミニウム合金中に均一に固溶し、ジンケート処理時にジンケート浴中のZnイオンを基板表面へ均一に、微細化して析出させる効果をもたらす。また、Znの含有量の増加に伴い、Znがアルミニウム合金中に均一に析出し、無電解NiPめっき処理のめっき前処理時の酸エッチング工程におけるエッチングの起点、および、ジンケート処理時のZnイオンの析出拠点となる。このため、結晶粒による段差(粒間段差)を抑制する効果を有する。このように、無電解NiPめっき性の改善効果を発揮するためには、Znを0.01質量%以上含有させることが必要となる。しかし、Znの含有量が0.4質量%を超えると、Znの析出核が大きくなるのにともない、無電解NiPめっき処理の前処理工程で形成されるエッチングピットも大きくなる。このため、無電解NiPめっき膜表面のピットの発生原因となり、めっき膜表面の平滑性が悪化する。したがって、本発明におけるZnの含有量は、0.01〜0.4質量%とする。
不可避的不純物である元素(例えばTi,V,B等)はそれぞれ0.01質量%以下であれば本発明の磁気ディスク用アルミニウム合金板の製造方法によって製造された磁気ディスク用アルミニウム合金板の特性には影響しない。したがって、この程度の不可避的不純物の含有は許容される。
そして、本発明の磁気ディスク用アルミニウム合金板の製造方法は、前記所定の組成のアルミニウム合金を含んでなるスラブを作製する第1工程(ステップS1;スラブ作製工程)と、前記スラブを面削する第2工程(ステップS2;面削工程)と、前記面削されたスラブを500〜580℃で4〜20時間保持して1段階目の均質化熱処理を行う第3工程(ステップS3;1段階目の均質化熱処理工程)と、前記1段階目の均質化熱処理を行ったスラブを50℃/時間以上の冷却速度で350〜450℃まで冷却する第4工程(ステップS4;冷却工程)と、前記所定の温度まで冷却したスラブを350〜450℃で2〜20時間保持して2段階目の均質化熱処理を行う第5工程(ステップS5;2段階目の均質化熱処理工程)と、前記均質化熱処理されたスラブを350〜450℃の開始温度で熱間圧延して熱間圧延板を作製する第6工程(ステップS6;熱間圧延工程)と、前記熱間圧延板を冷間圧延して磁気ディスク用アルミニウム合金板を製造する第7工程(ステップS7;冷間圧延工程)とを含んでなる
以下、主として第1工程(ステップS1)から第7工程(ステップS7)で構成される本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金板の製造方法における各工程の内容および条件について、図1を参照しつつ、順を追って説明する。なお、図1は、本発明の磁気ディスク用アルミニウム合金板の製造方法を説明するフローチャートである。
第1工程では、前記で説明した所定の組成を有するアルミニウム合金を溶解して鋳造し、スラブを作製する(スラブ作製工程)。なお、アルミニウム合金を溶解した際に、アルゴン(Ar)などの不活性ガスを溶湯中に吹き込んで脱水素処理を行うのが好ましい。また、5〜30mm/分の鋳造速度でスラブを作製するのが好ましい。
次に、第2工程では、第1工程で作製したスラブの表面の面削を行う(面削工程)。これは、鋳造したスラブの表面には、添加した各種金属の分布が不均一な領域(偏析)や酸化皮膜が存在するので、この部分を取り除いて、後工程で圧延した際に均一な金属組織を有するアルミニウム合金板とするためである。なお、面削量は、偏析の程度を勘案して適宜変更することができる。
そして、本発明におけるアルミニウム合金のスラブの均質化熱処理は、2段階に分けて行う。
第3工程の1段階目の均質化熱処理では、第2工程で面削されたスラブを500〜580℃で4〜20時間保持して行う(1段階目の均質化熱処理工程)。このとき、1段階目の均質化熱処理温度が500℃未満であると、Mg2SiなどのMg−Si系金属間化合物が十分に固溶せず、最大長さが4μmを超える粗大なMg−Si系金属間化合物が多くなるなど、スラブの金属組織が均一化しないおそれがある。一方、均質化熱処理温度が580℃を超えると、スラブの表層部でバーニング(再溶融)が生じ、製造された磁気ディスク用アルミニウム合金板の外観が不良となるばかりでなく、ブランクの平坦度が悪くなる。
また、1段階目の均質化熱処理の保持時間が4時間未満であると、均質化熱処理を行う時間が短いために、Mg−Si系金属間化合物が十分に固溶せず、スラブの金属組織が十分に均一化しない。一方、20時間を超えて均質化熱処理を行った場合、一部の結晶粒の粗大化がおこり組織が不均一になるとともに、MgOなどからなる酸化皮膜の厚さが厚くなり、酸化皮膜のメクレの原因となるので好ましくない。したがって、本発明における1段階目の均質化熱処理は、500〜580℃の温度条件で、4〜20時間保持することで行う。
そして、本発明においては、1段階目の均質化熱処理を行った後に、一旦、350〜450℃まで冷却する(冷却工程)。
ここで、1段階目の均質化熱処理を行った後の350〜450℃までの冷却は、均質化熱処理を行ったスラブを50℃/時間以上の冷却速度で冷却する。より望ましくは、100℃/時間以上の冷却速度で冷却する。かかる冷却速度で冷却すると、冷却速度が適度に速いために、Mg−Si系金属間化合物の粗大化を防ぐことができる。すなわち、最大長さが4μmを超える粗大なMg−Si系金属間化合物が析出しない(1個/mm2以下)ため、最終的に高い平滑性を有する磁気ディスク用アルミニウム合金板を再現性良く製造することが可能となる。
一方、冷却速度が50℃/時間未満であると、冷却速度が遅すぎるためにMg−Si系金属間化合物の析出と成長がすすみやすい。そのため、最大長さが4μmを超えるMg−Si系金属間化合物が多数析出する。冷却速度は速いほどMg2Siは析出しにくいため、本発明においては、50℃/時間以上、好ましくは、100℃/時間以上の冷却速度で冷却する。
一旦、スラブを前記所定の温度まで冷却した後、350〜450℃で2〜20時間保持して2段階目の均質化熱処理を行う(2段階目の均質化熱処理工程)。このように、2段階目の均質化熱処理を行うと、次工程の熱間圧延を行う際にスラブの温度管理が適切となるので、スラブが割れることや、バーニングが発生することを防ぐことができる。
なお、2段階目の均質化熱処理温度が350℃未満であると、次工程の熱間圧延の項目でも説明するが、スラブの硬度が硬いために、圧延中に板端部に割れが生じてしまう。また、2段階目の均質化熱処理温度が450℃を超えると、最大長さが4μmを超える粗大なMg−Si系金属間化合物が析出・成長しやすく、好ましくない。さらに、均質化熱処理温度が530℃を超えると、Mg−Si系金属間化合物は析出しないが、熱間圧延工程で加工発熱によりスラブの表面にバーニングが発生するおそれもある。
また、2段階目の均質化熱処理の保持時間が2時間未満であると、均質化熱処理を行う時間が短すぎるために、スラブの温度を均一にすることができない。一方、2段階目の均質化熱処理の保持時間が20時間を超えると、均質化熱処理を行う時間が長すぎるために酸化皮膜が厚くなり、熱間圧延板にメクレが生じる。したがって、本発明における2段階目の均質化熱処理は、350〜450℃の温度条件で、2〜20時間保持することで行う。
第6工程では、2段階目の均質化熱処理を行ったスラブを熱間圧延して熱間圧延板を作製する(熱間圧延工程)。本発明の熱間圧延においては、圧延の開始温度を350〜450℃とする。熱間圧延の開始温度が350〜450℃であれば、圧延による加工発熱が生じてもバーニングが発生することがない。その結果、熱間圧延における圧下率を大きくとることができる。したがって、従来は、熱間圧延の初期段階では5%以下に圧下率を設定する必要があったが、本発明においては、熱間圧延の初期段階から圧下率を大きく(10%程度)設定することが可能となった。また、1回あたりの熱間圧延の圧下率を大きく設定することができるので、パス数を少なくすることも可能となり、生産性を向上することができる。
開始温度が350℃未満では、スラブの硬度が硬く、圧延中に熱間圧延板の板端部に割れが生じてしまい、磁気ディスク用アルミニウム合金板を製造することができない。一方、開始温度が450℃を超えると、最大長さが4μm以上の粗大なMg−Si系金属間化合物が多数析出する。さらに、開始温度が高く(特に530℃以上)、かつ、熱間圧延の圧下率が大きくなると、加工発熱によってバーニングの発生が顕著になる。したがって、本発明における熱間圧延の開始温度は、350〜450℃とする。
第7工程では、熱間圧延板を冷間圧延して磁気ディスク用アルミニウム合金板を製造する。なお、このとき、冷間圧延率30〜75%で複数回の冷間圧延を行い、板厚0.8〜2.0mmのアルミニウム合金板を製造するのが好ましい。
そして、前記で説明した本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金板の製造方法によって製造された磁気ディスク用アルミニウム合金板は、最大長さが4μmを超えるMg−Si系金属間化合物および最大長さが7μmを超えるAl−Fe系金属間化合物の個数密度が1個/mm2以下であり、高い平滑性を有しているので、磁気ディスク用基板として好適に用いることができる。
最大長さが4μmを超えるMg−Si系金属間化合物および最大長さが7μmを超えるAl−Fe系金属間化合物の個数密度が1個/mm2以下であり、高い平滑性を有している、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金板を用いた磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、以下のようにして作製することができる。
そして、端面加工が施されたブランクを、両面研削機に予めセットされたキャリアのポケット内にセットし、砥石により目標の板厚になるまで研削加工することで、高い平滑性を具備した磁気ディスク用アルミニウム合金基板を作製することができる。
はじめに、本発明の実施例および比較例として、表1に示す組成のアルミニウム合金を溶解した後、不活性ガスの吹き込みにより脱水素処理を行った。そして、板厚50mmのスラブを鋳造して面削した後、表1に示す条件(均質化熱処理の温度および保持時間、並びに、1段階目の均質化熱処理終了後の2段階目の均質化熱処理への冷却速度)で1段階目および2段階目の均質化熱処理を行った。その後、均質化熱処理したスラブを、熱間圧延の開始初期の圧下率および開始温度(表1参照)をもって熱間圧延を行い、板厚が3mmである熱間圧延板を作製した。そして、この熱間圧延板を冷間圧延し、最終板厚が1.0mmである磁気ディスク用アルミニウム合金板を製造した。
次いで、このようにして作製したGRサブストレートを、めっき前処理液(上村工業製AD−68F)に浸漬し、70℃、5分間の脱脂を行った。その後、めっき前処理液(上村工業製AD−101F)で68℃、2分間の酸エッチングを行い、30%硝酸でデスマット処理を行った。デスマットを行ったGRサブストレートに、ジンケート処理液(上村工業製AD−301F−3X)を用いて20℃、30秒間のジンケート処理を行い、一旦、30%硝酸でZnを溶解させた後に、再度、20℃、15秒間のジンケート処理を行った。その後、ジンケート処理を行ったGRサブストレートを、無電解NiPめっき液(上村工業製HDX−7G)に浸漬し、90℃、2時間の無電解NiPめっき処理を行い、片面10μm程度の無電解NiPめっき膜を形成してめっきサブストレートとした。そして、無電解NiPめっき膜を形成しためっきサブストレートの表面を研磨することで、磁性膜のスパッタリングを行う前の状態のめっきサブストレート(磁気ディスク用基板)とした。なお、表1中の下線は、本発明の必要条件を満たさないことを示す。
熱間圧延後の熱間圧延板の表面を観察し、バーニングの痕跡、フクレ、およびメクレによる表面欠陥の有無を確認した。評価としては、表面の100mm×100mmの範囲でこれらの表面欠陥が1個以下のものを良(「○」)、2個以上あるものを不良(「×」)と評価した。
なお、ここでいうフクレとは、熱間圧延板の表面近傍の粒界に、水素などの気体が集積してできる表面欠陥をいい、また、ここでいうメクレとは、アルミニウム合金板の表面の一部が熱間圧延によって剥がれて生じる表面欠陥をいう。
熱間圧延中の熱間圧延板の端部に割れが発生するかどうかを確認し、割れが発生していないものを良(「○」)、割れが生じたものを不良(「×」)と評価した。
表1に示す組成を有する各磁気ディスク用アルミニウム合金板について、以下の方法でMg−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数を測定した。
まず、表面をダイヤモンドバイトで切削して鏡面とし、この切削面を走査型電子顕微鏡(SEM)のCOMPO像で1000倍の倍率で20視野観察した。観察の結果、マトリックスより白く写る部分をAl−Fe系金属間化合物およびAl−Cr系金属間化合物、黒く写る部分をMg−Si系金属間化合物としてカウントを行った。表2に、最大長さが4μmを超えるMg−Si系金属間化合物の単位面積当たりの数(個/mm2)を示す。最大長さが4μmを超えるMg−Si系金属間化合物が1個/mm2以下のものを良(「○」)、1個/mm2よりも多く存在するものを不良(「×」)と評価した。
研削後のGRサブストレートについて、無電解NiPめっき前処理(ジンケート処理)および無電解NiPめっき処理を行い表面研磨することでめっきサブストレート(磁気ディスク用基板)を作製した。その後、めっきサブストレートの表面におけるフクレやピットの発生状況をSEMにより観察した(表2では「めっき面の平滑性」として示している)。その際、研磨前の無電解NiPめっき膜表面に最大長さ4μm以上のピット、あるいはめっき膜表面を研磨し、300℃で1時間加熱した後の無電解NiPめっき膜表面に最大長さ4μm以上のフクレが生じなかったものを良(「○」)、生じたものを不良(「×」)と評価した。
NIDEK社製FT−3にてブランクの平坦度を測定した。
前記a〜eの各評価を行った結果を表2に示す。
Claims (3)
- Mg:3.0〜6.0質量%、Cr:0.02〜0.35質量%、Fe:0.005〜0.05質量%、Si:0.005〜0.05質量%、Cu:0.01〜0.2質量%、およびZn:0.01〜0.4質量%を含み、かつ、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金のスラブを作製する第1工程と、
前記スラブを面削する第2工程と、
前記面削されたスラブを500〜580℃で4〜20時間保持して1段階目の均質化熱処理を行う第3工程と、
前記1段階目の均質化熱処理を行ったスラブを50℃/時間以上の冷却速度で350〜450℃まで冷却する第4工程と、
前記所定の温度まで冷却したスラブを350〜450℃で2〜20時間保持して2段階目の均質化熱処理を行う第5工程と、
前記均質化熱処理されたスラブを350〜450℃の開始温度で熱間圧延して熱間圧延板を作製する第6工程と、
前記熱間圧延板を冷間圧延して磁気ディスク用アルミニウム合金板を製造する第7工程と、
を含んでなることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金板の製造方法。 - 請求項1に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金板の製造方法によって製造された磁気ディスク用アルミニウム合金板であって、
Mg:3.0〜6.0質量%、Cr:0.02〜0.35質量%、Fe:0.005〜0.05質量%、Si:0.005〜0.05質量%、Cu:0.01〜0.2質量%、およびZn:0.01〜0.4質量%を含み、かつ、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、
前記磁気ディスク用アルミニウム合金板中に含まれる最大長さが4μmを超えるMg−Si系金属間化合物の個数密度および最大長さが7μmを超えるAl−Fe系金属間化合物の個数密度がいずれも1個/mm 2 以下である
ことを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金板。 - 請求項1に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金板の製造方法によって製造された磁気ディスク用アルミニウム合金板を用いた磁気ディスク用アルミニウム合金基板であって、
Mg:3.0〜6.0質量%、Cr:0.02〜0.35質量%、Fe:0.005〜0.05質量%、Si:0.005〜0.05質量%、Cu:0.01〜0.2質量%、およびZn:0.01〜0.4質量%を含み、かつ、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、
前記磁気ディスク用アルミニウム合金板中に含まれる最大長さが4μmを超えるMg−Si系金属間化合物の個数密度および最大長さが7μmを超えるAl−Fe系金属間化合物の個数密度がいずれも1個/mm 2 以下であり、かつ
円環状に形成されている
ことを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
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