JP5744235B2 - ラジアスエンドミル - Google Patents

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Description

本発明はコーナR切刃を具備するラジアスエンドミルに関するものである。
ラジアスエンドミルは高能率切削が可能であり、多用されている。例えば、特許文献1では、切屑排出溝の底切刃と交差する先端部に主ギャッシュを形成するとともに、主ギャッシュ面の底切刃とコーナR切刃との境界から外周切刃にわたって交差する外側の領域に副ギャッシュ面を形成したラジアスエンドミルが開示されている。また、特許文献2では、底切刃からコーナR刃にわたってギャッシュが設けられたラジアスエンドミルが開示されている。
特許文献1: 国際公開第2004/058438号パンフレット
特許文献2: 特開2008−110472号公報
しかしながら、特許文献1、2に開示されたラジアスエンドミルでは、コーナR切刃にギャッシュをつけると、この部分のすくい角が小さくなって、切れ味が悪くなるという不具合がある。特に、コーナR切刃の外周切刃側では最も摩耗が進行する部位ではあるが、横送り加工において切削抵抗が高くて切込や送りを上げられず、高能率加工ができないという問題があった。また、底切刃においては、外周切刃よりもこすれて摩耗しやすく、被削材の加工面が荒くなりやすい場合があった。逆に、ギャッシュを小さくしすぎると、底切刃、コーナR切刃、外周切刃がきれいにつながらず、切刃のつなぎ目に段差や角が出てしまい、切屑が引っかかる場合があり、または切削加工中に欠けの原因になるという問題があった。
本発明は、このような問題点を解決するものであり、切れ味を高めるとともに、切刃に欠けや切屑排出性の妨げとなる段差や角ができることを抑制できるラジアスエンドミルを提供することにある。
本発明のラジアスエンドミルは、
工具本体と、
該工具本体の先端に存在する底切刃、前記工具本体の外周に存在する外周切刃および前記底切刃と前記外周切刃との間をつなぐコーナR切刃からなる切刃と、
前記底切刃、前記コーナR切刃および前記外周切刃の各々のすくい面と、
前記底切刃のすくい面の前記底切刃側とは反対側である後方、および前記外周切刃のすくい面の前記後方に延在する切屑排出溝と、
前記コーナR切刃のすくい面上に存在するとともに、前記底切刃のすくい面と前記外周切刃のすくい面とをつなぐ面取り面と、
を具備し、
前記コーナR切刃のうちの前記面取り面と交差する領域は、前記底切刃との境界よりも前記コーナR切刃の内側の位置から前記外周切刃との境界よりもコーナR切刃の内側の位置までにわたっているとともに、前記面取り面と交差する前記コーナR切刃のうちの前記底切刃側の終点におけるアキシャルレーキが5〜20°である。
本発明のラジアスエンドミルによれば、外周切刃近傍のコーナR切刃においては、コーナR切刃と外周切刃との繋ぎ目に欠けや切屑詰まりの原因となる段差や角ができることを抑制できるとともに、切れ味が向上して効率よく横送り加工できる。一方、底切刃近傍のコーナR切刃はアキシャルレーキ(軸方向すくい角)が小さくなり、すくい面において段差がなく、切屑の流れが妨げられることがないので、切刃におけるチッピングの発生が抑制されて加工面の面粗度を滑らかにできる。
本発明のラジアスエンドミルの一例である4枚の切刃を有する4枚刃のラジアスエンドミルを示す図であり、(a)平面図、(b)正面図である。 図1のラジアスエンドミルの切刃の構成を説明するための図であり、(a)すくい面を上から見た平面図、(b)底切刃の逃げ面側から見た正面図、(c)(a)を90°回転した側面(外周切刃の逃げ面側)から見た側面図である。 図1、2のラジアスエンドミルの面取り面上に存在する研磨痕の状態を説明するための模式図である。 図1、2のラジアスエンドミルの切刃の他の構成を説明するための図であり、すくい面を上から見た平面図である。
本発明のラジアスエンドミルについて、図1および図2の好適な実施態様例を用いて説明する。
図1、2のラジアスエンドミル(以下、単にエンドミルと称す。)20は、超硬合金等の硬質材料からなり、中心軸Oを回転軸とした回転対称な概略円柱形状の工具本体1を有する。この中心軸Oの周りに回転する工具本体1の先端側には底切刃2が存在する。工具本体1の外周には外周切刃4が存在する。底切刃2および外周切刃4の間にはこれらをつなぐコーナR切刃3が存在する。そして、エンドミル20は、先端側に、これら底切刃2−コーナR切刃3−外周切刃4の一連の切刃5を複数枚具備している。
また、切刃5に続いてすくい面6が設けられており、すくい面6の後方には切屑排出溝7が延在している。切屑排出溝7は工具本体1の外周側面に設けられている。切屑排出溝7は、先端から後端側に向かうに従い、切削加工時のエンドミル20の回転方向Tと逆方向(以下、逆回転方向と称す。)のらせん状にねじれた状態となっている。さらに、すく
い面6の先端には、切屑排出溝7の回転軸Oとのなす角θよりも回転軸Oとのなす角αが小さい先端ギャッシュ9を具備している。先端ギャッシュ9は底切刃2のすくい面として機能するとともに、切屑ポケットとして機能する。
そして、すくい面5のコーナR切刃3に続く位置に、面取り面8が設けられている。面取り面8は先端ギャッシュ9と隣接している。
ここで、面状の面取り面8は、縁の一部がコーナR切刃3と底切刃2との境界PおよびコーナR切刃3と外周切刃4との境界Q以外の前記コーナR切刃上(A、B)にある。換言すれば、縁の一部がコーナR切刃3の内側となるように設けられているとともに、コーナR切刃3の面取り面8と接する底切刃2側の端部におけるアキシャルレーキが5〜20°となっている。
つまり、すくい面6には、先端ギャッシュ9の外側で、かつコーナR切刃3に隣接して面取り面8が存在しており、面取り面8はすくい面6の他の領域よりも逆回転方向に後退している平面または曲面からなる。そして、面取り面8のコーナR切刃3上にある縁のうち底切刃2側の端部である底切刃側端部Aにおいて、回転軸Oに対する傾斜角であるアキシャルレーキ(回転軸方向すくい角)αが5〜20°となっている。
すくい面6は、底切刃2に続く先端ギャッシュ9、コーナR切刃3に続く面取り面8、外周切刃4に続く外周切刃すくい面10からなる。切屑排出溝7は外周切刃すくい面10につながっている。また、底切刃2の先端ギャッシュ9とは反対側には底切刃逃げ面14が、コーナR切刃3の面取り面8とは反対側にはコーナR切刃逃げ面15が、外周切刃4の外周切刃すくい面10とは反対側には外周切刃逃げ面16が、それぞれ設けられている。
また、面取り面8の縁の一部はコーナR切刃3と接しているが、その接する領域は、コーナR切刃3のうちの底切刃2との境界PよりもコーナR切刃3の内側の位置から、外周切刃4との境界QよりもコーナR切刃3の内側の位置までにわたっている。つまり、面取り面8はコーナR切刃3のうちの両境界P、Qにかからない中ほどの位置と接している。言い換えると、コーナR切刃3と接している面取り面8の縁の一部である底切刃側端部Aは境界PよりもコーナR切刃3側の位置にあり、縁の他端である外周切刃側端部Bは境界QよりもコーナR切刃3側の位置にある。
この構成によって、外周切刃側端部Bの近傍においては、面取り面8が小さいために、コーナR切刃3と外周切刃4との繋ぎ目に欠けや切屑詰まりの原因となる段差や角ができにくい。また、アキシャルレーキαが5〜20°であるために、切れ味が向上して効率よく横送り加工できる。一方、底切刃側端部Aの近傍はすくい角が小さくなる。これによって、先端ギャッシュ9と面取り面8との間、および面取り面8と外周切刃すくい面10との間が段差なくスムーズにつながって、すくい面6における切屑の流れが妨げられにくくなる。その結果、切削加工時の被削材の加工面の面粗度を滑らかにできる。すなわち、先端ギャッシュ9と面取り面8との間、および面取り面8と外周切刃すくい面10との間に段差があると、切屑が段差に引っかかって溶着が発生する。また、切屑が引っかかることによって、切刃5(特にコーナR切刃3)にかかる抵抗が大きくなって、切刃5にチッピングが発生する結果、被削材の加工面の面粗度が悪くなる。
ここで、本実施態様によれば、面取り面8は研磨加工によって形成されるため、面取り面8上には研磨痕11が存在する。本実施態様によれば、研磨痕11は直線ではなく、コーナR切刃3の稜線の曲線形状と同じ方向に屈曲する曲線形状に設けられている。図3(a)に示すように、研磨痕11が前記曲線形状に設けられるように面取り面8を研磨する
ことによって、研磨する際にコーナR切刃3にチッピングが発生することを抑制できる。例えば、面取り面8を研磨する際、中心軸Oに対して45°傾いた方向に、すなわちコーナR切刃3に対して砥石が斜めに横切るように直線状に砥石を当てて研磨すると、図3(b)に示すように、コーナR切刃3に研磨痕11の端部がかかって、コーナR切刃3にギザギザの段差(チッピング)18が生じる可能性がある。これに対して、砥石をコーナR切刃3の稜線形状に類似する方向になるように動かすことによって、図3(a)のようにコーナR切刃3にギザギザの段差(チッピング)18が生じることを抑制できる。その結果、被削材の加工面の面粗度をより滑らかにできる。
また、本実施態様によれば、面取り面8は凸曲面となっている。これによって、コーナR切刃3の刃先強度が増し、コーナR切刃3のチッピングが抑制される。さらに、面取り面8は凸曲面であることによって、先端ギャッシュ9と面取り面8との間、および面取り面8と外周切刃すくい面10との間に段差ができにくくなる。
ここで、コーナR切刃3と外周切刃4との境界QにおけるコーナR切刃3の接線に対する垂線と、コーナR切刃3の面取り面8と接する部分の外周切刃側端部BにおけるコーナR切刃3の接線に対する垂線とのなす角βが30〜60°である場合には、確実に、コーナR切刃3と外周切刃4との繋ぎ目に欠けや切屑詰まりの原因となる段差や角ができることを抑制できるとともに、切れ味が向上して効率よく横送り加工できる。一方、すくい面6においても、先端ギャッシュ9と面取り面8との間、および面取り面8と外周切刃すくい面10との間に段差ができにくくなり、切屑の流れがスムーズにできて、被削材の加工面粗度を滑らかにできる。
なお、面取り面8の逆回転方向への後退角σは小さいほうが切削抵抗を低くできるが、後述する角度γおよび角度βを後述する所定の角度に制御することにより、σは0°より大きく20°より小さい範囲に制御できる。
また、コーナR切刃3の底切刃2との境界PにおけるコーナR切刃3の接線に対する垂線と、コーナR切刃3の面取り面8と接する底切刃2側端部AにおけるコーナR切刃3の接線に対する垂線とのなす角γが1〜20°である場合には、コーナR切刃3の底切刃2近傍はすくい角が小さくなり、さらえ刃効果によって加工面の面粗度を滑らかにできる。
さらに、底切刃2は、こすれ摩耗を低減するために、中心軸Oから外周方向に向かってエンドミル20の先端側に向かうように僅かに傾斜している。また、底切刃2は底切刃側端部Aから中心軸Oに向かう位置で曲線状であることによって、底切刃2で切削加工される加工面の面粗度を滑らかにすることができる。
また、複数の切刃のうちの少なくとも一つの切刃は、図4のように、コーナR切刃3の面取り面8と接する外周切刃4側端部Bからすくい面6に延在する凹部12を有する形状であってもよく、これによって、コーナR切刃3と外周切刃4との繋ぎ目に欠けや切屑詰まりの原因となる段差や角ができることを抑制できるとともに、切屑を細かく分断できて切屑が延びて絡まったり、すくい面に詰まったりすることを抑制できる。このとき、凹部12はすくい面6を切刃に垂直な方向、すなわちコーナR切刃3の面取り面8と接する外周切刃4側端部に対して垂直な方向に延在していることが、切屑排出性を向上できる点で望ましい。
さらに、本実施態様では、この複数の凹部12については、エンドミル1の複数の切刃5において、各切刃5における凹部12の位置の少なくとも一部がずれている。これによって、凹部12は、被削材に切削されずに残ってしまう部分をなくすことができる。また、凹部12は、各切刃5にかかる切削抵抗のバランスを変えて、共振によるびびりの発生
を抑制することができる。
1 工具本体
2 底切刃
3 コーナR切刃
4 外周切刃
5 切刃
6 すくい面
7 切屑排出溝
面取り面
9 先端ギャッシュ
10 外周切刃すくい面
11 研磨痕
12 凹部
14 底切刃逃げ面
15 コーナR切刃逃げ面
16 外周切刃逃げ面
20 ラジアスエンドミル(エンドミル)
O 中心軸
A 底切刃側端部
B 外周切刃側端部
α 点Aにおけるアキシャルレーキ(回転軸方向すくい角)

Claims (8)

  1. 工具本体と、
    該工具本体の先端に存在する底切刃、前記工具本体の外周に存在する外周切刃および前記底切刃と前記外周切刃との間をつなぐコーナR切刃からなる切刃と、
    前記底切刃、前記コーナR切刃および前記外周切刃の各々のすくい面と、
    前記底切刃のすくい面の前記底切刃側とは反対側である後方、および前記外周切刃のすくい面の前記後方に延在する切屑排出溝と、
    前記コーナR切刃のすくい面上に存在するとともに、前記底切刃のすくい面と前記外周切刃のすくい面とをつなぐ面取り面と、
    を具備し、
    前記コーナR切刃のうちの前記面取り面と交差する領域は、前記底切刃との境界よりも前記コーナR切刃の内側の位置から前記外周切刃との境界よりもコーナR切刃の内側の位置までにわたっているとともに、前記面取り面と交差する前記コーナR切刃のうちの前記底切刃側の終点におけるアキシャルレーキが5〜20°であるラジアスエンドミル。
  2. 前記コーナR切刃と前記外周切刃との境界における前記コーナR切刃の接線に対する垂線と、前記面取り面の前記外周切刃側の終点における前記コーナR切刃の接線に対する垂線とのなす角が30〜60°である請求項1記載のラジアスエンドミル。
  3. 前記コーナR切刃の前記底切刃との境界における前記コーナR切刃の接線に対する垂線
    と、前記面取り面の前記底切刃側の終点における前記コーナR切刃の接線に対する垂線とのなす角が1〜20°である請求項1または2記載のラジアスエンドミル。
  4. 前記底切刃は、前記コーナR切刃との境界から内側に向かって曲線状である請求項1乃至3のいずれか記載のラジアスエンドミル。
  5. 前記切刃を複数具備し、該複数の切刃のうちの少なくとも一つの切刃は、前記コーナR切刃と前記外周切刃との境界から前記外周切刃のすくい面に延在する凹部を有する請求項1乃至4のいずれか記載のラジアスエンドミル。
  6. 前記凹部は、前記外周切刃のすくい面において、前記コーナR切刃と前記外周切刃との境界に対して垂直な方向に延在している請求項5記載のラジアスエンドミル。
  7. 前記複数の切刃の少なくとも2つの切刃に前記凹部を備え、各切刃における前記凹部の位置が異なっている請求項5または6記載のラジアスエンドミル。
  8. 前記面取り面に研磨痕が存在するとともに、該研磨痕は前記コーナR切刃と平行に設けられている請求項1乃至7のいずれか記載の切削工具。
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