JP2018059138A - 磁気ディスク用Al−Mg系合金板、磁気ディスク用Al−Mg系合金ブランク及び磁気ディスク用Al−Mg系合金サブストレート - Google Patents

磁気ディスク用Al−Mg系合金板、磁気ディスク用Al−Mg系合金ブランク及び磁気ディスク用Al−Mg系合金サブストレート Download PDF

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健二 徳田
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Abstract

【課題】微小なめっき欠陥が発生し難い磁気ディスク用Al−Mg系合金板を提供する。
【解決手段】磁気ディスク用Al−Mg系合金板は、Mg:3〜6質量%、Fe:0.030質量%以下、Si:0.030質量%以下、Cr:0.010〜0.200質量%、Ti:0.0100質量%以下、V:0.0100質量%以下、Zr:0.01000質量%以下含有し、B:0.00020質量%以下であるか、又は、0.00020質量%を超え0.00300質量%以下かつB量≦(Ti量+V量+Zr量)×0.45を満たし、Cu:0.100質量%以下及びZn:0.400質量%以下のうちの少なくとも一方を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなり、絶対最大長0.1μm以上のAl−Fe含有晶出物に対する絶対最大長が3μm以上のAl−Fe含有晶出物の占める個数割合が2.0%以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、磁気ディスク用Al−Mg系合金板、磁気ディスク用Al−Mg系合金ブランク及び磁気ディスク用Al−Mg系合金サブストレートに関する。
コンピュータ等の記録媒体として使用される磁気ディスクは、非磁性の基板に磁性膜を形成されてなる。一般的に、当該基板には、軽量且つ高い剛性を有し、平滑な表面であることが要求されるため、JIS H 4000:2014に規定の5086合金(Al−Mg系合金)が用いられている。
この基板は、前記合金を用いて板材として製造された後、例えば、所定の円盤状に打ち抜いてブランクを製造し、当該ブランクの表面を研削加工(鏡面加工)してサブストレートを製造し、脱脂処理、酸エッチング処理、デスマット処理、1stジンケート処理、硝酸剥離処理、2ndジンケート処理、無電解Ni−Pめっき処理が順に行われる。そして、無電解Ni−Pめっき膜の上に磁性膜等が形成され、磁気ディスクが製造される。なお、ブランクの表面を研削加工(鏡面加工)したサブストレートは、「グラインドサブストレート」と呼称されることもある。また、無電解Ni−Pめっき処理を行って無電解Ni−Pめっき膜を形成し、さらにその表面を研磨したサブストレートは、「めっきサブストレート」と呼称されることもある。
磁気ディスクに用いられるアルミニウム(Al)合金基板が、例えば、特許文献1に記載されている。
具体的に、特許文献1には、Mgを3〜6質量%含有し、不純物としてFeが0.035質量%未満、Siが0.035質量%未満で且つTi+VとBが所定の範囲内であり、残部がAl及び不可避的不純物であることを特徴とする鏡面加工用Al−Mg合金が記載されている。
特許文献1によれば、特許文献1に記載されている発明は、AlB2、TiB2、TiVB2、VB2のようなB系化合物(ホウ素化合物)を除去することにより、鏡面仕上げ後のスクラッチ、ピット、突起などの欠陥を発生し難くすることができるとされている。
また、特許文献2には、Mg:3.0〜8.0質量%、Cu:0.005〜0.150質量%、Zn:0.05〜0.60質量%、Cr:0.010〜0.300質量%、Fe:0.001〜0.030質量%、Si:0.001〜0.030質量%含有し、更に(Ti+V+Zr):0.0010〜0.0100質量%、B:0.0001〜0.0010質量%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなる磁気ディスク基板用アルミニウム合金板が記載されている。この磁気ディスク基板用アルミニウム合金板は、5μmを超える最長径を有するTi−V−B−Zr系介在物の存在密度が0個/6000mm2であり、3〜5μmの最長径を有するTi−V−B−Zr系介在物の存在密度が1個/6000mm2以下であることを特徴としている。
なお、特許文献2には、鋳造前の保持炉での溶湯温度と保持時間、ならびに鋳造開始時の溶湯温度を制御することで磁気ディスク基板用アルミニウム合金板を製造する旨記載されている。
特許文献2によれば、特許文献2に記載されている発明は、上記の制御を実施することで、3μm以上のTi−V−B−Zr系介在物の存在密度を低減し、研削面を平滑化することができるとされている。
特開平06−025785号公報 特許第5762612号公報
しかしながら、近年、磁気ディスクの高記録密度化がさらに進んでおり、その研究成果の一つとして、溶解鋳造工程で生成する粗大なAl−Fe化合物が微小なめっき欠陥を引き起こすことが明らかになっている。
特許文献1に記載されている発明は、B含有化合物を除去することによって、鏡面仕上げ後のスクラッチ、ピット、突起などの欠陥を発生し難くしているが、従来は許容されていた微小なめっき欠陥に十分に対処できないという問題があった
また、特許文献2に記載されている発明においても、Al−Fe含有晶出物を微細にすることができず、微小なめっき欠陥に十分に対処できないという問題があった。
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、微小なめっき欠陥が発生し難い磁気ディスク用Al−Mg系合金板、磁気ディスク用Al−Mg系合金ブランク及び磁気ディスク用Al−Mg系合金サブストレートを提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意研究開発した結果、以下の構成とすることにより前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
前記課題を解決した本発明に係る磁気ディスク用Al−Mg系合金板は、Mg:3〜6質量%、Fe:0.030質量%以下、Si:0.030質量%以下、Cr:0.010〜0.200質量%、Ti:0.0100質量%以下、V:0.0100質量%以下、Zr:0.01000質量%以下含有し、B:0.00020質量%以下であるか、又は、0.00020質量%を超え0.00300質量%以下かつB量≦(Ti量+V量+Zr量)×0.45を満たし、Cu:0.100質量%以下及びZn:0.400質量%以下のうちの少なくとも一方を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなり、絶対最大長0.1μm以上のAl−Fe含有晶出物に対する絶対最大長が3μm以上のAl−Fe含有晶出物の占める個数割合が2.0%以下であることとした。
このように、本発明に係る磁気ディスク用Al−Mg系合金板は、絶対最大長0.1μm以上のAl−Fe含有晶出物に対する絶対最大長が3μm以上のAl−Fe含有晶出物の占める個数割合を2.0%以下としている。そのため、例えば、めっき前処理の酸エッチング処理で溶け残ったり、研削や研磨によって表面のAl−Fe含有晶出物が脱落して窪みが形成されたり、ノジュールが発生したりするのを抑制できる。そのため、本発明に係る磁気ディスク用Al−Mg系合金板は、微小なめっき欠陥を発生し難くすることができる。また、本発明に係る磁気ディスク用Al−Mg系合金板は、磁気ディスク板として要求される基本特性を満たした上で、3μm以上の粗大なAl−Fe含有晶出物の生成を抑制するための化学組成と、めっき欠陥を発生させない個数割合と、を規定した。そのため、本発明に係る磁気ディスク用Al−Mg系合金板はこれによっても微小なめっき欠陥を発生し難くすることができる。
本発明に係る磁気ディスク用Al−Mg系合金ブランクは、前記した磁気ディスク用Al−Mg系合金板からなるのが好ましく、本発明に係る磁気ディスク用Al−Mg系合金サブストレートは、前記した磁気ディスク用Al−Mg系合金ブランクからなるのが好ましい。
本発明に係る磁気ディスク用Al−Mg系合金ブランク及び磁気ディスク用Al−Mg系合金サブストレートはこのような構成としているので、磁気ディスク用Al−Mg系合金板と同様、微小なめっき欠陥を発生し難くすることができる。
本発明に係る磁気ディスク用Al−Mg系合金板、磁気ディスク用Al−Mg系合金ブランク及び磁気ディスク用Al−Mg系合金サブストレートは、化学組成と組織を特定しているので、微小なめっき欠陥が発生し難い。
Ti量+V量+Zr量(質量%)とB量(質量%)との関係を示すグラフである。
以下、本発明に係る磁気ディスク用Al−Mg系合金板、磁気ディスク用Al−Mg系合金ブランク及び磁気ディスク用Al−Mg系合金サブストレート(以下、それぞれ単に「合金板」、「ブランク」、「サブストレート」と呼称することがある。)の実施形態について詳細に説明する。
[合金板]
本実施形態に係る合金板の化学組成は、Mg:3〜6質量%、Fe:0.030質量%以下、Si:0.030質量%以下、Cr:0.010〜0.200質量%、Ti:0.0100質量%以下、V:0.0100質量%以下、Zr:0.01000質量%以下含有し、B:0.00020質量%以下であるか、又は、0.00020質量%を超え0.00300質量%以下かつB量≦(Ti量+V量+Zr量)×0.45を満たし、Cu:0.100質量%以下及びZn:0.400質量%以下のうちの少なくとも一方を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる。
そして、この合金板は、絶対最大長0.1μm以上のAl−Fe含有晶出物に対する絶対最大長が3μm以上のAl−Fe含有晶出物の占める個数割合が2.0%以下という組織としている。なお、絶対最大長とは、例えば、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)のCOMPO像などで観察した際に認識される該当粒子上で、最も離れた2点間の長さをいう。
以下、合金板の化学組成と組織について説明する。
〔化学組成〕
(Mg)
Mgは、合金板、ブランク及びサブストレートとして必要な所定の機械的特性を備える役割を担っている。機械的特性としては、例えば、耐力が挙げられる。耐力は、例えば、90MPa以上であるのが好ましい。耐力が90MPa以上であると磁気ディスク用の合金板、ブランク及びサブストレートとして十分な強度を有することができる。Mg量が前記した数値範囲にあると、機械的特性に優れたものとなる。
Mg量が3質量%未満であると、合金板、ブランク及びサブストレートとしての機械的特性に劣ることがある。その一方で、Mg量が6質量%を超えると、高温での割れ感受性が高まり、熱間圧延中に割れが生じ易くなるため、圧延が困難になる。従って、Mg量は3〜6質量%とする。
なお、Mg量の下限は、機械的特性を向上させる観点から、3.1質量%とするのが好ましく、3.2質量%とするのがより好ましく、3.5質量%とするのがさらに好ましく、3.8質量%とするのがさらにより好ましい。また、Mg量の上限は、圧延性がより向上するため、5.8質量%とするのが好ましく、5.0質量%とするのがより好ましく、4.7質量%とするのがさらに好ましく、4.4質量%とするのがさらにより好ましい。
(Fe)
Feは、通常、地金不純物としてAl合金中に混入するものであり、鋳造工程でAl−Fe含有晶出物を晶出させる。
Fe量が0.030質量%以下であると、サブストレート製造時の表面性状及び品質に影響を及ぼさずに研削性を向上できる。また、Fe量が0.030質量%以下であると、強度向上や再結晶粒微細化に寄与したり、ジンケート処理の均質性を向上させたりできる。
Fe量が0.030質量%を超えると、Al−Fe含有晶出物が大きくなり過ぎてしまう。つまり、絶対最大長0.1μm以上のAl−Fe含有晶出物に対する絶対最大長が3μm以上のAl−Fe含有晶出物の占める個数割合が多くなってしまう。このように、Al−Fe含有晶出物が大きくなり過ぎると、めっき前処理の酸エッチング処理を行った場合にAl−Fe含有晶出物の一部が溶解されずに溶け残り、これが原因でノジュールなどのめっき欠陥が発生する。従って、Fe量は0.030質量%以下とする。
なお、Fe量を0.005質量%以上とすると、研削性や耐力の向上効果、再結晶粒を微細化させてジンケート処理の均質性を向上させる効果が期待できるため、Fe量の下限を規定する場合は、0.005質量%とするのが好ましい。また、Fe量を0.005質量%未満とするには高純度な地金を用いる必要があり、非常に高コストとなるため現実的ではない。従って、コストの面からもFe量の下限を規定する場合は0.005質量%とするのが好ましい。
Fe量の下限を規定する場合は、強度向上、再結晶粒微細化及びジンケート処理の均質性のうちの少なくとも一つをより向上でき、また、コストの観点から0.010質量%とするのが好ましく、0.012質量%とするのがより好ましい。Fe量の上限は、Al−Fe含有晶出物をより微細なものとできるため、0.028質量%とするのが好ましく、0.025質量%とするのがより好ましく、0.023質量%とするのがさらに好ましい。
(Si)
Siは、通常、地金不純物としてアルミニウム合金中に混入するものであり、合金板を鋳造する工程等において、合金板の表面にMg−Si系金属間化合物を生じさせる。
Si量が0.030質量%を超えると、Mg−Si系金属間化合物が大きくなり過ぎてしまう。Mg−Si系金属間化合物が大きくなり過ぎると、ブランクに対して切削、研削等の鏡面加工を行った際にMg−Si系金属間化合物がブランクの表面から脱落し、窪みが形成される。また、Mg−Si系金属間化合物が大きくなり過ぎると、めっき前処置の酸エッチング処理によってMg−Si系金属間化合物が溶解して窪みが形成され、めっきピットが形成される。また、Si量が0.030質量%を超えると、当該エッチング処理によってMgのみが溶解してSiが残る箇所も生じる。残ったSi上にはめっき前処理のジンケート処理においてZnの置換反応が起こらないため、無電解Ni−Pめっき処理でめっき膜が成長せず、Ni−Pめっき膜の密着性が不足することになる。従って、Si量は0.030質量%以下とする。
Si量の下限は特に規定しないが、前記したように地金不純物としてAl合金中に混入するものであるから、下限を規定するとすれば、0質量%超ということになる(つまり、0質量%を含まない)。なお、Si量は0質量%であるのが好ましいが、Si量を0.005質量%未満とするには高純度な地金を用いる必要があり、非常に高コストとなるため現実的ではない。従って、Si量の下限は0.005質量%とするのが好ましく、コストの観点から0.007質量%とするのがより好ましい。Si量の上限は、Mg−Si系金属間化合物をより微細なものとすることができるため、0.028質量%とするのが好ましく、0.022質量%とするのがより好ましい。
(Cr)
Crは、合金板、ブランク及びサブストレートにおいて耐力などの機械的特性を向上させる。機械的特性を向上させる効果は、Cr量を0.010質量%以上とすることにより得られる。Cr量が0.010質量%未満であると、機械的特性を向上させる効果を十分に得られないおそれがある。
その一方で、Cr量が0.200質量%を超えると、粗大なAl−Cr系金属間化合物が生成される。粗大なAl−Cr系金属間化合物は、切削、研削等の鏡面加工を行った際に表面から脱落して窪みを形成し、めっきピットが形成される。従って、Cr量は0.010〜0.200質量%とする。
なお、Cr量の下限は、機械的特性を向上できるため、0.012質量%とするのが好ましく、0.040質量%とするのがより好ましく、0.049質量%とするのがさらに好ましい。また、Cr量の上限は、Al−Cr系金属間化合物をより微細にできるため、0.180質量%とするのが好ましく、0.153質量%とするのがより好ましく、0.081質量%とするのがさらに好ましい。
(B)
Bは、溶湯中のAlと反応してAl−B化合物を形成し、Al−Fe含有晶出物を粗大化させる。粗大化したAl−Fe含有晶出物は前記の通りノジュールなどのめっき欠陥の原因となる。本発明においては、B化合物の生成を抑制するためにB量を0.00020質量%以下としている。なお、Al−Fe含有晶出物をより微細化するため、B量は、0.00018質量%以下とするのが好ましく、0.00010質量%以下とするのがより好ましい。
ここで、以下に示す通り、Ti、V、Zrを添加することでそれぞれTiB2、VB2、ZrB2といったB系化合物を生成する。すなわち、B量が0.00020質量%を超える場合であっても、Ti、V及びZrのうちの少なくとも1種を添加することによりAl−B化合物の生成が抑制され、Bの影響を低減できる。従って、合金板に含まれるTi量、V量及びZr量との間で所定の条件を満たす場合、0.00020質量%を超えてBを含有させることができる。
(Ti、V及びZr)
前記の通り、Ti、V及びZrは、溶湯中のBと反応し、それぞれTiB2、VB2、ZrB2といったB系化合物を形成し、Al−B化合物の生成を抑制する。そのため、B量が0.00020質量%を超える場合であっても、Al−Fe含有晶出物を粗大化させるという影響を低減できる。図1に示すように、B量が0.00020質量%を超える場合において、Bの影響を低減できる条件は、「B量≦(Ti量+V量+Zr量)×0.45」を満たす範囲である。なお、この関係式において、B量、Ti量、V量、Zr量はそれぞれ、合金板が含有しているB、Ti、V、Zrの含有量を表している。
ただし、「B量≦(Ti量+V量+Zr量)×0.45」を満たす場合であっても、B量は0.00300質量%以下とする必要がある。この場合においてB量が0.00300質量%を超えると、Ti、V及びZrを含んでいてもTiB2、VB2、ZrB2が多く生成するため鋳塊の結晶粒が微細化し、良好な金属組織が得られなくなる。よって、Bについては、0.00020質量%以下であるか、又は、0.00020質量%を超え0.00300質量%以下かつB量≦(Ti量+V量+Zr量)×0.45を満たすことが必要となる。「B量≦(Ti量+V量+Zr量)×0.45」を満たす場合のB量の上限は、好ましくは0.00200質量%であり、より好ましくは0.00100質量%である。さらに良好な金属組織を得るためには、(Ti量+V量+Zr量)の係数を0.30以下とすることが好ましく、0.20以下とするのがより好ましい。なお、前記した各係数は後記する[実施例]にて得られた実験結果及び経験をもとにして近似的に決定したものである。
また、Ti量、V量のいずれかが0.0100質量%を超えたり、Zr量が0.01000質量%を超えたりすると、粗大なAl−Ti化合物やAl−V化合物、Al−Zr化合物が生成し、めっき欠陥の原因となる。従って、Ti量、V量はそれぞれ0.0100質量%以下とし、Zr量は0.01000質量%以下とする。なお、Ti量、V量を0.0005質量%未満にしたり、Zr量を0.00005質量%未満にしたりすることができるが、そのためには高純度な地金を用いる必要があり、高コストとなるため現実的ではない。そのため、Ti量は0.0005〜0.0100質量%とするのが好ましく、V量は0.0005〜0.0100質量%とするのが好ましく、Zr量は0.00005〜0.01000質量%とするのが好ましい。Al−Fe含有晶出物の大きさや前記金属組織をより好適なものとするため、Ti、V量の下限は、それぞれ0.0010質量%とするのが好ましく、Zr量の下限は0.00010質量%とするのが好ましい。Ti、Vの上限はそれぞれ0.0050質量%とすることが好ましく、Zrの上限は0.00500質量%とすることが好ましい。
(Cu及びZn)
Cu及びZnは選択的に含有させることのできる成分である。つまり、Cuを所定の含有量で含有している場合は、Znを後記する好ましい下限値未満で含有していてもよい。また、Znを所定の含有量で含有している場合は、Cuを後記する好ましい下限値未満で含有していてもよい。もちろん、Cu及びZnの両者を所定の含有量で含有していてもよい。
Cuは、ブランク中に均一に固溶し、めっき前処理のジンケート処理において、ジンケート浴中のZnイオンをブランクの表面へ均一に微細析出させる。つまり、Cu量を特定の数値範囲内で含むことによって、ジンケート皮膜を均一に形成でき、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生を抑制できる。
Cu量が0.100質量%を超えると、粒界にAl−Mg−Cu系金属間化合物が析出するため、めっき前処理の酸エッチング処理において粒界部が過エッチングを受け、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生が多大となる。従って、Cu量は0.100質量%以下とする。
なお、Cu量が0.010質量%未満であるとジンケート皮膜の均一性が低下してノジュールが発生するおそれがある。そのため、Cu量は0.010〜0.100質量%とするのが好ましい。ここで、Cu量の下限は、ジンケート皮膜の均一性がより向上するため、0.021質量%とするのが好ましく、0.040質量%とするのがより好ましい。Cu量の上限も同様の理由により、0.080質量%とするのが好ましく、0.050質量%とするのがより好ましい。
ZnもCuと同じくブランク中に均一に固溶し、めっき前処理のジンケート処理において、ジンケート浴中のZnイオンをブランクの表面へ均一に微細析出させる。つまり、Zn量を特定の数値範囲内で含むことによって、ジンケート皮膜を均一に形成でき、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生を抑制できる。また、含有量の増加に伴いZnがブランク中に均一に析出して、めっき前処理の酸エッチング処理においてエッチング起点、及びジンケート処理時のZnイオン析出拠点になる。このため、Znを特定の数値範囲内で含むことで結晶粒による段差を抑制する効果が得られる。
Zn量が0.400質量%を超えると、Znの析出核が大きくなるのに伴ってめっき前処理の酸エッチング処理で形成される窪みも大きくなり、めっきピットが形成される。また、Zn量が0.400質量%を超えると、粒界にAl−Mg−Zn系金属間化合物が析出する。そのため、めっき前処理のエッチングにおいて粒界部が過エッチングを受け、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生が多大となる。また、Zn量が0.400質量%を超えると、Al−Mg−Zn系金属間化合物も溶解して窪み(ピット)となり、それがめっき後も残存してめっきピットとなる。従って、Zn量は0.400質量%以下とする。
なお、Zn量が0.020質量%未満であるとジンケート皮膜の均一性が低下してノジュールが発生するおそれがある。そのため、Zn量は0.020〜0.400質量%とするのが好ましい。ここで、Zn量の下限は、ジンケート皮膜の均一性がより向上するため、0.040質量%とするのが好ましく、0.065質量%とするのがより好ましい。Zn量の上限も同様の理由により、0.370質量%とするのが好ましく、0.350質量%とするのがより好ましい。
(残部)
本発明に係る合金板を構成する化学組成の基本成分(不可避的不純物であるFe、Siを含む)は前記の通りであり、残部成分はAl及びその他の不可避的不純物である。その他の不可避的不純物としては、例えば、Mn、Ga、Zr、Ni、Naなどが挙げられる。前記したFe及びSiといった不可避的不純物(地金不純物)及びここで挙げたその他の不可避的不純物は、溶解時に不可避的に混入する不純物である。なお、前記したその他の不可避的不純物は、個々に0.005質量%以下、合計で0.015質量%以下であれば本発明の効果を阻害しないので、これらの条件を満たす限り、前記したその他の不可避的不純物を含有させることができる。また、本発明の効果を阻害しない範囲で本明細書で説明した元素以外の元素を積極的に含有させてもよい(つまり、本発明の技術的範囲に含まれる。)。
なお、本発明に係る合金板の化学組成の調整は、例えば、Al合金を溶解する際に添加する元素の添加量を適宜変更することにより行える。また、Fe、Si、B、不可避的不純物の含有量の調整(規制)は、例えば、三層電解法により精錬した地金を使用したり、偏析法を利用してこれらを排除したりすることにより行える。なお、Fe、Si、B、不可避的不純物の含有量の規制はこれらの手段に限定されるものではなく、公知の技術を適用できる。
〔組織〕
(絶対最大長0.1μm以上のAl−Fe含有晶出物に対する絶対最大長が3μm以上のAl−Fe含有晶出物の占める個数割合)
本発明に係る合金板はFeを含むため、凝固時にAl−Fe含有晶出物が晶出する。Al−Fe含有晶出物が大きいとめっき前処理の酸エッチング処理時にAl−Fe含有晶出物の一部が溶解されずに溶け残る。これが原因でノジュールなどのめっき欠陥が発生する。めっき欠陥の発生を抑制するためには粗大なAl−Fe含有晶出物の数を減らすことが必要である。そのため、絶対最大長0.1μm以上のAl−Fe含有晶出物に対する絶対最大長が3μm以上のAl−Fe含有晶出物の占める個数割合を2.0%以下としている。なお、当該個数割合は1%以下とするのが好ましい。
当該個数割合の規制は、合金板の化学組成を前記した特定の条件とし、且つ、後記する条件の製造方法で製造することによって行える。例えば、当該個数割合の規制は、Fe量及びTi量、V量、Zr量、B量をそれぞれ前記したように規制し、鋳造温度及び鋳造速度などを後記する条件とすることで制御できる。
(Al−Fe含有晶出物の絶対最大長の測定方法)
Al−Fe含有晶出物の絶対最大長の測定は、例えば、鏡面加工した合金板(サブストレート)の表面をSEMにエネルギー分散型X線分析装置(Energy Dispersive Spectroscopy;EDS)を接続した装置(以下、「SEM−EDS」という。)にて任意の倍率(例えば1000倍)で20視野(0.2mm2)程度撮影し、得られたCOMPO像(組成像)を解析することによって行うことができる。なお、Al−Fe含有晶出物は、SEMのCOMPO像において母相とのコントラストで識別することができる。具体的には、Al−Fe含有晶出物は母相よりも白く写るので、白く写った該当物の長さを測定すればその絶対最大長が求められる。なお、合金板を円盤状に打ち抜いたものがブランクであり、ブランクを研削加工(鏡面加工)したものがサブストレートである。Al−Fe含有晶出物の絶対最大長はブランクやサブストレートを製造することによって変化するものではない。従って、例えば、サブストレートに対して行ったAl−Fe含有晶出物の測定結果はそのままブランク及び合金板の測定結果とみなすことができるし、その逆もまた然りである。
前記した個数割合は、測定結果から絶対最大長0.1μm以上のAl−Fe含有晶出物の個数Aと、そのうちの絶対最大長が3μm以上のAl−Fe含有晶出物の個数Bと、をカウントし、(B/A)×100[%]にて算出できる。
また、前記したAl−Cr系金属間化合物、Al−Mg−Cu系金属間化合物及びAl−Mg−Zn系金属間化合物の絶対最大長や個数などは、Al−Fe含有晶出物の測定条件と同様にして測定できる。Al−Fe含有晶出物の測定条件については前述した通りである。
なお、耐力などの機械的特性は、例えば、JIS Z 2241:2011に準拠して試験片を作製し、金属材料引張試験を行うことにより求めることができる。
以上に説明した本発明に係る合金板によれば、化学組成と金属組織を前記したように特定している。そのため、例えば、当該合金板を用いて磁気ディスクを製造する場合、めっき前処理の酸エッチング処理や研削加工、鏡面加工、Ni−Pめっき膜の成膜を行った場合であっても、サブストレートの表面に微小なめっき欠陥(例えば、幅5μm以上のめっきピットや、直径10〜100μm、高さ0.2〜0.8μmの大きさのノジュールなど)が発生し難い。
[合金板の製造方法]
本発明に係る合金板は、磁気ディスク用の基板を製造する一般的な条件の製造方法及び設備で製造できる。例えば、前記した化学組成のAl合金を溶解し、前記した化学組成に調整した鋳塊を鋳造する鋳造工程、この鋳塊に対して均質化熱処理を行う均質化熱処理工程、均質化熱処理を行った鋳塊を熱間圧延して所定の板厚の熱間圧延板を得る熱間圧延工程、熱間圧延板を冷間圧延して冷間圧延板を得る冷間圧延工程を含む一連の工程に供することにより製造できる。なお、必要に応じて、冷間圧延工程の前か、又は冷間圧延工程の途中で中間焼鈍を行ってもよい。
(鋳造工程)
前記したAl合金の鋳塊を製造する際は、Al合金を溶解した際に、アルゴン(Ar)などの不活性ガスを溶湯中に吹き込んで脱水素処理を行うのが好ましい。鋳塊を製造する際の鋳造速度は、例えば、30〜80mm/分などとすればよい。鋳造温度の下限は、例えば、700℃とするのが好ましく、710℃とするのがより好ましい。鋳造温度の上限は、例えば、760℃とするのが好ましく、750℃とするのがより好ましい。また、鋳造時の鋳型から直接水冷する場合、水量の下限を例えば1.7L/cm/分などとすればよいが、2.2L/cm/分とするのが好ましく、2.6L/cm/分とするのがより好ましい。このように鋳造温度と冷却水量等を制御することで絶対最大長0.1μm以上のAl−Fe含有晶出物に対する絶対最大長が3μm以上のAl−Fe含有晶出物の占める個数割合を2.0%以下にできる。
(均一液相温度領域での冷却速度)
本発明においては、Ti、V、Zrを含有させることでそれぞれTiB2、VB2、ZrB2といったB系化合物を生成し、有害元素であるBの無害化を図っている。これらB系化合物は、660℃から640℃の間に生成するため、ディスク材の表面部分に位置付けられる箇所においてこの温度領域(均一液相温度領域)における冷却速度を制御することが必要である。なお、本発明において冷却速度を測定する位置は、表面部分に位置づけられる代表場所としてスラブ(鋳塊)の幅中央、表面から厚さ方向30mmの箇所が挙げられる。B系化合物が十分に生成するためには660℃から640℃の間の冷却速度を5.0℃/秒以下とすればよく、4.0℃/秒以下とすればより好ましく、3.0℃/秒とするとさらに好ましい。この冷却速度は前記した鋳造工程の条件を適切に選択することにより得られる。またB系化合物生成のための冷却速度の下限は特に設けないが、Al−Fe含有晶出物の粒成長を抑制するために0.4℃/秒以上とする。
(均質化熱処理工程)
均質化熱処理は、Al合金の鋳塊を面削した後、例えば、500〜570℃で2時間以上行うのが好ましい。このようにすると、Mg2SiなどのMg−Si系金属間化合物を十分に固溶できる。なお、面削量は、偏析の程度を勘案して適宜変更できるが、その量は片面当たり、例えば、3〜20mmの範囲が好ましい。
(熱間圧延工程)
熱間圧延は、例えば、490℃から400℃までの温度域を30分以内の短時間で終了するような条件で行うのが好ましい。このようにすると、熱間圧延終了までMg−Si系等の金属間化合物が粗大化したり、析出したりしないようにできる。
なお、熱間圧延終了温度が300℃前後を下回ると、その後の冷間圧延工程でリューダース模様が生じる。リューダース模様は研削後の表面には残らないため、磁気ディスク基板としての機能は損なわないが、研削前の合金板の美観が損なわれる。従って、これを防止するため、熱間圧延終了温度は300℃以上とするのが好ましい。
(冷間圧延工程)
冷間圧延は、例えば、熱間圧延終了温度が250℃以上の場合は70%以上の冷間圧延率で行い、熱間圧延終了温度が250℃未満の場合は55%以上の冷間圧延率で行うのが好ましい。このようにすると、後記する積み付け焼鈍後の結晶粒径を微細化するのに必要な歪エネルギーを本発明に係る合金板に加えることができる。
ここで、冷間圧延の前か、又は冷間圧延の途中で中間焼鈍を行う場合は、中間焼鈍後に冷間圧延率が70%以上である冷間圧延を行うのが好ましい。ここまでの工程を行うことにより、本発明に係る合金板を製造できる。
[ブランク及びその製造方法]
本発明に係るブランクは、前記した合金板からなる。本発明に係るブランクは、例えば、冷間圧延板から円盤状の板材(円盤状板材)を打ち抜く打ち抜き工程、及び矯正焼鈍を行う矯正焼鈍工程を含む一連の工程に供することにより製造できる。
(打ち抜き工程)
円盤状板材の作製は、前記冷間圧延を行った合金板を必要に応じて調質し、当該合金板をプレス成形により所定の円盤状に打ち抜くことで行う。
(矯正焼鈍工程)
矯正焼鈍は、円盤状板材を、高平坦度のスペーサ間に積み付けし、全体を加圧しながら積み付け焼鈍を行う(一般に、この矯正焼鈍を行ったものを「ブランク」という)。この矯正焼鈍は、例えば、30℃/時間以上の昇温速度で加熱し、300〜360℃の温度範囲で1〜5時間保持した後、30℃/時間以上の冷却速度で200℃以下まで冷却するのが好ましい。このようにすると、円盤状板材内の加工残留応力が除去されると共に、平坦度が向上する。
その後、円盤状板材の内周縁及び外周縁の端面に対し、所定の端面加工を施すことにより、ブランクを製造できる。
[サブストレート及びその製造方法]
本発明に係るサブストレートは、前記したブランクからなる。本発明に係るサブストレートの製造は、例えば、次のようにして行うことができる。
両面研削機に予めセットされたキャリアのポケット内に前記したブランクをセットする。そして、砥石により目標の板厚になるまで研削加工(鏡面加工)すると、サブストレート(グラインドサブストレート)を製造できる。
このようにして製造されたサブストレートの化学組成や金属組織は、前記した合金板及びブランクと同様であるが、鏡面加工を行っているので、ブランクや合金板と比較して高い平滑性を有している。また、製造したサブストレートは、絶対最大長0.1μm以上のAl−Fe含有晶出物に対する絶対最大長が3μm以上のAl−Fe含有晶出物の占める個数割合が2.0%以下である。そのため、めっき前処理の酸エッチング処理や研削加工、鏡面加工、無電解Ni−Pめっき膜の成膜を行った場合であっても、サブストレート(めっきサブストレート)の表面に微小なめっき欠陥(例えば、めっきピット、ノジュールなど)が発生し難い。また、研削傷も発生し難い。
[磁気ディスク及びその製造方法]
そして、前記製造したサブストレートの表面を酸エッチング処理し、無電解Ni−Pめっき膜を形成し、その表面を研磨する。次いで、このサブストレート上に、磁気特性を高めるための下地膜、Co基合金からなる磁性膜、及び磁性膜を保護するためのC(カーボン)からなる保護膜などをスパッタリング等により形成することにより、磁気ディスクを製造できる。
なお、前記した無電解Ni−Pめっき膜、下地膜、磁性膜、保護膜の形成は、磁気ディスクを製造するにあたって一般的に実施される条件で行うことができる。
合金板、ブランク及びサブストレートなどの製造条件については、例えば、特許第3471557号公報や特許第5199714号公報に詳しく記載されている。そのため、合金板、ブランク及びサブストレートを製造するにあたってこれらの文献を参照することもできる。
次に、本発明の効果を奏する実施例とそうでない比較例とを参照して、本発明の内容について具体的に説明する。
〔1〕 グラインドサブストレートの製造
まず、750℃で材料を溶解し、表1及び表2のNo.1〜44に示す化学組成となるように成分を調整し、厚さ500mmの鋳型を用いて鋳造温度720℃で鋳塊を鋳造した。なお、No.44に係る鋳塊を製造する際の鋳造温度は680℃とした。鋳造時の均一液相温度領域(660℃から640℃)における冷却速度(℃/秒)を表1及び表2に示した。
次いで、鋳塊表面の偏析層を除去する面削を行い、540℃で8時間の均質化熱処理を行った。その後、直ちに、熱間圧延を行い、板厚3mmの熱間圧延板を作製した。そして、この熱間圧延板を冷間圧延し、板厚1.0mmの冷間圧延板(合金板)を製造した。
当該合金板を外径95mm、内径25mmの円環形状に打ち抜き、20枚ずつ積み付け、320℃で3時間矯正焼鈍した後、30℃/時間の冷却速度で冷却した。そして、端面加工を行い、3.5インチタイプのブランクを製造した。次いで、ブランク表面(両面)をPVA砥石(日本特殊研砥株式会社製 4000番)によって片面10μm研削加工(鏡面加工)して、No.1〜44に係るグラインドサブストレート(以下、単に「サブストレート」という。)を製造した。
〔2〕 Al−Fe含有晶出物の絶対最大長の測定及び個数割合
製造したNo.1〜44に係るサブストレートにおけるAl−Fe含有晶出物の絶対最大長の測定と、絶対最大長0.1μm以上のAl−Fe含有晶出物に対して絶対最大長が3μm以上のAl−Fe含有晶出物の占める個数割合と、を次のようにして求めた。
No.1〜44に係るサブストレートの表面をSEM−EDS(日本電子株式会社製JSM−7001M)にて1000倍の倍率で20視野(0.2mm2)撮影し、COMPO像(組成像)を得た。そして、母相よりも白く写っている部分をAl−Fe含有晶出物とみなして絶対最大長を測定した。
また、前記した個数割合は、測定結果から絶対最大長0.1μm以上のAl−Fe含有晶出物の個数Aと、絶対最大長が3μm以上のAl−Fe含有晶出物の個数Bと、をカウントし、(B/A)×100[%]にて算出した。
〔3〕 耐力
製造した冷間圧延板の一部を切り出し、前記矯正焼鈍と同等の条件、すなわち、320℃で3時間の焼鈍を行った。そして、焼鈍した冷間圧延板からJIS Z 2241:2011に準拠して試験片を作製し、金属材料引張試験を行うことにより、耐力を求めた。耐力が90MPa以上であるものを合格(○)とし、90MPa未満のものを不合格(×)とした。
〔4〕 微小なめっき欠陥の有無
さらに、下記のようにしてNi−Pめっき膜を成膜し、めっきピット、ノジュールなどのめっき欠陥の有無を確認した。なお、微小なめっき欠陥とは、鏡面加工した無電解Ni−Pめっき膜に形成される幅5μm程度のめっきピットや、直径10〜100μm、高さ0.2〜0.8μmの大きさのノジュールなどをいう。
鏡面加工したサブストレートを、めっき前処理液(上村工業製AD−68F)に浸漬し、50℃、5分間の脱脂を行った。その後、めっき前処理液(上村工業株式会社製AD−101F)で68℃、2分間の酸エッチングを行い、30%硝酸で25℃、1分間浸漬し、デスマット処理を行った。デスマット処理を行ったサブストレートに、ジンケート処理液(上村工業株式会社製AD−301F−3X)を用いて20℃、30秒間のジンケート処理を行い、一旦、30%硝酸でZnを溶解させた後に、再度、20℃、15秒間のジンケート処理を行った。その後、ジンケート処理を行ったサブストレートを、無電解Ni−Pめっき液(上村工業株式会社製ニムデン(登録商標)HDX)に浸漬し、90℃、2時間の無電解Ni−Pめっき処理を行い、片面10μm程度の無電解Ni−Pめっき膜を成膜させてめっきサブストレートを製造した。そして、めっきサブストレートの表面をコロイダルシリカ系の研磨剤(株式会社フジミインコーポレーティッド製DISKLITE Z5601A)とパッド(カネボウ株式会社(現アイオン株式会社)製のN0058 72D等)を用いて研磨することで、磁性膜の成膜を行う前の状態のめっきサブストレートを製造した。
このようにして製造しためっきサブストレートのめっき表面をブルカー社製ContourGT X3(非接触3次元光干渉型表面形状粗さ計)を用いて対物レンズ×10、FOV×1、VSIモードで観察した。観察の結果、前記したサイズのめっきピット、ノジュールなどのめっき欠陥が確認されなかったものを微小なめっき欠陥「無」とし、これらのめっき欠陥のうちの少なくとも一つが確認されたものを微小なめっき欠陥「有」とした。なお、微小なめっき欠陥「無」を合格と評価し、微小なめっき欠陥「有」を不合格と評価した。
表1及び表2に、微小なめっき欠陥の有無とともに、各サブストレートの化学組成(質量%)を示す。また、表1及び表2に、B量/(Ti量+V量+Zr量)で算出される算出値が0.45以下であるか否か、すなわち、B量≦(Ti量+V量+Zr量)×0.45を満たすか否かを「○」、「×」で示す。さらに、表1及び表2に、鋳造時におけるディスク材の表面部分に位置付けられる箇所、具体的にはスラブの幅中央、表面から厚さ方向30mmの箇所の均一液相温度領域の冷却速度(表1及び表2において単に「冷却速度」と記載)を示す。また、表1及び表2に、絶対最大長0.1μm以上のAl−Fe含有晶出物に対する絶対最大長が3μm以上のAl−Fe含有晶出物の占める個数割合(表1及び表2において単に「個数割合」と記載)を示す。表2中の下線は、本発明の要件を満たしていないことを示す。なお、表1及び表2に示す化学組成は、グロー放電質量分析(Glow Discharge Mass Spectrometry:GDMS)及び固体発光分析により分析した値を記載している。特に、0.01質量%以下の成分については、GDMSで分析した値を記載している。
Figure 2018059138
Figure 2018059138
表1に示すように、No.1〜26に係るサブストレートは本発明の要件を満たしていたので前記した微小なめっき欠陥の評価が合格となった(いずれも実施例)。
これに対し、表2に示すように、No.27〜44に係るサブストレートは本発明の要件のうちの少なくとも1つを満たしていなかったので、板の製造ができなったり、板の耐力が不足して製品とならなかったり、微小なめっき欠陥の評価が不合格となった(いずれも比較例)。
No.27に係るサブストレートはMg量が多過ぎたので板の製造ができず、評価に至らなかった。
No.28に係るサブストレートはMg量が少な過ぎたので、板の耐力が不足し、製品とならなかった。
No.29、30に係るサブストレートはFe量が多過ぎたので、Al−Fe含有晶出物が粗大化し、個数割合が2.0%を超えた。そのため、No.29、30に係るサブストレートは、微小なめっき欠陥の評価が不合格となった。
No.31に係るサブストレートはSi量が多過ぎたので、Mg−Si系金属間化合物が粗大化した。そのため、ブランクに対して切削、研削等の鏡面加工を行った際にMg−Si系金属間化合物がブランクの表面から脱落し、窪みが形成された。従って、No.31に係るサブストレートは、微小なめっき欠陥の評価が不合格となった。
No.32に係るサブストレートはCr量が少な過ぎたので、板の耐力が不足し、製品とならなかった。
No.33に係るサブストレートはCr量が多過ぎたので、粗大なAl−Cr系金属間化合物が生成された。粗大なAl−Cr系金属間化合物は、切削、研削等の鏡面加工を行った際に表面から脱落し、窪みを形成した。そのため、No.33に係るサブストレートは、微小なめっき欠陥の評価が不合格となった。
No.34に係るサブストレートはCu量が多過ぎたので、粒界にAl−Mg−Cu系金属間化合物が析出した。そのため、めっき前処理の酸エッチング処理において粒界部が過エッチングを受け、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生が多大となった。従って、No.34に係るサブストレートは、微小なめっき欠陥の評価が不合格となった。
No.35に係るサブストレートはZn量が多過ぎたので、Znの析出核が大きくなった。そのため、めっき前処理の酸エッチング処理で形成される窪みも大きくなり、めっきピットが形成された。また、Al−Mg−Zn系金属間化合物が析出し、めっき前処理の酸エッチング処理において粒界部が過エッチングを受け、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生が多大となった。従って、No.35に係るサブストレートは、微小なめっき欠陥の評価が不合格となった。
No.36に係るサブストレートはCu量、Zn量が共に少な過ぎたのでめっき前処理によるジンケート皮膜の均一性が低下し、ノジュールが発生した。従って、No.36に係るサブストレートは、微小なめっき欠陥の評価が不合格となった。
No.37に係るサブストレートはCu量、Zn量が共に多過ぎたので粒界にAl−Mg−Cu系金属間化合物とAl−Mg−Zn系金属間化合物が析出し、めっき前処理の酸エッチング処理において粒界部が過エッチングを受け、Ni−Pめっき膜表面のノジュールの発生が多大となった。また、No.37に係るサブストレートはZnの析出核が大きくなった。そのため、めっき前処理の酸エッチング処理で形成される窪みも大きくなり、めっきピットが形成された。従って、No.37に係るサブストレートは、微小なめっき欠陥の評価が不合格となった。
No.38、39に係るサブストレートはTi量、V量及びZr量に対し、B量が多かったため請求項の関係式を満たさなかった。そのため、Bを無害化することができず、Al−Fe含有晶出物が粗大化し、個数割合が2.0%を超えた。そのため、No.38、39に係るサブストレートは、微小なめっき欠陥の評価が不合格となった。
No.40に係るサブストレートはTi量、V量及びZr量が本発明の要件を満たしていたが含有量が多く、かつB量が多過ぎたので、TiB2、ZrB2、VB2が多く生成した。そのため、No.40に係るサブストレートは、鋳塊の結晶粒が微細化し、良好な金属組織が得られず、製品とならなかった。
No.41に係るサブストレートはTi量が多過ぎたので、粗大なAl−Ti化合物が生成した。そのため、No.41に係るサブストレートは、微小なめっき欠陥の評価が不合格となった。
No.42に係るサブストレートはV量が多過ぎたので、粗大なAl−V化合物が生成した。そのため、No.42に係るサブストレートは、微小なめっき欠陥の評価が不合格となった。
No.43に係るサブストレートはZr量が多過ぎたので、粗大なAl−Zr化合物が生成した。そのため、No.43に係るサブストレートは、微小なめっき欠陥の評価が不合格となった。
No.44に係るサブストレートは、鋳塊を製造する際の冷却速度(鋳造時の均一液相温度領域における冷却速度)が0.3℃/秒となるように鋳造した。そのため、TiB2、VB2、ZrB2といったB系化合物は生成したものの、Al−Fe含有晶出物が成長した結果、個数割合が2.0%を超えた。そのため、No.44に係るサブストレートは、微小なめっき欠陥の評価が不合格となった。

Claims (3)

  1. Mg:3〜6質量%、
    Fe:0.030質量%以下、
    Si:0.030質量%以下、
    Cr:0.010〜0.200質量%、
    Ti:0.0100質量%以下、
    V:0.0100質量%以下、
    Zr:0.01000質量%以下含有し、
    B:0.00020質量%以下であるか、又は、0.00020質量%を超え0.00300質量%以下かつB量≦(Ti量+V量+Zr量)×0.45を満たし、
    Cu:0.100質量%以下及びZn:0.400質量%以下のうちの少なくとも一方を含み、
    残部がAl及び不可避的不純物からなり、
    絶対最大長0.1μm以上のAl−Fe含有晶出物に対する絶対最大長が3μm以上のAl−Fe含有晶出物の占める個数割合が2.0%以下
    であることを特徴とする磁気ディスク用Al−Mg系合金板。
  2. 請求項1に記載の磁気ディスク用Al−Mg系合金板からなる磁気ディスク用Al−Mg系合金ブランク。
  3. 請求項2に記載の磁気ディスク用Al−Mg系合金ブランクからなる磁気ディスク用Al−Mg系合金サブストレート。
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