JP5732877B2 - 磁性体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
(1)本発明の磁性体は、R1とFeとBの正方晶金属間化合物(R12Fe14B)の結晶粒からなる主相と該結晶粒間に形成された粒界相とからなる磁性体であって、前記結晶粒は、最長幅が20〜500nmの角丸形状をしており、前記粒界相は、最小幅が1〜15nmであり、該粒界相は、前記R1および/または該R1と異なる希土類元素(R2)と、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)、酸素(O)、窒素(N)、C(炭素)、水素(H)、マグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ゲルマニウム(Ge)および鉛(Pb)からなる元素群中の一種以上である粒界構成元素とからなることを特徴とする。
(1)本発明は磁性体としてのみならず、それに適した製造方法としても把握される。すなわち本発明は、R1とFeとBからなる非晶質体内に拡散し得る拡散元素を含む拡散材を、該非晶質体へ付着させた付着非晶質体を得る付着工程と、該付着非晶質体を加熱して、R12Fe14Bの結晶粒からなる主相と該結晶粒間に形成され該拡散元素を含む粒界相とを並行して形成させ得る加熱工程とを備え、上述した本発明の磁性体が得られることを特徴とする磁性体の製造方法でもよい。
(1)本発明に係るナノ結晶集合体や磁性体は、巨視的な形態を問わない。つまり、薄膜体でも、その薄膜体が基板上に積層された積層体でも、薄膜体を粉砕した粉砕粉でも、その粉砕粉を成形した成形体でも、さらにはその成形体を焼結させた焼結体でもよい。また本発明の磁性体は、バルクのような素材であっても最終的な希土類磁石であってもよく、着磁の有無を問わない。
(1)主相
主相は、希土類元素(R1)、FeおよびBの正方晶金属間化合物であるR12Fe14Bの結晶粒からなる。R1は一種のみならず二種以上であってもよい。本明細書でいう希土類元素には、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイドを含む。ランタノイドは、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)およびルテチウム(Lu)などがある。もっともR1は、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbの少なくとも1種以上であると好ましく、特にコストや磁気特性の観点からR1はNdであるとよい。この点は後述のR2についても同様である。
粒界相は、結晶粒を孤立させて磁性体の保磁力の向上に寄与し、またR12Fe14B結晶の核生成エネルギーを低下させ、角丸形状の結晶粒を安定的に形成させ得る粒界構成元素を含むと好ましい。この粒界構成元素は、結晶粒の構成元素(R1、FeおよびB)以外であって、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)、酸素(O)、窒素(N)、C(炭素)、水素(H)、マグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ゲルマニウム(Ge)および鉛(Pb)からなる元素群中の一種以上である。特に粒界構成元素はCuであり、粒界相はR1および/またはR1と異なる希土類元素(R2)とCuからなると好ましい。ここでR1およびR2は異種でも同種でもよいが、R1およびR2が共にNdであれば磁性体の磁気特性向上およびコスト低減を図れて好ましい。
(1)非晶質体
本発明の磁性体のベースとなるR1−Fe−Bの非晶質体は、具体的な組成を問わない。もっとも、正方晶金属間化合物(R12Fe14B)の生成に適した組成、例えば、非晶質体全体を100原子%としたとき、R1:8〜30原子%、B:4〜20原子%、Fe:残部からなる組成が好ましい。R1リッチな組成の場合、粒界相の形成が容易となり、ひいては磁性体の保磁力が向上し易くなる。さらには非晶質体は、R1、FeおよびB以外に、種々の改質元素を少量含有してもよいし、当然に不可避不純物を含む。この点は拡散材についても同様である。
拡散材は、非晶質体内に拡散し得る拡散元素を含むものであればよい。拡散元素は粒界構成元素を兼ね、上述した粒界構成元素に関する内容は拡散元素にも該当する。但し、拡散元素がR12Fe14B結晶粒中に固溶すると、磁性体の磁気特性の低下を招くため、拡散元素は結晶粒内に非固溶なものほど好ましい。
本発明の希土類磁石の製造方法は主に付着工程と加熱工程とからなる。
(1)付着工程
付着工程は、R1−Fe−B非晶質体へ拡散材を付着させた付着非晶質体(図1A参照)を得る工程である。ここでいう「付着」は、拡散元素が非晶質体内へ拡散し得る程度に、非晶質体と拡散材とが接触していれば足りる。従って、非晶質体と拡散材とは脱離可能でもよく、必ずしも溶着等している必要はない。もっとも、拡散材が非晶質体の少なくとも一面を被覆していると、効率的な拡散が可能となり好ましい。
(2)加熱工程
加熱工程は、付着非晶質体を加熱して、R12Fe14Bの結晶粒からなる主相と結晶粒間に拡散元素を含む粒界相とを並行して生成させる工程である。これにより角丸形状の結晶粒が粒界相で被包されたナノ結晶集合体(図1B参照)が得られる。このときの加熱温度は、拡散材の液相温度(共晶点)以上であると好ましい。Nd−Fe−B系非晶質体にNd−Cu系拡散材を付着させた付着非晶質体を加熱する場合なら、その加熱温度は540〜680℃さらには560〜660℃で加熱すると好ましい。
加熱工程後に得られたナノ結晶集合体の酸化等を抑止するため、その表面に保護被膜(保護層)を設けると好適である。このような保護被膜の形成も前述したスパッタリングにより行える。そのターゲットには、Cr、Ag、Au、Pd、Pt、Mo、Cu、Ti、Ta、Ru、V、Hf、W、Ir、Al、Nbなどの単体、合金または化合物などを用いることができる。このスパッタリングは通常、室温域で行えば足りる。
本発明の磁性体は、磁気ディスクなどの磁気記録媒体、電動機のロータまたはステータなどに用いることができる
《試料の製造》
図2に示すような試料を表1に示すように種々製造した。
(1)基材および下地層
先ず、試料(磁性体)を形成する基材としてMgO単結晶基板(以下単に「基板」という。)を用意した。このMgO単結晶基板は、(001)面が基板面になるように加工し、表面粗度を小さくするため研磨を行ったものである(フルウチ化学株式会社製、MgO(100)単結晶)。
上述のスパッタリングにより、基板を加熱しつつ下地層上にNd−Fe−B層を形成した。基板の加熱温度は表1に示すように試料毎に変更した。ターゲットには、Nd、Fe、Fe80B20(単位:原子%)合金を用いた。こうして厚さ20nmのNd−Fe−B層を形成した。
Nd−Fe−B層を形成した基板を室温域まで冷却し、室温域で、Nd−Fe−B層上へNd−Cu層(拡散層、拡散材)を上述したスパッタリングにより積層した。このときターゲットには、Nd30Cu70(原子%)の銅合金を用いた。Nd−Cu層の厚さは全試料とも1nmとした。なお、比較のため、このNd−Cu層の形成を行わない試料も並行して用意した。
Nd−Cu層の有る基板およびNd−Cu層の無い基板を、表1に示す各温度で加熱した。この熱処理は、前述した1x10−8Pa以下の真空雰囲気中で1時間行った。
この熱処理後、基板を室温域まで冷却し、室温域で、各試料の最表面に、CrあるいはMoからなる保護層を上述したスパッタリングにより形成した。保護層の厚さは全試料とも10nmとした。こうして図2に示す積層体(Nd−Cu層が残存している場合)からなる試料が得られた。
上述した各試料の保磁力を超伝導量子干渉型磁束計(SQUID)により測定した。その結果を表1に併せて記載した。なお、表1中に示した保磁力増加率は、上述したNd−Cu層の無い試料の保磁力(H0)に対する、Nd−Cu層の有る試料の保磁力(H1)の比率(H1/H0)である。
《試料の観察》
(1)Nd−Fe−B層(非晶質)にNd−Cu層を積層した試料(試料No.A3参照)と、Nd−Fe−B層(非晶質)にNd−Cu層を積層しなかった試料(試料No.A3参照)と、Nd−Fe−B層(結晶質)にNd−Cu層を積層した試料(試料No.A9参照)とについて、各積層断面を走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察した。それらの画像をそれぞれ図3A〜図3Cに示した。
(2)試料No.A3(Nd−Cu層有り)の積層断面をSTEMで観察した画像を図4Aに、また同試料をより広範囲でSTEM観察した画像を図4Bに示した。なお、図4Bでは、Nd−Fe−B層中に観察された複数の結晶粒に、順次、粒子1〜8を付した。これら粒子1〜粒子8の最長幅を図4BのSTEM像から読み取り、その結果を表2にまとめた。
(3)図4Aに示した試料No.A3の断面を、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により観察した。得られた各元素の分布像を図5A〜図5Eにそれぞれ示した。
(1)結晶粒と粒界相
先ず図3Aから明らかなように、非晶質のNd−Fe−B層にNd−Cu層を積層して加熱した試料では、角丸形状の微細な結晶粒(ナノサイズ結晶粒)と、それら結晶粒間に非常に薄い粒界相が同時に形成されていた。
図4A、図4Bおよび表2から、非晶質のNd−Fe−B層とNd−Cu層との積層体を加熱して得られた試料は、結晶粒の最長幅がいずれも500nm以下、具体的には50〜150nmであり、相加平均すると約75nm程度であった。また、それら結晶粒間にできた粒界相の最小幅はいずれも1nm以上さらには2nm以上あった。
先ず、図5Aおよび図5Bから明らかなように、Feは主に結晶粒中に存在し、粒界相中に殆ど存在していない。またNdは結晶粒中および粒界相中に存在している。次に、図5Cから明らかなように、Cuは結晶粒および粒界相を含む広い領域に分布しているが、図5Dおよび図5Eから明らかなように下地層のMoおよび保護層のCrは、結晶粒や粒界相にほとんど存在していない。これらのことから、上述した結晶粒はNd2Fe14Bからなる結晶粒であり、粒界相はNdとCuの合金または化合物からなるといえる。
先ず表1の試料No.A1〜A12より、非晶質のNd−Fe−B層は、基板の加熱温度をNd−Fe−Bの共晶点(結晶化温度)より低い590℃以下で形成されることが解る。
表1の試料No.B1〜B9より明らかなように、非晶質のNd−Fe−B層上にNd−Cu層を積層した試料の加熱温度が510〜680℃さらには540〜670℃であると、保磁力増加率が大きくなることがわかる。また、その加熱温度をさらには560〜660℃とすると、保磁力自体も非常に大きくなることがわかる。
表1に示した各試料の結果から、300〜590℃さらには325〜590℃で加熱しつつ形成した非晶質なNd−Fe−B層上に、Nd−Cu層を積層した積層体を、さらに540〜680℃さらには560〜660℃で加熱することにより、Dy等の稀少元素を用いるまでもなく、30kOe前後の大きな保磁力を発現する磁性体が得られることがわかった。そして、このような磁性体は、角丸形状の結晶粒(主相)とそれを包囲する粒界相とにより構成されたナノサイズの結晶集合体からなることが明らかとなった。
Claims (12)
- 希土類元素(R1)と鉄(Fe)とホウ素(B)の正方晶金属間化合物(R12Fe14B)の結晶粒からなる主相と該結晶粒間に形成された粒界相とからなる磁性体であって、
前記結晶粒は、最長幅が20〜500nmの角丸形状をしており、
前記粒界相は、最小幅が1〜15nmであり、
該粒界相は、前記R1および/または該R1と異なる希土類元素(R2)と、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)、酸素(O)、窒素(N)、C(炭素)、水素(H)、マグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ゲルマニウム(Ge)および鉛(Pb)からなる元素群中の一種以上である粒界構成元素とからなることを特徴とする磁性体。 - 前記粒界構成元素は、Cuである請求項1に記載の磁性体。
- 前記R1および前記R2はネオジム(Nd)である請求項1または2に記載の磁性体。
- 前記結晶粒の最長幅は、30〜300nmであり、
前記粒界相の最小幅は、2〜10nmである請求項1に記載の磁性体。 - 厚さが1〜500nmの薄膜である請求項1〜4のいずれかに記載の磁性体。
- 前記角丸形状は、方形状を構成する角部が略円弧状になっている形状である請求項1に記載の磁性体。
- R1とFeとBからなる非晶質体内に拡散し得る拡散元素を含む拡散材を、該非晶質体へ付着させた付着非晶質体を得る付着工程と、
該付着非晶質体を加熱して、R12Fe14Bの結晶粒からなる主相と該結晶粒間に形成され該拡散元素を含む粒界相とを並行して形成させる加熱工程とを備え、
請求項1〜6のいずれかに記載の磁性体が得られることを特徴とする磁性体の製造方法。 - 前記拡散材は、請求項1に記載した粒界構成元素を含む合金である請求項7に記載の磁性体の製造方法。
- 前記粒界構成元素を含む合金は、前記R1および/またはR2とCuとからなる銅合金である請求項8に記載の磁性体の製造方法。
- 前記加熱工程は、前記付着非晶質体を540〜680℃で加熱する工程である請求項7〜9のいずれかに記載の磁性体の製造方法。
- さらに、前記付着工程前に、325〜590℃で前記非晶質体を形成する非晶質体形成工程を備える請求項7〜10のいずれかに記載の磁性体の製造方法。
- 前記非晶質体は、前記主相の配向結晶面と整合的な結晶構造を有する基材上または下地材上に形成される請求項7〜11のいずれかに記載の磁性体の製造方法。
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