JP2013112884A - アルミニウム合金基板及びその製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金基板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アルミニウム合金基板表面の研削加工において、研削速度に影響が少なく、研削面が平滑であるアルミニウム合金基板を提供することを課題とする。
【解決手段】Mg:2.0〜6.0mass%(以下単に%)、Fe:0.01〜0.03%、Cu:0.005〜0.15%、Zn:0.05〜0.6%、Cr:0.01〜0.3%、Si:0.001〜0.03%を含有するアルミニウム合金基板であって、該基板の鋳塊の面削後表層から深さ30mmまでDASが35〜75μmであり、該アルミニウム合金基板はその表面から5〜70μmの深さまでの領域において、最長径が1〜2μmのAl−Fe系金属間化合物の1mm当たりの個数(N1)が100〜500個、最長径が2〜7μmのAl−Fe系金属間化合物の1mm当たりの個数(N2)が5〜100個、かつN1とN2の比率(N1/N2)が5〜75であるアルミニウム合金基板。
【選択図】図1

Description

本発明は、研削加工において、生産性に優れ、研削面が平滑であるアルミニウム合金基板及びその製造方法に関するものである。
コンピュータの記憶装置に用いられるアルミニウム合金製磁気ディスクは、良好なメッキ性を有することとともに機械的特性や加工性が優れたJIS5086(Mg:3.5〜4.5mass%(以下、単に%と記す。)、Fe≦0.50%、Si≦0.40%、Mn:0.20〜0.70%、Cr:0.05〜0.25%、Cu≦0.10%、Ti≦0.15%、Zn≦0.25%、残部Al及び不可避的不純物)に規定されたアルミニウム合金基板、JIS5086中の不純物であるFe、Si等を制限しマトリックス中の金属間化合物を小さくしたアルミニウム合金基板、或いはCuやZnを意識的に添加してメッキ性を改善したアルミニウム合金基板等から製造されている。
一般的なアルミニウム合金製磁気ディスクは円環状アルミニウム合金基板を製造し、次いで該合金基板に磁性体を付着させている。
円環状アルミニウム合金基板は、例えば前記JIS5086合金からなる鋳塊を熱間圧延し、次いで焼鈍を施しながら冷間圧延し、圧延材を円環状に打抜き、次に、円環状にしたアルミニウム合金板を積層し、両面から加圧して平坦化する焼鈍(加圧焼鈍)を行う工程で製造される。
このようにして製造された円環状アルミニウム合金基板に、前処理として切削加工、研削加工、脱脂、エッチング、ジンケート処理(Zn置換処理)を施し、次いで下地処理として硬質非磁性金属であるNi−Pを無電解メッキし、該メッキ表面にポリッシングを施した後、磁性体をスパッタリングして磁気ディスクに仕上げている。
ところで、近年、磁気ディスクには、マルチメディア等のニーズから大容量化および高密度化が求められており、近い将来には、面記録密度2Tb/inが達成されようとしている。そして、更なる磁気ディスクの記録密度の向上には、磁気ディスクに対する磁気ヘッドの浮上量をより少なく、かつより安定させる必要がある。そのためには、磁気ディスク用アルミニウム合金基板の研削加工後の研削面に高い平滑性が要求される。
アルミニウム磁気ディスク基板の研削加工は、表面の平滑性の向上と酸化皮膜除去、板厚の均一化を目的に行われる。研削加工は一般に#3000番程度のPVA砥石を用い、平面研削盤により両面同時に研削が行われている。
研削加工の生産性向上のためには、同一砥石にて何回も研削を行うことが効果的であるが、何回も研削を行うと砥石の表面に研削屑がこびりついて目詰まりを起こし、研削速度が低下する。
研削加工時の砥石の目詰まりに関しては、粗大なAl−Fe系金属間化合物等が多いほど目詰まりが生じにくく、研削加工がし易いことが知られている。これは、高い硬度を有するAl−Fe系金属間化合物は研削加工時、研削作業面を研磨する作用を持ち、その結果、砥石作業面の空隙部分に侵入した研削屑は排除され、その結果、目詰まりが防止されるためである。
特許文献1では合金組成の範囲を限定し、長径1μm以上のAl−Fe系金属間化合物および長径1μm以上のMg−Si系金属間化合物の1mmあたりの合計個数を制御することにより、研削加工時の研削速度を一定にし、研削面の平滑性を向上させる方法が開示されている。
特開平4−272150号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている金属間化合物(Al−Fe系、Mg−Si系)のサイズや個数を限定するだけでは、必ずしも研削加工時の目詰まりを防止することはできず、また、粗大な金属間化合物が研削加工時に脱落して大きなピット(窪み)が発生し、研削面の平滑性が低下し、目標とする高い生産性、平滑性が得られないのが現状であった。
本発明者らは研削加工時における磁気ディスク用アルミニウム合金基板の組織と砥石の目詰まり発生との関係を鋭意調査研究の結果、磁気ディスク用アルミニウム合金基板の表面から5〜70μmの深さまでの領域における、最長径が1〜2μmのAl−Fe系金属間化合物と最長径が2〜5μmのAl−Fe系金属間化合物の個数と比率が砥石の目詰まり改善に関与していることを見いだした。
本発明はかかる調査研究を基になされたもので、研削加工において、砥石の目詰まり発生を抑制することで研削速度に影響が少なく、生産性に優れ、研削面が平滑でメッキ性を損なわず、機械的特性に優れた磁気ディスク用アルミニウム合金基板及びその製造方法を提供することを課題とし、かつ、種々の用途が期待される研削面が平滑なアルミニウム合金基板の提供を課題とする。
本発明のアルミニウム合金基板は、Mg:2.0〜6.0mass%(以下、単に%と記す。)、Fe:0.01〜0.03%、Cu:0.005〜0.15%、Zn:0.05〜0.6%、Cr:0.01〜0.3%、Si:0.001〜0.03%を含有し、残部Alと不可避的不純物からなるアルミニウム合金基板であって、該アルミニウム合金基板の鋳塊の面削後表層から深さ30mmまでのデンドライト2次アーム間隔(以下、DASと記す。)が30〜75μmであり、該アルミニウム合金基板はその表面から5〜70μmの深さまでの領域において、最長径が1〜2μmのAl−Fe系金属間化合物が1mm2当たり100〜500個で、かつ最長径が2〜7μmのAl−Fe系金属間化合物が1mm2当たり5〜100個で、かつ最長径が1〜2μmのAl−Fe系金属間化合物の1mm2当たりの個数(N1)と最長径が2〜7μmのAl−Fe系金属間化合物の1mm2当たりの個数(N2)の比率(N1/N2)が5〜75であることを特徴とする。
本発明のアルミニウム合金基板は、研削加工において、長時間研削速度に影響がなく、生産性に優れ、平滑な研削面が得られるため、磁気ディスク用としては高容量化および高密度化が可能な磁気ディスク用アルミニウム合金基板を提供することができる。
また、平滑な研削面を有するアルミニウム合金基板は種々の用途が期待される。
アルミニウム合金基板の製造工程から磁気ディスクの製造に至る工程のフローを示す図である。 磁気ディスク用アルミニウム合金基板に存在するAl−Fe系金属間化合物を特定したCOMP像を示す図である。 磁気ディスク用アルミニウム合金鋳塊におけるDASの測定面を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
先ず、アルミニウム合金基板の製造工程から磁気ディスクの製造工程を図1に示すフローで説明する。
ステップ1:必要に応じたアルミニウム合金に配合する。例えば後述する表1に示す成分組成のアルミニウム合金に配合する。
ステップ2:配合したアルミニウム合金を鋳造し、鋳塊の面削を行う。
ステップ3:鋳塊を均質化処理する(必須ではない)。
ステップ4:鋳塊を熱間圧延し板とする。
ステップ5:熱間圧延した板を冷間圧延してアルミニウム合金圧延板とする。
ステップ6:アルミニウム合金圧延板を円環状に打ち抜き、ディスクブランクを作成する。
ステップ7:ディスクブランクを加圧平坦化しアルミニウム合金基板を作成する。
ステップ8:アルミニウム合金基板を切削加工、研削加工、脱脂、エッチングして磁気ディスク用アルミニウム合金基板とする。
ステップ9:磁気ディスク用アルミニウム合金基板表面にジンケート処理(Zn置換処理)を施す。
ステップ10:ジンケート処理した表面を下地処理(Ni−Pメッキ)する。
ステップ11:下地処理した表面にスパッタリングで磁性体を付着させ磁気ディスクとする。
ステップ1のアルミニウム合金の各組成の配合について詳細に説明する。
本発明のアルミニウム合金は、
Mg:2.0〜6.0%、
Fe:0.01〜0.03%、
Cu:0.005〜0.15%、
Zn:0.05〜0.6%、
Cr:0.01〜0.3%、
Si:0.001〜0.03%、
を含有し、残部Alと不可避的不純物からなる。
上記アルミニウム合金の成分組成限定理由は次の通りである。
Mg:2.0〜6.0%
Alに添加するMgは主としてアルミニウム合金基板の強度を向上させる効果がある。
Mgの含有量を2.0〜6.0%に規定した理由は、2.0%未満ではその効果が十分に得られず、6.0%を超えると粗大なAl−Mg系金属間化合物が生成し、研削加工時にこの金属間化合物が脱落して大きなピットが発生し、研削面の平滑性が低下するためである。Mgの含有量は強度および製造の容易さの兼合いから2.0〜5.0%が特に望ましい。
Fe:0.01〜0.03%
Feはアルミニウム中には殆ど固溶せず、Al−Fe系金属間化合物として存在し、砥石による研削加工時の砥石の目詰まりを防止する効果がある。Feの含有量を0.01〜0.03%に規定した理由は、0.01%未満ではその効果が十分に得られず、0.03%を超えると最長径が1μm以上のAl−Fe系金属間化合物が多数成し、研削加工時にこの金属間化合物が脱落してピットが多数発生し、研削面の平滑性が低下するためである。Fe含有量は、0.025%未満に抑えることが好ましい。
Cu:0.005〜0.15%
Alに添加するCuは前記ステップ9におけるジンケート処理時のAl溶解量を減少させ、またジンケート皮膜を均一に、薄く、緻密に付着させる効果がある。その結果、次工程(ステップ10)のNi−Pからなる下地メッキの平滑性を向上させる。
Cuの含有量を0.005〜0.15%に規定した理由は、0.005%未満ではその効果が十分に得られず、0.15%を超えると粗大なAl−Cu−Mg−Zn系金属間化合物が生成して、研削加工時にこの金属間化合物が脱落して大きなピットが発生し、研削面の平滑性が低下するためである。さらに、材料自体の耐食性を低下させるため、ジンケート処理により生成するジンケート皮膜が不均一となり、下地メッキの密着性や平滑性を低下させる。好ましいCu含有量は、0.005〜0.10%の範囲内である。
Zn:0.05〜0.6%
Alに添加するZnはCuと同様にステップ9におけるジンケート処理時のAl溶解量を減少させ、またジンケート皮膜を均一に、薄く、緻密に付着させ、次工程の下地メッキの平滑性を向上させる効果がある。
Znの含有量を0.05〜0.6%に規定した理由は、0.05%未満ではその効果が十分に得られず、0.6%を超えると、粗大なAl−Cu−Mg−Zn系金属間化合物が生成し、研削加工時にこの金属間化合物が脱落して大きなピットが発生し、研削面の平滑性が低下するためである。さらに、材料自体の加工性や耐食性を低下させる。好ましいZn含有量は、0.05〜0.5%の範囲内である。
Cr:0.01〜0.3%
Alに添加するCrは鋳造時に微細な金属間化合物を生成するが、一部はマトリックスに固溶して切削加工性と研削加工性の向上に寄与する。
Crの含有量を0.01〜0.3%に規定した理由は、0.01%未満ではその効果が十分に得られず、0.3%を超えると鋳造時に過剰分が晶出すると同時に粗大なAl−Cr系金属間化合物が生成し、研削加工時にこの金属間化合物が脱落して平滑性低下の原因となる大きなピットを発生するためである。好ましいCr含有量は、0.01〜0.2%の範囲内である。
Si:0.001〜0.03%
Siは研削加工性を低下させるため、アルミニウム合金中にSiが含まれることは好ましくない。しかし、Siはアルミニウム地金に不可避的不純物として存在する。ステップ1におけるアルミニウム合金の調整には純度の高い、例えば純度99.9%以上のアルミニウム地金を採用するが、このような地金にもSiが含まれる。アルミニウム地金からSiを0.001%未満まで取り除くことはアルミニウム地金を高純度に精錬することとなり、コスト高を招き好ましくない。一方、Siの含有量が0.03%を超えると研削速度低下の原因になるため好ましくない。従ってSiの含有量が0.03%以下となるよう調整する。Si含有量は、0.025%未満に抑えることが好ましい。
Be:0.0001〜0.004%
一般にMgを含有するアルミニウム合金は、その鋳造時に、Mgの溶湯酸化を抑制するため微量のBeを添加することがある。従って、本発明のアルミニウム合金においても、微量のBeを含有することは許容される。但し、Be量が0.0001%未満では、上記の効果が得られず、一方、Be量が0.005%を越えて添加してもその添加効果は飽和し、それ以上の顕著な改善効果が得られない。従って、Beを添加する場合のBe添加量は、0.0001〜0.0025%の範囲内とすることが好ましい。
その他元素
以上の各元素の他は、Alおよび不可避的不純物である。ここで、不可避的不純物(上記Si、Feを除く、例えばTi、V、Ga、B等)は、各々が0.05%以下で、かつ合計で0.15%以下程度であれば、本発明で得られるアルミニウム合金基板としてその特性を損なうことはない。
本発明のアルミニウム合金基板は、その表面から5〜70μmの深さまでの領域において、
最長径が1〜2μmのAl−Fe系金属間化合物が1mm2当たり100〜500個で、かつ最長径が2〜7μmのAl−Fe系金属間化合物が1mm2当たり5〜100個で、かつ最長径が1〜2μmのAl−Fe系金属間化合物の1mm2当たりの個数(N1)と最長径が2〜7μmのAl−Fe系金属間化合物の1mm2当たりの個数(N2)の比率(N1/N2)が5〜75であることを特徴とする。このようにAl−Fe系金属間化合物の大きさと個数を限定することで表面の研削加工において、長期に亘る研削速度に殆ど影響がなく、従って生産性に優れ、粗大な金属間化合物の脱落に基づく平滑性の低下もない、優れた平滑性を有する研削面を得ることができる。
アルミニウム合金基板の表面から5〜70μmの深さまでの領域におけるAl−Fe系金属間化合物の個数と比率について説明する。
N1:100〜500個
アルミニウム合金基板の表面から5〜70μmの深さまでの領域において、N1が100個未満では、砥石による研削時に研削屑を排除する効果が十分に得られず、500個を超えると研削加工時の脱落により発生するピットの数が無視できなくなり、平滑性が低下するためである。
N2:5〜100個
アルミニウム合金基板の表面から5〜70μmの深さまでの領域において、N2が1mm当たり5個未満では、砥石による研削時に研削屑を排除する効果が十分に得られず、100個を超えると研削加工時の脱落により発生するピットの数が無視できなくなり、平滑性が低下するためである。
N1/N2:5〜75
アルミニウム合金基板の表面から5〜70μmの深さまでの領域において、N1/N2が5未満では、N1に対してN2が多すぎるため、最長径が1〜2μmのAl−Fe系金属間化合物の研削屑を排除する効果が十分に得られない。
一方、N1/N2が75を超えるとN1に対してN2が少なすぎるため、最長径が2〜7μmのAl−Fe系金属間化合物の研削屑を排除する効果が十分に得られなくなるためである。
上述したように本発明のアルミニウム合金基板はその表面を砥石で研削するにあたり、最長径が1〜2μmのAl−Fe系金属間化合物は径が小さいため、砥石面の細かな研削屑を排除する効果があり、最長径が2〜5μmのAl−Fe系金属間化合物は大きな研削屑を排除する効果があると考えられる。また、該金属間化合物がアルミニウム合金基板の表面から5〜70μmの深さまでの領域に所定の個数と比率で分布することで砥石面の研削屑を適正に排除すると共に大きな金属間化合物が基板表面から脱落することがなく、研削加工時、長時間に亘り研削速度に影響がなく、平滑な研削面を得ることが出来ると考察できる。
DAS:30〜75μm
鋳塊のDASは鋳造時の冷却速度、添加元素の濃度等によって大きく変わるものであり、最終的に得られるAl−Fe系金属間化合物の分布などは鋳塊の鋳造冷却速度に依存するところが非常に大きい。よってDASを測定することで適正な冷却速度に制御することが出来る。
面削後の表層から30mmまでのDASが30μm未満では、冷却速度が速すぎるため晶出するAl−Fe系金属間化合物の径が小さくなり、研削加工時、研削屑を排除する効果が十分に得られない。
一方、面削後の表層から30mmまでのDASが75μmを越えると、冷却速度が遅すぎるため鋳造中に粗大なAl−Fe系金属間化合物が晶出して、研削加工時にこの金属間化合物が脱落して大きなピットが発生し、研削面の平滑性が低下する。
従って、面削後の表層から30mmまでのDASを30〜75μmの範囲におさめることで適正な冷却速度が得られ、アルミニウム合金基板の表面から5〜70μmの深さまでの領域において、前述した所望の個数と比率を有するAl−Fe系金属間化合物を得ることができる。
次に磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法について、詳細に説明する。
前記表1に示すステップ1で本発明の合金組成範囲に調整されたアルミニウム合金地金を、半連続鋳造(DC鋳造)法などの常法に従って鋳造し、得られた鋳塊の面削を行い(ステップ2)、均質化処理(ステップ3)、熱間圧延(ステップ4)、冷間圧延(ステップ5)を施しアルミニウム合金圧延板を製造する。ステップ2の鋳造時の冷却速度は特に限定されるものではないが、所定のDASを得るためには冷却速度は0.1〜2.0℃/sとすることが好ましい。ステップ2の面削の条件は特に限定されるものではなく、面削量は3〜50mmとする。ステップ3の均質化処理は行わなくても良いが、実施する場合には、例えば500〜570℃で4時間以上等の条件で行うことが好ましい。
前記各工程は何れも金属間化合物の生成に関係するが、本発明の特性は特にステップ2の鋳造時における冷却速度が大きく影響している。
鋳塊を熱間圧延(ステップ4)するに当たっては、特にその条件は限定されるものではなく、熱間圧延開始温度を400〜500℃とし、熱間圧延終了温度は260〜380℃とする。
熱間圧延終了後は、冷間圧延(ステップ5)によって所要の製品板厚に仕上げる。冷間圧延の条件は特に限定されるものではなく、必要な製品板強度や板厚に応じて定めれば良く、圧延率を20〜80%とする。
冷間圧延の前あるいは冷間圧延の途中で、冷間圧延加工性を確保するために焼鈍処理を施してもよい。焼鈍処理を実施する場合には、例えばバッチ式の加熱ならば、200〜550℃で0〜10時間の条件で行うことが好ましい。
その後、このようにして製造したアルミニウム合金圧延板を用途に応じて加工する。
アルミニウム合金圧延板を磁気ディスク用として加工するには、該基板を円環状に打ち抜き(ステップ6)、大気中にて200〜450℃で30分以上の加圧焼鈍(ステップ7)を行い、平坦化したディスクブランクを切削加工、研削加工、脱脂、エッチング(ステップ8)して磁気ディスク用アルミニウム合金基板とする。ステップ8の研削加工の研削量は、必要な製品板厚等に応じて定められる値であり、研削量は5〜70μmとする。
以下に本発明を磁気ディスク基板に使用した実施例によりより詳細に説明する。
ステップ1:表1に示す成分組成のアルミニウム合金溶湯を溶製した。
ステップ2:アルミニウム合金溶湯を表2に示す鋳造速度でDC鋳造を行い、厚さ435mmの鋳塊とした。次に表2に示す条件で両面面削を行った。
ステップ3:実施例No.6の合金以外は560℃で6時間の均質化処理を施した。
ステップ4:熱間圧延を行ない、板厚3.0mmの熱延板とした。
ステップ5:実施例No.7の合金以外の熱延板は中間焼鈍を行なわずに冷間圧延(圧延率66.7%)により最終板厚の1.0mmまで圧延し、圧延板とした。
実施例No.7は、まず第1の冷間圧延(圧延率33.3%)を施した後、バッチ式焼鈍炉を用いて、300℃で2時間の条件で中間焼鈍を行なった。次いで、第2の冷間圧延(圧延率50.0%)により最終板厚の1.0mmまで圧延し、圧延板とした。
ステップ6:前記圧延板から外径96mm、内径24mmの円環状に打抜き、ディスクブランクを作成した。
ステップ7:ディスクブランクを340℃で4時間加圧焼鈍を施した。
ステップ8:端面加工後、研削加工を施した。
研削加工は#3000番のPVA砥石を用い、平面研削盤により両面同時に研削を行った。研削時間は5分とし、研削液は水溶性研削油剤を用いた。該研削加工を該砥石の交換を行わず10回繰り返し合計(50分)の研削量を測定した。
前記鋳造(ステップ2・表2)時の冷却速度、前記研削加工(ステップ8・表3)の研削性及び研削加工後の磁気ディスク用アルミニウム合金基板について以下の評価を行った。
〔アルミニウム合金基板の表面から5〜70μmの深さまでの領域におけるN1、N2およびN1/N2〕
走査電子顕微鏡(SEM)により、研削加工後(表3に示す測定深さは研削量を模擬したもので、5〜70μmとした。)の磁気ディスク用アルミニウム合金基板表面の組成(COMP)像を倍率1000倍にて20視野撮影し、N1/N2を求めた。
Al−Fe系金属間化合物はCOMP像ではマトリックスに比べて白く写るため、白く写る粒子をAl−Fe系金属間化合物としてカウントした。その結果を表3に示す。
〔面削後の表層から30mm深さまでのDAS〕
DASは、光学顕微鏡により鋳塊厚さ方向の断面組織観察を行い、2次枝法により測定した。測定は、鋳塊面削後の表層から30mm深さまでの断面を用いた。その結果を表3に示す。
〔研削速度〕
研削速度は、5分×10回の研削量から研削時間1分当たりの研削量(μm/分)を全数測定し、その平均値を求めた。研削速度が15μm/分以上の場合を優良(◎印)とし、10〜15μm/分の場合を良好(○印)、10μm/分以下の場合を不良(×印)とした。結果を表3に示す。
〔研削後の平滑性〕
研削後の平滑性は、研削後の磁気ディスク用アルミニウム合金基板表面の粗さ(算術平均粗さ、Ra)を全数測定し、その平均値で評価を行った。表面粗さRaが0.025μm以下の場合を優良(◎印)とし、0.025μmを超える場合を不良(×印)とした。評価結果を表3に示す。
表3に示すように、実施例のNo.1〜No.7では、研削加工において、研削速度の低下がなく、生産性に優れ、研削面が平滑である磁気ディスク用アルミニウム合金基板が得られた。
一方比較例8〜15は何れも本発明の合金組成から外れる要素を含んでいたため、研削加工において、研削速度の低下が見られ、或いは生産性が劣った。
即ち、比較例8はMgの含有量が多いために粗大なAl−Mg系金属間化合物が生成され、この金属間化合物が研削時に脱落し、研削後の表面平滑性が悪くなったものと推察できる。
比較例9はCuの含有量が多かったために粗大なAl−Cu−Mg−Zn系金属間化合物が生成されたため、この金属間化合物が研削時に脱落し、研削後の表面平滑性が悪くなったものと推察できる。
比較例10はZnの含有量が多かったために粗大なAl−Cu−Mg−Zn系金属間化合物が生成されたため、この金属間化合物が研削時に脱落し、研削後の表面平滑性が悪くなったものと推察できる。
比較例11はCrの含有量が多かったために粗大なAl−Cr系金属間化合物が生成し、この金属間化合物が研削時に脱落し、研削後の表面平滑性が悪くなったものと推察できる。
比較例12はSiの含有量が多かったために合金基板の研削速度が悪く、生産性に影響する合金基板となった。
比較例13はFeの含有量が多かったために最長径が1μm以上のAl−Fe系金属間化合物が多数生成されたため、この金属間化合物が研削時に脱落し、研削後の表面平滑性が悪くなったものと推察できる。
比較例14はFeの含有量が多かったために最長径が1μm以上のAl−Fe系金属間化合物が多数生成されたため、この金属間化合物が研削時に脱落し、研削後の表面平滑性が悪くなったものと推察できる。また、N1/N2が大きかったために合金基板の研削速度が悪く、生産性に影響する合金基板となった。
比較例15はFeの含有量が少なかったためにFeを添加した効果が得られず、研削速度が低下し、生産性に影響を及ぼす結果となった。
比較例16はCrの含有量が少なかったためにCrを添加した効果が得られず、研削速度が低下し、生産性に影響を及ぼす結果となった。
比較例17、18は鋳造からの冷却速度が遅かったためにDASが大きくなり鋳造中に粗大な金属間化合物が生成し、この金属間化合物が研削時に脱落し、研削後の表面平滑性が悪くなったものと推察できる。
比較例19は鋳造からの冷却速度が遅かったためDASが大きくなり鋳造中に粗大な金属間化合物が生成されたため、この金属間化合物が研削時に脱落し、研削後の表面平滑性が悪くなったものと推察できる。さらに、N1/N2が小さすぎたために合金基板の研削速度が悪く、生産性に影響する合金基板となった。
比較例20〜22は、DASが小さかったために径の小さな金属間化合物が生成し、研削時に研削屑を排除する効果が十分に得られず、研削速度を低下させ、生産性が低下する結果となった。
上述したように、各比較例では、平滑な研削面が得られなかったため、或いは生産性に影響するため、磁気ディスクの高容量化および高密度化が可能な磁気ディスク用アルミニウム合金基板を容易に得ることができなかった。
上述したように、本発明のアルミニウム合金基板はその表面を砥石で研削するにあたり、最長径が1〜2μmのAl−Fe系金属間化合物は径が小さいため砥石面の細かな研削屑を排除する効果を有し、最長径が2〜5μmのAl−Fe系金属間化合物は大きな研削屑を排除する効果を有する。さらに、これら両長径の金属間化合物の個数と比率を制御することでそれぞれの効果が相乗効果として現れる。このため、長期間に亘り研削効率に影響する劣化が見られず、砥石面の研削屑を適正に排除することが可能である。また、大きな金属間化合物が基板表面から脱落することがないため、研削加工時、長時間に亘り研削速度に影響がなく、平滑な研削面を得ることが出来る優れた効果を有するものである。

Claims (1)

  1. Mg:2.0〜6.0mass%(以下、単に%と記す。)、Fe:0.01〜0.03%、Cu:0.005〜0.15%、Zn:0.05〜0.6%、Cr:0.01〜0.3%、Si:0.001〜0.03%を含有し、残部Alと不可避的不純物からなるアルミニウム合金基板であって、該アルミニウム合金基板の鋳塊の面削後表層から深さ30mmまでのデンドライト2次アーム間隔が30〜75μmであり、該アルミニウム合金基板はその表面から5〜70μmの深さまでの領域において、最長径が1〜2μmのAl−Fe系金属間化合物が1mm当たり100〜500個で、かつ最長径が2〜7μmのAl−Fe系金属間化合物が1mm当たり5〜100個で、かつ最長径が1〜2μmのAl−Fe系金属間化合物の1mm当たりの個数(N1)と最長径が2〜7μmのAl−Fe系金属間化合物の1mm当たりの個数(N2)の比率(N1/N2)が5〜75であるアルミニウム合金基板。
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