JP2009242843A - 磁気ディスク用アルミニウム合金基板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Mg:3.5以上4.5質量%以下、Si:0.001以上0.06質量%以下およびFe:0.001以上0.06質量%以下を含み、Cu:0.01質量%以上0.2質量%以下およびZn:0.001質量%以上0.4質量%以下のうち少なくとも1種を含有し、さらに必須成分として、Cr:0.10質量%超え0.3質量%以下およびMn:0.10質量%超え0.3質量%以下のうち少なくとも1種を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、最大長さが5μmを超える金属間化合物が1個/mm2以下であり、かつ平均結晶粒径が20μm以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
条件1:熱間圧延を終了時の圧延板の温度が250℃以上でその後の冷間圧延率が70%以上。
条件2:熱間圧延を終了時の圧延板の温度が250℃未満でその後の冷間圧延率が55%以上。
Mgは、アルミニウム合金基板の強度向上に有効な元素である。Mgの含有量が3.5質量%未満では、アルミニウム合金基板が十分な強度(耐力、硬度)を示さず、得られるアルミニウム合金基板の耐衝撃性が低下する。また、Mgの含有量が4.5質量%を超えると、高温での割れ感受性が高まり、熱間圧延中に割れが生じやすくなり圧延が困難になる。よって、Mgの含有量は3.5質量%以上4.5質量%以下の範囲とする。
Siは、通常、地金不純物としてアルミニウム合金中に混入するものであり、アルミニウム合金板を鋳造する工程等において、アルミニウム合金板の表面にMg−Si系金属間化合物を生じさせる。Siの含有量が0.06質量%を超えると、5μmを超える粗大なMg−Si系金属間化合物がアルミニウム合金板表面に生じる。そして、このアルミニウム合金板を使用してアルミニウム合金基板を作製すると、この粗大なMg−Si系金属間化合物は、ブランクの研削加工などの所謂鏡面加工時に、ブランク表面から脱落し、また、アルミニウム合金基板のメッキ前処理において、アルミニウム合金基板から溶解し、アルミニウム合金基板に窪みが生じ、Ni−Pメッキ膜の表面にピットを発生させ、平滑性を低下させる原因となる。それと共に、Mgのみが溶解し、Siが溶け残った場合も、メッキ前処理のジンケート工程で、Si上では亜鉛の置換反応が起こらないため、無電解Ni−Pメッキ処理でもSi上にNi−Pメッキ膜が成長せず、Ni−Pメッキ膜の密着性不足が生じ、磁性膜成膜時などの加熱によりNi−Pメッキ膜にフクレを生じ、平滑性を低下させる。また、Siの含有量が0.001質量%未満であると、地金が高純度となり、コストが高くなってしまう。よってSiの含有量は0.001質量%以上0.06質量%以下の範囲とする。
Feも、通常、地金不純物としてアルミニウム合金中に混入し、アルミニウム合金板を鋳造する工程等において、アルミニウム合金板の表面にAl−Fe系金属間化合物を生じさせる。このAl−Fe系金属間化合物は、メッキ前処理において、アルミニウム合金基板から溶解し、アルミニウム合金基板に窪みが生じ、Ni−Pメッキ膜表面にピットを発生させる原因となる。Feの含有量が0.06質量%を超える場合には、最大長さ5μmを超えるサイズのAl−Fe系金属間化合物が増加し、ブランクの研削加工などの所謂鏡面加工時にブランク表面から脱落し、アルミニウム合金基板に窪みが生じ、Ni−Pメッキ膜表面にピットを発生させる。また、Feの含有量が0.001質量%未満であると、地金が高純度となり、コストが高くなってしまう。よってFeの含有量は0.001質量%以上0.06質量%以下の範囲とする。
本発明のアルミニウム合金基板は、CuおよびZnのうち少なくとも1種を含有する。CuおよびZnは、1種のみを含有してもよいし、また、2種を同時に含有してもよい。
Cuは、アルミニウム合金基板のNi−Pメッキ性改善のために有効な元素である。Cuは、アルミニウム合金板中に均一に固溶し、メッキ前処理のジンケート工程において、ジンケート浴中のZnイオンがアルミニウム合金基板の表面へ均一に微細析出する効果を有する。これによってNi−Pメッキ膜表面のノジュールの発生を抑制することができる。Cuの含有量が0.01質量%未満では、前記の効果が期待できない。また、Cuの含有量が0.2質量%を超えると、メッキ前処理において、粒界にCuが析出して粒界部が過エッチングを受け、ピットを生じるとともに、Ni−Pメッキ膜表面のノジュールの発生が多大となる。よって、Cuの含有量は0.01質量%以上0.2質量%以下の範囲とする。
本発明のアルミニウム合金基板は、必須成分として、CrおよびMnのうち少なくとも1種を含有する。CuおよびZnは、1種のみを含有してもよいし、また、2種を同時に含有してもよい。
CrおよびMnは、アルミニウム合金板を鋳造する工程および均質化熱処理工程において、アルミニウム合金中に微細な化合物として析出し、再結晶粒の核生成の起点となるとともに結晶粒成長を抑制する働きにより組織を微細化する効果がある。CrおよびMnの含有量が0.10質量%以下では前記の効果が期待できない。そのため、冷延率を充分に取った場合であっても平均結晶粒径が20μmを超えてしまう。また、CrおよびMnの含有量が0.3質量%を超えると、初晶として粗大なAl−Cr系およびAl−Mn系の金属間化合物が晶出し、めっき欠陥の原因となるとともに、微細な化合物による結晶粒界のピン止め効果が強くなりすぎるため、圧延方向に伸張した粗大な結晶粒組織になってしまい,組織の異方性が大きくなり、Ni−Pメッキ膜表面の平滑性が悪化する。また、アルミニウム合金基板作製時の研削加工などの所謂鏡面加工等で脱落し、Ni−Pメッキ膜表面のピットの原因となる。よって、CrおよびMnの含有量は、0.10質量%超え0.3質量%以下の範囲とする。
不可避的不純物は、例えば、Ti、V、Zr、Ga、B等である。不可避的不純物の含有量は、それぞれ0.005質量%以下であって、その範囲内であれば、本発明のアルミニウム合金基板の特性に影響しない。
最大長さが5μmを超える金属間化合物は、鏡面加工時に脱落したり、メッキ前処理において溶解することによって、Ni−Pメッキ膜表面にピットを発生させる原因となる。したがって、最大長さ5μmを超える金属間化合物の個数密度は、1個/mm2以下とする。
Ni−Pめっきの前処理工程では、脱脂、酸エッチング、ジンケート処理が行われるが、その際、アルミニウム合金の各結晶方位での反応性の違いから、前処理後の表面には結晶粒に対応した凹凸が生じ、それがNi−Pめっき後の表面の微少うねりに影響を及ぼす。アルミニウム合金基板の平均結晶粒径を20μm以下まで微細化すれば、Ni−Pめっき面の微少うねりの値を低減できる。
本発明の合金基板は、前記の特定の成分および合金組成を有するアルミニウム合金鋳塊を、それぞれ特定の条件下に、均質化熱処理を行う工程、熱間圧延して所定の板厚とする工程、冷間圧延する工程、アルミニウム合金基板を製造する工程、および積み付け焼鈍をする工程を含む一連の工程に供することによって、最大長さが5μm以上の金属間化合物の生成を抑えつつ、平均結晶粒径を20μm以下に制御して、従来に比べめっき面のうねりが低減されたアルミニウム合金基板を製造することができる。以下、各工程について詳細に説明する。
まず、前記の所定の組成を有するアルミニウム合金を溶融して鋳造し、鋳塊を製造する。このとき、アルミニウム合金を溶解した際に、アルゴン(Ar)などの不活性ガスを溶湯中に吹き込んで脱水素処理を行うのが好ましい。また、5〜30mm/分の鋳造速度で鋳塊を製造するのが好ましい。
次に、前記の工程で製造したアルミニウム合金鋳塊に対して、面削後に500〜570℃で2時間以上の条件で均質化熱処理を行う。このとき、均質化熱処理温度が500℃以下であると、Mg2SiなどのMg−Si系金属間化合物が十分に固溶せず、最大長さが5μmを超える粗大なMg−Si系金属間化合物が残存するおそれがある。一方、均質化熱処理温度が570℃を超えると、鋳塊の表層部でバーニング(再溶融)が生じ、製造された磁気ディスク用アルミニウム合金板の外観が不良となるばかりでなく、ブランクの平坦度が悪くなる。また、均質化熱処理の保持時間が2時間未満であると、均質化熱処理を行う時間が短いために、Mg−Si系金属間化合物の固溶が不十分になる。したがって、均質化熱処理は、500〜570℃の温度条件で、2時間以上保持することで、鋳造中に析出したMg−Si系化合物をアルミマトリクス中に固溶させることができる。なお、面削は、鋳造した鋳塊の表面には、添加した各種金属の分布が不均一な領域(偏析)や酸化皮膜が存在するので、この部分を取り除いて、後工程で圧延した際に均一な金属組織を有するアルミニウム合金基板とするための処理である。面削量は、偏析の程度を勘案して適宜変更することができるが、その量は片面当たり3〜20mmの範囲が好ましい。
熱間圧延工程は、鋳塊の加工発熱による温度上昇を抑えるため、クーラントによりロールおよび鋳塊を冷却しながら実施される。熱間圧延工程では、490から400℃までの温度域を、30分以内の短時間で終了するような条件で熱間圧延を行う。これによって、熱間圧延終了まで金属間化合物が粗大化/析出等しないことになる。このとき、鋳塊の冷却は、均熱炉の炉開放あるいは鋳塊の取り出しにより鋳塊が温度低下、熱間圧延(粗/仕上)で圧延クーラントによる温度低下、また、熱間圧延時にラフバーあるいはアルミ板が圧延ロールとの接触により抜熱され、温度が低下することによって行われる。すなわち、この条件で熱間圧延を行うと、冷却速度が適度に速いために、Mg−Si系金属間化合物の粗大化を防ぐことができ、最大長さ5μmを超えるMg−Si系の金属間化合物の析出を抑えることができるため、最終的に高い平滑性を有する磁気ディスク用アルミニウム合金基板を再現性良く製造することが可能となる。一方、490から400℃までの温度域を、30分以内で終了できない冷却速度で冷却した場合には、冷却速度が遅すぎるためにMg−Si系金属間化合物の析出と成長が進み易い。そのため、最大長さが5μmを超えるMg−Si系金属間化合物が多数析出する。冷却速度は速いほどMg2Siは析出しにくいため、本発明においては、熱間圧延工程は、490〜400℃までの温度域を30分以内に終了する様に冷却されるように実施することが好ましい。
次に、熱間圧延工程で得られた熱間圧延板を冷間圧延する。積み付け焼鈍後の結晶粒径を20μm以下とするために必要な歪エネルギーを加えるためには、熱間圧延の終了温度が250℃未満の場合には冷間圧延率を70%以上とる必要がある。一方、熱間圧延終了温度が250℃以下の場合は、熱間圧延後の冷却工程で熱間圧延時に導入された歪エネルギーの解放が少ないため、冷間圧延率55%以上とすることで必要な歪エネルギーを加えることができる。以上のことから冷間圧延率は、熱間圧延の終了温度が250℃以上の場合は70%以上、250℃未満の場合は55%以上とする。
次に、得られた冷間圧延板を、必要に応じて調質し、これをプレス成形により所定の円盤状に打ち抜いてアルミニウム合金基板を製造する。
次に、得られたアルミニウム合金基板内の加工残留応力除去および平坦度の向上のために、円盤状のアルミニウム合金基板を、高平坦度のスペーサ間に積み付けし、全体を加圧しながら積み付け焼鈍する(一般に、この加圧焼鈍したものをブランクという)。この積み付け焼鈍は、30℃/時間以上の昇温速度で300〜360℃の温度範囲で1〜5時間保持した後、30℃/時間以上の冷却速度で200℃以下まで冷却した場合に、平均結晶粒径が20μm以下の組織が得られ、そのような微細な組織を有する基板では、めっき後の表面の微小うねりが従来の合金より低減可能である。このとき、積み付け焼鈍温度が上記の条件以上の場合には、結晶粒の粗大化が生じてしまう。なお、積み付け焼鈍温度が、300℃以下では、再結晶が不十分で、冷間圧延時に形成させる圧延方向に伸張した組織が残存するため、めっき後の表面の凹凸が不均一になるため、望ましくない。
各例において、表1に示すアルミニウム合金組成のアルミニウム合金鋳塊を用い、表2に示す条件で、均質化熱処理を行う工程、冷却する工程、熱間圧延板とする工程、冷間圧延する工程、アルミニウム合金基板を製造する工程、および積み付け焼鈍をする工程を含む一連の工程を行い、厚さ1.0mmのアルミニウム合金基板を製造した。
<リューダース模様の評価>
リューダース模様の評価は、ブランク表面を目視で観察して、圧延方向に垂直な方向に縞状の模様が認められないものは○、縞状の模様が認められなかったものを×とした。
ポリッシュの影響を除去して評価するため、研磨後のめっき基板を、THoT社のModel 4224を用いてマイクロウェービネス(波長が100〜400μmのうねり)の振幅を測定し、微小うねりの値が、20Å以上である場合を×、15以上20Å未満である場合を○、15Å以下である場合を◎とした。なお、一般に研磨前のうねりと研磨後のうねりには相関があるが、研磨条件によるバラツキが大きいため、めっき面のうねりの評価は、研磨前の測定値を用いた。なお、マイクロウェービネスは、うねり測定した値をフーリエ変換し特定の波長を選び、そのRMS(2乗平均平方根)の算出値である。(IDEMA JAPAN NEWS Vol.29、1999年3・4月を参照。)
表面欠陥の評価は、研磨(ポリッシュ)後の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で倍率×2000で50視野写真撮影し、研磨後のめっき基板表面に幅1μm以上のピットが認められないものを○、1つ以上認められたものは×とした。
比較例2は、Feの含有量が上限(0.06質量%)を超えるため、粗大なAl−Fe系金属間化合物が生成し、めっき面にピットを生じた。
比較例4は、Mgの含有量が上限(4.5質量%)を超えるため、熱間圧延中に板が割れ、圧延を続けることができなかった。
比較例6は、CrおよびMnの含有量が、いずれも下限(Cr:0.10質量%超え、Mn:0.10質量%超え)未満であるため、積み付け焼鈍時に再結晶粒の粗大化が生じた。
比較例9は、CuおよびZnの含有量が下限(Cu:0.01質量%、Zn:0.001質量%)未満のため、ジンケート面のうねりが粗く、めっき面のうねりが高かった。
比較例11は、均質化熱処理時間が下限(2h)未満であるため、Mg−Si系化合物の溶解が不十分で、5μmを超えるMg−Si系化合物が存在する。
比較例13は、規定の範囲(75%以上)より冷間圧延率が少ないため、再結晶粒径が20μmを超え、めっき面のうねりが高くなった。
比較例16は、積み付け焼鈍温度が規定(300〜360℃)より高いため、再結晶粒径が20μmを超え、めっき面のうねりが高くなった。
比較例19は、積み付け焼鈍後の冷却速度が規定の範囲(30℃/時間)外のため、再結晶粒径が20μmを超え、めっき面のうねりが高くなった。
Claims (2)
- Mg:3.5以上4.5質量%以下、Si:0.001以上0.06質量%およびFe:0.001〜0.06質量%を含み、Cu:0.01質量%以上0.2質量%以下およびZn:0.01質量%以上0.4質量%以下のうち少なくとも1種を含有し、さらに必須成分として、Cr:0.10質量%超え〜0.3質量%以下およびMn:0.10質量%超え〜0.3質量%以下のうち少なくとも1種を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金製の磁気ディスク用アルミニウム合金基板であって、
最大長さが5μmを超える金属間化合物が1個/mm2以下であり、かつ平均結晶粒径が20μm以下であることを特徴とするNi−Pめっき性に優れ微小うねりの発生が少ない磁気ディスク用アルミニウム合金基板。 - Mg:3.5以上4.5質量%以下、Si:0.001以上0.06質量%以下およびFe:0.001以上0.06質量%以下を含み、Cu:0.01質量%以上0.2質量%以下およびZn:0.01質量%以上0.4質量%以下のうち少なくとも1種を含有し、さらに必須成分として、Cr0.10質量%超え0.3質量%以下およびMn0.10質量%超え0.3質量%以下のうち少なくとも1種を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金鋳塊を、面削後に500〜570℃で2時間以上均質化熱処理を行い、
続いて、均質化熱処理されたアルミニウム合金鋳塊を熱間圧延して所定の板厚とし、その熱間圧延工程間において、490から400℃までの温度域を30分以内に終了し、以下の条件1または条件2の条件で熱間圧延および冷間圧延を行い、次に、得られた冷間圧延板から円盤状に打ち抜いて得られたアルミニウム合金基板を平坦度矯正のための積み付け焼鈍を、昇温速度30℃/時間以上、300〜360℃の温度範囲で1〜5時間保持、その後、冷却速度30℃/時間以上で200℃以下まで冷却する条件で行って、最大長さが5μmを超える金属間化合物が1個/mm2以下であり、かつ平均結晶粒径が20μm以下である磁気ディスク用アルミニウム合金基板を得ることを特徴とするNi−Pめっき性に優れ微小うねりの発生が少ない磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法。
条件1:熱間圧延を終了時の圧延板の温度が250℃以上でその後の冷間圧延率が70%以上。
条件2:熱間圧延を終了時の圧延板の温度が250℃未満でその後の冷間圧延率が55%以上。
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