JP5749957B2 - 自動車用装飾繊維シート - Google Patents

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Description

本発明は自動車用装飾繊維シートに関し、特には、天井、ドアサイド、ピラーガーニッシュ、リヤパッケージなどの内装材の表皮材として好適に使用することのできる自動車用装飾繊維シートに関する。
自動車の内装用表皮材として、従来、装飾性に優れる不織布が使用されている。このような不織布として、ニードルパンチ不織布にプリントを施し、次いで、エンボン加工を施したものが開発されているが、成形時にエンボス模様が消失しやすく、しかも耐摩耗性など、表面耐性が充分ではないという欠点があった。そこでエンボス模様が消失しないように、エンボス部を強く加圧すれば良いが、この場合、不織布の風合が硬くなり、成形性が低下し、しかもエンボス部と非エンボス部との境界で切断や破壊が生じることがあった。
そのため、本願出願人は、「熱接着性複合繊維を5〜25重量%含む繊維ウェブの片面からニードリングが施されたニードルパンチ不織布のニードリング面とは反対の面に、樹脂が含浸され、プリント加工およびエンボス加工が施されており、かつ通気度が50〜120cc/cm/secであることを特徴とする車輛内装用表皮材。」(特許文献1)を提案した。このような表皮材(不織布)は実用上満足しうる表面耐性を有し、深みがあるため装飾性に優れ、しかもソフトで暖かい風合を具備するものであった。
特公平7−85978号公報
ところで、近年、燃費の向上のために自動車の軽量化、小型化が進行し、自動車室内が狭くなる傾向があるが、搭乗者が自動車室内において快適に過ごすことができるように、自動車室内を広く感じることが望まれていた。しかしながら、従来、不織布にプリントを施す場合、柄がはっきりとするように、濃色のプリントを施すのが一般的であったが、このようなプリントを施した表皮材は前記要望、つまり自動車室内を広く感じることができないものであった。
本発明はこのような状況下においてなされたものであり、装飾性に優れているのはもちろんのこと、自動車室内を広く感じることができ、圧迫感を和らげることのできる自動車用装飾繊維シートを提供することを目的とする。
本発明の請求項1にかかる発明は、「着色した平均明度が64.87〜70の繊維シートに、顔料として白色顔料のみを含むプリントが施された自動車用装飾繊維シートであり、前記着色した繊維シートの平均明度(Lb)と自動車用装飾繊維シートの最小明度(Lal)との最小明度差(ΔLl=Lal−Lb)が0.9以上であることを特徴とする、自動車用装飾繊維シート。」である。
本発明の請求項1にかかる発明は、着色した繊維シートにプリントが施された自動車用装飾繊維シートであるため、装飾性に優れている。また、着色した繊維シートの平均明度(Lb)と自動車用装飾繊維シートの最小明度(Lal)との最小明度差(ΔLl=Lal−Lb)が0.9以上であるということは、着色した繊維シートよりも明度の高いプリントが施されていることを意味し、明度の高いプリントは膨張して見える心理的効果を発揮するため、自動車室内を広く感じることができ、圧迫感を和らげることができる。更に、最小明度差(ΔLl=Lal−Lb)が0.9以上であることによって、プリント柄を明確に認識することができるため、装飾性に優れている。
実施例で使用したプリントパターン
本発明の自動車用装飾繊維シート(以下、単に「装飾繊維シート」と表記することがある)は着色した繊維シート(以下、単に「着色繊維シート」と表記することがある)にプリントが施された繊維シートであるため、装飾性に優れている。通常、繊維は白色を有するが、プリントする前の繊維シートは白色以外の色に着色した状態にある。この着色繊維シートは、繊維自体が顔料及び/又は染料を含有する原着繊維を用いて繊維シートを形成したものであっても良いし、繊維シートを形成した後に、顔料及び/又は染料で着色したものであっても良いし、或いはこれらを併用したものであっても良い。
なお、着色繊維シートの平均明度(Lb)は特に限定するものではないが、明度の高いプリントを施すことによって、プリントが膨張して見える心理的効果を発揮できるように、70以下であるのが好ましく、69以下であるのがより好ましく、68.5以下であるのが更に好ましい。
また、着色繊維シートの態様は特に限定するものではないが、例えば、不織布、織物、編物であることができる。これらの中でも不織布が好適である。
着色繊維シートを構成する繊維を構成する樹脂は特に限定するものではないが、例えば、ポリエステル、ナイロン、塩化ビニル、アクリル、ポリプロピレンなどを挙げることができる。これらの中でもポリエステルは耐熱性、耐候性、防汚性等に優れているため好適である。また、装飾繊維シートに成形性が必要とされる場合、エンボス加工を施す場合、或いは強度を必要とする場合には、繊維として、融点が異なる2成分以上の樹脂からなり、繊維断面がサイドバイサイド型、芯鞘型、偏心型などの複合繊維を含むのが好ましい。なお、繊維の繊度は特に限定するものではないが、1〜6dtexであるのが好ましく、1.5〜6dtexであるのがより好ましい。また、繊維の繊維長も特に限定するものではないが、30〜110mmであるのが好ましく、50〜80mmであるのがより好ましい。本発明の着色繊維シートは、顔料又は染料の色、種類及び/又は量、樹脂成分の種類及び/又は数、繊度、繊維長などの点で相違する2種類以上の原着繊維を含むことができる。また、原着繊維と非原着繊維とを含むこともできる。
着色繊維シートが不織布の態様である場合、例えば、ニードルパンチ不織布、繊維接着不織布、水流絡合不織布、バインダ接着不織布であることができる。なお、ニードルパンチ、繊維接着、水流絡合、及び/又はバインダ接着を適宜組み合わせることもできる。例えば、ニードルパンチ不織布に対してバインダを含浸、コーティング、又はスプレーし、接着することによって、着色不織布表面を平滑とし、プリントの載りを良くすることができる。
本発明の装飾繊維シートは上述のような着色繊維シートにプリントが施されたものであり、着色繊維シートの平均明度(Lb)と装飾繊維シートの最小明度(Lal)との最小明度差(ΔLl=Lal−Lb)が0.9以上である。着色繊維シートの平均明度(Lb)と装飾繊維シートの最小明度(Lal)との最小明度差(ΔLl=Lal−Lb)がプラス、かつ0.9以上というある程度以上の最低限の明度差があるということは、プリント自体が高い明度を有することを意味し、着色繊維シートに対して明度の高いプリントが施されていることによって、明度の高いプリントが膨張して見える心理的効果を発揮し、自動車室内を広く感じることができ、圧迫感を和らげることができる。また、最小明度差が0.9以上であることによって、プリント柄を明確に認識することができるため、装飾性に優れている。この最小明度差が大きければ大きいほど、プリントが膨張して見える心理的効果を発揮でき、しかも装飾性に優れているため、0.95以上であるのが好ましい。
また、装飾繊維シートの平均明度Laは65以上であるのが好ましい。このように、平均明度Laが65以上であると、自動車室内が明るく、広く感じることができ、圧迫感を和らげることができるためである。この平均明度Laが高ければ高い程、自動車室内を広く感じることができるため、装飾繊維シートの平均明度Laは65.5以上であるのがより好ましく、66.0以上であるのが更に好ましく、66.5以上であるのが更に好ましい。なお、装飾繊維シートの平均明度Laの上限は特に限定するものではないが、白色の装飾繊維シートの平均明度Laが100であることから、100未満である。
なお、プリント柄は前述の最小明度差が0.9以上となる限り、特に限定されるものではないが、例えば、連続した線状、不連続の線状、ドット状、格子状、又はこれらの組合せであることができる。なお、各プリントの形状は同じである必要はなく、異なる形状であっても良い。また、プリントの大きさも同じである必要はなく、異なっていても良く、規則的に又は不規則的に変化することもできる。更に、規則的にプリントされていても良いし、不規則的にプリントされていても良いし、極端な場合には一領域に偏在していても良い。
また、プリントは従来から公知の方法により実施することができる。例えば、所望模様に対応する開口を有するシリンダを用意し、顔料を含む樹脂をプリントすることによって実施することができる。なお、樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などを使用することができ、顔料の色、種類及び量は適宜調整することができる。また、プリント方法はシリンダを使用する方法に限定されず、例えば、グラビア印刷、凸版印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷などにより実施することができ、特に限定するものではない。
本発明における「明度」はCIE1976L*a*b*表色系で表される明度であり、具体的には、積分球分光光度計(エックスライト(株)製、Color i5)を用い、反射測定径25mmの測定範囲で測定して算出することができる。また、「平均明度」は無作為に選んだ10点における明度の算術平均値を意味し、「最小明度」は無作為に選んだ10点における明度の中で、最も明度の低い明度をいう。
本発明の装飾繊維シートは上述のように、着色繊維シートにプリントが施されたものであるが、最小明度差が0.9以上である限り、プリントに加えてエンボス加工が施されていても良い。エンボス模様は特に限定するものではないが、例えば、皮しぼ模様、梨地模様、或いは円、四角形などの所定形状のドットを規則的又は不規則に配置した模様であることができる。
本発明の装飾繊維シートは装飾性に優れているばかりでなく、自動車室内において使用すると、広く感じることができ、圧迫感を和らげることのできるシートである。そのため、例えば、天井、ドアサイド、ピラーガーニッシュ、リヤパッケージなどの自動車内装材の表皮材として使用すると、広々とした開放感をもって快適なドライブを楽しむことができる。
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(第1バインダ接着不織布の準備)
原着ポリエステル繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)を100%用いて、カード機により開繊して繊維ウエブを形成した後、片面から針密度400本/mでニードルパンチ処理を行い、ニードルパンチ不織布(目付:170g/m、厚さ:1.7mm)を製造した。
他方、次の割合で配合した第1バインダ溶液を調製した。
(1)アクリルバインダ[DICNAL(登録商標) DS−23、DIC社製]・・・12部
(2)増粘剤[ネオゲン(登録商標)S−20D、第一工業製薬社製]・・・0.1部
(3)界面活性剤(セロゲン(登録商標)WS−C、第一工業製薬社製)・・・0.2部
(4)アンモニア水・・・0.1部
(5)水・・・87.6部
次いで、前記第1バインダ溶液を泡立てた後、前記ニードルパンチ不織布のニードリング面とは反対の面から塗布し、含浸させた後に、温度130℃のキャンドライヤーで乾燥し、外観がグレー色のバインダ接着着色不織布(目付:180g/m、厚さ:1.7mm)を製造した。
(第2バインダ接着不織布の準備)
原着ポリエステル繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)を100%用いて、カード機により開繊して繊維ウエブを形成した後、片面から針密度400本/mでニードルパンチ処理を行い、ニードルパンチ不織布(目付:155g/m、厚さ:1.6mm)を製造した。
他方、次の割合で配合した第2バインダ溶液を調製した。
(1)アクリルバインダ[DICNAL(登録商標) E−240N、DIC社製]・・・6部
(2)増粘剤[ネオゲン(登録商標)S−20D、第一工業製薬社製]・・・1.0部
(3)界面活性剤(セロゲン(登録商標)WS−C、第一工業製薬社製)・・・0.2部
(4)アンモニア水・・・0.1部
(5)水・・・92.7部
次いで、前記第2バインダ溶液を泡立てた後、前記ニードルパンチ不織布のニードリング面とは反対の面から塗布し、含浸させた後に、温度130℃のキャンドライヤーで乾燥し、外観がダークグレー色のバインダ接着着色不織布(目付:155g/m、厚さ:1.6mm)を製造した。
(第3バインダ接着不織布の準備)
原着ポリエステル繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)を25%、原着ポリエステル繊維(繊度:3.3dtex、繊維長:64mm)を75%用いて、カード機により開繊して繊維ウエブを形成した後、片面から針密度400本/mでニードルパンチ処理を行い、ニードルパンチ不織布(目付:140g/m、厚さ:1.6mm)を製造した。
他方、次の割合で配合した第3バインダ溶液を調製した。
(1)アクリルバインダ[DICNAL(登録商標) E−240N、DIC社製]・・・7.8部
(2)アクリルバインダ[ボンコート(登録商標) AN−1190S、DIC社製]・・・2部
(3)増粘剤[ネオゲン(登録商標)S−20D、第一工業製薬社製]・・・1.5部
(4)界面活性剤(セロゲン(登録商標)WS−C、第一工業製薬社製)・・・0.2部
(5)アンモニア水・・・0.1部
(6)水・・・88.4部
次いで、前記第3バインダ溶液を泡立てた後、前記ニードルパンチ不織布のニードリング面とは反対の面から塗布し、含浸させた後に、温度130℃のキャンドライヤーで乾燥し、外観がライトグレー色のバインダ接着着色不織布(目付:150g/m、厚さ:1.6mm)を製造した。
(第1プリント液の準備)
次の割合で配合した第1プリント液を調製した。
(1)増粘剤[カーボポール940、日本ルーブリゾール(株)製]・・・0.33部
(2)消泡剤[シンエツシリコーンKM−73、信越化学工業(株)製]・・・0.4部
(3)アクリルバインダ[ボンコート(登録商標)3218EF、DIC(株)製]・・・20部
(4)黒顔料[R.W.BLACK RC(V)、DIC(株)製]・・・0.03部
(5)増粘剤[ニカゾール(登録商標) VT−253、日本カーバイド工業(株)製]・・・0.6部
(6)水・・・78.64部
(第2プリント液の準備)
次の割合で配合した第2プリント液を調製した。
(1)増粘剤[カーボポール940、日本ルーブリゾール(株)製]・・・0.33部
(2)消泡剤[シンエツシリコーンKM−73、信越化学工業(株)製]・・・0.4部
(3)アクリルバインダ[ボンコート(登録商標)3218EF、DIC(株)製]・・・20部
(4)白色顔料[R.W WHITE PASTE 69、DIC(株)製]・・・0.9部
(5)増粘剤[ニカゾール(登録商標)VT−253、日本カーバイド工業(株)製]・・・0.6部
(6)水・・・77.77部
(実施例1)
準備した外観がグレー色の第1バインダ接着不織布のバインダ付着面(Lb=64.87)に対して、開口を有するシリンダを用い、第2プリント液をプリントした後、温度160℃のドライヤーで乾燥し、自動車用装飾不織布(幅:65cm)を製造した。つまり、図1に示すように、格子状模様の印影の部分を「く」の字状に、同じ大きさで、規則的にプリントした(印影部の太さ:1mm、図1においては黒色で描写)。この自動車用装飾不織布は立体的で装飾性に優れ、また、平均明度Laは66.79で、最小明度Lalは66.62で、最小明度差(ΔLl)は1.75であり、自動車室内を広く感じることができ、圧迫感を和らげることができるものであった。
(比較例1)
準備した外観がグレー色の第1バインダ接着不織布のバインダ付着面(Lb=64.87)に対して、開口を有するシリンダを用い、第1プリント液をプリントしたこと以外は、実施例1と同様にして、自動車用装飾不織布(幅:65cm)を製造した。この自動車用装飾不織布は立体的で装飾性に優れていたが、平均明度Laは61.79で、最小明度Lalは61.49で、最小明度差(ΔLl)は−3.08であり、自動車室内を広く感じることができないものであった。
(比較例2)
準備した外観がグレー色の第1バインダ接着不織布を自動車用装飾不織布とした。この自動車用装飾不織布は実施例1の装飾布不織布と比較して単調で、あまり装飾性に優れておらず、また、バインダ付着面における平均明度Laは64.87であり、自動車室内を広く感じることができないものであった。
(実施例2)
準備した外観がダークグレー色の第2バインダ接着不織布のバインダ付着面(Lb=68.19)に対して、開口を有するシリンダを用い、第2プリント液をプリントした後、温度160℃のドライヤーで乾燥し、自動車用装飾不織布(幅:65cm)を製造した。つまり、図1に示すように、格子状模様の印影の部分を「く」の字状に、同じ大きさで、規則的にプリントした(印影部の太さ:1mm、図1においては黒色で描写)。この自動車用装飾不織布は立体的で装飾性に優れ、また、平均明度Laは69.81で、最小明度Lalは69.16で、最小明度差(ΔLl)は0.97であり、自動車室内を広く感じることができ、圧迫感を和らげることができるものであった。
(比較例3)
準備した外観がダークグレー色の第2バインダ接着不織布を自動車用装飾不織布とした。この自動車用装飾不織布のバインダ付着面における平均明度Laは68.19であり、自動車室内を広く感じることができたが、実施例2の装飾不織布と比較して単調で、あまり装飾性に優れていなかった。
(比較例4)
準備した外観がライトグレー色の第3バインダ接着不織布のバインダ付着面(Lb=70.78)に対して、開口を有するシリンダを用い、第2プリント液をプリントしたこと以外は、実施例1と同様にして、自動車用装飾不織布(幅:65cm)を製造した。この自動車用装飾不織布の平均明度Laは71.80で、最小明度Lalは71.47で、最小明度差(ΔLl)は0.69であり、自動車室内をある程度広く感じることができたが、プリント柄がぼやけてしまい、あまり装飾性に優れていなかった。
本発明の自動車用装飾繊維シートは装飾性に優れ、しかも自動車室内において使用すると、広く感じることができ、圧迫感を和らげることのできるシートである。そのため、例えば、天井、ドアサイド、ピラーガーニッシュ、リヤパッケージなどの内装材の表皮材として好適に使用することができる。

Claims (1)

  1. 着色した平均明度が64.87〜70の繊維シートに、顔料として白色顔料のみを含むプリントが施された自動車用装飾繊維シートであり、前記着色した繊維シートの平均明度(Lb)と自動車用装飾繊維シートの最小明度(Lal)との最小明度差(ΔLl=Lal−Lb)が0.9以上であることを特徴とする、自動車用装飾繊維シート。
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