JP3613712B2 - 通気性レザー及びその製造法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、不織布の持つ嵩高性と柔軟で温暖な触感とを維持しながら、通気性および耐摩耗性に優れた通気性レザー及びその製造法に関するもので、例えば室内の壁、天井材等の内装品、自動車、電車、船舶等の乗物の内装品としての表装材、袋物、カバン等の表皮材として、利用することができる通気性が良好な通気性レザー、及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、車両特に自動車内装材において、塩ビレザーが多く使用されている。その理由として、塩ビレザーの皮革調外観、低価格、耐摩耗性、成型性の良好なことなどがあげられ、大衆乗用車の天井表皮材、ドアトリム、インパネ等において多く使用されている。
【0003】
他方、繊維製品は、暖かみのある風合い、自然な外観が好まれて天井表皮材に用いられている。
また、不織布は通気性が良好であるものの耐久性に難点があり殆ど前記用途では使用されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記塩ビレザーは、風合いに難点があるもののデザイン性に富む外観のものが安価に得られるため、カバン、袋物等において多く使用されているものの、燃焼時の塩素ガス発生など環境問題に重大な支障が生じてきている。また、通気性も低いためにレザー用途には不向きであった。
【0005】
また、繊維製品は、天井表皮材以外の用途においては、前記塩ビレザーの価格性能に及ぼず、織物などが一部ドアトリムのオーナメント部に用いられているのみである。
さらに、不織布は、模様の変化に乏しく永年の使用により毛羽立ちが生じ、外観を著しく害する欠点があったので、前記天井表皮材以外の用途では殆ど使用されていない。
【0006】
そのために、熱可塑性樹脂を表面または内部まで含浸させた後、図4で示されるように一般の彫刻を施したロール5とフラットロール6とからなる熱エンボスで圧着した不織布も考えられているが、皮革調外観が得られないばかりか、耐摩耗性に乏しいものであった。
【0007】
本発明は、かかる従来の課題を解決して柔軟で温暖な感触と通気性を維持しつつ耐摩耗性に優れた通気性レザー及びその製造法を提供することを課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するために、次の手段をとるものである。すなわち、本発明は、繊度が0.01〜10dの繊維が三次元的に交絡せしめられてなる不織布からなり、該不織布の片面より10〜70%の深さまで該不織布の重量に対して10〜50重量%の熱可塑性樹脂が含浸して繊維同士が結着し、且つ該不織布は圧縮されており、該片面の表層部は皮革長の細かい連続模様を有し、さらに通気度が1.0cc/cm2/sec〜30cc/cm2/secの範囲にあることを特徴とする通気性レザーである。
【0009】
また、本発明は0.01〜10dの繊維からなる不織布を製造し、ついで三次元的に交絡させ、熱可塑性樹脂を溶液粘度6000〜10000cpsの溶液にして前記不織布の片面に塗布含浸して固着分として不織布に10〜50重量%付与し、ついで熱圧着して皮革調の模様を与えることを特徴とする通気性レザーの製造方法である。
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明において、不織布を構成する繊維の太さは、通気性レザーの通気度に大きく影響するもので、10dをこえると通気度が大きくなりすぎて好ましくない。他方、0.01d未満になると逆に通気度が小さくなりすぎて好ましくない。なお、通気度はJIS L1096A法のフラジール法によって測定した値である。適正な通気度を得るのに、好ましくは0.01〜5d、さらに好ましくは0.01〜3dが好ましい。
【0011】
繊維の長さとしては、フイラメントでもステープルでも良く、ステープルの場合には10mm以上、好ましくは30〜50mmの範囲である。
【0012】
また、素材としてはレーヨン、アセテートのようなセルロース系繊維、ポリエステル、ポリアミドなどの合成繊維等があげられる。
【0013】
前記不織布は、いわゆるスパンボンド不織布でも、メルトブロー不織布でも、短繊維からなるウエブでも良く、三次元的に交絡せしめるには、ニードルパンチ法、流体例えば液流交絡法によればよい。
【0014】
つぎに、熱可塑性樹脂は、不織布の片面より深さ10〜70%、好ましくは25〜60%まで含浸して繊維同士が結着される。
含浸層が10%未満であると、構成繊維同士の結着が少ないため耐摩耗性低下の原因となり、他方70%をこえると不織布の持つソフト感の低下を生じプラスチック感となって好ましくなく、場合により所望の通気度が得られない。
【0015】
また、不織布に含浸する熱可塑性樹脂としては、好ましくはポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタン等のゴム系樹脂等があげられる。
また、これらの樹脂に可塑剤、柔軟剤等、または難燃剤、撥水剤、顔料等を混合しても差し支えない。なお、熱可塑性樹脂とのブレンドを行なっても差し支えない。
【0016】
前記熱可塑性樹脂は、不織布全重量の5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。ここで、前記熱可塑性樹脂の量が5重量%未満になると、構成繊維同士の接着ができないので、表層部の表面に毛羽が存在し、耐摩耗性低下の原因となり好ましくない。他方、50重量%をこえると、不織布の持つソフト感の低下を生じ、プラスチック感となるとともに通気度が著しく低下し好ましくない。
【0017】
また、本発明の通気性レザーは、厚さが0.5mm〜5.0mmであるのが好ましい。0.5mm未満になると樹脂層の形成が困難となり、また、樹脂量が極めて少なくなるため表面毛羽を有するようになるので好ましくない。他方、5.0mmをこえるとコストアップするばかりでなく、エンボス加工時の加工性が劣るため好ましくない。なお、厚さは、デジタルシックネスゲージにより全幅に対して20cm間隔で測定する。但し、プレッサーフートの大きさは、直径9mm以上、荷重は100g/cm2とし、厚さが落着くまでの適当な時間(普通で10秒程度)放置する。
【0018】
また、目付は、50g/m2 〜400g/m2 が好ましい。目付が50g/m2 未満になると通気性レザーの引張強力の低下につながり、自動車等の内装材、袋物、カバン等の生活資材に使用できないので好ましくない。他方、400g/m2 をこえるとコストアップにつながり、エンボス加工時の加工性が劣るため好ましくない。なお、目付(g/m2 )は、試料の大きさ1m×1mとし、1m幅当り1個取り、水分平衡に至らせた後質量を測定したものである。
【0019】
また、本発明の通気性レザーの片面の表層部1は、図1の断面図、図2の斜視図に示すように、その表面に皮革調の細かい連続模様を有し、熱可塑性樹脂を含浸している。
【0020】
さらに、通気度は、1.0cc/cm2 /sec〜30cc/cm2 /secの範囲とする。通気度が1.0cc/cm2 /sec未満であると、通気性が低く通気性レザーとして不向きであり、30cc/cm2 /secをこえると通気性がありすぎ温暖な感触が失われるので好ましくない。また、耐摩耗性低下のもとになるので好ましくない。
【0021】
ここで、通気性レザーの製造法について説明する。まず、繊度0.01〜10dの繊維からなる不織布を製造し、ニードルパンチまたはウォータパンチにより前記不織布を三次元交絡する。
ついで、熱可塑性樹脂を溶かし溶液粘度5000〜10000cpa、好ましくは6000〜9000cpsの溶液にして前記不織布の片面に塗布する。塗布は好ましくは2回以上とする。溶液粘度が5000cps未満になると含浸性が向上するため裏面にまで熱可塑性樹脂が含浸し、風合が硬くなり好ましくない。他方、溶液粘度が10000cpsをこえると、塗布ムラが生じやすくなるとともに含浸せず表面コート状になり通気度が著しく低下し好ましくない。
【0022】
また、塗布の回数は、1回以上好ましくは3回以上とする。塗布回数が少ないときには塗布面の表面が不均一になりやすく外観不良につながりやすく好ましくない。
【0023】
塗布含浸して固着分として該不織布に対して5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%を固着させる。5重量%未満になると、構成繊維同士の接着ができないので、表層部の表面に毛羽が存在し耐摩耗性低下の原因となり、他方、50重量%をこえると、不織布の持つソフト感の低下を生じ、プラスチック感となると同時に通気度が著しく低下し好ましくない。
【0024】
さらに、図3に示すようなエンボス加工用ロール対で、前記熱可塑性樹脂を含浸させた不織布を熱圧着する。図3は、皮革調模様の彫刻を施したスチールロール3と前記皮革調模様と凹凸とが逆になり対になって完全に嵌合しているペーパーロール4とからなるエンボス加工用ロール対の部分拡大断面図を示す。前記ペーパーロール4は、時間を掛けてスチールロール3の柄をペーパーに圧印させて造り両者完全に嵌合されている。かかるエンボスロールにより、圧力はスチールの凸部のみならず全面に均一にかかりやすくなり、不織布の全表面が熱可塑性樹脂により結着し、毛羽を有することがなくなるのである。しかし前記の如く凹凸があまり深いとスチールロール3の凸部(図3)に圧力がかかりすぎ、逆に該ペーパーロール凹部(不織布の凸部)への圧力が少なくなり熱可塑性樹脂による繊維同士の結着が不充分になり、外観の均一性が劣り好ましくない。かかる観点から線圧力は50Kg/cm〜150Kg/cmが好ましい。
【0025】
なお、エンボスロールの温度は高い方が良いが、好ましくは熱可塑性樹脂の軟化点以上が好ましい。また、更に耐摩耗性向上のため、低融点ファイバーを10重量%までなら混入することも可能である。10重量%をこえると、色合わせの困難さ、成型性の低下及び低融点繊維の融着によりペーパーライク化し、光沢が出て皮革調外観の均一性が劣ってくるのい好ましくない。
【0026】
【実施例】
実施例1
3d×51mmカットのレギュラーポリエステルステープルを用いて160g/m2 のウエッブを作成し、ついでニードルパンチで三次元交絡させて150g/m2 の不織布にした。ついでポリ酢酸ビニル系樹脂の溶液を粘度8500cpsに調整し、前記不織布に固形分付着量が50g/m2 になるようにグラビアコーターにより3回塗布含浸させ、乾燥後ペーパーロールと対になっている皮革調の柄を有する熱エンボスローラ(180℃)で圧力90Kg/cmで圧着して通気性レザーを製造した。この商品の物性を表1に示した。
【0027】
【表1】
【0028】
この商品の物性は、通気性もあり外観、風合い、耐摩耗性など総合的に優れていた。
【0029】
実施例2
繊度1dから4dまでの太さ、カット長20mmから80mmまでの長さの短繊維からなるポリエステル繊維を用い、目付115g/m2 の短繊維ウエッブを作成し、さらに繊度2dのポリエステルフィラメントからなる目付65g/m2 のスパンボンドウエッブを作成した。ついで、前記短繊維ウエッブと前記スパンボンドウエッブを重ね合わせてニードルパンチングを行なって三次元交絡させて目付150g/m2 の複合不織布を作成した。その後、実施例1と同じ樹脂の溶液を用いて前記スパンボンド側に3回塗布し、乾燥後実施例1と同じ熱エンボスローラを用いて型押しして通気性レザーを製造した。その商品の物性を表1に示した。実施例1に比して引張強力は高いが伸度がやや低く、通気性が大きかった。通気性が高いのは、スパンボンド基布の通気性に起因している。即ち短繊維ウエッブはスパンボンドに比較して、繊維の交絡が疎であるため樹脂含浸が大きいためである。なお、外観、風合は実施例1に比べて若干低かった。
【0030】
実施例3
実施例1と同様な方法でウエッブを作成し、ついでデザイン性向上のためと色出しを目的とした緑色の反染を実施し、染色不織布を得た。その後、実施例1と同じ条件で樹脂を塗布し、エンボス型押しを行って通気性レザーを製造した。この商品の物性は、表1に示した。実施例1に比して通気性、風合い、外観、物性に殆ど差がないが微妙な色の通気性レザーが得られた。
【0031】
実施例4
実施例1と同様な方法で同様のウエッブを作成し、同様に樹脂を塗布、ついでデザイン性向上のため熱転写プリントを施した。ついでこの熱転写プリントに実施例1と同じ条件でエンボス型型押しを行って通気性レザーを製造した。この商品の物性を表1に示した。
実施例1に比して通気性、風合い、外観、物性に差がない商品となったが、デザイン性に富んだ通気性レザーが得られた。
【0032】
実施例5
2dのレギュラーポリエステルフィラメントからなるスパンボンド不織布(目付140g/m2 )を作成し、ついでニードルパンチングをして三次元に交絡して130g/m2 のスパンボンド不織布を製造した。その後、実施例4と同じ方法で同じように同様の樹脂を塗布した後熱転写プリントおよびエンボス型押しを行って通気性レザーを製造した。この物性を表1に示したが、実施例4に比して特に通気性が大きかった。これは、前記と同様スパンボンドの繊維交絡が疎であるために樹脂含浸が大きいためである。
【0033】
比較例1
実施例1と同様な方法でウエッブを作成し、その後ポリ酢酸ビニール系樹脂の粘度を実施例よりも低い粘度3000cpsに調整し、ついで実施例1と同じ条件で塗布含浸、乾燥後エンボス型押しを行って通気性レザーを製造した。その物性を表1に示した。
実施例1に比して風合が硬くプラスチック感が強く、また、シボ入りが浅く皮革調外観とはならなく、耐摩耗性も低かった。
【0034】
比較例2
実施例1と同様な方法でウエッブを作成し、ついでポリ酢酸ビニール系樹脂の溶液の粘度を実施例1よりも高い粘度11000cpsに調整し、実施例1と同じ条件で塗布含浸、乾燥、エンボス型押しを行って通気性レザーを製造した。その物性を表1に示した。
実施例1に比して外観の不均一が著しく、また、通気性が極めて少なく、通気性が極めて少なく、通気性レザーと呼ばれる商品とはならなかった。
【0035】
従来例1
一般の塩ビレザーの物性を表1に示す。これは、風合いがプラスチックライクで非常に悪く、かつ、燃焼時の塩素ガス等の発生があり好ましいものではなかった。
【0036】
なお、表中の特性は、次の要領で判定した。
▲1▼ 耐摩耗性:JIS L−1096に準じテーバー試験機により摩耗輪(NO.CS−10)を用い、荷重500g、1000回の級別判定によった。
▲2▼ 外観:皮革調外観の程度を目視で比較判定した。
5級:皮革調の柄良好で均一性良く且つ表面に毛羽がない。
4級:皮革調の柄良好で均一性がやや良く且つ表面に毛羽がない。
3級:皮革調の柄の均一性が劣る又は表面に毛羽が認められる。
2級:皮革調の柄が崩れ易くシボが浅い又は毛羽立ちがある。
1級:皮革調の柄が不明瞭又は毛羽立ちが多い。
▲3▼ 風合い:触感でソフト性を次のごとく比較判定した。
5級:最もソフト
4級:ソフト
3級:硬い
2級:硬くゴワゴワしている
1級:ブラスチックライクである
但し、皮革調不織布の要求特性から判断すると、外観、耐摩耗性ほど重要な要因ではなく、3級程度でも合格といえる。
▲4▼ 総合評価:前記3項目で若干重み付けして比較評価した。
A:最も良い(合格)
B:良い (合格)
C:普通 (合格)
D:悪い (不合格)
E:最も悪い(不合格)
【0037】
【発明の効果】
本発明の通気性レザーは、不織布からなるものでありながら、耐摩耗性、外観、風合いに優れ、しかも通気性のあるものであった。また、本発明方法は、叙上の通気性レザーを確実に安定して製造できる効果を奏する。さらに、電気植毛法などにより、本発明の通気性レザーの表層部にカットパイルを植毛することにより多用途の展開が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の通気性レザーの断面図である。
【図2】本発明の通気性レザーの斜視図である。
【図3】本発明において用いられる一対のエンボスロールの一部断面図である。
【図4】従来のエンボス加工用の一対のロールの一部断面図である。
【符号の説明】
1 表層部
2 樹脂含浸繊維層
2′繊維層
3 皮革調スチールロール
4 皮革調ペーパーロール
5 従来のエンボスロール
6 フラットロール
Claims (1)
- 繊度0.01〜10dの繊維からなる不織布を製造し、ついで三次元的に交絡させ、6000〜10000cpsの溶液にした熱可塑性樹脂を2回以上塗布含浸して前記不織布の片面から10〜70%の深さの範囲に固着分として10〜50重量%該不織布に付与し、ついで熱圧着して皮革調の模様を与えることを特徴とする通気性レザーの製造方法。
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JP27859193A JP3613712B2 (ja) | 1993-11-08 | 1993-11-08 | 通気性レザー及びその製造法 |
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