JP5766508B2 - ラップフィルム収納箱 - Google Patents

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Description

本発明は、一般家庭、食料品販売業、飲食物提供役務等において、主として食品の包装用に汎用されているラップフィルムを巻回したものを収納する箱に関する。更に詳しくは、鋸歯の切断具の無い収納箱に関する。
従来から、ラップフィルムは例えば図11に示すような直方体の箱に納められた巻回フィルムとして提供されており、ここから必要分量を引出し、何らかの方法で長さ方向に対して横に切断し、使用に供される。横に切断する方法としては、箱の掩蓋片等に配備された長尺の金属製鋸歯によるものが最も一般的である。
しかし、金属製鋸歯は、手を怪我する等の安全性の問題や紙製の箱と金属製の鋸歯とを廃棄時に分別しなくてはいけないという問題があり、これらの問題を解決するために、鋸歯に替えて、異形の金属粉を接着したシートを切断具に用いたり(特許文献1)、巻回フィルムがその長さ方向に連続した加工傷を有し、その加工傷域と接触する箱の局部に金属片やバルカナイズド紙片等の切断補助具を設けたり(特許文献2)することが提案されている。しかし、上述した安全性の問題や分別の問題は依然として残っている。
また、巻回フィルムの横方向の端部に一定間隔で切れ目を設けることにより、鋸歯等の切断具がない箱でも切れ目に沿ってフィルムを切断できる方法が提案されている(特許文献3)。しかし、従来の箱から単に鋸歯を無くしただけの箱では、フィルムのカット性が不十分である。また、箱の一部が切断具の役目を果たすため、巻回フィルムを使い切る前に上記箱の一部が傷んでしまい、フィルムの切断ができなくなってしまうという問題がある。
特開昭61−217345号公報 特開平11−124133号公報 特開2001−322636号公報
本発明の目的は、巻回フィルムを収納した箱に鋸歯等の切断具が無くても、実用上満足のできるカット性を発現し、かつその効果を、収納したフィルムを使い切るまで維持することのできるラップフィルム収納箱を提供することである。
本発明者らは、鋭意研究した結果、従来のラップフィルム収納箱において、掩蓋片の先端部分および前面板の上端部分を一部切り取って掩蓋片の先端縁および前面板の上端縁を特定の形状にすると、箱に鋸歯等の切断具が無くてもフィルムを良好に切断することができ、上記目的を達成することができることを見出した。
すなわち、本発明は、巻回されたラップフィルムを収納する箱であって、前面板5、底面板4、後面板6および側面板3の各壁面で形成される、上部が開口した直方体の収納室と、後面板6の上端縁から収納室の開口部を覆う方向に連接した開閉可能な蓋面板2と、蓋面板2の前端縁から前面板5を覆う方向に延出した掩蓋片1とを有する収納箱おいて、上記掩蓋片1の先端縁の両側端部および中央部が、V字傾斜を有する凹形状であり、該3つの凹形状の間の2つの遷移区間における先端縁は該蓋面板の前端縁7と平行であり、かつ上記前面板5の上端縁の両側端部が中央から側端に向かって底方向に傾斜していることを特徴とするラップフィルム収納箱である。
本発明の収納箱は、鋸歯等の切断具を何ら有していなくてもフィルムを良好に切断することができるので、手を怪我する等の安全性の問題や、紙製の箱と金属製の鋸歯とを廃棄時に分別しなくてはいけないという問題を回避することできる。
本発明の収納箱の一例を示す斜視図である。 掩蓋片の一例を示す正面図である。 凹形状の例を示す図である。 前面板の一例を示す正面図である。 前面板の上端縁の側端部の形状の例を示す部分拡大図である。 本発明の収納箱の展開図である。 補強された掩蓋片の作製を説明する図である。 (a)は鋸歯の絵が付された掩蓋片の正面図であり、(b)は大口を開けた鮫の絵が付された掩蓋片の正面図である。 ローレット加工が施されたフィルムの表面を写真撮影した図である。 レーザー加工が施されたフィルムの表面を写真撮影した図である。 従来の収納箱を示す斜視図である。
本発明のラップフィルム収納箱を、図を参照して説明する。図1は、本発明の収納箱の一例を示す斜視図である。本発明の収納箱は、前面板5、底面板4、後面板6および側面板3の各壁面で形成される、上部が開口した直方体の収納室と、後面板6の上端縁から収納室の開口部を覆う方向に連接した開閉可能な蓋面板2と、蓋面板2の前端縁から前面板5を覆う方向に延出した掩蓋片1とを有し、上記掩蓋片1の先端縁の両側端部および中央部が、V字傾斜を有する凹形状であり、該3つの凹形状の間の2つの遷移区間における先端縁は該蓋面板の前端縁7と平行であり、かつ上記前面板5の上端縁の両側端部が中央から側端に向かって底方向に傾斜している。
図2は、掩蓋片1の一例を示す正面図である。掩蓋片1は、その先端縁の両側端部および中央部が、図2に示されるように、V字傾斜を有する凹形状であり、上記3つの凹形状の間の2つの遷移区間における先端縁は、蓋面板の前端縁7と平行である。
本明細書において、「V字傾斜を有する凹形状」は、図2に示されるようなV字型の凹形状の他に、図3に示されるように、V字頂点部分が湾曲している凹形状(図3(a))、およびV字頂点部分がV字傾斜よりも平坦であるところの凹形状(図3(b)および図3(c))をも包含する。つまり、用語「V字傾斜を有する凹形状」は、V字型の凹形状であって、そのV字頂点部分は尖っていてもいなくてもよいところの凹形状を意味する。なお、図3は、掩蓋片1の先端縁の中央部分における凹形状(B)を示すが、他の凹形状(AおよびD)についても同様である。
収納箱から引き出されたフィルムを掩蓋片の先端縁を利用して切断するとき、掩蓋片の先端縁の両側端部が、V字傾斜を有する凹形状(A)であると、フィルム切断開始時においてフィルムと掩蓋片とが接触する面積が小さいので力が集中し、その結果、良好なフィルムカット性が得られる。なお、両側端部の凹形状(A)は、それらのV字頂点部分の形状が互いに同一でも異なっていてもよい。
両側端部における凹形状(A)のV字傾斜の、蓋面板の前端縁7に対する2つの内角(α1およびα2)は各々3〜15度であるのが好ましい。上記角度が上記上限よりも大きいと、掩蓋片の耐久性に劣る場合がある。上記下限未満であると、箱の作製が困難である。また、良好なフィルムカット性が得られない場合がある。なお、一方の側端部における凹形状と他方の側端部における凹形状とは、それらのV字傾斜の角度が互いに同じでも異なっていてもよい。また、1つの側端部における凹形状(A)において、中央部側の角度(α1)と側端部側の角度(α2)とは、互いに同じでも異なっていてもよい。
両側端部における凹形状(A)の深さ(a1)は、箱の剛性および強度を考慮して、箱の大きさにより適宜選択することができる。一般的に、ラップフィルム収納箱の全体の剛性および強度は箱のサイズが大きくなるほど低下することおよび側面板3の大きさは高々100mm×100mm程度であることを考慮すると、深さ(a1)は例えば2〜12mmであり得る。具体的には、例えば、箱が、一般的な300mm幅のフィルムを収納することができる45mm×45mm×310mmの大きさであるとき、深さ(a1)は2〜8mmであるのが好ましい。なお、一方の側端部における凹形状の深さと他方の側端部における凹形状の深さは互いに同じでも異なっていてもよい。また、深さ(a1)は、凹形状(A)を図3(a)〜(c)に示されるような形状にすることにより、適宜調節することができる。
掩蓋片の先端縁は、両側端部の他に中央部も、V字傾斜を有する凹形状である。その結果、フィルムの掩蓋片との引掛りが低減され、フィルムをスムーズに切ることができる。
中央部における凹形状(B)のV字傾斜の、蓋面板の前端縁7に対する2つの内角(β1およびβ2)は各々1〜10度であるのが好ましい。上記角度が上記上限よりも大きいと、掩蓋片の耐久性に劣る場合がある。上記下限未満であると、箱の作製が困難である。また、引掛り低減効果が十分に得られない場合がある。なお、中央部における凹形状(B)において、2つの角度(β1およびβ2)は互いに同じでも異なっていてもよい。
中央部における凹形状(B)の深さ(b1)も、凹形状(A)の深さ(a1)と同様に、箱の大きさにより適宜選択され、例えば1〜10mmであり得る。具体的には、例えば、箱が、一般的な300mm幅のフィルムを収納することができる縦45mm×横45mm×幅310mmの大きさであるとき、深さ(b1)は1〜7mmであるのが好ましい。なお、深さ(b1)は、凹形状(B)を図3(a)〜(c)に示されるような形状にすることにより、適宜調節することができる。
掩蓋片1の先端縁は、その両側端部が凹形状(A)であり、中央部が凹形状(B)であるとともに、これら3つの凹形状の間の2つの遷移区間における先端縁が、蓋面板の前端縁7と平行である。したがって、凹形状(A)の幅(a2)および凹形状(B)の幅(b2)は、上記先端縁に、蓋面板の前端縁7と平行な2つの部分があるような大きさであれば特に制限されない。なお、凹形状(A)のV字幅(a2)および凹形状(B)のV字幅(b2)は、それぞれの凹形状を図3(a)〜(c)に示されるような形状にすることにより、適宜調節することができる。
図4は、前面板5の一例を示す正面図である。本発明の収納箱は、さらに、前面板の上端縁の両側端部が、図4に示すように、中央から側端に向かって底方向に傾斜している。両側端部がこのように傾斜していると、フィルムを収納箱から引き出すとき、前面板の上端縁の上記傾斜が始まる角Pにフィルムが引っ掛かってフィルムがぴんと張られた状態で引き出すことができるのでフィルムにシワが生じるのを抑えることができ、その結果、フィルムを良好に切断することができる。
前面板5の上端縁の両側端部における傾斜(C)の、前面板5の下端縁8に対する角度(γ)は5〜25度であるのが好ましい。角度(γ)が上記下限未満であると、シワの発生を抑える効果が得られない場合がある。上記上限を超えると、フィルムに傷が入る場合がある。また、角度(γ)が大きいと、収納箱の大きさの関係から、傾斜(C)によってできる開口部の幅(c2)が小さくなり、フィルムが引っ掛かりにくくなるので、シワ発生抑制効果が得られない場合がある。幅(c2)は、好ましくは5〜25mmである。
傾斜(C)の深さ(c1)は、凹形状(A)の深さ(a1)と同様に、箱の大きさにより適宜選択され、例えば1〜12mmであり得る。具体的には、例えば、箱が、一般的な300mm幅のフィルムを収納することができる縦45mm×横45mm×幅310mmの大きさであるとき、深さ(c1)は1〜8mmであるのが好ましい。なお、一方の側端部における傾斜の深さと他方の側端部における傾斜の深さは互いに同じでも異なっていてもよい。
図4では、前面板の上端縁が、Pの箇所から先端まで一定の角度で傾斜しているが、図5に示されるように、前面板の上端縁は、側面板3との境界近傍において前面板5の下端縁と平行であってもよく(図5(a))、あるいはV字状であってもよい(図5(b))。つまり、前面板の上端縁は、上記箇所Pが存在するように傾斜(C)を有していればよく、したがって、上端縁の先端まで一定の角度で傾斜していてもいなくてもよい。図5に示されるような形状は、傾斜(C)の深さ(c1)および/または幅(c2)の調節を可能にする。なお、両側端部における傾斜(C)は、それらの形状が互いに同じでも異なっていてもよい。
傾斜(C)が図5(b)に示すようなV字状の場合、角度(γ’)は、フィルムのシワ発生を抑制する効果の点から、80度以上90度未満であるのが好ましい。
本発明の収納箱は、さらに前面板の上端縁の中央部が、V字傾斜を有する凹形状(D)であると好ましい。これにより、フィルムを収納箱から引出すとき、フィルムをより容易につまむことができる。
中央部における凹形状(D)のV字傾斜の、前面板の下端縁8に対する2つの内角(δ1およびδ2)は各々3〜15度であるのが好ましい。上記角度が上記上限よりも大きいと、前面板の耐久性に劣る場合がある。上記下限未満であると、フィルムを容易につまむ効果が得られない場合がある。なお、中央部における凹形状において、2つの角度(δ1およびδ2)は互いに同じでも異なっていてもよい。
中央部における凹形状(D)の深さ(d1)は、凹形状(A)の深さ(a1)と同様に、箱の大きさにより適宜選択され、例えば1〜12mmであり得る。具体的には、例えば、箱が、一般的な300mm幅のフィルムを収納することができる縦45mm×横45mm×幅310mmの大きさであるとき、深さ(d1)は1〜8mmであるのが好ましい。なお、深さ(d1)は、凹形状(D)を図3(a)〜(c)に示されるような形状にすることにより、適宜調節することができる。
凹形状(D)のV字幅(d2)は、箱の幅に応じて適宜決定することができ、例えば50〜200mmであり得る。具体的には、例えば、箱が、一般的な300mm幅のフィルムを収納することができる縦45mm×横45mm×幅310mmの大きさであるとき、V字幅(d2)は100mm程度であり得る。なお、V字幅(d2)は、凹形状(D)を図3(a)〜(c)に示されるような形状にすることにより、適宜調節することができる。
本発明の収納箱は、ラップフィルムの収納のために通常用いられる紙、例えば坪量400〜500g/mのコートボール紙等を使用して作ることができる。紙の坪量は、小さいと耐久性に問題が生じ易くなり、大きいとコスト高になる。従って、紙の坪量は、収納するフィルムロールの尺長から必要となる耐久性を勘案して適宜選択される。図6は、本発明の収納箱の展開図である。
さらに、本発明の収納箱は、耐久性の点から、掩蓋片や前面板および蓋面板に、好ましくは美感の点からそれらの裏面に、紙製の補強板を貼合してそれらを補強することが好ましい。掩蓋片および前面板の補強は、それらの耐久性を直接向上させる。蓋面板の補強は、箱全体の捻り剛性を高くし、したがって箱全体の耐久性を向上させる。紙製の補強板としては、収納箱を構成するものと同じ紙を使用することができる。補強板は、収納箱とは別に用意して上記裏面に貼付することができる。あるいは、例えば図7に示すように、掩蓋片1の先端縁に補強板9を一体的に取り付け、上記先端縁のところで裏側に折り返して貼り付けることにより補強を行うこともできる。図7は、掩蓋片に一体的に取り付けられた補強板の、補強板を折り返す前の正面図である。この場合、折り返し部分の大きさ(図7における長さf)は、掩蓋片の長さeの1/2以上であるのが好ましい。これより小さいと、補強効果が十分でない場合がある。掩蓋片のみを補強するときには、上記折り返し部分の大きさ(長さf)の上限は掩蓋片の大きさ(長さe)に等しいが、折り返し部分を更に延ばして蓋面板をも補強するようにしても良い。この場合、折り返し部分の大きさは、掩蓋片および蓋面板の全面を覆う大きさであり得る。これよりもさらに延ばすことは不必要である上、後面板にも達するために製函性が低下してしまうので好ましくない。
本発明の収納箱は、掩蓋片を一種の切断具として利用してラップフィルムを切断することができるものである。掩蓋片が切断具の役目を果たすことが末端消費者に分かるようにするために、その旨の説明を箱に記載することのほかに、例えば図8に示すように、掩蓋片に鋸歯の絵(図8(a))や鮫など歯の鋭いイメージのある動物が大口を開けた絵(図8(b))などを付しておくこともできる。
本発明の収納箱は、鋸歯等の切断具を何ら有していなくてもフィルムを良好に切断することができるが、末端消費者の視点で考えると、従来は切断具として金属製の鋸歯を備えていた収納箱が、そのような切断具を全く有しないただの厚紙だけの箱になったのでは、切断できないのではないかという疑問を生じさせ得る。従って、極めて簡便な切断補助具を設けておく方が、末端消費者に疑念を抱かせることがなく、販売現場では有利になるかもしれない。そのような極めて簡便な切断補助具としては、手を怪我する等の危険が少ない、安全性が高められたものが好ましく、具体的には目の細かい紙やすり等を挙げることができる。目の粗いものは砥粒が剥離する可能性があり、包装用フィルム、特に食品包装用フィルムの切断補助具としては適さない。砥粒の剥離可能性は、簡易的には、180度折り曲げ試験によって、やすり面に亀裂が観察されるかどうかで判断することができる。例えば、市販の紙やすり(株式会社ノリタケコーテッドアブレーシブ製、耐水タイプの紙やすり、商品名C947H)の場合、粒度(JISR6001(1998)による)が#220およびそれより粗いものは亀裂が観察され、#240のものは極めて微細な亀裂が観察され、#320およびそれより細かいものは亀裂が観察されなかったから、粒度が少なくとも#240またはそれより細かいものを使用するべきであり、好ましくは#320またはそれより細かいものを使用するべきと判断される。上記市販の紙やすりの種々の粒度の180度折り曲げ試験結果を下記表1に示す。
収納箱に紙やすりを設ける方法には、特に制限はなく、掩蓋片の先端部に直接、砥粒を含む塗料を塗布・硬化させる方法、紙等の基材に砥粒を含む塗料を塗布・硬化させた後、それを化粧箱の上記部分に貼付する方法などが挙げられる。
また、上述した掩蓋片の先端部の端から端までの全長にわたって紙やすりを設けても良く、あるいは上記全長の一部、例えば側端部だけに設けても良い。
本発明の収納箱はラップフィルム用であり、ラップフィルムとして有用な機械的強度を有するものであれば、任意のラップフィルム、例えばポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリメチルペンテン-1およびポリアミド等から選ばれる樹脂からなる単層又は多層のフィルムで全厚みが3〜30μm、典型的には8〜15μm程度のもの、に適用できる。上記機械的強度として、ラップフィルムの長さ方向および横方向の引張破断力がいずれもが1〜15N、より好ましくは1〜10Nであるのが好ましい。なお、本明細書において、引張破断力は、JISK-7127に従い、試験速度500mm/分および試験片タイプ2を用いて測定された値である。
また、本発明の収納箱は、横切性に優れるラップフィルムの収納に特に有用である。そのようなフィルムとしては、例えば特願2010−275113号明細書に記載された方法によって得られるフィルムが挙げられる。このフィルムは、(A)ポリメチルペンテン−1系樹脂100質量部、および(B)ポリブテン−1系樹脂0.5〜60質量部、好ましくは1〜25質量部および/または流動パラフィン0.1〜20量部、好ましくは1〜12質量部、ただし成分(B)の総量が75質量部を超えず、好ましくは0.6〜75質量部、より好ましくは2〜35質量部、さらに好ましくは3〜25質量部である、を含むポリメチルペンテン−1系樹脂組成物を、Tダイを使用して3〜30μmのフィルム肉厚に押出すことにより製造することができる。このとき、上記押出を、Tダイのリップ開度R(単位μm)、フィルム肉厚t(単位μm)、ダイスから押し出される樹脂組成物のダイス幅1cm当たりの吐出速度E(単位cm/hr)およびエアギャップA(単位cm)が下記式:
15≦(1/t - 1/R)・(E/At )×100≦900 ・・・式
を満たすような条件で行うのが好ましい。好ましくは、tが5〜20μm、より好ましくは8〜15μmであり、Aが0.5〜2cmであり、Eが100cm/hr以上であり、Rが300〜900μm程度である。
なお、上記式は、Tダイを使用する押出製膜において、ダイスを出る溶融状態のフィルムがチルロールに到達して最終的な大きさのフィルムになるまでのフィルムの変形速度が大きい条件で行われること、言い換えると、ダイスからチルロールまでのエアギャップにおいて、溶融状態のフィルムを大きくかつ速く引落とすことを意味する。
上記ポリメチルペンテン−1系樹脂(A)は、4−メチルペンテン−1又は3−メチルペンテン−1の単独重合体の他に、4−メチルペンテン−1及び/又は3−メチルペンテン−1と他のα−オレフィンとの共重合体を包含する。α−オレフィンは1種単独でも、2種以上の組合せでもよい。α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。
成分(B)としての上記ポリブテン−1系樹脂は、ブテン−1の単独重合体のほかに、ブテン−1と他のα−オレフィンとの共重合体を包含する。α−オレフィンは1種単独でも、2種以上の組合せでもよい。α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。上記流動パライフィンは、鎖式飽和炭化水素を主体とする常温で液体の化学的に安定な物質であり、市販例(商品名)としては、出光興産株式会社のダフニーオイルCP、株式会社MORESCOのモレスコホワイト、カネダ株式会社のハイコールKなどを挙げることができる。
上記ポリメチルペンテン−1系樹脂組成物には、さらに、ポリメチルペンテン−1系樹脂以外の熱可塑性樹脂(例えば、ポリプロピレンおよびポリエチレン)、液状ポリブテン(水添ポリイソブチレン)等の液状加工助剤、酸化防止剤、中和剤、防曇剤、スリップ剤等の添加剤を配合することができる。上記熱可塑性樹脂および液状加工助剤の配合量は、合計で、ポリメチルペンテン−1系樹脂100質量部に対して20質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下である。
また、本発明の収納箱に収納したラップフィルムがより小さい力で切断できるならば、収納箱に与える負荷をより小さくすることができ、その結果、収納したフィルムを使い切るまでより良好なカット性を維持することができる。より小さい力での切断を可能にするために、フィルムに切断のための何らかのきっかけを設けることができる。具体的には、フィルムの横方向の端部の少なくとも一方に、例えば0.1〜10mmの幅で、ローレット加工やレーザー加工を施すことができる。
ローレット加工は、フィルムを金属製等の彫刻ロールと金属製や高硬度のゴム等の彫刻ロール又は平滑ロールとで挟み込むことにより、あるいはフィルムの巻に該彫刻ロールを押し当てることにより微細なエンボスや傷を入れる加工である。加工条件はフィルムの材質により適宜選択されるべきであるが、通常、押圧は10〜50N/m程度である。ローレット加工が施されたフィルム表面を写真撮影したものを図9に示す。ローレット加工は、原反製膜時に、スリット加工時に、またはスリット加工後に独立の工程を設けて施すことができる。ローレット加工は、フィルムの横方向の端部の少なくとも一方に施されるが、どちらの側からでも切断出来るように、両方の端部に施すことがより好ましい。加工幅は通常0.1〜10mmであり、好ましくは0.3〜6mmである。
レーザー加工はレーザーの照射熱により、フィルムを極めて微細な領域において溶融し、そこに凹形状や孔を設ける加工である。使用するレーザーは、特に制限されない。例えば、炭酸ガスレーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザーおよびエキシマレーザーなどのガスレーザーや、クロム添加ルビー結晶を媒質に使用したルビーレーザー、チタン添加サファイア結晶を媒質に使用したチタンサファイアレーザー、YAG結晶中のイットリウムを他の希土類元素で置換した種々のYAGレーザーおよびネオジム添加YAGを用いたNd:YAGレーザーなどの固体レーザーが挙げられる。また、液体レーザー、半導体レーザー、自由電子レーザー、金属蒸気レーザー、化学レーザー等の公知のレーザーを使用することができる。照射出力は、0.5〜20W程度であり、フィルムの肉厚や加工速度を勘案して適宜調節する。レーザー加工が施されたフィルム表面を写真撮影したものを図10に示す。レーザー加工は、原反製膜時に、スリット加工時に、またはスリット加工後に独立の工程を設けて施すことができる。レーザー加工は、フィルムの横方向の端部の少なくとも一方に施されるが、どちらの側からでも切断出来るように、両方の端部に施すことがより好ましい。加工幅は通常0.1〜10mmであり、好ましくは0.3〜6mmである。
また、ローレット加工やレーザー加工を施すと、巻回フィルムの引出端が巻き本体に強く密着して引き出せなくなるというトラブルの防止効果を得ることもできる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。使用した材料および測定方法は以下の通りである。
実施例1
片面コートされたコートボール紙(厚紙の坪量450g/m)を使用し、掩蓋片の先端縁および前面板の上端縁がそれぞれ図2および4に示す形状を有し、凹形状(A)(B)および(D)の角度および深さならびに傾斜(C)の角度、深さおよび幅が表2に示す通りである、縦45mmx横45mmx長さ310mmの収納箱を製作した。掩蓋片の先端縁の両側端部における凹形状(A)は互いに同一であり、前面板の上端縁の両側端部における傾斜(C)は互いに同一である。なお、掩蓋片および蓋面板の裏面に補強板を設けた掩蓋片の補強板については、図7に示すように、掩蓋片の先端縁に一体的に取り付けたものを掩蓋片の裏面側に折り返し、接着剤を使用して貼合した。この補強板の大きさ(長さf)は掩蓋片の大きさ(長さe)の4/5であった。蓋面板の補強板については、上記コートボール紙を蓋面板とほぼ同じ大きさに切り出したものを蓋面板の裏面に接着剤を使用して貼合した。
試験
上記のようにして得た収納箱に、巻回されたラップフィルム(幅300mm、長さ50mのフィルムを、幅305mm、内径27mm、肉厚1.5mmの紙管に巻いたもの)を収納し、下記の試験を行った。結果を表2に示す。なお、収納したラップフィルムとしては、ポリ4−メチルペンテン−1(三井化学株式会社製のMX−0020(商品名)、MFR(260℃、5.00kg)21g/10分)100質量部、ポリブテン-1(LYONDELLBASELL社製のPB8640M(商品名)、MFR(190℃、21.18N)28g/10分)3質量部および流動パラフィン(カネダ株式会社製のハイコールK−350(商品名))5質量部からなる樹脂組成物を、株式会社日本製鋼所製のTダイ製膜装置を用いて製膜した肉厚12μmのフィルムの横方向の両端にローレット加工を施したものを使用した。上記製膜は、リップ開度400μm、エアギャップ1.5cm、吐出速度712cm/hr、チルロール温度25℃およびダイス出口樹脂温度290℃の条件で行い、バキュームチャンバーおよび耳ジェットを使用した。ローレット加工は、押え量0.2mm、加工幅0.6mm、加工速度400m/分の加工条件で行った。このフィルムの長さ方向および横方向の引張破断力はそれぞれ5.4Nおよび2.9Nであった。
(1)カット性試験
収納されたラップフィルムを収納箱から約40cm引出し、蓋を閉じた状態で、掩蓋片の先端縁を利用してフィルムを切断する試験を10回試み、切断できた回数を切断率(%)として表記した。
(2)耐久性
試験(1)と同様の切断を100回試みた後、さらに10回の切断を試み、この10回の試行において切断できた回数を切断率(%)として表記した。
(3)シワの入り難さ
(3−1)収納されたラップフィルムを収納箱から約40cm引出した後、フィルムを掴んだ手を収納箱の幅方向に対して手前に30度引寄せた状態で蓋を閉じて掩蓋片の先端縁を利用してフィルムを切断する試験を10回試み、切断できた回数を切断率(%)として表記した。
(3−2)フィルムを収納箱から約40cm引出した後、フィルムを掴んだ手を収納箱の幅方向に対して手前に30度引寄せたときのフィルムのシワの入り具合を目視観察し、これを、フィルムを収納箱から約40cm引出した状態でのフィルムのシワの入り具合と比較する試験を5回行い、以下の基準で評価した。
〇:5回共、前者のシワの入り具合が後者と同等かそれより少ない
△:前者のシワの入り具合が後者と同等かそれより少ない場合が1〜4回
×:5回共、前者の方が後者よりもシワが多い。
(4)フィルムの摘み易さ
主婦モニター10人に、収納箱からラップフィルムを引出すときのフィルムの摘み易さを図11に示す従来の収納箱の場合と比較してもらい、従来の箱よりも掴み易い場合を2点、従来の箱とほぼ同等の場合を1点、従来の箱よりも掴み難い場合を0点として、10人の得点の平均値を以下の基準で評価した。
〇:平均値が1.7点以上
△:平均値が0.7点以上1.7点未満
×:平均値が0.7点未満
実施例2〜23および比較例1〜3
表2に記載の条件以外は実施例1に記載のものと同じである収納箱を使用して、実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。なお、実施例3〜5では、収納箱の掩蓋片の先端部に、その裏表5mmずつを覆うように幅10mmの#800番手の紙やすり(株式会社ノリタケコーテッドアブレーシブ製、耐水タイプの紙やすり、商品名C947H)を折り曲げて先端部の全長に渡って両面粘着テープを用いて貼りつけた。また、実施例4では、掩蓋片の補強板がない箱を使用し、実施例18では、蓋面板の補強板がない箱を使用した。実施例19では、収納箱の前面板の傾斜(C)を図4に示すものに代えて図5(b)に示すもの(角度(γ’)=60度)にした。実施例2については、収納したフィルムとして、ローレット加工に代えてレーザー加工を施したものを使用した。レーザー加工は、出力1W、周波数20KHz、加工幅3mm、加工速度1000mm/秒の加工条件で行った。実施例5および6については、収納したフィルムとして、ロ−レット加工やレーザー加工等の加工を何ら施していないフィルムを使用した。
1:掩蓋片
2:蓋面板
3:側面版
4:底面板
5:前面板
6:後面板
7:蓋面板の前端縁
8:前面板の下端縁
9:補強板

Claims (9)

  1. 巻回されたラップフィルムを収納する箱であって、前面板(5)、底面板(4)、後面板(6)および側面板(3)の各壁面で形成される、上部が開口した直方体の収納室と、後面板(6)の上端縁から収納室の開口部を覆う方向に連接した開閉可能な蓋面板(2)と、蓋面板(2)の前端縁から前面板(5)を覆う方向に延出した掩蓋片(1)とを有する収納箱おいて、上記掩蓋片(1)の先端縁の両側端部および中央部が、V字傾斜を有する凹形状であり、該3つの凹形状の間の2つの遷移区間における先端縁は該蓋面板の前端縁と平行であり、かつ上記前面板(5)の上端縁の両側端部が中央から側端に向かって底方向に傾斜していることを特徴とするラップフィルム収納箱。
  2. 上記掩蓋片(1)の先端縁の両側端部における凹形状のV字傾斜の、上記蓋面板(2)の前端縁に対する2つの内角が2〜15度であり、該先端縁の中央部における凹形状のV字傾斜の、上記蓋面板(2)の前端縁に対する2つの内角が1〜10度であり、かつ上記前面板(5)の上端縁の両側端部における傾斜の、前面板(5)の下端縁に対する角度が5〜25度である、請求項1記載のラップフィルム収納箱。
  3. 上記前面板(5)の上端縁の中央部が、V字傾斜を有する凹形状である、請求項1または2記載のラップフィルム収納箱。
  4. 上記前面板(5)の上端縁の中央部における凹形状のV字傾斜の、前面板(5)の下端縁に対する2つの内角が3〜15度である、請求項3記載のラップフィルム収納箱。
  5. 上記掩蓋片(1)がその裏面に補強板を有する、請求項1〜4の何れか1項記載のラップフィルム収納箱。
  6. 上記蓋面板(2)がその裏面に補強板を有する、請求項1〜5の何れか1項記載のラップフィルム収納箱。
  7. 上記掩蓋片(1)がその先端縁部に砥粒径が#320またはそれより小さい紙やすりを有する、請求項1〜6の何れか1項記載のラップフィルム収納箱。
  8. 巻回されたラップフィルムを請求項1〜7の何れか1項記載のラップフィルム収納箱に収納したラップフィルム製品。
  9. ラップフィルムの横方向の端部の少なくとも一方に幅0.1〜10mmのローレット加工および/またはレーザー加工が施されていることを特徴とする、請求項8記載のラップフィルム製品
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