WO2015002310A1

WO2015002310A1 - 切削インサート、工具ボデーおよび切削工具

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Publication number: WO2015002310A1
Application number: PCT/JP2014/067967
Authority: WO
Inventors: 伸幸出口; 佐治　龍一
Original assignee: 株式会社タンガロイ
Priority date: 2013-07-04
Filing date: 2014-07-04
Publication date: 2015-01-08
Also published as: JP2016163911A

Abstract

　切削インサートを強固に工具ボデーへ固定する構造を提供する。２つの端面（２、３）と、これらの端面の間をつなぐ側面（４）とを有し、２つの端面の少なくとも一方（２）と側面（４）の交差稜線には、少なくとも１つの切れ刃（５、５ａ）が形成される。側面（４）は、外方へふくらむ曲面を有する曲面付き側面部分（９、９ａ）を含む。曲面付き側面部分（９、９ａ）の曲面に接する第１の仮想平面（Ａ）と、第２の端面（３）に接する第２の仮想平面（Ｂ）とは、内角で鋭角に交差している。この曲面付き側面部分（９、９ａ）を工具ボデー（２１）のインサート座の壁面（２３）に当接させるようにすることで、切削インサート１の強固な固定が可能となる。

Description

切削インサート、工具ボデーおよび切削工具

　本発明は、切削工具へ着脱自在に装着される切削インサート、その切削インサートを装着するための工具ボデーおよびそれらを備えた切削工具に関する。

　従来の切削インサートには、特許文献１に示すようなものがある。すなわち、２つの端面と、それらの端面をつなぐ側面とを有する切削インサートであって、端面と側面との交差稜線には、片面に２つずつ、両面では合計４つの切れ刃が形成されたものである。かかる切削インサートは、いずれかの端面と平行な平面内で１８０゜回転させた向きで工具ボデーのインサート座に装着すること、および２つの端面を反転させた（裏返しにした）向きで工具ボデーのインサート座に装着することにより、４つの切れ刃を選択的に使用できるように構成されたものである。

国際公開第２０１２／２０７８４号パンフレット特開２００６-２３１４２４号公報

　かかる特許文献１の切削インサートには、切削インサートが動かないようにクランプする上で一定の効果があると認められる。しかし、工具径の小さい回転切削工具に対応して小型の切削インサートを適用しようとする場合などには、クランプ性に関してまだ改善すべき点があった。すなわち、特許文献１の切削インサートでは、切れ刃から連続するすくい面と、反転装着時にインサート座の底面へ着座する着座面と、を両端面に設ける必要がある。したがって、特に小径回転切削工具用の切削インサートの場合、切削インサートの各寸法が小さくなるため、必要なすくい面を確保するとこれに伴って着座面の面積が非常に狭くなり、切削インサートの固定が不安定になりやすいからである。そのため切削加工中に切削インサートが動き、チッピングが発生したり、加工面が粗くなるなどの不具合が発生していた。

　本発明は、切削インサートをさらに強固にクランプし得る構造を提供することを目的とする。

　本発明の第１の形態の切削インサートは、第１および第２の端面（２、３）と、これらの端面（２、３）をつなぐ側面（４）とを有する切削インサートであって、
　前記第１の端面（２）と前記側面（４）の交差稜線には、少なくとも一つの切れ刃（５、５ａ）が形成され、
　前記側面（４）は、外方へふくらむ曲面を有する曲面付き側面部分（９、９ａ）を含み、
　該曲面付き側面部分（９、９ａ）は、前記曲面に接する平面を第１の仮想平面（Ａ）とし、前記第２の端面（３）に接する平面を第２の仮想平面（Ｂ）とするとき、前記第１の仮想平面（Ａ）と前記第２の仮想平面（Ｂ）とが内角で鋭角に交差するように形成されていることを特徴とする。

　本発明の第２の形態の切削インサートは、第１および第２の端面（２、３）と、これらの端面（２、３）をつなぐ側面（４）とを有する切削インサートであって、
　前記第１の端面（２）と前記側面（４）の交差稜線には、少なくとも一つの切れ刃（５、５ａ）が形成され、
　前記側面（４）は、曲面付き側面部分（９、９ａ）を含み、
　該曲面付き側面部分（９、９ａ）は、前記第１の端面（２）との交差稜線において前記第１の端面（２）に対して６０゜以上９０゜以下の角度をなす第１部分（９１）と、前記第２の端面（３）に向うにしたがい外方へ突出して行く凹状の曲面を有する第２部分（９２）とを有し、
　該第２部分（９２）の前記曲面に接する平面を第１の仮想平面（Ａ）とし、前記第２の端面（３）に接する平面を第２の仮想平面（Ｂ）とするとき、前記第１の仮想平面（Ａ）と前記第２の仮想平面（Ｂ）とが内角で鋭角に交差するように形成されていることを特徴とする。

　本発明の工具ボデーは、切削インサート（１）を着脱自在に装着する工具ボデー（２１）であって、
　前記切削インサート（１）と接触する底面（２２）と少なくとも１つの壁面（２３）とが設けられた少なくとも１つのインサート座を有し、
　前記少なくとも１つの壁面（２３）は、前記底面（２２）と内角で鋭角に交差する凹陥壁面部分（２４）を有することを特徴とする。

　本発明の切削工具は、上記切削インサートを備える。

　本発明によれば、切削インサート（１）には曲面付き側面部分（９、９ａ）を設ける一方、切削ボデー（２１）のインサート座の壁面（２３）によって装着時に曲面付き側面部分（９、９ａ）をクランプすることで、切削インサート（１）の強固な固定が可能となる。そのため、切削加工のときに切削インサート（１）が動くことが防止され、切削インサート（１）のチッピングなどの欠けの発生が抑制される。そのため、工具の長寿命化、または加工対象の被加工面の表面粗さの改善が可能となる。さらに、回転または反転させた向きで使用が可能な切削インサートまたは小型の切削インサートなど、着座面の面積が狭い切削インサートであっても、これを強固にクランプできるようになる。

図１は、本発明の一実施形態における切削インサートの斜視図である。図２は、図１の切削インサートが装着された切削工具の斜視図である。図３は、図１の切削インサートの平面図である。図４は、図１の切削インサートの正面図である。図５は、図１の切削インサートの右側面図である。図６は、図１の切削インサートに関する仮想平面の説明図である。図７は、図２の切削工具に適用可能な、実施形態における工具ボデーのインサート座の拡大図である。図８は、図７のインサート座に関する仮想平面の説明図である。図９は、図２の切削工具の正面図である。図１０は、図９のＸ－Ｘ線に沿った断面を拡大して示す図である。図１１は、実施形態に係る切削インサートとインサート座との接触状態を説明するための模式図である。図１２は、実施形態の変形例に係る切削インサートと工具ボデーのインサート座との接触状態を説明するための模式図である。図１３は、実施形態の他の変形例に係る切削インサートと工具ボデーのインサート座との接触状態を説明するための模式図である。図１４は、実施形態に係る切削インサートと実施形態の変形例に係る工具ボデーのインサート座との接触状態の模式図である。

　本発明を適用した切削工具の実施形態について、図面を参照しながら説明する。

　１．実施形態
　まず、図１～図１０を参照して、本発明の実施形態にかかる切削インサート、工具ボデーおよび切削工具の基本構成について説明する。なお、本明細書における工具ボデーは、切削インサートを着脱自在に装着する形態のものであり、そのような工具ボデーに切削インサートを装着することで、切削工具が構成される。

　図１および図３から図５に示すように、第１の実施形態における切削インサート１は、互いに対向する２つの端面である第１の端面２および第２の端面３を有する。以降の説明をわかりやすくするため、第１の端面２を上面２と呼び、第２の端面３を下面３と呼ぶ。この実施形態では、上面２および下面３は、どちらも、対向する一対の鋭角コーナと一対の鈍角コーナとを有するとともに、対向する一対の長辺および一対の短辺を有している略平行四辺形の面である。したがって上面２および下面３はいずれもが、面に直交する軸に関して１８０°回転対称な輪郭形状とされる。また、上面２および３の関係においては、面に平行な軸に関して１８０°回転対称な形状である。

　上面２と下面３とは、側面４によって全周にわたってつながれている。上面２と側面４との交差稜線の一部に、２つの切れ刃５が形成される。同様に、下面３と側面４との交差稜線の一部に、２つの切れ刃５が形成される。この切削インサート１は、平面視した場合（図３）、それぞれの切れ刃５が当該平面内で１８０°回転対称な位置に形成された形状である。これとともに、上面２と下面３とを反転する（裏返しにする）回転方向に関しても、側面視した場合（図４、図５）、それぞれの切れ刃５が１８０°回転対称な位置に形成された形状である。したがって、切削に関与する１つの切れ刃５が使用により摩耗したり損傷したりした場合、切削インサート１を取り外し、切削インサート１を回転または反転させて装着しなおすことで、他の３つの切れ刃５を順次使用できる。つまり、１つの切削インサート１で、工具ボデー２１への装着向きを適宜変えることで、合計４回の使用が可能である。このように、本実施形態に係る切削インサート１は、基本的に、これら４つの向きへの回転または反転について１８０°回転対称な形状を有するものとして形成されている。したがって、上面２と下面３とは、同じ機能をもった端面である。つまり、この切削インサート１は、上面２と下面３とを入れ替えても、まったく同じ形状をなす切削インサートである。

　もちろん、使用する上で影響のない程度の非対称性は許容される。例えば、どの切れ刃を切削に関与させるよう装着するかの順番を識別するために、各切れ刃５の近傍に「１」から「４」などの番号や、目印などを付加するような、非対称性は許容される。しかし以降では、便宜的に、上面２側にある２つの切れ刃５の内、図１および図３において左下に描かれ、参照符号５ａが付された１つの切れ刃５を第１の切れ刃と呼び、この第１の切れ刃５ａが切削加工に関与するよう切削インサート１が装着される場合について説明する。他の３つの切れ刃５のいずれかを切削に関与させる場合についても、本実施形態の切削インサート１の構成では、第１の切れ刃５ａの場合と全く同様となるため、説明を省略する。

　図２に示すように、この実施形態の切削工具２０は、直角壁面加工のできる回転切削工具、つまりショルダカッタの形態である。本実施形態の切れ刃５は、鋭角コーナを介して隣り合う一組の２辺（長辺および短辺）にまたがって、主切れ刃６、副切れ刃７およびコーナ切れ刃８を有する。なお、第１の切れ刃５ａを特定する場合には、これらを第１の主切れ刃６ａ、第１の副切れ刃７ａおよび第１のコーナ切れ刃８ａとして参照する。

　切れ刃５の一部を構成する主切れ刃６は、上記略平行四辺形状の切削インサート１の上面２および下面３の長辺側に、ほぼ辺の全長にわたって形成される。主切れ刃６は、被加工物の表面に平行な切削工具２０の送り方向に切削加工を行うことで、被加工部分の壁面を形成する。切れ刃５の他の一部を構成する副切れ刃７は、切削インサート１の短辺の一部に形成される。副切れ刃７は、切削工具２０の送り方向に略平行であり、被加工物の表面をさらう切削加工を行うことで、被加工部分の底面を形成する。なお、副切れ刃７は正面刃とも呼ばれる。また、副切れ刃７には、必要に応じて、さらい刃などが形成されてもよい。主切れ刃６と副切れ刃７との間の鋭角コーナには、コーナ切れ刃８が形成されている。主切れ刃６、コーナ切れ刃８および副切れ刃７が連続することで、１つの切れ刃５を構成している。つまり、第１の切れ刃５ａについては、第１の主切れ刃６ａ、第１のコーナ切れ刃８ａおよび第１の副切れ刃７ａが連続することで構成される。

　この実施形態では、切削インサート１のコーナ切れ刃８の曲率半径、長辺の長さおよび短辺の長さは、それぞれ、約０．４ｍｍ、約９ｍｍおよび約５ｍｍとされている。また、切削インサート１の厚さ、すなわちこの場合上面２と下面３との間の距離は、約３ｍｍとされている。ここに例示した寸法をもつ切削インサートは、切削インサートとしては小さいものであり、小径のショルダカッタに適合させることのできる切削インサートである。本発明は、このような切削インサートであっても強固な固定を可能にするものである。しかし、以上例示した輪郭形状および各部の寸法に限定されることなく、切削インサート１の輪郭形状および各部の寸法は、加工される被加工物の形状や大きさ、切削工具２０の工具径などに応じて、適宜選択し得る事項である。

　さらに、本実施形態では、切削工具２０の工具径を約１４ｍｍとしている。従来の回転切削工具では、切削インサートのクランプ強度などの観点から、工具径を１６ｍｍ程度まで小さくすることが限界であり、それより小さな工具径とすることは困難であった。本発明は、後述するように切削インサート１のクランプ性を大幅に高めることにより、従来技術の限界を超え、工具径１５ｍｍ以下の切削工具２０を実現可能とする。より具体的には、直角壁面加工のできる、工具径約１４ｍｍの刃先交換式エンドミルを実現可能とする。本発明は、特に工具径４０ｍｍ以下の回転切削工具に適している。中でも、工具径２０ｍｍ以下の小径回転切削工具に適している。換言すれば、工具径２０ｍｍ以下の回転切削工具であっても、上面２および下面３の両面に正のすくい角のすくい面を設けることで上面２および下面３の両面を使用可能としつつ、切削抵抗の低い切削インサートを用いることができる切削工具の構造を実現する。

　つまり、両面にすくい面がある切削インサートの場合、上面２および下面３にはそれぞれ、切れ刃５から連続するすくい面を設ける一方、反転させたときにインサート座の底面へ着座する着座面を設ける必要がある。したがって、特に小径回転切削工具用の切削インサートの場合、切削インサートの各寸法が小さくなるため、必要なすくい面を確保するとこれに伴って着座面の面積が非常に狭くなり、切削インサートの固定が不安定になりやすい。本発明の切削インサート１および切削工具２０は、たとえ着座面の面積が狭くなっても切削インサート１の強固な固定を可能とし、従来の切削工具の限界を超えて、工具径の小さな回転切削工具を実現するものである。なお、すくい面の凹凸形状自体については、チップブレーカを設けるなどの様々な従来技術が適用可能である。また、適用される工具径は大径化する側には制限がない。

　切削インサート１には、上面２および下面３の中央を貫通する穴がある。この穴は、切削インサート１を工具ボデー２１へ固定して切削工具２０を構成するときに利用される。上下両面に開口する穴の両端部は、切削インサート１を貫いている穴の中央部よりも直径が拡大するようにされる。この理由は、本実施形態では、切削インサート１が工具ボデー２１に固定ねじにより固定されるようにしているからである。したがって、穴の直径拡大部は、固定ねじの頭部に対応する形状および寸法を有するものとされ、固定ねじの頭部が穴の直径拡大部により形成される段差部分に当接するようにされる。しかし、切削インサート１を工具ボデー２１へ固定する方法はこれに限定されることなく、様々な従来技術を適用できる。例えば、切削インサートには固定用の穴を設けず、くさびなどねじ以外の固定部材によって工具ボデー２１へ固定されることで切削工具２０が構成されるものでも構わない。ただしくさびによる場合、くさびが切削インサート１の上面２または下面３と接触して切削インサート１が固定される形式のものには必ずしも有効ではない。くさびによって切削インサートの側面の部分や側面に形成した凹部を押さえるなどすることで、切削インサート１の側面４が工具ボデー２１のインサート座の壁面へくさびによって押し付けられる形式のものに本発明は適する。

　図７および図８に示すように、この実施形態の工具ボデー２１は、切削インサート１を装着するためのインサート座を有する。この実施形態では、工具ボデー２１は２つのインサート座を有し、上述した切削インサート１を２つ装着することで、図２および図９に示したような切削工具が構成されるが、これに限定されない。すなわち、工具ボデー２１が有するインサート座の数は、切削工具２０の刃数つまり切削インサート１の数に相当するが、インサート座の数は、切削工具２０の工具径や、必要とされる加工能率に応じて、適宜選択される。また、この実施形態では、２つのインサート座を同じ形状および寸法とし、かつ同じ形状および寸法の切削インサートが同じ装着姿勢で、切削工具回転方向のまわりに均等に配置されるように形成されているが、これに限定されない。複数のインサート座の形状、寸法および配置態様については、回転切削工具の種類や、切削インサートの形状、寸法および装着姿勢などに応じて適宜定め得るものであり、上述したような切削インサート１を少なくとも１つ配置できるものであればよい。

　それぞれのインサート座は、インサート座の底面２２およびインサート座の壁面２３を有する。インサート座の底面２２には、切削インサート１の上面２または下面３の着座面が当接する。本実施形態では、インサート座の底面２２は単一の平面をなすものとされる。しかし、これに限定されることなく、インサート座の底面２２は、切削インサート１の着座面と当接できる形状であれば、どのような形状に形成されても構わない。しかしながら、切削加工に関与する第１の切れ刃５ａの直下にインサート座の底面２２があることが望ましい。そのため、インサート座の底面２２に対向する方向からみて、インサート座の底面２２の輪郭形状は、略平行四辺形とされるとよい。なおインサート座の底面２２の周囲には、インサート座の壁面２３との境界部分に、切削インサート１との干渉を避けるための所謂「ぬすみ」などが形成されてもよい。その場合、ぬすみの形状が複雑になることを避ける上で有効であれば、インサート座の底面２２の真の輪郭形状は、必ずしも略平行四辺形でなくてもよい。本実施形態で説明したインサート座の底面２２の輪郭形状とは、切削インサート１の輪郭形状に対応する基本的な輪郭形状のことであり、ぬすみの配設を考慮するのであれば、適宜の修正を施してもよいことは勿論である。

　切削インサート１の側面４には、図１にみられるように、上記略平行四辺形状の上面２および下面３の鈍角コーナをなす部分（それぞれ、下面３および上面２の鋭角コーナをなす部分の裏側の部分に対応する）において、少なくとも一部が外方に突出する曲面を有する曲面付き側面部分９が形成される。図１１にインサート座壁面２３との当接状態を模式的に強調して示したように、この実施形態では、曲面付き側面部分９は、全体的に外方にふくらむ凸状の曲面とされている。切削インサート１を工具ボデー２１へ装着するとき、切削インサート１の曲面付き側面部分９は、工具ボデー２１のチップ座の壁面２３に形成される凹陥壁面部分２４と当接することにより、切削インサート１を固定する。なお、第１の切れ刃５に関連して被固定部として作用する曲面付き側面部分９を、第１の曲面付き側面部分９ａとして参照する。すなわち、図１および図３において、左下に描かれている第１の切れ刃５ａに対応する第１の曲面付き側面部分９ａは右下に描かれている。曲面付き側面部分９は、これが設けられている端面（すなわち対応する切れ刃５が属する一方の端面）から他方の端面に向かうにしたがい外方に突出して行く部分を含むように形成される。すなわち、上面２側の第１の切れ刃５ａとの関連で言えば、第１の曲面付き側面部分９ａは、上面２から下面３に向かうにしたがい外方に突出して行く部分である。

　図６に模式的に示すように、曲面付き側面部分９と接する平面を仮想平面Ａとし、下面３と接する平面を仮想平面Ｂとすると、仮想平面Ａと仮想平面Ｂとは内角で鋭角に交差する。なお曲面付き側面部分９のうちでも、インサート座の壁面２３と当接しない部分は、どのような形状とされても構わない。対応する切れ刃５が属する一方の端面から他方の端面に向かうにしたがい外方に突出して行く部分を有し、当該部分の少なくとも一部においてインサート座の凹陥壁面部分２４と当接する曲面を有するように曲面付き側面部分９が形成されていれば、装着された切削インサート１にはインサート座の底面２２側へ押さえる力が効果的に作用するので、切削インサート１が浮き上がって動くことが防止される。

　ここで、仮想平面Ｂを基準とし、曲面付き側面部分９と凹陥壁面部分２４との当接位置までの仮想平面Ｂからの距離（高さ）を考えたとき、当該距離は、切削インサート１の上面２と下面３との距離の１０％以上かつ４０％以下であることが好ましい。インサート座の底面２２により近い位置で切削インサート１を押さえ込むことで、より安定したクランプ性が得られるからである。なお、これは以下の変形例においても同様である。

　前述のように、本実施形態において切削インサート１の曲面付き側面部分９は、図１１に模式的に示したように、外方に向かってふくらむ曲面とされている。図示の曲面は、切削インサート１を上面２に対し垂直に切断した断面形状を考えた場合、外方に向かってふくらむ曲線を含むものとなる。図１１に示すように、第１の曲面付き側面部分９ａは、上面２に近づくほど上面２に対する傾斜角度が小さくなり、上面２との交差角度が鈍くなるので、上面２と曲面付き側面部分９との交差稜線が欠けにくくなる。このように上面２と曲面付き側面部分９との交差稜線が欠けにくくなると、切削インサート１をチップ座の壁面２３へ押しつける力を強くしても、切削インサート１が欠けにくくなる。したがって、クランプ力を増やすことが可能となり、切削インサート１が強固に固定されることになる。

　また、曲面付き側面部分９を本実施形態のように形成した場合、曲面付き側面部分９と凹陥壁面部分２４との当接部分における接平面（すなわち仮想平面Ａ）が下面３と接する面（すなわち仮想平面Ｂ）に対してなす角度（内角）が鋭角となる。これにより、図１１に示したようにインサート座の凹陥壁面部分２４を平面の斜面とした場合でも、切削インサート１をインサート座の底面２２に対してクランプする力が効果的に作用するため、切削インサート１の浮き上がりを確実に押さえ込むことが可能となる。また、このため、凹陥壁面部分２４の当接部分が曲面付き側面部分を擦ることで切削インサートおよびインサート座の一方または双方が損傷されるような恐れを低減することができる。さらに、図１１に示したような凹陥壁面部分だけでなく、比較的単純な形状の壁面部分、例えば底面２２に垂直に形成した壁面の一部から、インサート座が画成している空間内に突設された棚状の壁面部分を曲面付き側面部分９に当接させるものであっても、同様の効果が得られるので、インサート座ないしは工具ボデーの設計の自由度が増すことにもつながる。

　なお、外方にふくらむ曲面は、円筒面や球面の一部とすることができるが、それに限定されない。適切な箇所で切削インサート１とインサート座の壁面２３とが当接する形状であれば、どのような複雑な形状とされても構わない。また、曲線を短い多数の直線で近似するように、曲面を小さな平面を多数組み合わせたような面で近似したものであっても構わない。外方にふくらむ曲面の断面を近似する曲率半径は、例えば１００ｍｍとされるとよいが、これに限定されない。外方にふくらむ曲面の断面を近似する曲率半径は、１ｍｍ以上、かつ１０００ｍｍ以下であることが好ましい。外方にふくらむ曲面の断面を近似する曲率半径は、１ｍｍ以上、かつ２００ｍｍ以下であることがさらに好ましく、１ｍｍ以上、かつ５０ｍｍ以下であることが最も好ましい。

　図示しないが、切削インサート１を上面２と平行に切断した断面形状を考えた場合、外方にふくらむ曲面は、外方に向かってふくらむ曲線を含むものとすることもできる。ただしこの場合も、凹陥壁面部分２４と好ましく当接することで、切削インサートのクランプ性を高めるという目的に照らし、曲面付き側面部分の少なくとも一部が外方に突出する曲面を有するという条件、すなわち本実施形態に即して言えば、上面２から下面３に向って外方に傾斜するという条件は満たされているべきである。この際の傾斜角度は一定でもよいし、図１１に示したように下面３に向って増加してゆくものでもよい。前者の場合には、切削インサート１の曲面付き側面部分９は例えば円錐面の一部を含み、後者の場合には例えば球面や放物面の一部を含むものとすることができる。いずれにしても、当該曲面は、第１の主切れ刃６ａに近づくほど第１の主切れ刃６ａとの交差角度が鈍くなるので、第１の主切れ刃６ａが形成されている長辺とそれに隣接する短辺との交差部である鈍角コーナの欠けが生じにくくなる。

　なお、凹陥壁面部分２４に関し、少なくとも曲面付き側面部分９と当接する部分を曲面付き側面部分９の曲面（凸状の曲面）に倣った形状（凹状の曲面）とすれば、第１の曲面付き側面部分９ａが凹陥壁面部分２４と角部で接触することを防止し、切削加工に関与していない切削インサート１の部分のチッピングや、凹陥壁面部分２４の塑性変形などの不具合を防止できる。また、この実施形態では、鈍角コーナには切れ刃５が形成されないので、鈍角コーナは、欠けが生じない強靭な形状とする自由度が高いものとなる。

　第１の曲面付き側面部分９ａは、端面２、３を四角形とみて側面４を４つの面に分けて考えるとき、第１の副切れ刃７の逃げ面を含む面とは対向する面に形成される。しかし、曲面付き側面部分９は、副切れ刃７の逃げ面とは、ずれた位置に形成される。前述のとおり、この切削インサート１は、上面２に直交する中心軸に対して１８０°回転対称である。したがって、２つの副切れ刃７は、２つの方向に関して、それぞれ対角の位置（すなわち本実施形態の場合、鋭角コーナに隣接する位置）に形成される。第１の曲面付き側面部分９ａは、切削加工に関与する第１の切れ刃５ａに関して、第１の主切れ刃６ａに近く、第１の副切れ刃７ａとは反対側に形成される。このため、第１の副切れ刃７およびこれと連続する第１のコーナ切れ刃８ａの付近に作用する切削抵抗によって、切削インサート１の反対側を浮き上がらせる力を、第１の曲面付き側面部分９ａによって効果的に押さえることができる。

　側面４のうち、曲面付き側面部分９より下面３側には、延在側面部分１０が形成されている。下面３とは、前述のとおり、切削加工に関与する第１の切れ刃５ａが形成される上面２に対する下面３である。つまり、下面３側とは、インサート座の底面２２へ着座する着座面側のことである。この実施形態で、突出側面部分１０は、下面３側の切れ刃５が作用するときには、副切れ刃７の逃げ面として機能する。突出側面部分１０は、曲面付き側面部分９に連続し、さらにそれより外方へ突出している。したがって、第１の切れ刃５ａが切削に関与するよう装着されるとき、下面３に形成される副切れ刃７は、曲面付き側面部分９よりさらに外方の位置に形成される。このようにすることで、下面３側において、必要な広さのすくい面を確保しても、曲面付き側面部分９の裏面側の着座面にも十分な広さが確保される。曲面付き側面部分９が傾斜面を含んでいることと相まって、切削インサート１は曲面付き側面部分９と着座面とを介してしっかりと挟み込まれ、切削インサート１のクランプ性が安定する。なおこの実施形態では、突出側面部分１０は、傾斜面とされ、下面３と接する平面に対するその傾斜角度は、曲面付き側面部分９よりも、内角で小さな傾斜角度となる部分を含む。

　次に、平面視において略平行四辺形の４つの辺のうち、切削加工に関与する第１の主切れ刃６ａが形成されている長辺と対向する長辺に接続する側面部分を、後述するインサート座の主拘束壁面部分１１との関連において主被拘束側面部分と称し、符号１１をもって参照する。そして、図６に示すように、主被拘束側面部分１１と接する平面を仮想平面Ｃとする。図３にみられるように、第１の曲面付き側面部分９ａは、平面視において、対応する第１の切れ刃５ａの一部である第１の主切れ刃６ａが形成された長辺から離間するにしたがい外方に突出する。つまり第１の曲面付き側面部分９ａは、平面視において、外方（すなわち本実施形態では第１の副切れ刃７ａが設けられた短辺と対向する短辺側）に向って行くため、第１の主切れ刃６ａにつながる側面部分と対向する主被拘束側面部分１１に対して鋭角に交差している。すなわち、第１の曲面付き側面部分９ａの曲面と接する仮想平面Ａと、主被拘束側面部分１１と接する仮想平面Ｃとは、内角で鋭角に交差する。このため、第１の曲面付き側面部分９ａは、第１の主切れ刃６ａと連続するコーナ切れ刃８側にかかる切削抵抗によって切削インサート１を平面内で回転させようとする方向の動きも抑制する。つまり、第１の曲面付き側面部分９ａと主被拘束側面部分１１とがいずれもインサート座の壁面２３と当接するため、切削インサート１を平面内で回転させようとする方向の動きをしっかりと抑制できる。

　前述のとおり、工具ボデー２１のインサート座の壁面２３は、傾斜面を含む凹陥壁面部分２４を有する。図９のＸ－Ｘ線断面を示す図１０に示すように、凹陥壁面部分２４は、切削インサート１の第１の曲面付き側面部分９ａと当接するべく、インサート座の底面２２から離れた端部から底面２２に向かうにしたがい内方へへこむ。すなわち、凹陥壁面部分２４は、切削インサート１の上面２に隣接する上面２１ａから底面２２に向けて、底面２２に対し鋭角をなすように傾斜している。図１１に模式的に示したように、本実施形態では、凹陥壁面部分２４については平面で形成されたものとなっている。

　ここで図８に示すように、凹陥壁面部分２４と接する平面を仮想平面Ｄとする。またインサート座の底面２２と接する平面を仮想平面Ｅとする。仮想平面Ｄと仮想平面Ｅとは内角で鋭角に交差する。このような形状に凹陥壁面部分２４が形成されると、切削インサート１に切削加工によりインサート座から浮き上がる方向の力が作用したとき、切削インサート１をインサート座の底面２２側へ押さえつける効果がある。したがって、切削インサート１のクランプ性が安定し、切削インサート１の動きが抑制される。

　前述のようにインサート座の底面２２の輪郭形状が切削インサート１の形状に合わせて略平行四辺形とされたとき、インサート座の壁面２３は、切削インサート１の曲面付き側面部分９ａと当接する凹陥壁面部分２４と、切削インサート１の上記主被拘束側面部分１１と当接する壁面（以下、第３の壁面部分と称する）２６と、を含むものとなる。この壁面部分２６は、平面視において、平行四辺形の長辺に沿って形成された、切削加工に関与する切削インサート１の第１の主切れ刃６ａとは反対側に位置する壁面部分である。したがって、この壁面部分２６は切削インサート１に対する主拘束壁面部分と呼ぶこともできる。図８に示すように、主被拘束壁面部分２６と接する平面を仮想平面Ｆとすると、凹陥壁面部分２４と接する仮想平面Ｄに対し、主被拘束壁面部分２６と接する仮想平面Ｆとは、内角で鋭角に交差する。このため、曲面付き側面部分９ａと当接する凹陥壁面部分２４とあいまって、切削加工時における切削インサート１の回転や浮き上がりが抑制され、切削インサート１はインサート座にしっかりと拘束されることになる。

　図１０に最もよく示されているように、インサート座の壁面２３はさらに、凹陥壁面部分２４の底面２２に対する接続部分近傍に第２の凹陥壁面部分２５を有する。第２の凹陥壁面部分２５は、凹陥壁面部分２４よりさらに内方へ凹陥した壁面をなしており、切削インサート１を工具ボデー２１のインサート座に装着したとき、切削インサート１の延在側面部分１０との接触が回避されるようにしている。すなわち、第２の凹陥壁面部分２５は、その内部に延在側面部分１０を収容することで、凹陥壁面部分２４は切削インサート１の曲面付き側面部分９ａと確実に当接することができる。また、本実施形態のように、反転してインサート座に装着することで他の切れ刃５を切削に関与させることができるようにした切削インサート１を使用する場合、逃げ面とはならない延在側面部分１０が第２の凹陥壁面部分２５と接触しないことで、当該延在側面部分１０が保護される。さらに、図１０に示すように、第２の凹陥壁面部分２５を底面２２にもまたがるように凹陥したものとすれば、切削に関与していない切れ刃５の、底面２２との干渉が生じ得る部分を受容することができる。つまり、第２の凹陥壁面部分２５の形状を適切に定めることで、切削インサート１の切れ刃５が未使用時に損傷することを確実に防止することができる。

　２．実施形態の変形例
　上述の実施形態では、曲面付き側面部分９を凸状の曲面を有するものとし、インサート座の凹陥壁面部分２４の傾斜面は平面で形成されるものとした。しかし両者の当接に伴って良好なクランプ性を得るという基本的な目的に適うのであれば、以上とは異なる条件を考慮して、面の形状は適宜定め得るものである。

　図１２に模式的に示すように、一部が外方に突出するものであれば、曲面付き側面部分９を、凹状の曲面を有するものすることができる。

　ここで、特許文献２には、切削インサートの側面に曲面状の凹部を形成した実施形態が開示されている。しかし同文献は、その図３（ｂ）に示された凹部を開示するにとどまるものであって、曲面が含む曲線が切削インサートの下面に対してなす角度が鋭角であるという条件を満たすこと、および、その条件を満たす凹部の領域にボデー側の凸部が係合することが記載されているのみである。

　これに対し、図１２に示した曲面付き側面部分は、切削インサート１を上面２に対し垂直に切断した断面形状を考えた場合、上面２との交差稜線において上面２に対して６０゜以上９０゜以下の範囲の傾斜角度で交差する第１部分９１と、外方に突出する曲線を含む凹面状の第２部分とを含むものとなる。すなわち、図１２に示す曲面付き側面部分９の第２部分９２は、上面２に近づくほど上面２に対する傾斜角度が大きくなる。したがって、第１の曲面付き側面部分９ａを考えた場合、第１部分９１により、第１の切れ刃５ａを形成できる上面２の領域を広げることができるほか、第１の曲面付き側面部分９ａと上面２との交差稜線部も、切削インサート１の装着姿勢によって切れ刃として使用することができる部分とすることができる。なお上面２に対して第１部分９１の傾斜角度が６０゜以上９０゜以下の範囲とは、図１２に示す上面２と第１部分９１との交差角度βで表すと、内角で６０°以上１２０°以下の範囲である。第２部分９２は、その接平面（すなわち仮想平面Ａ）が下面３と接する面（すなわち仮想平面Ｂ）に対してなす角度（内角）が鋭角となる。そして、凹陥壁面部分２４は、その最上部において切削インサート１の第２部分９２と当接するので、切削インサート１を押さえつける効果が最大となる。この際、凹陥壁面部分２４が、曲面付き側面部分９の第２部分９２の適切な部位、すなわち底面２２により近い部位で当接するようにすれば、図１１について説明した実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。すなわち、切削インサート１の浮き上がりをより確実に押さえ込むことができ、さらには、第１部分９１に近い部位で凹陥壁面部分２４が曲面付き側面部分９と当接する場合において、当該当接部位同士が擦れることで生じる損傷の恐れを低減できるなどの効果を得ることができる。これらの効果を考え、さらに横方向（すなわち仮想平面Ｂに平行な方向）における切削インサート１の安定性を考慮した場合、当該当接部位は、その部位の接平面が下面３に対し内角で４５°以上かつ７５°以下となる部位であることが好ましい。

　なお、図１２の例では、曲面付き側面部分９において離れて第１部分９１と第２部分９２とが設けられている。しかし図１３に示すように、第１部分９１が第１の端面２との交差稜線から内方へへこむ部分をなし、そのへこんだ第１部分９１に連続して第２部分が形成されることで、曲面付き側面部分９の全体が凹曲面をなすようにすることも可能である。また、第１部分９１を上面２に対して上述の規定に従って設ける一方、第２部分９２が内方へへこんでから外方へ突出してゆくように形成されたものであってもよい。図１３に示す上面２と第１部分９１との交差角度βは、６０゜以上９０゜未満の範囲が好ましい。すなわち、第１部分９１は上面２に対する傾斜角度が、６０゜以上９０゜未満の範囲であることが好ましい。このように上面２付近に内方へへこむ部分を設けると、上面２の該当部分を切れ刃５とするときに、逃げ面を確保しやすくなる。

　一方、図示しないが、曲面付き側面部分９は、上面２と平行に切断した断面形状を考えた場合に内方に向かってへこむ曲面とすることでも得られる。切削インサート１を上面２と平行に切断した断面形状を考えた場合、内方にへこむ曲面は、内方へへこむ曲線を含むものとすることもできる。ただしこの場合でも、上述と同様の条件、すなわち本実施形態に即して言えば、上面２から下面３に向うにしたがい一部が外方に突出するという条件は満たされているべきである。突出する際の傾斜角度は一様でもよいし、図１１に示したように下面３に向って減少してゆくものでもよい。いずれにしても、第１の曲面付き側面部分９ａの幅方向の両端が外方に突出して確実にインサート座の凹陥壁面部分２４と当接するようになるので、切削インサート１の平面内での回転方向の動きを効果的に押さえることができる。

　上述の実施形態では、第１の曲面付き側面部分９ａは、前述した下面３と接する仮想平面Ｂを基準として第１の曲面付き側面部分９ａまでの距離（高さ）が一定とされている。しかし、これに限定されることなく、第１の曲面付き側面部分９ａの曲面部分までの距離が変化するように設けられても構わない。別の表現をすると、凹陥壁面部分２４に対する第１の曲面付き側面部分９ａの当接部分の高さが、曲面付き側面部分９ａの表面に沿って変化するように設けられても構わない。

　例えば、第１の曲面付き側面部分９ａの曲面部分までの距離は、切削加工に関与する第１の切れ刃５ａの第１の主切れ刃６ａに隣接した部位から離れるにしたがい大きくなるようにされてもよい。そのように第１の曲面付き側面部分９ａが形成されると、第１の曲面付き側面部分９ａは、第１の主切れ刃６ａに近いほど下面３に近く位置することになる。すると、例えば、第１の主切れ刃６ａの切削動作に伴い、切りくずの擦過や衝突が発生しても、その影響が及ぶ範囲は上面２の鈍角コーナ付近の狭い範囲に限られ、下面３に近く位置する第１の曲面付き側面部分９ａや凹陥壁面部分２４が損傷を受ける恐れを低減することができる。またこれに伴い、切削インサート１のクランプ性をより一層安定させることが可能となる。

　これとは逆に、例えば、第１の曲面付き側面部分９ａの曲面部分までの距離は、第１の主切れ刃６ａに隣接した部位から離れるにしたがい、小さくなるようにされてもよい。そのように第１の曲面付き側面部分９ａが形成されると、第１の曲面付き側面部分９ａは、第１の主切れ刃６ａから離れるほど下面３から離れて位置することになる。このように第１の曲面付き側面部分９ａが形成される場合は、例えば、第１のコーナ切れ刃８ａが受ける切削抵抗によって切削インサート１の対角位置が浮き上がろうとする動きを効果的に押さえることができる。

　さらに、図１４に模式的に示すように、曲面付き側面部分９だけでなく、工具ボデー２１のインサート座の凹陥壁面部分２４も曲面を含むものとして形成することができる。すなわち、図１４に示すように、工具ボデー２１のインサート座を底面２２に対し垂直に切断した断面形状を考えた場合、凹陥壁面部分２４は外方（すなわちインサート座が画成する空間内方）に向ってふくらむ凸状の曲線を含むものとなる。このようにすると、曲面付き側面部分９と凹陥壁面部分２４との当接時に双方に弾性変形が生じることを前提とし、好ましい同程度の量の弾性変形が生じるように双方の材質等の条件を定めることで、当接面積を増大させることができ、切削インサート１をより確実に押さえ込むことができるようになる。これとともに、当接を角ないしは線接触で行う場合に比べ、凹陥壁面部分２４の塑性変形などの不具合が発生することを防止できる。

　なお、図１１または図１４に示した切削インサート１の曲面付き側面部分９と同様、凹陥壁面部分２４の外方にふくらむ曲面は、適切な箇所で切削インサート１の曲面付き側面部分９と当接する形状であれば、どのような形状とされても構わない。また、曲面を小さな平面を多数組み合わせたような面で近似したものであっても構わない。さらに、外方にふくらむ曲面の断面を近似する曲率半径についても、上述した切削インサート１の曲面付き側面部分９に関する規定と同様に定めることができる。また、図示しないが、工具ボデー２１のインサート座を底面２２に対し平行に切断した断面形状を考えた場合、凹陥壁面部分２４は外方に向ってふくらむ凸状の曲線を含むものとすることもできる。あるいは、これらとは逆に、凹陥壁面部分２４をへこむ曲面とすることもできる。いずれにしても、例えば、少なくとも曲面付き側面部分９と当接する凹陥壁面部分２４の部分をその曲面付き側面部分に倣った形状とすれば、曲面付き側面部分９に対する凹陥壁面部分２４の接触面積を増大させることができる。

　一方、図示しないが、逆に凹陥壁面部分２４を、凸状の曲面付き側面部分９に合わせて、内方にへこむ凹状の曲面を含む形状とすることもできる。そのように凹陥壁面部分２４が形成されると、当接面の面積がより増すとともに、凹陥壁面部分２４の上端付近で切削インサート１を押さえることができるため、切削インサート１の浮き上がりを押さえる効果が最大となる。

　凹陥壁面部分２４は、切削インサート１に対する接触位置が、インサート座の底面２２からの距離（高さ）が変化するように形成することもできる。そのように凹陥壁面部分２４が形成されると、前述のように切削インサート１の第１の曲面付き側面部分９ａの高さを変化させた場合に、より確実に対応させることができる。

　この切削インサート、工具ボデーおよび切削工具は、工作機械に装着されることにより、鋼材などの切削加工に利用できる。回転切削工具や旋盤用のバイトなどに適用され、適用切削工具への制約がほとんどない。実施形態には回転切削工具だけを記載したが、旋盤用のバイトに適用しても、クランプ強度の高いクランプ機構であることが確認されている。

　３．その他
　この発明の切削インサート、工具ボデーおよび切削工具は、以上に説明した実施形態および変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更及び追加が可能である。例えば、チップ座の壁面が３つ以上形成されてもよい。

　切削インサート１の材料は、少なくともその切れ刃５付近が、超硬合金、サーメット、セラミックスおよび立方晶窒化ほう素、または、それら硬質材料の表面にコーティングを施された材料、またはダイヤモンドなどの焼結体材料とされる。

　これらの切削インサートは、様々な切削工具に適用されて、その切削工具が工作機械に装着されることにより、鋼材などの切削加工に利用できる。主切れ刃および副切れ刃を有する切削インサートであれば、ほとんどの切削工具に適用可能である。

　この発明の切削インサート、工具ボデーおよび切削工具は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更及び追加が可能である。例えば、平面視にて三角形や矩形、菱形、さらには五角形以上の多角形の切削インサートへ適用することも可能である。すなわち、本発明に係る切削インサートは、平面視にて、上述したような平行四辺形をなすものでなくてもよい。また、回転または反転によって複数の切れ刃を選択的に使用することが可能なものでなくてもよい。すなわち、少なくとも１つの切れ刃を有し、その切れ刃が切削に関与する際に切削インサートにかかる力によって生じ得る切削インサートの動きを効果的に抑制できる部位に、切削インサートから少なくとも一部が外方に突出してインサート座の壁面部分と当接する曲面付き側面部分を有する構成であればよい。

　また、本発明の切削インサートの装着対象となる工具ボデーは、上述したような、比較的簡単な形状の凹陥壁面部分を有するものとすることが、工具ボデーの製造の容易性や所要の精度を得る観点から好ましい。また、切削インサートの曲面付き側面部分に倣った形状の凹陥壁面部分を設けることは、曲面付き面部分との接触面積を拡大する上で好ましい。しかし本発明の装着対象となる工具ボデーは、上述の実施形態に限られない。つまり、たとえ形状はいかなるものであっても、切削インサートの曲面付き側面部分と当接して切削インサートを好ましくクランプする壁面部分を有するものであればよい。例えば、工具ボデーは、上記仮想平面Ｅに垂直に形成した壁面の一部から、インサート座が画成している空間内に突設されて切削インサートの曲面付き側面部分と当接する棚状の壁面部分を有するものであってもよい。特に本願発明に係る切削インサートは、適切に形成された側面部分を有することによって、比較的単純な形状の壁面部分の使用を許容するので、インサート座ないしは工具ボデーの設計の自由度を増すものである。そして本発明は、そのような工具ボデーに切削インサートを装着した切削工具にも存するものである。

Claims

　第１および第２の端面（２、３）と、これらの端面（２、３）をつなぐ側面（４）とを有する切削インサートであって、
　前記第１の端面（２）と前記側面（４）の交差稜線には、少なくとも一つの切れ刃（５、５ａ）が形成され、
　前記側面（４）は、外方へふくらむ曲面を有する曲面付き側面部分（９、９ａ）を含み、
　該曲面付き側面部分（９、９ａ）は、前記曲面に接する平面を第１の仮想平面（Ａ）とし、前記第２の端面（３）に接する平面を第２の仮想平面（Ｂ）とするとき、前記第１の仮想平面（Ａ）と前記第２の仮想平面（Ｂ）とが内角で鋭角に交差するように形成されていることを特徴とする切削インサート。
　前記曲面は、前記曲面付き側面部分（９、９ａ）を前記第２の端面（３）と略垂直な平面で切断した断面でみたときに、その断面が外方にふくらむ曲線を含むものであることを特徴とする請求項１に記載の切削インサート。
　前記曲線の曲率半径が１ｍｍ以上かつ５０ｍｍ以下であることを特徴とする請求項２に記載の切削インサート。
　前記曲面は、前記曲面付き側面部分（９、９ａ）を前記第２の端面（３）と略平行な平面で切断した断面でみたときに、その断面が外方にふくらむ曲線を含むものであることを特徴とする請求項１に記載の切削インサート。
　第１および第２の端面（２、３）と、これらの端面（２、３）をつなぐ側面（４）とを有する切削インサートであって、
　前記第１の端面（２）と前記側面（４）の交差稜線には、少なくとも一つの切れ刃（５、５ａ）が形成され、
　前記側面（４）は、曲面付き側面部分（９、９ａ）を含み、
　該曲面付き側面部分（９、９ａ）は、前記第１の端面（２）との交差稜線において前記第１の端面（２）に対して６０゜以上９０゜以下の角度をなす第１部分（９１）と、前記第２の端面（３）に向うにしたがい外方へ突出して行く凹状の曲面を有する第２部分（９２）とを有し、
　該第２部分（９２）の前記曲面に接する平面を第１の仮想平面（Ａ）とし、前記第２の端面（３）に接する平面を第２の仮想平面（Ｂ）とするとき、前記第１の仮想平面（Ａ）と前記第２の仮想平面（Ｂ）とが内角で鋭角に交差するように形成されていることを特徴とする切削インサート。
　前記第１部分（９１）は、前記第１の端面（２）との交差稜線から内方へへこむ部分をなし、当該へこんだ第１部分（９１）に連続して前記第２部分が形成されていることを特徴とする請求項５に記載に切削インサート。
　前記第２の仮想平面（Ｂ）を基準として、該第２の仮想平面（Ｂ）から前記曲面付き側面部分（９、９ａ）の前記曲面までの距離を測定するとき、前記切れ刃（５、５ａ）から離れるにしたがい前記距離が変化することを特徴とする請求項１から６のいずれかに記載の切削インサート。
　前記曲面付き側面部分（９、９ａ）は、前記距離が、前記切れ刃（５、５ａ）側において大きく、前記切れ刃（５、５ａ）から離れるにしたがい小さくなるように、前記第２の仮想平面（Ｂ）に対して傾斜していることを特徴とする請求項７に記載の切削インサート。
　前記曲面付き側面部分（９、９ａ）は、前記距離が、前記第１の切れ刃（５ａ）側において小さく、前記第１の切れ刃（５ａ）から離れるにしたがい大きくなるように、前記第２の仮想平面（Ｂ）に対して傾斜していることを特徴とする請求項７に記載の切削インサート。
　前記第２の仮想平面（Ｂ）を基準として、該第２の仮想平面（Ｂ）からの距離を測定するとき、前記距離が、前記切削インサート（１）の前記第１の端面（２）と前記第２の端面（３）との距離の１０％以上、かつ４０％以下であることを特徴とする請求項１から９のいずれかに記載の切削インサート。
　前記第２の端面（３）と前記側面（４）との交差稜線にも、少なくとも１つの切れ刃（５）が形成されていることを特徴とする請求項１から１０のいずれかに記載の切削インサート。
　切削インサート（１）を着脱自在に装着する工具ボデー（２１）であって、
　前記切削インサート（１）と接触する底面（２２）と少なくとも１つの壁面（２３）とが設けられた少なくとも１つのインサート座を有し、
　前記少なくとも１つの壁面（２３）は、前記底面（２２）と内角で鋭角に交差する凹陥壁面部分（２４）を有することを特徴とする工具ボデー。
　請求項１から１１のいずれかに記載の前記切削インサート（１）を着脱自在に装着するための工具ボデー（２１）であり、
　前記凹陥壁面部分（２４）と接する平面を第４の仮想平面（Ｄ）とし、前記底面（２２）と接する平面を第５の仮想平面（Ｅ）とすると、前記第４の仮想平面（Ｄ）と前記第５の仮想平面（Ｅ）とは内角で鋭角に交差することを特徴とする請求項１２に記載の工具ボデー。
　前記凹陥壁面部分（２４）は、ふくらむ曲面を有することを特徴とする請求項１２または１３に記載の工具ボデー。
　前記曲面は、前記底面（２２）と略垂直な平面で切断した断面でみたとき、その断面がふくらむ曲線を含むものである請求項１４に記載の工具ボデー。
　前記曲線の曲率半径が１ｍｍ以上かつ５０ｍｍ以下であることを特徴とする請求項１５に記載の工具ボデー。
　前記曲面は、前記底面（２２）と略平行な平面で切断した断面でみたとき、その断面がふくらむ曲線を含むものであることを特徴とする請求項１２から１６のいずれかに記載の工具ボデー。
　前記凹陥壁面部分（２４）は、へこむ曲面であることを特徴とする請求項１２または１３に記載の工具ボデー。
　請求項１から１１のいずれかに記載の切削インサート（１）を備えることを特徴とする切削工具。
　請求項１２から１８のいずれかに記載の工具ボデー（２１）を備え、該工具ボデー（２１）に対し、前記切削インサート（１）は、前記曲面付き側面部分（９、９ａ）が前記凹陥壁面部分（２４）に当接した状態で装着されていることを特徴とする切削工具。