JP2016135914A - 磁気ディスク用アルミニウム合金板、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク及び磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金板は、Mg:3.5〜5.5質量%、Fe:0.025質量%以下、Si:0.020質量%以下であり、且つ、Cu:0.010〜0.1質量%及びZn:0.05〜0.4質量%のうちの少なくとも一方を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなり、表面に存在するAl−O−C系介在物の絶対最大長が8μm未満、且つ、表面に存在する絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が3個/mm2以下である構成とした。
【選択図】なし
Description
具体的に、特許文献1には、Mg:3.5〜15質量%、Si:0.01〜0.1質量%、Fe:0.01〜0.1質量%、Cr:0.02〜0.35質量%を含有し、さらに、Cu:0.01質量%以上0.2質量%以下、及び、Zn:0.01質量%以上0.4質量%未満のうち少なくとも1種を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金で形成される磁気ディスク用アルミニウム合金基板が記載されている。そして、この特許文献1には、当該磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、表面におけるAl−Fe系金属間化合物の最大長さが7μm以下、Mg−Si系金属間化合物の最大長さが4μm以下であり、表面におけるAl3Mg2相の面積率が1%以下であるとする旨が記載されている。
また、図1のAに示すように、Al合金板の表面に絶対最大長が8μm以上のAl−O−C系介在物があり、図1のCに示すように、めっき前処理の酸エッチング処理によって当該Al−O−C系介在物の一部が溶け残った場合、当該溶け残ったAl−O−C系介在物はジンケート液と反応せず、亜鉛が析出しないため、めっきが正常に成長しない。そして、溶け残ったAl−O−C系介在物上に残留しためっき薬液がめっき後の加熱によって気化して膨張し、Ni−Pめっき膜とAl合金板の間にボイドが形成され、ブリスターを生じることが分かった。
また、磁気ディスク用アルミニウム合金板の表面に存在する絶対最大長が8μm以上のAl−O−C系介在物がないので、めっきピットやブリスターなどの微小なめっき欠陥を抑制することができる。
さらに、磁気ディスク用アルミニウム合金板の表面に存在する絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度を3個/mm2以下としているので、ノジュール及びガスピットなどの微小なめっき欠陥を抑制することができる。
本実施形態に係るAl合金板の化学組成は、Mg:3.5〜5.5質量%、Fe:0.025質量%以下、Si:0.020質量%以下であり、且つ、Cu:0.010〜0.1質量%及びZn:0.05〜0.4質量%のうちの少なくとも一方を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる。かかる化学組成は、JIS H 4000:2014に規定されている5086合金(Al−Mg系合金)に相当する。
以下、化学組成、Al−O−C系介在物の大きさ及び個数密度を規定した理由等について説明する。
Mgは、Al合金板として必要な所定の機械的特性を備える役割を担っている。機械的特性としては、例えば、耐力が挙げられる。耐力は、例えば、90MPa以上であるのが好ましい。耐力が90MPa以上であるとAl合金板として十分な強度を有することができる。
Mg量が前記した数値範囲にあるとAl合金板の機械的特性、例えば、耐力に優れたものとすることができる。Mg量が3.5質量%未満であると、Al合金板としての機械的特性に劣る。その一方で、Mg量が5.5質量%を超えると、熱間圧延割れが生じ易くなる。
なお、Mg量の下限は、3.7質量%とするのが好ましく、4.0質量%とするのがより好ましい。また、Mg量の上限は、5.4質量%とするのが好ましく、5.2質量%とするのがより好ましい。
Feは、通常、地金不純物としてAl合金中に混入するものであり、鋳造工程でAl−Fe系金属間化合物を晶出させる。
Fe量が0.025質量%以下であると、サブストレート製造時の表面性状及び品質に影響を及ぼさずに研削性を向上させることができる。
Fe量が0.025質量%を超えると、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が大きくなりすぎてしまう。Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が大きくなりすぎると、めっき前処理の酸エッチング処理を行った場合にAl−Fe系金属間化合物の一部が溶解されずに溶け残り、これが原因でノジュールやガスピットなどのめっき欠陥が発生する。また、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が大きくなりすぎると、切削、研削等の鏡面加工を行った際にAl−Fe系金属間化合物がAl合金板の表面から脱落して窪みが形成され、めっきピットが形成される。そのため、Fe量が0.025質量%を超えると、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。従って、Fe量を0.025質量%以下とする。
Siは、通常、地金不純物としてアルミニウム合金中に混入するものであり、Mg−Si系金属間化合物を生じさせる。
Si量が0.020質量%を超えると、Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長が大きくなりすぎてしまう。Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長が大きくなりすぎると、切削、研削等の鏡面加工を行った際にMg−Si系金属間化合物がAl合金板の表面から脱落して窪みが形成され、めっきピットが形成される。そのため、Si量が0.020質量%を超えると、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。また、絶対最大長が大きくなりすぎたMg−Si系金属間化合物は、エッチング処理によってMgのみが溶解してSiが残ることがある。めっき前処理のジンケート処理において、Si上にはZnの置換反応が起こらないため、無電解Ni−Pめっき処理でめっき膜が成長せず、Ni−Pめっき膜の密着性が不足する。そのため、磁性膜成膜時等の加熱により、Al合金板上に形成されたNi−Pめっき膜にブリスターが生じる。従って、Si量を0.020質量%以下とする。
また、本実施形態に係るAl合金板におけるMg−Si系金属間化合物の絶対最大長は4μm以下であるのが好ましく、3μm以下であるのがより好ましく、2μm以下であるのがさらに好ましい。
Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長は、Si量とMg量を前記した数値範囲内としたり、均質化熱処理の条件を後記する条件としたりすることで制御することができる。
Cuは、Al合金板中に均一に固溶し、めっき前処理のジンケート処理において、ジンケート浴中のZnイオンをAl合金板の表面へ均一に微細析出させることができる。つまり、Cu量を前記した数値範囲内で含むことによって、ジンケート皮膜を均一に形成させることができ、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生を抑制することができる。すなわち、Cuには、前記範囲で含むことでAl合金板のNi−Pめっき性を向上させる効果がある。
その一方で、Cu量が0.1質量%を超えると粒界にCuが析出するため、めっき前処理の酸エッチング処理において粒界部が過エッチングを受けて窪みが形成され、めっきピットを生じるとともに、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生が多大となる。
Cu量の下限は0.02質量%とするのが好ましく、上限は0.05質量%とするのが好ましい。
その一方で、Zn量が0.4質量%を超えると、Znの析出核が大きくなるのに伴い、めっき前処理の酸エッチング処理で形成される窪みも大きくなる。そのため、Zn量が0.4質量%を超えるとめっきピットが形成され、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。また、Zn量が0.4質量%を超えると、粒界にAl−Mg−Zn系金属間化合物が析出するため、めっき前処理の酸エッチング処理において粒界部が過エッチングを受け、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生が多大となる。さらに、Zn量が0.4質量%を超えると、Al−Mg−Zn系金属間化合物も溶解して窪みとなり、それがめっき後も残存する(めっきピットが形成される)。そのため、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。
Zn量の下限は0.1質量%とするのが好ましく、上限は0.35質量%とするのが好ましい。さらに好ましいZn量の下限値は0.15質量%である。
本発明に係るAl合金板を構成する化学組成の基本成分は前記のとおりであり、残部成分はAl及びその他の不可避不純物である。その他の不可避不純物としては、例えば、Ti、Zr、V、Bなどが挙げられる。前記したFe、Si、Mn及びNiといった不可避不純物(地金不純物)及びここで挙げたその他の不可避不純物は、溶解時に不可避的に混入する不純物である。なお、前記したその他の不可避不純物は、個々に0.005質量%以下、合計で0.015質量%以下であれば本発明の効果を阻害しないので、前記条件を満たす限り前記したその他の不可避不純物や、本明細書で説明した元素以外の元素を積極的に含有させてもよい(つまり、本発明の技術的範囲に含まれる。)。
本実施形態に係るAl合金板は、表面に存在するAl−O−C系介在物の絶対最大長を8μm未満としている。つまり、本実施形態に係るAl合金板は、絶対最大長が8μm以上のAl−O−C系介在物が表面に存在しないということである。
このように、Al合金板の表面に存在するAl−O−C系介在物の絶対最大長を8μm未満とすると、Al−O−C系介在物の大きさが小さいので、切削、研削等の鏡面加工時にAl合金板の表面から当該Al−O−C系介在物が脱落して粗大な窪みが形成されるのを抑制することができる。従って、Ni−Pめっき膜を形成した際、微小なめっき欠陥が生じるのを抑制することができる。
一方、Al合金板の表面に存在するAl−O−C系介在物の絶対最大長が8μm以上になると、切削、研削等の鏡面加工時にAl合金板の表面から当該Al−O−C系介在物が脱落して粗大な窪みが形成される。そのため、Al合金板にNi−Pめっき膜を形成した際にめっきピットが発生したり、めっき後の加熱によってブリスターが発生したりする。つまり、微小なめっき欠陥が生じる。
Al合金板の表面に存在する絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物は、鋳造工程でAl−Fe系金属間化合物の核となり、当該Al−Fe系金属間化合物を粗大化させる。
当該Al−O−C系介在物の個数密度が3個/mm2以下であると、鋳造工程で当該介在物を核としてAl−Fe系金属間化合物が粗大化するのを抑制することができる。
なお、当該Al−O−C系介在物の個数密度は2個/mm2以下とするのが好ましく、1個/mm2以下とするのがより好ましい。
本実施形態に係るAl合金板は、Al合金板の表面に存在する絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度を5個/100cm2以下とするのが好ましい。通常、Al−O−C系介在物は酸エッチング液で溶けやすく、8μm以下の介在物が表面に残存することは少ないが、介在物の研削表面への露出の状態によっては溶け残ることがある。Al−O−C系介在物とNi−Pめっき膜との密着度は高くないため、Ni−Pめっき膜を形成した後に加熱すると、残存した介在物の箇所でブリスターが発生しやすい。しかしながら、当該Al−O−C系介在物の個数密度を5個/100cm2以下にすると、Al−O−C系介在物の大きさが小さく、また、Al−O−C系介在物の個数密度が低いので、Ni−Pめっき膜を形成した後に加熱を行ったとしても、ブリスターを発生し難くすることができる。従って、このような構成とする場合は、ブリスターを抑制するという課題があるときにこれを解決することができる。
一方、Al合金板の表面に存在する絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が5個/100cm2を超えると、当該介在物の数が多いため、全ての介在物をめっき前処理の酸エッチング処理によって完全に除去できるとは限らず、確率的に溶け残りが生じやすくなる。そのため、Ni−Pめっき膜を形成した後に行う加熱によってブリスターが発生し易くなる。また、Al合金板の表面に存在する絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が5個/100cm2を超えると、めっき前処理の酸エッチング処理によって完全に溶けたり、切削、研削等の鏡面加工時にAl合金板の表面から当該Al−O−C系介在物が脱落したりしてAl合金板の表面に窪みが形成され易くなる。そのため、Ni−Pめっき膜を形成した際にめっきピットが生じ易くなる。
また、前記した本実施形態に係るAl合金板において、表面に存在する絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度を5個/100cm2以下とすれば、ブリスター、めっきピットを抑制することができる。
本実施形態に係るブランクは、前記した本実施形態に係るAl合金板を必要に応じて調質し、これをプレス成形により所定の円盤状に打ち抜くことで製造される。
また、本実施形態に係るサブストレートは、前記した本実施形態に係るブランクに対して研削加工(鏡面加工)を行うことにより製造される。
なお、本実施形態に係るブランク及びサブストレートの製造方法については後記する。
また、本実施形態に係るブランク及びサブストレートは、前記した実施形態に係るAl合金板と同様、表面に存在する絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度を5個/100cm2以下とすれば、ブリスター、めっきピットを抑制することができる。
本実施形態に係るAl合金板は、磁気ディスク用の基板を製造する一般的な条件の製造方法及び設備によって製造することができる。例えば、前記した化学組成のAl合金を溶解し、前記した化学組成に調整した鋳塊を鋳造する工程、この鋳塊に対して均質化熱処理を行う工程、均質化熱処理を行った鋳塊を熱間圧延して所定の板厚の熱間圧延板を得る工程、熱間圧延板を冷間圧延して冷間圧延板を得る工程を含む一連の工程に供することによって製造することができる。なお、必要に応じて、冷間圧延する工程の前か、又は冷間圧延する工程の途中で中間焼鈍を行ってもよい。
(1)Al−C系介在物の含有量が少ない地金を用いる。なお、当該地金は、三層電解法などにより精錬することによって得ることができる。
(2)溶湯の精錬時に適当な量のフラックスを用い、発生したガスの気泡(例えばAlCl3)により、Al−O−C系の介在物を溶湯から浮上分離させる。
(3)溶湯の精錬時に適当な量のArガス及びCl2ガスのうちの少なくとも一方のガスを吹き込み、Al−O−C系介在物を溶湯から浮上分離させる。
(4)溶湯の脱ガス処理の際に適当な量のArガス及びCl2ガスのうちの少なくとも一方のガスを吹き込み、Al−O−C系介在物を溶湯から浮上分離させる。なお、溶湯の脱ガス処理は、例えば、Porous Plug(ポーラスプラグ)やSpinning Nozzle Inert Flotation(SNIF)にて行うことができる。脱ガス処理時の溶湯の滞留時間や、SNIFを用いる場合のノズル回転数は任意に設定可能であるが介在物を効率的に除去するためには、ガス量を例えば2〜4Nm3/時間とするのが好ましく、ノズル回転数を例えば400〜600rpmとするのが好ましく、滞留時間を例えば3〜8分とするのが好ましい。
(5)フィルタリングの際に、目の細かいフィルタを用いて、フィルタ内でAl−O−C系介在物を捕捉する。フィルタは、例えば、アルミナなどで作製されたセラミックチューブを用いることができる。
なお、熱間圧延終了温度が300℃前後を下回ると、その後の冷間圧延工程でリューダース模様が生じる。リューダース模様は、研削後の表面には残らないため、磁気ディスク基板としての機能は損なわないが、研削前のAl合金板(ブランク)の美観が損なわれる。従って、これを防止するため、熱間圧延終了温度は300℃以上とするのが望ましい。
ここで、冷間圧延の前か、又は冷間圧延の途中で中間焼鈍を行う場合は、中間焼鈍後に70%以上の冷間圧延を行うのが好ましい。ここまでの工程を行うことにより、本実施形態に係るAl合金板を製造することができる。
本実施形態に係るブランクは、例えば、ブランクを製造する工程、及び、積み付け焼鈍をする工程を行うことで製造することができる。
本実施形態に係るサブストレートは、例えば、次のようにして製造することができる。
両面研削機に予めセットされたキャリアのポケット内に前記したブランクをセットする。そして、砥石により目標の板厚になるまで研削加工(鏡面加工)すると、本実施形態に係るサブストレートを製造することができる(なお、当該サブストレートは、グラインドサブストレートと呼称されることもある。)。
このようにして製造された本実施形態に係るサブストレートの化学組成や金属組織は前記したブランクと同様であるが、鏡面加工を行っているので、ブランクと比較して高い平滑性を具備している。
そして、このようにして製造したサブストレートの表面を酸エッチング処理し、無電解Ni−Pめっき膜を形成し、その表面を研磨する(なお、無電解Ni−Pめっき膜を形成したサブストレートは、めっきサブストレートと呼称されることもある。)。次いで、このサブストレート上に、磁気特性を高めるための下地膜、Co基合金からなる磁性膜、及び磁性膜を保護するためのC(カーボン)からなる保護膜などをスパッタリング等により形成することで、磁気ディスクを作製することができる。
なお、前記した酸エッチング処理、無電解Ni−Pめっき膜、下地膜、磁性膜、保護膜の形成は、磁気ディスクを製造するにあたって一般的に実施される条件で行うことができる。
Al−O−C系介在物の絶対最大長や個数密度の測定方法は、絶対最大長が5μm以上の場合と、2μm未満の場合との2種類がある。
絶対最大長が5μm以上のAl−O−C系介在物のサイズ及び個数密度の測定は、切削加工により鏡面としたAl合金板の表面に対して、光学顕微鏡を用いて任意の倍率(例えば対物レンズ5倍、接眼レンズ10倍)で明視野像にて観察することによって行うことができる。観察するにあたって微分干渉フィルタを使用してもよい。また、観察は、外径95mm、内径25mmの円環形状の片面全面(面積約6600mm2)について行うのが好ましい。Al−O−C系介在物の絶対最大長は、光学顕微鏡の明視野像にて、粒子中で最も離れた2点間の距離を測定して算出することができる。
製造した冷間圧延板を外径95mm、内径25mmの円環形状に打ち抜き、20枚ずつ積み付け、320℃で3時間焼鈍した後、30℃/時間の冷却速度で加圧焼鈍した。そして、端面加工を行い、3.5インチタイプのブランクを製造した。そして、ブランク表面(両面)を砥石によって片面10μm研削加工(鏡面加工)してサブストレートを製造した。
〔2〕表面に存在する絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度
〔3〕表面に存在する絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度
絶対最大長が5μm以上のAl−O−C系介在物のサイズ及び個数密度の測定は、切削加工により鏡面としたサブストレートの表面に対して、光学顕微鏡(対物レンズ5倍、接眼レンズ10倍)を用いて明視野像にて観察することにより行った。観察するにあたって微分干渉フィルタを使用した。また、観察は、外径95mm、内径25mmの円環形状の片面全面(面積約6600mm2)について行った。Al−O−C系介在物の絶対最大長は、光学顕微鏡の明視野像にて、粒子中で最も離れた2点間の距離を測定して算出した。
〔5〕Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長
鏡面加工したサブストレートの表面にSEM−EDS(日本電子株式会社製JSM−7001M)を用いて1000倍の倍率で20視野(0.2mm2)撮影し、COMPO像(組成像)を得た。母相よりも白く写っている部分をAl−Fe系金属間化合物とみなし、母相よりも黒く写っている部分をMg−Si系金属間化合物とみなしてそれぞれの絶対最大長(μm)を測定した。
鏡面加工したサブストレートを、めっき前処理液(上村工業製AD−68F)に浸漬し、50℃、5分間の脱脂を行った。その後、めっき前処理液(上村工業株式会社製AD−101F)で68℃、2分間の酸エッチングを行い、30%硝酸で25℃、1分間浸漬し、デスマット処理を行った。デスマット処理を行ったサブストレートに、ジンケート処理液(上村工業株式会社製AD−301F−3X)を用いて20℃、30秒間のジンケート処理を行い、一旦、30%硝酸でZnを溶解させた後に、再度、20℃、15秒間のジンケート処理を行った。その後、ジンケート処理を行ったサブストレートを、無電解Ni−Pめっき液(上村工業株式会社製ニムデン(登録商標)HDX)に浸漬し、90℃、2時間の無電解Ni−Pめっき処理を行い、片面10μm程度の無電解Ni−Pめっき膜を形成させることで、めっきサブストレートを作製した。そして、無電解Ni−Pめっき膜を形成しためっきサブストレートの表面をコロイダルシリカ系の研磨剤(株式会社フジミインコーポレーティッド製DISKLITE Z5601A)とパッド(カネボウ株式会社(現アイオン株式会社)製のN0058 72D等)を用いて研磨することで、磁性膜の成膜を行う前の状態のめっきサブストレートを作製した。
そして、当該サブストレートに対して光学顕微鏡を用いて50倍(対物レンズ5倍、接眼レンズ10倍)の倍率で明視野像を得た。なお、撮影にあたって微分干渉フィルタを使用し、約6600mm2を観察した。観察の結果、めっきピット、ガスピット及びノジュールはそれぞれ、幅4μm未満のものしか確認されなかった場合を良好(○)と評価し、幅4μm以上のものが確認された場合を不良(×)と評価した。表1の該当する欄にこれらの評価結果を記す。また、介在物があれば、倍率を500倍(対物レンズ50倍、接眼レンズ10倍)で絶対最大長を測定した。
前記〔6〕でNi−Pめっき膜を形成したサブストレートに対し、めっき成膜後の加熱を模擬するため、300℃で60分間の加熱を行った。
その後、ブルカーナノ社製ContourGT X3(非接触3次元光干渉型表面形状粗さ計)を用いて対物レンズ×10、FOV×1、VSIモードで表面を測定した。Ni−Pめっき膜を観察し、ブリスターの発生状況を確認した。幅4μm未満のブリスターしか確認されなかったものを平滑性が良好(○)とし、幅4μm以上のブリスターが確認されたものを不良(×)とした。
冷間圧延後の冷間圧延板の一部を切り出し、前記加圧焼鈍と同等の条件、すなわち、320℃で3時間の加圧焼鈍を行った。そして、焼鈍した冷間圧延板からJIS Z 2241:2011に準拠して試験片を作製し、金属材料引張試験を行うことにより、耐力(MPa)を求めた。耐力が90MPa以上であるものを良好と評価し、90MPa未満のものを不良と評価した。
No.13に係るサブストレートは、Mg量が多すぎたため、熱間圧延割れが生じた。従って、板を作製することができず、それ以降の評価ができなかった。
Claims (4)
- Mg:3.5〜5.5質量%、
Fe:0.025質量%以下、
Si:0.020質量%以下であり、且つ、
Cu:0.010〜0.1質量%及びZn:0.05〜0.4質量%のうちの少なくとも一方を含有し、
残部がAl及び不可避不純物からなり、
表面に存在するAl−O−C系介在物の絶対最大長が8μm未満、且つ、
表面に存在する絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が3個/mm2以下
であることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金板。 - 表面に存在する絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が5個/100cm2以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金板。
- 請求項1または請求項2に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金板を円盤状に打ち抜いたことを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク。
- 請求項3に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクを使用したことを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート。
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