JP5743223B2 - 天然色素含有インクを用いた印刷装置 - Google Patents

天然色素含有インクを用いた印刷装置 Download PDF

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Description

本発明は、天然色素を高濃度含有するインク収容容器等を格納した印刷装置に関する。
個人情報や機密事項が記載された文書、明細書、光熱費明細書などはプライバシーやセキュリティの観点から、文書が不要となったあとは外部にその情報を漏らすことなく処分されることが望まれる。従来、これらの文書はシュレッダーなどを用いて小片にしてから破棄されていた。また、近年になって、印刷後に印刷部分を消去可能なインクが開発されてきている。
例えば、特許文献1、2においては、印刷後に印刷部分を加熱することにより文字などを消去することが可能なインクが開示されている。また、特許文献3、4においては、印刷後に印刷部分に対して摩擦を加えることにより文字などを消去することが可能なインクが開示されている。
一方、天然色素は光や酸素に触れると次第に退色する作用を有することが知られている。例えば、特許文献5においては、羅布麻抽出物を有効成分とする天然色素が退色することが開示されている。
特開平10−88046 特開2001−302954 特開2000−351922 特開2003−335095 特開2005−087147
従来技術においては、文字などを消去するために加熱したり、摩擦を加えたりするなど、特定の作業を行う必要があった。このような作業は、印刷部分を後々消去することが分かっている場合においては、特に無駄な作業となっていた。一方、天然色素を含有する従来のインクは退色作用を有するものの、含有される天然色素の濃度が薄く、そもそも明りょうに印刷することができないという問題点があった。さらに、従来技術においては天然色素の退色時間をコントロールするという観点が存在しなかった。
そこで、本願においては、天然色素とその溶剤に界面活性剤等を添加することで製造される天然色素を高濃度含有するインク収容容器又は天然色素を高濃度含有するトナーを格納した印刷装置を提案する。
本願の製造方法により製造される印刷装置は、格納されたインクやトナーが天然色素を高濃度含有しているため、退色作用を有しつつ、かつ明りょうに印刷することが可能である。また、本願の印刷方法は、天然色素の退色速度を調整することが可能であり、所望の期間が経過した後に消色することが可能になる。また、本願の印刷装置を用いることによって、天然色素の退色速度を適当に調整することが可能になる。
実施形態1のインク収容容器を製造する方法の一例を示す図 実施形態2の天然色素トナーを製造する方法の一例を示す図 実施形態3の印刷機器の具体的なハードウェア構成の一例を示す図 実施形態3の印刷機器の内部処理の一例を示す図 実施形態3の印刷機器の内部処理の他の例を示す図 酸化防止剤を添加した又は添加していない高濃度アスタキサンチン含有インクの退色変化を示す図 配合1のインクの2度打ちを行ったインクジェット用紙を撮影した写真 酸化促進剤含有透明インクの重ね打ちを行った場合と、行わなかった場合の暗所におけるβ−カロテン含有インクの退色速度を示す図 酸化促進剤含有透明インクの重ね打ちを行った場合と、行わなかった場合の蛍光灯下におけるβ−カロテン含有インクの退色速度を示す図 酸化促進剤含有透明インクの重ね打ちを行った場合と、行わなかった場合の暗所におけるβ−カロテン含有インクの退色速度を示す図 酸化促進剤含有透明インクの重ね打ちを行った場合と、行わなかった場合の蛍光灯下におけるβ−カロテン含有インクの退色速度を示す図 方法2のインクの2度打ちを行った用紙を撮影した写真 黒色インクをインクジェットプリンターによって着弾させた用紙を撮影した写真
以下、本件発明の実施の形態について説明する。
<<実施形態1>>
<概要>
本願のインク収容容器の製造方法は、天然色素とその溶剤に界面活性剤等を添加したインクをインク収容容器に格納することを特徴とする。本実施形態の製造方法により製造されるインク収容容器を備えた印刷装置は、インクが天然色素を高濃度含有しているため、退色作用を有しつつ、かつ、明りょうに印刷することが可能である。
<インクの成分>
本実施形態の製造方法により製造されるインク収容容器は、天然色素を高濃度含有するインクを格納するインク収容容器である。上述のように、本実施形態の製造方法の特徴は、天然色素とその溶剤に界面活性剤等を添加することにある。以下、本実施形態のインク収容容器の製造方法の詳細について説明する。
(インクの成分)
本実施形態のインクの製造方法において用いる主原料としては、「天然色素」、「天然色素の溶剤」、「界面活性剤等」が挙げられる。なお、インクの成分は、純水などを適量加えることによって、濃度調整及び印刷適性の調整が可能である。
「天然色素」としては、例えばカロテノイド系色素、フラボノイド系色素、アントシアニン系色素、メラニン系色素、インドール系色素などが考えられる。その他、ポルフィリン系色素、キノン系色素、アザフィロン系色素、ジケトン系色素、ベタシアニン系色素なども考えられる。
カロテノイド系色素としては、アスタキサンチン、クリプトキサンチン、フコキサンチン、ルテイン、リコペン、βカロチン、カプサンチン、クチナシ黄色素、ニンジンカロチン、パーム油カロチン、アナトー色素、デュナリエラカロチン、トマト色素、パプリカ色素などが挙げられる。
フラボノイド系色素としては、ベニバナ赤色素、ベニバナ黄色素、シタン色素、カロブ色素、スオウ色素、タマリンド色素、カカオ色素、タマネギ色素、カキ色素、カンゾウ色素、コウリャン色素などが挙げられる。
アントシアニン系色素としては、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、赤キャベツ色素、赤ダイコン色素、シソ色素、紫イモ色素、紫コーン色素、ハイビスカス色素、エルダーベリー色素、ボイセンベリー色素などが挙げられる。
その他、ポルフィリン系色素としては、スピルリナ色素、クロロフィリン、クロロフィルなどが挙げられる。また、キノン系色素としては、シコン色素、コチニール色素、アカネ色素、ラック色素などが挙げられる。また、アザフィロン系色素としては紅麹色素などが挙げられ、ジケトン系色素としてはウコン色素などが挙げられ、ベタシアニン系色素としては赤ビート色素などが挙げられる。また、インドール系色素としてはビオラセインなどが挙げられる。
「溶剤」としては、例えばアルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。これらは一種類単独で使用しても良いし、二種類以上併用して使用しても良い。
前記アルコール類系溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール、2プロパノール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3ブタンジオール、1,4ブタンジオール、3メチル1,ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、1,6ヘキサンジオール、1,2,4ブタンロリオール、1,2,3ブタントリオール、2メチル2,4ペンタジオール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2,6ヘキサントリオール、へトリオール等が挙げられる。
なお、グリセリンやエチレングリコールを含めることによってインクの保湿効果が高まる。例えば、これらの物質を含めることによって、インクジェットプリンターのヘッドノズルにおいてインクが乾燥して目詰まりしてしまうことなどを防ぐことができる。また、これらの物質の添加量を変化させることによって、インクジェットプリンター用インクとして正しくターゲットに着弾するようインクの粘度を調整することができる。
多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールイソブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。前記含窒素複素環化合物としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダソリジノン等が挙げられる。
アミド類としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。前記アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、等が挙げられる。その他の溶剤としては、アセトン等の溶剤の使用も可能である。
「界面活性剤等」としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(ツイン20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート(ツイン40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート(ツイン60)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(ツイン80)、ポリオキシエチレンソルビタントリオレアート(ツイン85)などが挙げられる。上記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルをインクの原料として用いることにより、他の乳化剤、界面活性剤よりも顕著に天然色素をインクに含有させることが可能であることが分かった。特に、実施例1にて示すように、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(ツイン20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート(ツイン40)を用いることで、天然色素の含有量を大幅に高めることが可能になる。
その他の「界面活性剤等」としては、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、等が挙げられる。前記陰イオン界面活性剤としては、例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、等が挙げられる。また、前記陽イオン界面活性剤としては、アミン塩型界面活性剤、第4級アンモニウム塩型界面活性剤、塩化メチルロザニリン、クオタニウム、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン、セチルピリジニウヌクロリド、ポリクオタニウム、等が挙げられる。また、前記両性界面活性剤としては、カルボン酸塩型界面活性剤、アミノ酸型界面活性剤、ベタイン型界面活性剤、等が挙げられる。また、前記非イオン型界面活性剤としては、エステル型界面活性剤、エーテル型界面活性剤、エステル・エーテル型界面活性剤、アルカノールアミド型界面活性剤、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルポリグルコシド、ステアラミド、等が挙げられる。
その他の「界面活性剤等」としては、さらに、乳化剤が挙げられる。前記乳化剤としては、例えば、(C30−38)コポリマー、PCAイソステアリン酸PEG−30水添ヒマシ油、PCAオレイン酸グリセリル、PEGオレイン酸グリセリル、PPGオレイン酸グリセリル、イソステアラミド、イソステアリルグリセリル、エルカ酸グリセリル、オキシエチレンベヘニルアルコール、オクチルドデセス、カチオン化オクチルドデセス、牛脂肪酸グリセリル、カンタリスチンキ、グリセリルウンデシルジメチコン、コハク酸PEG−50水添ヒマシ油、酢酸PEG−6ジメチコン、酢酸グリセリル、酢酸モノステアリン酸グリセリル、ジオレイン酸PEGグリセリル、ジ酢酸ステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸PEGグリセリル、脂肪酸グリコール、水酸化レシチン、水添ココグリセリル、水添レシチン、ステアリン酸PEGステアラミド、ステアリン酸グリコール、ステアリン酸グリセリル、ツバキ油脂肪酸PEG、トコフェリルリン酸ナトリウム、トリイソステアリン酸PEG、トリステアリン酸PEG、乳酸脂肪酸グリセリル、ヒドロキシステアリン酸グリセリル、フタル酸ステアリルアミドナトリウム、ヘキサエルカ酸スクロース、ポリソルベート、ヤシ脂肪酸ソルビタン、ラウリルリン酸、ラノリン脂肪酸PEG、リシノレイン酸グリセリル、リン酸ミリスチル、等が挙げられる。
<高濃度の天然色素を含有するインクを格納したインク収容容器の製造方法>
(従来のインクの製造方法)
一般的にインクジェット用インクは主に染料又は顔料とアルコール類と水からなる。また、一般的なインクの製造方法では、染料又は顔料をアルコール類に溶解し、さらに水と混合している。本発明者は、天然色素は疎水性であるため、水溶性のアルコール類やアセトン等の水溶性有機溶剤に溶解し、インク化を試みた。しかしながら、天然色素は少量しか溶解せず、濃度は低いままであった。このため、インクヘッドより吐出しても、ほとんど色が目視できない状況であった。
一方、天然色素はクロロホルムに容易に溶解するため、クロロホルムに天然色素を溶解させた液と水等を混合しインク化を試みた。この場合、インクを格納したカートリッジを強く攪拌した後に印刷すると印字は可能であったが、モットリングが発生し、正しくベタ印字できない状況であった。また、このインクを3〜4分間放置すると天然色素を溶解しているクロロホルム層と水層に分離してしまった。さらに、クロロホルムは毒性が高く、樹脂の溶解性も高いため、インクヘッド内の接着剤が溶解し、ヘッド自体が破損してしまうおそれがあった。このように、通常の製造方法にてインクを製造すると、様々な問題が発生した。
そこで、本発明者は、界面活性剤は同一分子に親水基と疎水基があり,カロチノイドのような疎水性分子を囲み,水と接触する面に親水基を向けたミセルを形成することで,水中での疎水性分子の分散性を高めることに着目した。色素分子の分散性を高めることで,色の強さである色度が増し,溶液に近い状態となる。
具体的には、一旦クロロホルムに色素を溶解し、水溶性有機溶媒であるイソプロピルアルコールと界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートを添加する。通常、イソプロピルアルコールには極少しか溶解しない色素を高濃度で溶解しているクロロホルムと混ぜ、クロロホルム、イソプロピルアルコール間で液液抽出することで、非水溶性色素がイソプロピルアルコールに溶け込みやすくなる。界面活性剤を添加するのは、上記界面活性剤の働きによって、より高濃度抽出化するためである。そして、非水溶性色素が溶解した溶液からクロロホルムを除去する。これによって、クロロホルムによってインクヘッド内の接着剤が溶解し、ヘッド自体が破損してしまうことを防止できる。
本発明者は、界面活性剤の種類,濃度などを検討した結果,界面活性剤等を適切に選択し、以下に述べる手順を踏むことによって、天然色素を高濃度で含有させることに成功した。以下、天然色素を高濃度含有させることが可能なインクを格納したインク収容容器の製造方法について具体的に説明する。
(インク収容容器の製造方法)
図1は、本実施形態の天然色素を高濃度含有するインクを製造する方法の一例を示す図である。ます、ステップS0101において、天然色素(例えば、アスタキサンチン)と非極性溶媒又は疎水性溶媒を混ぜ合わせる(天然色素混合ステップ)。次に、ステップS0102において、天然色素混合ステップにて得られた溶液に天然色素の溶剤(例えば、イソプロピルアルコール)を混ぜ合わせる(溶剤混合ステップ)。次に、ステップS0103において、溶剤混合ステップにて得られた溶液に界面活性剤等(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート)を混ぜ合わせる(界面活性剤等混合ステップ)。ここで、混ぜ合わせのための撹拌は半日〜3日程度行うことが好ましい。次に、ステップS0104において、界面活性剤等混合ステップにて得られた溶液から天然色素混合ステップにて混ぜ合わされた溶媒を除去する(溶媒除去ステップ)。ここで、溶媒の除去は、例えばロータリーエバポレーターを利用して行う。次に、ステップS0105において、溶媒除去ステップにて得られた溶液に純水を混ぜ合わせる(純水混合ステップ)。ここで、水の他にインクの保湿性を高めるためのグリセリンなどを添加してもよい。また、混ぜ合わせのための撹拌は1〜5時間程度行うことが好ましい。以上のプロセスを経ることにより、天然色素を高濃度含有するインクを製造することにより、インクに高濃度の天然色素を含有させることが可能になる。そして、ステップS0106において、得られたインクをインク収容容器に格納する(格納ステップ)。
上記において、インクの配合量として、天然色素(例えば、アスタキサンチン)と非極性溶媒又は疎水性溶媒からなる溶液(0.1mg/ml〜0.5mg/ml)は全体量(ml)の10〜15%、溶剤(例えば、イソプロピルアルコール)は15〜25%、界面活性剤等(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート)は1〜10%、純水など(グリセリンなどを含める)は60〜70%程度とすることが、インクに天然色素を高濃度で含有させるのに適当である。
<<実施形態2>>
<概要>
本願の天然色素トナーの製造方法は、天然色素を微粉末化することを特徴とする。本実施形態の製造方法により製造されるトナーは、天然色素を高濃度含有しているため、退色作用を有しつつ、かつ、明りょうに印刷することが可能である。
<トナーの成分>
以下、本実施形態の天然色素トナーの製造方法の詳細について説明する。
(天然色素トナーの成分)
本実施形態の天然色素トナーの製造方法において用いる主原料としては、「天然色素」、「トナーバインダー」、「ワックス」、「電荷制御剤」、「流動化剤」、が挙げられる。
なお、トナーの成分は、トナーバインダーなどを適量加えることによって、濃度調整される。
「天然色素」としては、具体的には、カロチノイド系色素、フラボノイド系色素、プテリジン系色素、メラニン系色素、インドール系色素、キノン系色素、ポルフィリン系色素、等が考えられる。あるいは、これらを複数種混合して用いることも可能である。
「トナーバインダー」としては、具体的には、スチレンン/アクリル共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、等が考えられる。あるいは、これらを複数種混合して用いることも可能である。
「ワックス」としては、具体的には、カルナバワックス、パラフィンワックス、PEワックス、PPワックス、固体酸エステルワックス、等が考えられる。あるいは、これらを複数種混合して用いることも可能である。
「電荷制御剤」としては、具体的には、クロム錯体系、鉄錯体系、ホウ酸錯体系、亜鉛錯体系等の負帯電型CCA、及び、ニグロシン系、トリフェニルメタン系、第四級アンモニウム系等の静電型CCAが挙げられる。あるいは、これらを複数種混合して用いることも可能である。
「流動化剤」としては、具体的には、フュームドシリカ等が考えられる。
(天然色素トナーの製造方法)
図2は、本実施形態の天然色素トナーを製造する方法の一例を示す図である。まず、ステップS0201において、天然色素を微粉末化する(微粉末化ステップ)。そして、ステップS0202において、微粉末化された天然色素を含むトナーを製造する(トナー製造ステップ)。具体的なトナーの製造手順の一例としては、微粉末化された天然色素と他の材料とを押出機等を用いて混練し、混練して得られた混合物を粉砕することによって行われる、といった具合である。製造されたトナー粒子は、天然色素の他に、トナーバインダー、ワックス、荷電制御剤、表面処理剤、等を含有する直径5μm程度の粒子であることが望ましい。
<<実施形態3>>
<概要>
本実施形態の印刷方法は、天然色素を高濃度含有するインクに対して印刷時に酸化促進剤を添加することで天然色素の退色速度を調整することを特徴とする。当該印刷方法により、所望の期間が経過した後に、印刷記載をほぼ無色透明にすることができ、印刷記載の表示期間を適切に調整することが可能になる。
天然色素を高濃度含有するインクに対して印刷時に酸化促進剤を添加する手段としては、天然色素を高濃度含有するインクを格納する第一インク収容容器と酸化促進剤を含有する透明インクを格納する第二インク収容容器をインクジェットプリンターにそれぞれ設け、各インク収容容器からの吐出量を制御してターゲットに正しく着弾することが考えられる。
天然色素を高濃度含有するインクに対する酸化促進剤の添加量は、例えばプリンタヘッドを制御することにより調整することが可能である。なお、プリンタヘッドの方式としては、ピエゾ型やサーマル型など種々の方式が考えられるが、ピエゾ型を用いることが好ましい。また、プリンタヘッドは、天然色素用と酸化促進剤用とをそれぞれ設ける構成が好ましい。
添加する「酸化促進剤」としては、過酸化ベンゾイル(BPO)のような有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物が挙げられる。これらの酸化促進剤を天然色素に添加すると、活性酸素・フリーラジカル反応により天然色素の構造が変化し、より短期間で天然色素を退色させることが可能である。また、酸化促進剤は一種類である必要はなく、複数組み合わせて用いることが考えられる。例えば、光開始剤として過酸化ベンゾイル(BPO)、熱開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を組み合わせることにより、紫外線の量や温度環境に応じて、退色速度の促進量を調整することが可能である。
酸化促進剤の添加量は、目的とする退色速度の促進量や、インクによる印刷物などが置かれることになる周囲環境の条件などによって適宜調整する。例えば、退色速度の促進量を大きくしたい場合は多めの酸化促進剤を加え、紫外線強度が強い環境に印刷物が置かれることが想定される場合(例えば、屋外に印刷物などが配置される場合など)は、紫外線強度が弱い環境に比べて酸化促進剤の添加量を少なくすることが考えられる。これらの具体的な添加量は、以下に述べる実施例2の結果などに基づいて決定することが可能である。
また、酸化促進剤を含有する透明インクを別途作成し、印刷時において当該透明インクを所定量添加することも考えられる。酸化促進剤を含有する透明インクは、例えば過酸化ベンゾイル0.01〜5mgをアセトニトリル1〜2mlに溶解させ、エチレングリコール0.5〜1ml、グリセリン0.05〜0.3ml、イソプロピルアルコール1〜2ml、純水15〜30mlを添加することにより作成される。
また、天然色素を高濃度含有するインクが印刷時よりも前に退色してしまうことを抑制するために、あらかじめインクに酸化防止剤を添加しておくことも可能である。「酸化防止剤」としては、ポリフェノール等の抗酸化物質を用いることが考えられる。より具体的には、L−アスコルビン酸などのアスコルビン酸類、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステルなどのアスコルビン酸エステル類、エリソルビン酸やエリソルビン酸ナトリウムなどのエリソルビン酸類、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩類、α−トコフェロールなどのトコフェロール類、没食子酸、有機酸、二酸化硫黄、クロロゲン酸、カテキン、メタ亜硫酸カリウムなどを用いることが考えられる。なお、酸化防止剤は一種類である必要はなく、複数組み合わせて用いることが考えられる。また、天然色素の退色作用を抑制したい程度に応じて、酸化防止剤の添加量を調整したり、複数の酸化防止剤を使い分けたりすることが考えられる。具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、オクチル系、ケイ皮酸類、パラアミノ安息香酸系、サリチル酸誘導体、及びこれらの混合物を紫外線吸収剤として用いることが考えられる。
さらに、インクの保存時において酸化反応が開始しないように、適当な素材・形状のインク収納物を用いたり、保存環境を整えたりすることが好ましい。例えば、光開始剤を用いる場合は紫外線などを通さない素材とし、熱開始剤を用いる場合は所定温度以下の環境にて保存しておくことが考えられる。
(インクジェットプリンターの具体的な構成・処理)
本実施形態の印刷方法を実現するインクジェットプリンターは、例えば図3に示すようなハードウェア構成を有することが考えられる。この図の例では、印刷機器は、「CPU」0301と、「RAM」0302と、「ROM」0303と、「第一インクカートリッジ」0304Aと、「第二インクカートリッジ」0304Bと、「第一カートリッジヘッド」0305A、「第二カートリッジヘッド」0305Bと、「ヘッド駆動部」0306と、「通信機器」0307と、「通信インターフェイス」0308と、「入力機器」0309と、「入力インターフェイス」0310と、から構成される。これらの構成は、「システムバス」0311のデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。また、「第一インクカートリッジ」には、天然色素を高濃度含有するインクが酸化防止剤とともに格納されている。また、「第二インクカートリッジ」には酸化促進剤を含有する透明インクが格納されている。
インクジェットプリンターの内部処理として、図4に示す処理を行うことが一例として考えられる。まずステップS0401において、印刷表示の希望表示期間を受け付ける。当該希望表示期間は、入力機器や通信機器を介して受け付けてもよいし、内部のプログラムによって決定されてもよい。
次にステップS0402において、ROMに保持される酸化促進剤の退色速度の平均的促進量を示す値と天然色素の平均的退色速度を示す値をRAMの所定のアドレスに格納する。酸化促進剤の退色速度の平均的促進量や天然色素の平均的退色速度は、種類や配合率と関連付けてそれぞれテーブル形式で保持しておくことが考えられる。
次にステップS0403において、CPUは酸化促進剤の退色速度の平均的促進量と天然色素の平均的退色速度に基づいて、希望表示期間を達成するための配合率を算出する処理を行う。
次にステップS0404において、CPUは算出された配合率に基づいて各インクカートリッジからインクカートリッジヘッドを介して所定の個所に適量噴射するようヘッド駆動部を制御する処理を行う。
なお、上記処理の他に、紫外線の量をセンサーで検出し、紫外線の量に応じて酸化促進剤と天然色素の配合率を調整する処理を行うことも可能である。また、印刷面に酸素や紫外線を除去するための膜を形成する処理を行うことも可能である。さらに、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、オクチル系、ケイ皮酸類、パラアミノ安息香酸系、サリチル酸誘導体、及びこれらの混合物を紫外線吸収剤として添加することも可能である。
<他の印刷方法の例>
上記の印刷方法は、天然色素を高濃度含有するインクに対して印刷時に酸化促進剤を添加する方法であるが、印刷時に酸化防止剤をさらに添加することによって、天然色素の退色速度を調整することも可能である。
印刷時に酸化防止剤をさらに添加する手段としては、上記で説明した第一インクカートリッジ、第二インクカートリッジの他に、酸化防止剤を含有する透明インクを格納する第三インクカートリッジをインクジェットプリンターにさらに設け、各インクカートリッジからの吐出量を制御してターゲットに正しく着弾することが考えられる。天然色素に対する酸化促進剤、酸化防止剤の添加量は、例えばプリンタヘッドを制御することにより調整することが可能である。また、インクカートリッジヘッドは、天然色素用と、酸化促進剤用と、酸化防止剤用とをそれぞれ設ける構成が好ましい。なお、天然色素含有インクなどの種類が複数ある場合は、それぞれに対応してインクカートリッジやインクカートリッジヘッドを複数設けることも可能である。
第三インクカートリッジをさらに備えるインクジェットプリンターの内部処理として、図5に示す一連の処理が一例として考えられる。まずステップS0501において、印刷表示の希望表示期間を受け付ける。当該希望表示期間は、入力機器や通信機器を介して受け付けてもよいし、内部のプログラムによって決定してもよい。
次にステップS0502において、ROMに保持される酸化促進剤の退色速度の平均的促進量を示す値と、酸化防止剤の退色速度の平均的抑制量を示す値と、天然色素の平均的退色速度を示す値をRAMの所定のアドレスに格納する。酸化促進剤の退色速度の平均的促進量、酸化防止剤の退色速度の平均的抑制量、天然色素の平均的退色速度は、種類や添加量(配合率も含む)と関連付けてそれぞれテーブル形式で保持しておくことが考えられる。
次にステップS0503において、CPUは酸化促進剤の退色速度の平均的促進量と、酸化防止剤の退色速度の平均的抑制量と、天然色素の平均的退色速度に基づいて、希望表示期間を達成するための配合率を算出する処理を行う。
次にステップS0504において、CPUは算出された配合率に基づいて各インクカートリッジからインクカートリッジヘッドを介して酸化促進剤と酸化防止剤と天然色素を適量噴射するようヘッド駆動部を制御する処理を行う。
なお、上記処理の他に、紫外線の量をセンサーで検出し、紫外線の量に応じて酸化促進剤と酸化防止剤と天然色素の配合率を調整する処理を行うことも可能である。また、印刷面に酸素や紫外線を除去するための膜を形成する処理を行うことも可能である。
(印刷機器以外の印刷方法)
ここで、印刷方法としては、印刷機器を利用して印刷する方法の他に手動噴射器(スプレー)などを利用して印刷する方法も可能である。この場合は、酸化促進剤や酸化防止剤を噴射する回数や噴射器の噴射口径などを調整することにより、酸化促進剤や酸化防止剤の添加量を適宜調節することが可能である。
(アスタキサンチンを高濃度含有するインクを格納したインクカートリッジの製造方法)
本実施例のインクカートリッジを製造する方法を示す。ます、アスタキサンチンと非極性溶媒又は疎水性溶媒を混ぜ合わせる(天然色素混合ステップ)。次に、天然色素混合ステップにて得られた溶液にイソプロピルアルコールを混ぜ合わせる(界面活性剤等混合ステップ)。次に、溶剤混合ステップにて得られた溶液にポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート又はポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタートを混ぜ合わせる(脂肪酸エステル混合サブステップ)。ここで、混ぜ合わせのための撹拌は半日〜1日程度行う。次に、脂肪酸エステル混合ステップにて得られた溶液からロータリーエバポレーターを利用してクロロホルムを除去する(溶媒除去ステップ)。次に、溶媒除去ステップにて得られた溶液に純水とグリセリンを混ぜ合わせる(純水混合ステップ)。ここで、混ぜ合わせのための撹拌は1〜3時間程度行う。そして、得られたインクをインクカートリッジに格納する(格納ステップ)。
(配合1のインク)
表1は、本実施例のインクの配合量の一例を示している(配合1)。配当1のインクの配合量は、アスタキサンチンとクロロホルムからなるアスタキサンチン溶液(0.1mg/ml)は全体量(ml)の12%、イソプロピルアルコールは20%、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタートは5%、グリセリンは10%、純水は53%程度とした。
Figure 0005743223
(配合1の着弾テスト)
実際に配合1のインクをインクジェットプリンター(EPSON PM780C)のインクカートリッジに注ぎ、着弾テストを行った。配合1のインクをインクジェット用紙に対して1度打ちを行った場合、ろ紙との色差ΔEを色度計(X−Rite520)で測定したところ、ΔE=6.9であった。また、2度打ち(重ね打ち)を行った場合、ΔE=10.2であった。
(配合2のインク)
なお、配合1のインクではポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタートを用いたが、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートでも同様の結果を得ることができる。配合2のインクの配合量は、アスタキサンチンとクロロホルムからなるアスタキサンチン溶液(0.1mg/ml)は全体量(ml)の12%、イソプロピルアルコールは20%、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートは2%、グリセリンは10%、純水は53%程度とした。
(配合2の着弾テスト)
配合1のインクの着弾テストと同様に配合2のインクの着弾テストを行った。配合2のインクをインクジェット用紙に対して1度打ちを行った場合、ろ紙との色差ΔEを色度計(X−Rite520)で測定したところ、ΔE=7.9であった。また、2度打ち(重ね打ち)を行った場合、ΔE=11.9であった。
(まとめ)
以上より、本実施例のアスタキサンチン含有インクは、従来のインクより高濃度のアスタキサンチンを含有することが可能であることが分かった。また、インクジェットプリンターをもちいて、アスタキサンチン色素をターゲットに正しく着弾することが可能である事が分かった。
<酸化促進剤含有透明インクによる退色速度の調整>
高濃度アスタキサンチンインクと酸化促進剤含有透明インクを用いて、アスタキサンチンの退色速度が制御可能であるか確認した。
高濃度アスタキサンチンインクとしては、実施例1の配合1のインクを用いた。また、酸化促進剤含有インクは、イソプロピルアルコールとエチレングリコール、グリセリン、純水が体積比で6:1:1:12程度となるように配合し、その後に過酸化ベンゾイルを添加し、過酸化ベンゾイルの濃度が10mg/ml程度となるように調整して作成した。
図6は、インクジェットプリンター(EPSON PM780C)によって高濃度アスタキサンチンインクのみを着弾した場合と、酸化促進剤透明インクを高濃度アスタキサンチンインクの25%吐出した場合と、酸化促進剤透明インクを高濃度アスタキサンチンインクの50%吐出した場合と、酸化促進剤透明インクを高濃度アスタキサンチンインクの100%吐出した場合の、退色変化を示した図である。この図からわかるように、酸化促進剤透明インクの噴霧量%をコントロールすることで、退色速度をコントロールすることが可能である。
(まとめ)
本実施例の結果から、アスタキサンチンを高濃度含有するインクのみを着弾した場合と、さらに酸化促進剤含有透明インクを合わせて着弾した場合とでは退色率が大きく異なる事が分かる。また、酸化促進剤含有透明インクの吐出量をコントロールすることで、退色速度をコントロールすることが可能であることが分かる。
<天然色素を用いたトナーの消色印刷方法とトナー化について>
カロチノイド系色素を微粉末化するために、色素をクロロホルム等の溶解性の強い溶媒に十分に溶解する。溶媒としては、インドール系色素であればエタノール等のアルコール系溶媒が好ましい。溶解後、色素溶液をビュッヒ製ナノスプレードライヤーB−90にて直径1μm以下に微粉末化する。なお、微粉末化に当たっては、他社のスプレードライヤーを使用することも可能である。
<プリンター用トナーの配合例>
本実施例の天然色素を用いたトナーの配合量は、トナーバインダーが85%、微粉末化した色素が10%、ワックスが2%、電荷制御剤が2%、流動化剤が1%程度となるようにした。なお、配合の際には、各材料をどのような順番で混ぜ合わせても良い。
<退色速度の制御>
本実施例のトナーを用いて印刷した印刷物の退色速度を制御するためには、他のカートリッジに透明消色促進剤含有トナー及び透明消色抑制剤含有トナーを格納することが考えられる。また、これらのカートリッジを複数設け、複数のカートリッジの組合せによって退色速度を制御することも可能である。
(β−カロテンを高濃度含有するインクを格納したインク収容容器の製造方法)
本実施例のβ−カロテンを高濃度含有するインクを格納したインク収容容器を製造する方法を示す。まず、β−カロテンとクロロホルムを混ぜ合わせる(天然色素混合ステップ)。次に、天然色素混合ステップにて得られた溶液にイソプロピルアルコールを混ぜ合わせる(溶剤混合ステップ)。次に、溶剤混合ステップにて得られた溶液にポリオキシエチレンソルビタンモノウラートを混ぜ合わせる(界面活性剤等混合ステップ)。ここで、混ぜ合わせのための攪拌を行う。次に、界面活性剤等混合ステップにて得られた溶液からロータリーエバポレーターを利用してクロロホルムを除去する(溶媒除去ステップ)。次に、溶媒除去ステップにて得られた溶液に純水とグリセリンを混ぜ合わせる(純水混合ステップ)。ここで、混ぜ合わせのための攪拌は1〜3時間程度行う。そして、得られたインクをインク収容容器に格納する(格納ステップ)。
(配合1のインク)
配合1のインクの配合量は、β−カロテンとクロロホルムからなるβ−カロテン溶液(1.0mg/ml)は全体量(ml)の12%、イソプロピルアルコールは30%、ポリオキシエチレンソルビタンモノウラートは10%、グリセリンは5%、純水は43%程度とした。
(配合1の着弾テスト)
実際に配合1のインクをインクジェットプリンター(EPSON PX−V630)のインクカートリッジに注ぎ、着弾テストを行った。配合1のインクをインクジェット用紙に対して1度打ちを行った場合、ろ紙との色差ΔEを色度計(X−Rite520)で測定したところ、ΔE=4.2であった。また、2度打ちを行った場合、ΔE=7.7であった。図7は、2度打ちを行ったインクジェット用紙を撮影した写真である。
(配合2、3のインク)
配合2のインクの配合量は、β−カロテンとクロロホルムからなるβ−カロテン溶液(1.0mg/ml)は全体量(ml)の12%、イソプロピルアルコールは30%、ポリオキシエチレンソルビタンモノウラートは15%、グリセリンは2%、純水は51%程度とした。また、配合3のインクの配合量は、β−カロテンとクロロホルムからなるβ−カロテン溶液(1.0mg/ml)は全体量(ml)の12%、イソプロピルアルコールは30%、ポリオキシエチレンソルビタンモノウラートは5%、グリセリンは10%、純水は53%程度とした。
(配合2、3の印字テスト)
実際に配合2、3のインクを用いてサーマルヘッドプリンター(CANON MP500)による印字テストを行ったところ、吐出率が低く、5度打ちで通常のインクと同等の濃度となった。配合2のインクの5度打ちを行った場合、ろ紙との色差ΔEを色度計(X−Rite520)で測定したところ、ΔE=9.5であった。また、配合3のインクの5度打ちを行った場合、ΔE=3.3であった。
(プリンターを用いた酸化促進剤含有透明インクによる退色速度の調整)
実際にβ−カロテン含有インクと酸化促進剤含有透明インクとをカートリッジに充填し、インクジェットプリンターでも退色速度が制御可能であるか確認した。β−カロテン含有インクとしては、実施例4の配合1のインクを用いた。また、酸化促進剤含有透明インクの配合量は、過酸化ベンゾイル(20mg/ml)は全体量(ml)の10.5%、イソプロピルアルコールは30%、グリセリンは5%、エチレングリコールは5%、純水は43%程度とした。
図8に、酸化促進剤含有透明インクの重ね打ちを行った場合(A)と、行わなかった場合(B)の暗所におけるβ−カロテン含有インクの退色速度を示す。また、図9に、酸化促進剤含有透明インクの重ね打ちを行った場合(A)と、行わなかった場合(B)の蛍光灯下におけるβ−カロテン含有インクの退色速度を示す。これらの結果から、明るさにかかわらず、酸化促進剤含有透明インクの重ね打ちによってβ−カロテン含有インクの退色が促進されることが確認された。
また、過酸化ベンゾイルを過酸化水素に代えて、同様の実験を行った。酸化促進剤含有透明インクの配合料は、過酸化水素は全体量の10%、イソプロピルアルコールは30%、グリセリンは5%、エチレングリコールは5%、純水は50%程度とした。
図10に、酸化促進剤含有透明インクの重ね打ちを行った場合(A)と、行わなかった場合(B)の暗所におけるβ−カロテン含有インクの退色速度をそれぞれ示す。また、図11に、酸化促進剤含有透明インクの重ね打ちを行った場合(A)と、行わなかった場合(B)の蛍光灯下におけるβ−カロテン含有インクの退色速度をそれぞれ示す。これらの結果から、過酸化ベンゾイルに代えて過酸化水素を用いた場合であっても、酸化促進剤含有透明インクの重ね打ちによってβ−カロテン含有インクの退色が促進されることが確認された。
(ビオラセイン含有青色インクを格納したインク収容容器の製造方法)
本実施例のビオラセイン含有青色インクを格納したインク収容容器を製造する方法を示す。
(菌の培養)
天然の青色色素であるビオラセインを抽出するためにChromobacter violaceumなどのビオラセイン生産菌を培養する。まず、普通ブイヨン:1.8g、寒天:1.5g、純水:100mlの条件にて1日間前培養を行う。次に、ポリペプトン:2.0g、KHPO:0.15g、MgSO・7HO:0.15g、グリセリン:1ml、純水:100mlの条件にて、キングB培地(pH7.2±0.2)に上記の菌を接種し,25〜37℃で2日間、振とう培養を行う。
(ビオラセインの抽出)
培養した菌を、回転数:20、遠心力:8000×g、温度:4℃の条件にて、遠心分離機を用いて分離を行う。分離後、上澄みを取り除き、沈殿物にエタノール10mlを加え、1日間エタノール抽出を行う。
(方法1によるインクの製造)
ビオラセインを抽出した培養液を用いて、以下の手順でインクの製造を行う(方法1)。7.4mlの培養液に1.06gのポリオキシエチレンソルビタンモノウラートを添加する。12〜24時間攪拌を行い、攪拌後、10gのグリセリンと10.5mlの純水を添加する。再び1〜3時間攪拌を行い、得られた溶液を、0.2μmシリンジフィルターにてろ過する。
(方法1のインクの吐出テスト)
方法1によって製造したインクをカートリッジに充填し、インクジェットプリンター(EPSON PX−V630)を用いて吐出テストを行ったところ、ノズル欠けがひどく、50%印字にとどまった。
(方法2によるインクの製造)
ビオラセインを抽出した培養液を用いて、以下の手順でインクの製造を行う(方法2)。
18mlの培養液に2mlのエチレングリコールを添加する。1〜2時間攪拌を行い、攪拌後、0.2μmシリンジフィルターにてろ過する。
(方法2のインクの吐出テスト)
方法2によって製造したインクをカートリッジに充填し、インクジェットプリンター(EPSON PX−V630)を用いて吐出テストを行ったところ、1度打ちを行った場合の色差ΔEを色度計(X−Rite520)で測定したところ、ΔE=4.6であった。また、2度打ちを行った場合の色差ΔE=5.6であった。図12は、2度打ちを行った用紙を撮影した写真である。
(方法3によるインクの製造)
ビオラセインを抽出した培養液を用いて、以下の手順でインクの製造を行う(方法3)。培養液を、0.2μmシリンジフィルターにてろ過する。
(方法3のインクの吐出テスト)
方法3によって製造したインクをカートリッジに充填し、インクジェットプリンター(EPSON PX−V630)を用いて吐出テストを行ったところ、未吐出に終わった。
(まとめ)
ビオラセインを抽出した培養液を用いて、方法2によって製造したインクは、インクジェットプリンターによる吐出及び着弾が正常に行われることが確認された。
(黒色インクを格納したインク収容容器の製造方法の製造方法)
マゼンタインク、イエローインク、シアンインクの混合により黒色インクを製造する方法を示す。具体的には、エタノール、エチレングリコール、及びクロロホルムが体積比で9:1:2.5程度となるように配合した溶媒に、マゼンタインクとしてリコペン色素を、イエローインクとしてβ−カロテン色素を、シアンインクとしてビオラセイン色素を、体積比で1:1:8程度となるように溶解する。
(インクジェットプリンターによる印字と色度の測定)
図13は、作製した黒色インクをインクジェットプリンターによって着弾させた用紙を撮影した写真である。図13に示すとおり、多少のノズル欠けは見られるもののほぼ均一な着弾が可能であることが確認された。着弾部分の色度を測色計で測定したところ、L*91.0、a*1.7、b*−5.7であり、用紙との色差ΔE=3.0であった。
なお、インクジェットプリンターにおいては一般に、ヘッドにかかる電圧、周波数、温度調整によりインクの吐出と飛翔が制御される。上記各実施例にて用いたインクジェットプリンターを使用することによって、インクの配合比率による粘度調整のみによってインクの吐出と飛翔が正しく行われることが確認された。UVインクやより高濃度化したインクを用いる際には、ヘッドにかかる電圧、周波数、温度調整により、インクの吐出と飛翔をより正確に調整することも可能である。
0301…CPU、0302…RAM、0303…ROM、0304A…第一インクカートリッジ、0304B…第二インクカートリッジ、0305A…第一カートリッジヘッド、0305B…第二カートリッジヘッド、0306…ヘッド駆動部、0307…通信機器、0308…通信インターフェイス、0309…入力機器、0310…入力インターフェイス、0311…システムバス

Claims (5)

  1. 天然色素とクロロホルムを混ぜ合わせる天然色素混合ステップと、
    天然色素混合ステップにて得られた溶液に天然色素の溶剤を混ぜ合わせる溶剤混合ステップと、
    溶剤混合ステップにて得られた溶液にポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート又はポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートを混ぜ合わせる界面活性剤等混合ステップと、
    界面活性剤等混合ステップにて得られた溶液から天然色素混合ステップにて混ぜ合わされたクロロホルムを除去する溶媒除去ステップと、
    溶媒除去ステップにて得られた溶液に純水を混ぜ合わせる純水混合ステップと、
    純水混合ステップにて純水を混ぜ合わせた溶液からなり、
    前記天然色素はアスタキサンチンである、
    天然色素を含有するインクジェットプリンター用退色性インクをインク収容容器に格納する格納ステップと、を有するインク収容容器の製造方法。
  2. 前記天然色素の溶剤は、極性溶媒又は親水性溶媒を含有する請求項1に記載のインク収容容器の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載のインク収納容器の製造方法により製造されたインク収容容器を搭載した印刷装置。
  4. 請求項1又は2に記載のインク収納容器の製造方法により製造されたインク収容容器から吐出されたインクに対して印刷時に酸化促進剤又は酸化抑制剤を添加することで天然色素の退色速度を調整する印刷方法。
  5. 前記格納ステップは、格納されていたインクが空になったインク収容容器の一部を開けて再度インクを格納するリサイクル格納サブステップを含む請求項1から4のいずれか一に記載のインク収容容器の製造方法。
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