JP5739959B2 - 細胞分析装置及び細胞分析方法 - Google Patents

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Description

本発明は細胞分析装置及び細胞分析方法に関する。
測定対象となる細胞を含む測定試料にレーザ光を照射し、その測定試料からの散乱光や蛍光を利用して各細胞の大きさや形状を測定するフローサイトメトリー法が知られている(例えば、特許文献1参照)。このフローサイトメトリー法では、測定対象となる細胞を含む測定試料をシース液で包んでシースフローセル内で細く絞り込み、細胞を一列に整列させて通過させている。これにより、複数の細胞が同時にシースフローセルにおける検出領域を通過するのを抑制している。
しかしながら、細胞は測定試料中において凝集することがあり、凝集細胞(複数の細胞が凝集したもの)が発生すると、測定試料中の各細胞の大きさや形状などの情報を正確に得ることが困難となる。
そこで、特許文献1に記載の分析装置においては、レーザ光が照射された測定試料からの前方散乱光を検出し、得られた前方散乱光の信号波形の差分積分値と、その信号波形のピーク値との比を用いることにより、信号波形に谷が存在するか否かを判断し、凝集細胞と非凝集細胞(複数の細胞が凝集せず、単一の細胞として存在しているもの)とを弁別している。
国際公開第2006/103920号公報
しかしながら、細胞の凝集状態や細胞の流れる方向などによって、細胞から検出される前方散乱光の信号波形の高さは変化するため、前方散乱光の信号波形においては、そのピークと谷の部分が明瞭にならないことがある。したがって、特許文献1に記載の分析装置においては、凝集細胞と非凝集細胞とを弁別する精度の向上には限界がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、凝集細胞と非凝集細胞とを高精度に弁別し、正確に異常細胞を分類することができる細胞分析装置及び細胞分析方法を提供することを目的としている。
この発明の第1の局面による細胞分析装置は、生体試料と細胞中の核を染色する色素とから得られる測定試料をフローセルに流し、当該フローセルを流れる測定試料にレーザ光を照射して、当該測定試料に含まれる各細胞からの蛍光を検出する検出部、この検出部から出力された各細胞の蛍光信号に基づき、蛍光信号波形の差分積分値(DIV)と、蛍光信号波形のピーク値(PEAK)と、蛍光信号波形のパルス面積を取得する信号処理部、及び、蛍光信号波形の差分積分値(DIV)と、蛍光信号波形のピーク値(PEAK)とに基づいて、複数の細胞が凝集した凝集細胞と、細胞が凝集していない単一の細胞(非凝集細胞)とを判別し、非凝集細胞の蛍光信号波形のパルス面積を第1閾値と比較することにより、測定試料に含まれる細胞から異常細胞を分類する分析部、を備えることを特徴とする。
また、この発明の第2の局面による細胞分析方法は、生体試料と細胞中の核を染色する色素とを混合して測定試料を調製する工程、調製された測定試料をフローセルに流し、当該フローセルを流れる測定試料にレーザ光を照射して、当該測定試料に含まれる各細胞からの蛍光を検出する工程、各細胞の蛍光信号に基づき、蛍光信号波形の差分積分値(DIV)と、蛍光信号波形のピーク値(PEAK)と、蛍光信号波形のパルス面積を取得する工程、蛍光信号波形の差分積分値(DIV)と、蛍光信号波形のピーク値(PEAK)とに基づいて、複数の細胞が凝集した凝集細胞と、細胞を凝集していない単一の細胞(非凝集細胞)とを判別する工程、及び、非凝集細胞の蛍光信号波形のパルス面積を第1閾値と比較することにより、測定試料に含まれる細胞から異常細胞を分類する工程、を含むことを特徴とする。
本発明の細胞分析装置の一実施の形態の斜視説明図である。 図1に示される細胞分析装置の構成を示すブロック図である。 システム制御部を構成するパソコンのブロック図である。 光学検出部の構成を示す図である。 ビームスポットを通過する細胞の説明図である。 測定対象細胞の蛍光信号波形の差分積分値をピーク値で除した値を縦軸にとり、側方散乱光信号のパルス幅を横軸にとったスキャッタグラムを示す図である。 単一細胞の信号波形を示す図である。 2個の細胞からなる凝集細胞の信号波形を示す図である。 3個の細胞からなる凝集細胞の信号波形を示す図である。 測定試料から得られた前方散乱光信号のピーク値を縦軸にとり、前方散乱光信号のパルス幅を横軸にとったスキャッタグラムを示す図である。 システム制御部のCPUによる処理の流れを示すフローチャートである。 システム制御部のCPUによる細胞分析処理を示すフローチャートである。 光学検出部の側面図である。 光学検出部の平面図である。 測定試料から得られた側方蛍光信号のパルスの面積を横軸にとったヒストグラムを示す図である。 システム制御部のCPUによる第2細胞分析処理を示すフローチャートである。 システム制御部のCPUによる第3細胞分析処理を示すフローチャートである。 測定試料の流れ方向におけるビーム形状を示す図である。
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の細胞分析装置及び細胞分析方法の実施の形態を詳細に説明する。
[細胞分析装置の全体構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る細胞分析装置10の斜視説明図である。この細胞分析装置10は、患者から採取した細胞を含む測定試料をフローセルに流し、このフローセルを流れる測定試料にレーザ光を照射し、測定試料からの光(前方散乱光、側方蛍光など)を検出・分析することで、上記細胞に癌・異型細胞が含まれているか否かを判断するのに用いられる。具体的には、子宮頸部の上皮細胞を用いて子宮頸癌をスクリーニングするのに用いられる。細胞分析装置10は、試料の測定などを行う装置本体12と、この装置本体12に接続され、測定結果の分析などを行うシステム制御部13とを備えている。
図2に示すように、細胞分析装置10の装置本体12は、測定試料から細胞や核のサイズなどの情報を検出するための光学検出部3と、信号処理回路4と、測定制御部16と、モータ、アクチュエータ、バルブなどの駆動部17と、各種センサ18とを備えている。信号処理回路4は、光学検出部3の出力をプリアンプ(図示せず)により増幅したものに対して増幅処理やフィルタ処理等を行うアナログ信号処理回路と、アナログ信号処理回路の出力をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、デジタル信号に対して所定の波形処理を行うデジタル信号処理回路とを備えている。また、測定制御部16がセンサ18の信号を処理しつつ駆動部17の動作を制御することにより、測定試料の吸引や測定が行われる。子宮頸癌をスクリーニングする場合、測定試料としては、患者の子宮頸部から採取した細胞(上皮細胞)に遠心(濃縮)、希釈(洗浄)、攪拌(タッピング)、PI染色などの公知の処理を施して調製されたものを用いることができる。調製された測定試料は試験管に収容され、装置本体12のピペット(図示せず)下方位置に設置され、ピペットにより吸引されてフローセルに供給される。上記PI染色は、色素を含んでいる蛍光染色液であるヨウ化プロピジウム(PI)により行われる。PI染色では核に選択的に染色が施されるため、核からの蛍光が検出可能となる。
[測定制御部の構成]
測定制御部16は、マイクロプロセッサ20、記憶部21、I/Oコントローラ22、センサ信号処理部23、駆動部制御ドライバ24、及び外部通信コントローラ25などを備えている。記憶部21は、ROM、RAMなどからなり、ROMには、駆動部17を制御するための制御プログラム、及び、制御プログラムの実行に必要なデータが格納されている。マイクロプロセッサ20は、制御プログラムをRAMにロードし、又はROMから直接実行することが可能である。
マイクロプロセッサ20には、センサ18からの信号がセンサ信号処理部23及びI/Oコントローラ22を通じて伝達される。マイクロプロセッサ20は、制御プログラムを実行することにより、センサ18からの信号に応じて、I/Oコントローラ22及び駆動部制御ドライバ24を介して駆動部17を制御することができる。
マイクロプロセッサ20が処理したデータや、マイクロプロセッサ20の処理に必要なデータは、外部通信コントローラ25を介してシステム制御部13などの外部の装置との間で送受信される。
[システム制御部の構成]
図3は、システム制御部13のブロック図である。システム制御部13は、パーソナルコンピュータなどからなり、本体27と、表示部28と、入力部29とから主に構成されている。本体27は、CPU27aと、ROM27bと、RAM27cと、ハードディスク27dと、読出装置27eと、入出力インターフェース27fと、画像出力インターフェース27gと、から主に構成されている。これらの間は、バス27hによって通信可能に接続されている。
CPU27aは、ROM27bに記憶されているコンピュータプログラム及びRAM27cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。ROM27bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成されており、CPU27aに実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータなどが格納されている。RAM27cは、SRAM又はDRAMなどによって構成されている。RAM27cは、ROM27b及びハードディスク27dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU27aの作業領域として利用される。
ハードディスク27dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムなど、CPU27aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。例えば、ハードディスク27dには、米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザーインターフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。また、凝集粒子と非凝集粒子とを判別するためのコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータが、ハードディスク27dにインストールされている。
また、ハードディスク27dには、細胞分析装置10の測定制御部16への測定オーダ(動作命令)の送信、装置本体12で測定した測定結果の受信及び処理、処理した分析結果の表示などを行う操作プログラムがインストールされている。この操作プログラムは、上記オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
読出装置27eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、又はDVD−ROMドライブなどによって構成されており、可搬型記録媒体に記録されたコンピュータプログラム又はデータを読み出すことができる。入出力インターフェース27fは、例えば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェースなどから構成されている。入出力インターフェース27fには、キーボード及びマウスからなる入力部29が接続されており、ユーザーが入力部29を使用することにより、パーソナルコンピュータにデータを入力することが可能である。また、入出力インターフェース27fは、装置本体12と接続されており、装置本体12との間でデータなどの送受信を行うことが可能である。
画像出力インターフェース27gは、LCD又はCRTなどで構成された表示部28に接続されており、CPU27aから与えられた画像データに応じた映像信号を表示部28に出力するようになっている。表示部28は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
[光学検出部の構成]
図4は、光学検出部3の構成を示す図である。図において、レンズ系(光学系)52は、光源である半導体レーザ53から放射されたレーザ光をフローセル51を流れる測定試料に集光し、集光レンズ54は測定試料中の細胞の前方散乱光を散乱光検出器であるフォトダイオード55に集光する。上記レンズ系52は、簡単のために単一のレンズとして図示しているが、より詳細には、図13および図14に示すように、半導体レーザ53側からコリメータレンズ52a、シリンダーレンズ系(平凸シリンダーレンズ52b+両凹シリンダーレンズ52c)及びコンデンサレンズ系(コンデンサレンズ52d+コンデンサレンズ52e)からなるレンズ群として構成することができる。
図13に示されるように、光学検出部3を側面から見ると、半導体レーザ53から発せられた放射状のレーザ光は、コリメータレンズ52aで平行光に変換され、平凸シリンダーレンズ52bおよび両凹シリンダーレンズ52cを屈折することなく通過し、コンデンサレンズ52dおよびコンデンサレンズ52eによりフローセル51を流れる測定試料中の第1集光点Aに集光される。
一方、図14に示されるように、光学検出部3を上方から見ると、半導体レーザ53から発せられた放射状のレーザ光は、コリメータレンズ52aで平行光に変換され、平凸シリンダーレンズ52bにより測定試料の流れに直交する方向に収束され、両凹シリンダーレンズ52cにより測定試料の流れに直交する方向に発散され、コンデンサレンズ52dおよびコンデンサレンズ52eによりフローセル51の後方の第2集光点Bに集光される。
このようなレンズ系52により、第1集光点Aにおけるビーム形状(半導体レーザ53側から見たビーム形状)は、測定試料の流れ方向に収束し、測定試料の流れに直交する方向に延びた長楕円形状となる。具体的には、フローセル51を流れる測定試料の流れ方向の径が3〜8μmであり、測定試料の流れに直交する方向の径が300〜600μmであるビームスポットが、その第1集光点Aを測定試料の流れ方向を通る平面上に形成しつつ、フローセル51を流れる測定試料に照射される。
なお、レンズ系52は上記の構成に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
他の集光レンズ56は上記細胞又は細胞中の核の側方散乱光と側方蛍光とをダイクロイックミラー57に集光する。ダイクロイックミラー57は、側方散乱光を散乱光検出器であるフォトマルチプライヤ58へ反射し、側方蛍光を蛍光検出器であるフォトマルチプライヤ59の方へ透過させる。これらの光は、測定試料中の細胞や核の特徴を反映したものとなっている。そして、フォトダイオード55、フォトマルチプライヤ58及びフォトマルチプライヤ59は、検出した光を電気信号に変換し、それぞれ、前方散乱光信号(FSC)、側方散乱光信号(SSC)及び側方蛍光信号(SFL)を出力する。これらの信号は、図示しないプリアンプにより増幅された後、上述した信号処理回路4(図2参照)に送られる。
図2に示すように、信号処理回路4でフィルタ処理やA/D変換処理などの信号処理が施されて得られた前方散乱光データ(FSC)、側方散乱光データ(SSC)及び側方蛍光データ(SFL)は、マイクロプロセッサ20によって、外部通信コントローラ25を介して、前述したシステム制御部13へ送られる。システム制御部13では、前方散乱光データ(FSC)、側方散乱光データ(SSC)及び側方蛍光データ(SFL)に基づいて、細胞や核を分析するためのスキャッタグラムやヒストグラムが作成される。
なお、光源として、上記半導体レーザに代えてガスレーザを用いることもできるが、低コスト、小型、且つ低消費電力である点で半導体レーザを採用するのが好ましく、半導体レーザの採用により製品コストを低減させるとともに、装置の小型化及び省電力化を図ることができる。本実施の形態では、ビームを狭く絞ることに有利な波長の短い青色半導体レーザを用いている。青色半導体レーザは、PIなどの蛍光励起波長に対しても有効である。なお、半導体レーザのうち、低コスト且つ長寿命であり、メーカーからの供給が安定している赤色半導体レーザを用いてもよい。
本実施の形態では、光学系であるレンズ系52(図4)によって、所定の大きさのビームスポットが形成される。具体的には、フローセル51を流れる測定試料の流れ方向の径が3〜8μmであり、当該測定試料の流れに直交する方向の径が300〜600μmである、略楕円形のビームスポットが測定試料上に形成される。図5はビームスポットを通過する細胞の説明図であり、図において上下方向がフローセルを流れる測定試料の流れ方向である。図5において、右側のビームスポットは血液中の赤血球や白血球を検出するのに用いられている従来の一般的装置におけるビームスポットであり、左側のビームスポットは本実施の形態に係る細胞分析装置の光学系により形成されるビームスポットである。作図上、ビームスポットの長手方向の寸法は、これと直交する方向(図において上下方向)の寸法に比べて縮小して描いているが、本実施の形態の実際のビームスポットは、非常に細長い断面形状を呈している。
本実施の形態では、フローセルを流れる測定試料からの蛍光をフォトマルチプライヤ59が検出し、信号処理回路4は、フォトマルチプライヤ59から出力された蛍光信号から、信号の波形の高さを反映した値として蛍光信号波形のピーク値(PEAK)を取得するとともに、信号の波形の稜線の長さを反映した値として信号波形の差分積分値(DIV)を取得している。図9(b)は、図9(a)の細胞C3の信号波形を示す図であり、検出された光の強度を縦軸にとり、光信号の検出時間を横軸にとっている。図9(b)に示すように、蛍光信号波形(一点鎖線)のピーク値(PEAK)は、検出された蛍光の最大強度(図中のPEAK)を表し、蛍光信号波形の差分積分値(DIV)は、ベースライン(BaseLine 1)より大きい強度を有する蛍光信号波形の長さ(点S〜点T,点U〜点V,点W〜点Xの波形の長さの合計)を表す。システム制御部13は、蛍光信号波形の差分積分値(DIV)と蛍光信号波形のピーク値(PEAK)とを含む側方蛍光データを、外部通信コントローラ25を介して受信し、蛍光信号波形の差分積分値(DIV)を蛍光信号波形のピーク値(PEAK)で除した値(DIV/PEAK)を所定の第2閾値と比較することにより、その細胞が凝集細胞であるか非凝集細胞であるかを判別する。
差分積分値は、信号波形を微分し、その絶対値を足し合わせた値であり、波形に谷のない信号の差分積分値は、その信号のピーク値を2倍した値とほぼ同じになる。一方、波形に谷の有る信号の差分積分値は、その信号のピーク値を2倍した値よりも大きくなり、波形に谷が多いほど、また谷が深いほどピーク値を2倍した値との差も大きくなる。
そこで、システム制御部13は、信号に重畳されるノイズなどを考慮して、「2」よりも若干大きめの値である「2.6」を、測定対象細胞が凝集細胞であるか非凝集細胞であるかを判別する基準値となる上記「所定の第2閾値」としている。なお、所定の第2閾値は2.6に限られないが、2.2〜3の範囲の値であることが好ましい。蛍光信号波形の差分積分値(DIV)を蛍光信号波形のピーク値(PEAK)で除した値(DIV/PEAK)が所定の第2閾値よりも大きいということは、蛍光信号の波形に少なくとも1つの谷が存在するということであり、これにより測定対象細胞を、複数の細胞が凝集した凝集細胞として分類することができる。
図6は、測定対象細胞の蛍光信号波形の差分積分値(DIV)をピーク値(PEAK)で除した値(DIV/PEAK)を縦軸にとり、側方散乱光の信号波形のパルス幅(SSCW)を横軸にとった(DIV/PEAK)−SSCWスキャッタグラムである。図6において、Aで示される領域内に分布する細胞は、縦軸の値(蛍光信号波形の差分積分値/ピーク値(DIV/PEAK))が約2〜2.6の範囲にあり、これらの細胞は図7(a)に示されるような単一の細胞(非凝集細胞)C1である。図7(b)は、細胞C1の信号波形を示す図である。図7(b)に示されるように、単一細胞の場合、信号波形のピークは1つであるが、前方散乱光の信号波形(実線)や側方散乱光の信号波形(破線)に比べて、蛍光信号の波形(一点鎖線)は、ピークが明瞭である。
また、図6において、Bで示される領域内に分布する細胞は、縦軸の値が約3.5〜4.2の範囲にあり、これらのサンプルは図8(a)に示されるような2個の細胞が凝集してなる凝集細胞C2である。さらに、図6において、Cで示される領域内に分布する細胞は、縦軸の値が約4.5〜7の範囲にあり、これらの細胞は図9(a)に示されるような3個の細胞が凝集してなる凝集細胞C3である。図8(b)は、細胞C2の信号波形を示す図である。図8(b)及び図9(b)に示されるように、前方散乱光の信号波形や側方散乱光の信号波形に比べて、蛍光信号の波形ではピーク及び谷の部分が明瞭であることが分かる。
このように、前方散乱光の信号波形や側方散乱光の信号波形に比べて、蛍光信号の波形の方が、そのピークや谷の部分が明瞭であることから、凝集細胞であるのか、非凝集細胞であるのかを高精度に判別することができる。
また、本実施の形態では、ビームスポットにおける、測定試料の流れ方向の径を3〜8μmとしていることから、核検出のS/N比を向上させることができる。本実施の形態では、核にPI染色を施して、核からの蛍光信号を用いているところ、PI染色では、核以外に細胞膜も若干染色され、また、染色に用いた染料の残りがフローセルを流れることから、核以外からも蛍光が生じる。そのため、蛍光検出器であるフォトマルチプライヤ59(図4)は、核以外からのノイズとなる蛍光も検出することになる。しかしながら、光学検出部3のレンズ系52によりビームスポットにおける測定試料の流れ方向の径が3〜8μmと小さくされるため、核から生じる蛍光と核以外から生じる蛍光とをより明確に峻別することができる。すなわち、核の大きさ(5〜7μm)を考慮してビームスポットの径を3〜8μmと小さくすることによって、ノイズを減らして蛍光信号のパルスの立ち上がりをシャープにしてそのピークを明瞭にすることができる。
ビームスポットにおける上記流れ方向の径を3μmよりも小さくしようとすると、レンズ系52の焦点距離を短くする必要があり、レーザ光の強度が安定な領域(焦点深度)が浅くなる。図18は、測定試料の流れ方向におけるビーム形状を示す図である。図18に示されるように、焦点深度は、ビーム径がビームスポットにおけるビーム径Dの1.1倍になるまでの領域を示し、ビーム径が大きくなるにつれて光の強度は弱くなる。焦点深度が浅くなると、20〜100μm程度の大きさを有する細胞の核にレーザ光を安定的に照射することができなくなる。一方、上記流れ方向の径が8μmよりも大きくなると、核以外から生じるノイズとなる蛍光の検出割合が大きくなる。そのため、蛍光信号のパルスの立ち上がりがなだらかになり、蛍光信号のパルス幅の範囲がぼやけてしまうため、測定精度が低下する。また、複数の細胞の核がビームスポット内を同時に通過する頻度が多くなり、この点からも測定精度が低下する。そのため、上記の焦点深度を考慮して、ビームスポットにおける、測定試料の流れ方向の径を選定するのが好ましい。具体的には、測定試料の流れ方向に絞られたレーザ光の焦点深度が20〜110μmとなるようにビームスポットを形成するのが好ましい。なお、レーザ光を安定的に核に照射するためには、ビームスポットの上記流れ方向の径は、3.5〜7.5μmであることが好ましく、より好ましいのは4〜7μmである。
また、ビームスポットにおける、測定試料の流れに直交する方向の径が300〜600μmの範囲にあることから、子宮頸部の上皮細胞(約60μm程度)全体をレーザビームの安定領域(ガウス分布をなすレーザ光のピーク強度を1とすると、強度が0.95以上となる領域のこと)を通過させることができる。これにより、細胞から安定した散乱光を得ることができ、細胞の大きさを高精度に測定することができる。流れに直交する方向の径が300μm以上であることにより、上記レーザビームの安定領域が広くなり、細胞からの安定した散乱光を得ることができる。一方、流れに直交する方向の径が600μm以下であることにより、中心付近のレーザ光の強度が強くなり、安定した散乱光を得ることができる。なお、細胞から安定した散乱光を得るためには、測定試料の流れに直交する方向の径は、350〜550μmであることが好ましい。
[異常細胞の分類]
細胞が癌化・異型化すると、細胞分裂が活発化する結果、DNA量が正常細胞に比べて多くなる。そこで、このDNA量を癌化・異型化の指標とすることができる。核中のDNA量を反映する値としては、レーザ光が照射される測定対象細胞からの蛍光信号のパルスの面積(蛍光量)(SFLI)とすることができる。図9(b)に示すように、蛍光信号のパルスの面積(蛍光量)(SFLI)は、ベースライン(BaseLine 1)と蛍光信号波形とで囲まれた部分の面積を表す。信号処理回路4は、フォトマルチプライヤ59から出力された蛍光信号から、測定対象細胞の核のDNA量を反映した値として蛍光信号のパルスの面積(蛍光量)(SFLI)を取得する。そして、システム制御部13は、この蛍光量が所定の第1閾値以上であるか否かを判断し、第1閾値以上である場合には、対象の細胞を異常なDNA量を有する癌・異型細胞として分類する。
子宮頸癌のスクリーニングで用いられるサンプルでは大部分が正常細胞であることから、蛍光信号のパルスの面積(蛍光量)を横軸にとり図15に示すようなヒストグラムを描くと、正常細胞に相当する位置にピークが現れる。このピークの位置の蛍光量が正常細胞のDNA量を示すので、システム制御部13は、その2.5倍以上の蛍光量を示す細胞を異常細胞として分類する。
なお、2個以上の細胞が互いに凝集した状態でレーザ光のビームスポットを通過すると、複数の核からの蛍光がフォトマルチプライヤ59で検出され、全体として大きな面積のパルスが出力されると考えられる。しかしながら、前述したように、本実施の形態によれば、蛍光信号波形の差分積分値をピーク値で除した値(DIV/PEAK)を利用して、凝集細胞によるデータを高精度に除外することができ、その結果、異常細胞(癌・異型細胞)の分類の精度を高めることができる。すなわち、凝集細胞であるが故に大きなDNA量を有するものとして測定された細胞を、異常細胞として誤って分類するのを防止することができる。
また、測定試料中には、測定対象細胞以外に、粘液、血液の残りカス、細胞の破片などのデブリスが含まれることがある。このデブリスが測定試料中に多量に含まれていると、そのデブリスからの蛍光がノイズとして検出され、測定精度を低下させることになる。この場合、上記デブリスは測定対象細胞に比べてサイズが小さいことから、信号処理回路4は、フォトダイオード55から出力された前方散乱光信号から、測定対象細胞を含む粒子の大きさを反映した複数のパラメータとして、前方散乱光の信号波形のパルス幅(FSCW)と、前方散乱光の信号波形のピーク値(FSCP)とを取得する。図7(b)に示すように、前方散乱光の信号波形のピーク値(FSCP)は、検出された前方散乱光の最大強度(図中のFSCP)を表す。また、前方散乱光の信号波形のパルス幅(FSCW)は、ベースライン(BaseLine 2)より大きい強度を有する前方散乱光の信号波形の幅を表す。システム制御部13は、前方散乱光の信号波形のパルス幅(FSCW)と前方散乱光の信号波形のピーク値(FSCP)とを含む前方散乱光データを、外部通信コントローラ25を介して装置本体12から受信する。そして、システム制御部13は、前方散乱光の信号波形のパルス幅(FSCW)と前方散乱光の信号波形のピーク値(FSCP)と用いたスキャッタグラムを作成し、そのスキャッタグラムに基づいて、測定対象細胞と、測定対象細胞以外の粒子(デブリス)とを判別する。
図10は、前方散乱光の信号波形のパルス幅(FSCW)を横軸にとり、前方散乱光の信号波形のピーク値(FSCP)を縦軸にとったFSCW−FSCPスキャッタグラムを示す図である。デブリスは測定対象細胞に比べてサイズが小さいことから、粒子の大きさを反映する、前方散乱光の信号波形のピーク値(FSCP)及び前方散乱光の信号波形のパルス幅(FSCW)のそれぞれは測定対象細胞よりも小さくなる。図10において、左下に分布する一群がデブリスを示している。したがって、Gで示される領域内の細胞を以降の解析対象とすることにより、異常細胞であるか否かの判別精度をさらに向上させることができる。
[細胞分析方法]
次に、細胞分析装置10(図1参照)を用いた細胞分析方法の実施の形態について説明する。
まず、フローセルに流す測定試料の調製が使用者の手動により行われる。具体的には、患者の子宮頸部から採取した細胞(上皮細胞)に遠心(濃縮)、希釈(洗浄)、攪拌(タッピング)、PI染色などの公知の処理を施すことで測定試料が調製される。
ついで、使用者により、調製された測定試料が試験管(図示せず)に収容され、試験管が装置本体のピペット(図示せず)下方位置に設置される。
次に、図11及び図12を参照して、システム制御部13の処理の流れについて説明する。
まず、システム制御部13の電源が入れられると、システム制御部13のCPU27aは、システム制御部13に格納されてあるコンピュータプログラムの初期化を行う(ステップS1)。次に、CPU27aは、使用者からの測定指示を受け付けたか否かを判断し(ステップS2)、測定指示を受け付けた場合には、I/Oインターフェース27fを介して、測定開始信号を装置本体12に送信する(ステップS3)。測定指示を受け付けなかった場合には、CPU27aは、ステップS6の処理に移行する。
測定開始信号が装置本体12に送信されると、装置本体12において、試験管に収容された測定試料がピペットにより吸引されて図4に示すフローセル51に供給される。そして、フローセル51を流れる測定試料にレーザ光が照射され、測定試料からの前方散乱光がフォトダイオード55により検出され、側方散乱光がフォトマルチプライヤ58で検出され、側方蛍光がフォトマルチプライヤ59により検出される。
ついで、光学検出部3から出力された前方散乱光信号(FSC)、側方散乱光信号(SSC)、蛍光信号(SFL)が信号処理回路4に送られ、信号処理回路4で所定の処理が施されて得られた測定データは、外部通信コントローラ25を介して、システム制御部13に送信される。
一方、システム制御部13のCPU27aは、装置本体12から、外部通信コントローラ25を介して測定データ(前方散乱光データ(FSC)、側方散乱光データ(SSC)、側方蛍光データ(SFL))を受信したか否かを判断し(ステップS4)、測定データを受信した場合には、その測定データをハードディスク27dに記憶した後、細胞分析処理を実行する(ステップS5)。測定データを受信しなかった場合には、CPU27aは、ステップS6の処理に移行する。
細胞分析処理の後、CPU27aは、シャットダウン指示を受け付けたか否かを判断し(ステップS6)、シャットダウン指示を受け付けた場合には、処理を終了する。シャットダウン指示を受け付けなかった場合には、CPU27aは、ステップS2の処理に戻る。
次に、図12を参照して、ステップS5の細胞分析処理について説明する。
まず、CPU27aは、装置本体12から受信した前方散乱光データのうち、前方散乱光の信号波形のパルス幅(FSCW)と、前方散乱光の信号波形のピーク値(FSCP)とをハードディスク27dからRAM27cに読み出し(ステップS501)、読み出したパルス幅(FSCW)を横軸にとり、ピーク値(FSCP)を縦軸にとって、図10に示されるFSCW−FSCPスキャッタグラムを作成する(ステップS502)。そして、CPU27aは、このスキャッタグラムのGで示される領域内の細胞を以降の解析対象とする。これにより、Gで示される領域外の粒子が、測定対象細胞以外のデブリスとして除去される。
次に、CPU27aは、解析対象の細胞の側方蛍光データのうち、蛍光信号波形の差分積分値(DIV)と蛍光信号波形のピーク値(PEAK)とをハードディスク27dからRAM27cに読み出し、蛍光信号波形の差分積分値(DIV)を蛍光信号波形のピーク値(PEAK)で除した値(DIV/PEAK)を取得するとともに、解析対象の粒子の側方散乱光データのうち、側方散乱光の信号波形のパルス幅(SSCW)をハードディスク27dからRAM27cに読み出す(ステップS503)。なお、図8(b)に示すように、側方散乱光の信号波形のパルス幅(SSCW)は、ベースライン(BaseLine 3)より大きい強度を有する側方散乱光の信号波形の幅を表す。CPU27aは、蛍光信号波形の差分積分値をピーク値で除した値(DIV/PEAK)を縦軸にとり、側方散乱光の信号波形のパルス幅(SSCW)を横軸にとって、図6に示される(DIV/PEAK)−SSCWスキャッタグラムを作成する(ステップS504)。
そして、CPU27aは、蛍光信号波形の差分積分値(DIV)を蛍光信号波形のピーク値(PEAK)で除した値(DIV/PEAK)を、第2閾値の2.6と比較することにより、解析対象である細胞が凝集細胞か非凝集細胞かを判別する。ここで、次の式(1)が成立している場合は、その細胞は非凝集細胞であり、式(1)が成立していない場合は、その細胞は凝集細胞である。
DIV/PEAK≦2.6・・・(1)
そして、CPU27aは、非凝集細胞と凝集細胞をそれぞれ計数する(ステップS505)。
次に、CPU27aは、解析対象の細胞の側方蛍光データのうち、測定対象細胞の核のDNA量を反映した値である、蛍光信号のパルスの面積を示す蛍光量(SFLI)をハードディスク27dからRAM27cに読み出す(ステップS506)。そして、CPU27aは、蛍光信号のパルスの面積(蛍光量)(SFLI)を横軸にとり、図15に示されるヒストグラムを作成する(ステップS507)。なお、このヒストグラムでは正常細胞に相当する位置にピークが現れる。
ついで、CPU27aは、解析対象の細胞の蛍光量(SFLI)が、図15のヒストグラムでピークが現れた位置の蛍光量(SFLIP)の2.5倍以上であるか否か、すなわち、次の式(2)が成立しているか否かを判断する。
SFLI≧SFLIP・2.5・・・(2)
ここで、CPU27aは、式(2)が成立している場合には、その細胞を核のDNA量が異常なDNA量異常細胞として分類し、式(2)が成立していない場合には、その細胞を正常細胞として分類する。そして、CPU27aは、DNA量異常細胞として分類した細胞の計数を行う(ステップS508)。ついで、CPU27aは、ステップS508で取得したDNA量異常細胞の数から、ステップS505で取得した凝集細胞の数を減ずることにより、異常細胞の数を取得する(ステップS509)。
次に、CPU27aは、ステップS505で取得した非凝集細胞の数と、ステップS509で取得した異常細胞の数との比率を算出し、異常細胞比率を取得する(ステップS510)。なお、この異常細胞比率とは、細胞分析装置10で分析されたサンプル中に所定数以上の癌・異型細胞が存在するか否かを判断する指標となる数値である。例えば、異常細胞比率が1%以上である場合には、サンプル中に所定数以上の癌・異型細胞があることにより、被検者は自分が癌に侵されている可能性が高いことを知ることができる。
そして、CPU27aは、ステップS502で作成したFSCW−FSCPスキャッタグラム、ステップS504で作成した(DIV/PEAK)−SSCWスキャッタグラム、及びステップS507で作成したヒストグラムとともに、ステップS510で取得した異常細胞比率を、画像出力インターフェース27g(図3)を介して、システム制御部13の表示部28(図1参照)に表示する(ステップS511)。以上のようにして、CPU27aにより、細胞分析処理が実行される。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、本実施の形態では、被検者から採取されたサンプル中に所定数以上の子宮頸部の癌・異型細胞が存在するか否かを判定しているが、本発明の細胞分析装置は、これに限定されるものではなく、口腔細胞、膀胱や咽頭など他の上皮細胞の癌・異型細胞、さらには臓器の癌・異型細胞が、被検者から採取されたサンプル中に所定数以上存在するか否かを判定するために用いることができる。
また、本実施の形態では、異常細胞比率を表示部に表示しているが、本発明の細胞分析装置は、これに限定されるものではなく、異常細胞比率とともに、被検者が癌に侵されているか否かについて述べたコメントを表示部に表示してもよい。これにより、被検者は、自分が癌に侵されている可能性が高いか否かを、より容易に知ることができる。
また、本実施の形態では、凝集細胞の数を取得した後に、DNA量異常細胞の数を取得し、DNA量異常細胞の数から凝集細胞の数を減ずることにより、異常細胞(癌・異型細胞)の数を取得しているが、本発明の実施の形態はこれに限られない。図16は、システム制御部13のCPU27aによる第2細胞分析処理を示すフローチャートである。以下、図16を参照して、第2細胞分析処理について説明する。
第2細胞分析処理においては、CPU27aにより、ステップS5001〜5004において、図12に示す細胞分析処理のステップS501〜504と同じ処理が実行される。
続いて、CPU27aは、ステップS5003で解析対象とした細胞に対して、上記の式(1)が成立しているか否かを判断し、式(1)が成立している場合には、その細胞を非凝集細胞として計数する(ステップS5005)。
次に、CPU27aは、上記の式(1)が成立している非凝集細胞の蛍光量(SFLI)をハードディスク27dからRAM27cに読み出す(ステップS5006)。そして、CPU27aは、蛍光量(SFLI)を横軸にとったヒストグラムを作成する(ステップS5007)。
ついで、CPU27aは、ステップS5007において作成したヒストグラムでピークが現れた位置の蛍光量(SFLIP)の2.5倍以上の蛍光量を示す細胞を異常細胞(癌・異型細胞)として分類し、その細胞を計数する(ステップS5008)。
次に、CPU27aは、ステップS5009において、図12に示す細胞分析処理のステップS510と同じ処理を実行し、異常細胞比率を取得する。続いて、CPU27aは、ステップS5002で作成したFSCW−FSCPスキャッタグラム、ステップS5004で作成した(DIV/PEAK)−SSCWスキャッタグラム、及びステップS5007で作成したヒストグラムとともに、ステップS5009で取得した異常細胞比率を、画像出力インターフェース27g(図3)を介して、システム制御部13の表示部28(図1参照)に表示する(ステップS5010)。以上のようにして、CPU27aにより、第2細胞分析処理が実行される。
図17は、システム制御部13のCPU27aによる第3細胞分析処理を示すフローチャートである。以下、図17を参照して、第3細胞分析処理について説明する。
第3細胞分析処理においては、CPU27aにより、ステップS50001,50002において、図12に示す細胞分析処理のステップS501,502と同じ処理が実行される。
続いて、CPU27aは、ステップS50002において解析対象とした細胞の側方蛍光データのうち、蛍光信号波形の差分積分値(DIV)、蛍光信号波形のピーク値(PEAK)、及び、蛍光信号のパルスの面積である蛍光量(SFLI)をハードディスク27dからRAM27cに読み出し、蛍光信号波形の差分積分値(DIV)を蛍光信号波形のピーク値(PEAK)で除した値(DIV/PEAK)を取得するとともに、解析対象の細胞の側方散乱光データのうち、側方散乱光の信号波形のパルス幅(SSCW)をハードディスク27dからRAM27cに読み出す(ステップS50003)。そして、CPU27aは、蛍光信号波形の差分積分値をピーク値で除した値(DIV/PEAK)を縦軸にとり、側方散乱光の信号波形のパルス幅(SSCW)を横軸にとった(DIV/PEAK)−SSCWスキャッタグラムと、蛍光信号のパルスの面積(蛍光量)(SFLI)を横軸にとったヒストグラムを作成する(ステップS50004)。
次に、CPU27aは、上記の式(1)及び式(2)の両方が成立しているか否かを判断し、式(1)及び式(2)の両方が成立している場合には、その細胞を異常細胞(癌・異型細胞)として分類し、その細胞を計数する(ステップS50005)。なお、本ステップの処理において、CPU27aは、式(1)が成立していると判断した細胞を、非凝集細胞として計数する。
次に、CPU27aは、ステップS50006において、図12に示す細胞分析処理のステップS510と同じ処理を実行し、異常細胞比率を取得する。続いて、CPU27aは、ステップS50002で作成したFSCW−FSCPスキャッタグラム、ステップS50004で作成した(DIV/PEAK)−SSCWスキャッタグラム及びヒストグラムとともに、ステップS50006で取得した異常細胞比率を、画像出力インターフェース27g(図3)を介して、システム制御部13の表示部28(図1参照)に表示する(ステップS50007)。以上のようにして、CPU27aにより、第3細胞分析処理が実行される。
なお、細胞分析装置10では、測定対象細胞の核を染色する色素を用いて測定試料を調製し、検出部で、この核からの蛍光が検出されている。前述したように、細胞からの前方散乱光の信号波形では、細胞の凝集状態や細胞の流れる方向などによっては、波形のピークや谷の部分が明瞭とならない場合があるが、蛍光信号の波形ではピーク及び谷の部分が明瞭であるので、この核からの蛍光を利用することにより、高精度に凝集細胞であるか、非凝集細胞であるかの判別をすることができる。

Claims (13)

  1. 生体試料と細胞中の核を染色する色素とから得られる測定試料をフローセルに流し、当該フローセルを流れる測定試料にレーザ光を照射して、当該測定試料に含まれる各細胞からの蛍光を検出する検出部、
    この検出部から出力された各細胞の蛍光信号に基づき、蛍光信号波形の差分積分値(DIV)と、蛍光信号波形のピーク値(PEAK)と、蛍光信号波形のパルス面積を取得する信号処理部、及び、
    前記蛍光信号波形の差分積分値(DIV)と、前記蛍光信号波形のピーク値(PEAK)とに基づいて、複数の細胞が凝集した凝集細胞と、細胞が凝集していない単一の細胞(非凝集細胞)とを判別し、非凝集細胞の蛍光信号波形のパルス面積を第1閾値と比較することにより、測定試料に含まれる細胞から異常細胞を分類する分析部、を備えることを特徴とする細胞分析装置。
  2. 前記分析部は、前記差分積分値(DIV)を前記ピーク値(PEAK)で除した値(DIV/PEAK)が第2閾値よりも小さい細胞を非凝集細胞であると判別する、請求項1に記載の細胞分析装置。
  3. 前記検出部は、測定試料に含まれる各細胞から散乱光を検出し、
    前記信号処理部は、前記検出部から出力された散乱光信号に基づき、散乱光信号のパルス幅を取得する、請求項1又は2に記載の細胞分析装置。
  4. 前記検出部は、前記フローセルを流れる測定試料の流れ方向の径が3〜8μmであり、前記測定試料の流れに直交する方向の径が300〜600μmであるビームスポットを、前記フローセルを流れる測定試料上に形成する光学系を備えている請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞分析装置。
  5. 前記蛍光信号波形のパルス面積は、前記非凝集細胞の核のDNA量を反映した蛍光量である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞分析装置。
  6. 前記分析部は、前記異常細胞計数する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の細胞分析装置。
  7. さらに表示部を備え、前記分析部は、前記蛍光信号波形のパルス面積のヒストグラムを作成し、作成したヒストグラムを前記表示部に表示させる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞分析装置。
  8. 前記細胞が、上皮細胞である、請求項1〜の何れか1項に記載の細胞分析装置。
  9. 生体試料と細胞中の核を染色する色素とを混合して測定試料を調製する工程、
    調製された測定試料をフローセルに流し、当該フローセルを流れる測定試料にレーザ光を照射して、当該測定試料に含まれる各細胞からの蛍光を検出する工程、
    各細胞の蛍光信号に基づき、蛍光信号波形の差分積分値(DIV)と、蛍光信号波形のピーク値(PEAK)と、蛍光信号波形のパルス面積を取得する工程
    前記蛍光信号波形の差分積分値(DIV)と、前記蛍光信号波形のピーク値(PEAK)とに基づいて、複数の細胞が凝集した凝集細胞と、細胞を凝集していない単一の細胞(非凝集細胞)とを判別する工程、及び、非凝集細胞の蛍光信号波形のパルス面積を第1閾値と比較することにより、測定試料に含まれる細胞から異常細胞を分類する工程、を含むことを特徴とする細胞分析方法。
  10. 前記判別工程では、前記差分積分値(DIV)を前記ピーク値(PEAK)で除した値(DIV/PEAK)が第2閾値よりも小さい細胞を非凝集細胞であると判別する、請求項に記載の細胞分析方法。
  11. 測定試料に含まれる各細胞から散乱光を検出する工程、及び
    各細胞の散乱光信号に基づき、散乱光信号のパルス幅を取得する工程をさらに含請求項9又は10に記載の細胞分析方法。
  12. 前記蛍光信号波形のパルス面積は、非凝集細胞の核のDNA量を反映した蛍光量である、請求項9〜11の何れか1項に記載の細胞分析方法。
  13. 前記細胞は、上皮細胞である、請求項9〜12の何れか1項に記載の細胞分析方法。
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