JP7077388B2 - 内装用表皮材 - Google Patents

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Description

本発明は、エンボス加工により模様付けされた布帛に関するものであり、主に内装用表皮材、特には、自動車の内装用表皮材として、天井、ドアトリム、リヤーパッケージなどに好適に使用することができる内装用表皮材に関するものである。
従来、自動車等の車両用表皮材には、一般的に、その表面用の材料として不織布、織物、編物などの布帛が用いられる。前記不織布としては、ニードルパンチ不織布、ウォーターパンチ不織布に、樹脂加工を施し、伸縮性に優れながらも、複雑な形状に対しても成形性が良好であるものが開発されている。しかし、単に不織布に樹脂加工を施したものでは、表面に特徴がないため車両用の内装に用いるには意匠性に乏しい。一方、織物や編物は意匠性には優れるものの単体ではクッション性に乏しいため、質感が悪いといった問題がある。また織物や編物では、さらに成形性や価格面で不織布より劣る、という問題もある。
不織布の意匠性を向上させる方法としては、例えば特許文献1~5に示すような、不織布表面にエンボス加工により模様を施した内装用表皮材や各種用途に使用される不織布がある。
特許文献1には、高融点繊維と熱融着性繊維の短繊維からなる繊維層であって、繊維間の交絡がニードル加工によって行われており、かつ該繊維層の繊維間が熱融着性繊維で接着されていると共に、一部が模様付けされたエンボスローラーにより熱圧着された不織布が開示されているが、実施例では融点が110℃の低融点繊維が使用されているため、成形時の加熱によって、エンボス柄が消失し、エンボス柄がぼやけてしまう虞がある。
特許文献2は、プレス用金型にエンボス加工を施して、不織布を表面に持つ素材をプレスすることで規則正しいエンボス模様を形成するものであるが、プレス用金型は高価であり、模様毎にプレス用金型を作製することは経済的に困難である。
特許文献3では、意匠性を高めるためにプリント加工とエンボス加工を併用しているが、工程が多く安価に製造することが出来ない。
更に特許文献3及び特許文献4は、エンボス加工を施した内装用表皮材を熱成形する際にエンボス模様が消失しないように主体となる繊維の融点よりも低い融点/軟化点である低融点繊維やバインダー樹脂を使用して、その温度間でエンボス加工をするものであるが、効果は不足している。
特許文献5は、装飾性に優れ車室内を広く感じられるプリント不織布に関するものであるが、一般的に不織布表面は凹凸があり平滑ではないため鮮明に柄をプリントすることが困難であり、意匠性の効果としては不十分である。
特開2005-54295号公報 特開平9-109795号公報 特開平1-168540号公報 特開平2-139481号公報 特開2014-51268号公報
サンバイザーやミラー部分等、自動車等の内装には、複雑な成形が要求される場合があるが、複雑な成形に用いる型の絞りが深いため、成形時に表皮材にシワが入ってしまうといった問題がある。本発明者が検討したところ、このシワ入りの問題を改善するには、内装用表皮材を低モジュラスに仕上げ、型への追従性を高めることが重要であることが分かった。しかし、内装用表皮材のエンボス柄を明瞭にするためには、内装用表皮材のモジュラスは高い方が好ましく、従来品では、成形性の改善とエンボス柄の明瞭化を両立することが難しかった。
このような状況下、本発明は、成形時のシワの発生を抑制し、更にはエンボス柄が明瞭な内装用表皮材を提供することを課題として掲げた。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、融点が150℃以上220℃以下の低融点繊維を7重量%以上30重量%以下含む繊維基材を用い、エンボス柄の型付けをした後の10%伸長時モジュラスを下げ、更には、タテ方向とヨコ方向の10%伸長時モジュラスを同程度に調整することにより、成形時のシワの発生が抑制され、更にはエンボス柄が明瞭な内装用表皮材が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明に係る内装用表皮材は、以下の点に要旨を有する。
[1] 融点が150℃以上220℃以下の低融点繊維を7重量%以上30重量%以下含む繊維基材から構成され、
表面にエンボス柄を有し、
タテ方向及びヨコ方向の10%伸長時モジュラスが、それぞれ10N/5cm以上60N/5cm以下であり、
10%伸長時モジュラスのタテ方向/ヨコ方向比が、0.7以上2.0以下であることを特徴とする内装用表皮材。
[2] 明度が75以下の濃色繊維が、前記繊維基材100重量%中、50重量%以上含まれている[1]に記載の内装用表皮材。
[3] 前記濃色繊維として、明度が異なる2種以上の繊維が混綿されている[2]に記載の内装用表皮材。
[4] 明度が55以下の繊維を含む[2]または[3]に記載の内装用表皮材。
[5] エンボス率が5%以上60%以下である[1]~[4]のいずれかに記載の内装用表皮材。
[6] 前記繊維基材がニードルパンチ跡を有し、
ニードルパンチ跡が790本/cm2以下である[1]~[5]のいずれかに記載の内
装用表皮材。
本発明によれば、成形時のシワの発生が抑制され、成形後であってもエンボス柄の消失がなく、エンボス柄が明瞭に視認される内装用表皮材が得られる。
本発明の内装用表皮材は、融点が150℃以上220℃以下の低融点繊維を7重量%以上30重量%以下含む繊維基材から構成され、表面にエンボス柄を有し、タテ方向及びヨコ方向の10%伸長時モジュラスが、それぞれ10N/5cm以上60N/5cm以下であり、10%伸長時モジュラスのタテ方向/ヨコ方向比が、0.7以上2.0以下である
ことを特徴とする。融点が150℃以上220℃以下の低融点繊維を用いることにより、溶融・固化後の低融点繊維が内装用表皮材を高モジュラスにするため、エンボスの凹凸模様を形成しやすくなる。
また内装用表皮材の成形性を良好なものとするために、内装用表皮材のタテ方向及びヨコ方向の10%伸長時モジュラスは、それぞれ、10N/5cm以上、より好ましくは15N/5cm以上、更に好ましくは18N/5cm以上であり、60N/5cm以下、より好ましくは53N/5cm以下、更に好ましくは45N/5cm以下である。内装用表皮材自体を低モジュラスにすることにより、成形時のシワの発生を抑えることが可能となる。
更に本発明者が検討したところによると、タテ方向とヨコ方向の10%伸長時モジュラスを同程度に調整しておくと、エンボス率が高いような高モジュラス傾向の内装用表皮材であっても、成形時に内装用表皮材がタテ方向・ヨコ方向のそれぞれに均等に伸びるため、歪が生じにくく、成形シワの抑制に有効なことが分かった。そのため内装用表皮材における10%伸長時モジュラスのタテ方向/ヨコ方向比は、0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、2.0以下、より好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1.3以下が望ましい。なお、10%伸長時モジュラスのタテ方向/ヨコ方向比が前記範囲内であれば、例えば、30%伸長時モジュラスや破断時のモジュラスのタテ方向/ヨコ方向比が0.7未満または2.0超であってもよい。
以下、各構成について詳述する。
1.繊維及び繊維基材
1-1.低融点繊維
繊維基材には、融点が150℃以上220℃以下の低融点繊維が7重量%以上30重量%以下含まれる。前記低融点繊維を用いると、エンボス加工時の加熱により低融点繊維が溶融するため、エンボス部と非エンボス部の界面がよりシャープになり、凹凸模様の輪郭は明瞭なものとなる。加えてエンボスロールの熱の影響によりエンボス部だけではなく非エンボス部も表面が平滑になるため、触感も改善し、耐スクラッチ性や耐摩耗性も良好なものとなる。繊維基材をニードルパンチ加工等の機械的絡合法による不織布とする場合には、更に、低融点繊維を用いると、加熱により一部または全部が溶融した低融点繊維が、繊維基材を構成する他の繊維と接合するため、ニードルパンチ加工の条件を変更して繊維の交絡を緩くでき、低モジュラスを実現できる上、ニードルパンチ加工によるパンチ跡も目立たなくなるため、意匠性がより向上するといった利点もある。
低融点繊維の融点は、150℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、220℃以下、より好ましくは215℃以下、更に好ましくは210℃以下である。低融点繊維の融点が低すぎると、成形時の加熱によって、エンボス柄が消失し、エンボス柄がぼやけてしまうことがある。また、低融点繊維の融点が高すぎると、低融点繊維が十分に溶融せず、凹凸模様の輪郭がシャープになりにくいため好ましくない。なお、低融点繊維が単一樹脂から構成される場合であっても、融点の異なる複数の樹脂から構成される場合であっても、低融点繊維を構成する樹脂中に、融点が150℃以上220℃以下である樹脂が含まれていれば、その繊維は低融点繊維とする。
低融点繊維の混綿率は、繊維基材100重量%中、7重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上であり、30重量%以下、より好ましくは25重量%以下、更に好ましくは22重量%以下である。低融点繊維の混綿率が前記範囲を下回ると、低融点繊維の量が十分でないため、エンボス柄が繊維基材に固定されにくくなり、内装用表皮材の外観が悪くなったり、エンボス柄が消えやすくなる虞があるため好ましくない。また低融点繊維の混綿率が前記範囲を上回ると、高モジュラスになり成型性が
劣るため好ましくない。
低融点繊維には、ポリエステル-変性ポリエステル、ナイロン-変性ナイロン、オレフィン系樹脂であるポリエチレン-ポリプロピレン等の融点の異なる複数の樹脂からなる芯鞘構造あるいはサイドバイサイド構造を有する複合繊維や単一の樹脂からなる低融点繊維等があるが、本発明では、ポリエステル-変性ポリエステル樹脂からなる芯鞘構造を有する複合繊維が融点の選択範囲が広く好適に使用される。芯鞘構造を有する複合繊維の場合には、鞘成分の融点が前述した低融点繊維の融点の範囲を満たしていることが好ましい。また、芯成分の融点は、熱処理後の低融点繊維が繊維基材の骨格として機能するように、鞘成分の融点よりも、好ましくは40~100℃、より好ましくは50~80℃高いことが好ましい。また、低融点繊維が結晶性の樹脂から構成されていれば、成形時に内装用表皮材が再溶融することがなく模様の消失をより防止することが可能となる。
1-2.高融点繊維
更に繊維基材には、前記低融点繊維よりも融点が30℃以上高い高融点繊維が含まれていることが好ましい。前記高融点繊維は、繊維基材の形状安定に寄与する。高融点繊維と低融点繊維の融点差が30℃未満であると、加熱条件によっては、高融点繊維及び低融点繊維の両方が溶融又は軟化して繊維基材が固化する虞があるため好ましくない。高融点繊維の融点は、低融点繊維の融点よりも60℃以上高いことがより望ましい。高融点繊維の融点は特に限定されるものではないが、好ましくは220℃超、より好ましくは235℃以上、更に好ましくは250℃以上であり、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、更に好ましくは270℃以下である。
高融点繊維としては、例えば、綿、麻、毛、絹等の天然繊維;レーヨン、ポリノジック、キュプラ、レヨセル等の再生繊維;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド繊維;ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維、ポリアリレート等のポリエステル繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維;等が例示でき、これらの繊維を1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、耐熱性や耐候性などに優れ、原着繊維の種類が多く、取扱いが容易であることから、主としてポリエステル繊維が使用されることが好ましい。内装用表皮材のリサイクル性や廃棄の容易性を考えると、繊維基材は実質的に同一樹脂を原料とする繊維から構成されていることが好ましく、前記繊維は特にポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。ポリエチレンテレフタレート繊維の使用量は、繊維基材100重量%中、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは100重量%である。
高融点繊維の混綿率は、繊維基材100重量%中、好ましくは70重量%以上、より好ましくは75重量%以上、更に好ましくは78重量%以上であり、好ましくは93重量%以下、より好ましくは90重量%以下、更に好ましくは85重量%以下である。高融点繊維の混綿率を前記範囲内に調整することにより、繊維基材の形状がより安定する。
1-3.嵩高繊維
非エンボス部の質感・触感を高め、内装用表皮材の低モジュラス化実現、更にはエンボスの凹凸模様の明瞭化のために、繊維基材には、中空繊維、捲縮繊維及び中空捲縮繊維から選ばれる少なくとも1種以上の嵩高繊維が含まれていてもよい。これらの嵩高繊維を混綿することにより、非エンボス部のボリューム感が向上して、エンボス部との厚さの差異が大きくなり、エンボスによる凹凸模様がより強調される。また成形時に非エンボス部が圧縮されにくいため、エンボスによる凹凸模様が消失しにくく、意匠性に優れた内装用表皮材となる。加えて、エンボス加工を施すことにより風合いは多少硬くなるが、非エンボス部のボリューム感によって緩和されるという効果もある。
前記中空繊維とは、例えば、繊維の内部が空洞であり且つ捲縮構造を有していない繊維をいう。中空繊維の中空率は、特に限定されるものではないが、例えば、10%以上が好ましく、より好ましくは15%以上であり、更に好ましくは20%以上である。上限は特に限定されるものではないが、カード機での紡出容易性を考慮すると60%以下が好ましく、より好ましくは50%以下であり、更に好ましくは35%以下であり、入手が容易なことから30%以下であってもよい。中空率は例えば、繊維の断面写真から次式により算出することができる。
中空率(%)=(中空部の断面積/繊維の断面積)×100
前記捲縮繊維とは、例えば、中実で且つスパイラル形状の三次元捲縮構造を有する繊維をいう。捲縮繊維の捲縮率は、例えば16%以上が好ましく、より好ましくは18%以上であり、更に好ましくは19%以上であり、上限は例えば、30%以下が好ましく、より好ましくは25%以下である。捲縮率は、例えば、JIS L1015の8.12.2法に準じて測定することが可能である。
前記捲縮繊維は、顕在型、潜在型のどちらも使用可能である。
また前記捲縮繊維の捲縮数は、例えば、3個/インチ以上が好ましく、より好ましくは5個/インチ以上であり、更に好ましくは7個/インチ以上であり、例えば、25個/インチ以下が好ましく、より好ましくは20個/インチ以下であり、更に好ましくは15個/インチ以下であり、特に好ましくは12個/インチ以下である。なお本発明において、「インチ」は25.4mmである。また捲縮数は、例えば、JIS L 1015の7.12法に準じて測定できる。
前記中空捲縮繊維とは、繊維の内部が空洞であり且つスパイラル形状の三次元捲縮構造を有する繊維をいう。中空捲縮繊維における中空率、捲縮率、捲縮数等は、いずれも中空繊維、捲縮繊維の欄で詳述した通りである。
嵩高繊維は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリアリレート等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル-塩化ビニル共重合体等のアクリル樹脂;等を原料とする合成繊維;レーヨン、ポリノジック等の再生繊維;アセテート繊維、トリアセテート繊維等の半合成繊維;等から形成される各種化学繊維を好ましく使用することができる。特に、これらの繊維の原料である熱可塑性樹脂材料を用いて、熱収縮率の異なる樹脂を組み合わせた複合繊維も好ましい。本発明では、繊維が熱や湿気等で劣化しにくく、安価で、且つ入手が容易であることからポリエステル樹脂を原料に含む繊維が好ましい。
嵩高繊維としては、熱収縮率の異なる樹脂を同時に押し出した偏心構造や、サイドバイサイド構造を有する複合繊維(コンジュゲート繊維);熱収縮率の異なる繊維を組み合わせたバイコン繊維;繊維の表側と裏側とで熱処理等の処理の程度を異ならせて立体捲縮を発現させた捲縮繊維;等の各種繊維が例示できる。本発明には、異なる材料を組み合わせた複合繊維がより好ましく、特にサイドバイサイド構造を有する複合繊維が好ましい。
このような繊維であれば、捲縮構造がしっかりと維持されるため触感がよく、また成形時の圧力により凹凸模様の潰れを防止することができる。
嵩高繊維を使用する場合、前記嵩高繊維の混綿率は、繊維基材100重量%中、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%以上が更に好ましく、30重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましく、20重量%以下が更に好ましい。
1-4.繊維の明度
繊維基材には、明度が75以下の濃い色の繊維(以降、「濃色繊維」と称する場合がある)が、繊維基材100重量%中、好ましくは50重量%以上含まれていることが望ましい。本発明に係る内装用表皮材は、その意匠性を高めるために表面にエンボス柄を有しており、型押された凹凸模様(以降、「エンボス部」と称する場合がある)を視認することでデザインを楽しむことができる。しかし本発明者が検討した結果、繊維基材中の濃色繊維の混綿率が低すぎる場合には、凹凸模様と型押しされていない部分(以降、「非エンボス部」と称する場合がある)における明度の高い繊維を、エンボス部よりも先に視覚が認識することで、エンボス部と非エンボス部との差がはっきりせずに、柄(凹凸模様)の輪郭がぼやけて視認されてしまうことが分かった。しかし、濃色繊維の混綿率を高めることで、柄ボケの現象を抑え、エンボスによる凹凸模様を明瞭にすることが可能となる。濃色繊維は柄ボケの点からは多いほど好ましく、濃色繊維の混綿率は、繊維基材100重量%中、より好ましくは68重量%以上、更に好ましくは75重量%以上、より更に好ましくは85重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。
なお繊維の明度は、例えば、実施例に示す方法で測定できる。
濃色繊維の明度は、例えば72以下が好ましく、より好ましくは70以下であり、更に好ましくは55以下であり、特に好ましくは50以下であり、より更に好ましくは45以下であり、下限は特に限定されないが、例えば10以上である。濃色繊維の明度が低いほど(すなわち、より濃い色の繊維になるほど)、エンボスによる凹凸模様がより明瞭になるため好ましい。
また繊維基材には、明度が75超の繊維(以降、「淡色繊維」と称す場合がある)が含まれていてもよい。前記濃色繊維と前記淡色繊維の混綿率(濃色繊維:淡色繊維)は、重量比で、100:0~50:50が好ましく、98:2~65:35がより好ましく、95:5~75:25が更に好ましい。
淡色繊維の明度は、一般的には、90以下であり、86以下がより好ましい。下限は75超であり、77以上であってもよい。
繊維基材が、上記濃色繊維と淡色繊維の両方を含むとき、濃色繊維と淡色繊維の合計は、繊維基材を構成する繊維100重量%中、90重量%以上が好ましく、より好ましくは95重量%以上であり、更に好ましくは100重量%である。
濃色繊維及び淡色繊維としては、それぞれ、明度が異なる2種以上の繊維が混綿されていてもよい。本構成により、内装用表皮材の色の多様化が可能となる。
特に繊維基材は、明度が55以下の繊維を含むことが好ましい。繊維基材がより濃い色を含むことにより、凹凸模様をより視認しやすくなり、柄ボケの現象を抑えることが可能となる。この場合、明度が55以下の繊維の混綿率は濃色繊維100重量%中、40重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、65重量%以上であってもよく、上限は特に限定されないが、100重量%であってもよく、90重量%以下であってもよい。
濃色繊維として明度が異なる2種以上の繊維が混綿される場合、その態様としては、明度10以上55以下の繊維と明度55超75以下の繊維を混綿する態様;明度10以上55以下の繊維から明度が異なる2種以上の繊維を混綿する態様;明度55超75以下の繊維から明度が異なる2種以上の繊維を混綿する態様;などのいずれであってもよい。
明度10以上55以下の繊維と明度55超75以下の繊維を混綿するとき、混綿率(明度10以上55以下の繊維:明度55超75以下の繊維)は、90:10~10:90が好ましく、80:20~20:80がより好ましく、75:25~40:60が更に好ましく、70:30~55:45が特に好ましい。
明度10以上55以下の繊維から明度が異なる2種以上の繊維を混綿するとき、混綿率(明度10以上30以下の繊維:明度30超55以下の繊維)は、90:10~10:90が好ましく、80:20~20:80がより好ましく、60:40~30:70が更に好ましく、45:55~35:65が特に好ましい。
明度55超75以下の繊維から明度が異なる2種以上の繊維を混綿するとき、混綿率(明度55超71以下の繊維:明度71超75以下の繊維)は、90:10~10:90が好ましく、80:20~20:80がより好ましく、75:25~50:50が更に好ましく、75:25~55:45が特に好ましい。
前記濃色繊維としては、例えば、黒色、赤色、グレー色、黄色、水色等が好ましく、前記淡色繊維としては、例えば、ベージュ色、淡黄色、白色等が好ましい。繊維基材に印刷などにより所望の色を着色してエンボス加工をすることも可能であるが、製造工程を簡略化しより安価・簡便に内装用表皮材を製造するために、本発明では、濃色繊維及び淡色繊維の少なくとも一方に、より好ましくは濃色繊維及び淡色繊維の両方に原着繊維を用いることが好ましい。前記「原着繊維」とは、紡糸前の原液の段階で顔料や染料などの着色剤を混合することにより、着色された原糸である。近年では、デザインの多様化に対応するために、黒色、赤色、青色等の濃く明瞭な色を有する低明度の色調や、ピンク色、水色、淡黄色等のパステル調の色調等も好んで使用されていることから、原着繊維は、色の異なる複数種(例えば、2~6種類程度)が混綿されていてもよい。色の異なる複数種の原着繊維を混綿する場合には、多少の混綿ムラが発生していてもよい。また内装用表皮材の価格を抑えるには、高明度(淡色)の原着繊維の混綿率を高めるとよい。
濃色繊維及び淡色繊維の断面形状は特に限定されるものではなく、丸断面;三角形、星形、五角形等の異型断面;のいずれも使用することができる。
濃色繊維及び淡色繊維の分類に際しては、前述した低融点繊維、高融点繊維及び嵩高繊維など、繊維基材に含まれる全ての繊維を分類の対象とする。
また基材に含まれる繊維(低融点繊維、高融点繊維及び嵩高繊維等)には、必要に応じて、消臭加工、抗菌加工、撥水加工、難燃加工等の特殊加工が施されていてもよい。これらの特殊加工は、繊維の紡糸前に実施されても、紡糸後に実施されていてもよい。
1-5.繊維基材
繊維基材に含まれる繊維(前述した低融点繊維、高融点繊維及び嵩高繊維など)の平均繊度は、好ましくは1.0dtex以上、より好ましくは1.3dtex以上、更に好ましくは2.0dtex以上であり、好ましくは6.0dtex以下、より好ましくは5.0dtex以下、更に好ましくは4.5dtex以下である。繊度が1.0dtex未満では、通気性が低くなることにより吸音性が悪化するだけでなく厚さが薄くなって接着剤が染み出すため好ましくない。6.0dtexより大きくなると、特にエンボス部は薄いため成形する際に接着剤が染み出したり、圧密により平滑化されるため、繊維基材全体の明度に対して低い/高い繊維の繊維感が強くなりすぎるため好ましくない。
低融点繊維の平均繊度は、0.8~6dtexが好ましく、1.5~5dtexがより好ましい。低融点繊維の繊度が前記範囲内であれば、低融点繊維が溶融しやすく、加熱処理時間を短縮できる。
高融点繊維の平均繊度は、例えば、0.8~6dtexが好ましく、より好ましくは1.5~5dtexである。
嵩高繊維の平均繊度は、例えば、4~8dtexが好ましく、より好ましくは5.5~7.5dtexである。
繊維基材に含まれる繊維の平均繊維長は、15~152mmが好ましく、より好ましくは30~100mmである。平均繊維長が前記範囲内であれば、内装用表皮材として好適な不織布が得られる。
内装用表皮材に使用される繊維基材は、不織布、織物、編物等のいずれであってもよいが、成形性に優れることから不織布が望ましい。前記不織布としては、長繊維不織布、短繊維不織布のいずれも使用することができるが、特に短繊維不織布が好ましい。
不織布としては、スパンボンド不織布;サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、水流絡合法、ステッチボンド法等の各種結合方法により得られた乾式不織布;サーマルボンド法、ケミカルボンド法、スパンレース法等の各種結合方法により得られた湿式不織布;等が例示できる。本発明ではエンボス加工時の不織布の変形を抑える為に、ニードルパンチ法により繊維を交絡させた後、熱処理を行い低融点繊維の一部を溶融・固化させるニードルパンチ法及びサーマルボンド法の併用が好ましい。
繊維基材の製造方法は、前記繊維基材が不織布である場合、公知の方法で製造することが可能である。例えば、繊維を計量した後混綿し、その後、カード機を用いてカーディングした後、クロスラッパーによりラッピングし、クロスレイヤー機等を使用して積層した後、得られた繊維ウエブを、所定の打ち込み本数及び針深さ3~12mm(より好ましくは4~9mm)にてニードルパンチ加工を実施し、その後、得られたニードルパンチ不織布に適宜熱処理を行うとよい。また10%伸長時モジュラスのタテ方向/ヨコ方向比の調整には、例えば、クロスレイヤーによる繊維ウエブ積層角度の調整や、積層繊維ウエブのニードルパンチドラフト率の調整等が有効である。
内装用表皮材は、エンボス加工を施さない従来品と比較して、エンボス加工により内装用表皮材の繊維の一部が固定化(圧密化)されることで高モジュラスとなりやすい。また繊維基材には低融点繊維が含まれているため、内装用表皮材はより高モジュラスになる傾向にある。内装用表皮材が高モジュラスになると、車の天井などの形状にするために加熱プレスされる際、プレス型に追従しない部分にシワが発生しやすくなる。そのため、ニードルパンチ加工などの機械的交絡処理の製造条件を弱くすることで、繊維の機械的交絡を低減させ、低モジュラスにすることが望ましい。このような観点から、ニードルパンチ加工の針の打ち込み本数を、通常よりも10~20%程度低減した80~800本/cm2
にすると(エンボス加工していない通常の内装用表皮材の繊維基材では100~1000本/cm2程度)、エンボス加工を施しても低モジュラスの内装材を得られる。これによ
り、優れた意匠性を有しながら、現行使用している成形金型で成型できるという大きなメリットが得られる。針の打ち込み本数は、より好ましくは150~600本/cm2であ
り、更に好ましくは200~500本/cm2であり、特に好ましくは250~400本
/cm2である。
なお、ニードルパンチ加工後の繊維基材はニードルパンチ跡を有しているが、通常確認できるニードルパンチ跡は、実際の打ち込み本数よりも少ない場合が多い。繊維基材に形成されるニードルパンチ跡は、例えば790本/cm2以下であり、好ましくは590本
/cm2以下、より好ましくは490本/cm2以下、更に好ましくは390本/cm2
下であり、下限は特に限定されないが、好ましくは10本/cm2以上である。
また、ニードルパンチ加工では、ウエブの上面又は下面の一方を針で突く方法;ウエブの上面及び下面の両面を針で突く方法;のいずれも採用できる。
また内装用表皮材の低モジュラス化には、サーマルボンド時の熱処理温度も重要である。本発明では、低融点繊維として比較的融点の高い繊維を採用し、この低融点繊維の融点よりも低い温度で熱処理することにより、内装用表皮材の低モジュラス化に成功している。具体的には、エンボス加工しない内装材であれば低融点繊維の融点よりも30~100℃程度高い温度で熱処理をする所(例えば、特開2004-114815号参照)、本発明では、低融点繊維の融点よりも約5~40℃低い温度で熱処理する。低融点繊維の融解開始温度は、低融点繊維の融点よりも10~40℃程度低いのが通常である。そのため、サーマルボンドの熱処理温度と低融点繊維の融点の差が5℃未満では、低融点繊維の大部分が溶融し、非エンボス部においても繊維間接着が強まるため、内装用表皮材が高モジュラスとなり好ましくない。一方、サーマルボンドの熱処理温度と低融点繊維の融点の差が40℃を超えると、低融点繊維がほとんど溶融しないため、内装用表皮材の耐摩耗性が低下したり、形状が安定せず、エンボス加工時に繊維基材が熱収縮して非エンボス部の表面に不要な凹凸シワが発生し、外観不良となる虞がある。
サーマルボンド法における熱処理温度は、具体的には、120~190℃が好ましく、より好ましくは140~180℃である。熱処理時間は、混綿する低融点繊維の融点や含有量を考慮して適宜設定するとよいが、15~180秒が好ましく、より好ましくは20~90秒である。サーマルボンド法は、例えば、所望の温度に調整した熱処理機(例えば、循環式熱風乾燥機)を用いて行うことができる。
サーマルボンド加工後、更に得られた繊維基材に平滑処理を施してもよい。平滑処理を行うことにより、繊維基材表面の凹凸が減り、成形工程時の圧力によってエンボスによる凹凸模様がぼやけることを抑制できる。平滑化処理は、サーマルボンド加工後の不織布のいずれか一方の表面または両面に施すことができる。また、平滑化処理は、例えば、サーマルボンド加工の不織布を加熱ロールや加熱板間に通すことで実施できる。
また、そのほかの手法としてシリコーン油剤処理された繊維を、繊維基材100重量%中、1~30重量%程度混綿すると、繊維間の摩擦が低下し過度に繊維が交絡しないため、低モジュラス化を実現することが可能である。
内装用表皮材の目付や厚さは、使用態様に応じて適宜調整するとよい。目付は50~300g/m2が好ましく、より好ましくは100~280g/m2であり、更に好ましくは120~250g/m2である。目付が前記範囲内であれば、透けのない内装用表皮材が
得られる。また内装用表皮材の厚さは1.2~3mmが好ましく、1.5~2.5mmがより好ましい。厚さが前記範囲内であれば、エンボス柄がつきやすく、また成形時の接着剤の染み出しを防止できる。
また内装用表皮材の密度は、好ましくは0.05~0.17g/cm3、より好ましく
は0.06~0.15g/cm3である。密度が高くなるほど、成形後の表面仕上がりが
よくなる。
2.樹脂加工
エンボス加工する際の加熱・加圧により、エンボス部に光沢(テカリ)を発生させ、前記光沢により、エンボス部と非エンボス部との差を明瞭なものとし、凹凸模様をより立体的に見せるという視覚効果を発揮される目的で、繊維基材に樹脂加工を施すことも可能である。前記樹脂加工は、繊維基材の片面或いは両面に施すことが可能である。
樹脂加工で使用する樹脂の種類は汎用のものでよく、例えば、アクリル酸及び/またはアクリル酸エステルに由来する構成単位を含むアクリル系バインダー;酢酸ビニルに由来する構成単位を含む酢酸ビニル系バインダー;塩化ビニルに由来する構成単位を含む塩化
ビニル系バインダー;ブタジエン-スチレン系、ブタジエン-アクリロニトリル系、クロロプレン系等の合成ゴム系バインダー;ポリエステル系バインダー;ウレタン系バインダー;等が好ましい。
しかしながら本発明では、樹脂加工を行わなくても、内装用表皮材には低融点繊維が含まれているため、エンボス柄は明瞭になることから、製造工程の簡略化(水分蒸発乾燥・廃液処理の削除等)、内装用表皮材のリサイクル性の向上、及び内装用表皮材の安価な製造のため(例えば、界面活性剤等の添加物不使用による)、樹脂加工は行わない方が好ましい。樹脂加工による樹脂の固定量(樹脂目付)は、固形分で、好ましくは30g/m2
以下、より好ましくは20g/m2以下、更に好ましくは10g/m2以下、より更に好ましくは5g/m2以下、特に好ましくは0g/m2である。
3.エンボス加工
本発明では、前述した方法で得られた繊維基材に、更にエンボス加工を施すことで意匠性及び成形性に優れた内装用表皮材が得られる。エンボス加工では、加熱及び加圧の条件下で、繊維基材に模様となる凹部を形成する。エンボス加工後の繊維基材の凹部は、繊維の圧密・平滑化と、熱溶融後の低融点繊維がフィルム様に固化することによるテカリにより、凸部よりも色が明るく(白っぽく)見える。
エンボス加工の条件は模様の種類・深さ・面積及び繊維基材の構成などに応じて、適宜決定すればよいが、内装用表皮材をより低モジュラスに仕上げながらも、エンボス柄を明瞭にするために、温度は、好ましくは低融点繊維の融点よりも約0~50℃高く設定することが好ましい。具体的にエンボス加工時の温度は、好ましくは160~240℃、より好ましくは180~210℃である。またエンボス加工時の圧力は、好ましくは30~200kg/cm、より好ましくは60~150kg/cmである。
エンボスの模様は特に限定されず、カーボンクロス調、織目調、皮しぼ調、ダイヤ柄、ドット、多角形、波形、ストライプ、ハートなどの形状をエンボス型の凸部及び/又は凹部として形成するとよい。エンボス型の凸部及び/又は凹部は全て同じ形状・高さである必要はなく、様々な形状・高さにすることでテカリ具合に変化が生じさらに意匠性は向上する。
意匠性、風合い、成形金型への追従性の観点より、エンボス率は、好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下であり、好ましくは5%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上であり、より更に好ましくは35%以上である。本発明の内装用表皮材は成形性が良好であるため、近年採用が増加しているエンボス率が30%以上のような緻密な模様柄にも対応可能である。
エンボス部の厚さは、非エンボス部の厚さに対し、好ましくは0.8倍以下、より好ましくは0.7倍以下、更に好ましくは0.6倍以下であり、好ましくは0.2倍以上、より好ましくは0.3倍以上、更に好ましくは0.4倍以上である。エンボス部の厚さを前記範囲内に調整することにより、明瞭なエンボス柄を有する内装用表皮材が得られる。
エンボスの位置は、繊維基材表面から繊維基材の厚さの1/8~1/2の深さにあることが好ましい。エンボスの位置を前記範囲内に調整することにより、明瞭なエンボス柄を有する内装用表皮材が得られる。特に、濃色繊維の混綿率が68重量%以上である繊維基材に、前述の範囲のエンボス率と表面からの深さになるようエンボス加工を施すと、エンボス柄が明瞭となり意匠性が向上するとともに、エンボス部のテカリにより空間錯覚を最も引き起こしやすく車室空間を広く見せるのに非常に効果的である。
4.内装材
車用の内装材として成形する際には、基材上に接着材層と本発明の表皮を積層してなる成形材料を、上下の成形金型間に配置して加熱加圧するとよい。基材は、成形品の目的・用途等によって適宜選択されるが、成形工程において、熱と圧力、又は、圧力のみによって所定形状に賦形されるものが好ましく、通常、ポリウレタンやポリスチレンなどの発泡体、硬質・半硬質の合成樹脂材料、またはこれらの発泡体やガラス繊維等で補強された繊維強化合成樹脂等が用いられ、中でも厚さ3~5mm程度のポリウレタン樹脂発泡体、ポリスチレン樹脂発泡体、または繊維強化合成樹脂板状体が好適である。
接着材層は、イソシアネート系、アクリル系、合成ゴム系等のエマルジョン接着剤や、合成樹脂系のホットメルト接着剤としてフィルム、シート、ペレットが使用可能であり、特に低融点(80℃~160℃)ポリアミド樹脂からなるスパンボンド不織布(くもの巣状ホットメルトシート:ダイナック(登録商標))が好適である。
成形方法は既知プレス方法で加圧することによって成形すればよく、予め成形材料を加熱しておいて常温下で加圧するコールドプレス法;上下型の少なくとも下型を加熱しておき、成形材料を加熱加圧するホットプレス法;等、既知の手段が適用される。
成形条件としては、表皮及び基材の種類・形成形状などに合わせて適宜決定すればよいが、例えばホットプレスの場合、温度は低融点繊維の融点よりも低く設定することが好ましく、具体的には、50~170℃が好ましく、より好ましくは80~150℃、プレス時間は10~60秒程度が好適である。
一般的に、エンボス加工と比較して成形加工の加熱・加圧条件は緩やかとなっているため、本発明の内装用表皮材を使用すると、エンボスによる凹凸模様を維持することが可能となる。本発明に係る内装用表皮材は、特に、天井、ドアトリム、リヤーパッケージなどの車両用の内装用表皮材(すなわち、表皮材用の意匠性外面材)として好ましく用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例・比較例で用いた測定方法は以下の通りである。
(エンボス率)
一定面積(S0)のエンボスロール上における凸部の面積(S1)の比率を用いて、下式によりエンボス率を算出する。
エンボス率(%)=S1/S0×100
(目付) JIS L1913 6.2に準じる。
(厚さ) 株式会社尾崎製作所製厚み測定器:形式H-30により計測した。
(密度) 目付を厚さで除し、単位を換算した。
(繊維の明度)
混綿する前の繊維をカード機でカーディングして繊維ウエブを積層し、表面より打ち込
み本数60本/cm2、針深さ8mm、次いで裏面より打ち込み本数90本/cm2、針深さ8mm、その後表面より打ち込み本数120本/cm2、針深さ8mmでニードルパン
チ加工(ニードル:オルガン製「品番1-40」)をした目付100g/m2の不織布表
面の明度を、高速分光光度計((株)村上色彩技術研究所製:型番CMS-500:試料窓寸法15.5mm×24mm、観測寸法8mm×16mm)により計測する。
(モジュラス)
JIS L1913 6.3に準じ、5cm×20cmの試料を採取し、タテ方向(製造工程における不織布の流れ方向;MD方向)・ヨコ方向(MD方向に直交する方向;CD方向)に対してつかみ間隔10cm、速度20cm/minで引張り、10%伸張時(1cm伸張時)のモジュラスを計測する。
(成形性)
現行使用している成形金型で成型し、深絞り部分にシワが発生するか目視で確認する。
○:シワが発生しなかった
△:小さいシワが発生した
×:大きいシワが発生した
(表面意匠性)
成形前後の意匠性について下記の通り評価する。
成形前:外観、成形後:外観・柄の消失
・外観(柄) 柄が明瞭であるかを目視で確認する。
◎:柄が非常に明瞭に確認できる
○:柄が明瞭に確認できる
×:柄がはっきりせずぼやけている
・柄の消失 深絞り部分の柄が消失しているかを目視で確認する。
◎:柄の消失が無く意匠性に非常に優れている
○:やや柄の消失があるものの意匠性に優れている
×:柄の消失があり意匠性に優れていない
本願実施例・比較例で使用される繊維を以下にまとめる。
Figure 0007077388000001
実施例1
繊度3.3dtex、繊維長51mmの濃グレー色原着ポリエステル繊維(明度43)80重量%と、繊度4.4dtex、繊維長51mm、融点200℃の白色原着低融点ポリエステル繊維(明度82)20重量%をそれぞれ計量、混綿、カーディング、クロス積層した繊維ウエブを、針本数320本/cm2、針深さ6mmで、ニードルパンチ加工を
施した後、熱処理機で170℃・30秒間加熱して不織布を得た。
織り目柄の模様を凸部としてエンボス率が50%になるように形成されたエンボスロールを用いて、温度200℃、圧力90kg/cmの条件でエンボス加工を施して、表面に織り目柄の模様付けがされた内装用表皮材を得た。基材(ウレタン発泡体)、接着剤(イソシアネート系)、表皮材の順に積層して、自動車用天井となる成形金型を用いて温度150℃、プレス時間30秒の条件で成形した。
実施例2~9、比較例1~4
繊維構成、ニードルパンチ条件、熱処理温度、目付を表に示すとおりに変更する以外は、実施例1と同様にして内装用表皮材を得、その後成形した。なお10%伸長時モジュラスのタテ/ヨコ比率は、ニードルパンチ時のドラフト率を変更することにより調整した。
Figure 0007077388000002
Figure 0007077388000003
実施例1~9では、特定の低融点繊維を使用し、タテ方向及びヨコ方向の10%伸長時モジュラス、並びに10%伸長時モジュラスのタテ方向/ヨコ方向比がそれぞれ所定の範囲内であるため、成形時のシワの発生が抑制され、成形後であってもエンボス柄の消失がない内装用表皮材が得られた。
また実施例1~8と実施例9を比較すると、明度が75以下の濃色繊維が、繊維基材100重量%中68重量%以上含まれている内装用表皮材では、エンボス柄の柄ボケも抑制され、外観が良くなった。
比較例1では、融点が110℃の低融点繊維を使用した為、成形時の加熱によって、エンボス柄が消失してしまい、エンボス柄がぼやけてしまった。
比較例2では、低融点繊維の混綿率を35重量%としたため、内装用表皮材が高モジュラスとなり、成形時にシワが発生した。また、実施例1~8と比較例2の対比により、明度が75以下の濃色繊維が、繊維基材100重量%中68重量%以上含まれていることが、エンボス柄の柄ボケ抑制の点では重要であることがわかる。
比較例3では、低融点繊維の混綿率を5重量%としたため、内装用表皮材が極端に低モジュラスとなった。そのため、エンボス加工による凹凸模様がつきにくく、表面意匠性は不良であった。
比較例4では、10%伸長時モジュラスのタテ方向/ヨコ方向比が2.8となったため、成形時の内装用表皮材の伸び方がタテ方向・ヨコ方向で異なった。そのため歪が生じ、成形シワが発生した。

Claims (7)

  1. 融点が150℃以上220℃以下の低融点繊維を7重量%以上30重量%以下含む繊維基材から構成され、
    前記低融点繊維の平均繊度が1.5~6dtexであり、
    表面にエンボス柄を有し、
    10%伸長時モジュラスのタテ方向/ヨコ方向比が、0.7以上2.0以下であり、
    明度が75以下の濃色繊維が、前記繊維基材100重量%中、50重量%以上含まれていることを特徴とする内装用表皮材。
  2. 前記濃色繊維として、明度が異なる2種以上の繊維が混綿されている請求項1に記載の内装用表皮材。
  3. 明度が55以下の繊維を含む請求項1または2に記載の内装用表皮材。
  4. エンボス率が5%以上60%以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の内装用表皮材。
  5. 前記繊維基材がニードルパンチ跡を有し、
    ニードルパンチ跡が790本/cm2以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の内装用表皮材。
  6. 前記繊維基材に含まれる繊維の平均繊維長が15~152mmである請求項1~5のいずれか1項に記載の内装用表皮材。
  7. 密度が0.05~0.17g/cm 3 である請求項1~6のいずれか1項に記載の内装用表皮材。
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