JP3661818B2 - トノカバー用シート及びその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、不織布の持つ高強力、柔軟で温暖な触感とを維持しながら、軽量、耐摩耗性、耐もみ性に優れたトノカバー用シート及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
トノカバー用シート8は、図4に示す如く、室内とトランクとが一体化されたワゴンタイプの車両のバックシートの後方でトランクに相当する荷物置場の上を被覆するシートであり、トノカバーケース7の中にロール状に巻かれて収納される様になっているものである。
【0003】
そして、現在では前記のトノカバー用シートとして塩ビレザーが用いられている。これは、塩ビレザーが皮革調外観、高強力、耐摩耗性に優れているためと、低コストで製造されるためである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記塩ビレザーは重く、また、内包する可塑剤による臭気によってガラスの曇り等の問題が発生するばかりでなく、燃焼時の塩素ガスの発生によって環境問題に重大な支障が生じてきている。
他方、不織布は、繊維製品の特徴である暖かみのある風合、自然な外観、軽量、成型性の良好なこと、また、低コストであることから、自動車内素材として多く使用されてきた。
かかる不織布の特徴を維持しつつ塩ビレザーの欠点を改良するものとして、出願人は通気性レザー及びその製造法を出願した(特開平7−125066号公報)。
しかしながらトノカバーとしては、引張強さ、裏面の耐摩耗性、耐もみ性が劣り、その機能が満足できないものであった。
本発明は、前記の各問題点を解決したトノカバー用シート及びその製造法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するために次の手段を採用するものである。すなわち、本発明は、繊度0.1〜5dの繊維が三次元的に交絡せしめられ、熱可塑性樹脂が含浸、付着されてなる不織布からなり、該不織布は、圧縮されており、かつ表面層、内層、裏面層からなり、前記表面層、裏面層における該熱可塑性樹脂の含浸、付着量が前記内層のそれより多く、しかも少なくとも該表面層はエンボス模様を有していることを特徴とするトノカバー用シートである。
【0006】
さらに本発明は、繊度0.1〜5dの繊維からなる不織布を製造し、ついで三次元的に交絡し、その後熱可塑性樹脂からなる塗料を前記不織布の一面に固形分付着量が20〜60g/m2 となるように塗布、含浸、乾燥して表面層を形成せしめ、ついで反対面に固形分付着量が20〜60g/m2 となるように前記塗料を塗布、含浸、乾燥して裏面層を形成せしめ、しかる後少なくとも前記表面層に塗料が熔融する温度、圧力でエンボス加工を施すことを特徴とするトノカバー用シートの製造法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のトノカバー用シートにおいて、目付が100〜400g/m2 であること、また、トノカバー用シートは、厚さ0.2〜1.2mm、引張り強さがたて6kg/cm以上、よこ4kg/cm以上、耐もみ性がたて、よこ共に4級以上、表面層の耐摩耗性が4級以上、裏面層の耐摩耗性が3級以上であることも、好ましい実施の形態である。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において、不織布を構成する繊維の太さは、エンボス模様の外観、即ち塗布する樹脂皮膜が均一に表面を被うかどうかに影響する。
5dをこえると、不織布の表面があれて、均一塗布が困難となり、エンボス後の外観が虫喰い状の不均一なものになり好ましくない。
他方、0.1d未満になると不織布の強力が低下してトノカバーとして不適切なものになり、製造コストも高くなり好ましくない。
【0008】
構成繊維の素材としては、トノカバー用途の機能特に高強力、高耐光性、難燃性等を満足するにはポリエステル、変性ポリエステルが好ましい。不織布としては、高強力、低コスト、軽量化のために、スパンボンド不織布のような長繊維不織布が好ましい。
【0009】
前記不織布を三次元的に交絡せしめるには、ニードルパンチ法や水流交絡法が用いられるが、できるだけ均一な表面が得られ、且つ、繊維間の交絡が充分になされていることが必要である。もし、そうでない場合、トノカバーとして使用中に繊維のウェッブ同士が弛み、層間剥離が生じる場合があり好ましくない。
【0010】
三次元的に交絡せしめられた不織布の重量は60〜240g/m2 が好ましい。60g/m2 未満であると所望の引張り強さが得られにくく、不織布の斑が目立ち、ひいては外観品位の上から好ましくない。他方、240g/m2 をこえると重量が大きくなり、コストも高く好ましくない。
【0011】
図1は、本発明のトノカバー用シートの斜視図を示す。図1において1は表面層の表面を示す。そして、この表面1はエンボス模様を有している。
図2は、本発明のトノカバー用シートの断面図で、2は表面層、4は裏面層、3は内層を示し、表面層2、裏面層4は、内層3より樹脂含浸量が多い。これは、表面層2、裏面層4の耐摩耗性を向上させ、耐もみ性、引張り強さを向上させるためである。
【0012】
トノカバー用シートの重量は、100〜400g/m2 が好ましく、100g/m2 未満では充分な引張り強さが得られず、他方400g/m2 をこえると重くなるばかりでコスト高となるので好ましくない。好ましくは150〜300g/m2 である。
【0013】
前記シートの厚さは0.2〜1.2mmのものが好ましい。0.2mm未満の場合には、ペーパーライクになり、品位が劣り好ましくない。他方、1.2mmをこえると厚くなりすぎて巻径が大きくなり、トノカバーシートとして好ましくない。
【0014】
引張り強さは、車両に組み込まれたときの状態により所定以上の強さが求められており、たては6kg/cm以上、よこは4kg/cm以上が好ましい。
さらに好ましくは、たて7kg/cm以上、よこ5kg/cm以上が良い。
トノカバー用シートは、繰り返し出し入れされるので、繊維がバラバラにほつれたり層間剥離したり、毛羽立つことがない様に、耐もみ性は、たて、よこ共に4級以上、表面層の耐摩耗性は4級以上、裏面層の耐摩耗性は3級以上であることが好ましい。
前記シートは、耐もみ性、裏面層の耐摩耗性が著しく向上しており、通気性も5.0cc/cm2 /sec以下と低いものである。
【0015】
ここで、前記シートの製造法について説明する。まず、繊度0.1〜5dの繊維からなる不織布を製造する。
ついで、該不織布に三次元的に交絡処理を与える。三次元的に交絡処理をするには、ニードルパンチ法、水流交絡法を用いるのが好ましい。
【0016】
三次元的に交絡せしめた不織布の重量を好ましくは60〜240g/m2 に調節する。これは、所望の引張り強さを出し、不織布の斑を減少し、またほど良い重量にするためである。
【0017】
三次元的に交絡した不織布の一面に熱可塑性樹脂を主体にした塗料を固形分付着量が20〜60g/m2 になるように塗布、含浸し乾燥させる。
前記熱可塑性樹脂は、アクリル系、スチレン−ブタジエンゴム等の熱可塑性樹脂を主体とする。
また、これらの樹脂に柔軟剤、難燃剤、撥水剤、顔料等を混合しても良い。
前記樹脂の固形分付着量が20g/m2 未満では所定の物性が得られず、60g/m2 をこえるとコスト高になって好ましくない。
【0018】
ついで、裏面層の形成は、基本的には表面層と同様な樹脂処方によって行なわれる。前記不織布の反対面に前記樹脂を固形分付着量が20〜60g/m2 になるように含浸、塗布、乾燥する。
但し、外観、機能的には表面層ほど重要でなく、固形分付着量を少なくすることが可能である。20g/m2 未満であると繰り返し出し入れする結果毛羽立つ場合が多く好ましくない。60g/m2 をこえるとコスト高になり好ましくない。
【0020】
かかる熱可塑性樹脂を含浸させた不織布を図3に示すようなエンボス加工用ロール対で熱圧着する。図3は、皮革様しぼ模様の彫刻を施したスチールロール5と前記皮革様しぼ模様と凹凸とが逆になり対になって完全に嵌合しているペーパーロール6からなるエンボス加工用ロール対の部分拡大断面図を示す。前記ペーパーロール6は、時間をかけてスチールロール5の柄をペーパーに印圧させて造り、両者完全に嵌合される。
かかるエンボスロールにより、圧力はスチールの凸部のみならず全面に均一にかかりやすくなり、不織布の全表面が熱可塑性樹脂により結着し、毛羽を有することがなくなるのである。
【0021】
しかし、凹凸があまり深いとスチールロール5の凸部に圧力がかかりすぎ、逆にペーパーロール凹部(不織布の凸部)への圧力が少なくなり、熱可塑性樹脂による繊維同士の結着が不充分になり、外観の均一性が劣り好ましくない。かかる観点から線圧力は50〜150kg/cmが好ましい。
【0022】
【実施例】
以下に本発明を実施例にもとづいて説明する。本明細書で用いた測定法を以下に示す。
(イ) 引張り強さ(kgf/cm)
JISK−6301に従い、ダンベル型引張試験機(1号形)で測定する。
(ロ) 耐もみ性(級)
JISK−6772に従い、スコット形もみ試験機で1000回行なう。
5級(優)〜1級(不可)の5段階判定で行なう。
(ハ) 耐摩耗性(級)
JISL−1096のC法(テーパ形法)に従って測定する。摩耗輪NO:CS−10、荷重500gfで1000回とする。
5級(優)〜1級(不可)の5段階判定で行なう。
(ニ) 総合評価
◎はトノカバーとして合格しており、さらに高品位であることを、○はトノカバーとして合格していることを、△はトノカバーとして不合格であることを、×はトノカバーとして劣悪な性能を示す。
【0023】
実施例1
単糸デニール1.7dのニードルパンチングして三次元的に交絡してなる135g/m2 のスパンボンド不織布を製造した。
ついで該不織布にアクリル系樹脂を主体にした配合の塗料を固形分付着量が表面層、裏面層に各40g/m2 になるようにグラビアコーターにより乾燥温度120℃に設定して塗布、含浸した。その後温度190℃、圧力104kg/cmで片面に皮革様シボのエンボス加工を施した。
この商品の物性を表1に示した。
【0024】
実施例2
実施例1と同様の方法で樹脂加工したシートを作成し、表面側、裏面側から片面ずつエンボス加工を施し、最後に加工した方を表面層とする商品を製造し、表1に物性を示した。
【0025】
【表1】
【0026】
実施例3、4、比較例1〜3
実施例1、2に対して夫々樹脂固形分付着量を変更したもので、比較例1は特開平7−125066の方法で裏面層には樹脂固形分を付着させないもので、比較例2、3は裏面層の樹脂の固形分付着量を変更した。参考迄にトノカバーに使用されている一般的な塩ビレザー(金巾基布)とトノカバーのスペックを表1に記した。
【0027】
表1から明らかなように実施例1〜4は引張り強さ、耐もみ性、耐摩耗性の物性は、すべてスペックを満足するものであった。とりわけ、実施例2の両面エンボス品は、耐もみ性、耐摩耗性が最も優れていた。塩ビレザーもスペック的には何等問題なかったが、重量が本発明の3倍と重いものであった。
【0028】
【発明の効果】
本発明のトノカバー用シートは、軽量で引張り強さに優れ、耐もみ性がたて、よこともに、また耐摩耗性が表面、裏面ともに著しく優れたものであり、また、製造法は叙上のシートを安定して再現性良く製造しうるものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のトノカバー用シートの斜視図である。
【図2】本発明のトノカバー用シートの断面図である。
【図3】本発明で用いられるエンボスロールの一例の断面図である。
【図4】トノカバー用シートの用いられるワゴン車の一部破断断面図である。
【符号の説明】
1 表面
2 表面層
3 内層
4 裏面層
5 スチールロール
6 ペーパーロール
7 トノカバーケース
8 トノカバー用シート
Claims (1)
- 繊度0.1〜5dの繊維からなる不織布を製造し、ついで三次元的に交絡し、その後、樹脂含浸せずに、熱可塑性樹脂からなる塗料を前記不織布の一面に固形分付着量が20〜60g/m2 となるように塗布、含浸、乾燥して表面層を形成せしめ、ついで反対面に固形分付着量が20〜60g/m2 となるように前記塗料を塗布、含浸、乾燥して裏面層を形成せしめ、しかる後少なくとも前記表面層に塗料が熔融する温度、圧力でエンボス加工を施すことを特徴とするトノカバー用シートの製造法。
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