JP2016135914A - 磁気ディスク用アルミニウム合金板、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク及び磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート - Google Patents

磁気ディスク用アルミニウム合金板、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク及び磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート Download PDF

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佳織 寺田
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Abstract

【課題】微小なめっき欠陥を抑制した磁気ディスク用アルミニウム合金板を提供する。
【解決手段】本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金板は、Mg:3.5〜5.5質量%、Fe:0.025質量%以下、Si:0.020質量%以下であり、且つ、Cu:0.010〜0.1質量%及びZn:0.05〜0.4質量%のうちの少なくとも一方を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなり、表面に存在するAl−O−C系介在物の絶対最大長が8μm未満、且つ、表面に存在する絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が3個/mm2以下である構成とした。
【選択図】なし

Description

本発明は、磁気ディスク用アルミニウム合金板、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク及び磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレートに関する。
コンピュータ等の記録媒体として使用される磁気ディスクは、非磁性の基板に磁性膜を形成されてなる。一般的に、当該基板には、軽量且つ高い剛性を有し、平滑な表面であることが要求されるため、JIS H 4000:2014に規定の5086合金(Al−Mg系合金)が用いられている。
この基板は、前記合金を用いて板材として製造された後、例えば、当該板材の表面を鏡面加工し、脱脂処理、酸エッチング処理、デスマット処理、1stジンケート処理、硝酸剥離処理、2ndジンケート処理、無電解Ni−Pめっき処理が順に行われる。そして、無電解Ni−Pめっき膜の上に磁性膜等が形成され、磁気ディスクが製造される。
磁気ディスクに用いられるアルミニウム(Al)合金基板が、例えば、特許文献1、2に記載されている。
具体的に、特許文献1には、Mg:3.5〜15質量%、Si:0.01〜0.1質量%、Fe:0.01〜0.1質量%、Cr:0.02〜0.35質量%を含有し、さらに、Cu:0.01質量%以上0.2質量%以下、及び、Zn:0.01質量%以上0.4質量%未満のうち少なくとも1種を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金で形成される磁気ディスク用アルミニウム合金基板が記載されている。そして、この特許文献1には、当該磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、表面におけるAl−Fe系金属間化合物の最大長さが7μm以下、Mg−Si系金属間化合物の最大長さが4μm以下であり、表面におけるAl3Mg2相の面積率が1%以下であるとする旨が記載されている。
また、特許文献2には、Mg:3.5質量%以上4.5質量%以下、Si:0.001質量%以上0.06質量%以下及びFe:0.001質量%以上0.06質量%以下を含み、Cu:0.01質量%以上0.2質量%以下及びZn:0.001質量%以上0.4質量%以下のうち少なくとも1種を含有し、さらに必須成分として、Cr:0.10質量%超え0.3質量%以下及びMn:0.10質量%超え0.3質量%以下のうち少なくとも1種を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、最大長さが5μmを超える金属間化合物が1個/mm2以下であり、かつ平均結晶粒径が20μm以下である磁気ディスク用アルミニウム合金基板が記載されている。
特許文献1に記載されている磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、強度が優れ、Ni−Pめっき後の表面の平滑性に優れている。また、特許文献2に記載されている磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、めっきピットなどの表面欠陥(以下の説明では、めっき表面に生じた欠陥を「めっき欠陥」という。)が少ないとともに微細な結晶粒組織を有するため、Ni−Pめっき表面の微小うねりを小さくすることができる。
特開2009−79286号公報 特許第5199714号公報
しかしながら、近年、さらに磁気ディスクの高記録密度化が進むにつれて、特許文献1、2に記載されているような従来技術では許容されていた幅100nm以下の微小な凹みや、高さ10nm以下の微小な、なだらかな突起が問題視されるようになってきた。当該凹みは、Ni−Pめっき表面に形成されるガスピットと呼ばれるものであり、当該突起は、ブリスターと呼ばれるものである。なお、これらガスピット及びブリスターもめっき欠陥である。
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、微小なめっき欠陥を抑制した磁気ディスク用アルミニウム合金板、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク及び磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレートを提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究開発を行ったところ、磁気ディスク用アルミニウム合金板(以下、単に「Al合金板」ということもある。)の表面に存在するAl−O−C系介在物が下記3つの存在形態をとることによって、それぞれ微小なめっき欠陥に繋がることを究明した。
〔1〕図1のAに示すように、Al合金板の表面に絶対最大長が8μm以上のAl−O−C系介在物があり、当該Al−O−C系介在物がめっき前処理の酸エッチング処理によって完全に溶けた場合、図1のBに示すように、Al合金板の表面に窪み(ピット)が形成される。そのため、Ni−Pめっき膜を形成した際にめっきピットが生じる。また、Al合金板の表面に絶対最大長が8μm以上のAl−O−C系介在物があると、切削、研削等の鏡面加工時にAl合金板の表面から当該Al−O−C系介在物が脱落することがある。この場合も図1のBに示すように、Al合金板の表面に窪みが形成される。そのため、Al合金板にNi−Pめっき膜を形成した際にめっきピットが生じる。
また、図1のAに示すように、Al合金板の表面に絶対最大長が8μm以上のAl−O−C系介在物があり、図1のCに示すように、めっき前処理の酸エッチング処理によって当該Al−O−C系介在物の一部が溶け残った場合、当該溶け残ったAl−O−C系介在物はジンケート液と反応せず、亜鉛が析出しないため、めっきが正常に成長しない。そして、溶け残ったAl−O−C系介在物上に残留しためっき薬液がめっき後の加熱によって気化して膨張し、Ni−Pめっき膜とAl合金板の間にボイドが形成され、ブリスターを生じることが分かった。
〔2〕他方、図2のAに示すように、Al合金板の表面に形成された絶対最大長が2μm未満(好ましくは0.5μm以上2μm未満)であるAl−O−C系介在物の個数密度が3個/mm2を超えると、当該Al−O−C系介在物を核として粗大なAl−Fe系金属間化合物が形成される。そのため、図2のBに示すように、めっき前処理の酸エッチング処理で当該粗大なAl−Fe系金属間化合物が完全に除去されずに一部が溶け残り、Al合金板の表面に粗大な窪みが形成される。
そして、図2のBに示す状態のAl合金板に対してジンケート処理を行うと、図2のCに示すように、溶け残ったAl−Fe系金属間化合物上に亜鉛が異常に析出することがある(Al−Fe系金属間化合物の周辺に、過剰にZn粒子が析出することがある)。この状態で無電解Ni−Pめっき処理を行うと、図2のDに示すように、亜鉛が異常に析出した部分にNi−Pめっき膜が異常に析出し、ドーム状の突起(所謂ノジュール)が形成される。ノジュールは、めっき後ポリッシュで除去することができるが、平滑性を阻害し、ポリッシュ時間を増加させるため、生産性が悪くなる。
また、図2のCに示されている亜鉛が異常に析出したAl合金板に対してめっき前処理の洗浄工程を行うと、図2のEに示すように、前記溶け残ったAl−Fe系金属間化合物が亜鉛とともに脱落し、Al面が露出することがある。図2のEに示す状態で無電解Ni−Pめっき処理を行うと、図2のFに示すように、Al面が露出した部分にはNi−Pめっき膜が成膜しないばかりか、めっき液に含まれる次亜リン酸とAlが反応し、H2ガス発生の起点となるため、ガスピットが形成される。
他方、図2のBに示す状態のAl合金板に対してジンケート処理を行うと、図2のGに示すように、亜鉛が不均一に析出する場合や、亜鉛が析出しない場合がある。図2のGに示す状態で無電解Ni−Pめっき処理を行うと、図2のHに示すように、溶け残ったAl−Fe系金属間化合物がカソードとなり、H2ガスを発生させ続けることになる。従って、その部分にはNi−Pめっき膜が成膜せず、ガスピットが形成される。
〔3〕また、Al合金板の表面に、絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が5個/100cm2を超えると、図1のA〜Cに示した現象と同じ現象が生じる。
〔4〕なお、本発明者らが確認したところ、表面に存在する絶対最大長が0.5μm未満であるAl−O−C系介在物は、サイズが微細であるので、めっきピット、ガスピット、ブリスター、ノジュールなどのめっき欠陥の発生に殆ど影響しなかった。また、表面に存在する絶対最大長が2μm以上5μm未満であるAl−O−C系介在物は、サイズが適切であるので、めっきピット、ガスピット、ブリスター、ノジュールなどのめっき欠陥の発生に殆ど影響しなかった。そのため、これらのAl−O−C系介在物に関しては個数密度等についての規定を設けなくてもよい。
本発明者らは、前記〔1〕〜〔3〕に係る知見から、これらをそれぞれ解決することによって、微小なめっき欠陥を抑制できること、つまり、幅4μm以上のめっきピット、ガスピット及びブリスター並びに幅4μm以上のノジュールの発生を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明者らは、前記〔1〕、〔2〕に係る知見から、幅4μm以上のめっきピット、ガスピット及びブリスターの発生と、幅4μm以上のノジュールの発生と、を抑制でき、前記〔3〕に係る知見から、幅4μm以上のめっきピット及びブリスターの発生を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
前記課題を解決した本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金板は、Mg:3.5〜5.5質量%、Fe:0.025質量%以下、Si:0.020質量%以下であり、且つ、Cu:0.010〜0.1質量%及びZn:0.05〜0.4質量%のうちの少なくとも一方を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなり、表面に存在するAl−O−C系介在物の絶対最大長が8μm未満、且つ、表面に存在する絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が3個/mm2以下である構成とした。
このように、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金板は、化学組成を特定し、適切な製造条件(熱処理と加工)によって製造されているので、磁気ディスク用アルミニウム合金板として必要な機械的特性、例えば、耐力を確実に得ることができる。
また、磁気ディスク用アルミニウム合金板の表面に存在する絶対最大長が8μm以上のAl−O−C系介在物がないので、めっきピットやブリスターなどの微小なめっき欠陥を抑制することができる。
さらに、磁気ディスク用アルミニウム合金板の表面に存在する絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度を3個/mm2以下としているので、ノジュール及びガスピットなどの微小なめっき欠陥を抑制することができる。
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金板は、表面に存在する絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が5個/100cm2以下であるのが好ましい。
このように、磁気ディスク用アルミニウム合金板の表面に絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度を5個/100cm2以下としているので、めっきピット及びブリスターなどの微小なめっき欠陥を抑制することができる。
また、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクは、前記した磁気ディスク用アルミニウム合金板を円盤状に打ち抜いたという構成を採用する。
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクは、前記した磁気ディスク用アルミニウム合金板を円盤状に打ち抜いたものであるので、微小なめっき欠陥が発生し難い。
さらに、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレートは、前記した磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクを使用したという構成を採用する。
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレートは、前記した磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクを使用しているので、微小なめっき欠陥が発生し難い。
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金板は、化学組成を特定し、表面に存在するAl−O−C系介在物の大きさと個数密度を制御しているため、微小なめっき欠陥を抑制することができる。
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクは、前記した磁気ディスク用アルミニウム合金板を円盤状に打ち抜いたものであるので、微小なめっき欠陥が発生し難い。
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレートは、前記した磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクを使用しているので、微小なめっき欠陥が発生し難い。
磁気ディスク用アルミニウム合金板の表面に、絶対最大長が8μm以上のAl−O−C系介在物があった場合に生じる微小なめっき欠陥(めっきピット及びブリスター)を説明する概念図である。 磁気ディスク用アルミニウム合金板の表面に、絶対最大長が2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が3個/mm2を超えた場合に生じる微小なめっき欠陥(ノジュール及びガスピット)を説明する概念図である。
以下、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金板、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク(以下、単に「ブランク」という。)及び磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート(以下、単に「サブストレート」という。)の一実施形態について詳細に説明する。
[Al合金板]
本実施形態に係るAl合金板の化学組成は、Mg:3.5〜5.5質量%、Fe:0.025質量%以下、Si:0.020質量%以下であり、且つ、Cu:0.010〜0.1質量%及びZn:0.05〜0.4質量%のうちの少なくとも一方を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる。かかる化学組成は、JIS H 4000:2014に規定されている5086合金(Al−Mg系合金)に相当する。
このような化学組成からなるAl合金板において、表面に存在するAl−O−C系介在物の絶対最大長が8μm未満、且つ、表面に存在する絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度を3個/mm2以下としている。なお、本明細書における「絶対最大長」とは、例えば、光学顕微鏡で観察したり、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)像(二次電子像)などで観察したりした際に認識される該当粒子上で、最も離れた2点間の距離をいう。
以下、化学組成、Al−O−C系介在物の大きさ及び個数密度を規定した理由等について説明する。
(Mg:3.5〜5.5質量%)
Mgは、Al合金板として必要な所定の機械的特性を備える役割を担っている。機械的特性としては、例えば、耐力が挙げられる。耐力は、例えば、90MPa以上であるのが好ましい。耐力が90MPa以上であるとAl合金板として十分な強度を有することができる。
Mg量が前記した数値範囲にあるとAl合金板の機械的特性、例えば、耐力に優れたものとすることができる。Mg量が3.5質量%未満であると、Al合金板としての機械的特性に劣る。その一方で、Mg量が5.5質量%を超えると、熱間圧延割れが生じ易くなる。
なお、Mg量の下限は、3.7質量%とするのが好ましく、4.0質量%とするのがより好ましい。また、Mg量の上限は、5.4質量%とするのが好ましく、5.2質量%とするのがより好ましい。
(Fe:0.025質量%以下)
Feは、通常、地金不純物としてAl合金中に混入するものであり、鋳造工程でAl−Fe系金属間化合物を晶出させる。
Fe量が0.025質量%以下であると、サブストレート製造時の表面性状及び品質に影響を及ぼさずに研削性を向上させることができる。
Fe量が0.025質量%を超えると、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が大きくなりすぎてしまう。Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が大きくなりすぎると、めっき前処理の酸エッチング処理を行った場合にAl−Fe系金属間化合物の一部が溶解されずに溶け残り、これが原因でノジュールやガスピットなどのめっき欠陥が発生する。また、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が大きくなりすぎると、切削、研削等の鏡面加工を行った際にAl−Fe系金属間化合物がAl合金板の表面から脱落して窪みが形成され、めっきピットが形成される。そのため、Fe量が0.025質量%を超えると、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。従って、Fe量を0.025質量%以下とする。
Fe量の下限は特に規定しないが、前記したように地金不純物としてAl合金中に混入するものであるから、下限を規定するとすれば、0質量%超ということになる(つまり、0質量%を含まない)。なお、Fe量を0.005質量%未満とするには高純度な地金を用いる必要があり、非常に高コストとなるため現実的ではない。従って、コストの面からFe量の下限は0.005質量%とするのが好ましい。Fe量の下限は0.009質量%とするのが好ましく、上限は0.021質量%とするのが好ましい。
(Si:0.020質量%以下)
Siは、通常、地金不純物としてアルミニウム合金中に混入するものであり、Mg−Si系金属間化合物を生じさせる。
Si量が0.020質量%を超えると、Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長が大きくなりすぎてしまう。Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長が大きくなりすぎると、切削、研削等の鏡面加工を行った際にMg−Si系金属間化合物がAl合金板の表面から脱落して窪みが形成され、めっきピットが形成される。そのため、Si量が0.020質量%を超えると、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。また、絶対最大長が大きくなりすぎたMg−Si系金属間化合物は、エッチング処理によってMgのみが溶解してSiが残ることがある。めっき前処理のジンケート処理において、Si上にはZnの置換反応が起こらないため、無電解Ni−Pめっき処理でめっき膜が成長せず、Ni−Pめっき膜の密着性が不足する。そのため、磁性膜成膜時等の加熱により、Al合金板上に形成されたNi−Pめっき膜にブリスターが生じる。従って、Si量を0.020質量%以下とする。
Si量の下限は特に規定しないが、前記したように地金不純物としてAl合金中に混入するものであるから、下限を規定するとすれば、0質量%超ということになる(つまり、0質量%を含まない)。なお、Si量を0.005質量%未満とするには高純度な地金を用いる必要があり、非常に高コストとなるため現実的ではない。従って、Si量の下限は0.005質量%とするのが好ましい。Si量の下限は0.008質量%とするのが好ましく、上限は0.015質量%とするのが好ましい。
また、本実施形態に係るAl合金板におけるMg−Si系金属間化合物の絶対最大長は4μm以下であるのが好ましく、3μm以下であるのがより好ましく、2μm以下であるのがさらに好ましい。
Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長は、Si量とMg量を前記した数値範囲内としたり、均質化熱処理の条件を後記する条件としたりすることで制御することができる。
前記したFe、Siの含有量の制御は、例えば、三層電解法により精錬した地金を使用したり、偏析法を利用してこれらを排除したりすることによって行うことができるが、Fe、Siの含有量の制御はこれらの手段に限定されるものではなく、公知の技術を適用して行うことができる。
(Cu:0.010〜0.1質量%及びZn:0.05〜0.4質量%のうちの少なくとも一方)
Cuは、Al合金板中に均一に固溶し、めっき前処理のジンケート処理において、ジンケート浴中のZnイオンをAl合金板の表面へ均一に微細析出させることができる。つまり、Cu量を前記した数値範囲内で含むことによって、ジンケート皮膜を均一に形成させることができ、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生を抑制することができる。すなわち、Cuには、前記範囲で含むことでAl合金板のNi−Pめっき性を向上させる効果がある。
Cu量が0.01質量%未満であるとジンケート皮膜の均一性が低下してノジュールが発生する。そのため、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。
その一方で、Cu量が0.1質量%を超えると粒界にCuが析出するため、めっき前処理の酸エッチング処理において粒界部が過エッチングを受けて窪みが形成され、めっきピットを生じるとともに、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生が多大となる。
Cu量の下限は0.02質量%とするのが好ましく、上限は0.05質量%とするのが好ましい。
ZnもCuと同様、Al合金板中に均一に固溶し、めっき前処理のジンケート処理において、ジンケート浴中のZnイオンをAl合金板の表面へ均一に微細析出させることができる。つまり、Zn量を前記した数値範囲内で含むことによって、ジンケート皮膜を均一に形成させることができ、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生を抑制することができる。すなわち、Znには、前記範囲で含むことでAl合金板のNi−Pめっき性を向上させる効果がある。また、含有量の増加に伴いZnがAl合金板中に均一に析出して、めっき前処理の酸エッチング処理においてエッチング起点、及びジンケート処理時のZnイオン析出拠点になる。このため、Znを前記範囲で含むことで結晶粒による段差を抑制する効果を有することができる。
Zn量が0.05質量%未満であるとジンケート皮膜の均一性が低下してノジュールが発生する。そのため、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。
その一方で、Zn量が0.4質量%を超えると、Znの析出核が大きくなるのに伴い、めっき前処理の酸エッチング処理で形成される窪みも大きくなる。そのため、Zn量が0.4質量%を超えるとめっきピットが形成され、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。また、Zn量が0.4質量%を超えると、粒界にAl−Mg−Zn系金属間化合物が析出するため、めっき前処理の酸エッチング処理において粒界部が過エッチングを受け、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生が多大となる。さらに、Zn量が0.4質量%を超えると、Al−Mg−Zn系金属間化合物も溶解して窪みとなり、それがめっき後も残存する(めっきピットが形成される)。そのため、Ni−Pめっき膜表面の平滑性が低下する。
Zn量の下限は0.1質量%とするのが好ましく、上限は0.35質量%とするのが好ましい。さらに好ましいZn量の下限値は0.15質量%である。
(残部:Al及びその他の不可避不純物)
本発明に係るAl合金板を構成する化学組成の基本成分は前記のとおりであり、残部成分はAl及びその他の不可避不純物である。その他の不可避不純物としては、例えば、Ti、Zr、V、Bなどが挙げられる。前記したFe、Si、Mn及びNiといった不可避不純物(地金不純物)及びここで挙げたその他の不可避不純物は、溶解時に不可避的に混入する不純物である。なお、前記したその他の不可避不純物は、個々に0.005質量%以下、合計で0.015質量%以下であれば本発明の効果を阻害しないので、前記条件を満たす限り前記したその他の不可避不純物や、本明細書で説明した元素以外の元素を積極的に含有させてもよい(つまり、本発明の技術的範囲に含まれる。)。
(表面に存在するAl−O−C系介在物の絶対最大長が8μm未満)
本実施形態に係るAl合金板は、表面に存在するAl−O−C系介在物の絶対最大長を8μm未満としている。つまり、本実施形態に係るAl合金板は、絶対最大長が8μm以上のAl−O−C系介在物が表面に存在しないということである。
このように、Al合金板の表面に存在するAl−O−C系介在物の絶対最大長を8μm未満とすると、Al−O−C系介在物の大きさが小さいので、切削、研削等の鏡面加工時にAl合金板の表面から当該Al−O−C系介在物が脱落して粗大な窪みが形成されるのを抑制することができる。従って、Ni−Pめっき膜を形成した際、微小なめっき欠陥が生じるのを抑制することができる。
一方、Al合金板の表面に存在するAl−O−C系介在物の絶対最大長が8μm以上になると、切削、研削等の鏡面加工時にAl合金板の表面から当該Al−O−C系介在物が脱落して粗大な窪みが形成される。そのため、Al合金板にNi−Pめっき膜を形成した際にめっきピットが発生したり、めっき後の加熱によってブリスターが発生したりする。つまり、微小なめっき欠陥が生じる。
(表面に存在する絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が3個/mm2以下)
Al合金板の表面に存在する絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物は、鋳造工程でAl−Fe系金属間化合物の核となり、当該Al−Fe系金属間化合物を粗大化させる。
当該Al−O−C系介在物の個数密度が3個/mm2以下であると、鋳造工程で当該介在物を核としてAl−Fe系金属間化合物が粗大化するのを抑制することができる。
一方、当該Al−O−C系介在物の個数密度が3個/mm2を超えると、当該Al−O−C系介在物を核として粗大なAl−Fe系金属間化合物が形成され易くなる。そのため、めっき前処理の酸エッチング処理で粗大なAl−Fe系金属間化合物の一部が溶け残り、窪みが形成される。そして、めっき前処理のジンケート処理によって、前記溶け残ったAl−Fe系金属間化合物上に亜鉛が異常に析出し、無電解Ni−Pめっき処理を行った際にノジュールが形成される。また、異常に析出した亜鉛が溶け残ったAl−Fe系金属間化合物とともに洗浄時に脱落してAl面が露出する。そのため、めっき成膜時に異常なH2ガスが発生し、ガスピットが生じる。
なお、当該Al−O−C系介在物の個数密度は2個/mm2以下とするのが好ましく、1個/mm2以下とするのがより好ましい。
(表面に存在する絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が5個/100cm2以下)
本実施形態に係るAl合金板は、Al合金板の表面に存在する絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度を5個/100cm2以下とするのが好ましい。通常、Al−O−C系介在物は酸エッチング液で溶けやすく、8μm以下の介在物が表面に残存することは少ないが、介在物の研削表面への露出の状態によっては溶け残ることがある。Al−O−C系介在物とNi−Pめっき膜との密着度は高くないため、Ni−Pめっき膜を形成した後に加熱すると、残存した介在物の箇所でブリスターが発生しやすい。しかしながら、当該Al−O−C系介在物の個数密度を5個/100cm2以下にすると、Al−O−C系介在物の大きさが小さく、また、Al−O−C系介在物の個数密度が低いので、Ni−Pめっき膜を形成した後に加熱を行ったとしても、ブリスターを発生し難くすることができる。従って、このような構成とする場合は、ブリスターを抑制するという課題があるときにこれを解決することができる。
一方、Al合金板の表面に存在する絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が5個/100cm2を超えると、当該介在物の数が多いため、全ての介在物をめっき前処理の酸エッチング処理によって完全に除去できるとは限らず、確率的に溶け残りが生じやすくなる。そのため、Ni−Pめっき膜を形成した後に行う加熱によってブリスターが発生し易くなる。また、Al合金板の表面に存在する絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が5個/100cm2を超えると、めっき前処理の酸エッチング処理によって完全に溶けたり、切削、研削等の鏡面加工時にAl合金板の表面から当該Al−O−C系介在物が脱落したりしてAl合金板の表面に窪みが形成され易くなる。そのため、Ni−Pめっき膜を形成した際にめっきピットが生じ易くなる。
以上に説明した本実施形態に係るAl合金板によれば、化学組成を特定の範囲とし、後記するような熱処理と加工を施しているので表面に存在するAl−O−C系介在物の絶対最大長を8μm未満、且つ、表面に存在する絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度を3個/mm2以下とすることができ、Al合金板にNi−Pめっき膜を形成した際に、めっきピットやガスピット、ブリスター、ノジュールが生じるのを抑制することができる。
また、前記した本実施形態に係るAl合金板において、表面に存在する絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度を5個/100cm2以下とすれば、ブリスター、めっきピットを抑制することができる。
[ブランク及びサブストレート]
本実施形態に係るブランクは、前記した本実施形態に係るAl合金板を必要に応じて調質し、これをプレス成形により所定の円盤状に打ち抜くことで製造される。
また、本実施形態に係るサブストレートは、前記した本実施形態に係るブランクに対して研削加工(鏡面加工)を行うことにより製造される。
なお、本実施形態に係るブランク及びサブストレートの製造方法については後記する。
本実施形態に係るブランク及びサブストレートは、前記した実施形態に係るAl合金板と同様、化学組成を特定し、表面に存在するAl−O−C系介在物の絶対最大長が8μm未満、且つ、表面に存在する絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が3個/mm2以下である。そのため、ブランク及びサブストレートとして必要な機械的特性、例えば、耐力を確実に得ることができ、めっきピットやブリスターを抑制することができ、さらに、ガスピットやノジュールを抑制することができる。
また、本実施形態に係るブランク及びサブストレートは、前記した実施形態に係るAl合金板と同様、表面に存在する絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度を5個/100cm2以下とすれば、ブリスター、めっきピットを抑制することができる。
[Al合金板の製造方法]
本実施形態に係るAl合金板は、磁気ディスク用の基板を製造する一般的な条件の製造方法及び設備によって製造することができる。例えば、前記した化学組成のAl合金を溶解し、前記した化学組成に調整した鋳塊を鋳造する工程、この鋳塊に対して均質化熱処理を行う工程、均質化熱処理を行った鋳塊を熱間圧延して所定の板厚の熱間圧延板を得る工程、熱間圧延板を冷間圧延して冷間圧延板を得る工程を含む一連の工程に供することによって製造することができる。なお、必要に応じて、冷間圧延する工程の前か、又は冷間圧延する工程の途中で中間焼鈍を行ってもよい。
ここで、Al−O−C系介在物は、次のようにして形成される。つまり、ボーキサイトから酸化アルミニウム(Al23)(以下、「アルミナ」という。)を製造した後、当該アルミナを用いてホール・エルー法などによってアルミニウム地金(以下、単に「Al地金」という。)を精錬する際に、Alと炭素電極が反応してAl−C系介在物が形成される。そして、Al地金を溶解炉で溶解し、化学組成を調整してAl合金を製造する際や、鋳塊を鋳造する際などに、Al−C系介在物が大気中の酸素と反応したり、地金不純物や成分金属中の酸化物等と反応したりして、Al−O−C系介在物が形成される。そのため、Al合金板の表面に存在するAl−O−C系介在物の絶対最大長と個数密度の制御は、Al地金を溶解する溶解工程、及び、溶解して化学組成を調整したAl合金を所定の形状に鋳造する鋳造工程で行うのが好ましい。なお、鋳塊の鋳造は、例えば30〜80mm/分の鋳造速度で行うのが好ましい。
Al合金板の表面に存在するAl−O−C系介在物の絶対最大長と個数密度の制御は、例えば、下記(1)〜(5)のようにすることによって行うことができる。
(1)Al−C系介在物の含有量が少ない地金を用いる。なお、当該地金は、三層電解法などにより精錬することによって得ることができる。
(2)溶湯の精錬時に適当な量のフラックスを用い、発生したガスの気泡(例えばAlCl3)により、Al−O−C系の介在物を溶湯から浮上分離させる。
(3)溶湯の精錬時に適当な量のArガス及びCl2ガスのうちの少なくとも一方のガスを吹き込み、Al−O−C系介在物を溶湯から浮上分離させる。
(4)溶湯の脱ガス処理の際に適当な量のArガス及びCl2ガスのうちの少なくとも一方のガスを吹き込み、Al−O−C系介在物を溶湯から浮上分離させる。なお、溶湯の脱ガス処理は、例えば、Porous Plug(ポーラスプラグ)やSpinning Nozzle Inert Flotation(SNIF)にて行うことができる。脱ガス処理時の溶湯の滞留時間や、SNIFを用いる場合のノズル回転数は任意に設定可能であるが介在物を効率的に除去するためには、ガス量を例えば2〜4Nm3/時間とするのが好ましく、ノズル回転数を例えば400〜600rpmとするのが好ましく、滞留時間を例えば3〜8分とするのが好ましい。
(5)フィルタリングの際に、目の細かいフィルタを用いて、フィルタ内でAl−O−C系介在物を捕捉する。フィルタは、例えば、アルミナなどで作製されたセラミックチューブを用いることができる。
なお、表面に存在する絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度の制御は、前記(1)〜(4)のうちの少なくとも1つを採用することにより行うことができる。また、表面に存在する絶対最大長が2μm以上のAl−O−C系介在物の個数密度の制御は、前記(1)〜(5)のうちの少なくとも1つを採用することにより行うことができる。
均質化熱処理は、Al合金の鋳塊を面削した後、例えば、500〜570℃で2時間以上行うのが好ましい。このようにすると、Mg2SiなどのMg−Si系金属間化合物を十分に固溶させることができる。なお、面削量は、偏析の程度を勘案して適宜変更することができるが、その量は片面当たり例えば、3〜20mmの範囲が好ましく、例えば、偏析が生じるおそれのある、鋳肌から10mm付近が十分に除去されるように面削を行うのが好ましい。
熱間圧延は、例えば、490℃から400℃までの温度域を、30分以内の短時間で終了するような条件で行うのが好ましい。このようにすると、熱間圧延終了まで金属間化合物が粗大化したり、析出したりしないようにすることができる。
なお、熱間圧延終了温度が300℃前後を下回ると、その後の冷間圧延工程でリューダース模様が生じる。リューダース模様は、研削後の表面には残らないため、磁気ディスク基板としての機能は損なわないが、研削前のAl合金板(ブランク)の美観が損なわれる。従って、これを防止するため、熱間圧延終了温度は300℃以上とするのが望ましい。
冷間圧延は、例えば、熱間圧延終了温度が250℃以上の場合は70%以上の冷間圧延率で行い、熱間圧延終了温度が250℃未満の場合は55%以上の冷間圧延率で行うのが好ましい。このようにすると、積み付け焼鈍後の結晶粒径を微細化するのに必要な歪エネルギーを加えることができる。
ここで、冷間圧延の前か、又は冷間圧延の途中で中間焼鈍を行う場合は、中間焼鈍後に70%以上の冷間圧延を行うのが好ましい。ここまでの工程を行うことにより、本実施形態に係るAl合金板を製造することができる。
[ブランクの製造方法]
本実施形態に係るブランクは、例えば、ブランクを製造する工程、及び、積み付け焼鈍をする工程を行うことで製造することができる。
ブランクの製造は、前記した冷間圧延を行った板材を必要に応じて調質し、当該板材をプレス成形により所定の円盤状に打ち抜くことで行うことができる。
積み付け焼鈍は、打ち抜いた円盤状の板材(円盤状板材)を、高平坦度のスペーサ間に積み付けし、全体を加圧しながら焼鈍する(一般に、この加圧焼鈍したものをブランクという)ことで行うことができる。この積み付け焼鈍は、例えば、30℃/時間以上の昇温速度で加熱し、300〜360℃の温度範囲で1〜5時間保持した後、30℃/時間以上の冷却速度で200℃以下まで冷却するのが好ましい。このようにすると、円盤状板材内の加工残留応力除去及び平坦度を向上させることができる。また、微細な組織が得られ、めっき後の表面の微小うねりを従来の円盤状板材より低減することが可能となる。
このようにして製造したブランクは、積み付け焼鈍を行った後に、円盤状板材の内周縁及び外周縁の端面に対して所定の端面加工を施すことができる。
[サブストレートの製造方法]
本実施形態に係るサブストレートは、例えば、次のようにして製造することができる。
両面研削機に予めセットされたキャリアのポケット内に前記したブランクをセットする。そして、砥石により目標の板厚になるまで研削加工(鏡面加工)すると、本実施形態に係るサブストレートを製造することができる(なお、当該サブストレートは、グラインドサブストレートと呼称されることもある。)。
このようにして製造された本実施形態に係るサブストレートの化学組成や金属組織は前記したブランクと同様であるが、鏡面加工を行っているので、ブランクと比較して高い平滑性を具備している。
(磁気ディスク)
そして、このようにして製造したサブストレートの表面を酸エッチング処理し、無電解Ni−Pめっき膜を形成し、その表面を研磨する(なお、無電解Ni−Pめっき膜を形成したサブストレートは、めっきサブストレートと呼称されることもある。)。次いで、このサブストレート上に、磁気特性を高めるための下地膜、Co基合金からなる磁性膜、及び磁性膜を保護するためのC(カーボン)からなる保護膜などをスパッタリング等により形成することで、磁気ディスクを作製することができる。
なお、前記した酸エッチング処理、無電解Ni−Pめっき膜、下地膜、磁性膜、保護膜の形成は、磁気ディスクを製造するにあたって一般的に実施される条件で行うことができる。
また、Al合金板、ブランク及びサブストレートなどの製造条件については、例えば、特許第3471557号公報や特許第5199714号公報に詳しく記載されている。そのため、ブランクを製造するにあたってこれらを参照することもできる。
(Al−O−C系介在物の絶対最大長や個数密度の測定方法)
Al−O−C系介在物の絶対最大長や個数密度の測定方法は、絶対最大長が5μm以上の場合と、2μm未満の場合との2種類がある。
絶対最大長が5μm以上のAl−O−C系介在物のサイズ及び個数密度の測定は、切削加工により鏡面としたAl合金板の表面に対して、光学顕微鏡を用いて任意の倍率(例えば対物レンズ5倍、接眼レンズ10倍)で明視野像にて観察することによって行うことができる。観察するにあたって微分干渉フィルタを使用してもよい。また、観察は、外径95mm、内径25mmの円環形状の片面全面(面積約6600mm2)について行うのが好ましい。Al−O−C系介在物の絶対最大長は、光学顕微鏡の明視野像にて、粒子中で最も離れた2点間の距離を測定して算出することができる。
絶対最大長が0.5μm以上2μm未満のAl−O−C系介在物のサイズ及び個数密度は、鏡面加工したAl合金板の表面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)にエネルギー分散型X線分析装置(Energy Dispersive Spectroscopy;EDS)を接続した装置(以下、「SEM−EDS」という。)にて任意の倍率で1mm2(例えば1000倍で100視野)程度撮影し、得られたSEM像(二次電子像)を解析することにより測定することができる。なお、撮影にあたってはW/ZrOの電子線を5秒程度照射するのが好ましい。市販されている粒子解析プログラムを使用することにより、絶対最大長が0.5μm以上2μm未満のAl−O−C系介在物を確認することができる。
耐力などの機械的特性は、例えば、JIS Z 2241:2011に準拠してAl合金板(ブランク、サブストレート)から試験片を作製し、金属材料引張試験を行うことによって求めることができる。
Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長やMg−Si系金属間化合物の絶対最大長は次のようにして求めることができる。まず、Al合金板(ブランク、サブストレート)の表面にSEM−EDSを用いて、例えば、1000倍の倍率で20視野(0.2mm2)撮影し、COMPO像(組成像)を得る。そして、母相よりも白く写っている部分をAl−Fe系金属間化合物とみなし、母相よりも黒く写っている部分をMg−Si系金属間化合物とみなすことによって、それぞれの絶対最大長(μm)を測定することができる。
なお、前記したように、本実施形態におけるブランクとサブストレートの違いは、研削加工(鏡面加工)を行っているか否かであり、本実施形態におけるブランクとAl合金板の違いは、円盤状に打ち抜いているか否かである。そのため、サブストレートに対して行ったAl−O−C系介在物の絶対最大長及び個数密度の測定結果、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長の測定結果、Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長の測定結果はそのままブランク及びAl合金板の測定結果とみなすことができる。
次に、本発明の効果を奏する実施例とそうでない比較例とを参照して、本発明の内容について具体的に説明する。
まず、700℃で材料を溶解してAl合金の溶湯を得、表1のNo.1〜25に示す化学組成となるように成分を調整した。成分を調整した溶湯を保持炉で保持した後、SNIFを用いて脱ガス処理を行った。脱ガス処理は、アルゴンガスを用い、表1に示すように、ガス量(導入量)(Nm3/時間)・ノズル回転数・滞留時間をそれぞれ調節して行った。SNIFで溶湯の脱ガス処理を行った後、鋳造前に通常行われるようにしてフィルタによるろ過を行い、鋳塊を鋳造した。
次いで、鋳塊表面の偏析層を除去する面削を行い、540℃で8時間の均質化熱処理を行った。その後、直ちに、熱間圧延を行い、板厚3mmの熱間圧延板を作製した。そして、この熱間圧延板を冷間圧延し、板厚1.0mmの冷間圧延板を製造した。
製造した冷間圧延板を外径95mm、内径25mmの円環形状に打ち抜き、20枚ずつ積み付け、320℃で3時間焼鈍した後、30℃/時間の冷却速度で加圧焼鈍した。そして、端面加工を行い、3.5インチタイプのブランクを製造した。そして、ブランク表面(両面)を砥石によって片面10μm研削加工(鏡面加工)してサブストレートを製造した。
作製したNo.1〜25に係るサブストレートについて、〔1〕表面に存在するAl−O−C系介在物の絶対最大長、〔2〕表面に存在する絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度、〔3〕表面に存在する絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度、〔4〕Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長、〔5〕Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長、〔6〕Ni−Pめっき膜の平滑性(めっきピット、ガスピット及びノジュールの確認)、〔7〕Ni−Pめっき膜の平滑性(ブリスターの発生状況)、及び、〔8〕耐力を以下のようにして評価した。
〔1〕表面に存在するAl−O−C系介在物の絶対最大長
〔2〕表面に存在する絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度
〔3〕表面に存在する絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度
絶対最大長が5μm以上のAl−O−C系介在物のサイズ及び個数密度の測定は、切削加工により鏡面としたサブストレートの表面に対して、光学顕微鏡(対物レンズ5倍、接眼レンズ10倍)を用いて明視野像にて観察することにより行った。観察するにあたって微分干渉フィルタを使用した。また、観察は、外径95mm、内径25mmの円環形状の片面全面(面積約6600mm2)について行った。Al−O−C系介在物の絶対最大長は、光学顕微鏡の明視野像にて、粒子中で最も離れた2点間の距離を測定して算出した。
絶対最大長が0.5μm以上2μm未満のAl−O−C系介在物のサイズ及び個数密度は、鏡面加工したサブストレートの表面をSEM−EDSにてW/ZrOの電子線を5秒程度照射し、1000倍の倍率で100視野(1mm2)撮影し、得られたSEM像(二次電子像)から粒子サイズと成分を解析することにより測定した。そして、市販されている粒子解析プログラムを使用して絶対最大長が0.5μm以上2μm未満のAl−O−C系介在物を確認した。
〔4〕Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長
〔5〕Mg−Si系金属間化合物の絶対最大長
鏡面加工したサブストレートの表面にSEM−EDS(日本電子株式会社製JSM−7001M)を用いて1000倍の倍率で20視野(0.2mm2)撮影し、COMPO像(組成像)を得た。母相よりも白く写っている部分をAl−Fe系金属間化合物とみなし、母相よりも黒く写っている部分をMg−Si系金属間化合物とみなしてそれぞれの絶対最大長(μm)を測定した。
〔6〕Ni−Pめっき膜の平滑性(めっきピット、ガスピット及びノジュールの確認)
鏡面加工したサブストレートを、めっき前処理液(上村工業製AD−68F)に浸漬し、50℃、5分間の脱脂を行った。その後、めっき前処理液(上村工業株式会社製AD−101F)で68℃、2分間の酸エッチングを行い、30%硝酸で25℃、1分間浸漬し、デスマット処理を行った。デスマット処理を行ったサブストレートに、ジンケート処理液(上村工業株式会社製AD−301F−3X)を用いて20℃、30秒間のジンケート処理を行い、一旦、30%硝酸でZnを溶解させた後に、再度、20℃、15秒間のジンケート処理を行った。その後、ジンケート処理を行ったサブストレートを、無電解Ni−Pめっき液(上村工業株式会社製ニムデン(登録商標)HDX)に浸漬し、90℃、2時間の無電解Ni−Pめっき処理を行い、片面10μm程度の無電解Ni−Pめっき膜を形成させることで、めっきサブストレートを作製した。そして、無電解Ni−Pめっき膜を形成しためっきサブストレートの表面をコロイダルシリカ系の研磨剤(株式会社フジミインコーポレーティッド製DISKLITE Z5601A)とパッド(カネボウ株式会社(現アイオン株式会社)製のN0058 72D等)を用いて研磨することで、磁性膜の成膜を行う前の状態のめっきサブストレートを作製した。
そして、当該サブストレートに対して光学顕微鏡を用いて50倍(対物レンズ5倍、接眼レンズ10倍)の倍率で明視野像を得た。なお、撮影にあたって微分干渉フィルタを使用し、約6600mm2を観察した。観察の結果、めっきピット、ガスピット及びノジュールはそれぞれ、幅4μm未満のものしか確認されなかった場合を良好(○)と評価し、幅4μm以上のものが確認された場合を不良(×)と評価した。表1の該当する欄にこれらの評価結果を記す。また、介在物があれば、倍率を500倍(対物レンズ50倍、接眼レンズ10倍)で絶対最大長を測定した。
〔7〕Ni−Pめっき膜の平滑性(ブリスターの発生状況)
前記〔6〕でNi−Pめっき膜を形成したサブストレートに対し、めっき成膜後の加熱を模擬するため、300℃で60分間の加熱を行った。
その後、ブルカーナノ社製ContourGT X3(非接触3次元光干渉型表面形状粗さ計)を用いて対物レンズ×10、FOV×1、VSIモードで表面を測定した。Ni−Pめっき膜を観察し、ブリスターの発生状況を確認した。幅4μm未満のブリスターしか確認されなかったものを平滑性が良好(○)とし、幅4μm以上のブリスターが確認されたものを不良(×)とした。
〔8〕耐力
冷間圧延後の冷間圧延板の一部を切り出し、前記加圧焼鈍と同等の条件、すなわち、320℃で3時間の加圧焼鈍を行った。そして、焼鈍した冷間圧延板からJIS Z 2241:2011に準拠して試験片を作製し、金属材料引張試験を行うことにより、耐力(MPa)を求めた。耐力が90MPa以上であるものを良好と評価し、90MPa未満のものを不良と評価した。
表1に、No.1〜25に係るサブストレートの化学組成、SNIFを用いて行った脱ガス処理におけるガス量(SNIFガス量(Nm3/時間))、ノズル回転数(rpm)、滞留時間(min)及び前記〔1〕〜〔8〕で測定又は評価した結果を示す。なお、表1中の「−」は、当該元素を添加していないことを示し、下線は、本発明の要件を満たしていないことを示す。
Figure 2016135914
表1に示すように、No.1〜11に係るサブストレートは、本発明の要件を満たしていたので、Ni−Pめっき膜の平滑性が良好であった(いずれも実施例)。このうち、No.1〜10に係るサブストレートは、表面に存在する絶対最大長が8μm以上であるAl−O−C系介在物が無く、表面に存在する絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度、及び、表面に存在する絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が適切であったので、表面に存在する絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が多いNo.11に係るサブストレートよりもNi−Pめっき膜の平滑性が良好であった。具体的には、No.1〜10に係るサブストレートは、No.11に係るサブストレートと比較して絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が低かったので、ブリスターが小さい傾向にあった。また、No.1〜10に係るサブストレートは、絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が低かったので、めっきピットもより生じ難いと推察された。特に、No.1〜4に係るサブストレートは、将来、めっき前処理条件が更に弱くなったとしても、Ni−Pめっき膜の平滑性が損なわれるおそれがない。
これに対し、No.12〜25に係るサブストレートは、本発明の要件のうちの少なくとも1つを満たしていなかったので、Ni−Pめっき膜の平滑性又は耐力が不良となった(比較例)。
具体的には、No.12に係るサブストレートは、Mg量が少なすぎたため、耐力が不良となった。
No.13に係るサブストレートは、Mg量が多すぎたため、熱間圧延割れが生じた。従って、板を作製することができず、それ以降の評価ができなかった。
No.14に係るサブストレートは、Cu量及びZn量がともに少なすぎたため、ノジュールが発生した。そのため、No.14に係るサブストレートは、Ni−Pめっき膜の平滑性が不良となった。
No.15に係るサブストレートは、Cu量が少なく、Znを含有していなかったため、ノジュールが発生した。そのため、No.15に係るサブストレートは、Ni−Pめっき膜の平滑性が不良となった。
No.16に係るサブストレートは、Cuを含有しておらず、Zn量も少なすぎたため、ノジュールが発生した。そのため、No.16に係るサブストレートは、Ni−Pめっき膜の平滑性が不良となった。
No.17に係るサブストレートは、Cu量が多すぎたため、ノジュールが発生した。また、No.17に係るサブストレートは、Cu量が多すぎたため、粒界にCuが析出し、めっき前処理の酸エッチング処理において粒界部が過エッチングを受けて窪みが形成され、めっきピットが発生した。そのため、No.17に係るサブストレートは、Ni−Pめっき膜の平滑性が不良となった。
No.18に係るサブストレートは、Zn量が多すぎたため、めっき前処理の酸エッチング処理で形成される窪みが大きくなり、めっきピットが発生した。また、No.18に係るサブストレートは、Zn量が多すぎたため、粒界にAl−Mg−Zn系金属間化合物が析出し、めっき前処理の酸エッチング処理において粒界部が過エッチングを受け、ノジュールが発生した。そのため、No.18に係るサブストレートは、Ni−Pめっき膜の平滑性が不良となった。
No.19に係るサブストレートは、Si量が多すぎたため、Mg−Si系金属間化合物が大きくなった。そのため、切削、研削等の鏡面加工を行った際にMg−Si系金属間化合物がサブストレートの表面から脱落して窪みが発生し、めっきピットが形成された。また、No.19に係るサブストレートは、Mg−Si系金属間化合物が、エッチング処理によってMgのみが溶解してSiが残り、無電解Ni−Pめっき処理でめっき膜が成長しなかった。その結果、No.19に係るサブストレートは、ブリスターの発生状況も不良となった。そのため、No.19に係るサブストレートは、Ni−Pめっき膜の平滑性が不良となった。
No.20に係るサブストレートは、Fe量が多すぎたため、Al−Fe系金属間化合物が大きくなり、めっき前処理の酸エッチング処理で一部が溶解されずに溶け残り、これが原因でノジュールやガスピットが発生した。また、No.20に係るサブストレートは、粗大なAl−Fe系金属間化合物が、切削、研削等の鏡面加工を行った際にサブストレートの表面から脱落して窪みが発生し、めっきピットが形成された。そのため、No.20に係るサブストレートは、Ni−Pめっき膜の平滑性が不良となった。
No.21に係るサブストレートは、SNIFガス量が少なすぎたため、Al−O−C系介在物を溶湯から浮上分離させることができなかった。そのため、絶対最大長が8μmを超えるAl−O−C系介在物が基板の表面に存在し、絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が3個/mm2を超えていた。そのため、No.21に係るサブストレートは、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が10μmを超えた。さらに、No.21に係るサブストレートは、絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が5個/100cm2を超えていた。これらが原因で、No.21に係るサブストレートは、めっきピット、ノジュール、ガスピット及びブリスターが発生し、Ni−Pめっき膜の平滑性が不良となった。
No.22に係るサブストレートは、SNIFガス量が多すぎたため、過剰な気泡により湯面に浮上分離したAl−O−C系介在物が溶湯に再混入し、効果的に浮上分離させることができなかった。そのため、絶対最大長が8μmを超えるAl−O−C系介在物が基板の表面に存在し、絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が3個/mm2を超えていた。そのため、No.22に係るサブストレートは、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が10μmを超えた。さらに、No.22に係るサブストレートは、絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が5個/100cm2を超えていた。これらが原因で、No.22に係るサブストレートは、めっきピット、ノジュール、ガスピット及びブリスターが発生し、Ni−Pめっき膜の平滑性が不良となった。
No.23に係るサブストレートは、SNIFを用いた脱ガス処理においてノズル回転数が低すぎたため、微細な気泡が生成されず、Al−O−C系介在物を溶湯から浮上分離させることができなかった。そのため、絶対最大長が8μmを超えるAl−O−C系介在物が基板の表面に存在し、絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が3個/mm2を超えていた。そのため、No.23に係るサブストレートは、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が10μmを超えた。さらに、No.23に係るサブストレートは、絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が5個/100cm2を超えていた。これらが原因で、No.23に係るサブストレートは、めっきピット、ノジュール、ガスピット及びブリスターが発生し、Ni−Pめっき膜の平滑性が不良となった。
No.24に係るサブストレートは、SNIFを用いた脱ガス処理においてノズル回転数が高すぎたため、酸化皮膜の溶湯への巻き込みが生じ、Al−O−C系介在物を溶湯から浮上分離させることができなかった。そのため、絶対最大長が8μmを超えるAl−O−C系介在物が基板の表面に存在し、絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が3個/mm2を超えていた。そのため、No.24に係るサブストレートは、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が10μmを超えた。さらに、No.24に係るサブストレートは、絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が5個/100cm2を超えていた。これらが原因で、No.24に係るサブストレートは、めっきピット、ノジュール、ガスピット及びブリスターが発生し、Ni−Pめっき膜の平滑性が不良となった。
No.25に係るサブストレートは、SNIFを用いた脱ガス処理において、SNIF中における溶湯の滞留時間が短すぎたため、Al−O−C系介在物を溶湯から浮上分離させることができなかった。そのため、絶対最大長が8μmを超えるAl−O−C系介在物が基板の表面に存在し、絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が3個/mm2を超えていた。そのため、No.25に係るサブストレートは、Al−Fe系金属間化合物の絶対最大長が10μmを超えた。さらに、No.25に係るサブストレートは、絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が5個/100cm2を超えていた。これらが原因で、No.25に係るサブストレートは、めっきピット、ノジュール、ガスピット及びブリスターが発生し、Ni−Pめっき膜の平滑性が不良となった。

Claims (4)

  1. Mg:3.5〜5.5質量%、
    Fe:0.025質量%以下、
    Si:0.020質量%以下であり、且つ、
    Cu:0.010〜0.1質量%及びZn:0.05〜0.4質量%のうちの少なくとも一方を含有し、
    残部がAl及び不可避不純物からなり、
    表面に存在するAl−O−C系介在物の絶対最大長が8μm未満、且つ、
    表面に存在する絶対最大長が0.5μm以上2μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が3個/mm2以下
    であることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金板。
  2. 表面に存在する絶対最大長が5μm以上8μm未満であるAl−O−C系介在物の個数密度が5個/100cm2以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金板。
  3. 請求項1または請求項2に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金板を円盤状に打ち抜いたことを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク。
  4. 請求項3に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクを使用したことを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金サブストレート。
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