JP2013112884A - アルミニウム合金基板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Mg:2.0〜6.0mass%(以下単に%)、Fe:0.01〜0.03%、Cu:0.005〜0.15%、Zn:0.05〜0.6%、Cr:0.01〜0.3%、Si:0.001〜0.03%を含有するアルミニウム合金基板であって、該基板の鋳塊の面削後表層から深さ30mmまでDASが35〜75μmであり、該アルミニウム合金基板はその表面から5〜70μmの深さまでの領域において、最長径が1〜2μmのAl−Fe系金属間化合物の1mm2当たりの個数(N1)が100〜500個、最長径が2〜7μmのAl−Fe系金属間化合物の1mm2当たりの個数(N2)が5〜100個、かつN1とN2の比率(N1/N2)が5〜75であるアルミニウム合金基板。
【選択図】図1
Description
円環状アルミニウム合金基板は、例えば前記JIS5086合金からなる鋳塊を熱間圧延し、次いで焼鈍を施しながら冷間圧延し、圧延材を円環状に打抜き、次に、円環状にしたアルミニウム合金板を積層し、両面から加圧して平坦化する焼鈍(加圧焼鈍)を行う工程で製造される。
このようにして製造された円環状アルミニウム合金基板に、前処理として切削加工、研削加工、脱脂、エッチング、ジンケート処理(Zn置換処理)を施し、次いで下地処理として硬質非磁性金属であるNi−Pを無電解メッキし、該メッキ表面にポリッシングを施した後、磁性体をスパッタリングして磁気ディスクに仕上げている。
研削加工の生産性向上のためには、同一砥石にて何回も研削を行うことが効果的であるが、何回も研削を行うと砥石の表面に研削屑がこびりついて目詰まりを起こし、研削速度が低下する。
研削加工時の砥石の目詰まりに関しては、粗大なAl−Fe系金属間化合物等が多いほど目詰まりが生じにくく、研削加工がし易いことが知られている。これは、高い硬度を有するAl−Fe系金属間化合物は研削加工時、研削作業面を研磨する作用を持ち、その結果、砥石作業面の空隙部分に侵入した研削屑は排除され、その結果、目詰まりが防止されるためである。
また、平滑な研削面を有するアルミニウム合金基板は種々の用途が期待される。
先ず、アルミニウム合金基板の製造工程から磁気ディスクの製造工程を図1に示すフローで説明する。
ステップ1:必要に応じたアルミニウム合金に配合する。例えば後述する表1に示す成分組成のアルミニウム合金に配合する。
ステップ2:配合したアルミニウム合金を鋳造し、鋳塊の面削を行う。
ステップ3:鋳塊を均質化処理する(必須ではない)。
ステップ4:鋳塊を熱間圧延し板とする。
ステップ5:熱間圧延した板を冷間圧延してアルミニウム合金圧延板とする。
ステップ6:アルミニウム合金圧延板を円環状に打ち抜き、ディスクブランクを作成する。
ステップ7:ディスクブランクを加圧平坦化しアルミニウム合金基板を作成する。
ステップ8:アルミニウム合金基板を切削加工、研削加工、脱脂、エッチングして磁気ディスク用アルミニウム合金基板とする。
ステップ9:磁気ディスク用アルミニウム合金基板表面にジンケート処理(Zn置換処理)を施す。
ステップ10:ジンケート処理した表面を下地処理(Ni−Pメッキ)する。
ステップ11:下地処理した表面にスパッタリングで磁性体を付着させ磁気ディスクとする。
本発明のアルミニウム合金は、
Mg:2.0〜6.0%、
Fe:0.01〜0.03%、
Cu:0.005〜0.15%、
Zn:0.05〜0.6%、
Cr:0.01〜0.3%、
Si:0.001〜0.03%、
を含有し、残部Alと不可避的不純物からなる。
Mg:2.0〜6.0%
Alに添加するMgは主としてアルミニウム合金基板の強度を向上させる効果がある。
Mgの含有量を2.0〜6.0%に規定した理由は、2.0%未満ではその効果が十分に得られず、6.0%を超えると粗大なAl−Mg系金属間化合物が生成し、研削加工時にこの金属間化合物が脱落して大きなピットが発生し、研削面の平滑性が低下するためである。Mgの含有量は強度および製造の容易さの兼合いから2.0〜5.0%が特に望ましい。
Feはアルミニウム中には殆ど固溶せず、Al−Fe系金属間化合物として存在し、砥石による研削加工時の砥石の目詰まりを防止する効果がある。Feの含有量を0.01〜0.03%に規定した理由は、0.01%未満ではその効果が十分に得られず、0.03%を超えると最長径が1μm以上のAl−Fe系金属間化合物が多数成し、研削加工時にこの金属間化合物が脱落してピットが多数発生し、研削面の平滑性が低下するためである。Fe含有量は、0.025%未満に抑えることが好ましい。
Alに添加するCuは前記ステップ9におけるジンケート処理時のAl溶解量を減少させ、またジンケート皮膜を均一に、薄く、緻密に付着させる効果がある。その結果、次工程(ステップ10)のNi−Pからなる下地メッキの平滑性を向上させる。
Cuの含有量を0.005〜0.15%に規定した理由は、0.005%未満ではその効果が十分に得られず、0.15%を超えると粗大なAl−Cu−Mg−Zn系金属間化合物が生成して、研削加工時にこの金属間化合物が脱落して大きなピットが発生し、研削面の平滑性が低下するためである。さらに、材料自体の耐食性を低下させるため、ジンケート処理により生成するジンケート皮膜が不均一となり、下地メッキの密着性や平滑性を低下させる。好ましいCu含有量は、0.005〜0.10%の範囲内である。
Alに添加するZnはCuと同様にステップ9におけるジンケート処理時のAl溶解量を減少させ、またジンケート皮膜を均一に、薄く、緻密に付着させ、次工程の下地メッキの平滑性を向上させる効果がある。
Znの含有量を0.05〜0.6%に規定した理由は、0.05%未満ではその効果が十分に得られず、0.6%を超えると、粗大なAl−Cu−Mg−Zn系金属間化合物が生成し、研削加工時にこの金属間化合物が脱落して大きなピットが発生し、研削面の平滑性が低下するためである。さらに、材料自体の加工性や耐食性を低下させる。好ましいZn含有量は、0.05〜0.5%の範囲内である。
Alに添加するCrは鋳造時に微細な金属間化合物を生成するが、一部はマトリックスに固溶して切削加工性と研削加工性の向上に寄与する。
Crの含有量を0.01〜0.3%に規定した理由は、0.01%未満ではその効果が十分に得られず、0.3%を超えると鋳造時に過剰分が晶出すると同時に粗大なAl−Cr系金属間化合物が生成し、研削加工時にこの金属間化合物が脱落して平滑性低下の原因となる大きなピットを発生するためである。好ましいCr含有量は、0.01〜0.2%の範囲内である。
Siは研削加工性を低下させるため、アルミニウム合金中にSiが含まれることは好ましくない。しかし、Siはアルミニウム地金に不可避的不純物として存在する。ステップ1におけるアルミニウム合金の調整には純度の高い、例えば純度99.9%以上のアルミニウム地金を採用するが、このような地金にもSiが含まれる。アルミニウム地金からSiを0.001%未満まで取り除くことはアルミニウム地金を高純度に精錬することとなり、コスト高を招き好ましくない。一方、Siの含有量が0.03%を超えると研削速度低下の原因になるため好ましくない。従ってSiの含有量が0.03%以下となるよう調整する。Si含有量は、0.025%未満に抑えることが好ましい。
一般にMgを含有するアルミニウム合金は、その鋳造時に、Mgの溶湯酸化を抑制するため微量のBeを添加することがある。従って、本発明のアルミニウム合金においても、微量のBeを含有することは許容される。但し、Be量が0.0001%未満では、上記の効果が得られず、一方、Be量が0.005%を越えて添加してもその添加効果は飽和し、それ以上の顕著な改善効果が得られない。従って、Beを添加する場合のBe添加量は、0.0001〜0.0025%の範囲内とすることが好ましい。
以上の各元素の他は、Alおよび不可避的不純物である。ここで、不可避的不純物(上記Si、Feを除く、例えばTi、V、Ga、B等)は、各々が0.05%以下で、かつ合計で0.15%以下程度であれば、本発明で得られるアルミニウム合金基板としてその特性を損なうことはない。
最長径が1〜2μmのAl−Fe系金属間化合物が1mm2当たり100〜500個で、かつ最長径が2〜7μmのAl−Fe系金属間化合物が1mm2当たり5〜100個で、かつ最長径が1〜2μmのAl−Fe系金属間化合物の1mm2当たりの個数(N1)と最長径が2〜7μmのAl−Fe系金属間化合物の1mm2当たりの個数(N2)の比率(N1/N2)が5〜75であることを特徴とする。このようにAl−Fe系金属間化合物の大きさと個数を限定することで表面の研削加工において、長期に亘る研削速度に殆ど影響がなく、従って生産性に優れ、粗大な金属間化合物の脱落に基づく平滑性の低下もない、優れた平滑性を有する研削面を得ることができる。
N1:100〜500個
アルミニウム合金基板の表面から5〜70μmの深さまでの領域において、N1が100個未満では、砥石による研削時に研削屑を排除する効果が十分に得られず、500個を超えると研削加工時の脱落により発生するピットの数が無視できなくなり、平滑性が低下するためである。
アルミニウム合金基板の表面から5〜70μmの深さまでの領域において、N2が1mm2当たり5個未満では、砥石による研削時に研削屑を排除する効果が十分に得られず、100個を超えると研削加工時の脱落により発生するピットの数が無視できなくなり、平滑性が低下するためである。
アルミニウム合金基板の表面から5〜70μmの深さまでの領域において、N1/N2が5未満では、N1に対してN2が多すぎるため、最長径が1〜2μmのAl−Fe系金属間化合物の研削屑を排除する効果が十分に得られない。
一方、N1/N2が75を超えるとN1に対してN2が少なすぎるため、最長径が2〜7μmのAl−Fe系金属間化合物の研削屑を排除する効果が十分に得られなくなるためである。
鋳塊のDASは鋳造時の冷却速度、添加元素の濃度等によって大きく変わるものであり、最終的に得られるAl−Fe系金属間化合物の分布などは鋳塊の鋳造冷却速度に依存するところが非常に大きい。よってDASを測定することで適正な冷却速度に制御することが出来る。
面削後の表層から30mmまでのDASが30μm未満では、冷却速度が速すぎるため晶出するAl−Fe系金属間化合物の径が小さくなり、研削加工時、研削屑を排除する効果が十分に得られない。
一方、面削後の表層から30mmまでのDASが75μmを越えると、冷却速度が遅すぎるため鋳造中に粗大なAl−Fe系金属間化合物が晶出して、研削加工時にこの金属間化合物が脱落して大きなピットが発生し、研削面の平滑性が低下する。
従って、面削後の表層から30mmまでのDASを30〜75μmの範囲におさめることで適正な冷却速度が得られ、アルミニウム合金基板の表面から5〜70μmの深さまでの領域において、前述した所望の個数と比率を有するAl−Fe系金属間化合物を得ることができる。
前記表1に示すステップ1で本発明の合金組成範囲に調整されたアルミニウム合金地金を、半連続鋳造(DC鋳造)法などの常法に従って鋳造し、得られた鋳塊の面削を行い(ステップ2)、均質化処理(ステップ3)、熱間圧延(ステップ4)、冷間圧延(ステップ5)を施しアルミニウム合金圧延板を製造する。ステップ2の鋳造時の冷却速度は特に限定されるものではないが、所定のDASを得るためには冷却速度は0.1〜2.0℃/sとすることが好ましい。ステップ2の面削の条件は特に限定されるものではなく、面削量は3〜50mmとする。ステップ3の均質化処理は行わなくても良いが、実施する場合には、例えば500〜570℃で4時間以上等の条件で行うことが好ましい。
前記各工程は何れも金属間化合物の生成に関係するが、本発明の特性は特にステップ2の鋳造時における冷却速度が大きく影響している。
熱間圧延終了後は、冷間圧延(ステップ5)によって所要の製品板厚に仕上げる。冷間圧延の条件は特に限定されるものではなく、必要な製品板強度や板厚に応じて定めれば良く、圧延率を20〜80%とする。
冷間圧延の前あるいは冷間圧延の途中で、冷間圧延加工性を確保するために焼鈍処理を施してもよい。焼鈍処理を実施する場合には、例えばバッチ式の加熱ならば、200〜550℃で0〜10時間の条件で行うことが好ましい。
アルミニウム合金圧延板を磁気ディスク用として加工するには、該基板を円環状に打ち抜き(ステップ6)、大気中にて200〜450℃で30分以上の加圧焼鈍(ステップ7)を行い、平坦化したディスクブランクを切削加工、研削加工、脱脂、エッチング(ステップ8)して磁気ディスク用アルミニウム合金基板とする。ステップ8の研削加工の研削量は、必要な製品板厚等に応じて定められる値であり、研削量は5〜70μmとする。
ステップ1:表1に示す成分組成のアルミニウム合金溶湯を溶製した。
ステップ4:熱間圧延を行ない、板厚3.0mmの熱延板とした。
ステップ5:実施例No.7の合金以外の熱延板は中間焼鈍を行なわずに冷間圧延(圧延率66.7%)により最終板厚の1.0mmまで圧延し、圧延板とした。
実施例No.7は、まず第1の冷間圧延(圧延率33.3%)を施した後、バッチ式焼鈍炉を用いて、300℃で2時間の条件で中間焼鈍を行なった。次いで、第2の冷間圧延(圧延率50.0%)により最終板厚の1.0mmまで圧延し、圧延板とした。
ステップ7:ディスクブランクを340℃で4時間加圧焼鈍を施した。
ステップ8:端面加工後、研削加工を施した。
研削加工は#3000番のPVA砥石を用い、平面研削盤により両面同時に研削を行った。研削時間は5分とし、研削液は水溶性研削油剤を用いた。該研削加工を該砥石の交換を行わず10回繰り返し合計(50分)の研削量を測定した。
走査電子顕微鏡(SEM)により、研削加工後(表3に示す測定深さは研削量を模擬したもので、5〜70μmとした。)の磁気ディスク用アルミニウム合金基板表面の組成(COMP)像を倍率1000倍にて20視野撮影し、N1/N2を求めた。
Al−Fe系金属間化合物はCOMP像ではマトリックスに比べて白く写るため、白く写る粒子をAl−Fe系金属間化合物としてカウントした。その結果を表3に示す。
DASは、光学顕微鏡により鋳塊厚さ方向の断面組織観察を行い、2次枝法により測定した。測定は、鋳塊面削後の表層から30mm深さまでの断面を用いた。その結果を表3に示す。
研削速度は、5分×10回の研削量から研削時間1分当たりの研削量(μm/分)を全数測定し、その平均値を求めた。研削速度が15μm/分以上の場合を優良(◎印)とし、10〜15μm/分の場合を良好(○印)、10μm/分以下の場合を不良(×印)とした。結果を表3に示す。
研削後の平滑性は、研削後の磁気ディスク用アルミニウム合金基板表面の粗さ(算術平均粗さ、Ra)を全数測定し、その平均値で評価を行った。表面粗さRaが0.025μm以下の場合を優良(◎印)とし、0.025μmを超える場合を不良(×印)とした。評価結果を表3に示す。
一方比較例8〜15は何れも本発明の合金組成から外れる要素を含んでいたため、研削加工において、研削速度の低下が見られ、或いは生産性が劣った。
比較例9はCuの含有量が多かったために粗大なAl−Cu−Mg−Zn系金属間化合物が生成されたため、この金属間化合物が研削時に脱落し、研削後の表面平滑性が悪くなったものと推察できる。
比較例10はZnの含有量が多かったために粗大なAl−Cu−Mg−Zn系金属間化合物が生成されたため、この金属間化合物が研削時に脱落し、研削後の表面平滑性が悪くなったものと推察できる。
比較例11はCrの含有量が多かったために粗大なAl−Cr系金属間化合物が生成し、この金属間化合物が研削時に脱落し、研削後の表面平滑性が悪くなったものと推察できる。
比較例13はFeの含有量が多かったために最長径が1μm以上のAl−Fe系金属間化合物が多数生成されたため、この金属間化合物が研削時に脱落し、研削後の表面平滑性が悪くなったものと推察できる。
比較例14はFeの含有量が多かったために最長径が1μm以上のAl−Fe系金属間化合物が多数生成されたため、この金属間化合物が研削時に脱落し、研削後の表面平滑性が悪くなったものと推察できる。また、N1/N2が大きかったために合金基板の研削速度が悪く、生産性に影響する合金基板となった。
比較例15はFeの含有量が少なかったためにFeを添加した効果が得られず、研削速度が低下し、生産性に影響を及ぼす結果となった。
比較例16はCrの含有量が少なかったためにCrを添加した効果が得られず、研削速度が低下し、生産性に影響を及ぼす結果となった。
比較例19は鋳造からの冷却速度が遅かったためDASが大きくなり鋳造中に粗大な金属間化合物が生成されたため、この金属間化合物が研削時に脱落し、研削後の表面平滑性が悪くなったものと推察できる。さらに、N1/N2が小さすぎたために合金基板の研削速度が悪く、生産性に影響する合金基板となった。
比較例20〜22は、DASが小さかったために径の小さな金属間化合物が生成し、研削時に研削屑を排除する効果が十分に得られず、研削速度を低下させ、生産性が低下する結果となった。
Claims (1)
- Mg:2.0〜6.0mass%(以下、単に%と記す。)、Fe:0.01〜0.03%、Cu:0.005〜0.15%、Zn:0.05〜0.6%、Cr:0.01〜0.3%、Si:0.001〜0.03%を含有し、残部Alと不可避的不純物からなるアルミニウム合金基板であって、該アルミニウム合金基板の鋳塊の面削後表層から深さ30mmまでのデンドライト2次アーム間隔が30〜75μmであり、該アルミニウム合金基板はその表面から5〜70μmの深さまでの領域において、最長径が1〜2μmのAl−Fe系金属間化合物が1mm2当たり100〜500個で、かつ最長径が2〜7μmのAl−Fe系金属間化合物が1mm2当たり5〜100個で、かつ最長径が1〜2μmのAl−Fe系金属間化合物の1mm2当たりの個数(N1)と最長径が2〜7μmのAl−Fe系金属間化合物の1mm2当たりの個数(N2)の比率(N1/N2)が5〜75であるアルミニウム合金基板。
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