本発明の着色繊維シートは高級感に優れているように、顔料、シリコーン、及び樹脂が架橋剤で架橋した架橋樹脂を含む着色樹脂単位を、繊維シートに有する濃色の着色繊維シートである。
本発明の着色繊維シートにおける顔料は着色繊維シートが濃色であるように含んでいる。そのため、顔料は単独で、又は2種類以上の組み合わせによって濃色であれば良く、特に限定するものではないが、例えば、有機顔料、無機顔料、カーボンブラックであることができ、特に、カーボンブラックは着色繊維シートを濃色にすることができるため好適である。
より具体的には、有機顔料として、アルカリブルー、リゾールレッド、カーミン6B、ジスアゾエロー、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド、イソインドリノンエロー、フタロシアニングリーンなどを挙げることができ、無機顔料として、赤土、黄土、緑土、孔雀石、胡粉、黒鉛、銅などの天然鉱物顔料、紺青、亜鉛華、コバルト青、エメラルド緑、ビリジャンなどの合成無機顔料を挙げることができる。これらの中でも、銅は濃色を際立たせることができるため好適である。また、カーボンブラックとしては、例えば、ランプブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックを挙げることができる。
このような顔料の量が、本発明においては、0.35〜0.80g/m2である。このように、0.80g/m2以下と少量であっても、後述のシリコーンによって着色樹脂単位の表面が平滑になり、光の反射が少なくなるため、明度が低く、濃く見えるため、濃色の着色繊維シートであることができる。一方で、顔料の量が0.35g/m2未満であると、シリコーンを含んでいたとしても充分に濃色の着色繊維シートであることが困難であるため、顔料の量は0.35g/m2以上である。好ましい顔料の量は0.40〜0.80g/m2であり、より好ましい顔料の量は0.50〜0.80g/m2であり、更に好ましい顔料の量は0.60〜0.80g/m2であり、更に好ましい顔料の量は0.70〜0.80g/m2である。
本発明の着色繊維シートの着色樹脂単位は、このような顔料に加えて、シリコーンを含んでいる。このシリコーンが存在することによって、着色樹脂単位の表面が平滑になり、光の反射が少なくなることによって、明度が低く、濃く見える効果が発揮されるため、前述のような少量の顔料であっても、充分に濃色である着色繊維シートである。なお、シリコーンを含んでいることによって、外力との摩擦抵抗が低いため、耐摩耗性に優れており、また、成形する場合には、成型加工性が向上する、という効果も奏する。
このシリコーンは主鎖にシロキサン結合(Si−O−Si結合)による骨格を有する高分子化合物であり、側鎖に有機基が導入されていても良い。例えば、メチル基またはフェニル基のみを有する、ジメチルシリコーンなどのストレートシリコーンであっても、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、フルオロアルキル基、ポリエーテル基、ポリエーテル基、エポキシ基、アラルキル基などで変性した変性シリコーンであっても良い。なお、シリコーン自身が自己架橋するシリコーン樹脂、アクリル等とシリコーンとが共重合したシリコーン共重合樹脂であっても良い。
このようなシリコーンの固形分比率が後述の樹脂の9.6mass%以上であれば、シリコーンによって着色樹脂単位の表面が平滑になり、濃く見える効果を充分に発揮することができる。一方で、シリコーンの固形分比率が後述の樹脂の19.2mass%を超えると、樹脂による顔料の固定を阻害し、外力によって、顔料が脱落し、色が落ちやすくなる傾向があるため、シリコーンの固形分比率は後述の樹脂の9.6〜19.2mass%である。好ましいシリコーンの固形分比率は樹脂の9.6〜18.0mass%であり、より好ましいシリコーンの固形分比率は樹脂の9.7〜15.0mass%であり、更に好ましいシリコーンの固形分比率は樹脂の9.7〜13.0mass%である。
本発明の着色繊維シートの着色樹脂単位は上述のような顔料、シリコーンに加えて、樹脂が架橋剤で架橋した架橋樹脂を含み、架橋樹脂によって顔料、シリコーンが繊維シートに固定されているが、架橋剤の固形分比率が樹脂の2.0〜10.4mass%であることによって、樹脂の量が5.0〜10.0g/m2と少なくても色落ちが生じにくく、風合いも優れる着色繊維シートである。
この樹脂は顔料、シリコーンを繊維シートに固定できるものであれば良く、特に限定するものではないが、例えば、エチレン−塩化ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂を挙げることができる。また、樹脂は1種類である必要はなく、2種類以上含んでいても良い。これらの中でも、アクリル酸エステル系樹脂は耐光性に優れているため、含んでいるのが好ましい。なお、本発明における樹脂はシリコーンを除いた樹脂を意味する。
前述の通り、樹脂は顔料、シリコーンを繊維シートに固定できるように、5.0〜10.0g/m2含んでいる。5.0g/m2未満であると、顔料、シリコーンの固定が不充分で、外力によって、顔料が脱落し、色落ちしやすい傾向がある。一方で、10.0g/m2を超えると、着色繊維シートの風合いが硬く、悪くなる傾向があるためである。好ましい樹脂量は、6.0〜10.0g/m2であり、より好ましい樹脂量は7.0〜9.0g/m2であり、更に好ましい樹脂量は8.0〜9.0g/m2である。
本発明の着色繊維シートの着色樹脂単位はこのような樹脂を架橋剤で架橋した架橋樹脂とし、樹脂量を前述のように5.0〜10.0g/m2と少なくしているため、風合いの優れる着色繊維シートである。
この架橋剤は樹脂を架橋できるものであれば良く、特に限定するものではないが、反応性が高い、オキサゾリン基含有ポリマーを含んでいるのが好ましい。より具体的には、オキサゾリン基含有ポリマーとしては、主鎖がアクリル骨格のポリマー、主鎖がスチレン/アクリル骨格のポリマー、主鎖がスチレン骨格のポリマー、又は主鎖がアクリロニトリル/スチレン骨格のポリマーを例示することができる。このようなオキサゾリン基含有ポリマーは、例えば、「エポクロス(登録商標)WS−300」、「エポクロス(登録商標)WS−500」、「エポクロス(登録商標)WS−700」等の「エポクロス(登録商標)WSシリーズ」(以上、株式会社日本触媒製、水溶性タイプ、主鎖アクリル);「エポクロス(登録商標)K−2010E」、「エポクロス(登録商標)K−2020E」等の「エポクロス(登録商標)Kシリーズ」(株式会社日本触媒製、エマルジョンタイプ、主鎖スチレン/アクリル)として市販されている。
このような架橋剤の固形分比率が樹脂の2.0mass%未満であると、架橋樹脂による顔料、シリコーンの固定が不充分で、外力によって、顔料が脱落し、色落ちしやすい傾向がある。一方で、架橋剤の固形分比率が樹脂の10.4mass%を超えても、摩擦による色落ち防止効果が向上しないため、架橋剤の固形分比率は樹脂の2.0〜10.4mass%であり、3.0〜10.4mass%であるのが好ましく、4.0〜10.4mass%であるのがより好ましく、5.0〜10.4mass%であるのが更に好ましい。
なお、架橋樹脂は、例えば、熱処理、マイクロ波照射、紫外線照射、プラズマ照射、近赤外線照射、遠赤外線照射、電子線(放射線等)照射等を利用することによって、樹脂を架橋剤で架橋して形成できる。
本発明の着色繊維シートにおける着色樹脂単位は上述のように、顔料、シリコーン、及び樹脂が架橋剤で架橋した架橋樹脂を含むものであるが、色が落ちにくく、風合いに優れているように、樹脂、シリコーン、及び架橋剤の固形分比率が、9.6〜50.0:1.2〜4.8:1であるのが好ましい。架橋剤の量1に対して、9.6よりも樹脂が少ないと、顔料を充分に固定することができず、色が落ちやすい傾向があり、50.0よりも樹脂が多いと、風合いが硬くなる傾向があるためである。また、架橋剤1に対して、1.2よりもシリコーンが少ないと、濃く見える効果を充分に発揮することができず、4.8よりもシリコーンが多いと、樹脂による顔料の固定を阻害し、外力によって、顔料が脱落し、色が落ちやすくなる傾向があるためである。より好ましくは、樹脂、シリコーン、及び架橋剤の固形分比率が、11.0〜50.0:1.2〜4.8:1であり、更に好ましくは、12.0〜50.0:1.2〜4.8:1である。
本発明の着色繊維シートにおける着色樹脂単位は上述のような顔料、シリコーン、及び樹脂が架橋剤で架橋した架橋樹脂を含むものであるが、着色繊維シートの色落ちしにくく、風合いが優れているという性能を損なわない範囲内で、機能性材料を含んでいることもできる。例えば、難燃剤、導電剤、吸着剤、撥水剤、粘着剤、消臭剤、抗アレルゲン剤、防ダニ剤、抗菌剤などを含んでいることができる。
本発明の着色繊維シートは上述のような着色樹脂単位を繊維シートに有するものであるが、着色繊維シートが濃色で、高級感に優れているように、繊維シート自体が着色しているのが好ましく、明度が60以下(より好ましくは58以下、更に好ましくは56以下)の着色した繊維シートであるのが特に好ましい。このように着色した繊維シートは、例えば、顔料を含む原着繊維を含んでいることによって、着色していることができるし、染色した繊維を含んでいることによって、着色していることができるし、繊維シートを染色することによって、着色していることができる。好ましくは、繊維シートは原着繊維100%からなる。
なお、本発明における「明度」はCIE1976L*a*b*表色系で表される明度であり、具体的には、積分球分光光度計(エックスライト(株)製、Color i5)を用い、反射測定径25mmの測定範囲で測定して算出することができる。
本発明の着色繊維シートのベースとなる繊維シートは着色樹脂単位を有することができる限り、特に限定するものではないが、例えば、不織布、織物、編物であることができる。これらの中でも不織布は比較的平滑な表面を有し、また、成形性にも優れているため、特に好適である。
なお、繊維シートを構成する繊維は特に限定するものではないが、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、塩化ビニル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維などを挙げることができる。これらの中でもポリエステル繊維は耐熱性、耐候性、防汚性等に優れているため好適である。なお、融点が異なる2成分以上の樹脂からなり、繊維断面がサイドバイサイド型、芯鞘型、偏心型などの複合繊維を含むこともできる。
なお、繊維シートを構成する繊維の繊度は特に限定するものではないが、1〜8dtexであるのが好ましく、1.5〜6dtexであるのがより好ましい。また、繊維の繊維長も特に限定するものではないが、30〜110mmであるのが好ましく、50〜80mmであるのがより好ましい。
本発明の繊維シートは、繊維組成の種類又は数、繊度、繊維長などの点で相違する2種類以上の繊維を含むことができる。また、原着繊維と非原着繊維とを含むこともできる。更には、顔料又は染料の色、種類、又は量の点で異なる原着繊維を2種類以上含むこともできる。
繊維シートが好適である不織布である場合、例えば、ニードルパンチ不織布、繊維融着不織布、水流絡合不織布、バインダ接着不織布であることができる。なお、ニードルパンチ、繊維融着、水流絡合、及び/又はバインダ接着を適宜組み合わせて結合した不織布であることもできる。例えば、繊維ウエブをニードルパンチした後に、バインダを含浸、コーティング、又はスプレーし、バインダ接着した不織布であることもできる。これらの中でも、バインダで接着した不織布は不織布表面が平滑で、着色樹脂単位の載りが良いため好適である。なお、バインダが着色樹脂単位であるバインダ接着不織布であることもできる。
本発明の繊維シートの目付は特に限定するものではないが、繊維が均一に分散しており、高級感を損なわないように、150〜220g/m2であるのが好ましく、160〜210g/m2であるのがより好ましく、160〜200g/m2であるのが更に好ましい。本発明における「目付」は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」に規定される6.2[単位面積当たりの質量(ISO法)]によって測定される値を意味する。
また、本発明の繊維シートの厚さは特に限定するものではないが、1.2〜3.0mmであるのが好ましく、1.3〜2.5mmであるのがより好ましく、1.3〜2.0mmであるのが更に好ましい。本発明における「厚さ」は、(株)ミツトヨ製ライトマチック(登録商標)厚み測定器を用い、圧接子5cm2、圧接荷重2.0kPaで測定した値を意味する。
本発明の着色繊維シートは着色樹脂単位を繊維シートに有するものであるが、着色繊維シートの明度は、濃色で、高級感に優れているように、30.0以下であるのが好ましく、28.0以下であるのがより好ましく、27.0以下であるのが更に好ましく、26.0以下であるのが更に好ましい。
なお、本発明の着色繊維シートは着色樹脂単位を繊維シートに、どのように有していても良い。例えば、繊維シート表面の全面に有することができるし、部分的に有することもできる。後者のように、部分的に有する場合、模様を有することができ、この場合、意匠性に優れている。前記模様は特に限定するものではないが、例えば、特開2012−179985号公報に開示されているように、色差が徐々に変化する模様、実用新案登録第3072493号に開示されているような、立体的な模様を挙げることができる。なお、着色樹脂単位は繊維シートの表面だけではなく、繊維シートの内部にも有することができる。
なお、着色樹脂単位量は特に限定するものではないが、着色繊維シートの風合いを損ねないように、7.0〜20.0g/m2であるのが好ましく、7.0〜18.0g/m2であるのがより好ましく、7.0〜16.0g/m2であるのが更に好ましい。
本発明の着色繊維シートは着色樹脂単位を繊維シートに有するものであるが、着色樹脂単位は1種類である必要はない。むしろ、2種類以上の着色樹脂単位を有することによって、より濃色で、高級感に優れる着色繊維シートであることができる。なお、着色樹脂単位を2種類以上有する場合、顔料、シリコーン、及び架橋樹脂を含む着色樹脂単位の境界を明確に認識できる状態にある。例えば、電子顕微鏡写真により、着色樹脂単位の境界を明確に認識できる状態にある。なお、ある着色樹脂単位と別の着色樹脂単位とは、顔料、シリコーン、及び架橋樹脂が同じで、同じ比率で含む、全く同じ着色樹脂単位である場合もある。例えば、顔料、シリコーン、樹脂、及び架橋剤を含む着色液を繊維シートに対して塗布した後、熱を作用させることにより、乾燥と同時に架橋剤を架橋させることにより、第1着色樹脂単位を形成した後、全く同じ着色液を繊維シートに対して塗布した後、熱を作用させることにより、乾燥と同時に架橋剤を架橋させて、第2着色樹脂単位を形成した場合、顔料、シリコーン、及び架橋樹脂が同じで、同じ比率で含む、全く同じ、第1着色樹脂単位と第2着色樹脂単位の2種類の着色樹脂単位を有する着色繊維シートである。なお、顔料、シリコーン、樹脂、及び架橋剤を含む着色液を繊維シートに対して塗布した後、熱を作用させることなく、同じ着色液を繊維シートに対して塗布した後、熱を作用させることにより、乾燥と同時に架橋剤を架橋させて、着色樹脂単位を形成した場合、1種類の着色樹脂単位を有する着色繊維シートである。
このように、顔料、シリコーン、及び樹脂が架橋剤で架橋した架橋樹脂を含む着色樹脂単位を2種類以上、繊維シートに有する着色繊維シートである場合も、前述のように、各着色樹脂単位において、顔料の量が0.35〜0.80g/m2(好ましくは0.40〜0.80g/m2であり、より好ましくは0.50〜0.80g/m2であり、更に好ましくは0.60〜0.80g/m2であり、更に好ましくは0.70〜0.80g/m2)、シリコーンの固形分比率が樹脂の9.6〜19.2mass%(好ましくは9.6〜18.0mass%、より好ましくは9.8〜15.0mass%、更に好ましくは9.8〜13.0mass%)、樹脂の量が5.0〜10.0g/m2(好ましくは6.0〜10.0g/m2、より好ましくは7.0〜9.0g/m2、更に好ましくは8.0〜9.0g/m2)、かつ架橋剤の固形分比率が樹脂の2.0〜10.4mass%(好ましくは3.0〜10.4mass%、より好ましくは4.0〜10.4mass%、更に好ましくは5.0〜10.4mass%)である。各着色樹脂単位のそれぞれが色落ちしにくく、着色繊維シートの風合いを損なわない必要があるためである。
また、特に色落ちしにくく、風合いも優れる着色繊維シートであるように、各着色樹脂単位における、樹脂、シリコーン、及び架橋剤の固形分比率が、9.6〜50.0:1.2〜4.8:1(好ましくは11.0〜50.0:1.2〜4.8:1、より好ましくは12.0〜50.0:1.2〜4.8:1)であるのが好ましい。
なお、前記関係を満たす限り、ある着色樹脂単位における顔料、シリコーン、樹脂、及び架橋剤の種類又は量は、他の着色樹脂単位における顔料、シリコーン、樹脂、及び架橋剤の種類又は量と、同じであっても、異なっていても良い。
更に、各着色樹脂単位は、着色繊維シートが色落ちしにくく、風合いが優れているという性能を損なわない範囲内で、前述と同様の機能性材料を含んでいることもできる。
このように、2種類以上の着色樹脂単位を有する場合、着色繊維シートの明度は、更に濃色で、更に高級感が優れているように、24.0以下であるのが好ましく、23.0以下であるのがより好ましい。
なお、2種類以上の着色樹脂単位を有する場合、ある着色樹脂単位と別の着色樹脂単位は、繊維シートに、どのように有していても良いが、濃色で高級感が優れているように、繊維シート表面全面に着色樹脂単位を有するのが好ましい。そのため、少なくとも1つの着色樹脂単位を繊維シート表面の全面に有し、別の着色樹脂単位を繊維シート表面の全面に、又は部分的に有するのが好ましい。部分的に有する場合、模様を有することができる。なお、いずれかの着色樹脂単位を繊維シートの内部に有することができる。
また、2種類以上の着色樹脂単位を有する場合、総着色樹脂単位量は特に限定するものではないが、着色繊維シートの風合いを損ねないように、7.0〜25.0g/m2であるのが好ましく、8.0〜23.0g/m2であるのがより好ましく、9.0〜21.0g/m2であるのが更に好ましい。
本発明の着色繊維シートは摩擦によっても色落ちしにくく、風合いも優れているため、手で触るなど、外力の作用する可能性のある箇所であっても、問題なく、使用することができる。例えば、天井、ドアサイド、ピラーガーニッシュ、リヤパッケージなどの自動車用内装材、パーティション、壁装材などの用途に、好適に使用することができる。特に、本発明の着色繊維シートは濃色であり、高級感、ファッション性に優れているため、自動車用内装材の用途に好適に使用できる。
次に、本発明の着色繊維シートの製造方法について、簡単に説明する。
まず、繊維シートを準備する。繊維シートは常法により、又は購入することによって準備できる。
好適である不織布は、例えば、繊維ウエブを、カード法、エアレイ法などの乾式法、湿式法、スパンボンド法により形成する。次いで、繊維ウエブ構成繊維同士を結合して、不織布を形成できる。繊維ウエブ構成繊維としては、前述の通り、原着繊維を含んでいるのが好ましく、原着繊維100%からなるのが好ましい。なお、原着繊維はポリエステル樹脂から構成されているのが好ましく、繊維ウエブ構成繊維の繊度、繊維長は、順に、1〜8dtex(1.5〜6dtexであるのがより好ましい)であるのが好ましく、30〜110mm(50〜80mmであるのが好ましい)であるのが好ましい。
構成繊維同士の結合方法としては、例えば、ニードルパンチ、水流絡合などの絡合方法、液状バインダによる接着方法、繊維ウエブ構成繊維の融着方法、或いはこれらの結合方法を併用する方法を挙げることができる。特に、液状バインダで接着した不織布は不織布表面が平滑で、着色樹脂単位の載りが良いため、好適な結合方法であり、この液状バインダとして、顔料、シリコーン、樹脂、及び架橋剤を含むものを使用し、この液状バインダで1つの着色樹脂単位を形成するのが好ましい。
この顔料としては、前述の通り、カーボンブラックを含んでいるのが好ましい。また、樹脂としては、前述の通り、アクリル酸エステル系樹脂を含んでいるのが好ましい。
なお、色落ちしにくく、風合いも優れる着色繊維シートを製造できるように、顔料の量が0.35〜0.80g/m2(好ましくは0.40〜0.80g/m2であり、より好ましくは0.50〜0.80g/m2であり、更に好ましくは0.60〜0.80g/m2であり、更に好ましくは0.70〜0.80g/m2)であり、シリコーンの固形分比率がシリコーンの固形分比率が樹脂の9.6〜19.2mass%(好ましくは9.6〜18.0mass%、より好ましくは9.8〜15.0mass%、更に好ましくは9.8〜13.0mass%)であり、樹脂の量が5.0〜10.0g/m2(好ましくは6.0〜10.0g/m2、より好ましくは7.0〜9.0g/m2、更に好ましくは8.0〜9.0g/m2)であり、かつ架橋剤の固形分比率が樹脂の2.0〜10.4mass%(好ましくは3.0〜10.4mass%、より好ましくは4.0〜10.4mass%、更に好ましくは5.0〜10.4mass%)となるように、液状バインダを調製する。
特に、色が落ちにくく、風合いの優れる着色繊維シートを製造できるように、樹脂、シリコーン、及び架橋剤の固形分比率が、9.6〜50.0:1.2〜4.8:1(好ましくは11.0〜50.0:1.2〜4.8:1、より好ましくは12.0〜50.0:1.2〜4.8:1)となるように、液状バインダを調製する。なお、液状バインダは機能性材料(例えば、難燃剤、導電剤、吸着剤、撥水剤、粘着剤、消臭剤、抗アレルゲン剤、防ダニ剤、抗菌剤など)を含むこともできる。
液状バインダの付与方法は特に限定するものではないが、例えば、液状バインダを含浸、泡立て含浸、コーティング、又はスプレーする方法を挙げることができる。これらの中でも、泡立て含浸法であると、少ない量の液状バインダで接着でき、風合いを損ないにくいため好適である。
そして、液状バインダを付与した繊維シ−トに対して、例えば、熱処理、マイクロ波照射、紫外線照射、プラズマ照射、近赤外線照射、遠赤外線照射、電子線(放射線等)照射等することによって、樹脂を架橋剤で架橋して架橋樹脂として、本発明の着色繊維シートを製造できる。本発明の一態様の着色繊維シートは濃色で、高級感に優れているように、明度が30.0以下(より好ましくは28.0以下、更に好ましくは27.0以下、更に好ましくは26.0以下)であるのが好ましい。
なお、繊維シートが織物又は編物である場合には、織物又は編物に対して、前述のような液状バインダを付与して、着色繊維シートとすることができる。
本発明の着色繊維シートは上述のように、一度だけ液状バインダを付与し、樹脂を架橋剤で架橋して架橋樹脂とした、1種の着色樹脂単位を有するものであっても良いが、より濃色で、高級感が優れているように、2種以上の着色樹脂単位を有するのが好ましい。このように2種以上の着色樹脂単位を有する場合、上述のような着色樹脂単位を形成する方法と同様の、液状バインダを繊維シートの全面に塗布し、樹脂を架橋剤で架橋する操作、又は、液状バインダを繊維シートに部分的にプリントし、樹脂を架橋剤で架橋する操作を繰り返して、2種以上の着色樹脂単位を形成することができる。
例えば、顔料、シリコーン、樹脂、及び架橋剤の関係が上述の液状バインダと同様の液状バインダ(プリント液)を用意し、所望のプリント模様に対応する開口を有するシリンダの開口を通して、液状バインダ(プリント液)をプリントし、前述の方法と同様に樹脂を架橋剤で架橋して架橋樹脂として、2種類目の着色樹脂単位を形成することができる。この液状バインダ(プリント液)のプリントは比較的平滑で、プリントの載りが良い、液状バインダで接着している面(着色樹脂単位を有する面)に対して、プリントを施すのが好ましい。
なお、1種類目の着色樹脂単位もプリントによって形成することができるし、3種類目以降の着色樹脂単位も液状バインダの付与方法又はプリントによって形成することができる。また、プリント方法はシリンダを使用する方法に限定されず、例えば、グラビア印刷、凸版印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷などにより実施することができる。なお、3種類目以降の着色樹脂単位を形成する液状バインダ又はプリント液も、顔料、シリコーン、樹脂、及び架橋剤の関係が上述の1種類目の着色樹脂単位を形成する液状バインダと同様の関係を満たすのが好ましい。更に、2種類目以降の着色樹脂単位を形成する場合、各着色樹脂単位が色落ちしにくいように、熱処理などにより樹脂を架橋剤で架橋して架橋樹脂とし、着色樹脂単位を形成した後に、別の着色樹脂単位を形成するのが好ましい。
このように、2種類以上の着色樹脂単位を有する本発明の一態様の着色繊維シートは、更に濃色で、高級感に優れているように、明度は24.0以下であるのが好ましく、23.0以下であるのがより好ましい。
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜5、比較例1〜9)
グレーの原着ポリエチレンテレフタレート延伸短繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)100mass%を、カード機により開繊して繊維ウエブを形成した後、片面から針密度400本/m2でニードルパンチ処理を行い、ニードルパンチウエブ(目付:170g/m2、厚さ:2.0mm、明度:56)を形成した。
次いで、表1、2に示す割合で配合した液状バインダ溶液を、ニードルパンチウエブのニードル面(ニードルが入った面)の反対面に対して泡立て含浸した後、温度150℃のキャンドライヤーで乾燥すると同時に樹脂を架橋剤で架橋して、ニードルパンチウエブの表面全面に、及び内部の一部に着色樹脂単位を有する着色不織布を製造した。この着色不織布の物性は表3、4に示す通りであった。
(実施例6)
実施例5と同様にして、ニードルパンチウエブの表面全面に、及び内部の一部に着色樹脂単位(「第1着色樹脂単位」と表記する)を有する着色不織布を製造した。
次いで、第1着色樹脂単位を有する面に対して、実施例3と同様に調製したプリント液を、シリンダを用いてプリントした後、温度160℃のドライヤーで乾燥し、図1に示すように、「く」の字状の第2着色樹脂単位PAと右斜め下方向へ角度60°で傾斜する斜線の第2着色樹脂単位PBとを、第1着色樹脂単位上に有する着色不織布を製造した。この着色不織布の物性は表5に示す通りであった。
(比較例10)
比較例7と同様にして、ニードルパンチウエブの表面全面に、及び内部の一部に着色樹脂単位(「第1着色樹脂単位」と表記する)を有する着色不織布を製造した。
次いで、第1着色樹脂単位を有する面に対して、実施例3と同様に調製したプリント液を、シリンダを用いてプリントした後、温度160℃のドライヤーで乾燥し、図1に示すように、「く」の字状の第2着色樹脂単位と右斜め下方向へ角度60°で傾斜する斜線の第2着色樹脂単位とを、第1着色樹脂単位上に有する着色不織布を製造した。この着色不織布の物性は表5に示す通りであった。
(比較例11)
実施例5と同様にして、ニードルパンチウエブの表面全面に、及び内部の一部に着色樹脂単位(「第1着色樹脂単位」と表記する)を有する着色不織布を製造した。
次いで、第1着色樹脂単位を有する面に対して、比較例9と同様に調製したプリント液を、シリンダを用いてプリントした後、温度160℃のドライヤーで乾燥し、図1に示すように、「く」の字状の第2着色樹脂単位と右斜め下方向へ角度60°で傾斜する斜線の第2着色樹脂単位とを、第1着色樹脂単位上に有する着色不織布を製造した。この着色不織布の物性は表5に示す通りであった。
(着色不織布の評価)
(1)色落ち性の評価;
各着色不織布に対して、JIS L 0849:2013「摩擦に対する染色堅ろう度試験方法」で規定する9.2「摩擦試験機II形(学振形)法」の湿潤試験を行い、JIS L 0801:2011の箇条10(染色堅ろう度の判定)(a)視感法により、色落ち性の評価をした。この結果は表3〜5に示す通りであった。
(2)風合いの評価;
各着色不織布を、当社滋賀工場に勤務する5名の技術者に実際に触ってもらい、柔らかいか、硬いか、又はその中間かを評価して貰った。そして、柔らかい場合を3点、硬い場合を1点、その中間を2点と点数化し、5名の評価を算術平均し、小数点第一位を四捨五入した。その結果、3点を風合いの柔らかい「○」、2点を風合いのやや劣る「△」、1点を風合いの硬い「×」と評価した。この結果は表3〜5に示す通りであった。
(3)明度の評価;
各着色不織布の明度を、積分球分光光度計(エックスライト(株)製、Color i5)を用い、反射測定径25mmの測定範囲で測定して算出した。これらの結果は、表3〜5に示す通りであった。
表3〜5の結果から、次のことが分かった。
(イ)実施例1と比較例1〜5との対比から、着色樹脂単位がシリコーンと架橋剤の両方を含んでいることによって、色落ちしにくく、風合いも優れていることが分かった。
(ロ)実施例1〜5と比較例6、8、9との対比から、架橋剤の固形分比率が樹脂の2.0〜10.4mass%であることによって、樹脂の量が5.0〜10.0g/m2と少なくても、色落ちしにくく、しかも風合いも優れていることが分かった。
(ハ)実施例1〜5と比較例7との対比から、顔料の量が0.35〜0.80g/m2であることによって、明度が30.0以下と低く、濃色で高級感に優れる着色繊維シートであることが分かった。
(ニ)実施例1〜5と比較例1〜4との対比から、シリコーンの固形分比率が樹脂の9.6〜19.2mass%であることによって、明度が低く、濃く見えるため、顔料の量を減らすことができることが分かった。
(ホ)実施例1〜5から、着色樹脂単位における、樹脂、シリコーン、及び架橋剤の固形分比率が、9.6〜50.0:1.2〜4.8:1であることによって、特に色落ちしにくく、風合いも優れることが分かった。
(ヘ)実施例6と比較例10〜11との対比から、着色樹脂単位を2種類以上有する場合、いずれの着色樹脂単位も、顔料、シリコーン、及び樹脂が架橋剤で架橋した架橋樹脂を含んでおり、しかも顔料の量が0.35〜0.80g/m2、シリコーンの固形分比率が樹脂の9.6〜19.2mass%、樹脂の量が5.0〜10.0g/m2、かつ架橋剤の固形分比率が樹脂の2.0〜10.4mass%であると、濃色で高級感に優れ、色落ち性、風合いに優れる着色繊維シートであることが分かった。