JP2010168602A - 磁気ディスク用アルミニウム合金基板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】芯材の両面に皮材を備えた磁気ディスク用アルミニウム合金基板であって、芯材は、Si:0.1〜1.5質量%、Mg:1.0〜3.0質量%、Mn:0.5〜2.0質量%、Cu:2.0質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、皮材は、Si:0.03質量%以下、Fe:0.03質量%以下、Mg:3.0〜5.0質量%、Cr:0.01〜0.35質量%を含有し、さらに、Cu:0.01〜0.20質量%、および、Zn:0.01〜0.50質量%のうち少なくとも一種を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、耐力が100MPa以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
特許文献1に記載の技術では、Al−Fe系金属間化合物やMg−Si系金属間化合物のサイズを低減させるために、Si、Feの含有量を抑えている。しかし、このような不純物を低減させるには、高純度の地金を使用する必要があるため、NiPめっき膜表面の高平滑性を備えた磁気ディスク用基板の製造においては、素材コストが高くなるという問題がある。
まず、高純度地金の使用量を減らすため、高純度皮材と低純度芯材のクラッド材とする。そして、芯材と皮材との圧着性の向上を図るため、芯材のMg濃度を3.0質量%以下の低濃度とする。また、Mg含有量の低減による強度不足を解消するため、芯材にMn:0.5〜2.0質量%を添加する。このように、芯材にMnを添加することで再結晶温度が上昇し、従来の積み付け条件で加圧焼鈍を行った場合、芯材成分の再結晶が不十分となり、焼鈍後も現行以上の強度を保持することができる。なお、再結晶が不十分である場合でも、その後の磁性膜等の加熱工程での加熱温度が加圧焼鈍時の温度以下であれば、平坦度は悪化しない。本願発明者らは、これらの事項を見出し、本発明の完成に至った。
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、芯材と、この芯材の両面に形成された皮材と、を備え、芯材および皮材は、所定の元素を所定量含有し、耐力が100MPa以上であることを特徴とするものである。
以下、各成分の含有量、および、耐力を数値限定した理由について説明する。
芯材は、Si:0.1〜1.5質量%、Mg:1.0〜3.0質量%、Mn:0.5〜2.0質量%、Cu:2.0質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる。
Siは、強度を向上させる効果がある。Siの含有量が0.1質量%未満では、強度増効果が小さくなり、強度が低下する。一方、1.5質量%を超えると、Mnとの化合物が形成されるため、Mnの固溶量が低下し、強度が低下する。また、Siの含有量が1.5質量%を超えると、Siを含む化合物が増加することで延性が低下し、重ね合わせ後の熱間圧延後に端面に耳割れが発生する。よって、Siの含有量は、0.1〜1.5質量%とする。
Mgは、強度を向上させる効果がある。Mgの含有量が1.0質量%未満では、強度増効果が小さくなり、強度が低下する。一方、Mgの含有量が3.0質量%を超えると、芯材の高強度化が進んで圧延時の圧着性が低下する。よって、Mgの含有量は、1.0〜3.0質量%とする。
Mnは、強度を向上させる効果がある。Mnの含有量が0.5質量%未満では、強度増効果が小さくなり、強度が低下する。一方、Mnの含有量が2.0質量%を超えると、芯材用アルミニウム合金の融点が上昇し、溶解するのが困難となる。よって、Mnの含有量は、0.5〜2.0質量%とする。
Cuは、強度向上に寄与するが、2.0質量%を超えて添加しても、磁気ディスク用基板では300〜350℃で加圧焼鈍を行う工程があるため、通常のAl−Cu系合金でみられるような時効析出による強度上昇が得られず、強度向上の効果が飽和する。よって、Cuの含有量は、2.0質量%以下とする。なお、下限値は特に限定されないが、強度向上の効果を得るため、0.2質量%以上添加するのが好ましい。
芯材の成分は前記の他、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものである。なお、不可避的不純物としては、例えば、Fe、Ti、V、B等が挙げられ、Feは、1.0質量%以下、Ti、V、Bは、それぞれ0.1質量%以下の含有量であれば、本発明の効果を妨げず、芯材に含有することは許容される。
皮材は、Si:0.03質量%以下、Fe:0.03質量%以下、Mg:3.0〜5.0質量%、Cr:0.01〜0.35質量%を含有し、さらに、Cu:0.01〜0.20質量%、および、Zn:0.01〜0.50質量%のうち少なくとも一種を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる。
Siは、通常、地金不純物としてアルミニウム合金中に混入するものであり、鋳造工程等において、鋳塊中にMg−Si系金属間化合物を生じさせる。Siの含有量が0.03質量%を超えると、粗大なMg−Si系金属間化合物が鋳塊中に生じ、この鋳塊を用いて作製されるアルミニウム合金基板は、その表面に粗大なMg−Si系金属間化合物を有することとなる。そして、このアルミニウム合金基板を使用して磁気ディスク用基板を作製すると、この粗大なMg−Si系金属間化合物は、アルミニウム合金基板の研削加工等の所謂鏡面加工時に、基板表面から脱落し、また、アルミニウム合金基板のめっき前処理において、基板から溶解する。そのため、アルミニウム合金基板に窪みが生じ、NiPめっき膜表面にピットを発生させ、平滑性を低下させる原因となる。それと共に、Mgのみが溶解し、Siが溶け残った場合も、めっき前処理のジンケート工程で、Si上では亜鉛の置換反応が起こらないため、無電解NiPめっき処理でもSi上にNiPめっき膜が成長しない。そのため、NiPめっき膜の密着性不足が生じ、磁性膜のスパッタ工程等の加熱によりNiPめっき膜にフクレを生じ、平滑性を低下させる。よって、Siの含有量は、0.03質量%以下とする。なお、下限値は特に限定されないが、Siの含有量が0.005質量%未満では、地金が高純度となり、コストが高くなってしまう。よってSiの含有量は0.005質量%以上が好ましい。
Feも、通常、地金不純物としてアルミニウム合金中に混入し、鋳造工程等において、鋳塊中にAl−Fe系金属間化合物を生じさせる。このAl−Fe系金属間化合物は、めっき前処理において、アルミニウム合金基板から溶解し、アルミニウム合金基板に窪みが生じ、NiPめっき膜表面にピットを発生させる原因となる。Feの含有量が0.03質量%を超えると、粗大なAl−Fe系金属間化合物が増加し、研削加工等の所謂鏡面加工時にアルミニウム合金基板表面から脱落し、アルミニウム合金基板に窪みが生じ、NiPめっき膜表面にピットを発生させる。よって、Feの含有量は、0.03質量%以下とする。なお、下限値は特に限定されないが、Feの含有量が0.005質量%未満では、地金が高純度となり、コストが高くなってしまう。よってFeの含有量は0.005質量%以上が好ましい。
Mgは、硬度を向上させる効果がある。Mgの含有量が3.0質量%未満では、硬度の増加の効果が小さくなり、硬度が低下する。そのため、表面に傷がつきやすくなる。一方、Mgの含有量が5.0質量%を超えると、酸化皮膜が厚くなり、圧着性が低下し、熱間圧延のパス数が増加すると共に、強度が上昇し、熱間圧延中に表面にクラックが発生する。よって、Mgの含有量は、3.0〜5.0質量%とする。
Crは、鋳造工程、均質化熱処理工程において、微細な化合物として析出し、結晶粒成長を抑制する効果がある。特にCrを0.01質量%以上加えた場合には、均質化熱処理および熱間粗圧延での結晶粒成長を抑制し、再結晶粒の異常成長を抑え組織を均質化する効果がある。Crの含有量が0.01質量%未満では、前記の効果が期待できない。一方、Crの含有量が0.35質量%を超えると、結晶粒を安定化する効果が大きすぎるため、冷間圧延工程後に焼鈍した場合、等軸な再結晶組織とならず、圧延方向に伸びた変形組織が残存した組織となるため、組織の異方性が大きくなり、NiPめっき膜表面の平滑性が悪化する。それと共に、初晶として粗大なAl−Fe−Cr系金属間化合物およびAl−Cr系金属間化合物が晶出し、磁気ディスク用基板作製時の研削加工等の所謂鏡面加工等で脱落し、NiPめっき膜表面のピットの原因となる。よって、Crの含有量は、0.01〜0.35質量%とする。
Cuは、NiPめっき膜表面の平滑性改善のために有効な元素である。Cuはアルミニウム合金中に均一に固溶し、めっき前処理のジンケート工程において、ジンケート浴中のZnイオンをアルミニウム合金基板の表面へ均一に微細析出させる効果を持っている。これによってNiPめっき膜表面のノジュールの発生を抑制することができる。Cuの含有量が0.01質量%未満では、前記の効果が期待できない。一方、Cuの含有量が0.20質量%を超えると、めっき前処理において、粒界にCuが析出して粒界部が過エッチングを受け、NiPめっき膜表面のノジュールの発生が多大となる。よって、Cuの含有量は、0.01〜0.20質量%とする。なお、Znが0.01質量%以上含まれていれば、Cuの含有量は0.01質量%未満でもよく、この場合、Cu添加の効果がないだけで、Cuの含有については、問題はない。
ZnもNiPめっき膜表面の平滑性改善のために有効な元素である。ZnもCuと同様、アルミニウム合金中に均一に固溶し、ジンケート工程において、ジンケート浴中のZnイオンをアルミニウム合金基板の表面へ均一に微細析出させる効果を持っている。また、含有量の増加に伴いZnがアルミニウム合金基板中に均一に析出してめっき前処理時の酸エッチング工程でのエッチング起点、およびジンケート工程時のZnイオン析出拠点になる。このため、結晶粒による段差を抑制する効果を有する。Znの含有量が0.01質量%未満では、前記の効果が期待できない。一方、Znの含有量が0.50質量%を超えると、Znの析出核が大きくなるのに伴って、めっき前処理時に形成されるエッチングピットも大きくなり、NiPめっき膜表面のピットの原因となる。よって、Znの含有量は、0.01〜0.50質量%とする。なお、Cuが0.01質量%以上含まれていれば、Znの含有量は0.01質量%未満でもよく、この場合、Zn添加の効果がないだけで、Znの含有については、問題はない。
皮材の成分は前記の他、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものである。なお、不可避的不純物としては、例えば、Ti、V、B等が挙げられ、これらは、それぞれ0.01質量%以下の含有量であれば、本発明の効果を妨げず、皮材に含有することは許容される。
本発明のアルミニウム合金基板は、現行の磁気ディスク用アルミニウム合金基板と同等以上の強度を持つことを目的とするものであるが、耐力が100MPa未満では、強度が低く、現行の磁気ディスク用アルミニウム合金基板と同等以上の強度を確保することができない。よって、アルミニウム合金基板の耐力は、100MPa以上とする。なお、このような耐力は、芯材および皮材の成分組成(主に、芯材のSi、Mg、Mn、皮材のMgの成分組成)、および、加圧焼鈍の条件により制御することができる。
前記したように、Al−Fe系金属間化合物、および、Mg−Si系金属間化合物は、NiPめっき膜表面の平滑性を低下させる要因となる。このような金属間化合物のうちでも、最大長さが7μmを超えるAl−Fe系金属間化合物や、最大長さが4μmを超えるMg−Si系金属間化合物は、ピット発生等に起因してNiPめっき膜表面の平滑性を低下させるおそれがあり、アルミニウム合金基板の表面に、最大長さが7μmを超えるAl−Fe系金属間化合物の個数が2個/mm2以上、または、最大長さが4μmを超えるMg−Si系金属間化合物の個数が2個/mm2以上存在すると、NiPめっき膜表面の平滑性が低下する傾向にある。したがって、アルミニウム合金基板の表面において、最大長さが7μmを超えるAl−Fe系金属間化合物の個数が1個/mm2以下、かつ最大長さが4μmを超えるMg−Si系金属間化合物の個数が1個/mm2以下であることが好ましい。
次に、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法について説明する。
本発明に係るアルミニウム合金基板の製造方法は、前記説明したアルミニウム合金基板を製造する方法であり、クラッド材用部材準備工程S1と、重ね合わせ工程S2と、均質化熱処理工程S3と、熱間圧延工程S4と、冷間圧延工程S5と、打ち抜き工程S6と、加圧焼鈍工程S7と、を含む。
以下、各工程について説明する。
クラッド材用部材準備工程S1は、芯材用部材、および、皮材用部材を準備する工程である。
クラッド材用部材準備工程S1における芯材用部材および皮材用部材の作製方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法で作製すればよい。例えば、以下のように作製することができる。
まず、前記した組成を有する芯材用アルミニウム合金、および、前記した組成を有する皮材用アルミニウム合金を連続鋳造により溶解、鋳造し、面削(表面平滑化処理)、均質化熱処理して、芯材用鋳塊(芯材用部材)、皮材用鋳塊を得る。また、皮材用鋳塊については、面削、均質化熱処理後、それぞれ所定厚さに熱間圧延またはスライスして、皮材用部材を得る。なお、クラッド材用部材準備工程S1における均質化熱処理、熱間圧延等の条件は、特に限定されるものではなく、芯材用部材、および、皮材用部材を通常得る場合の条件でよい。
重ね合わせ工程S2は、前記芯材用部材、および、前記皮材用部材を所定配置に重ね合わせて重ね合わせ材とする工程である。
重ね合わせ方法は、従来公知の方法、例えば、芯材用部材および皮材用部材の両端部をバンド掛けする方法が用いられる。バンド掛けする方法以外に溶接止めするなどの方法を用いても問題ない。なお、重ね合わせたときの各隙間は、最大で10mm以内、望ましくは、5mm以内とするのが好ましい。
均質化熱処理工程S3は、前記重ね合わせ材に均質化熱処理を行う工程である。
前記のようにして作製した重ね合わせ材は、内部組織を均一化するため、および、熱間圧延を行いやすいように柔らかくするために均質化熱処理を施す。ここで、均質化熱処理の焼鈍条件としては、加熱前および昇温中に皮材中で析出あるいは粗大化したMg−Si系化合物を十分に固溶させるため、500℃以上で4時間以上行うことが好ましい。Mg−Si系化合物は、500℃以上で固溶するため、Mg−Si系金属間化合物の微細化のためには、500℃以上で均質化熱処理することが有効である。また、処理時間を4時間以上とすることで、固溶効果が十分に発揮されるため、処理時間は4時間以上とするのが好ましい。この条件で均質化熱処理を行うと共に、後記する熱間圧延開始温度を500℃以上とすることで、Mg−Si系金属間化合物の微細化により、めっき面の平滑性がより向上する。なお、均質化熱処理温度が570℃を超えると、粒界などのMgの偏析部分が溶解するバーニングと呼ばれる現象が生じやすくなるため、570℃以下が好ましく、また、経済性の観点から、熱処理時間は、24時間以下が好ましい。
熱間圧延工程S4は、前記均質化熱処理工程S3の後に熱間圧延を行う工程である。
熱間圧延方法は、従来公知の圧延法で行う。使用する圧延機としては、例えば、2段圧延機または4段以上の圧延機を使用することができる。また、所定厚さのアルミニウム合金板が得られるまで、熱間圧延を繰り返し行ってもよい。ここで、熱間圧延開始温度としては、加熱前および昇温中に皮材中で析出あるいは粗大化したMg−Si系化合物を十分に固溶させるため、500℃以上で行うことが好ましい。熱間圧延開始温度を500℃以上とすることで、均質化熱処理から熱間圧延開始までの間に、Mg−Si系金属間化合物の析出を抑制することができ、粗大なMg−Si系金属間化合物の発生を抑制することができる。そのため、前記した均質化熱処理条件を適正にすると共に、この条件で熱間圧延を行うことで、Mg−Si系金属間化合物の微細化により、めっき面の平滑性がより向上する。
冷間圧延工程S5は、前記熱間圧延工程S4の後に冷間圧延を行う工程である。
冷間圧延処理としては、一例として、30〜99%の圧下率で行うことができる。ここで、冷間圧延後の冷間圧延材における片面の皮材の厚みが、30〜150μmであることが好ましい。冷間圧延材の片面の皮材の厚みを30μm以上とすることで、板厚偏差のバラツキ等が抑制され、研削後のアルミニウム合金基板の表面に芯材が露出しにくくなるため、NiPめっき表面の平滑性がより向上する。一方、厚みを150μm以下とすることで、高純度地金を使用したアルミニウム合金の使用量を減少させることができ、素材コスト面で有利となる。
打ち抜き工程S6は、前記冷間圧延工程S5で作製された冷間圧延材から円板を打ち抜く工程である。打ち抜き工程S6により、磁気ディスク用のディスクブランクである円板が作製される。
ブランクの作製は、例えば、プレス機を使用し、冷間圧延材をダイスおよびポンチにより打ち抜きして、例えば、外径20〜100mm、内径3〜26mmの円板状に打ち抜くことにより作製する。なお、ここでの円板状とは、平面視で中央部分が空洞であるドーナツ状のブランクを含むものである。
加圧焼鈍工程S7は、前記打ち抜き工程S6で作製された前記円板に加圧焼鈍を行う工程である。
加圧焼鈍により、円板(ブランク)の平坦度が矯正され、アルミニウム合金基板となる。加圧焼鈍の方法としては、例えば、図2に示すように、ブランク1を10〜30枚積み重ね、積み重ねたブランク1の両端をスペーサ2と呼ばれる円筒状の冶具で挟み、荷重をかけて、加圧焼鈍することにより行う。
ここで、加圧焼鈍は、300〜350℃の温度で、2〜10時間加圧することにより行う。加圧焼鈍温度が300℃未満、または、保持時間が2時間未満では、良好な平坦性が得られない。一方、加圧焼鈍温度が350℃を超えると、芯材の再結晶が進行し、強度が低下する。また、10時間を超えて保持しても、平坦度の矯正効果がそれ以上得られないため、経済的に不利である。
アルミニウム合金基板の表面をダイヤモンドバイトで切削して鏡面とし、この表面を走査型電子顕微鏡(SEM)のCOMPO像で1000倍の倍率で20視野観察した。観察の結果、マトリックスより白く写る部分をAl−Fe系金属間化合物、黒く写る部分をMg−Si系金属間化合物としてカウントを行った。そして、最大長さが7μmを超えるAl−Fe系金属間化合物の単位面積当たりの個数(個数密度:個/mm2)と、最大長さが4μmを超えるMg−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数(個数密度:個/mm2)を計算した。
圧着性の評価は、重ね合わせ後の熱間圧延により圧着した熱間圧延材について、芯材と皮材の圧着状態を目視にて観察することにより行った。両面とも剥離することなく圧着したものを、圧着性が良好(○)、両面もしくは片面に剥離が生じたものを、圧着性が不良(×)とした。
強度の評価は、加圧焼鈍後のアルミニウム合金基板を用い、JISZ2241規定の引張試験を行い、耐力を測定することにより行った。なお、ここでは、耐力には0.2%耐力を使用した。耐力が120MPa以上のものを、強度が極めて良好(◎)、100MPa以上120MPa未満のものを、強度が良好(○)、100MPa未満のものを、強度が不良(×)とした。
NiPめっき膜表面の平滑性の評価は、NiPめっきサブストレートの表面に深さ1μm以上の傷やピットもしくは高さ1μm以上のフクレが生じない場合は、NiPめっき膜表面の平滑性が極めて良好(◎)、生じた場合は、NiPめっき膜表面の平滑性が不良(×)とした。なお、GR加工後に表面の一部に芯材が露出したり、表面の一部に金属間化合物の多い場所が存在したりしたために、NiPめっき膜表面の平滑性がやや低下したものの、使用に際して問題ないものを、平滑性が良好(○)とした。
S2 重ね合わせ工程
S3 均質化熱処理工程
S4 熱間圧延工程
S5 冷間圧延工程
S6 打ち抜き工程
S7 加圧焼鈍工程
1 ブランク
2 スペーサ
Claims (5)
- 芯材と、この芯材の両面に形成された皮材と、を備えた磁気ディスク用アルミニウム合金基板であって、
前記芯材は、Si:0.1〜1.5質量%、Mg:1.0〜3.0質量%、Mn:0.5〜2.0質量%、Cu:2.0質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、
前記皮材は、Si:0.03質量%以下、Fe:0.03質量%以下、Mg:3.0〜5.0質量%、Cr:0.01〜0.35質量%を含有し、さらに、Cu:0.01〜0.20質量%、および、Zn:0.01〜0.50質量%のうち少なくとも一種を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、
前記磁気ディスク用アルミニウム合金基板の耐力が100MPa以上であることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板。 - 前記磁気ディスク用アルミニウム合金基板の表面において、最大長さが7μmを超えるAl−Fe系金属間化合物の個数が1個/mm2以下、かつ最大長さが4μmを超えるMg−Si系金属間化合物の個数が1個/mm2以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
- 請求項1または請求項2に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法であって、
芯材用部材、および、皮材用部材を準備するクラッド材用部材準備工程と、
前記芯材用部材、および、前記皮材用部材を所定配置に重ね合わせて重ね合わせ材とする重ね合わせ工程と、
前記重ね合わせ材に均質化熱処理を行う均質化熱処理工程と、
前記均質化熱処理工程の後に熱間圧延を行う熱間圧延工程と、
前記熱間圧延工程の後に冷間圧延を行う冷間圧延工程と、
前記冷間圧延工程で作製された冷間圧延材から円板を打ち抜く打ち抜き工程と、
前記打ち抜き工程で作製された前記円板に加圧焼鈍を行う加圧焼鈍工程と、を含み、
前記加圧焼鈍を、300〜350℃の温度で、2〜10時間加圧することにより行うことを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法。 - 前記均質化熱処理を、500℃以上で4時間以上の条件で行い、かつ前記熱間圧延の開始温度を、500℃以上とすることを特徴とする請求項3に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法。
- 前記冷間圧延材における片面の皮材の厚みが、30〜150μmであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法。
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