JP2009287062A - バッキングプレート用銅合金とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】バッキングプレートに望まれている特性(例えば、熱伝導性、機械的強度耐熱性)に加えて、切削加工性に優れた特性を兼ね備えたバッキングプレート用銅合金とその製造方法を提供する。
【解決手段】Fe:0.10mass%以上、0.50mass%以下、Ni:0.10mass%以上、0.50mass%以下、P:0.05mass%以上、0.25mass%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、3μm以上の粗大なFe−Ni−P化合物粒子の数が圧延方向に垂直な断面において1個/cm2以下のバッキングプレート用銅合金である。
【選択図】なし

Description

本発明は、銅合金製バッキングプレート及びその製造方法に係り、特に、スパッタリング装置におけるターゲット材の冷却に用いられるスパッタリング冷却用のバッキングプレート用銅合金とその製造方法に関するものである。
スパッタリングは、低圧の不活性ガス中で2つの電極間に高電圧を印加してグロー放電を生じさせ、ガスイオン衝撃によって陰極に配置したターゲットからその構成原子を叩き出し、これを対向する基板上に堆積させる薄膜形成技術の一つである。
スパッタリングにおいて、ターゲットに投入されるエネルギーの大半はターゲットの表面領域で熱に変換される。この熱によりターゲットの温度が過剰に上昇した場合、ターゲット材の組織が変化し、基板上に所望の膜質が得られないことがある。このため、ターゲットの温度が過剰に上昇しないように、ターゲットの裏面にはバッキングプレートと呼ばれる冷却板が配置される。
バッキングプレートの構造としては、例えば、平滑な板に溝を形成し、これを蓋で覆い接合して内部水路とする構造が一例として挙げられる。バッキングプレートは、ターゲットからの熱を放散させる(ターゲットを冷却する)役割とターゲットを固定(保持)する役割、さらにはスパッタリング電極としての役割も果たす。ターゲットとバッキングプレートとは、InもしくはSn合金系の低融点ろう材等により接合(ボンディング)されることが多い。
ターゲットを効率よく冷却するためには、バッキングプレート自体の熱伝導性が良好であることが望ましい。バッキングプレート自体の熱伝導性が低いと、冷却効果が小さく、ターゲット材の温度上昇は避け難い。このため、一般的には、熱伝導性の良好な金属材がバッキングプレート材料として用いられる。
従来、バッキングプレートには、特許文献1〜4に示されるように、無酸素銅、銅合金、アルミニウム合金、ステンレス鋼、もしくは他の金属及び合金が使用されてきた。
上述したように、熱伝導性が良好であることがバッキングプレートに求められる一方で、バッキングプレートには、表裏の温度差や圧力差に起因する応力に耐え得る高い機械的強度(例えば、高い0.2%耐力や高いヤング率)を有することも求められる。バッキングプレートの機械的強度が低いと、スパッタリング中あるいは繰り返しの使用において、バッキングプレートに大きな弾性変形あるいは塑性変形を生じることがある。大きな弾性変形が生じた場合、ターゲット材との接合部やターゲット材自体に割れが発生することがある。また、塑性変形した場合、バッキングプレートの交換が必要となり、コスト・アップとなる。また、ボンディング工程等の加熱によってバッキングプレートが軟化し、機械的強度が経時的に低下するのを最小限に抑えるために、バッキングプレートは良好な耐熱性を有することが望ましい。
一方、スパッタリング(すなわちバッキングプレートの用途)を活用したプロセス技術は、半導体デバイス製造や平面ディスプレイ製造などの幅広い分野における基盤技術として発展してきた。
近年、スパッタリング工程の生産性の向上と低コスト化を実現するため、処理基板は大面積化の一途を辿っている。特に、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)をはじめとする平面パネル・ディスプレイ(FPD)の製造分野では、市場ニーズに対応したディスプレイ・パネル自体の大画面化に加えて、1枚のガラス基板(マザー・ガラス基板)で同時に処理を行うディスプレイ・パネルの数(面取り数)を増やすことにより低コスト化が図られている。マザー・ガラス基板のサイズは、2000年頃の第4世代(730×920mm2)から急速に拡大し、第5世代(1100×1300mm2)、第6世代(1500×1800mm2)、第7世代(1800×2100mm2)、第8世代(2200×2600mm2)となり、ついには第9世代(2600×3100mm2)へと大面積化が進行している。
ここにおいて、このような大面積ガラス基板を用いて、FPDの生産性(歩留り)を向上させ、かつ低コスト化を実現するためには、大面積ガラス基板の全面にわたって均一かつ高品質な製膜プロセスを実現する技術が必要不可欠である。また、それに伴って、スパッタリング・ターゲットおよびバッキングプレートのサイズも必然的に拡大することが要求されている。スパッタリング・ターゲットのサイズの例を示すと、第4世代用で1130×1200mm2、第5世代用で1430×1700mm2などがある。また、バッキングプレートのサイズの例を示すと、第4世代用で1170×1300mm2、第5世代用で1450×2050mm2などがあり、前述のマザー・ガラス基板やスパッタリング・ターゲットよりも更に大面積を要求されていることが判る。
特開平10−110226号公報 特開平10−168532号公報 特開平4−165039号公報 特開2001−329362号公報 特許第2552920号公報
しかしながら、従来の純銅製バッキングプレートは、熱伝導度は良好な反面、ヤング率が小さく、0.2%耐力も低いため、内部応力により変形が生じやすい。
一方、ステンレス鋼製バッキングプレートは、0.2%耐力が高い長所を有するが、熱伝導率が極めて小さいため、冷却効果が小さく、ターゲット温度が上昇しやすいという欠点を有する。
上述のように、近年FPD製造用スパッタリング装置では、大面積のターゲット材が用いられるようになり発生する熱も大きくなってきた。このため、ターゲット側に純銅を使用し、反対側にステンレス等の0.2%耐力が高い材料を使用するという対策をとることもあるが、この場合、銅とステンレス間に生じる熱歪みの問題や製造コストが高くなるといった問題が発生する。
以上のようなことから、熱伝導性、0.2%耐力、および耐熱性に優れた特性を兼ね備えたバッキングプレート用材料が望まれていた。
更に、バッキングプレートの製造には水路を形成するためにフライス等による切削加工を行うが、無酸素銅や特許文献5にみられるCu−Fe−P系の銅合金は切削加工性が悪く、大きいバリが発生して除去に手間がかかると共に切削工具の寿命が短いといった問題が見られた。
すなわち、バッキングプレート用材料には高い熱伝導性、高い強度(ヤング率と0.2%耐力)、高い耐熱性、良好な切削加工性が求められるが、従来のバッキングプレート用材料ではこれら全ての特性を充分に満足することができなかった。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、バッキングプレートに望まれている特性(例えば、熱伝導性、機械的強度耐熱性)に加えて、切削加工性に優れた特性を兼ね備えたバッキングプレート用銅合金とその製造方法を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために鋭意研究したところ、Cu−Fe−Ni−P系合金を特定の熱処理を施すことで、微細なFe−Ni−P化合物を析出物させることができ、バッキングプレートに望まれている特性(例えば、熱伝導性、機械的強度耐熱性)に加えて、切削加工性に優れた特性を兼ね備えたバッキングプレート用銅合金が達成可能であることを見出した。
すなわち本発明は、Fe:0.10mass%以上、0.50mass%以下、Ni:0.10mass%以上、0.50mass%以下、P:0.05mass%以上、0.25mass%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、3μm以上の粗大なFe−Ni−P化合物粒子の数が圧延方向に垂直な断面において1個/cm2以下であることを特徴とするバッキングプレート用銅合金である。
また、本発明は、Fe:0.10mass%以上、0.50mass%以下、Ni:0.10mass%以上、0.50mass%以下、P:0.05mass%以上、0.25mass%以下、Mg,Sn,Zn,Fe,Co,Mn,Zr,Ti,Cr,Agのうちいずれが1種以上を総量で0.01mass%以上、0.50mass%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、3μm以上の粗大なFe−Ni−P化合物粒子の数が圧延方向に垂直な断面において1個/cm2以下であることを特徴とするバッキングプレート用銅合金である。
更に、本発明は、Fe:0.10mass%以上、0.50mass%以下、Ni:0.10mass%以上、0.50mass%以下、P:0.05mass%以上、0.25mass%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる銅合金を鋳造後、800〜950℃の温度において30分以上加熱して50%以上の加工率で熱間圧延を行った後、600℃以上の温度から25℃/min以上の冷却速度で300℃以下まで急冷し、次いで冷間圧延を実施し、更に350〜550℃の温度において30分〜10時間の時効硬化処理を行うことを特徴とするバッキングプレート用銅合金の製造方法である。
本発明によれば、次のような優れた効果を発揮するものである。
(1)熱伝導率が250W/m・K以上、0.2%耐力が450MPa以上の特性を有する熱伝導性及び機械的強度、更には耐熱性に優れたバッキングプレート用銅合金を得ることができる。
(2)水路の形成の際に切削加工性に優れたバッキングプレート用銅合金を得ることができる。
以下、本発明の好適な一実施の形態を詳述する。
〔バッキングプレート用銅合金の組成〕
本実施の形態におけるバッキングプレート用銅合金は、Fe:0.10mass%以上、0.50mass%以下、Ni:0.10mass%以上、0.50mass%以下、P:0.05mass%以上、0.25mass%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる、若しくはFe:0.10mass%以上、0.50mass%以下、Ni:0.10mass%以上、0.50mass%以下、P:0.05mass%以上、0.25mass%以下、Mg,Sn,Zn,Co,Mn,Zr,Ti,Cr,Agのうちいずれか1種以上を総量で0.01mass%以上、0.50mass%を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなることを特徴とする。
本実施の形態において、バッキングプレート用銅合金を構成する合金成分の添加理由と含有量の限定理由を以下に説明する。
Feは、溶体化処理によりCu中に固溶させた後、時効処理を施すことにより、Ni,Pとの化合物を形成して析出し、熱伝導性、機械的強度、耐熱性を向上させる作用がある。この化合物を均一微細に析出させることにより、切削加工時の切子やバリを小さくし、切削加工性を向上させる作用がある。また、固溶状態においても強度と耐熱性を向上させる作用がある。
ここで、Feの含有量が0.10mass%未満では充分な機械的強度、耐熱性が得られず、0.50mass%を超えて含有すると熱伝導性の低下や熱間加工性の低下が顕著になる。従って、Feの含有量は0.10mass%以上、0.50mass%以下とする。
NiもFeと同様に溶体化処理によりCu中に固溶させた後、時効処理を施すことにより、Fe,Pとの化合物を形成して析出し、熱伝導性、機械的強度、耐熱性を向上させる作用がある。また、固溶状態においても強度と耐熱性を向上させる作用がある。
ここで、Niの含有量が0.10mass%未満では充分な機械的強度、耐熱性が得られず、0.50mass%を超えて含有すると熱伝導性の低下や熱間加工性の低下が顕著になる。従って、Niの含有量も0.10mass%以上、0.50mass%以下とする。
Pは、Ni,Pとの化合物を形成して析出し、熱伝導性、機械的強度、耐熱性を向上させる作用がある。また、溶解時に脱酸剤として作用し、FeやNiの酸化を防止する効果がある。
ここで、Pの含有量が0.05mass%未満では充分な機械的強度、耐熱性が得られず、0.25mass%を超えて含有すると鋳造時の芯割れや熱間加工性の低下が顕著になる。従って、Pの含有量は0.05mass%以上、0.25mass%以下とする。
また、Fe,Ni,Pの質量比は、((Fe+Ni)/P)が3〜5、(Fe/Ni)が0.8〜1.2が望ましい。
Fe,Ni,Pの他に、Mg,Sn,Zn,Co,Mn,Zr,Ti,Cr,Agのうちいずれか1種以上を添加してもよい。
Mgは、導電率をそれほど低下させずに強度、耐熱性とともに耐応力緩和特性を向上させる効果がある。また、Sは中間温度脆性を助長させる元素であるが、Mgは不可避的に含まれるSと化合物を生成して粒界のSを固定し、熱間加工性を向上させる効果がある。添加量が多くなると、酸化物の巻き込み等の鋳造性の低下をもたらす。
Snは、Cu中に固溶し、耐熱性とともにばね性、曲げ加工性、耐応力緩和特性を向上させる作用があり、コネクターとして使用する場合には添加することが望ましい。添加量が多くなると、導電率の低下をもたらすとともに、半田層との界面に生成するCuとSnの合金層の成長を助長し、またウィスカーを発生し易くなる。
Znは、半田濡れ性を向上させ、半田層との界面に生成するCuとSnの合金層の成長を抑制する作用がある。また、溶解時の脱ガス作用やCuのマイグレーションの抑制作用がある。2.0mass%以上の添加では導電率の低下をもたらすとともに、効果も飽和する。
Coも高温熱処理時の再結晶を遅らせ、結晶粒成長を抑制する作用がある。また、Feに比べ導電率の低下が少ない。
MnもMgと同様にSと化合物を生成して粒界のSを固定し、熱間加工性を向上させる効果があるが、導電率の低下をもたらす。
Zr,Ti,Crは強度と耐熱性を向上させる効果があるが、酸化物の巻き込み等の鋳造性の低下をもたらす。
Agは耐熱性を向上させる効果がある。
よって、Fe,Ni,Pの他に添加するMg,Sn,Zn,Co,Mn,Zr,Ti,Cr,Agは、いずれか1種以上を総量で、0.01mass%以上、0.50mass%以下含有させるのがよい。
〔バッキングプレート用銅合金の製造方法〕
上記の本実施の形態のバッキングプレート用銅合金は、上記成分に配合した銅合金のインゴットを鋳造後、800〜950℃の温度で30分間以上加熱保持して50%以上の加工率で熱間圧延を行った後、600℃以上の温度から25℃/min以上の冷却速度で300℃以下まで急冷し、次いで冷間圧延を実施し、更に350〜550℃の温度において30分〜10時間の時効硬化処理を行うことにより製造される。
加工率とは、
加工率(%)={1−(圧延加工後の板厚/圧延加工前の板厚)}×100
と定義する。
本発明により製造された銅合金は、圧延方向に垂直な断面において3μm以上の粗大なFe−Ni−P化合物の数が1個/cm2以下である。
熱間圧延において、800℃以上の温度において、30分間以上加熱保持して50%以上の加工率で熱間圧延を行うこととしたのは、800℃以上の温度で30分間以上加熱保持することにより、鋳造時に添加元素の偏析により生成した不均一な析出物を消失させ、Cu母相中に均一に固溶させる(いわゆる溶体化)とともに、熱間での加工により鋳造組織を壊し、均一かつ所定の結晶粒径を有する再結晶組織を得るためである。
加熱温度が800℃より低い、または加熱時間が30分間より短い場合、上記目的を達成するのには不充分である。特に粗大なFe−Ni−P化合物が固溶せずに残存するために、時効後に充分な強度が得られないと共に工具寿命を低下させるといった問題が生じる。
従って、800℃以上の温度において30分間以上の加熱保持が必要であり、好ましくは850〜950℃の温度において2〜5時間加熱する。950℃以上の温度では酸化スケールが厚くなる。また、加工率が50%より低いと鋳造組織が部分的に残り、均一微細な再結晶組織が得られない。
従って、加熱後50%以上の加工率で熱間圧延を行う必要があり、好ましくは加工率を80%以上とする。
熱間圧延後600℃以上の温度から25℃/min以上の冷却速度で300℃以下まで急冷することとしたのは、冷却時にFe−Ni−P化合物が析出し、粗大化するのを防止するためである。熱間圧延後の冷却開始温度が600℃未満、または冷却速度が25℃/min未満である場合、Fe−Ni−P化合物が析出して粗大化し、上記目的を達成するのには不充分である。
熱間圧延に続き冷間圧延を行うこととしたのは、冷間圧延により析出物生成の核となる格子欠陥を導入し、時効処理において均一微細な析出物が生成するのを促進させるためである。望ましくは30%以上の加工率とする。
続く時効処理において、350〜550℃の温度において、30分〜10時間保持することとしたのは、均一微細なFe−Ni−P化合物を析出させ、熱伝導性、機械的強度、耐熱性を向上させるためである。更に、均一微細に析出したFe−Ni−P化合物により、切削加工性が向上する。加熱温度が350℃より低い場合、または加熱時間が30分間より短い場合、析出が不足し、充分な熱伝導性、機械的強度、耐熱性が得られないとともに、切削加工時に切子が大きくなり、バリが出易いといった傾向が見られる。一方、550℃より高い場合、または加熱時間が10時間より長い場合、過時効となり析出物が粗大化し、熱伝導性は高いものの機械的強度と耐熱性が低下するとともに、切削加工時にバリが出易いといった傾向がある。更にミクロンオーダーの粗大な析出物が多く存在する場合は工具寿命の低下も生じる。従って、350〜550℃の温度において30分〜10時間保持することとする。望ましくは400〜500℃の温度において、1〜4時間である。
更に時効処理後に加工率50%以下の冷間圧延を加えても良い。これにより更に強度を向上させることが可能であるとともに、形状の安定化が可能である。
鋳造工程においては、溶解、鋳造方法に制限はなく、また、材料の寸法にも制限はない。
〔バッキングプレートの製造〕
上記実施の形態のバッキングプレート用銅合金を用いて通常行われている製造方法により、スパッタリング装置に用いるバッキングプレートを得ることができる。
水路の加工は、主にフライスを用いて切削加工する。水路(溝)を覆う蓋との接合方法に制限はなく、電子ビーム溶接、ろう付け、摩擦撹拌接合のいずれでもよい。なお、バッキングプレートの冷却媒体に関しても制限はない。
実施例l〜5、比較例1〜8を表1に基づいて説明する。
Figure 2009287062
まず、銅合金の化学組成の影響について調査した。
表1に示す化学組成の銅合金(実施例l〜5、比較例1〜8)を、それぞれ高周波溶解炉で溶解後、厚み50mm×幅150mm×長さ300mmのインゴットを鋳造した。
続いて、900℃の温度において2時間加熱後、熱間圧延により厚さ25mmとし、700℃の温度から水中で急冷した。実施例l〜5、比較例1〜6については更に冷間圧延で厚さ10mmとした後、450℃の温度において2時間時効処理し、更に冷間圧延により厚さ8mmとした。
比較例7については、冷間圧延のみで厚さ8mmとした。比較例8については、冷間圧延で厚さ10mmとした後、575℃の温度において2時間、450℃の温度において2時間時効処理し、更に冷間圧延により厚さ8mmとした。
このようにして得られた銅合金板から各種評価用サンプルを採取し、熱伝導率測定、引張試験、硬さ測定、耐熱性試験、切削加工性評価を実施した。
熱伝導率測定にはレーザフラッシュ法を用いた。引張試験はJISに準じた。硬さ測定にはビッカース硬さ試験機で圧延方向垂直断面の硬さを測定した。耐熱性試験は150〜550℃の25℃刻みの温度において5分間保持後水冷し、加熱前の硬さの80%の硬さになる温度を軟化温度と定義して評価した。切削加工性はバイトを水平に走らせて切削するシェーバー加工機を用いた時の平均切子長さおよび平均工具(バイト)寿命で表2のようにA、B、Cの三段階で評価した。
工具寿命は切削深さ1mmで長さ50mを研削する工程を1回として、工具が研削を必要とするまでに何回切削可能かで、A、B、Cの三段階で評価した。
Figure 2009287062
本発明の実施例1〜5の銅合金は、熱伝導率、0.2%耐力、軟化温度、切子長さ、工具寿命とも良好で、バッキングプレート用の銅合金として好適であることがわかる。
一方、比較例1〜8の銅合金では、いずれもバッキングプレート用の銅合金として特性が不充分である。比較例1〜4は、Fe,Ni,Pのいずれかが不足しており、いずれも0.2%耐力、硬さ、軟化温度が本発明銅合金よりも低い上に、切子長さ、工具寿命の点でも劣る。
比較例5、6は、P濃度が高く、熱間圧延時に割れが生じ易く、工具寿命が短い。比較例7は、純銅であるが、熱伝導率は良いものの0.2%耐力、軟化温度が低く、切子が大きく、バリが出易い。比較例8は、Cu−Fe−P系の合金であり、そこそこの特性ではあるが、典型的な析出硬化挙動を示さないために時効処理しても0.2%耐力や硬さが本発明銅合金よりも低い。
次に、実施例2の化学組成の銅合金について、表3に示したように熱間圧延条件、時効条件を変えて数種のサンプル(実施例6〜8、比較例9〜15)を作製し、これらサンプルに対して、熱伝導率測定、引張試験、硬さ測定、耐熱性試験、粗大析出物評価、切削加工性評価を実施した。
Figure 2009287062
粗大析出物評価では、圧延方向垂直断面をSEMで観察し、観察面積5cm2当たりに存在する3μm以上の粗大なFe−Ni−P化合物の数を計測した。
本発明の実施例6〜8は、熱伝導率、0.2%耐力、軟化温度、粗大析出物数、切子長さ、工具寿命とも良好で、バッキングプレート用の銅合金として好適であることがわかる。
一方、比較例9〜16の熱間圧延条件、時効条件では、いずれもバッキングプレート用の銅合金として特性が不充分である。
比較例9は熱間圧延の加熱温度が低い(780℃)ために、Fe,Ni,Pが充分に固溶せず、粗大なFe−Ni−P化合物が存在する状態で圧延されために熱間圧延時に結晶粒界で割れを生じた。また、最終工程後にも粗大な析出物が多く存在するために、工具寿命も低下した。
比較例10は、熱間圧延の加熱温度が高い(980℃)ために酸化膜が非常に厚くなった。比較例11は、熱間圧延終了後の冷却開始温度が低い(570℃)ために、比較例12は、冷却速度が遅い(20℃/min)ために、0.2%耐力が低めであり、粗大析出物もやや多く工具寿命が低下した。比較例13は時効温度が低い(330℃)ために、比較例14は時効時間が短い(20min)ために析出が不充分で、熱伝導率が低く、熱伝導率、0.2%耐力、軟化温度が低下した。比較例15は時効温度が高いために、比較例16は時効時間が長い(12h)ために過時効となり、0.2%耐力、軟化温度が低下した。
以上より、熱間圧延の加熱温度は800〜950℃、熱間圧延終了後の冷却開始温度は600℃以上、冷却速度は25℃/min以上、時効温度は350〜550℃、時効時間は30〜10時間が好ましいことがわかる。
以上本発明は、スパッタリング冷却用のバッキングプレート銅合金に関するもので、溶解・鋳造方法に制限はなく、材料の寸法にも制限がない。また、バッキングプレートの製造方法に関しても制限はなく、電子ビーム溶接、ろう付け、摩擦撹件接合のいずれでもよい。更に、バッキングプレートの冷却媒体に関しても制限はない。
このように本発明に係わる銅合金は、上記実施例からわかるように、高い熱伝導性、高い0.2%耐力、高い耐熱性、良好な切削加工性を兼ね備え、長い寿命、高い信頼性が要求されるバッキングプレート材として好適である。

Claims (3)

  1. Fe:0.10mass%以上、0.50mass%以下、Ni:0.10mass%以上、0.50mass%以下、P:0.05mass%以上、0.25mass%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、3μm以上の粗大なFe−Ni−P化合物粒子の数が圧延方向に垂直な断面において1個/cm2以下であることを特徴とするバッキングプレート用銅合金。
  2. Fe:0.10mass%以上、0.50mass%以下、Ni:0.10mass%以上、0.50mass%以下、P:0.05mass%以上、0.25mass%以下、Mg,Sn,Zn,Co,Mn,Zr,Ti,Cr,Agのうちいずれが1種以上を総量で0.01mass%以上、0.50mass%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、3μm以上の粗大なFe−Ni−P化合物粒子の数が圧延方向に垂直な断面において1個/cm2以下であることを特徴とするバッキングプレート用銅合金。
  3. Fe:0.10mass%以上、0.50mass%以下、Ni:0.10mass%以上、0.50mass%以下、P:0.05mass%以上、0.25mass%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる銅合金を鋳造後、800〜950℃の温度において30分以上加熱して50%以上の加工率で熱間圧延を行った後、600℃以上の温度から25℃/min以上の冷却速度で300℃以下まで急冷し、次いで冷間圧延を実施し、更に350〜550℃の温度において30分〜10時間の時効硬化処理を行うことを特徴とするバッキングプレート用銅合金の製造方法。
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